(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139837
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】印刷装置および印刷装置の管理方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230927BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230927BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B41J2/175 171
B41J2/01 451
B41J2/01 401
B41J2/18
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045569
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】武藤 正吾
(72)【発明者】
【氏名】秋山 侑介
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA20
2C056EB02
2C056EB21
2C056EB34
2C056EB38
2C056EC26
2C056EE18
2C056FA02
2C056FA13
2C056HA29
2C056HA47
2C056KB04
2C056KB08
2C056KB16
2C056KB37
2C056KC02
(57)【要約】
【課題】インクの漏洩までの適切なタイミングで作業者が復旧作業を実行可能とする。
【解決手段】供給タンク91a内の雰囲気の圧力を測定する圧力センサSpが設けられている。電源部551からの電力の供給が停止した電力供給停止時において、圧力センサSpの測定圧力Pmが取得され(ステップS102)、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの漏洩が発生する漏洩発生時刻(=Tr+ΔT)が、当該測定圧力Pmに基づき予測される(ステップS103、S104)。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体にインクを吐出して印刷を行う印刷装置であって、
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドへ供給するインクを貯留する供給タンクと、
前記吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収タンクと、
前記供給タンクと前記吐出ヘッドとを流路接続し、前記供給タンクから供給されるインクを前記吐出ヘッドへ送液する供給配管と、
前記吐出ヘッドと前記回収タンクとを流路接続し、前記吐出ヘッドから回収したインクを前記回収タンクへ送液する回収配管と、
前記印刷装置の各部に電力を供給する電源部と、
前記電源部から供給される電力によって動作することで前記供給タンク内におけるインクと雰囲気との境界である気液界面にかかる圧力を生成する第1圧力生成部と、
前記第1圧力生成部に取り付けられた第1一端と、前記供給タンク内の雰囲気に臨むように前記供給タンクに取り付けられた第1他端とを有する第1圧力伝達配管と、
前記第1一端と前記第1他端との間において前記第1圧力伝達配管に設けられた第1電磁弁と、
前記電源部から供給される電力によって動作することで前記回収タンク内のインクと雰囲気との境界である気液界面にかかる圧力を生成する第2圧力生成部と、
前記第2圧力生成部に取り付けられた第2一端と、前記回収タンク内の雰囲気に臨むように前記回収タンクに取り付けられた第2他端とを有する第2圧力伝達配管と、
前記第2一端と前記第2他端との間において前記第2圧力伝達配管に設けられた第2電磁弁と、
前記供給タンクと前記回収タンクとの間に設けられて、前記供給タンク内の雰囲気と前記回収タンク内の雰囲気とを接続するバイパス配管と、
前記バイパス配管の途中の位置に設けられたバイパス電磁弁と、
前記供給タンクおよび前記回収タンクの少なくとも一方の対象タンク内の雰囲気の圧力を測定する圧力測定部と、
作業者に報知を行う報知部と、
制御部と、
を備え、
前記第1電磁弁は、前記電源部から電力が供給された状態において前記第1圧力伝達配管を介して前記第1圧力生成部と前記供給タンク内の雰囲気とを連通させて、前記第1圧力生成部が生成した圧力を前記第1圧力伝達配管を介して前記供給タンク内の気液界面に付与する一方、前記電源部からの電力の供給が停止した状態において前記第1圧力生成部と前記供給タンクとを遮断し、
前記第2電磁弁は、前記電源部から電力が供給された状態において前記第2圧力伝達配管を介して前記第2圧力生成部と前記回収タンク内の雰囲気とを連通させて、前記第2圧力生成部が生成した圧力を前記第2圧力伝達配管を介して前記回収タンク内の気液界面に付与する一方、前記電源部からの電力の供給が停止した状態において前記第2圧力生成部と前記回収タンクとを遮断し、
前記バイパス電磁弁は、前記電源部から電力が供給された状態において前記供給タンク内の雰囲気と前記回収タンク内の雰囲気とを遮断する一方、前記電源部からの電力の供給が停止した状態において前記供給タンク内の雰囲気と前記回収タンク内の雰囲気とを連通させ、
前記制御部は、
前記圧力測定部が測定する圧力である測定圧力を取得する測定圧力取得部と、
前記電源部から前記第1電磁弁、前記第2電磁弁および前記バイパス電磁弁への電力の供給が停止した電力供給停止時において前記測定圧力取得部が取得した前記測定圧力に基づき、前記吐出ヘッドの前記ノズルからのインクの漏洩が発生する時刻である漏洩発生時刻を予測する漏洩時刻予測部と、
前記漏洩時刻予測部により予測された前記漏洩発生時刻を報知部に報知させる報知制御部と
を有する印刷装置。
【請求項2】
記憶部をさらに備え、
前記記憶部は、前記電源部から前記第1電磁弁、前記第2電磁弁および前記バイパス電磁弁への電力を供給が停止した状態において、前記対象タンク内の雰囲気の圧力の時間変化を測定した圧力変化測定データを記憶する測定データ記憶部を有し、
前記漏洩時刻予測部は、前記電力供給停止時において前記測定圧力取得部が取得した前記測定圧力と、前記測定データ記憶部に記憶された前記圧力変化測定データとに基づき、前記漏洩発生時刻を予測する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記報知部は、作業者に情報を表示するディスプレイを含み、
前記報知制御部は、前記漏洩発生時刻が前記ディスプレイに表示されるように、前記ディスプレイを制御するディスプレイ制御部を含む請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記報知部は、作業者の端末装置と通信を行う通信部を含み、
前記報知制御部は、前記漏洩発生時刻が前記通信部から前記端末装置へ送信されるように、前記通信部を制御する通信制御部を含む請求項1ないし3のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記電源部から供給された電力を蓄える補助電源部をさらに備え、
前記電源部が電力の供給を停止している状態において、前記圧力測定部、前記制御部および前記報知部は、前記補助電源部から供給される電力によって動作する請求項1ないし4のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項6】
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドへ供給するインクを貯留する供給タンクと、前記吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収タンクと、前記供給タンクと前記吐出ヘッドとを流路接続し、前記供給タンクから供給されるインクを前記吐出ヘッドへ送液する供給配管と、前記吐出ヘッドと前記回収タンクとを流路接続し、前記吐出ヘッドから回収したインクを前記回収タンクへ送液する回収配管とを備え、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行う印刷装置の管理方法であって、
当該印刷装置の各部に電力を供給する電源部からの電力供給が停止した電力供給停止時において、前記供給タンクおよび前記回収タンクの少なくとも一方の対象タンク内の雰囲気の圧力を圧力測定部により測定した圧力である測定圧力を取得する測定圧力取得工程と、
前記吐出ヘッドの前記ノズルからのインクの漏洩が発生する時刻である漏洩発生時刻を前記測定圧力取得工程で取得された前記測定圧力に基づき予測する漏洩時刻予測工程と、
前記漏洩時刻予測工程により予測された前記漏洩発生時刻を報知部に報知させる報知制御工程と
を備え、
前記印刷装置は、
前記電源部から供給される電力によって動作することで前記供給タンク内におけるインクと雰囲気との境界である気液界面にかかる圧力を生成する第1圧力生成部と、
前記第1圧力生成部に取り付けられた第1一端と、前記供給タンク内の雰囲気に臨むように前記供給タンクに取り付けられた第1他端とを有する第1圧力伝達配管と、
前記第1一端と前記第1他端との間において前記第1圧力伝達配管に設けられた第1電磁弁と、
前記電源部から供給される電力によって動作することで前記回収タンク内のインクと雰囲気との境界である気液界面にかかる圧力を生成する第2圧力生成部と、
前記第2圧力生成部に取り付けられた第2一端と、前記回収タンク内の雰囲気に臨むように前記回収タンクに取り付けられた第2他端とを有する第2圧力伝達配管と、
前記第2一端と前記第2他端との間において前記第2圧力伝達配管に設けられた第2電磁弁と、
前記供給タンクと前記回収タンクとの間に設けられて、前記供給タンク内の雰囲気と前記回収タンク内の雰囲気とを接続するバイパス配管と、
前記バイパス配管の途中の位置に設けられたバイパス電磁弁と、
を含み、
前記第1電磁弁は、前記電源部から電力が供給された状態において前記第1圧力伝達配管を介して前記第1圧力生成部と前記供給タンク内の雰囲気とを連通させて、前記第1圧力生成部が生成した圧力を前記第1圧力伝達配管を介して前記供給タンク内の気液界面に付与する一方、前記電源部からの電力の供給が停止した状態において前記第1圧力生成部と前記供給タンクとを遮断し、
前記第2電磁弁は、前記電源部から電力が供給された状態において前記第2圧力伝達配管を介して前記第2圧力生成部と前記回収タンク内の雰囲気とを連通させて、前記第2圧力生成部が生成した圧力を前記第2圧力伝達配管を介して前記回収タンク内の気液界面に付与する一方、前記電源部からの電力の供給が停止した状態において前記第2圧力生成部と前記回収タンクとを遮断し、
前記バイパス電磁弁は、前記電源部から電力が供給された状態において前記供給タンク内の雰囲気と前記回収タンク内の雰囲気とを遮断する一方、前記電源部からの電力の供給が停止した状態において前記供給タンク内の雰囲気と前記回収タンク内の雰囲気とを連通させる印刷装置の管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置において吐出ヘッドのノズルからのインクの漏洩に対応する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置が記載されている。この印刷装置は、吐出ヘッドに供給されるインクを貯留する供給タンクと、吐出ヘッドから回収されたインクを貯留する回収タンクとを備える。さらに、印刷装置は、供給タンク内に与えられる負圧を生成する供給側圧力生成部と、回収タンク内に与えられる負圧を生成する回収側圧力生成部とを備え、供給タンク内の負圧よりも回収タンク内の負圧を低くすることで、供給タンクから吐出ヘッドを介して回収タンクにインクを送液する。
【0003】
また、供給側負圧付与部と供給タンクとの間には電磁弁が設けられており、当該電磁弁は通電時において供給側圧力生成部と供給タンクとを連通させて、供給側圧力生成部が生成した負圧を供給タンクに与える一方、非通電時において供給側圧力生成部と供給タンクとを遮断する。また、回収側負圧付与部と回収タンクとの間には電磁弁が設けられており、当該電磁弁は通電時において回収側圧力生成部と回収タンクとを連通させて、回収側圧力生成部が生成した負圧を回収タンクに与える一方、非通電時において回収側圧力生成部と回収タンクとを遮断する。さらに、回収タンクと供給タンクとの間には、電磁弁が設けられており、当該電磁弁は通電時において回収タンクと供給タンクとの雰囲気を遮断する一方、非通電時において回収タンクと供給タンクとの雰囲気を連通させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような印刷装置では、例えば停電などによって電源から各電磁弁への電力供給が停止すると、供給タンクが供給側圧力生成部から遮断され、回収タンクが回収側圧力生成部から遮断され、さらに供給タンクの雰囲気と回収タンクの雰囲気とが連通される。その結果、供給タンクの雰囲気と回収タンクの雰囲気とは、同一の負圧を有することとなる。かかる負圧は、供給タンクおよび回収タンク内の気液界面から吐出ヘッドまでのインクの水頭圧に抗してインクを支持して、吐出ヘッドのノズルからのインクの漏洩を防止する。ただし、供給タンクおよび回収タンクの雰囲気の圧力は時間経過とともに徐々に上昇する。そのため、供給タンクおよび回収タンクの雰囲気の負圧がインクの水頭圧に対して不十分となって、吐出ヘッドのノズルからインクが漏洩する場合があった。したがって、インクの漏洩が発生するまでに電力供給の復旧作業を行うことが作業者に求められる。しかしながら、作業者は、インクの漏洩がいつ発生するのかを把握できず、適切なタイミングで作業を実行することが難しかった。
【0006】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置において電力供給が停止した際に、吐出ヘッドのノズルからのインクの漏洩が発生するまでの適切なタイミングで作業者が復旧作業を実行可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る印刷装置は、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行う印刷装置であって、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、吐出ヘッドへ供給するインクを貯留する供給タンクと、吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収タンクと、供給タンクと吐出ヘッドとを流路接続し、供給タンクから供給されるインクを吐出ヘッドへ送液する供給配管と、吐出ヘッドと回収タンクとを流路接続し、吐出ヘッドから回収したインクを回収タンクへ送液する回収配管と、印刷装置の各部に電力を供給する電源部と、電源部から供給される電力によって動作することで供給タンク内におけるインクと雰囲気との境界である気液界面にかかる圧力を生成する第1圧力生成部と、第1圧力生成部に取り付けられた第1一端と、供給タンク内の雰囲気に臨むように供給タンクに取り付けられた第1他端とを有する第1圧力伝達配管と、第1一端と第1他端との間において第1圧力伝達配管に設けられた第1電磁弁と、電源部から供給される電力によって動作することで回収タンク内のインクと雰囲気との境界である気液界面にかかる圧力を生成する第2圧力生成部と、第2圧力生成部に取り付けられた第2一端と、回収タンク内の雰囲気に臨むように回収タンクに取り付けられた第2他端とを有する第2圧力伝達配管と、第2一端と第2他端との間において第2圧力伝達配管に設けられた第2電磁弁と、供給タンクと回収タンクとの間に設けられて、供給タンク内の雰囲気と回収タンク内の雰囲気とを接続するバイパス配管と、バイパス配管の途中の位置に設けられたバイパス電磁弁と、供給タンクおよび回収タンクの少なくとも一方の対象タンク内の雰囲気の圧力を測定する圧力測定部と、作業者に報知を行う報知部と、制御部と、を備え、第1電磁弁は、電源部から電力が供給された状態において第1圧力伝達配管を介して第1圧力生成部と供給タンク内の雰囲気とを連通させて、第1圧力生成部が生成した圧力を第1圧力伝達配管を介して供給タンク内の気液界面に付与する一方、電源部からの電力の供給が停止した状態において第1圧力生成部と供給タンクとを遮断し、第2電磁弁は、電源部から電力が供給された状態において第2圧力伝達配管を介して第2圧力生成部と回収タンク内の雰囲気とを連通させて、第2圧力生成部が生成した圧力を第2圧力伝達配管を介して回収タンク内の気液界面に付与する一方、電源部からの電力の供給が停止した状態において第2圧力生成部と回収タンクとを遮断し、バイパス電磁弁は、電源部から電力が供給された状態において供給タンク内の雰囲気と回収タンク内の雰囲気とを遮断する一方、電源部からの電力の供給が停止した状態において供給タンク内の雰囲気と回収タンク内の雰囲気とを連通させ、制御部は、圧力測定部が測定する圧力である測定圧力を取得する測定圧力取得部と、電源部から第1電磁弁、第2電磁弁およびバイパス電磁弁への電力の供給が停止した電力供給停止時において測定圧力取得部が取得した測定圧力に基づき、吐出ヘッドのノズルからのインクの漏洩が発生する時刻である漏洩発生時刻を予測する漏洩時刻予測部と、漏洩時刻予測部により予測された漏洩発生時刻を報知部に報知させる報知制御部とを有する。
【0008】
本発明に係る印刷装置の管理方法は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、吐出ヘッドへ供給するインクを貯留する供給タンクと、吐出ヘッドから回収したインクを貯留する回収タンクと、供給タンクと吐出ヘッドとを流路接続し、供給タンクから供給されるインクを吐出ヘッドへ送液する供給配管と、吐出ヘッドと回収タンクとを流路接続し、吐出ヘッドから回収したインクを回収タンクへ送液する回収配管とを備え、印刷媒体にインクを吐出して印刷を行う印刷装置の管理方法であって、当該印刷装置の各部に電力を供給する電源部からの電力供給が停止した電力供給停止時において、供給タンクおよび回収タンクの少なくとも一方の対象タンク内の雰囲気の圧力を圧力測定部により測定した圧力である測定圧力を取得する測定圧力取得工程と、吐出ヘッドのノズルからのインクの漏洩が発生する時刻である漏洩発生時刻を測定圧力取得工程で取得された測定圧力に基づき予測する漏洩時刻予測工程と、漏洩時刻予測工程により予測された漏洩発生時刻を報知部に報知させる報知制御工程とを備え、印刷装置は、電源部から供給される電力によって動作することで供給タンク内におけるインクと雰囲気との境界である気液界面にかかる圧力を生成する第1圧力生成部と、第1圧力生成部に取り付けられた第1一端と、供給タンク内の雰囲気に臨むように供給タンクに取り付けられた第1他端とを有する第1圧力伝達配管と、第1一端と第1他端との間において第1圧力伝達配管に設けられた第1電磁弁と、電源部から供給される電力によって動作することで回収タンク内のインクと雰囲気との境界である気液界面にかかる圧力を生成する第2圧力生成部と、第2圧力生成部に取り付けられた第2一端と、回収タンク内の雰囲気に臨むように回収タンクに取り付けられた第2他端とを有する第2圧力伝達配管と、第2一端と第2他端との間において第2圧力伝達配管に設けられた第2電磁弁と、供給タンクと回収タンクとの間に設けられて、供給タンク内の雰囲気と回収タンク内の雰囲気とを接続するバイパス配管と、バイパス配管の途中の位置に設けられたバイパス電磁弁と、を含み、第1電磁弁は、電源部から電力が供給された状態において第1圧力伝達配管を介して第1圧力生成部と供給タンク内の雰囲気とを連通させて、第1圧力生成部が生成した圧力を第1圧力伝達配管を介して供給タンク内の気液界面に付与する一方、電源部からの電力の供給が停止した状態において第1圧力生成部と供給タンクとを遮断し、第2電磁弁は、電源部から電力が供給された状態において第2圧力伝達配管を介して第2圧力生成部と回収タンク内の雰囲気とを連通させて、第2圧力生成部が生成した圧力を第2圧力伝達配管を介して回収タンク内の気液界面に付与する一方、電源部からの電力の供給が停止した状態において第2圧力生成部と回収タンクとを遮断し、バイパス電磁弁は、電源部から電力が供給された状態において供給タンク内の雰囲気と回収タンク内の雰囲気とを遮断する一方、電源部からの電力の供給が停止した状態において供給タンク内の雰囲気と回収タンク内の雰囲気とを連通させる。
【0009】
このように構成された本発明(印刷装置、印刷装置の管理方法)では、供給タンクおよび回収タンクの少なくとも一方の対象タンク内の雰囲気の圧力を測定する圧力測定部が設けられている。そして、電源部からの電力の供給が停止した電力供給停止時において、圧力測定部による測定圧力が取得され、吐出ヘッドのノズルからのインクの漏洩が発生する時刻である漏洩発生時刻が、当該測定圧力に基づき予測される。つまり、供給タンクおよび回収タンクの雰囲気の負圧を実際に測定した結果である測定圧力に基づき、漏洩発生時刻が予測される。こうして予測された漏洩発生時刻は作業者に報知される。その結果、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置において電力供給が停止した際に、吐出ヘッドのノズルからのインクの漏洩が発生するまでの適切なタイミングで作業者が復旧作業を実行することが可能となっている。
【0010】
また、記憶部は、電源部から第1電磁弁、第2電磁弁およびバイパス電磁弁への電力を供給が停止した状態において、対象タンク内の雰囲気の圧力の時間変化を測定した圧力変化測定データを記憶する測定データ記憶部を有し、漏洩時刻予測部は、電力供給停止時において測定圧力取得部が取得した測定圧力と、測定データ記憶部に記憶された圧力変化測定データとに基づき、漏洩発生時刻を予測するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、電源部からの電力供給が停止した状態において、供給タンクおよび回収タンク内の雰囲気の圧力の時間変化を予め測定した結果である圧力変化測定データが記憶部に記憶されている。そして、電力供給停止時において供給タンクおよび回収タンクの雰囲気の圧力を測定することで取得される測定圧力と、測定データ記憶部に記憶された圧力変化測定データに基づき、漏洩発生時刻が予測される。これによって、漏洩発生時刻を高精度に予測することができる。
【0011】
また、報知部は、作業者に情報を表示するディスプレイを含み、報知制御部は、漏洩発生時刻がディスプレイに表示されるように、ディスプレイを制御するディスプレイ制御部を含むように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、作業者は、ディスプレイに表示された漏洩発生時刻を確認することで、適切なタイミングで復旧作業を実行することができる。
【0012】
また、報知部は、作業者の端末装置と通信を行う通信部を含み、報知制御部は、漏洩発生時刻が通信部から端末装置へ送信されるように、通信部を制御する通信制御部を含むように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、作業者は、端末装置が受信した漏洩発生時刻を確認することで、適切なタイミングで復旧作業を実行することができる。
【0013】
また、電源部から供給された電力を蓄える補助電源部をさらに備え、電源部が電力の供給を停止している状態において、圧力測定部、制御部および報知部は、補助電源部から供給される電力によって動作するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、電源部からの電力供給が停止した状況であっても、圧力測定部、制御部および報知部を補助電源部から供給される電力によって動作させて、測定圧力の取得、漏洩発生時刻の予測および漏洩発生時刻の報知を確実に実行することができる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置において電力供給が停止した際に、吐出ヘッドのノズルからのインクの漏洩が発生するまでの適切なタイミングで作業者が復旧作業を実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係る印刷システムの一例を模式的に示す正面図。
【
図2】
図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図。
【
図4A】吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cの構成を模式的に示す図。
【
図4B】吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cの構成を模式的に示す図。
【
図5】印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図6】印刷装置において実行されるインク漏洩管理の一例を示す図。
【
図7A】
図6のステップS103で測定圧力と対比される圧力変化測定データを模式的に示す図。
【
図7B】
図6のステップS104で実行される漏洩発生時刻の予測方法を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。
図1および以下に示す図では、水平方向Xおよび鉛直方向Zを適宜示す。
図1に示すように、印刷システム1は、水平方向Xに配列された印刷装置3および乾燥装置6を備える。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送する。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene
terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0017】
印刷装置3は、繰出ロール11から巻取ロール12へ搬送される印刷媒体Mの表面M1に対してインクジェット方式で水性インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に画像を印刷する。かかる印刷装置3の詳細な構成は後述する。こうして画像が印刷された印刷媒体Mは、印刷装置3から乾燥装置6へ向けて水平方向Xに搬送される。
【0018】
乾燥装置6は乾燥炉60を備え、繰出ロール11から巻取ロール12への搬送に伴って印刷装置3から搬出された印刷媒体Mを乾燥させる。乾燥炉60内には、水平方向Xに配列された2個の上段送風ユニット61uと、これら上段送風ユニット61uの下側で水平方向Xに配列された2個の中段送風ユニット61mと、これら中段送風ユニット61mの下側で水平方向Xに配列された2個の下段送風ユニット61lとが具備されている。
【0019】
印刷装置3の搬出口312から搬出された印刷媒体Mは、2個の上段送風ユニット61uを水平方向Xに通過した後に、1対のローラ62によって2個の中段送風ユニット61mへ向けて折り返される。続いて、印刷媒体Mは、2個の中段送風ユニット61mを水平方向Xに通過した後に、1対のエアターンバー63によって2下段送風ユニット61lに向けて折り返される。さらに、印刷媒体Mは、2個の下段送風ユニット61lを水平方向Xに通過した後に、乾燥装置6の外部へ搬出される。
【0020】
上段送風ユニット61uは、水平方向Xに通過する印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟むように配置された2個の送風チャンバ64を有する。各送風チャンバ64は、水平方向Xに配列された複数のノズル65を有し、各ノズル65から温風(60度以上の気体)を印刷媒体Mへ噴射する。こうして、印刷媒体Mは、上下に設けられた2個の送風チャンバ64の間を通過しつつ、これら送風チャンバ64のノズル65から噴射された温風によって乾燥される。また、中段送風ユニット61mおよび下段送風ユニット61lのそれぞれも、上段送風ユニット61uと同様に、印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む2個の送風チャンバ64を有する。
【0021】
ちなみに、上段送風ユニット61uの具体的構成はここの例に限られない。例えば、上段送風ユニット61uの上下の送風チャンバ64のうち下側の送風チャンバ64に代えて、水平方向Xに配列された複数のローラを設けてもよい。かかる構成では、複数のローラによって印刷媒体Mの裏面M2を下側から支持しつつ、上側の送風チャンバ64から印刷媒体Mの表面M1に温風を噴射できる。
【0022】
図2は
図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図である。
図2では、水平方向Xの一方側X1および他方側X2を適宜示す。ここで、一方側X1は印刷装置3から乾燥装置6へ向う側であり、他方側X2は一方側X1の反対側である。印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部4とを備える。
【0023】
カラー印刷部32は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向(他方側X2から一方側X1へ向かう方向)に配列された複数(6個)のヘッドユニット321を有する。複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0024】
また、白印刷部33は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一のヘッドユニット331を有する。ヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33のヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0025】
筐体31の他方側X2の側壁には搬入口311が開口する一方、筐体31の一方側X1の側壁には搬出口312が開口している。そして、搬送部4は、上記のカラー印刷部32および白印刷部33を経由しつつ、搬入口311から搬出口312へ印刷媒体Mを搬送する。
【0026】
この搬送部4は、カラー印刷部32の下側に設けられた搬入部41と、カラー印刷部32の一方側X1に設けられた上昇搬送部42と、カラー印刷部32の上側に設けられた上方搬送部43と、カラー印刷部32の他方側X2に設けられた下降搬送部44とを有する。搬入部41は、搬入口311から搬入された印刷媒体Mをローラ411によって一方側X1に搬送し、上昇搬送部42は、搬入部41によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ421によって上側に搬送し、上方搬送部43は、上昇搬送部42によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ431によって他方側X2へ搬送し、下降搬送部44は、上方搬送部43によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ441によって下側に搬送する。
【0027】
さらに、搬送部4は、カラー印刷部32に対向する印刷媒体Mを下方から支持するカラー搬送部45を有し、下降搬送部44を通過した印刷媒体Mはカラー搬送部45に進入する。このカラー搬送部45は、他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ451を有し、各ローラ451が印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触する。こうして、カラー搬送部45によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、カラー印刷部32の各ヘッドユニット321は、この表面M1に上方から対向しつつカラーインクを吐出する。
【0028】
また、搬送部4は、印刷媒体Mの進行方向においてカラー搬送部45と下降搬送部44との間に配置されたローラ461、462、463を有する。ローラ461は、印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。ローラ462、463は印刷媒体Mに従動して回転する従動ローラである。
【0029】
さらに、搬送部4は、カラー搬送部45から一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mを二回上下反転させる反転搬送部47を有する。この反転搬送部47は、駆動ローラ471を含む複数のローラ471~477を有し、これらローラ471~477が印刷媒体Mの裏面M2に接触しつつ、印刷媒体Mを二回上下反転させる。つまり、反転搬送部47は、カラー搬送部45から搬送された印刷媒体Mを、ローラ471、472によって下方向に向けて搬送し、さらに印刷媒体Mの進行方向をローラ472によって他方側X2に変更して搬送することにより、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを上下反転させる。続いて、反転搬送部47は、複数のローラ473によって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2に向けて搬送し、次いで、ローラ474~476によって印刷媒体Mを上方向に向けて搬送する。さらに、反転搬送部47は、ローラ476によって印刷媒体Mの進行方向を一方側X1に変更することによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを再び上下反転させるとともに、ローラ477によって印刷媒体Mを他方側X2から一方側X1に向けて搬送する。
【0030】
また、搬送部4は、白印刷部33に対向する印刷媒体Mを下方から支持する白搬送部48を有し、反転搬送部47によって二回上下反転された印刷媒体Mは白搬送部48に進入する。この白搬送部48は、印刷媒体Mの裏面M2に下側から接触するローラ481を有する。こうして、白搬送部48によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、白印刷部33のヘッドユニット331は、この表面M1に上方から対向しつつ白インクを吐出する。
【0031】
また、搬送部4は、上方搬送部43より上方に設けられた搬出部49を有する。搬出部49は、水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ491を有する。この搬出部49は、白搬送部48により搬送されてきた印刷媒体Mを、複数のローラ491によって一方側X1へと搬送することで、筐体31の搬出口312から乾燥装置6へ搬出する。
【0032】
上記のように、印刷装置3のカラー印刷部32および白印刷部33は、ヘッドユニット321、331を有する。続いては、ヘッドユニット321、331が有する吐出ヘッドHと当該吐出ヘッドHにインクを供給、回収、循環させるインク供給・回収・循環機構9について説明する。インク供給・回収・循環機構9は、吐出ヘッド321、331にインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッド321、331からインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cを含んで構成される。なお、ヘッドユニット321、331は共通する基本的構成を具備するとともに、インク供給・回収・循環機構9の基本的な構成もヘッドユニット321、331で共通する。そこで、白インクを吐出するヘッドユニット331に関する構成について説明を行う。
【0033】
図3はヘッドユニットが備える吐出ヘッドの底面を模式的に示す図であり、
図4Aおよび
図4Bは吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cの構成を模式的に示す図である。なお、
図3では、水平方向Xおよび鉛直方向Zの他に、水平方向Xに直交する水平方向Yが示されている。また、
図4Aでは、後述する電源部551から印刷装置3の各部に電力が供給された通電時の状態が示され、
図4Bは当該電源部551から印刷装置3の各部への電力供給が停止した非通電時の状態が示されている。
【0034】
図3に示すように、ヘッドユニット331では、同一の色のインク(白インク)を吐出する複数の吐出ヘッドHが水平方向Yに一列に配列されており、各吐出ヘッドHは底面視において矩形を有する。なお、複数の吐出ヘッドHの配列態様は
図3の例に限られず、複数の吐出ヘッドHは千鳥状に配列されてもよい。
【0035】
図4Aおよび
図4Bに示すように、吐出ヘッドHはハウジングHaを有し、ハウジングHaの底面では、複数のノズルHnが水平方向Yに千鳥状に配列されて開口する。ハウジングHaの内部には、複数のノズルHnにそれぞれ連通する複数のキャビティHbと、複数のキャビティHbに連通するインク供給室Hcとが設けられており、インク供給室Hcから供給されたインクがキャビティHbに貯留される。また、各キャビティHbには圧電素子Eが設けられており、圧電素子Eが駆動信号(電気信号)に応じて変位することで、キャビティHb内のインクに圧力変動を与える。この圧力変動によって、キャビティHbからインクが押し出されて、当該キャビティHbに連通するノズルHnからインクが吐出される。また、吐出ヘッドHの上部では、インク流入口Hdと、インク流出口Heとがそれぞれ開口し、インクは、インク供給機構9aからインク流入口Hdを介してインク供給室Hcに流入し、インク供給室Hcからインク流出口Heを介してインク回収機構9bへ向けて流出する。
【0036】
インク供給機構9aは、吐出ヘッドHへ向けてインクを供給するインク供給部91と、このインク供給部91に対して付与する供給圧力を生成する圧力生成部93とを含む。インク供給部91は、吐出ヘッドHへ供給するインクを貯留する供給タンク91aと、この供給タンク91aから供給されるインクを吐出ヘッドHへ送液する供給配管91bとを含む。インク回収機構9bは、吐出ヘッドHからインクを回収するインク回収部92と、このインク回収部92に対して付与する圧力を生成する圧力生成部94とを含む。インク回収部92は、吐出ヘッドHから回収したインクを貯留する回収タンク92aと、吐出ヘッドHから回収したインクを回収タンク92aへ送液する回収配管92bとを含む。供給タンク91および回収タンク92のそれぞれは、吐出ヘッドHより上方に配置される。インク戻り機構9cは、回収タンク92aと供給タンク91aとを流路接続する戻り配管902と、この戻り配管902の途中の位置に介在された循環ポンプ90と、循環ポンプ90と供給タンク91との間の位置において戻り配管902に設けられた脱気フィルタ901とを備える。そして、循環ポンプ90は、回収タンク92aから供給タンク91aへインクを送り、脱気フィルタ901は、循環ポンプ90から流出して供給タンク91aに流入する前のインクから気体を除去する。かかるインク戻り機構9cは、循環ポンプ90によって、回収タンク92aから供給タンク91aに到る第1経路Caに沿ってインクを送ることができる。
【0037】
インク供給機構9aは、供給タンク91aに圧力P1(負圧)を与える供給側圧力生成部93(以下、「圧力生成部93」と適宜称する)を備える。この圧力生成部93は、圧力タンク931と、圧力タンク931を排気して圧力タンク931に圧力P1を生成する排気ポンプ932と、圧力タンク931にその一端が接続された可撓性のチューブ933とを備える。さらに、インク供給機構9aは、圧力生成部93によって生成された圧力を供給タンク91aに伝達する圧力伝達部97を備える。この圧力伝達部97は、圧力生成部93のチューブ933の他端にその一端971aが連通可能に接続され、その他端971bが供給タンク91a内の雰囲気に臨むように配置され、圧力タンク931内に生成された圧力を供給タンク91aに伝える圧力伝達配管971を有する。つまり、圧力伝達配管971の一端971aが圧力生成部93に取り付けられ、圧力伝達配管971の他端971bが供給タンク91aに取り付けられている。そして、排気ポンプ932によって圧力タンク931内に生成された圧力P1が、チューブ933、圧力伝達配管971を介して供給タンク91に与えられる。
【0038】
これに対して、供給タンク91a内では、インクと雰囲気との境界である気液界面L1より上側に気体(空気)が溜まっている。つまり、供給タンク91a内では、気液界面L1の下側にインクが貯留され、気液界面L1の上側に気体が存在する。したがって、圧力生成部93によって生成された圧力P1(負圧)は、供給タンク91a内の気液界面L1に付与されることとなる。
【0039】
また、インク供給機構9aは、圧力伝達配管971の一端971aと他端971bとの間の位置において圧力伝達配管971に設けられた電磁弁V1を有する。この電磁弁V1は、圧力タンク931と供給タンク91aとの間の雰囲気を連通/遮断することで、圧力タンク931に生成された圧力P1の供給タンク91aへの付与/遮断を実行する。つまり、
図4Aに示すように、通電時においては、電磁弁V1が開いて、圧力タンク931と供給タンク91aとの間の雰囲気が連通し、圧力タンク931からチューブ933、圧力伝達配管971を通じて、供給タンク91aへの圧力P1の付与が実行される。一方、
図4Bに示すように、非通電時においては、電磁弁V1が閉じて、圧力タンク931と供給タンク91aとの間の雰囲気が遮断され、圧力タンク931から供給タンク91aへの圧力P1の付与が停止される。
【0040】
また、インク供給機構9aでは、圧力伝達配管971に逆止フィルタF1が介在されている。この逆止フィルタF1は、供給タンク91aからチューブ933を介して圧力タンク931へ向かう気体の通過を許容しつつ、供給タンク91aからチューブ933を介して圧力タンク931へ向かうインクの通過を禁止する。こうして、供給タンク91aからチューブ933へのインクの流入が逆止フィルタF1により防止されている。
【0041】
インク回収機構9bは、回収タンク92に圧力P2(負圧)を与える回収側圧力生成部94(以下、「圧力生成部94」と適宜称する)を備える。この圧力生成部94は、圧力タンク941と、圧力タンク941を排気して圧力タンク941に圧力P2を生成する排気ポンプ942と、圧力タンク941にその一端が接続された可撓性のチューブ943とを備える。さらに、インク回収機構9bは、圧力生成部94によって生成された圧力を回収タンク92aに伝達する圧力伝達部98を備える。この圧力伝達部98は、圧力生成部94のチューブ943の他端にその一端981aが連通可能に接続されており、その他端981bが回収タンク92a内の雰囲気に臨むように配置され、圧力タンク941内に生成された圧力を回収タンク92aに伝える圧力伝達配管981を備える。つまり、圧力伝達配管981の一端981aが圧力生成部94に取り付けられ、圧力伝達配管981の他端981bが回収タンク92aに取り付けられている。そして、排気ポンプ942によって圧力タンク941内に生成された圧力P2がチューブ943、圧力伝達配管944を介して回収タンク92に与えられる。
【0042】
これに対して、回収タンク92a内では、インクと雰囲気との境界である気液界面L2より上側に気体(空気)が溜まっている。つまり、回収タンク92a内では、気液界面L2の下側にインクが貯留され、気液界面L2の上側に気体が存在する。したがって、圧力生成部94によって生成された圧力P2(負圧)は、回収タンク92a内の気液界面L2に付与されることとなる。
【0043】
また、インク回収機構9bは、圧力伝達配管981の一端981aと他端981bとの間の位置において圧力伝達配管981に設けられた電磁弁V2を有する。この電磁弁V2は、圧力タンク941と回収タンク92aとの間の雰囲気を連通/遮断することで、圧力タンク941に生成された圧力P2の回収タンク92aへの付与/遮断を実行する。つまり、
図4Aに示すように、通電時においては、電磁弁V2が開いて、圧力タンク941と回収タンク92aとの間の雰囲気が連通し、圧力タンク941からチューブ943、圧力伝達配管981を通じて、回収タンク92aへの圧力P2の付与が実行される。一方、
図4Bに示すように、非通電時においては、電磁弁V2が閉じて、圧力タンク941と回収タンク92aとの間の雰囲気が遮断され、圧力タンク941から回収タンク92aへの圧力P2の供給が停止される。
【0044】
また、インク回収機構9bでは、圧力伝達配管981に逆止フィルタF2が介在されている。この逆止フィルタF2は、回収タンク92aからチューブ943を介して圧力タンク941へ向かう気体の通過を許容しつつ、回収タンク92aからチューブ943を介して圧力タンク941へ向かうインクの通過を禁止する。こうして、回収タンク92aからチューブ943へのインクの流入が逆止フィルタF2により防止されている。
【0045】
さらに、回収タンク92aと供給タンク91aとの間には、回収タンク92aの雰囲気と供給タンク91aの雰囲気とを連通可能に接続される連通管963が設けられている。また、この連通管963には、回収タンク92aの雰囲気と供給タンク91aの雰囲気とを連通/遮断するための電磁弁V0が介在されている。つまり、
図4Aに示すように、通電時においては、電磁弁V0が閉じて、供給タンク91aの雰囲気と回収タンク92aの雰囲気とは遮断され、供給タンク91a内の雰囲気の圧力P1と回収タンク92a内の雰囲気の圧力P2とはそれぞれ独立した状態となる。一方、
図4Bに示すように、非通電時においては、電磁弁V0が開いて、供給タンク91aの雰囲気と回収タンク92aの雰囲気とが連通して、供給タンク91a内の雰囲気の圧力と回収タンク92a内の雰囲気の圧力とは、同一の圧力P0となる。これによって、供給タンク91a内の気液界面L1および回収タンク92a内の気液界面L2には、圧力P0が付与されることとなる。この圧力P0は、圧力P2より高くて圧力P1より低い負圧である。
【0046】
図4Aに示す状態では、圧力生成部94が、チューブ943、電磁弁V2、圧力伝達配管981を通じて、回収タンク92aに付与する圧力P2は、圧力生成部93が、チューブ933、電磁弁V1、圧力伝達配管971を通じて、供給タンク91aに付与する圧力P1より低い。この圧力P2と圧力P1との差によって、供給タンク91aから吐出ヘッドHのインク供給室Hcを介して回収タンク92aに到る第2経路Cbに沿ってインクが流れる。また、第2経路Cbに沿って回収タンク92aに流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ90により供給タンク91aに戻される。こうして、供給タンク91aから吐出ヘッドHを介して回収タンク92aに到達した後に供給タンク91aに戻る循環経路(第2経路Cb+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0047】
インク供給・回収・循環機構9はバッファタンク95を備え、バッファタンク95は、供給タンク91aおよび回収タンク92aより多量のインクを貯留することができる。また、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と供給タンク91aとを流路接続する配管951と、バッファタンク95と回収タンク92aとを流路接続する配管952とを備える。つまり、バッファタンク95は、配管951を介して供給タンク91aと連通し、配管952を介して回収タンク92aと連通する。
【0048】
さらに、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と供給タンク91aとの間で配管951に取り付けられた回収ポンプ961と、バッファタンク95と回収タンク92aとの間で配管952に取り付けられた供給ポンプ962とを備える。したがって、回収ポンプ961によって、供給タンク91aから配管951を介してバッファタンク95へインクを回収し、供給ポンプ962によってバッファタンク95から配管952を介して回収タンク92aにインクを供給できる。
【0049】
このように構成されたインク供給・回収・循環機構9では、回収ポンプ961および供給ポンプ962を動作させることで、供給タンク91aからバッファタンク95を介して回収タンク92aに到る第3経路Ccに沿ってインクが流れる。また、第3経路Ccに沿って回収タンク92aに流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ90により供給タンク91aに戻される。こうして、供給タンク91aからバッファタンク95を介して回収タンク92aに到達した後に供給タンク91aに戻る循環経路(第3経路Cc+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0050】
さらに、供給タンク91aに対しては、供給タンク91a内の雰囲気の圧力を測定する圧力センサSpが設けられている。つまり、圧力センサSpは、供給タンク91a内の気液界面L1に付与される圧力を測定し、その結果である測定圧力を出力する。この圧力センサSpは、後述するように、非通電時において、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの漏洩が発生する時刻を予測するために用いられる。また、非通電時には、上述の通り、供給タンク91a内の気液界面L1に付与される圧力と、回収タンク92a内の気液界面L2に付与される圧力とは等しい。したがって、圧力センサSpは、供給タンク91a内の気液界面L1と、回収タンク92a内の気液界面L2とに共通して付与される圧力を測定する。
【0051】
図5は印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、印刷装置3は、装置全体を統括的に制御する制御部51を備える。制御部51は、例えばCPU(Central Processing Unit)あるいはFPGA(Field-Programmable
Gate Array)で構成される。この制御部51は、循環ポンプ制御部511、回収ポンプ制御部512、供給ポンプ制御部513、排気ポンプ制御部514、排気ポンプ制御部515、測定圧力取得部516、ディスプレイ制御部517、通信制御部518、漏洩時刻予測部519および電源監視部520を有する。制御部51がCPU等のプロセッサである場合には、制御部51が所定のプログラムを実行することで、これらの機能部511~520の各制御が制御部51に展開される。また、制御部51がFPGAである場合には、これらの機能部511~520の機能を実行する論理回路がFPGAに実装される。
【0052】
循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の動作を制御する。つまり、循環ポンプ90は、循環ポンプ制御部511の制御に基づき、回収タンク92aから供給タンク91aにインクを送液する。回収ポンプ制御部512は、回収ポンプ961の動作を制御する。つまり、回収ポンプ961は、回収ポンプ制御部512の制御に基づき、供給タンク91aからバッファタンク95にインクを送液する。また、供給ポンプ制御部513は、供給ポンプ962の動作を制御する。つまり、供給ポンプ962は、供給ポンプ制御部513の制御に基づき、バッファタンク95から回収タンク92aにインクを送液する。
【0053】
また、排気ポンプ制御部514は、排気ポンプ932の動作を制御する。具体的には、排気ポンプ932が圧力タンク931を排気して、圧力タンク931内に圧力P1(負圧)が生成されるように、排気ポンプ制御部514は、排気ポンプ932を制御する。また、排気ポンプ制御部515は、排気ポンプ942の動作を制御する。具体的には、排気ポンプ942が圧力タンク941を排気して、圧力タンク941内に圧力P1より低い圧力P2(負圧)が生成されるように、排気ポンプ制御部515は、排気ポンプ942を制御する。これによって、
図4Aに示す通電時においては、供給タンク91a内の気液界面L1に圧力P1が付与されるとともに、回収タンク92a内の気液界面L2に圧力P2が付与されて、圧力P1と圧力P2との圧力差によって、供給タンク91aから吐出ヘッドHを介して回収タンク92aにインクが送液される。
【0054】
測定圧力取得部516は、圧力センサSpにより測定された供給タンク91a内の雰囲気の圧力(測定圧力)を取得する。ディスプレイ制御部517は、印刷装置3に具備されたディスプレイ391に表示される情報を制御する。このディスプレイ391は、例えばタッチパネルディスプレイによって構成される。また、通信制御部518は、印刷装置3に具備された通信部392を制御する。通信部392は、印刷装置3の設置環境に設けられたネットワークを介して他の機器と通信を行い、例えば、作業者が操作するパッドやスマートフォン等の端末装置と通信を行うことができる。さらに、漏洩時刻予測部519は、後に説明するように、非通電時において吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの漏洩が発生する時刻を予測する。また、電源監視部520は、後述する電源ユニット55の状態を監視する。
【0055】
また、印刷装置3は、HDD(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)等で構成された記憶部53を備える。この記憶部53は、測定データ記憶部531を有し、この測定データ記憶部531には、後述する圧力変化測定データDpが記憶される。
【0056】
さらに、印刷装置3は、電源ユニット55を備える。この電源ユニット55は、電源部551と、補助電源部552とを有する。補助電源部552は、無停電電源装置あるいはスーパーキャパシタであって、電源部551から供給される電力を蓄える。そして、電源部551が電力供給を停止すると、電源部551に代わって補助電源部552が電力供給を開始する。
【0057】
電源部551は上述の電磁弁V0~V2に電力を供給する。つまり、電磁弁V0は、電源部551から供給される電力によって、
図4Aに示すように閉じ、電磁弁V1および電磁弁V2は、電源部551から供給される電力によって、
図4Aに示すように開く。一方、電源部551から電磁弁V0~V2への電力供給が停止すると、電磁弁V0は
図4Bに示すように開き、電磁弁V1および電磁弁V2は
図4Bに示すように閉じる。
【0058】
また、電源部551は、循環ポンプ90、回収ポンプ961、供給ポンプ962、排気ポンプ932および排気ポンプ942に電力を供給する。つまり、循環ポンプ90、回収ポンプ961、供給ポンプ962、排気ポンプ932および排気ポンプ942のそれぞれは、電源部551から供給される電力によって動作する。したがって、この電力の供給が停止すると、循環ポンプ90、回収ポンプ961、供給ポンプ962、排気ポンプ932および排気ポンプ942は動作を停止する。
【0059】
制御部51、記憶部53、圧力センサSp、ディスプレイ391および通信部392に対しては、電源部551および補助電源部552のそれぞれが接続されている。つまり、電源部551から電力が供給された状態では、制御部51、記憶部53、圧力センサSp、ディスプレイ391および通信部392は、電源部551から供給された電力によって動作する。一方。電源部551からの電力の供給が停止した状態では、制御部51、記憶部53、圧力センサSp、ディスプレイ391および通信部392は、補助電源部552から供給される電力によって動作する。これに対して、制御部51の電源監視部520は、電源部551が制御部51への電力供給を実行しているか、停止しているかを判定する。
【0060】
図6は印刷装置において実行されるインク漏洩管理の一例を示すフローチャートである。ステップS101では、電源ユニット55の電源部551から制御部51への電力供給が停止されたか否かが、電源監視部520によって判定される。電源部551から制御部51への電力供給が停止された場合(ステップS101で「YES」の場合)には、補助電源部552から制御部51に供給される電力によってステップS102~S107が実行される。
【0061】
ちなみに、上述のように、電源部551からの電力供給が停止した非通電時には、
図4Bに示すように電磁弁V1および電磁弁V2が閉じるとともに電磁弁V0が開いて、供給タンク91a内の気液界面L1と回収タンク92a内の気液界面L2とには同一の圧力P0が付与される。そして、この圧力P0によって、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの漏洩が防止される。つまり、供給タンク91aおよび回収タンク92aは、吐出ヘッドHより上側に配置され、供給タンク91a内の気液界面L1および回収タンク92aの気液界面L2は、吐出ヘッドHのノズルHnよりも上側に位置する。したがって、気液界面L1、L2とノズルHnとの間には、これらの高さの差に応じた水頭圧が発生する。そこで、圧力P0は、この水頭圧に抗して、気液界面L1、L2からノズルHnまでのインクを支持できる負圧に設定されている。
【0062】
ただし、供給タンク91aおよび回収タンク92aそれぞれの気液界面L1、L2に付与される圧力は、圧力P0に維持されるわけではなく、時間経過とともに徐々に圧力P0から上昇する。そこで、ステップS102~S107では、供給タンク91aおよび回収タンク92aそれぞれの気液界面L1、L2に付与される圧力を圧力センサSpにより測定した測定圧力に基づき、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの漏洩が発生する時刻が予測されて、作業者に報知される。
【0063】
つまり、ステップS102では、供給タンク91aおよび回収タンク92aそれぞれの気液界面L1、L2に付与される圧力が圧力センサSpによって測定され、圧力センサSpによって測定されたこの圧力(測定圧力)が圧力センサSpから測定圧力取得部516に送信される。そして、漏洩時刻予測部519は、測定圧力取得部516によって取得された測定圧力と、記憶部53内に保存された圧力変化測定データDpとを対比し(ステップS103)、この対比結果に基づき漏洩発生時刻を予測する(ステップS104)。
【0064】
図7Aは
図6のステップS103で測定圧力と対比される圧力変化測定データを模式的に示す図であり、
図7Bは
図6のステップS104で実行される漏洩発生時刻の予測方法を模式的に示す図である。
図7Aに示すように、圧力変化測定データDpは、非通電時において、供給タンク91aおよび回収タンク92a内の気液界面L1、L2に付与される圧力(縦軸)が時間(横軸)の経過とともに圧力P0から上昇するといった当該圧力の時間変化を示す。この圧力変化測定データDpは、例えば印刷装置3を工場から出荷する際に予め測定されて、記憶部53の測定データ記憶部531に保存される。圧力変化測定データDpの形式は、時間と圧力とを対応付けたテーブル形式でも良いし、時間と圧力との関係を示す数式でも良い。
【0065】
一方、
図7Bに示すように、漏洩時刻予測部519は、ステップS102で取得された測定圧力Pmに対応する時刻Tmを圧力変化測定データDpから求める(ステップS103)。この時刻Tmは、圧力変化測定データDpを取得する測定において、供給タンク91aおよび回収タンク92a内の気液界面L1、L2に付与される圧力が測定圧力Pmとなった時刻に相当する。さらに、漏洩時刻予測部519は、限界圧力Plに対応する限界時刻Tlを圧力変化測定データDpから求める。この限界時刻Tlは、圧力変化測定データDpを取得する測定において、供給タンク91aおよび回収タンク92a内の気液界面L1、L2に付与される圧力が限界圧力Plとなった時刻に相当する。ここで、限界圧力Plは、吐出ヘッドHのノズルHnからインクの漏洩を防止するために最低限必要となる負圧であり、供給タンク91aおよび回収タンク92a内の気液界面L1、L2に付与される圧力が限界圧力Plより大きくなると、吐出ヘッドHのノズルHnからインクが漏洩する。そして、漏洩時刻予測部519は、ステップS102で測定圧力Pmが取得された時刻Tmと、時刻Tmから限界時刻Tlまでの時間間隔ΔTを加えた時刻(=Tm+ΔT)を、漏洩発生時刻として算出する(ステップS104)。
【0066】
ステップS105では、ディスプレイ391が漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)を表示するように、ディスプレイ制御部517がディスプレイ391を制御する。ステップS106では、通信部392が作業者の端末装置に漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)を送信するように、通信制御部518が通信部392を制御する。なお、ステップS105、S106の実行順序は、ここの例に限られず、逆でも良いし、同時でも良い。
【0067】
ステップS107では、電源部551からの電力供給が復旧したか否かが電源監視部520によって判定される。具体的には、補助電源部552から制御部51に電力が供給されている場合には、電源部551からの電力供給が復旧していないと判定され(ステップS106で「N0」)、ステップS102に戻る一方、電源部551から制御部51に電力が供給されている場合には、電源部551からの電力供給が復旧したと判定され(ステップS106で「YES」)、
図6のフローチャートが終了する。
【0068】
以上に説明する実施形態では、供給タンク91a(対象タンク)内の雰囲気の圧力を測定する圧力センサSp(圧力測定部)が設けられている。そして、電源部551からの電力の供給が停止した電力供給停止時(ステップS102~S106)において、圧力センサSpの測定圧力Pmが取得され(ステップS102)、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの漏洩が発生する漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)が、当該測定圧力Pmに基づき予測される(ステップS103、S104)。つまり、供給タンク91aおよび回収タンク92aの雰囲気の負圧を実際に測定した結果である測定圧力Pmに基づき、漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)が予測される。こうして予測された漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)は作業者に報知される(ステップS105、S106)。その結果、インクを吐出するノズルHnを有する吐出ヘッドHを備えた印刷装置3において電力供給が停止した際に、吐出ヘッドHのノズルHnからのインクの漏洩が発生するまでの適切なタイミングで作業者が復旧作業を実行することが可能となっている。
【0069】
また、記憶部53は、電源部551から電磁弁V1(第1電磁弁)、電磁弁V2(第2電磁弁)および電磁弁V0(バイパス電磁弁)への電力を供給が停止した状態において(ステップS102~S106)、供給タンク91a内の雰囲気の圧力の時間変化を測定した圧力変化測定データDpを記憶する測定データ記憶部531を有する。そして、漏洩時刻予測部519は、電力供給停止時(ステップS102~S106)において測定圧力取得部516が取得した測定圧力Pmと、測定データ記憶部531に記憶された圧力変化測定データDpとに基づき、漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)を予測する。かかる構成では、電源部551からの電力供給が停止した状態において、供給タンク91aおよび回収タンク92a内の雰囲気の圧力の時間変化を予め測定した結果である圧力変化測定データDpが測定データ記憶部531に記憶されている。そして、電力供給停止時(ステップS102~S106)において供給タンク91aおよび回収タンク92aの雰囲気の圧力を測定することで取得される測定圧力Pmと、測定データ記憶部531に記憶された圧力変化測定データDpとに基づき、漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)が予測される(ステップS103、S104)。これによって、漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)を高精度に予測することができる。
【0070】
また、作業者に情報を表示するディスプレイ391が設けられ、制御部51には、漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)がディスプレイ391に表示されるように、ディスプレイ391を制御するディスプレイ制御部517が設けられている。かかる構成では、作業者は、ディスプレイ391に表示された漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)を確認することで、復旧作業を適切なタイミングで実行することができる。
【0071】
また、作業者の端末装置と通信を行う通信部392が設けられ、制御部51には、漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)が通信部392から端末装置へ送信されるように、通信部392を制御する通信制御部518が設けられている。かかる構成では、作業者は、端末装置が受信した漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)を確認することで、復旧作業を適切なタイミングで実行することができる。
【0072】
また、電源部551から供給された電力を蓄える補助電源部552が具備されている。そして、電源部551が電力の供給を停止している状態において、圧力センサSp、制御部51、ディスプレイ391および通信部392は、補助電源部552から供給される電力によって動作する。かかる構成では、電源部551からの電力供給が停止した状況であっても、圧力センサSp、制御部51、ディスプレイ391および通信部392を補助電源部552から供給される電力によって動作させて、測定圧力Pmの取得(ステップS102),漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)の予測(ステップS103、S104)および漏洩発生時刻(=Tm+ΔT)の報知(ステップS105、S106)を確実に実行することができる。
【0073】
以上に説明した実施形態では、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、ディスプレイ391が本発明の「ディスプレイ」の一例に相当し、通信部392が本発明の「通信部」の一例に相当し、ディスプレイ391および通信部392が本発明の「報知部」の一例に相当し、制御部51が本発明の「制御部」の一例に相当し、測定圧力取得部516が本発明の「測定圧力取得部」の一例に相当し、ディスプレイ制御部517および通信制御部518が本発明の「報知制御部」の一例に相当し、漏洩時刻予測部519が本発明の「漏洩時刻予測部」の一例に相当し、記憶部53が本発明の「記憶部」の一例に相当し、測定データ記憶部531が本発明の「測定データ記憶部」の一例に相当し、電源部551が本発明の「電源部」の一例に相当し、補助電源部552が本発明の「補助電源部」の一例に相当し、供給タンク91aが本発明の「供給タンク」の一例に相当し、供給配管91bが本発明の「供給配管」の一例に相当し、回収タンク92aが本発明の「回収タンク」の一例に相当し、回収配管92bが本発明の「回収配管」の一例に相当し、圧力生成部93が本発明の「第1圧力生成部」の一例に相当し、圧力生成部94が本発明の「第2圧力生成部」の一例に相当し、連通管963が本発明の「バイパス配管」の一例に相当し、圧力伝達配管971が本発明の「第1圧力伝達配管」の一例に相当し、一端971aが本発明の「第1一端」の一例に相当し、他端971bが本発明の「第1他端」の一例に相当し、圧力伝達配管981が本発明の「第2圧力伝達配管」の一例に相当し、一端981aが本発明の「第2一端」の一例に相当し、他端981bが本発明の「第2他端」の一例に相当し、圧力変化測定データDpが本発明の「圧力変化測定データ」の一例に相当し、吐出ヘッドHが本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、ノズルHnが本発明の「ノズル」の一例に相当し、圧力センサSpが本発明の「圧力測定部」の一例に相当し、電磁弁V0が本発明の「バイパス電磁弁」の一例に相当し、電磁弁V1が本発明の「第1電磁弁」の一例に相当し、電磁弁V2が本発明の「第2電磁弁」の一例に相当する。
【0074】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、圧力変化測定データDpを用いずに、漏洩発生時刻を予測してもよい。具体的には、測定圧力Pmを所定のサンプリング周期で取得して、測定圧力Pmの時間変化に対して回帰分析を行うことで、測定圧力Pmが限界圧力Plとなる時刻を予測してもよい。
【0075】
また、圧力センサSpを設ける場所は、供給タンク91a内に限られず、回収タンク92a内でもよい。あるいは、供給タンク91aと回収タンク92aとを連通する連通管963内の気体の圧力を測定するように、圧力センサSpを設けてもよい。
【0076】
また、ディスプレイ391および通信部392の両方を用いて漏洩発生時刻を報知する必要はなく、いずれか一方によって漏洩発生時刻を作業者に報知してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、吐出ヘッドのノズルからインクを吐出することで印刷を行う技術の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0078】
3…印刷装置
391…ディスプレイ
392…通信部
51…制御部
516…測定圧力取得部
517…ディスプレイ制御部
518…通信制御部
519…漏洩時刻予測部
Sp…圧力センサ