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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139843
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】住宅
(51)【国際特許分類】
   E04H 1/02 20060101AFI20230927BHJP
   E04H 1/04 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
E04H1/02
E04H1/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045575
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502285457
【氏名又は名称】学校法人順天堂
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】田村 隆
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 宏一
(72)【発明者】
【氏名】林 淳蔵
(72)【発明者】
【氏名】中出 達也
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直樹
(72)【発明者】
【氏名】森谷 真帆
(72)【発明者】
【氏名】堀 賢
【テーマコード(参考)】
2E025
【Fターム(参考)】
2E025AA03
2E025AA12
2E025AA24
(57)【要約】
【課題】空気が所定の部屋から建物内の他の空間へ流入することを抑制することができる。
【解決手段】外部から直接給気するとともに排気ファン51にて外部へ排気可能な独立個室14を有する第1領域A1と、第1領域と隣接する共用部を有する第2領域A2と、第2領域と隣接するリビング21を有する第3領域A3と、を備え、第3領域は、第1領域及び第2領域よりも正圧とされ、第3領域から第2領域に向かう空気の流れが形成され、第1領域と第2領域との間には、開閉可能な扉D1が配置され、第1の建具が閉状態においては、第1領域と第2領域との間の空気の流通は遮断されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から直接給気するとともに排気ファンにて外部へ排気可能な独立個室を有する第1領域と、
該第1領域と隣接する共用部を有する第2領域と、
該第2領域と隣接するリビングを有する第3領域と、を備え、
前記第3領域は、前記第1領域及び前記第2領域よりも正圧とされ、
前記第3領域から前記第2領域に向かう空気の流れが形成され、
前記第1領域と前記第2領域との間には、開閉可能な第1の建具が配置され、
前記第1の建具が閉状態においては、前記第1領域と前記第2領域との間の空気の流通は遮断されている住宅。
【請求項2】
前記第1領域の周りには、前記住宅内の他の空間と仕切る壁が設けられ、
該壁は、
床スラブから天井スラブまでわたって配置される壁パネルと、
該壁パネルの下端部と前記床スラブとの間、及び前記壁パネルの上端部と前記天井スラブとの間に配置されるシール材と、を有する請求項1に記載の住宅。
【請求項3】
前記第2領域と前記第3領域との間には、開閉可能な第2の建具が配置され、
該第2の建具には、空気の流通が可能な通風空間が形成されている請求項1または2に記載の住宅。
【請求項4】
前記第1領域の排気を行う排気ファンと、
前記第2領域の排気を行う排気ファンと、が共通の排気ファンである請求項1から3のいずれか一項に記載の住宅。
【請求項5】
前記第1領域に入退出する開口は、前記第1の建具のみである請求項1から4のいずれか一項に記載の住宅。
【請求項6】
住戸に隣接して外部廊下が設けられており、
前記第1領域の排気を行う排気ダクトは、前記外部廊下を横切った先の外壁部まで延設されている請求項1から5のいずれか一項に記載の住宅。
【請求項7】
前記第3領域には少なくとも給気ファンを用いて給気されている請求項1から6のいずれか一項に記載の住宅。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅では、リビングやダイニング等の家族が集まる部屋の他に、特定の者が利用する独立性の高い居室(独立個室)が設けられることがある。例えば、独立個室は、仕事部屋として利用される場合等(下記の特許文献1,2参照)や、同居者が療養する療養部屋として利用される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3-286072号公報
【特許文献2】特開2003-161046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
療養部屋として利用される場合には、衛生管理上、他の空間への空気の流れを制御することが望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空気が所定の部屋から住戸内の他の空間へ流入することを抑制することができる住宅を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る住宅は、外部から直接給気するとともに排気ファンにて外部へ排気可能な独立個室を有する第1領域と、該第1領域と隣接する共用部を有する第2領域と、該第2領域と隣接するリビングを有する第3領域と、を備え、前記第3領域は、前記第1領域及び前記第2領域よりも正圧とされ、前記第3領域から前記第2領域に向かう空気の流れが形成され、前記第1領域と前記第2領域との間には、開閉可能な第1の建具が配置され、前記第1の建具が閉状態においては、前記第1領域と前記第2領域との間の空気の流通は遮断されている。
【0007】
このように構成された住宅では、第1領域が外部から直接給気するとともに排気ファンで排気する換気方法(第3種換気)を採用しているため、第1領域の空気が第2領域や第3領域へ流れ込むことが抑制される。また、第3領域は第2領域よりも正圧とされているため、第3領域から第2領域への気流(空気の流れ)が形成され、第2領域から第3領域に空気が流れ込むことが抑制される。つまり、第3領域に第1領域の空気が流れ込むことを抑制することができる。
【0008】
また、本発明に係る住宅は、前記第1領域の周りには、前記住宅内の他の空間と仕切る壁が設けられ、該壁は、床スラブから天井スラブまでわたって配置される壁パネルと、該壁パネルの下端部と前記床スラブとの間、及び前記壁パネルの上端部と前記天井スラブとの間に配置されるシール材と、を有していてもよい。
【0009】
このように構成された住宅では、第1領域の周りに設けられた壁の壁パネルの下端部と床スラブとの間にはシール材が配置され、壁パネルの上端部と天井スラブとの間にはシール材が配置されている。よって、壁パネルと床スラブ及び天井スラブとの隙間が封止されるため、第1の建具が閉状態のときは第1領域とそれ以外の領域との間の空気の流通を確実に抑制することができる。
【0010】
また、本発明に係る住宅は、前記第2領域と前記第3領域との間には、開閉可能な第2の建具が配置され、該第2の建具には、空気の流通が可能な通風空間が形成されていてもよい。
【0011】
このように構成された住宅では、第2の建具には空気の流通が可能な通風空間が形成されているため、建具の開閉状態によらず第3領域の空気を、通風空間を介して第2領域に流入させることができる。
【0012】
また、本発明に係る住宅は、前記第1領域の排気を行う排気ファンと、前記第2領域の排気を行う排気ファンと、が共通の排気ファンであってもよい。
【0013】
このように構成された住宅では、排気ファンの台数を抑えることができるためコストを抑えて効率よく運用することができる。
【0014】
また、本発明に係る住宅は、前記第1領域に入退出する開口は、前記第1の建具のみであってもよい。
【0015】
このように構成された住宅では、第1領域に入退出する開口は第1の建具のみであるため、住戸内から第1領域に流入出する空気の流れを第1の建具が設けられた開口部分に制限することができる。
【0016】
また、本発明に係る住宅は、住戸に隣接して外部廊下が設けられており、前記第1領域の排気を行う排気ダクトは、前記外部廊下を横切った先の外壁部まで延設されていてもよい。
【0017】
このように構成された住宅では、第1領域の排気を外壁部から外側に向かって排気することができるため、排気した空気を再び住戸内に給気してしまうことを抑制することができる。
【0018】
また、本発明に係る住宅は、前記第3領域には少なくとも給気ファンを用いて給気されていてもよい。
【0019】
このように構成された住宅では、第3領域を他の領域よりも容易に正圧を維持することができ、第2領域(および第1領域)から空気を引き込むことをより確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る住宅によれば、空気が所定の部屋から他の空間へ流入することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施形態に係る住宅を示す平面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る住宅の第1領域の周りに設置される壁の構成を模式的に示した立面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る住宅の第2の建具の構成を模式的に示した立面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る住宅における非感染者の動線を説明する平面図である。
図5】本発明の一実施形態に係る住宅における感染者の動線を説明する平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係る住宅について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る住宅を示す平面図である。図1に示すように、本実施形態に係る住宅1は、例えば集合住宅の一住戸である。なお、住宅1は一戸建てでもよく、以下で説明する各部屋の配置は一例である。
【0023】
便宜上、図1に示す紙面の左右方向をX方向とし、右側を+X側とし、左側を-X側とする。図1に示す紙面の上下方向をY方向とし、上側を+Y側とし、下側を-Y側とする。
【0024】
住宅1の+X側且つY方向の中間に、玄関11が配置されている。玄関11から-X方向に延びるように、廊下12が配置されている。
【0025】
廊下12の+Y側に隣接して、独立個室14が配置されている。独立個室14の-X側にはウォークインクローゼット15が配置されている。独立個室14と廊下12との間には扉D1が設けられている。独立個室14とウォークインクローゼット15が第1領域A1を構成している。
【0026】
廊下12の-Y側に隣接して、洗面所16が配置されている。洗面所16と廊下12との間には扉D2が設けられている。洗面所16に隣接してトイレ17が配置されている。トイレ17の扉D3は洗面所16に面して配置されている。洗面所16の+X側に隣接して脱衣室18が配置され、脱衣室18の+X側に隣接して浴室19が配置されている。玄関11、廊下12、洗面所16、トイレ17、脱衣室18、および浴室19が第2領域A2を構成している。
【0027】
洗面所16の-X側に隣接してキッチン20が配置されている。洗面所16とキッチン20との間には扉D4が設けられている。キッチン20の-X側に隣接してリビングダイニング21が配置されている。リビングダイニング21の+Y側には+X側から-X側に向かってワークスペース22、個室23、個室24が順に並んで配置されている。廊下12とリビングダイニング21との間には扉D5が設けられている。キッチン20、リビングダイニング21、ワークスペース22、個室23、および個室24が第3領域A3を構成している。
【0028】
第1領域A1と第2領域A2との間には、壁W1が設けられている。第1領域A1と第3領域A3との境界には、壁W2が設けられている。
【0029】
図2は、壁W1,W2の構成を模式的に示した立面図である。壁W1,W2を総称して壁Wと称することとする。図2に示すように、壁Wは、壁パネル31を有している。壁パネル31は、平板状に形成されている。壁パネル31の板面は、鉛直面に沿って配置されている。壁パネル31は、床スラブ32から天井スラブ33までわたって配置されている。
【0030】
壁パネル31の下端部31dと床スラブ32との間には、わずかに隙間が形成されている。壁パネル31の下端部31dと床スラブ32との間には、シール材35が設けられている。壁パネル31の上端部31uと天井スラブ33との間には、わずかに隙間が形成されている。壁パネル31の上端部31uと天井スラブ33との間には、シール材35が設けられている。シール材35は、隙間を閉塞して、空気が隙間を流れることを抑制するものである。
【0031】
図1に示すように、廊下12と独立個室14との間には、扉D1が設けられている。扉D1には、後述する扉D2~D5のような通風空間が形成されていない。つまり、扉D1が閉状態の場合には、廊下12と独立個室14との間で空気の流通は行われないように密閉可能に構成されている。つまり、扉D3を閉状態にすることで、独立個室14を他の居室から空気の流入・流出を遮断することができ、独立個室14への給気・排気を全て独立して行うことができる。
【0032】
廊下12と洗面所16との間には、扉D2が設けられている。洗面所16とトイレ17との間には、扉D3が設けられている。洗面所16とキッチン20との間には、扉D4が設けられている。扉D2,D3,D4は、いずれも引戸で構成されている。扉D2,D3,D4には、アンダーカットまたはガラリが設けられており、扉D2,D3,D4を挟んだ両側の部屋同士の間で空気の流通が可能になっている。
【0033】
廊下12とリビングダイニング21との間には、扉D5が設けられている。図3は扉D5の構成を模式的に示した立面図である。図3に示すように、扉D5は、ドア枠36と、ドア本体37と、を有している。ドア枠36は、上枠と一対の縦枠とを有する三方枠である。ドア本体37は、ドア枠36に不図示の丁番等を介して取り付けられ、リビングダイニング21側に開くようになっている。
【0034】
扉D2には、リビングダイニング21側から廊下12側に空気の流通が可能な通風空間が形成されている。通風空間は、例えば、床面Fとドア本体37の下端部との間に形成された隙間(アンダーカット)s1である。また、通風空間として、ドア本体37に板厚方向(リビングダイニング21側から廊下12側に向かう方向)に貫通するルーバー等の開口が形成されていてもよい。
【0035】
住宅1には、第1給排気システム40、および第2給排気システム70が設けられている。第1給排気システム40と第2給排気システム70とは、同一の部屋を給排気することなく、別系統とされている。図1において、破線の矢印が給気経路を示し、実線の矢印が排気経路を示している。
【0036】
第1給排気システム40は、第1領域A1の給排気を行うものである。第1給排気システム40は、第1給気設備41と、第1排気設備46と、を有している。
【0037】
第1給気設備41は、外部給気口42を有している。外部給気口42は、例えば、独立個室14の外壁等に設けられ、給気量の調整が可能な給気レジスターである。
【0038】
第1排気設備46は、排気口47、排気口48、排気口49を有している。排気口47は、例えば、独立個室14の天井や壁等に設けられている。排気口48は、例えば、トイレ17の天井等に設けられている。排気口49は、例えば、脱衣室18の天井等に設けられている。排気口47にはダクト50が接続されている。ダクト50は天井内に配設され、浴室19の天井内に設けられた排気ファン51に接続されている。排気口48にはダクト52が接続されている。ダクト52は天井内に配設され、浴室19の天井内に設けられた排気ファン51に接続されている。排気口49にはダクト53が接続されている。ダクト53は天井内に配設され、浴室19の天井内に設けられた排気ファン51に接続されている。廊下12および洗面所16への給気は、リビングダイニング21およびキッチン20から扉D4,D5の通風空間を介して行われる。排気ファン51は、例えばシックハウス用の24時間機械換気ファンを用いている。
【0039】
排気ファン51には排気ダクト54が接続されている。排気ダクト54は排気ファン51から住戸外へ導かれ、外部廊下55の天井を横切るように配設され、住宅1の外壁部56から排気されるように構成されている。
【0040】
排気ダクト53には、逆流防止ダンパ(不図示)を設けてもよい。逆流防止ダンパを設けることで、排気した独立個室14内の空気が住宅1内に再循環することを抑制するように構成されている。
【0041】
第1領域A1は、外部給気口42を介して独立個室14の内部に給気する。独立個室14内の空気は、排気ファン51によって排気口47から強制的に引き込まれ、ダクト50,54を通過して住宅1の外部に排気される。このように、独立個室14は、住宅1の外部と直接給排気可能が可能とされている。
【0042】
第2領域A2は、扉D4の通風空間を介してキッチン20から洗面所16に給気し、扉D5を介してリビングダイニング21から廊下12に給気をしている。廊下12に給気された空気は、扉D2の通風空間を介して洗面所16に流入する。洗面所16に流入した空気の一部は、扉D3の通風空間を介してトイレ17に流入する。トイレ17に流入した空気は、排気口48を介して外部へ排気される。また、洗面所16に流入した空気の一部は、脱衣室18に流入する。脱衣室18に流入した空気は、排気口49を介して外部へ排気される。さらに、洗面所16に流入した空気の一部は、浴室19に流入する。浴室19に流入した空気は、ファン51に設けられた排気口(不図示)を介して外部へ排気されるように構成されている。
【0043】
第1排気設備46は、排気口47,48,49、ダクト50,52,53、排気ファン51、および排気ダクト54で構成されている。
【0044】
第2給排気システム70は、キッチン給排気設備71を有している。キッチン給排気設備71は、例えばキッチン20のレンジフードに設けられ、給排気を同時に行うものである。本実施形態の第2給排気システム70では、キッチン20に常時給気を行うための給気ファン72がさらに設けられている。
【0045】
第2給排気システム70によって、キッチン20部分の給気のみでなく、リビングダイニング21の給気も行われる。住宅1のベランダ61に面した壁面には外部給気口73,74が設けられている。外部給気口73は、リビングダイニング21に面した壁面に設けられている。外部給気口74は、個室24に面した壁面に設けられている。つまり、第3領域A3および扉D4,D5等を介した第2領域A2への給気は、給気ファン72と、外部給気口73,74と、から行われる。
【0046】
キッチン給排気設備71は、キッチン給気設備75と、キッチン排気設備76と、を有している。キッチン給気設備75は、ベランダ61から外気を取り込み、例えば天井内に配設されたダクト77を介して給気ファン72に接続される。給気ファン72には給気ダクト78が接続されている。給気ダクト78は、キッチン20に設けられたレンジフードの給気口79に接続されており、給気口79から室内へと給気される。
【0047】
キッチン排気設備76は、キッチン20のレンジフードに設けられた排気口80を有している。排気口80には排気ファン(不図示)が連設されている。排気ファンにはダクト81が接続されている。ダクト81は、例えばリビングダイニング21の天井内に配設され、ベランダ61へ排気するように構成されている。
【0048】
なお、キッチン給気設備75は、給気ファン72と給排気型レンジフードとを備えているが、給気ファン72を設けずに、レンジフードにおいて強制給気型のレンジフードを用いて常時キッチン20からリビングダイニング21に給気するように構成してもよい。
【0049】
第3領域A3へ給気された空気の余剰分は、扉D4,D5の通風空間を介して第2領域A2へ流れるように構成されている。換言すると、第3領域A3は、第2領域A2よりも正圧に維持されているため、第2領域A2から第3領域A3へ空気が流入することを抑制している。
【0050】
ここで、各室への換気風量の一例を説明する。
第1領域A1の独立個室14の排気風量は、24時間換気モードで31.5m/h、強風運転モードで45.5m/hとする。第2領域A2のトイレ17と脱衣室18の排気風量は、24時間換気モードで41m/h、強風運転モードで61.5m/hとし、浴室19の排気風量は、24時間換気モードで47.5m/h、強風運転モードで71m/hとする。つまり、第2領域A2の全体の排気風量は、24時間換気モードで88.5m/h、強風運転モードで132.5m/hとする。第3領域A3の常時給気量は180m/hとし、キッチン20のレンジフード使用時は600m/h(常時換気180m/h+キッチン給気420m/h)とする。なお、レンジフードは給気と排気が同風量になるため、キッチン排気は420m/hとなる。
【0051】
つまり、第1領域A1の換気回数は24時間換気モードで約1.2回/hとなり、第2領域A2および第3領域A3の換気回数は24時間換気モードで約0.5回/hとなる。強風運転モードではそれ以上の換気回数を確保することができる。
【0052】
次に、家族の中で感染症の感染者が出たときの住戸内でのそれぞれの動線について説明する。図4に示すように、非感染者は、帰宅後に玄関11において、手指をアルコール消毒する(ステップ1)。消毒後に例えば、廊下12に設けたコート掛けに上着を脱いでかける(ステップ2)。その後、扉D2を通過して洗面所16に入る(ステップ3)。扉D2は例えばハンドルを握らなくても開閉できる仕様のものを採用する。洗面所16において手を洗い(ステップ4)、洗面所16内で部屋着に着替える(ステップ5)。その後、扉D2,D5を通過してリビングダイニング21に入る(ステップ6,7)。または、扉D4を開けてキッチン20を経由してリビングダイニング21入る。
【0053】
図5に示すように、感染者は、独立個室14にて生活を行う。感染者がトイレ17などに行く際の動線について説明する。感染者は、扉D1を開けて廊下12へ出る(ステップ1)。扉D1は例えば開閉の際にハンドルを握らないドアノブが取り付けられたものなどを採用するとよい。廊下12から扉D2を通過して洗面所16に入る(ステップ2)。扉D2についてもハンドルを握らなくても開閉できる仕様のものを採用するとよい。洗面所16において手を洗う(ステップ3)。扉D3を開けてトイレ17に入り、用を足す(ステップ4)。扉D3についてもハンドルを握らなくても開閉できる仕様のものを採用するとよい。トイレ17から出る前にトイレ17内に設置した消毒液で消毒を行う(ステップ5)。扉D3を開けて洗面所16に戻り、手を洗う(ステップ6)。扉D2を通過して廊下12に出て(ステップ7)、さらに扉D1を通過して独立個室14へと戻る(ステップ8)。このように構成することで、感染者が第2領域A2の共用部を使用しても、非感染者への感染を極力防止することができる。
【0054】
本実施形態の住宅1によれば、外部から直接給気するとともに排気ファン51にて外部へ排気可能な独立個室14を有する第1領域A1と、該第1領域A1と隣接する洗面所16などの共用部を有する第2領域A2と、該第2領域A2と隣接するリビングダイニング21を有する第3領域A3と、を備え、第3領域A3は、第1領域A1及び第2領域A2よりも正圧とされ、第3領域A3から第2領域A2に向かう空気の流れが形成され、第1領域A1と第2領域A2との間には、開閉可能な扉(第1の建具)D1が配置され、扉D1が閉状態においては、第1領域A1と第2領域A2との間の空気の流通は遮断されている。このように構成された住宅1では、第1領域A1が外部から直接給気するとともに排気ファン51で排気する換気方法(第3種換気)を採用しているため、第1領域A1の空気が第2領域A2や第3領域A3へ流れ込むことが抑制される。また、第3領域A3は第2領域A2よりも正圧とされているため、第3領域A3から第2領域A2への気流(空気の流れ)が形成され、第2領域A2から第3領域A3に空気が流れ込むことが抑制される。つまり、第3領域A3から第1領域A1に空気が流れ込むことを抑制することができる。
【0055】
また、住宅1の第1領域A1の周りには、住戸内の他の空間と仕切る壁W(W1,W2)が設けられ、該壁Wは、床スラブ32から天井スラブ33までわたって配置される壁パネル31と、該壁パネル31の下端部31dと床スラブ32との間、及び壁パネル31の上端部31uと天井スラブ33との間に配置されるシール材35と、を有している。このように構成された住宅1では、第1領域A1の周りに設けられた壁Wの壁パネル31の下端部31dと床スラブ32との間にはシール材35が配置され、壁パネル31の上端部31uと天井スラブ33との間にはシール材35が配置されている。よって、壁パネル31と床スラブ32及び天井スラブ33との隙間が封止されるため、扉D1が閉状態のときは第1領域A1とそれ以外の領域A2,A3との間の空気の流通を確実に抑制することができる。
【0056】
また、第2領域A2と第3領域A3との間には、開閉可能な扉(第2の建具)D4が配置され、該扉D4には、空気の流通が可能な通風空間が形成されている。このように構成された住宅1では、扉D4には空気の流通が可能な通風空間が形成されているため、扉D4の開閉状態によらず第3領域A3の空気を、通風空間を介して第2領域A2に流入させることができる。
【0057】
また、第1領域A1の排気と、第2領域A2の排気と、を共通の排気ファン51で排気するように構成した。このように構成された住宅1では、排気ファンの台数を抑えることができるためコストを抑えて効率よく維持することができる。
【0058】
また、第1領域A1に入退出する開口は、扉D1のみで構成した。このように構成された住宅1では、第1領域A1に入退出する開口は扉D1のみであるため、住戸内から第1領域A1に流入出する空気の流れを扉D1が設けられた開口部分に制限することができる。
【0059】
また、住戸に隣接して外部廊下55が設けられており、第1領域A1の排気を行う排気ダクト54は、外部廊下55を横切った先の外壁部56まで延設した。このように構成された住宅1では、第1領域A1の排気を外壁部56から外側に向かって排気することができるため、排気した空気を再び住戸内に給気してしまうことを抑制することができる。
【0060】
また、第3領域A3は少なくとも給気ファン72を用いて給気している。このように構成された住宅1では、第3領域A3を他の領域よりも容易に正圧を維持することができ、第2領域A2(および第1領域A1)から空気を引き込むことをより確実に抑制することができる。
【0061】
本実施形態によれば、例えば、新型コロナウイルス、インフエンザ、ノロウイルスなどの感染症に感染した、あるいは感染した懸念のある家族が家庭内で感染を広げてしまうリスクを低減することができる。
【0062】
なお、上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0063】
例えば、独立個室14の周りに設けられた壁Wの壁パネル31の上下端部にはシール材35が設けられ、壁パネル31と床スラブ32及び天井スラブ33との隙間が封止されているが、本発明はこれに限られない。壁パネル31と床スラブ32及び天井スラブ33との隙間がシール材35で封止されていなくてもよい。
【0064】
また、扉D5には空気の流通が可能な隙間(通風空間)s1が形成されているが、本発明はこれに限られない。扉D5に隙間s1が形成されていなくてもよい。
【0065】
また、廊下12と独立個室14との間には密閉可能な扉D1が設けられているが、廊下12と独立個室14との間に前室を設けてもよい。
【0066】
また、独立個室14から住宅1の他の空間にまたがって配置された配線や配管には、独立個室14と他の空間との境界部分で、シール材で封鎖するようにしてもよい。これによって、独立個室14内の空気が、配線や配管を伝わって、他の空間に流入することが抑制される。
【0067】
住宅1のプランは一例であり、別のプランであってもよい。感染懸念エリアを限定したゾーニング計画をすればよい。また、感染懸念エリアから他の部屋へ空気が逆流しない換気計画になっていればよい。
【符号の説明】
【0068】
1 住宅
11 玄関(共用部)
12 廊下(共用部)
14 独立個室
16 洗面所(共用部)
17 トイレ(共用部)
18 脱衣室(共用部)
19 浴室(共用部)
21 リビングダイニング(リビング)
31 壁パネル
31d 下端部
31u 上端部
32 床スラブ
33 天井スラブ
35 シール材
51 排気ファン
54 排気ダクト
55 外部廊下
56 外壁部
72 給気ファン
A1 第1領域
A2 第2領域
A3 第3領域
D1 扉(第1の建具)
D4 扉(第2の建具)
W1(W) 壁
W2(W) 壁
図1
図2
図3
図4
図5