(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139839
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】印刷装置およびフィルタ詰まり判定方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20230927BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20230927BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B41J2/175 201
B41J2/01 451
B41J2/175 301
B41J2/175 121
B41J2/18
B41J2/175 115
B41J2/175 133
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045571
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【弁理士】
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】秋山 侑介
(72)【発明者】
【氏名】秋吉 保紀
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA26
2C056EB21
2C056EB38
2C056EB50
2C056EB59
2C056EC17
2C056EC20
2C056EC26
2C056EC32
2C056EC40
2C056EC64
2C056EE18
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA47
2C056KB16
2C056KB26
(57)【要約】
【課題】印刷装置に設けられたフィルタの詰まりの発生を判定可能とする。
【解決手段】補給ポンプ962が補給出力増大動作を実行している際の回収タンク92a内に貯留されるインクの液位Lrの時間変化に基づき、回収フィルタFlrの詰まりの有無が判定される。つまり、回収フィルタFlrを介した補給ポンプ962から回収タンク92aへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、回収フィルタFlrの詰まりの発生を判定することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、
前記インクを貯留するリザーバタンクと、
前記リザーバタンクと前記吐出ヘッドとを流路接続し、前記リザーバタンクと前記吐出ヘッドとの間で前記インクを送液する接続配管と、
前記リザーバタンクに前記インクを送液する送液ポンプと、
前記リザーバタンクと前記送液ポンプとを流路接続して前記送液ポンプにより送液される前記インクを前記リザーバタンクへ送液する送液配管と、
前記送液ポンプと前記リザーバタンクとの間における前記送液配管の途中の位置において前記送液配管に着脱可能に取り付けられたフィルタと、
前記リザーバタンクに対して設けられて前記リザーバタンク内の前記インクの液位を検出する液位検出部と、
制御部と
を備え、
前記制御部は、前記送液ポンプを制御するポンプ制御部と、前記液位検出部により検出された前記液位を取得する液位取得部と、前記フィルタの詰まりの有無を判定するフィルタ詰まり判定部とを備え、
前記ポンプ制御部は、前記液位取得部が取得する前記液位に基づき、前記リザーバタンク内の前記インクの不足を確認した場合には、前記フィルタを介して前記リザーバタンクに前記インクを送液するための出力を増大させる出力増大動作を前記送液ポンプに実行させ、
前記フィルタ詰まり判定部は、前記送液ポンプが前記出力増大動作の実行後において前記液位取得部が取得する前記液位の時間変化に基づき前記フィルタの詰まりの有無を判定する印刷装置。
【請求項2】
前記フィルタ詰まり判定部は、前記送液ポンプが前記出力増大動作を開始してから所定の経過時間が経過した時点において、前記リザーバタンク内の前記インクの不足が解消していないことを、前記液位取得部が取得する前記液位に基づき確認した場合には、前記フィルタの詰まりが有ると判定する請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記インクを貯留する回収タンクと、
前記回収タンクと前記吐出ヘッドとを流路接続し、前記吐出ヘッドから前記回収タンクへ前記インクを送液する回収配管と
をさらに備え、
前記リザーバタンクは、前記吐出ヘッドに供給される前記インクを貯留する供給タンクであり、
前記接続配管は、前記供給タンクと前記吐出ヘッドとを流路接続し、前記供給タンクから前記吐出ヘッドへ前記インクを送液する供給配管であり、
前記送液配管は、前記送液ポンプを介して前記回収タンクと前記供給タンクとを流路接続する戻り配管であり、
前記送液ポンプは、前記戻り配管の途中の位置に設けられて前記回収タンクと前記供給タンクとの間に配置され、前記回収タンクから前記供給タンクへ前記インクを送液する循環ポンプであり、
前記フィルタは、前記循環ポンプと前記供給タンクとの間における前記戻り配管の途中の位置において前記戻り配管に着脱可能に取り付けられた供給フィルタであり、
前記液位検出部は、前記供給タンク内の前記インクの前記液位である供給液位を検出する供給液位検出部であり、
前記ポンプ制御部は、前記循環ポンプを制御する循環ポンプ制御部であり、
前記液位取得部は、前記供給液位検出部により検出された前記供給液位を取得する供給液位取得部であり、
前記フィルタ詰まり判定部は、前記供給フィルタの詰まりの有無を判定する供給フィルタ詰まり判定部であり、
前記循環ポンプ制御部は、前記供給液位取得部が取得する前記供給液位に基づき、前記供給タンク内の前記インクの不足を確認した場合には、前記供給フィルタを介して前記供給タンクに前記インクを送液するための出力を増大させる前記出力増大動作である循環出力増大動作を前記循環ポンプに実行させ、
前記供給フィルタ詰まり判定部は、前記循環ポンプが前記循環出力増大動作の実行後において前記供給液位取得部が取得する前記供給液位の時間変化に基づき前記供給フィルタの詰まりの有無を判定する請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記インクを貯留するバッファタンクと、
前記バッファタンクと前記回収タンクとを流路接続して、前記バッファタンクから前記回収タンクに前記インクを送液する補給配管と、
前記補給配管の途中の位置に設けられて、前記バッファタンクと前記回収タンクとの間に配置され、前記バッファタンクから前記回収タンクに前記インクを送液する補給ポンプと、
前記補給ポンプと前記回収タンクとの間における前記補給配管の途中の位置において前記補給配管に着脱可能に取り付けられた回収フィルタと、
前記回収タンクに対して設けられて前記回収タンク内の前記インクの液位である回収液位を検出する回収液位検出部と
をさらに備え、
前記制御部は、前記補給ポンプを制御する補給ポンプ制御部と、前記回収液位検出部により検出された前記回収液位を取得する回収液位取得部と、前記回収フィルタの詰まりの有無を判定する回収フィルタ詰まり判定部とを備え、
前記補給ポンプ制御部は、前記回収液位取得部が取得する前記回収液位に基づき、前記回収タンク内の前記インクの不足を確認した場合には、前記回収フィルタを介して前記回収タンクに前記インクを送液するための出力を増大させる前記出力増大動作である補給出力増大動作を前記補給ポンプに実行させ、
前記回収フィルタ詰まり判定部は、前記補給ポンプが前記補給出力増大動作の実行後において前記回収液位取得部が取得する前記回収液位の時間変化に基づき前記回収フィルタの詰まりの有無を判定する請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記インクを貯留するバッファタンクをさらに備え、
前記リザーバタンクは、前記吐出ヘッドから回収された前記インクを貯留する回収タンクであり、
前記接続配管は、前記回収タンクと前記吐出ヘッドとを流路接続し、前記吐出ヘッドから前記回収タンクへ前記インクを送液する回収配管であり、
前記送液配管は、前記送液ポンプを介して前記バッファタンクと前記回収タンクとを流路接続する補給配管であり、
前記送液ポンプは、前記補給配管の途中の位置に設けられて、前記バッファタンクと前記回収タンクとの間に配置され、前記バッファタンクから前記回収タンクへ前記インクを送液する補給ポンプであり、
前記フィルタは、前記補給ポンプと前記回収タンクとの間における前記補給配管の途中の位置において前記補給配管に着脱可能に取り付けられた回収フィルタであり、
前記液位検出部は、前記回収タンク内の前記インクの前記液位である回収液位を検出する回収液位検出部であり、
前記ポンプ制御部は、前記補給ポンプを制御する補給ポンプ制御部であり、
前記液位取得部は、前記回収液位検出部により検出された前記回収液位を取得する回収液位取得部であり、
前記フィルタ詰まり判定部は、前記回収フィルタの詰まりの有無を判定する回収フィルタ詰まり判定部であり、
前記補給ポンプ制御部は、前記回収液位取得部が取得する前記回収液位に基づき、前記回収タンク内の前記インクの不足を確認した場合には、前記回収フィルタを介して前記回収タンクに前記インクを送液するための出力を増大させる前記出力増大動作である補給出力増大動作を前記補給ポンプに実行させ、
前記回収フィルタ詰まり判定部は、前記補給ポンプが前記補給出力増大動作の実行後において前記回収液位取得部が取得する前記回収液位の時間変化に基づき前記回収フィルタの詰まりの有無を判定する請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項6】
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置であって、
前記吐出ヘッドに補給される前記インクを貯留するバッファタンクと、
前記バッファタンクに送液される前記インクを貯留するメインタンクと、
前記メインタンクと前記バッファタンクとを流路接続して、前記メインタンクから前記バッファタンクに前記インクを送液するメイン配管と、
前記メイン配管の途中の位置に設けられて、前記メインタンクと前記バッファタンクとの間に配置され、前記メインタンクから前記バッファタンクに前記インクを送液するメインポンプと、
前記メインポンプと前記バッファタンクとの間における前記メイン配管の途中の位置において前記メイン配管に着脱可能に取り付けられたメインフィルタと、
前記メイン配管に取り付けられて、前記メインフィルタを通過する前記インクの流量に関連する流量関連値を計測する計測部と、
記憶部と、
制御部と
を備え、
前記記憶部は、前記メインフィルタに詰まりがない場合における前記メインポンプの出力と前記計測部により計測される前記流量関連値との関係である基準関係を記憶する基準関係記憶部を備え、
前記制御部は、前記メインポンプを制御するメインポンプ制御部と、前記計測部により計測された前記流量関連値を取得する流量関連値取得部と、前記メインフィルタの詰まりの有無を判定するメインフィルタ詰まり判定部とを備え、
前記メインポンプ制御部は、前記メインフィルタを介して前記バッファタンクに前記インクを送液するための出力を前記メインポンプに発生させ、
前記メインフィルタ詰まり判定部は、前記メインポンプが発生する前記出力である実出力と、前記メインポンプが前記実出力を発生している際に前記流量関連値取得部が取得した前記流量関連値である実流量関連値とを取得し、前記実出力と前記実流量関連値との関係と前記基準関係との比較に基づき、前記メインフィルタの詰まりの有無を判定する印刷装置。
【請求項7】
前記計測部は、前記メインフィルタと前記バッファタンクとの間における前記メイン配管の途中の位置で前記インクの流量を前記流量関連値として計測する流量計である請求項6に記載の印刷装置。
【請求項8】
前記計測部は、前記メインポンプと前記メインフィルタとの間における前記メイン配管の途中の位置で前記インクの圧力を前記流量関連値として計測する圧力計である請求項6に記載の印刷装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記基準関係を取得する基準関係取得部をさらに備え、
前記基準関係取得部は、新品の前記メインフィルタが前記メイン配管に装着されると、前記メインポンプに基準出力を発生させつつ前記計測部に前記流量関連値を計測させて、前記計測部により計測された前記流量関連値を基準流量関連値として取得し、前記基準出力と前記基準流量関連値との関係を前記基準関係として取得し、
前記基準関係記憶部は、前記基準関係取得部により取得された前記基準関係を記憶する請求項6ないし8のいずれか一項に記載の印刷装置。
【請求項10】
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、前記インクを貯留するリザーバタンクと、前記リザーバタンクと前記吐出ヘッドとを流路接続し、前記リザーバタンクと前記吐出ヘッドとの間で前記インクを送液する接続配管と、前記リザーバタンクに前記インクを送液する送液ポンプと、前記リザーバタンクと前記送液ポンプとを流路接続して前記送液ポンプにより送液される前記インクを前記リザーバタンクへ送液する送液配管と、前記送液ポンプと前記リザーバタンクとの間における前記送液配管の途中の位置において前記送液配管に着脱可能に取り付けられたフィルタとを備えた印刷装置において、前記フィルタの詰まりを判定するフィルタ詰まり判定方法であって、
前記リザーバタンクに対して設けられて前記リザーバタンク内の前記インクの液位を検出する液位検出部により検出された前記液位を液位取得部により取得する工程と、
前記液位取得部により取得された前記液位に基づき、前記リザーバタンク内の前記インクの不足を確認した場合には、前記フィルタを介して前記リザーバタンクに前記インクを送液するための出力を増大させる出力増大動作を前記送液ポンプに実行させる工程と、
前記送液ポンプが前記出力増大動作の実行後において前記液位取得部が取得する前記液位の時間変化に基づき前記フィルタの詰まりの有無を判定する工程と
を備えるフィルタ詰まり判定方法。
【請求項11】
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドに補給される前記インクを貯留するバッファタンクと、前記バッファタンクに送液される前記インクを貯留するメインタンクと、前記メインタンクと前記バッファタンクとを流路接続して、前記メインタンクから前記バッファタンクに前記インクを送液するメイン配管と、前記メイン配管の途中の位置に設けられて、前記メインタンクと前記バッファタンクとの間に配置され、前記メインタンクから前記バッファタンクに前記インクを送液するメインポンプと、前記メインポンプと前記バッファタンクとの間における前記メイン配管の途中の位置において前記メイン配管に着脱可能に取り付けられたメインフィルタとを備えた印刷装置において前記メインフィルタの詰まりを判定するフィルタ詰まり判定方法であって、
前記メインフィルタを介して前記バッファタンクに前記インクを送液するために前記メインポンプが発生する出力である実出力を取得する工程と、
前記メイン配管に取り付けられて、前記メインフィルタを通過する前記インクの流量に関連する流量関連値を計測する計測部が、前記メインポンプが前記実出力を発生している際に計測した前記流量関連値である実流量関連値を取得する工程と、
前記メインフィルタに詰まりがない場合における前記メインポンプの出力と前記計測部により計測される前記流量関連値との関係である基準関係を記憶部から読み出す工程と、
前記実出力と前記実流量関連値との関係と前記基準関係との比較に基づき、前記メインフィルタの詰まりの有無を判定する工程と
を備えたフィルタ詰まり判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷装置で使用されるインクから異物を除去するフィルタの詰まりの有無を判定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1、2に記載のように、吐出ヘッドから印刷媒体にインクを吐出することで印刷を行うインクジェット式の印刷装置では、吐出ヘッドにインクを供給するために供給タンクおよび回収タンクが用いられる場合がある。この場合、インクは供給タンクから吐出ヘッドを介して回収タンクにインクを送液する経路と、回収タンクから供給タンクへインクを送液する経路とが設けられ、インクはこれらの経路で構成される循環経路において循環的に送液される。これに対して、吐出ヘッドは、循環経路に沿って送液されるインクを吐出する。インクの吐出に伴って循環経路内のインクが減少すると、バッファタンクから循環経路(具体的には、供給タンクあるいは回収タンク)にインクが補給される。さらに、特許文献1に示されるように、バッファタンクのインクの減少に応じて、メインタンクからバッファタンクにインクが補給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-101516号公報
【特許文献2】特開2020-044823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1、2では、増粘成分等の異物をインクから除去するためにフィルタが用いられる。つまり、インクがフィルタを通過する際に、インクに含まれる異物がフィルタに付着してインクから除去される。このようにフィルタに付着する異物は、フィルタの使用に伴って増大する。その結果、フィルタに付着する異物がインクの流れを阻害するフィルタ詰まりによって、供給できるインクの量が低下するといった問題が発生する。したがって、フィルタの詰まりの有無を的確に判定して、適切なタイミングでフィルタを交換することが求められる。
【0005】
このようなフィルタ詰まりを判定するために、圧力計あるいは流量計を用いることが考えられる。前者の場合には、フィルタに向けてインクを送液するポンプの入口の近傍に設けた圧力計と、ポンプの出口とフィルタの入口との間に設けた圧力計とのそれぞれが計測する圧力の差、すなわち2点間での圧力変化に基づきフィルタ詰まりの発生を判定できると考えられる。また、後者の場合には、フィルタに向けてインクを送液するポンプの入口の近傍またはフィルタの出口の近傍に設けた流量計で、供給されるインクの流量低下を感知することで、フィルタ詰まりの発生を判定できると考えられる。
【0006】
ところで、例えばインクの加温等によって粘度等のインクの状態は変化しうる。そのため、上記のような2点間での圧力変化や流量変化を用いた手法では、これらの変化がインクの状態変化の影響を受けてしまい、これらの変化に基づきフィルタ詰まりの発生を判定することが必ずしも適当でない場合があった。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、印刷装置に設けられたフィルタの詰まりの発生を判定可能とする技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一態様に係る印刷装置は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、インクを貯留するリザーバタンクと、リザーバタンクと吐出ヘッドとを流路接続し、リザーバタンクと吐出ヘッドとの間でインクを送液する接続配管と、リザーバタンクにインクを送液する送液ポンプと、リザーバタンクと送液ポンプとを流路接続して送液ポンプにより送液されるインクをリザーバタンクへ送液する送液配管と、送液ポンプとリザーバタンクとの間における送液配管の途中の位置において送液配管に着脱可能に取り付けられたフィルタと、リザーバタンクに対して設けられてリザーバタンク内のインクの液位を検出する液位検出部と、制御部とを備え、制御部は、送液ポンプを制御するポンプ制御部と、液位検出部により検出された液位を取得する液位取得部と、フィルタの詰まりの有無を判定するフィルタ詰まり判定部とを備え、ポンプ制御部は、液位取得部が取得する液位に基づき、リザーバタンク内のインクの不足を確認した場合には、フィルタを介してリザーバタンクにインクを送液するための出力を増大させる出力増大動作を送液ポンプに実行させ、フィルタ詰まり判定部は、送液ポンプが出力増大動作の実行後において液位取得部が取得する液位の時間変化に基づきフィルタの詰まりの有無を判定する。
【0009】
本発明の第一態様に係るフィルタ詰まり判定方法は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、インクを貯留するリザーバタンクと、リザーバタンクと吐出ヘッドとを流路接続し、リザーバタンクと吐出ヘッドとの間でインクを送液する接続配管と、リザーバタンクにインクを送液する送液ポンプと、リザーバタンクと送液ポンプとを流路接続して送液ポンプにより送液されるインクをリザーバタンクへ送液する送液配管と、送液ポンプとリザーバタンクとの間における送液配管の途中の位置において送液配管に着脱可能に取り付けられたフィルタとを備えた印刷装置において、フィルタの詰まりを判定するフィルタ詰まり判定方法であって、リザーバタンクに対して設けられてリザーバタンク内のインクの液位を検出する液位検出部により検出された液位を液位取得部により取得する工程と、液位取得部により取得された液位に基づき、リザーバタンク内のインクの不足を確認した場合には、フィルタを介してリザーバタンクにインクを送液するための出力を増大させる出力増大動作を送液ポンプに実行させる工程と、送液ポンプが出力増大動作の実行後において液位取得部が取得する液位の時間変化に基づきフィルタの詰まりの有無を判定する工程とを備える。
【0010】
このように構成された本発明の第一態様(印刷装置およびフィルタ詰まり判定方法)では、送液ポンプとリザーバタンクとを流路接続する送液配管に対して取り付けられたフィルタの詰まりが判定される。このフィルタは、送液ポンプとリザーバタンクとの間において送液配管の途中の位置に設けられ、送液ポンプは、フィルタを介してリザーバタンクにインクを送液する。また、リザーバタンク内のインクの不足が確認された場合には、送液ポンプは、フィルタを介してリザーバタンクにインクを送液するための出力を増大させる出力増大動作を実行する。この際、フィルタに詰まりがなければ、出力増大動作を実行する送液ポンプによって送液されるインクはフィルタを通過してリザーバタンクに到達する。一方、フィルタに詰まりがあれば、出力増大動作を実行する送液ポンプによるリザーバタンクへのインクの送液がフィルタによって阻害される。そこで、送液ポンプが出力増大動作を実行している際のリザーバタンク内に貯留されるインクの液位の時間変化に基づき、フィルタの詰まりの有無が判定される。つまり、フィルタを介した送液ポンプからリザーバタンクへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、フィルタ詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置に設けられたフィルタの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0011】
また、フィルタ詰まり判定部は、送液ポンプが出力増大動作を開始してから所定の経過時間が経過した時点において、リザーバタンク内のインクの不足が解消していないことを、液位取得部が取得する液位に基づき確認した場合には、フィルタの詰まりが有ると判定するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、フィルタを介した送液ポンプからリザーバタンクへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、フィルタ詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置に設けられたフィルタの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0012】
また、インクを貯留する回収タンクと、回収タンクと吐出ヘッドとを流路接続し、吐出ヘッドから回収タンクへインクを送液する回収配管とをさらに備え、リザーバタンクは、吐出ヘッドに供給されるインクを貯留する供給タンクであり、接続配管は、供給タンクと吐出ヘッドとを流路接続し、供給タンクから吐出ヘッドへインクを送液する供給配管であり、送液配管は、送液ポンプを介して回収タンクと供給タンクとを流路接続する戻り配管であり、送液ポンプは、戻り配管の途中の位置に設けられて回収タンクと供給タンクとの間に配置され、回収タンクから供給タンクへインクを送液する循環ポンプであり、フィルタは、循環ポンプと供給タンクとの間における戻り配管の途中の位置において戻り配管に着脱可能に取り付けられた供給フィルタであり、液位検出部は、供給タンク内のインクの液位である供給液位を検出する供給液位検出部であり、ポンプ制御部は、循環ポンプを制御する循環ポンプ制御部であり、液位取得部は、供給液位検出部により検出された供給液位を取得する供給液位取得部であり、フィルタ詰まり判定部は、供給フィルタの詰まりの有無を判定する供給フィルタ詰まり判定部であり、循環ポンプ制御部は、供給液位取得部が取得する供給液位に基づき、供給タンク内のインクの不足を確認した場合には、供給フィルタを介して供給タンクにインクを送液するための出力を増大させる出力増大動作である循環出力増大動作を循環ポンプに実行させ、供給フィルタ詰まり判定部は、循環ポンプが循環出力増大動作の実行後において供給液位取得部が取得する供給液位の時間変化に基づき供給フィルタの詰まりの有無を判定するように、印刷装置を構成してもよい。
【0013】
かかる構成では、循環ポンプと供給タンクとを流路接続する戻り配管に対して取り付けられた供給フィルタの詰まりが判定される。この供給フィルタは、循環ポンプと供給タンクとの間において戻り配管の途中の位置に設けられ、循環ポンプは供給フィルタを介して供給タンクにインクを送液する。また、供給タンク内のインクの不足が確認された場合には、循環ポンプは、供給フィルタを介して供給タンクにインクを送液するための出力を増大させる循環出力増大動作を実行する。この際、供給フィルタに詰まりがなければ、循環出力増大動作を実行する循環ポンプによって送液されるインクは供給フィルタを通過して供給タンクに到達する。一方、供給フィルタに詰まりがあれば、循環出力増大動作を実行する循環ポンプによる供給タンクへのインクの送液が供給フィルタによって阻害される。そこで、循環ポンプが循環出力増大動作を実行している際の供給タンク内に貯留されるインクの液位の時間変化に基づき、供給フィルタの詰まりの有無が判定される。つまり、供給フィルタを介した循環ポンプから供給タンクへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、供給フィルタ詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置に設けられた供給フィルタの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0014】
また、インクを貯留するバッファタンクと、バッファタンクと回収タンクとを流路接続して、バッファタンクから回収タンクにインクを送液する補給配管と、補給配管の途中の位置に設けられて、バッファタンクと回収タンクとの間に配置され、バッファタンクから回収タンクにインクを送液する補給ポンプと、補給ポンプと回収タンクとの間における補給配管の途中の位置において補給配管に着脱可能に取り付けられた回収フィルタと、回収タンクに対して設けられて回収タンク内のインクの液位である回収液位を検出する回収液位検出部とをさらに備え、制御部は、補給ポンプを制御する補給ポンプ制御部と、回収液位検出部により検出された回収液位を取得する回収液位取得部と、回収フィルタの詰まりの有無を判定する回収フィルタ詰まり判定部とを備え、補給ポンプ制御部は、回収液位取得部が取得する回収液位に基づき、回収タンク内のインクの不足を確認した場合には、回収フィルタを介して回収タンクにインクを送液するための出力を増大させる出力増大動作である補給出力増大動作を補給ポンプに実行させ、回収フィルタ詰まり判定部は、補給ポンプが補給出力増大動作の実行後において回収液位取得部が取得する回収液位の時間変化に基づき回収フィルタの詰まりの有無を判定するように、印刷装置を構成してもよい。
【0015】
かかる構成では、補給ポンプと回収タンクとを流路接続する補給配管に対して取り付けられた回収フィルタの詰まりが判定される。この回収フィルタは、補給ポンプと回収タンクとの間において補給配管の途中の位置に設けられ、補給ポンプは、回収フィルタを介して回収タンクにインクを送液する。また、回収タンク内のインクの不足が確認された場合には、補給ポンプは、回収フィルタを介して回収タンクにインクを送液するための出力を増大させる補給出力増大動作を実行する。この際、回収フィルタに詰まりがなければ、補給出力増大動作を実行する補給ポンプによって送液されるインクは回収フィルタを通過して回収タンクに到達する。一方、回収フィルタに詰まりがあれば、補給出力増大動作を実行する補給ポンプによる回収タンクへのインクの送液が回収フィルタによって阻害される。そこで、補給ポンプが補給出力増大動作を実行している際の回収タンク内に貯留されるインクの液位の時間変化に基づき、回収フィルタの詰まりの有無が判定される。つまり、回収フィルタを介した補給ポンプから回収タンクへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、回収フィルタ詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置に設けられた回収フィルタの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0016】
また、インクを貯留するバッファタンクをさらに備え、リザーバタンクは、吐出ヘッドから回収されたインクを貯留する回収タンクであり、接続配管は、回収タンクと吐出ヘッドとを流路接続し、吐出ヘッドから回収タンクへインクを送液する回収配管であり、送液配管は、送液ポンプを介してバッファタンクと回収タンクとを流路接続する補給配管であり、送液ポンプは、補給配管の途中の位置に設けられて、バッファタンクと回収タンクとの間に配置され、バッファタンクから回収タンクへインクを送液する補給ポンプであり、フィルタは、補給ポンプと回収タンクとの間における補給配管の途中の位置において補給配管に着脱可能に取り付けられた回収フィルタであり、液位検出部は、回収タンク内のインクの液位である回収液位を検出する回収液位検出部であり、ポンプ制御部は、補給ポンプを制御する補給ポンプ制御部であり、液位取得部は、回収液位検出部により検出された回収液位を取得する回収液位取得部であり、フィルタ詰まり判定部は、回収フィルタの詰まりの有無を判定する回収フィルタ詰まり判定部であり、補給ポンプ制御部は、回収液位取得部が取得する回収液位に基づき、回収タンク内のインクの不足を確認した場合には、回収フィルタを介して回収タンクにインクを送液するための出力を増大させる出力増大動作である補給出力増大動作を補給ポンプに実行させ、回収フィルタ詰まり判定部は、補給ポンプが補給出力増大動作の実行後において回収液位取得部が取得する回収液位の時間変化に基づき回収フィルタの詰まりの有無を判定するように、印刷装置を構成してもよい。
【0017】
かかる構成では、補給ポンプと回収タンクとを流路接続する補給配管に対して取り付けられた回収フィルタの詰まりが判定される。この回収フィルタは、補給ポンプと回収タンクとの間において補給配管の途中の位置に設けられ、補給ポンプは、回収フィルタを介して回収タンクにインクを送液する。また、回収タンク内のインクの不足が確認された場合には、補給ポンプは、回収フィルタを介して回収タンクにインクを送液するための出力を増大させる補給出力増大動作を実行する。この際、回収フィルタに詰まりがなければ、補給出力増大動作を実行する補給ポンプによって送液されるインクは回収フィルタを通過して回収タンクに到達する。一方、回収フィルタに詰まりがあれば、補給出力増大動作を実行する補給ポンプによる回収タンクへのインクの送液が回収フィルタによって阻害される。そこで、補給ポンプが補給出力増大動作を実行している際の回収タンク内に貯留されるインクの液位の時間変化に基づき、回収フィルタの詰まりの有無が判定される。つまり、回収フィルタを介した補給ポンプから回収タンクへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、回収フィルタ詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置に設けられた回収フィルタの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0018】
本発明の第二態様に係る印刷装置は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドを備えた印刷装置であって、吐出ヘッドに補給されるインクを貯留するバッファタンクと、バッファタンクに送液されるインクを貯留するメインタンクと、メインタンクとバッファタンクとを流路接続して、メインタンクからバッファタンクにインクを送液するメイン配管と、メイン配管の途中の位置に設けられて、メインタンクとバッファタンクとの間に配置され、メインタンクからバッファタンクにインクを送液するメインポンプと、メインポンプとバッファタンクとの間におけるメイン配管の途中の位置においてメイン配管に着脱可能に取り付けられたメインフィルタと、メイン配管に取り付けられて、メインフィルタを通過するインクの流量に関連する流量関連値を計測する計測部と、記憶部と、制御部とを備え、記憶部は、メインフィルタに詰まりがない場合におけるメインポンプの出力と計測部により計測される流量関連値との関係である基準関係を記憶する基準関係記憶部を備え、制御部は、メインポンプを制御するメインポンプ制御部と、計測部により計測された流量関連値を取得する流量関連値取得部と、メインフィルタの詰まりの有無を判定するメインフィルタ詰まり判定部とを備え、メインポンプ制御部は、メインフィルタを介してバッファタンクにインクを送液するための出力をメインポンプに発生させ、メインフィルタ詰まり判定部は、メインポンプが発生する出力である実出力と、メインポンプが実出力を発生している際に流量関連値取得部が取得した流量関連値である実流量関連値とを取得し、実出力と実流量関連値との関係と基準関係との比較に基づき、メインフィルタの詰まりの有無を判定する。
【0019】
本発明の第二態様に係るフィルタ詰まり判定方法は、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、吐出ヘッドに補給されるインクを貯留するバッファタンクと、バッファタンクに送液されるインクを貯留するメインタンクと、メインタンクとバッファタンクとを流路接続して、メインタンクからバッファタンクにインクを送液するメイン配管と、メイン配管の途中の位置に設けられて、メインタンクとバッファタンクとの間に配置され、メインタンクからバッファタンクにインクを送液するメインポンプと、メインポンプとバッファタンクとの間におけるメイン配管の途中の位置においてメイン配管に着脱可能に取り付けられたメインフィルタとを備えた印刷装置においてメインフィルタの詰まりを判定するフィルタ詰まり判定方法であって、メインフィルタを介してバッファタンクにインクを送液するためにメインポンプが発生する出力である実出力を取得する工程と、メイン配管に取り付けられて、メインフィルタを通過するインクの流量に関連する流量関連値を計測する計測部が、メインポンプが実出力を発生している際に計測した流量関連値である実流量関連値を取得する工程と、メインフィルタに詰まりがない場合におけるメインポンプの出力と計測部により計測される流量関連値との関係である基準関係を記憶部から読み出す工程と、実出力と実流量関連値との関係と基準関係との比較に基づき、メインフィルタの詰まりの有無を判定する工程とを備える。
【0020】
このように構成された本発明の第二態様(印刷装置およびフィルタ詰まり判定方法)では、メインタンクとバッファタンクとを流路接続するメイン配管に対して取り付けられたメインフィルタの詰まりが判定される。このメインフィルタは、メインポンプとバッファタンクとの間におけるメイン配管の途中の位置に設けられ、メインポンプは、メインフィルタを介してバッファタンクにインクを送液する。また、メイン配管に取り付けられて、メインフィルタを通過するインクの流量に関連する流量関連値を計測する計測部が設けられており、この計測部により計測された流量関連値がメインフィルタの詰まりの判定に用いられる。特に、メインフィルタに詰まりがない場合におけるメインポンプの出力と計測部により計測される流量関連値との関係である基準関係が予め記憶部に記憶されている。また、メインポンプが実出力を発生している際に計測部が計測した流量関連値である実流量関連値が取得される。そして、実出力と実流量関連値との関係と、基準関係との比較に基づき、メインフィルタの詰まりの有無が判定される。つまり、メインフィルタに詰まりがない場合との比較に基づき、メインフィルタの詰まりの有無が判定される。これによって、印刷装置に設けられたフィルタの詰まりの発生を判定することができる。
【0021】
また、流量関連値を計測する計測部の具体的構成は種々想定される。例えば、計測部は、メインフィルタとバッファタンクとの間におけるメイン配管の途中の位置でインクの流量を流量関連値として計測する流量計であってもよい。あるいは、計測部は、メインポンプとメインフィルタとの間におけるメイン配管の途中の位置でインクの圧力を流量関連値として計測する圧力計であってもよい。
【0022】
また、制御部は、基準関係を取得する基準関係取得部をさらに備え、基準関係取得部は、新品のメインフィルタがメイン配管に装着されると、メインポンプに基準出力を発生させつつ計測部に流量関連値を計測させて、計測部により計測された流量関連値を基準流量関連値として取得し、基準出力と基準流量関連値との関係を基準関係として取得し、基準関係記憶部は、基準関係取得部により取得された基準関係を記憶するように、印刷装置を構成してもよい。かかる構成では、メインフィルタの詰まりの判定に使用される基準関係を予め取得して、記憶部に記憶しておくことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、印刷装置に設けられたフィルタの詰まりの発生を判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図。
【
図2】
図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図。
【
図3】ヘッドユニットが備える吐出ヘッドの底面を模式的に示す図。
【
図4】吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cの構成を模式的に示す図。
【
図5】印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図。
【
図6A】インクの液位の検出態様を模式的に示す図。
【
図6B】制御部によって実行される循環モード制御の一例を示すフローチャート。
【
図6C】
図6Bの循環モード制御において参照される循環モードデータの一例をテーブル形式で示す図。
【
図7】供給フィルタの詰まりの有無を判定するフローチャート。
【
図8】回収フィルタの詰まりの有無を判定するフローチャート。
【
図9】メインフィルタの詰まりの有無を判定するフローチャート。
【
図10】メインフィルタ詰まりの有無の判定で示される各判定内容を表形式で示す図。
【
図11】基準関係の取得方法の一例を示すフローチャート。
【
図12】
図11のフローチャートを実行する印刷装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図13】吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cの構成の変形例を模式的に示す図。
【
図14】印刷装置が備える電気的構成の変形例を示すブロック図。
【
図15】メインフィルタ詰まりの有無の判定で示される各判定内容の変形例を表形式で示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明に係る印刷装置を備えた印刷システムの一例を模式的に示す正面図である。
図1および以下に示す図では、水平方向Xおよび鉛直方向Zを適宜示す。
図1に示すように、印刷システム1は、水平方向Xに配列された印刷装置3および乾燥装置6を備える。この印刷システム1は、繰出ロール11から巻取ロール12へロール・トゥ・ロールで長尺帯状の印刷媒体Mを搬送する。なお、印刷媒体Mの素材は、OPP(oriented polypropylene)あるいはPET(polyethylene terephthalate)等のフィルムである。ただし、印刷媒体Mの素材はフィルムに限られず、紙等でもよい。かかる印刷媒体Mは可撓性を有する。また、以下では、印刷媒体Mの両面のうち、画像が印刷される面を表面M1と、表面M1の反対側の面を裏面M2と適宜称する。
【0026】
印刷装置3は、繰出ロール11から巻取ロール12へ搬送される印刷媒体Mの表面M1に対してインクジェット方式で水性インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に画像を印刷する。かかる印刷装置3の詳細な構成は後述する。こうして画像が印刷された印刷媒体Mは、印刷装置3から乾燥装置6へ向けて水平方向Xに搬送される。
【0027】
乾燥装置6は乾燥炉60を備え、繰出ロール11から巻取ロール12への搬送に伴って印刷装置3から搬出された印刷媒体Mを乾燥させる。乾燥炉60内には、水平方向Xに配列された2個の上段送風ユニット61uと、これら上段送風ユニット61uの下側で水平方向Xに配列された2個の中段送風ユニット61mと、これら中段送風ユニット61mの下側で水平方向Xに配列された2個の下段送風ユニット61lとが具備されている。
【0028】
印刷装置3の搬出口312から搬出された印刷媒体Mは、2個の上段送風ユニット61uを水平方向Xに通過した後に、1対のローラ62によって2個の中段送風ユニット61mへ向けて折り返される。続いて、印刷媒体Mは、2個の中段送風ユニット61mを水平方向Xに通過した後に、1対のエアターンバー63によって2下段送風ユニット61lに向けて折り返される。さらに、印刷媒体Mは、2個の下段送風ユニット61lを水平方向Xに通過した後に、乾燥装置6の外部へ搬出される。
【0029】
上段送風ユニット61uは、水平方向Xに通過する印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟むように配置された2個の送風チャンバ64を有する。各送風チャンバ64は、水平方向Xに配列された複数のノズル65を有し、各ノズル65から温風(60度以上の気体)を印刷媒体Mへ噴射する。こうして、印刷媒体Mは、上下に設けられた2個の送風チャンバ64の間を通過しつつ、これら送風チャンバ64のノズル65から噴射された温風によって乾燥される。また、中段送風ユニット61mおよび下段送風ユニット61lのそれぞれも、上段送風ユニット61uと同様に、印刷媒体Mを鉛直方向Zから挟む2個の送風チャンバ64を有する。
【0030】
ちなみに、上段送風ユニット61uの具体的構成はここの例に限られない。例えば、上段送風ユニット61uの上下の送風チャンバ64のうち下側の送風チャンバ64に代えて、水平方向Xに配列された複数のローラを設けてもよい。かかる構成では、複数のローラによって印刷媒体Mの裏面M2を下側から支持しつつ、上側の送風チャンバ64から印刷媒体Mの表面M1に温風を噴射できる。
【0031】
図2は
図1の印刷システムが備える印刷装置を模式的に示す正面図である。
図2では、水平方向Xの一方側X1および他方側X2を適宜示す。ここで、一方側X1は印刷装置3から乾燥装置9へ向う側であり、他方側X2は一方側X1の反対側である。印刷装置3は、筐体31と、筐体31内に配置されたカラー印刷部32と、筐体31内においてカラー印刷部32の上方に配置された白印刷部33と、筐体31内に配置された複数のローラによって印刷媒体Mを搬送する搬送部4とを備える。
【0032】
カラー印刷部32は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方において、印刷媒体Mの進行方向(他方側X2から一方側X1へ向かう方向)に配列された複数(6個)のヘッドユニット321を有する。複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、互いに異なる色のカラーインクをインクジェット方式でノズルから吐出する。ここで、カラーインクとは、白色以外のインクを意味し、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラック等のインクを含む。こうして、カラー印刷部32の複数のヘッドユニット321は、それぞれの下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方からカラーインクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1にカラー画像を印刷する。
【0033】
また、白印刷部33は、搬送部4によって搬送される印刷媒体Mの上方に配置された単一のヘッドユニット331を有する。ヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から対向するノズルを有し、白インクをインクジェット方式でノズルから吐出する。こうして、白印刷部33のヘッドユニット331は、その下方を通過する印刷媒体Mの表面M1に上方から白インクを吐出することで、印刷媒体Mの表面M1に白画像を印刷する。
【0034】
筐体31の他方側X2の側壁には搬入口311が開口する一方、筐体31の一方側X1の側壁には搬出口312が開口している。そして、搬送部4は、上記のカラー印刷部32および白印刷部33を経由しつつ、搬入口311から搬出口312へ印刷媒体Mを搬送する。
【0035】
この搬送部4は、カラー印刷部32の下側に設けられた搬入部41と、カラー印刷部32の一方側X1に設けられた上昇搬送部42と、カラー印刷部32の上側に設けられた上方搬送部43と、カラー印刷部32の他方側X2に設けられた下降搬送部44とを有する。搬入部41は、搬入口311から搬入された印刷媒体Mをローラ411によって一方側X1に搬送し、上昇搬送部42は、搬入部41によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ421によって上側に搬送し、上方搬送部43は、上昇搬送部42によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ431によって他方側X2へ搬送し、下降搬送部44は、上方搬送部43によって搬送されてきた印刷媒体Mをローラ441によって下側に搬送する。
【0036】
さらに、搬送部4は、カラー印刷部32に対向する印刷媒体Mを下方から支持するカラー搬送部45を有し、下降搬送部44を通過した印刷媒体Mはカラー搬送部45に進入する。このカラー搬送部45は、他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ451を有し、各ローラ451が印刷媒体Mの裏面M2に下方から接触する。こうして、カラー搬送部45によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、カラー印刷部32の各ヘッドユニット321は、この表面M1に上方から対向しつつカラーインクを吐出する。
【0037】
また、搬送部4は、印刷媒体Mの進行方向においてカラー搬送部45と下降搬送部44との間に配置されたローラ461、462、463を有する。ローラ461は、印刷媒体Mを駆動する駆動ローラである。ローラ462、463は印刷媒体Mに従動して回転する従動ローラである。
【0038】
さらに、搬送部4は、カラー搬送部45から一方側X1に搬送されてきた印刷媒体Mを二回上下反転させる反転搬送部47を有する。この反転搬送部47は、駆動ローラ471を含む複数のローラ471~477を有し、これらローラ471~477が印刷媒体Mの裏面M2に接触しつつ、印刷媒体Mを二回上下反転させる。つまり、反転搬送部47は、カラー搬送部45から搬送された印刷媒体Mを、ローラ471、472によって下方向に向けて搬送し、さらに印刷媒体Mの進行方向をローラ472によって他方側X2に変更して搬送することにより、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを上下反転させる。続いて、反転搬送部47は、複数のローラ473によって印刷媒体Mを一方側X1から他方側X2に向けて搬送し、次いで、ローラ474~476によって印刷媒体Mを上方向に向けて搬送する。さらに、反転搬送部47は、ローラ476によって印刷媒体Mの進行方向を一方側X1に変更することによって、印刷媒体Mの表面M1と裏面M2とを再び上下反転させるとともに、ローラ477によって印刷媒体Mを他方側X2から一方側X1に向けて搬送する。
【0039】
また、搬送部4は、白印刷部33に対向する印刷媒体Mを下方から支持する白搬送部48を有し、反転搬送部47によって二回上下反転された印刷媒体Mは白搬送部48に進入する。この白搬送部48は、印刷媒体Mの裏面M2に下側から接触するローラ481を有する。こうして、白搬送部48によって支持される印刷媒体Mの表面M1は上方を向き、白印刷部33のヘッドユニット331は、この表面M1に上方から対向しつつ白インクを吐出する。
【0040】
また、搬送部4は、上方搬送部43より上方に設けられた搬出部49を有する。搬出部49は、水平方向Xの他方側X2から一方側X1へ配列された複数のローラ491を有する。この搬出部49は、白搬送部48により搬送されてきた印刷媒体Mを、複数のローラ491によって一方側X1へと搬送することで、筐体31の搬出口312から乾燥装置9へ搬出する。
【0041】
上記のように、印刷装置3のカラー印刷部32および白印刷部33は、ヘッドユニット321、331を有する。続いては、ヘッドユニット321、331が有する吐出ヘッドHと当該吐出ヘッドHにインクを供給、回収、循環させるインク供給・回収・循環機構9について説明する。インク供給・回収・循環機構9は、吐出ヘッド321、331にインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッド321、331からインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cを含んで構成される。なお、ヘッドユニット321、331は共通する基本的構成を具備するとともに、インク供給・回収・循環機構9の基本的な構成もヘッドユニット321、331で共通する。そこで、白インクを吐出するヘッドユニット331に関する構成について説明を行う。
【0042】
図3はヘッドユニットが備える吐出ヘッドの底面を模式的に示す図であり、
図4は吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cの構成を模式的に示す図である。
図3では、水平方向Xおよび鉛直方向Zの他に、水平方向Xに直交する水平方向Yが示されている。
図3に示すように、ヘッドユニット331では、同一の色のインク(白インク)を吐出する複数の吐出ヘッドHが水平方向Yに一列に配列されており、各吐出ヘッドHは底面視において矩形を有する。なお、複数の吐出ヘッドHの配列態様は
図3の例に限られず、複数の吐出ヘッドHは千鳥状に配列されてもよい。
【0043】
図4に示すように、吐出ヘッドHはハウジングHaを有し、ハウジングHaの底面では、複数のノズルHnが水平方向Yに千鳥状に配列されて開口する。ハウジングHaの内部には、複数のノズルHnにそれぞれ連通する複数のキャビティHbと、複数のキャビティHbに連通するインク供給室Hcとが設けられており、インク供給室Hcから供給されたインクがキャビティHbに貯留される。また、各キャビティHbには圧電素子Eが設けられており、圧電素子Eが駆動信号(電気信号)に応じて変位することで、キャビティHb内のインクに圧力変動を与える。この圧力変動によって、キャビティHbからインクが押し出されて、当該キャビティHbに連通するノズルHnからインクが吐出される。また、吐出ヘッドHの上部では、インク流入口Hdと、インク流出口Heとがそれぞれ開口し、インクは、インク供給機構9aからインク流入口Hdを介してインク供給室Hcに流入し、インク供給室Hcからインク流出口Heを介してインク回収機構9bへ向けて流出する。
【0044】
インク供給機構9aは、吐出ヘッドHへ向けてインクを供給するインク供給部91と、このインク供給部91に対して付与する圧力を生成する圧力生成部93とを含む。インク供給部91は、吐出ヘッドHへ供給するインクを貯留する供給タンク91aと、この供給タンク91aから供給されるインクを吐出ヘッドHへ送液する供給配管91bとを含む。インク回収機構9bは、吐出ヘッドHからインクを回収するインク回収部92と、このインク回収部92に対して付与する圧力を生成する圧力生成部94とを含む。インク回収部92は、吐出ヘッドHから回収したインクを貯留する回収タンク92aと、吐出ヘッドHから回収したインクを回収タンク92aへ送液する回収配管92bとを含む。供給タンク91および回収タンク92のそれぞれは、吐出ヘッドHより上方に配置される。インク戻り機構9cは、回収タンク92aと供給タンク91aとを流路接続する戻り配管902と、この戻り配管902の途中の位置に介在された循環ポンプ90と、戻り配管902の途中の位置に介在され、循環ポンプ90と供給タンク91との間に配置された供給フィルタFlfとを備える。そして、循環ポンプ90は、回収タンク92aから供給タンク91aへインクを送り、供給フィルタFlfは、循環ポンプ90から流出して供給タンク91aに流入する前のインクから異物を除去する。かかるインク戻り機構9cは、循環ポンプ90によって、回収タンク92aから供給タンク91aに到る第1経路Caに沿ってインクを送ることができる。
【0045】
なお、供給フィルタFlfは、戻り配管902に着脱可能に装着される。したがって、供給フィルタFlfに詰まりが発生した場合には、作業者は、この供給フィルタFlfを戻り配管902から取り外して、新品の供給フィルタFlfを戻り配管902に装着することができる。
【0046】
インク供給機構9aは、供給タンク91aに圧力P1(負圧)を与える供給側圧力生成部93(以下、「圧力生成部93」と適宜称する)を備える。この圧力生成部93は、圧力タンク931と、圧力タンク931を排気して圧力タンク931に圧力P1を生成する排気ポンプ932と、圧力タンク931にその一端が接続された可撓性のチューブ933と、チューブ933の他端にその一端が連通可能に接続され、その他端が供給タンク91a内の雰囲気に臨むように配置され、圧力タンク931内に生成された圧力を供給タンク91aに伝える圧力伝達配管934とを備える。そして、排気ポンプ932によって圧力タンク931内に生成された圧力P1が、チューブ933、圧力伝達配管934を介して供給タンク91に与えられる。
【0047】
これに対して、供給タンク91a内では、インクの液面より上側に気体(空気)が溜まっている。つまり、供給タンク91a内では、気液界面の下側にインクが貯留され、気液界面の上側に気体が存在する。したがって、圧力生成部93によって、供給タンク91a内の気液界面に圧力P1(負圧)が与えられることとなる。
【0048】
また、インク供給機構9aは、圧力生成部93のチューブ933の他端と、圧力伝達配管934の一端との間に設けられた電磁弁V1を有する。この電磁弁V1は、圧力タンク931と供給タンク91aとの間の雰囲気を連通/遮断することで、圧力タンク931に生成された圧力P1の供給タンク91aへの付与/遮断を実行する。つまり、
図4に示すように、電磁弁V1が開いた状態では、圧力タンク931と供給タンク91aとの間の雰囲気が連通し、圧力タンク931からチューブ933、圧力伝達配管934を通じて、供給タンク91aへの圧力P1の付与が実行される。一方、電磁弁V1が閉じた状態では、圧力タンク931と供給タンク91aとの間の雰囲気が遮断され、圧力タンク931から供給タンク91aへの圧力P1の付与が停止される。
【0049】
また、インク供給機構9aでは、圧力伝達配管934に逆止フィルタF1が介在されている。この逆止フィルタF1は、供給タンク91から圧力タンク931へ向かう気体の通過を許容しつつ、供給タンク91aから圧力タンク931へ向かうインクの通過を禁止する。こうして、供給タンク91aからチューブ933へのインクの流入が逆止フィルタF1により防止されている。
【0050】
インク回収機構9bは、回収タンク92に圧力P2(負圧)を与える回収側圧力生成部94(以下、「圧力生成部94」と適宜称する)を備える。この圧力生成部94は、圧力タンク941と、圧力タンク941を排気して圧力タンク941に圧力P2を生成する排気ポンプ942と、圧力タンク941にその一端が接続された可撓性のチューブ943と、このチューブ943の他端にその一端が連通可能に接続されており、その他端が回収タンク92a内の雰囲気に臨むように配置され、圧力タンク941内に生成された圧力を回収タンク92aに伝える圧力伝達配管944と、を備える。そして、排気ポンプ942によって圧力タンク941内に生成された圧力P2がチューブ943、圧力伝達配管944を介して回収タンク92に与えられる。
【0051】
これに対して、回収タンク92a内では、インクの液面より上側に気体(空気)が溜まっている。つまり、回収タンク92a内では、気液界面の下側にインクが貯留され、気液界面の上側に気体が存在する。したがって、圧力生成部94によって、回収タンク92a内の気液界面に圧力P2(負圧)が与えられることとなる。
【0052】
また、インク回収機構9bは、圧力付与部94のチューブ943の他端と、圧力伝達配管944の一端との間に設けられた電磁弁V2を有する。この電磁弁V2は、圧力タンク941と回収タンク92aとの間の雰囲気を連通/遮断することで、圧力タンク941に生成された圧力P2の回収タンク92aへの付与/遮断を実行する。つまり、
図4に示すように、電磁弁V2が開いた状態では、圧力タンク941と回収タンク92aとの間の雰囲気が連通し、圧力タンク941からチューブ943、圧力伝達配管944を通じて、回収タンク92aへの圧力P2の付与が実行される。一方、電磁弁V2が閉じた状態では、圧力タンク941と回収タンク92aとの間の雰囲気が遮断され、圧力タンク941から回収タンク92aへの圧力P2の供給が停止される。
【0053】
また、インク回収機構9bでは、圧力伝達配管944に逆止フィルタF2が介在されている。この逆止フィルタF2は、回収タンク92aから圧力タンク941へ向かう気体の通過を許容しつつ、回収タンク92aから圧力タンク941へ向かうインクの通過を禁止する。こうして、回収タンク92aからチューブ943へのインクの流入が逆止フィルタF2により防止されている。
【0054】
さらに、回収タンク92aと供給タンク91aとの間には、回収タンク92aの雰囲気と供給タンク91aの雰囲気とを連通可能に接続される連通管963が設けられている。さらに、この連通管963には、回収タンク92aの雰囲気と供給タンク91aの雰囲気とを連通/遮断するための電磁弁V0が介在されている。つまり、
図4に示すように、電磁弁V0が閉じた状態では、供給タンク91aの雰囲気と回収タンク92aの雰囲気とは遮断され、供給タンク91a内の圧力P1と回収タンク92a内の圧力P2とはそれぞれ独立した状態となる。一方、電磁弁V0が開いた状態では、供給タンク91aの雰囲気と回収タンク92aの雰囲気とが連通して、供給タンク91aおよび回収タンク92aのそれぞれの内部の圧力は等しくなる。
【0055】
図4に示す状態では、圧力生成部94が、チューブ943、電磁弁V2、圧力伝達配管944を通じて、回収タンク92aに付与する圧力P2は、圧力生成部93が、チューブ933、電磁弁V1を介して供給タンク91aに付与する圧力P1より低い。この圧力P2と圧力P1との差によって、供給タンク91aから吐出ヘッドHのインク供給室Hcを介して回収タンク92aに到る第2経路Cbに沿ってインクが流れる。また、第2経路Cbに沿って回収タンク92aに流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ90により供給タンク91aに戻される。こうして、供給タンク91aから吐出ヘッドHを介して回収タンク92aに到達した後に供給タンク91aに戻る循環経路(第2経路Cb+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0056】
インク供給・回収・循環機構9はバッファタンク95を備え、バッファタンク95は、供給タンク91aおよび回収タンク92aより多量のインクを貯留することができる。また、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と供給タンク91aとを接続する配管951と、バッファタンク95と回収タンク92aとを接続する配管952とを備える。つまり、バッファタンク95は、配管951を介して供給タンク91aと連通し、配管952を介して回収タンク92aと連通する。
【0057】
さらに、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と供給タンク91aとの間で配管951に取り付けられた回収ポンプ961と、バッファタンク95と回収タンク92aとの間で配管952に取り付けられた補給ポンプ962とを備える。したがって、回収ポンプ961によって、供給タンク91aから配管951を介してバッファタンク95へインクを回収し、補給ポンプ962によってバッファタンク95から配管952を介して回収タンク92aにインクを供給できる。
【0058】
また、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95と回収タンク92aとを流路接続する配管952の途中の位置に介在され、補給ポンプ962と回収タンク92aとの間に配置された回収フィルタFlrを備える。したがって、補給ポンプ962によって回収タンク92aに向けて送液されたインクは、回収フィルタFlrを通過してから回収タンク92aに流入する。つまり、回収フィルタFlrは、補給ポンプ962から流出して回収タンク92aに流入する前のインクから異物を除去する。
【0059】
なお、回収フィルタFlrは、配管952に着脱可能に装着される。したがって、回収フィルタFlrに詰まりが発生した場合には、作業者は、この回収フィルタFlrを配管952から取り外して、新品の回収フィルタFlrを配管952に装着することができる。
【0060】
また、インク供給・回収・循環機構9は、回収ポンプ961と供給タンク91aとの間で配管951に取り付けられた電磁弁V3と、補給ポンプ962と回収タンク92aとの間で配管952に取り付けられた電磁弁V4とを備える。したがって、電磁弁V3を開くことでバッファタンク95と供給タンク91aとを連通させる一方、電磁弁V3を閉じることでバッファタンク95と供給タンク91aとを遮断できる。また、電磁弁V4を開くことでバッファタンク95と回収タンク92aとを連通させる一方、電磁弁V4を閉じることでバッファタンク95と回収タンク92aとを遮断できる。
【0061】
このように構成されたインク供給・回収・循環機構9では、電磁弁V3、V4を開いた状態で回収ポンプ961および補給ポンプ962を動作させることで、供給タンク91aからバッファタンク95を介して回収タンク92aに到る第3経路Ccに沿ってインクが流れる。また、第3経路Ccに沿って回収タンク92aに流入したインクは、第1経路Caに沿って循環ポンプ90により供給タンク91aに戻される。こうして、供給タンク91aからバッファタンク95を介して回収タンク92aに到達した後に供給タンク91aに戻る循環経路(第3経路Cc+第1経路Ca)でインクが循環する。
【0062】
また、インク供給・回収・循環機構9は、バッファタンク95にインクを補給するメイン補給部99を有する。このメイン補給部99は、インクを貯留するメインタンク991と、メインタンク991とバッファタンク95とを流路接続するメイン配管992と、メイン配管992の途中の位置に介在されて、メインタンク991とバッファタンク95との間に配置されたメインポンプ993とを有する。メインタンク991は、バッファタンク95よりも多量のインクを貯留でき、メインポンプ993は、メインタンク991からメイン配管992を介してバッファタンク95にインクを送液する。
【0063】
また、メイン補給部99は、メイン配管992の途中の位置に介在され、メインポンプ993とバッファタンク95との間に配置されたメインフィルタFlmを有する。したがって、メインポンプ993によってバッファタンク95に向けて送液されたインクは、
メインフィルタFlmを通過してからバッファタンク95に流入する。つまり、メインフィルタFlmは、メインポンプ993から流出してバッファタンク95に流入する前のインクから異物を除去する。
【0064】
なお、メインフィルタFlmは、メイン配管992に着脱可能に装着される。したがって、メインフィルタFlmに詰まりが発生した場合には、作業者は、このメインフィルタFlmをメイン配管992から取り外して、新品のメインフィルタFlmをメイン配管992に装着することができる。
【0065】
さらに、メイン補給部99は、メイン配管992の途中の位置に介在され、メインフィルタFlmとバッファタンク95との間に配置された流量計Sfを備える。この流量計Sfは、メインフィルタFlmから流出してバッファタンク95に流入する前のインクの流量を計測する。
【0066】
また、インク供給・回収・循環機構9は、供給タンク91aに貯留されるインクの液位Lf(供給液位)を検出する供給液位検出部97と、回収タンク92aに貯留されるインクの液位Lr(回収液位)を検出する回収液位検出部98とを有する。そして、次に説明するように、回収ポンプ961、補給ポンプ962および循環ポンプ90の動作は、供給液位検出部97により検出された供給タンク91a内のインクの液位Lfおよび回収液位検出部98により検出された回収タンク92a内のインクの液位Lrに基づき制御される。
【0067】
図5は印刷装置が備える電気的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、印刷装置3は、装置全体を統括的に制御する制御部51と、制御部51による制御において使用される各種データを記憶する記憶部55とを備える。記憶部55は、HDD(Hard Disk Drive)あるいはSSD(Solid State Drive)等の記憶装置であり、後述する循環モードデータDmを記憶する循環モードデータ記憶部551および基準関係Drを記憶する基準関係記憶部552を有する。
【0068】
制御部51は、例えばCPU(Central Processing Unit)あるいはFPGA(Field-Programmable Gate Array)で構成される。この制御部51は、循環ポンプ制御部511、供給液位取得部512、供給フィルタ詰まり判定部513、補給ポンプ制御部514、回収液位取得部515、回収フィルタ詰まり判定部516、メインポンプ制御部517、流量取得部518、メインフィルタ詰まり判定部519、回収ポンプ制御部520、循環モード決定部521およびUI制御部522を有する。制御部51がCPU等のプロセッサである場合には、制御部51が所定のプログラムを実行することで、これらの機能部511~522の各制御が制御部51に展開される。また、制御部51がFPGAである場合には、これらの機能部511~522の機能を実行する論理回路がFPGAに実装される。
【0069】
循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の動作を制御する。つまり、循環ポンプ90は、循環ポンプ制御部511の制御に基づき、始動、出力の増大、出力の減少あるいは停止を実行する。供給液位取得部512は、供給液位検出部97が検出する供給タンク91a内のインクの液位Lfを取得する。供給フィルタ詰まり判定部513は、後に詳述するように、循環ポンプ90の出力と供給液位検出部97により検出される液位Lfとに基づき、供給フィルタFlfの詰まりの有無を判定する。
【0070】
補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962の動作を制御する。つまり、補給ポンプ962は、補給ポンプ制御部514の制御に基づき、始動、出力の増大、出力の減少あるいは停止を実行する。回収液位取得部515は、回収液位検出部98が検出する回収タンク92a内のインクの液位Lrを取得する。回収フィルタ詰まり判定部516は、後に詳述するように、補給ポンプ962の出力と回収液位検出部98により検出される液位Lrとに基づき、回収フィルタFlrの詰まりの有無を判定する。
【0071】
メインポンプ制御部517は、メインポンプ993の動作を制御する。つまり、メインポンプ993は、メインポンプ制御部517の制御に基づき、始動、出力の増大、出力の減少あるいは停止を実行する。流量取得部518は、流量計Sfが計測するインクの流量(換言すれば、メインフィルタFlmを通過するインクの流量)を取得する。メインフィルタ詰まり判定部519は、後に詳述するように、メインポンプ制御部517の出力と、流量計Sfにより計測される流量とに基づき、メインフィルタFlmの詰まりの有無を判定する。
回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961を制御する。つまり、回収ポンプ961は、回収ポンプ制御部520の制御に基づき、始動、出力の増大、出力の減少あるいは停止を実行する。
【0072】
循環モード決定部521は、供給液位検出部97によって検出された供給タンク91a内のインクの液位Lfと、回収液位検出部98によって検出された回収タンク92a内のインクの液位Lrとに基づき、後に詳述するように循環モードを決定する。
【0073】
UI制御部522は、印刷装置3に具備されたUI(User Interface)39を制御する。UI39は例えばタッチパネルディスプレイを有し、タッチパネルディスプレイに各種の情報を作業者に表示したり、タッチパネルディスプレイへの作業者の入力操作を受け付けたりする。
【0074】
ところで、上述した通り、供給液位取得部512は、供給液位検出部97によって検出された供給タンク91a内のインクの液位Lfを取得する。また、回収液位取得部515は、回収液位検出部98によって検出された回収タンク92a内のインクの液位Lrを取得する。これら供給液位検出部97および回収液位検出部98は、
図6Aに示すように、インクの液位Lfおよび液位Lrを4段階で検出する。
【0075】
図6Aはインクの液位の検出態様を模式的に示す図である。インクの液位の検出態様は、供給液位検出部97と回収液位検出部98とで共通するため、ここでは、供給液位検出部97によって供給タンク91a内のインクの液位Lfを検出する態様について説明する。供給液位検出部97は、互いに異なる高さLL、LM、LHにおける供給タンク91a内のインクの有無を検出する3個のフロートセンサを有する。つまり、供給液位検出部97は、第1高さLL、第1高さLLより高い第2高さLM、および第2高さLMより高い第3高さLHそれぞれの高さにおけるインクの有無によって、供給タンク91a内のインクの液位Lfの存在範囲を検出する。
【0076】
第1高さLL、第2高さLMおよび第3高さLHにおけるインクの有無と、インクの液位Lfとの存在範囲の具体的な関係は次の通りである。つまり、
図6Aの「Low状態」の欄に示すように、第1高さLL、第2高さLMおよび第3高さLHのいずれにもインクが存在しない場合には、供給タンク91a内のインクの液位Lfは、第1高さLL未満の範囲Lowに存在する。
図6Aの「Mid状態」の欄に示すように、第1高さLLにインクが存在する一方、第2高さLMおよび第3高さLHにインクが存在しない場合には、供給タンク91a内のインクの液位Lfは、第1高さLL以上であって第2高さLM未満の範囲Midに存在する。
図6Aの「High状態」の欄に示すように、第1高さLLおよび第2高さLMにインクが存在する一方、第3高さLHにインクが存在しない場合には、供給タンク91a内のインクの液位Lfは、第2高さLM以上であって第3高さLH未満の範囲Highに存在する。
図6Aの「Ovf状態」の欄に示すように、第1高さLL、第2高さLMおよび第3高さLHのいずれにもインクが存在する場合には、供給タンク91a内のインクの液位Lfは、第3高さLH以上の範囲Ovfに存在する。
【0077】
そして、循環モード決定部521(
図5)は、供給液位取得部512が供給液位検出部97から取得した供給タンク91a内のインクの液位Lfと、回収液位取得部515が回収液位検出部98から取得した回収タンク92a内のインクの液位Lrとに基づき、インク供給・回収・循環機構9でインクを送液させる循環モードを制御する。
【0078】
図6Bは制御部によって実行される循環モード制御の一例を示すフローチャートであり、
図6Cは
図6Bの循環モード制御において参照される循環モードデータの一例をテーブル形式で示す図である。
図6Cの循環モードデータDmは、記憶部55の循環モードデータ記憶部551に予め保存されており、循環モード決定部521は、記憶部55の循環モードデータ記憶部551から循環モードデータDmを読み出して、これを参照する。
【0079】
図6Bの循環モード制御のステップS101では、供給液位取得部512が供給タンク91a内のインクの液位Lfを供給液位検出部97から取得する。また、ステップS102では、回収液位取得部515が回収タンク92a内のインクの液位Lrを回収液位検出部98から取得する。なお、ステップS101、S102の実行順序はこの例に限られず、逆あるいは同時でもよい。
【0080】
ステップS103では、循環モード決定部521は、供給液位取得部512が取得した供給タンク91a内のインクの液位Lfと、回収液位取得部515が取得した回収タンク92a内のインクの液位Lrとの組み合わせと、循環モードデータDmとに基づき、循環モードを決定する。
図6Cに示すように、循環モードデータDmは、循環モード1~11における循環ポンプ90、補給ポンプ962および回収ポンプ961の動作を規定する。
【0081】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Lowであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Lowである場合には、循環モード決定部521は、循環モード1を実行すると決定する。この循環モード1では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の出力が維持されるように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を実行するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を停止するように回収ポンプ961を制御する。
【0082】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Lowであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Midである場合には、循環モード決定部521は、循環モード2を実行すると決定する。この循環モード2では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の出力が増大するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を実行するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を停止するように回収ポンプ961を制御する。
【0083】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Lowであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Highである場合には、循環モード決定部521は、循環モード3を実行すると決定する。この循環モード3では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の出力が増大するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を停止するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を実行するように回収ポンプ961を制御する。
【0084】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Midであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Lowである場合には、循環モード決定部521は、循環モード4を実行すると決定する。この循環モード4では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の出力が減少するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を実行するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を実行するように回収ポンプ961を制御する。
【0085】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Midであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Midである場合には、循環モード決定部521は、循環モード5を実行すると決定する。この循環モード5では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の出力が維持されるように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を停止するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を実行するように回収ポンプ961を制御する。
【0086】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Midであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Highである場合には、循環モード決定部521は、循環モード6を実行すると決定する。この循環モード6では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の出力が増大するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を停止するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を実行するように回収ポンプ961を制御する。
【0087】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Highであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Lowである場合には、循環モード決定部521は、循環モード7を実行すると決定する。この循環モード7では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の出力が減少するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を停止するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を実行するように回収ポンプ961を制御する。
【0088】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Highであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Midである場合には、循環モード決定部521は、循環モード8を実行すると決定する。この循環モード8では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90の出力が減少するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を停止するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を実行するように回収ポンプ961を制御する。
【0089】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Highであり、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Highである場合には、循環モード決定部521は、循環モード9を実行すると決定する。この循環モード9では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90が停止するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を停止するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を実行するように回収ポンプ961を制御する。
【0090】
図6Cに示すように、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Ovfである場合には、循環モード決定部521は、循環モード10を実行すると決定する。この循環モード10では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90が停止するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を停止するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を停止するように回収ポンプ961を制御する。
【0091】
図6Cに示すように、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Ovfである場合には、循環モード決定部521は、循環モード11を実行すると決定する。この循環モード11では、循環ポンプ制御部511は、循環ポンプ90が停止するように循環ポンプ90を制御し、補給ポンプ制御部514は、補給ポンプ962が送液を停止するように補給ポンプ962を制御し、回収ポンプ制御部520は、回収ポンプ961が送液を停止するように回収ポンプ961を制御する。
【0092】
そして、
図6BのフローチャートのステップS104では、上記のようにしてステップS103で決定された循環モードが実行される。
【0093】
図7は供給フィルタの詰まりの有無を判定するフローチャートである。
図7のフローチャートは、供給フィルタ詰まり判定部513によって実行される。ステップS201では、供給フィルタFlfを介して供給タンク91aに向けてインクを送液する循環ポンプ90の出力が増大する循環出力増大動作が実行されたかが、供給フィルタ詰まり判定部513によって確認される。具体的には、
図6Cに示す送液モード2、3、6が開始されたかが、供給フィルタ詰まり判定部513によって確認される。
【0094】
つまり、循環モード2、3によれば、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Lowになると、供給タンク91a内のインクの量が不足していると判断されて、循環ポンプ90の出力が増大される。循環モード6によれば、供給タンク91a内のインクの液位Lfが範囲Midになると、供給タンク91a内のインクの量が不足していると判断されて、循環ポンプ90の出力が増大される。これによって、循環ポンプ90から供給フィルタFlfを介して供給タンク91aに送液されるインクの量が増大する。そのため、供給フィルタFlfに詰まりが無ければ、供給液位検出部97によって検出される液位Lfが上昇する。
【0095】
そこで、供給フィルタ詰まり判定部513は、循環出力増大動作の開始から所定の時間が経過すると(ステップS202で「YES」)、回収液位検出部98によって検出される供給タンク91a内のインクの液位Lfが回復したかを判断する。例えば、循環モード2、3によって循環出力増大動作が実行された場合には、回収液位検出部98によって検出されたインクの液位Lfが範囲Lowから範囲Midに上昇したかが確認される。循環モード6によって循環出力増大動作が実行された場合には、回収液位検出部98によって検出されたインクの液位Lfが範囲Midから範囲Highに上昇したかが確認される。
【0096】
そして、供給タンク91a内のインクの液位Lfの回復(換言すれば、上昇)が確認された場合(ステップS203で「YES」の場合)には、供給フィルタ詰まり判定部513は、供給フィルタFlfに詰まりが無いと判定する(ステップS204)。一方。供給タンク91a内のインクの液位Lfの回復(換言すれば、上昇)が確認されない場合(ステップS203で「NO」の場合)には、供給フィルタ詰まり判定部513は、供給フィルタFlfに詰まりがあると判定する(ステップS205)。この供給フィルタ詰まり判定部513の判定を受けて、UI制御部522は、供給フィルタFlfの交換作業を要求する情報がUI39のディスプレイに表示されるように、UI39を制御する(ステップS206)。
【0097】
図7に示す実施例では、循環ポンプ90(送液ポンプ)と供給タンク91a(リザーバタンク)とを流路接続する戻り配管902(送液配管)に対して取り付けられた供給フィルタFlfの詰まりが判定される。この供給フィルタFlfは、循環ポンプ90と供給タンク91aとの間において戻り配管902の途中の位置に設けられ、循環ポンプ90は、供給フィルタFlfを介して供給タンク91aにインクを送液する。また、供給タンク91a内のインクの不足が確認された場合には、循環ポンプ90は、供給フィルタFlfを介して供給タンク91aにインクを送液するための出力を増大させる循環出力増大動作を実行する。この際、供給フィルタFlfに詰まりがなければ、循環出力増大動作を実行する循環ポンプ90によって送液されるインクは供給フィルタFlfを通過して供給タンク91aに到達する。一方、供給フィルタFlfに詰まりがあれば、循環出力増大動作を実行する循環ポンプ90による供給タンク91aへのインクの送液が供給フィルタFlfによって阻害される。そこで、循環ポンプ90が循環出力増大動作を実行している際の供給タンク91a内に貯留されるインクの液位Lfの時間変化に基づき、供給フィルタFlfの詰まりの有無が判定される(ステップS201~S205)。つまり、供給フィルタFlfを介した循環ポンプ90から供給タンク91aへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、供給フィルタFlfの詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置3に設けられた供給フィルタFlfの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0098】
また、供給フィルタ詰まり判定部513(フィルタ詰まり判定部)は、循環ポンプ90が循環出力増大動作を開始してから所定の経過時間が経過した時点において、供給タンク91a内のインクの不足が解消していないことを、供給液位取得部512(液位取得部)が取得する液位Lfに基づき確認した場合には、供給フィルタFlfの詰まりが有ると判定する(ステップS201~S204)。かかる構成では、供給フィルタFlfを介した循環ポンプ90から供給タンク91aへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、供給フィルタFlfの詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置3に設けられた供給フィルタFlfの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0099】
図8は回収フィルタの詰まりの有無を判定するフローチャートである。
図8のフローチャートは、回収フィルタ詰まり判定部516によって実行される。ステップS301では、回収フィルタFlrを介して回収タンク92aに向けてインクを送液する補給ポンプ962の出力が増大する補給出力増大動作が実行されたかが、回収フィルタ詰まり判定部516によって確認される。具体的には、
図6Cに示す送液モード2、4が開始されたかが、回収フィルタ詰まり判定部516によって確認される。
【0100】
つまり、循環モード2によれば、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Highから範囲Midに低下すると、回収タンク92a内のインクの量が不足していると判断されて、補給ポンプ962による送液が開始される。循環モード4によれば、回収タンク92a内のインクの液位Lrが範囲Midから範囲Lowに低下する、回収タンク92a内のインクの量が不足していると判断されて、補給ポンプ962による送液が開始される。これによって、補給ポンプ962から回収フィルタFlrを介した回収タンク92aへのインクの送液が開始され、換言すれば、回収タンク92aに送液されるインクの量が増大する。そのため、回収フィルタFlrに詰まりが無ければ、供給液位検出部97によって検出される液位Lrが上昇する。
【0101】
そこで、回収フィルタ詰まり判定部516は、補給出力増大動作の開始から所定の時間が経過すると(ステップS302で「YES」)、回収液位検出部98によって検出される回収タンク92a内のインクの液位Lrが回復したかを判断する。例えば、循環モード2によって補給出力増大動作が実行された場合には、回収液位検出部98によって検出されたインクの液位Lrが範囲Midから範囲Highに上昇したかが確認される。循環モード4によって補給出力増大動作が実行された場合には、回収液位検出部98によって検出されたインクの液位Lrが範囲Lowから範囲Midに上昇したかが確認される。
【0102】
そして、回収タンク92a内のインクの液位Lrの回復(換言すれば、上昇)が確認された場合(ステップS303で「YES」の場合)には、回収フィルタ詰まり判定部516は、回収フィルタFlrに詰まりが無いと判定する(ステップS304)。一方。回収タンク92a内のインクの液位Lrの回復(換言すれば、上昇)が確認されない場合(ステップS303で「NO」の場合)には、回収フィルタ詰まり判定部516は、回収フィルタFlrに詰まりがあると判定する(ステップS305)。この回収フィルタ詰まり判定部516の判定を受けて、UI制御部522は、回収フィルタFlrの交換作業を要求する情報がUI39のディスプレイに表示されるように、UI39を制御する(ステップS306)。
【0103】
図8に示す実施例では、補給ポンプ962(送液ポンプ)と回収タンク92a(リザーバタンク)とを流路接続する配管952(送液配管)に対して取り付けられた回収フィルタFlrの詰まりが判定される。この回収フィルタFlrは、補給ポンプ962と回収タンク92aとの間において配管952の途中の位置に設けられ、補給ポンプ962は、回収フィルタFlrを介して回収タンク92aにインクを送液する。また、回収タンク92a内のインクの不足が確認された場合には、補給ポンプ962は、回収フィルタFlrを介して回収タンク92aにインクを送液するための出力を増大させる補給出力増大動作を実行する。この際、回収フィルタFlrに詰まりがなければ、補給出力増大動作を実行する補給ポンプ962によって送液されるインクは回収フィルタFlrを通過して回収タンク92aに到達する。一方、回収フィルタFlrに詰まりがあれば、補給出力増大動作を実行する補給ポンプ962による回収タンク92aへのインクの送液が回収フィルタFlrによって阻害される。そこで、補給ポンプ962が補給出力増大動作を実行している際の回収タンク92a内に貯留されるインクの液位Lrの時間変化に基づき、回収フィルタFlrの詰まりの有無が判定される(ステップS301~S305)。つまり、回収フィルタFlrを介した補給ポンプ962から回収タンク92aへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、回収フィルタFlrの詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置3に設けられた回収フィルタFlrの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0104】
また、回収フィルタ詰まり判定部516(フィルタ詰まり判定部)は、補給ポンプ962が補給出力増大動作を開始してから所定の経過時間が経過した時点において、回収タンク92a内のインクの不足が解消していないことを、回収液位取得部515(液位取得部)が取得する液位Lfに基づき確認した場合には、回収フィルタFlrの詰まりが有ると判定する(ステップS301~S304)。かかる構成では、回収フィルタFlrを介した補給ポンプ962から回収タンク92aへのインクの送液を実際に確認した結果に基づき、回収フィルタFlrの詰まりの発生を判定することができる。その結果、印刷装置3に設けられた回収フィルタFlrの詰まりの発生を判定することが可能となっている。
【0105】
図9はメインフィルタの詰まりの有無を判定するフローチャートであり、
図10はメインフィルタ詰まりの有無の判定で示される各判定内容を表形式で示す図である。ステップS401では、メインフィルタ詰まり判定部519は、基準関係記憶部552に保存される基準関係Drを読み出す。この基準関係Drは、メイン配管992に装着されるメインフィルタFlmに詰まりが無い場合(例えば、メインフィルタFlmが新品の場合)において測定された、メインポンプ993の出力(初期出力Wi)と流量計Sfが計測するインクの流量(初期流量Fi)との関係を示す。かかる基準関係Drは、予め測定されて基準関係記憶部552に保存されている。
【0106】
ステップS402では、メインフィルタFlmおよび流量計Sfを介してバッファタンク95にインクを送液するためにメインポンプ993が発生する出力(実出力Wr)を、メインフィルタ詰まり判定部519が取得する。具体的には、メインポンプ制御部517はメインポンプ993に出力指令値を送信し、メインポンプ993は当該出力指令値が示す出力でインクを送液する。これに対して、メインフィルタ詰まり判定部519は、メインポンプ制御部517がメインポンプ993に送信する出力指令値が示す出力を、メインポンプ993の実出力Wrとして取得する。
【0107】
ステップS403では、当該実出力Wrでメインポンプ993によって送液されるインクの流量である実流量Frが流量計Sfによって計測される。そして、流量取得部518は、こうして計測されたインクの実流量Frを取得して、回収フィルタ詰まり判定部516に送信する。なお、ステップS402とステップS403の実行順序はこの例に限られず、逆でもよいし、同時でもよい。
【0108】
このようにステップS402、S403を実行することで、メインフィルタ詰まり判定部519は、インクを送液するためにメインポンプ993が発生する実出力Wrと、メインポンプ993が発生する実出力Wrによって送液されるインクの実流量Frとを取得する。
【0109】
ステップS404では、メインフィルタ詰まり判定部519は、実出力Wrと実流量Frとの関係と、初期出力Wiと初期流量Fiとの関係(基準関係Dr)との比較に基づき、メインフィルタFlmにフィルタ詰まりが発生しているか否かを判定する。具体的には、
図10に示すように、
・実出力Wrが初期出力Wiと等しく、初期流量Fiから閾流量Ftを引いた流量よりも実流量Frが低い
・初期出力Wiに閾出力Wtを加えた出力より実出力Wrが高く、実流量Frが初期流量Fiに等しい
・初期出力Wiに閾出力Wtを加えた出力より実出力Wrが高く、初期流量Fiから閾流量Ftを引いた流量よりも実流量Frが低い
といった各フィルタ詰まり判定条件のいずれかが満たされる場合には、メインフィルタFlmにフィルタ詰まりが発生していると判定される(ステップS404で「YES」)。そして、ステップS405において、メインフィルタFlmの交換が必要である旨がUI39のタッチパネルディスプレイに表示されるように、UI制御部522がUI39を制御する。
【0110】
各フィルタ詰まり判定条件のいずれもが満たされない場合(ステップS404で「NO」の場合)には、メインフィルタ詰まり判定部519は、実出力Wrと実流量Frとの関係と、初期出力Wiと初期流量Fiとの関係(基準関係Dr)との比較に基づき、メインポンプ993に不具合が発生しているか否かを判定する(ステップS406)。具体的には、
図10に示すように、
・実出力Wrが初期出力Wiより低く、実流量Frが初期流量Fiより低い
といったポンプ不具合判定条件が満たされる場合には、メインポンプ993に不具合が発生していると判定される(ステップS406で「YES」)。そして、ステップS407において、メインポンプ993に不具合が発生している旨がUI39のタッチパネルディスプレイに表示されるように、UI制御部522がUI39を制御する。
【0111】
ポンプ不具合判定条件が満たされない場合(ステップS406で「NO」の場合)には、メインフィルタ詰まり判定部519は、実出力Wrと実流量Frとの関係と、初期出力Wiと初期流量Fiとの関係(基準関係Dr)との比較に基づき、圧力損失が発生しているか否かを判定する(ステップS408)。具体的には、
図10に示すように、
・実出力Wrが初期出力Wiと等しく、実流量Frがゼロである
といった圧力損失判定条件が満たされる場合には、圧力損失が発生していると判定される(ステップS408で「YES」)。そして、ステップS409において、圧力損失が発生している旨がUI39のタッチパネルディスプレイに表示されるように、UI制御部522がUI39を制御する。一方、圧力損失判定条件が満たされない場合(ステップS408で「NO」の場合)には、ステップS401に戻る。
【0112】
図9および
図10の例では、メインタンク991とバッファタンク95とを流路接続するメイン配管992に対して取り付けられたメインフィルタFlmの詰まりが判定される。このメインフィルタFlmは、メインポンプ993とバッファタンク95との間におけるメイン配管992の途中の位置に設けられ、メインポンプ993は、メインフィルタFlmを介してバッファタンク95にインクを送液する。また、メイン配管992に取り付けられて、メインフィルタFlmから流出するインクの流量(流量関連値)を計測する流量計Sf(計測部)が設けられており、この流量計Sfにより計測された流量がメインフィルタFlmの詰まりの判定に用いられる。特に、メインフィルタFlmに詰まりがない場合におけるメインポンプ993の出力と流量計Sfにより計測される流量との関係である基準関係Drが予め基準関係記憶部552に記憶されている。また、メインポンプ993が実出力Wrを発生している際に流量計Sfが計測した流量である実流量Fr(実流量関連値)が取得される(ステップS402、S403)。そして、実出力Wrと実流量Frとの関係と、基準関係Drとの比較に基づき、メインフィルタFlmの詰まりの有無が判定される(ステップS404)。つまり、メインフィルタFlmに詰まりがない場合との比較に基づき、メインフィルタFlmの詰まりの有無が判定される。これによって、印刷装置3に設けられたメインフィルタFlmの詰まりの発生を判定することができる。
【0113】
図11は基準関係の取得方法の一例を示すフローチャートであり、
図12は
図11のフローチャートを実行する印刷装置の電気的構成を示すブロック図である。
図12の電気的構成が
図11の電気的構成と異なるのは、基準関係取得部523が設けられている点である。
【0114】
図11では、新品のメインフィルタFlmが作業者によってメイン配管992に装着されると(ステップS501)、メインポンプ993が始動する(ステップS502)。例えば、作業者がUI39に対してメインポンプ993の始動を示す指令を入力すると、メインポンプ制御部517は、この指令に応じてメインポンプ993が始動するように、メインポンプ993を制御する。これによって、メインポンプ993は所定出力(初期出力Wiに相当)を発生してインクを送液する。
【0115】
ステップS503では、基準関係取得部523は、メインポンプ993の出力を、初期出力Wiとして取得し、ステップS504では、基準関係取得部523は、流量計Sfが計測するインクの流量を初期流量Fiとして取得する。なお、ステップS503とステップS504の実行順序はこの例に限られず、逆でもよいし、同時でもよい。そして、基準関係取得部523は、初期出力Wiと初期流量Fiとの関係を基準関係Drとして基準関係記憶部552に保存する。
【0116】
かかる構成では、制御部51は、基準関係Drを取得する基準関係取得部523をさらに備える。この基準関係取得部523は、新品のメインフィルタFlmがメイン配管992に装着されると、メインポンプ993に初期出力Wi(基準出力)を発生させつつ流量計Sfに流量(流量関連値)を計測させて、流量計Sfにより計測された流量を初期流量Fi(基準流量関連値)として取得する。こうして、基準関係取得部523は初期出力Wiと初期流量Fiとの関係(基準関係Dr)を取得し、基準関係記憶部552は、基準関係取得部523により取得された基準関係Drを記憶する。かかる構成では、メインフィルタFlmの詰まりの判定に使用される基準関係Drを予め取得して、基準関係記憶部552に記憶しておくことができる。
【0117】
ところで、
図9に示したメインフィルタの詰まり判定では、メインフィルタFlmから流出するインクの流量を流量計Sfにより計測した結果に基づきメインフィルタFlmの詰まりの有無を判定している。しかしながら、メインフィルタFlmに流入する前のインクの圧力を計測した結果に基づきメインフィルタFlmの詰まりの有無を判定してもよい。
【0118】
図13は吐出ヘッドと当該吐出ヘッドにインクを供給するインク供給機構9a、吐出ヘッドからインクを回収するインク回収機構9b、および回収したインクを再びインク供給機構9aに戻すインク戻し機構9cの構成の変形例を模式的に示す図である。
図14は印刷装置が備える電気的構成の変形例を示すブロック図である。
図15はメインフィルタ詰まりの有無の判定で示される各判定内容の変形例を表形式で示す図である。
【0119】
図13に示す変形例と
図4に示す構成との違いは、圧力計Spが流量計Sfに代えて設けられている点である。この圧力計Spは、メインポンプ993とメインフィルタFlmとの間においてメイン配管992に設けられ、メインポンプ993から流出してメインフィルタFlmに流入する前のインクの圧力を計測する。これに対応して、
図14に示すように、制御部51は圧力取得部524を有し、圧力取得部524は圧力計Spにより計測されたインクの圧力を取得する。
【0120】
また、基準関係記憶部552に保存される基準関係Drは、メイン配管992に装着されるメインフィルタFlmに詰まりが無い場合(例えば、メインフィルタFlmが新品の場合)において測定された、メインポンプ993の出力(初期出力Wi)と圧力計Spが計測するインクの圧力(初期圧力Pi)との関係を示す。かかる基準関係Drは、予め測定されて基準関係記憶部552に保存されている。この基準関係Drは、
図11の基準関係取得のステップS504において、流量に代えて圧力を計測することで取得できる。
【0121】
かかる圧力計Spを用いた変形例では、
図9のメインフィルタ詰まり判定は次のように実行される。メインフィルタ詰まり判定部519は、基準関係Drを基準関係記憶部552から読み出して(ステップS401)、メインポンプ993の実出力Wrを取得する(ステップS402)。また、ステップS403では、メインフィルタ詰まり判定部519は、実出力Wrを発生するメインポンプ993により送液されてメインフィルタFlmに流入する前のインクの圧力が、圧力計Spによって実圧力Prとして計測されて、メインフィルタ詰まり判定部519は、圧力取得部524を介してこの実圧力Prを取得する。
【0122】
ステップS404では、メインフィルタ詰まり判定部519は、実出力Wrと実圧力Prとの関係と、初期出力Wiと初期圧力Piとの関係(基準関係Dr)との比較に基づき、メインフィルタFlmにフィルタ詰まりが発生しているか否かを判定する。具体的には、
図15に示すように、
・実出力Wrが初期出力Wiと等しく、初期圧力Piに閾圧力Ptを加えた圧力よりも実圧力Prが高い
・初期出力Wiから閾出力Wtを引いた出力より実出力Wrが低く、実圧力Prが初期圧力Piに等しい
・初期出力Wiから閾出力Wtを引いた出力より実出力Wrが低く、初期圧力Piに閾圧力Ptを加えた圧力よりも実圧力Prが高い
といった各フィルタ詰まり判定条件のいずれかが満たされる場合には、メインフィルタFlmにフィルタ詰まりが発生していると判定される(ステップS404で「YES」)。そして、ステップS405において、メインフィルタFlmの交換が必要である旨がUI39のタッチパネルディスプレイに表示されるように、UI制御部522がUI39を制御する。
【0123】
各フィルタ詰まり判定条件のいずれもが満たされない場合(ステップS404で「NO」の場合)には、メインフィルタ詰まり判定部519は、実出力Wrと実圧力Prとの関係と、初期出力Wiと初期圧力Piとの関係(基準関係Dr)との比較に基づき、メインポンプ993に不具合が発生しているか否かを判定する(ステップS406)。具体的には、
図15に示すように、
・実出力Wrが初期出力Wiより低く、実圧力Prが初期圧力Piより低い
といったポンプ不具合判定条件が満たされる場合には、メインポンプ993に不具合が発生していると判定される(ステップS406で「YES」)。そして、ステップS407において、メインポンプ993に不具合が発生している旨がUI39のタッチパネルディスプレイに表示されるように、UI制御部522がUI39を制御する。
【0124】
ポンプ不具合判定条件が満たされない場合(ステップS406で「NO」の場合)には、メインフィルタ詰まり判定部519は、実出力Wrと実圧力Prとの関係と、初期出力Wiと初期圧力Piとの関係(基準関係Dr)との比較に基づき、圧力損失が発生しているか否かを判定する(ステップS408)。具体的には、
図15に示すように、
・実出力Wrが初期出力Wiと等しく、実圧力Prがゼロである
といった圧力損失判定条件が満たされる場合には、圧力損失が発生していると判定される(ステップS408で「YES」)。そして、ステップS409において、圧力損失が発生している旨がUI39のタッチパネルディスプレイに表示されるように、UI制御部522がUI39を制御する。一方、圧力損失判定条件が満たされない場合(ステップS408で「NO」の場合)には、ステップS401に戻る。
【0125】
図9および
図10の例では、メインタンク991とバッファタンク95とを流路接続するメイン配管992に対して取り付けられたメインフィルタFlmの詰まりが判定される。このメインフィルタFlmは、メインポンプ993とバッファタンク95との間におけるメイン配管992の途中の位置に設けられ、メインポンプ993は、メインフィルタFlmを介してバッファタンク95にインクを送液する。また、メイン配管992に取り付けられて、メインフィルタFlmに流入するインクの圧力(流量関連値)を計測する圧力計Sp(計測部)が設けられており、この圧力計Spにより計測された圧力がメインフィルタFlmの詰まりの判定に用いられる。特に、メインフィルタFlmに詰まりがない場合におけるメインポンプ993の出力と圧力計Spにより計測される圧力との関係である基準関係Drが予め基準関係記憶部552に記憶されている。また、メインポンプ993が実出力Wrを発生している際に圧力計Spが計測した圧力である実圧力Pr(実流量関連値)が取得される(ステップS402、S403)。そして、実出力Wrと実圧力Prとの関係と、基準関係Drとの比較に基づき、メインフィルタFlmの詰まりの有無が判定される(ステップS404)。つまり、メインフィルタFlmに詰まりがない場合との比較に基づき、メインフィルタFlmの詰まりの有無が判定される。これによって、印刷装置3に設けられたメインフィルタFlmの詰まりの発生を判定することができる。
【0126】
以上に説明した実施形態では、印刷装置3が本発明の「印刷装置」の一例に相当し、吐出ヘッドHが本発明の「吐出ヘッド」の一例に相当し、ノズルHnが本発明の「ノズル」の一例に相当し、制御部51が本発明の「制御部」の一例に相当し、循環ポンプ制御部511あるいは補給ポンプ制御部514が本発明の「ポンプ制御部」の一例に相当し、供給液位取得部512あるいは回収液位取得部515が本発明の「液位取得部」の一例に相当し、供給フィルタ詰まり判定部513あるいは回収フィルタ詰まり判定部516が本発明の「判定部」の一例に相当し、メインポンプ制御部517が本発明の「メインポンプ制御部」の一例に相当し、流量取得部518あるいは圧力取得部524が本発明の「流量関連値取得部」の一例に相当し、メインフィルタ詰まり判定部519が本発明の「メインフィルタ詰まり判定部」の一例に相当し、記憶部55が本発明の「記憶部」の一例に相当し、基準関係記憶部552が本発明の「基準関係記憶部」の一例に相当し、循環ポンプ90あるいは補給ポンプ962が本発明の「送液ポンプ」の一例に相当し、戻り配管902あるいは配管952が本発明の「送液配管」の一例に相当し、供給タンク91aあるいは回収タンク92aが本発明の「リザーバタンク」の一例に相当し、供給配管91bあるいは回収配管92bが本発明の「接続配管」の一例に相当し、バッファタンク95が本発明の「バッファタンク」の一例に相当し、供給液位検出部97あるいは回収液位検出部98が本発明の「液位検出部」の一例に相当し、メインタンク991が本発明の「メインタンク」の一例に相当し、メイン配管992が本発明の「メイン配管」の一例に相当し、メインポンプ993が本発明の「メインポンプ」の一例に相当し、供給フィルタFlfあるいは回収フィルタFlrが本発明の「フィルタ」の一例に相当し、メインフィルタFlmが本発明の「メインフィルタ」の一例に相当し、流量計Sfあるいは圧力計Spが本発明の「計測部」の一例に相当する。
【0127】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、供給フィルタFlf、回収フィルタFlrおよびメインフィルタFlmの全てを設ける必要は必ずしもない。
【0128】
また、供給フィルタFlf、回収フィルタFlrおよびメインフィルタFlm以外にフィルタを設けて、当該フィルタの詰まりの有無を判定するように構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明は、インクを貯留するバッファタンクから吐出ヘッドに補給されたインクを吐出ヘッドから吐出する印刷技の全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0130】
3…印刷装置
H…吐出ヘッド
Hn…ノズル
51…制御部
511…循環ポンプ制御部
512…供給液位取得部
513…供給フィルタ詰まり判定部
514…補給ポンプ制御部
515…回収液位取得部
516…回収フィルタ詰まり判定部
517…メインポンプ制御部
518…流量取得部
519…メインフィルタ詰まり判定部
524…圧力取得部
55…記憶部
552…基準関係記憶部
90…循環ポンプ
902…戻り配管
91a…供給タンク
91b…供給配管
92a…回収タンク
92b…回収配管
95…バッファタンク
952…配管
962…補給ポンプ
97…供給液位検出部
98…回収液位検出部
991…メインタンク
992…メイン配管
993…メインポンプ
Flf…供給フィルタ
Flr…回収フィルタ
Flm…メインフィルタ
Sf…流量計
Sp…圧力計