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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139857
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】車両の走行制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/08 20120101AFI20230927BHJP
   G08G 1/123 20060101ALI20230927BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20230927BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230927BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20230927BHJP
   B60W 40/02 20060101ALI20230927BHJP
   B60W 60/00 20200101ALI20230927BHJP
   G05D 1/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B60W30/08
G08G1/123 A
G08G1/16 C
G08G1/09 V
G08G1/00 X
B60W40/02
B60W60/00
G05D1/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045598
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勝彦
【テーマコード(参考)】
3D241
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D241BA31
3D241BB31
3D241DB01Z
3D241DC25Z
3D241DC38Z
3D241DC57Z
5H181AA01
5H181AA27
5H181BB04
5H181BB05
5H181CC01
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF07
5H181FF13
5H181FF22
5H181FF25
5H181FF27
5H181FF33
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL04
5H181LL09
5H181MB02
5H301AA03
5H301BB20
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD07
5H301DD17
5H301GG08
5H301GG09
5H301LL02
5H301LL03
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL11
5H301QQ06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】リスク軽減機能の作動時に、交差点での交通流の乱れや他の交通参加者との接触・衝突のリスクを低減する。
【解決手段】遠隔監視・操作による自動運行装置を備えた車両1において、遠隔監視・操作の継続が困難な状況になった場合に、車両1を目標停止位置に停止させるリスク軽減機能(RMF)を実行するものにおいて、RMFの作動に対備して、車両1の位置情報および地図情報に基づき、目標停止位置候補の探索を実行し、交差点近傍においてRMFが作動する場合、自動走行の目標経路PAとは異なる経路に位置する目標停止位置候補を含む複数の目標停止位置候補のそれぞれについて、車両1が現在位置から目標停止位置候補に到達するまでのリスクの高さを表すリスクファクタRFを算出し、複数の目標停止位置候補の中からリスクファクタRFが最も低い目標停止位置候補を、目標停止位置として選択する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔監視・操作による自動走行を実行するための自動運行装置を備えた車両の走行制御装置であって、
遠隔監視・操作の継続が困難な状況になった場合に、前記車両を目標停止位置に停止させるリスク軽減制御を実行するリスク軽減機能(RMF)を有するものにおいて、
前記自動運行装置は、
前記自動走行中に、前記RMFの作動に対備して、前記車両の位置情報および地図情報に基づき、目標停止位置候補の探索を実行し、
交差点近傍において前記RMFが作動する場合、前記自動走行の目標経路とは異なる経路に位置する目標停止位置候補を含む複数の目標停止位置候補のそれぞれについて、前記車両が現在位置から目標停止位置候補に到達するまでのリスクの高さを表すリスクファクタを算出し、
前記複数の目標停止位置候補の中から前記リスクファクタが最も低い目標停止位置候補を、目標停止位置として選択するように構成されている、車両の走行制御装置。
【請求項2】
前記リスクファクタは、前記交差点および前記交差点付近における前記車両と他の交通参加者との交錯点の数に関するポイント、前記車両の現在位置から目標停止位置候補までの予測走行時間に関するポイント、および前記車両の現在位置から目標停止位置候補までの予測走行距離に関するポイントの合計として算出される、請求項1に記載の車両の走行制御装置。
【請求項3】
前記リスクファクタは、前記交錯点の数に関するポイント、前記予測走行時間に関するポイント、および前記予測走行距離に関するポイントの順で重みが大きくなるように重みづけをして算出される、請求項2に記載の車両の走行制御装置。
【請求項4】
前記複数の目標停止位置候補のリスクファクタがそれぞれ同じ値の場合、目標停止位置候補への進行方向が、前記交差点を直進する方向、前記交差点において前記車両が対向車線を横切らずに曲がる方向、および前記交差点において前記車両が前記対向車線を横切って曲がる方向の順で優先的に、前記目標停止位置として選択される、請求項1から3のいずれか一項に記載の車両の走行制御装置。
【請求項5】
前記交差点および前記交差点付近には、目標停止位置候補の探索から除外する停止禁止領域が設定される、請求項1から4のいずれか一項に記載の車両の走行制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の走行制御装置に関し、さらに詳しくは、遠隔監視・操作による自動走行中の車両のリスク軽減機能に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔監視・操作型の自動運行装置によって、特定条件下において、無人の車両の運転を行う技術の開発が進められている。遠隔型自動運転システムは、例えば車間距離制御システム(ACCS)や連続自動操舵システムを備える自動運行装置による車両の走行を、遠隔操作基地局において監視し、必要に応じて車両の操作を行うように構成されている。このような遠隔型自動運転システムにおいては、自動運行装置による車両の走行中、何らかの理由によって遠隔監視・操作の継続が困難な状況となった場合には、車両に搭載された自動運行装置のリスク軽減機能(RMF:Risk Mitigation Function)によって対応する必要がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、自動運転中の車両に異常が発生した場合に、退避場所を検索して退避場所までの誘導路を算出し、自動操舵により誘導路に沿って走行するように車両を制御することが開示されている。退避場所としては、例えば空き地や商業施設の駐車場など、車両が駐車可能なスペースが設定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-152963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、交差点近傍でRMFが作動した場合、交差点において他の交通参加者と交錯したりするなど、退避場所まで車両を誘導する間に、交通流の乱れや他の交通参加者との接触・衝突を招くおそれがある。
【0006】
本発明は、上記のような実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、リスク軽減機能の作動時に、交差点での交通流の乱れや他の交通参加者との接触・衝突のリスクを低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、遠隔監視・操作による自動走行を実行するための自動運行装置を備えた車両の走行制御装置であって、遠隔監視・操作の継続が困難な状況になった場合に、前記車両を目標停止位置に停止させるリスク軽減制御を実行するリスク軽減機能(RMF)を有するものにおいて、前記自動運行装置は、前記自動走行中に、前記RMFの作動に対備して、前記車両の位置情報および地図情報に基づき、目標停止位置候補の探索を実行し、交差点近傍において前記RMFが作動する場合、前記自動走行の目標経路とは異なる経路に位置する目標停止位置候補を含む複数の目標停止位置候補のそれぞれについて、前記車両が現在位置から目標停止位置候補に到達するまでのリスクの高さを表すリスクファクタを算出し、前記複数の目標停止位置候補の中から前記リスクファクタが最も低い目標停止位置候補を、目標停止位置として選択するように構成されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両の走行制御装置は、交差点近傍におけるリスク軽減機能の作動時に、交差点での交通流の乱れや他の交通参加者との接触・衝突のリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施の形態における車両の走行制御システムを示す概略図である。
図2図2は、車両の外界センサ群を示す概略的な平面図である。
図3図3は、車両の走行制御システムを示すブロック図である。
図4図4(a),(b)は、右折時の交差点周辺における車両の停止位置と他の交通参加者との関係を説明する図である。
図5図5(a),(b)は、左折時の交差点周辺における車両の停止位置と他の交通参加者との関係を説明する図である。
図6図6(a),(b)は、直進時の交差点周辺における車両の停止位置と他の交通参加者との関係を説明する図である。
図7図7(a),(b)は、RMF用に設定される複数の目標停止位置候補を示す図である。
図8図8(a),(b)は、RMF用に設定される複数の目標停止位置候補を示す図である。
図9図9は、丁字路における目標停止位置の選択を説明する図である。
図10図10は、十字路における目標停止位置の選択を説明する図である。
図11図11は、RMF作動の流れを説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態による車両1の走行制御システムは、運行設計領域(ODD:Operational Design Domain)内において運転操作の全てを行う、SAE(Society of Automotive Engineers)レベル4相当の自動運転を実行可能に構成されている。また、車両1の走行制御システムは遠隔監視・操作による自動走行が可能な遠隔型の自動運転システムであり、車両1としては、無人自動運転移動サービスを提供するタクシーやレンタカー等のサービスカーが想定される。
【0011】
図1から図3において、本実施の形態に係る走行制御システムを備えた車両1は、エンジンや車体など一般的な自動車の構成要素に加え、従来運転者が行っていた認知・判断・操作を車両側で行うために、車両周囲環境を検知する外界センサ21、車両情報を検知する内界センサ22、地図情報データベース23、測位手段24、速度制御および操舵制御のためのコントローラ/アクチュエータ群、車間距離制御のためのACCコントローラ15、自動操舵制御のための自動操舵コントローラ16、および、それらを統括して経路追従制御を実行するための自動運行装置10を備えている。車両1は、さらに、遠隔操作指令と車両情報・自車位置情報等を遠隔操作基地局25Rとの間で通信するための通信機25を備えている。
【0012】
速度制御および操舵制御のためのコントローラ/アクチュエータ群は、操舵制御のためのEPS(電動パワーステアリング)コントローラ31、加減速度制御のためのエンジンコントローラ32、ESP/ABSコントローラ33を含む。ESP(登録商標;エレクトロニックスタビリティプログラム)はABS(アンチロックブレーキシステム)を包括してスタビリティコントロールシステム(車両挙動安定化制御システム)を構成する。
【0013】
外界センサ21は、自車線および隣接車線を画定する道路上の区分線、自車周辺にある他車両や障害物、人物などの存在と相対距離を画像データや点群データなどの外界データとして自動運行装置10に入力するための複数の検知手段からなる。
【0014】
例えば、図2に示すように、車両1は、前方検知手段211,212としてミリ波レーダ(211)およびカメラ(212)、前側方検知手段213および後側方検知手段214としてLIDAR(レーザ画像検出/測距)、後方検知手段215としてカメラ(バックカメラ)を備えている。外界センサ21は、自車両周囲360度をカバーし、それぞれ自車前後左右方向所定範囲内の他車両や障害物等の位置と距離、自車線および隣接車線の区分線位置を検知できるようにしている。なお、後方検知手段としてミリ波レーダ(またはLIDAR)を追加することもできる。
【0015】
内界センサ22は、車速センサ、ヨーレートセンサ、加速度センサなど、車両の運動状態を表す物理量を計測する複数の検知手段からなる。図3に示すように、内界センサ22のそれぞれの測定値は、自動運行装置10、ACCコントローラ15、自動操舵コントローラ16、および、EPSコントローラ31に入力され、外界センサ21からの入力とともに演算処理される。
【0016】
自動運行装置10は、環境状態推定部11、リスク軽減機能(RMF:Risk Mitigation Function)部12、経路生成部13、および、車両制御部14を含み、以下に記載されるような機能を実施するためのコンピュータ、すなわち、プログラム及びデータを記憶したROM、演算処理を行うCPU、前記プログラム及びデータを読出し、動的データや演算処理結果を記憶するRAM、および、入出力インターフェースなどで構成されている。
【0017】
環境状態推定部11は、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)等の測位手段24による自車位置情報と地図情報データベース23の地図情報とのマッチングにより自車の絶対位置を取得し、外界センサ21により取得される画像データや点群データなどの外界データに基づいて自車線および隣接車線の区分線位置、他車位置および速度を推定する。また、内界センサ22によって計測される内界データより自車の運動状態を取得する。
【0018】
RMF部12は、環境状態推定部11から入力される情報に基づき、道路条件や環境条件が運行設計領域(ODD)外となる場合や、システムが正常に作動しない場合に、車両1を目標とする停止エリア内に安全に停止させるリスク軽減機能(RMF)を作動させるかを判断する。本実施の形態においては、通信機25を介した遠隔操作基地局25Rによる走行制御システムの遠隔監視・操作の継続が困難な状況になった場合に、RMFを作動させるように構成されている。
【0019】
RMFを作動させる前、および作動中には、報知部17によって車両1の乗員・乗客や車外の道路ユーザに対する報知を行う。また、後述するようにRMFの作動によって車両1の進行方向が変化する場合は、報知部17によって、進行方向が変化することを報知するようにしてもよい。なお、報知部17は、車内外に遠隔監視・操作による自動走行が停止したことを知らせるように構成されてもよい。報知部17による報知の方法としては、ランプ点灯やテキスト表示など視覚による方法、および/または音声出力など聴覚による方法があげられる。
【0020】
経路生成部13は、環境状態推定部11で推定された自車位置から、到達目標までの目標経路を生成するように構成されている。経路生成部13は、自車位置情報と地図情報に基づいて、出発地から目的地までのルート探索を行い、大まかな目標経路、いわゆるグローバル経路を生成する。さらに、経路生成部13は、環境状態推定部11で推定された隣接車線の区分線位置、他車位置および速度、自車の運動状態に基づいて、車線維持走行、車線変更、進路変更などの自動走行における詳細な目標経路、いわゆるローカル経路を生成する。経路生成部13はさらに、RMFの作動により車両1を停止させる場合は、目標停止位置までのRMF作動用の目標経路も生成するように構成されている。
【0021】
車両制御部14は、経路生成部13で生成された目標経路に基づいて目標車速および目標舵角を算出し、定速走行または車間距離維持・追従走行のための速度指令をACCコントローラ15に送信し、経路追従のための操舵角指令を自動操舵コントローラ16経由でEPSコントローラ31に送信する。
【0022】
なお、車速は、EPSコントローラ31およびACCコントローラ15にも入力される。車速により操舵反力が変わるため、EPSコントローラ31は、車速毎の操舵角-操舵トルクマップを参照して操舵機構41にトルク指令を送信する。エンジンコントローラ32、ESP/ABSコントローラ33、EPSコントローラ31により、エンジン42、ブレーキ43、操舵機構41を制御することで、車両1の縦方向および横方向の運動が制御される。
【0023】
[遠隔型自動運転システムの概要]
次に、遠隔型自動運転システムの概要を説明する。本実施の形態における自動運転システムは、遠隔監視・操作方式の自動運転システムであり、自動運転システムによる車両1の走行は、遠隔操作基地局25Rによって監視され、必要に応じて遠隔操作基地局25Rから操作される。
【0024】
自動運転システムは、車間距離制御システム(ACCS:Adaptive Cruise Control System)と、連続的に自動で車線維持、車線変更を行う連続自動操舵システムとを組み合わせたシステムである。自動運転システムは、自動運行装置10とともに車間距離制御システム(ACCS)を構成するACCコントローラ15および連続自動操舵システムを構成する自動操舵コントローラ16が共に作動している状態で実行可能となる。
【0025】
遠隔操作基地局25Rのオペレータは、車両1の出発前に、出発地と目的地を設定する。設定された出発地と目的地は、遠隔操作基地局25Rから通信機25を介して車両1の自動運行装置10に入力される。経路生成部13は、環境状態推定部11から得られる自車位置情報と地図情報に基づいて、出発地から目的地までのグローバル経路を生成する。経路生成部13は、生成したグローバル経路に基づき、外界センサ21によって取得される外界情報(車線、自車位置、自車走行車線および隣接車線を走行中の他車位置、速度、歩行者や自転車の有無)、および、内界センサ22によって取得される内界情報(車速、ヨーレート、加速度)に基づいて、ローカル経路および目標車速を生成する。
【0026】
遠隔操作基地局25Rのオペレータは、環境条件や道路条件などがシステムの運行設計領域(ODD)内に維持されていると判断すると、生成した目標経路および目標車速に従って車両1を走行させるように自動運行装置10に発進指令を送信する。
【0027】
車両制御部14は、自車位置と自車の運動特性、すなわち、車速Vで走行中に操舵機構41に操舵トルクTが与えられた時に生じる前輪舵角δによって、車両運動により生じるヨーレートγと横加速度(dy/dt)の関係から、Δt秒後の車両の速度・姿勢・横変位を推定する。車両制御部14は、Δt秒後に横変位がytとなるような操舵角指令を自動操舵コントローラ16経由でEPSコントローラ31に与え、Δt秒後に速度Vtとなるような速度指令をACCコントローラ15に与える。
【0028】
ACCコントローラ15、自動操舵コントローラ16、EPSコントローラ31、エンジンコントローラ32、および、ESP/ABSコントローラ33は、自動操舵とは無関係に独立して作動するが、自動運転システムの作動中は、自動運転コントローラ10からの指令入力でも作動可能になっている。
【0029】
ACCコントローラ15からの減速指令を受けたESP/ABSコントローラ33は、アクチュエータに油圧指令を出し、ブレーキ43の制動力を制御することで車速を制御する。また、ACCコントローラ15からの加減速指令を受けたエンジンコントローラ32は、アクチュエータ出力(スロットル開度)を制御することで、エンジン42にトルク指令を与え、駆動力を制御することで車速を制御する。
【0030】
ACC機能(ACCS)は、外界センサ21を構成する前方検知手段211としてのミリ波レーダ、ACCコントローラ15、エンジンコントローラ32、ESP/ABSコントローラ33等のハードウエアとソフトウエアの組合せで機能する。
【0031】
すなわち、先行車がいない場合は、ACCセット速度(設定速度)を目標車速として定速走行する。先行車に追いついた場合(先行車速度がACCセット速度以下の場合)には、先行車の速度に合わせて、設定されたタイムギャップ(車間時間=車間距離/自車速)に応じた車間距離(設定車間距離)を維持しながら先行車に追従走行する。
【0032】
連続自動操舵システムは、外界センサ21によって取得される画像データや点群データ、および内界センサ22によって取得される車両情報に基づき、自動運行装置10の環境状態推定部11で車線区分線、自車位置、および隣接車線を走行中の他車位置、速度を検知する。連続自動操舵システムは、これらの情報に基づき、車線中央を走行する車線維持制御、および車線区分線を跨ぐ車線変更制御を実行するように、自動操舵コントローラ16を介してEPSコントローラ31により操舵制御を行う。
【0033】
すなわち、自動操舵コントローラ16からの操舵角指令を受けたEPSコントローラ31は、車速-操舵角-操舵トルクのマップを参照して、アクチュエータ(EPSモータ)にトルク指令を出し、操舵機構41が目標とする前輪舵角を与える。
【0034】
自動運転システムは、以上述べたように、ACCコントローラ15による縦方向制御(速度制御、車間距離制御)と自動操舵コントローラ16による横方向制御(車線維持制御、車線変更制御)を組み合わせて構成されたシステムである。遠隔型の自動運転システムは、遠隔操作基地局25Rによって車両1の走行を監視し、遠隔操作基地局25Rからの遠隔操作指令に応じて車両1の走行を制御する。
【0035】
[自動運転システムのリスク軽減機能(RMF)]
自動運転システムの作動中において、環境状態推定部11は、外界センサ21を通じて取得される外界情報、内界センサ22によって取得される車両情報、遠隔操作基地局25Rとの通信状況などに基づいて、車両の走行状態や周囲環境条件などがシステムの運行設計領域(ODD)内に維持されているかを常時監視している。ODD外となる場合や、システムが正常に作動しない場合には、車両1を目標停止エリア内に安全に停止させるRMFを作動させることが要求される。
【0036】
RMF部12は、環境状態推定部11からの信号に基づいて、遠隔操作基地局25Rとの通信の遮断、通信機25の故障など、遠隔操作基地局25Rによる車両1の遠隔監視・操作が困難になった場合に、RMFを作動させると判断し、目標停止エリアに車両1を誘導して停止するRMFを作動させる。RMFの目標停止エリアとしては、通常、自動走行の目標経路上において車両1を停止可能なスペースが設定される。しかし、交差点近傍でRMFが作動した場合、目標経路上の目標停止エリアまで車両1を減速しながら誘導する間に、交差点において他の交通参加者と交錯したり、交通流を乱したりする可能性がある。
【0037】
図4図6を参照して、交差点周辺における車両の停止位置と他の交通参加者との関係を説明する。図4(a),(b)は、交差点を右折する例、図5(a),(b)は、交差点を左折する例、図6(a),(b)は、交差点を直進する例を示している。
【0038】
図4(a),(b)は、信号機のない交差点の近傍においてRMFが作動する例を示しいる。なお、交通ルールとしては左側通行と右側通行があるが、以後の説明においては、左側通行を例として説明する。
【0039】
図4(a)に示す十字路の例において、車両1の目標経路は、矢印PAで示すように交差点C1を右折する経路が設定されている。交差点C1の周囲には、車両1に加えて、右方向から進路P2で交差点C1に進入する右方直進車2、左方向から進路P3で交差点C1に進入する左方直進車3、対向車線から進路P4で交差点C1に進入する対向直進車4が存在する可能性がある。車両1から見て交差点C1の手前および右折先には、横断歩道が設けられている。この場合、交差点C1の手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者,および右折先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。
【0040】
ここで、交差点C1の近傍で、車両1と遠隔操作基地局25Rとの通信の継続が困難になった場合、RMF部12は、RMFの作動が必要と判断する。
【0041】
交差点C1を右折した後の目標経路上に目標停止位置Sを設定した場合、車両1は自動運行装置10のRMF作動により、経路PAに沿って右折した後、矢印PBで示すRMF用の経路に沿って目標停止位置Sまで誘導されて停止する。この場合、交差点C1を右折する際に、車両1は、リスク領域RA1において右方向直進車2と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA2において左方直進車3と交錯するリスクが存在し、さらにリスク領域RA3において対向直進車4と交錯するリスクが存在する。また、車両1は、リスク領域RA4において横断歩道D1を渡る歩行者と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA5において横断歩道D2を渡る歩行者と交錯するリスクが存在する。
【0042】
このように、交差点C1近傍においてRMFが作動する場合、他の交通参加者と交錯する可能性のある複数の交錯点が生じる。交差点C1を右折する場合は、図4(a)に示すように、複数のリスク領域RA1~RA5において他の交通参加者との接触・衝突等のリスクが生じる。すなわち、交差点C1の道路構造に基づいて最大で5箇所のリスク領域が生じる。
【0043】
図4(b)に示す丁字路の例において、車両1の目標経路は、矢印PAで示すように交差点C2を右折する経路が設定されている。交差点C2の周囲には、車両1に加えて、右方向から進路P2で交差点C2に進入する右方直進車2、左方向から進路P3で交差点C2に進入する左方直進車3が存在する可能性がある。また、車両1から見て交差点C2の手前および右折先には、横断歩道が設けられており、交差点C2の手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者,および右折先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。
【0044】
ここで、交差点C2の近傍で、車両1と遠隔操作基地局25Rとの通信の継続が困難になった場合、RMF部12は、RMFの作動が必要と判断する。
【0045】
交差点C2を右折した後の目標経路上に目標停止エリアSを設定した場合、車両1は自動運行装置10のRMF作動により、経路PAに沿って右折した後、矢印PBで示すRMF用の経路に沿って目標停止位置Sまで誘導されて停止する。この場合、交差点C2を右折する際に、車両1は、リスク領域RA1において右方直進車2と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA2において左方直進車3と交錯するリスクが存在する。また、車両1は、リスク領域RA3において横断歩道D1を渡る歩行者と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA4において横断歩道D2を渡る歩行者と交錯するリスクが存在する。
【0046】
このように、交差点C2の近傍においてRMFが作動する場合、他の交通参加者と交錯する可能性のある複数の交錯点が生じる。図4(b)に示すように、交差点C2を右折する場合、複数のリスク領域RA1~RA4において他の交通参加者との接触・衝突等のリスクが生じる。すなわち、交差点C2の道路構造に基づいて最大で4箇所のリスク領域が生じる。
【0047】
図5(a),(b)は、信号機のない交差点の近傍においてRMFが作動する例を示しいる。図5(a)に示す十字路のケースにおいて、車両1の目標経路は、矢印PAで示すように交差点C1を左折する経路が設定されている。交差点C1の周囲には、車両1に加えて、右方直進車2が存在する可能性がある。車両1から見て交差点C1の手前および左折先には、横断歩道が設けられており、交差点C1の手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者,および左折先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。
【0048】
ここで、交差点C1の近傍で、車両1と遠隔操作基地局25Rとの通信の継続が困難になった場合、RMF部12は、RMFの作動が必要と判断する。
【0049】
交差点C1を左折した後の目標経路上に目標停止位置Sを設定した場合、車両1は自動運行装置10のRMF作動により、経路PAに沿って左折した後、矢印PBで示すRMF用の経路に沿って目標停止位置Sまで誘導されて停止する。この場合、交差点C1を左折する際に、車両1は、リスク領域RA1において右方向直進車2と交錯するリスクが存在する。また、車両1は、リスク領域RA2において横断歩道D1を渡る歩行者と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA3において横断歩道D2を渡る歩行者と交錯するリスクが存在する。
【0050】
このように、交差点C1近傍においてRMFが作動する場合、他の交通参加者と交錯する可能性のある複数の交錯点が生じる。交差点C1を左折する場合、図5(a)に示すように、複数のリスク領域RA1~RA3において他の交通参加者との接触・衝突等のリスクが生じる。すなわち、交差点C1の道路構造に基づいて最大で3箇所のリスク領域が生じる。
【0051】
図5(b)に示す丁字路の例において、車両1の目標経路は、矢印PAで示すように交差点C2を左折する経路が設定されている。交差点C2の周囲には、車両1に加えて、右方直進車2が存在する可能性がある。また、車両1から見て交差点C2の手前および左折先には、横断歩道が設けられており、交差点C2の手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者,および左折先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。
【0052】
ここで、交差点C2の近傍で、車両1と遠隔操作基地局25Rとの通信の継続が困難になった場合、RMF部12は、RMFの作動が必要と判断する。
【0053】
交差点C2を左折した後の目標経路上に目標停止エリアSを設定した場合、車両1は自動運行装置10のRMF作動により、経路PAに沿って左折した後、矢印PBで示すRMF用の経路に沿って目標停止位置Sまで誘導されて停止する。この場合、交差点C2を左折する際に、車両1は、リスク領域RA1において右方直進車2と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA2において横断歩道D1を渡る歩行者と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA3において横断歩道D2を渡る歩行者と交錯するリスクが存在する。
【0054】
このように、交差点C2の近傍においてRMFが作動する場合、他の交通参加者と交錯する可能性のある複数の交錯点が生じる。図5(b)に示すように、交差点C2を左折する場合、複数のリスク領域RA1~RA3において他の交通参加者との接触・衝突等のリスクが生じる。すなわち、交差点C2の道路構造に基づいて最大で3箇所のリスク領域が生じる。
【0055】
図6(a),(b)は、信号機のない交差点の近傍においてRMFが作動する例を示している。図6(a)に示す十字路の例において、車両1の目標経路は、矢印PAで示すように交差点C1を直進する経路が設定されている。交差点C1の周囲には、車両1に加えて、右方直進車2および左方直進車3が存在する可能性がある。車両1から見て交差点C1の手前および交差点C1の先には、横断歩道が設けられており、交差点C1の手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者,および交差点C1の先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。
【0056】
ここで、交差点C1の近傍で、車両1と遠隔操作基地局25Rとの通信の継続が困難になった場合、RMF部12は、RMFの作動が必要と判断する。
【0057】
交差点C1を直進した先の目標経路上に目標停止位置Sを設定した場合、車両1は自動運行装置10のRMF作動により、経路PAに沿って直進した後、矢印PBで示すRMF用の経路に沿って目標停止位置Sまで誘導されて停止する。この場合、交差点C1を直進する際に、車両1は、リスク領域RA1において右方向直進車2と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA2において左方直進車3と交錯するリスクが存在する。また、車両1は、リスク領域RA3において横断歩道D1を渡る歩行者と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA4において横断歩道D2を渡る歩行者と交錯するリスクが存在する。
【0058】
このように、交差点C1近傍においてRMFが作動する場合、他の交通参加者と交錯する可能性のある複数の交錯点が生じる。交差点C1を直進する場合、図6(a)に示すように、複数のリスク領域RA1~RA4において他の交通参加者との接触・衝突等のリスクが生じる。すなわち、交差点C1の道路構造に基づいて最大で4箇所のリスク領域が生じる。
【0059】
図6(b)に示す丁字路のケースにおいて、車両1の目標経路は、矢印PAで示すように交差点C2を直進する経路が設定されている。交差点C2の周囲には、車両1に加えて、右折または左折のために経路P5で交差点C2に進入する右左折車5が存在する可能性がある。また、車両1から見て交差点C2の手前および交差点C2の先には、横断歩道が設けられており、交差点C2の手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者,および交差点C2の先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。
【0060】
ここで、交差点C2の近傍で、車両1と遠隔操作基地局25Rとの通信の継続が困難になった場合、RMF部12は、RMFの作動が必要と判断する。
【0061】
交差点C2を直進した後の目標経路上に目標停止エリアSを設定した場合、車両1は自動運行装置10のRMF作動により、経路PAに沿って直進した後、矢印PBで示すRMF用の経路に沿って目標停止位置Sまで誘導されて停止する。この場合、交差点C2を直進する際に、車両1は、リスク領域RA1において右左折車5と交錯するリスクが存在する。また、リスク領域RA2において横断歩道D1を渡る歩行者と交錯するリスクが存在し、リスク領域RA3において横断歩道D2を渡る歩行者と交錯するリスクが存在する。
【0062】
このように、交差点C2の近傍においてRMFが作動する場合、他の交通参加者と交錯する可能性のある複数の交錯点が生じる。図6(b)に示すように、交差点C2を直進する場合、複数のリスク領域RA1~RA3において他の交通参加者との接触・衝突等のリスクが生じる。すなわち、交差点C2の道路構造に基づいて最大で3箇所のリスク領域が生じる。
【0063】
このように、交差点近傍でRMFが作動する場合、車両1が交差点に進入・通過する際に、右方直進車2、左方直進車3、対向直進車4、および右左折車5などとの交錯点が発生する。また、とくに信号機のない交差点においては、交差点手前または交差点通過後の横断歩道を渡る歩行者との交錯点が発生する。このような交錯点では、車両1と他の交通参加者との接触・衝突等のリスクが生じる。また、RMFによる車両1の停止位置が交差点の直前や直後に設定されると、他の交通参加者の交通流を乱してしまう可能性がある。
【0064】
そこで、本実施の形態においては、交差点近傍においてRMFが作動する場合に、車両1と他の交通参加者との接触・衝突等のリスクを低減し、さらに他の交通参加者の交通流への影響を抑制できるエリアにRMF用の目標停止位置を設定する。
【0065】
ここで、交差点近傍においてRMFが作動する場合とは、例えば、RMFの作動によって車両1を減速・停止させると、車両1が交差点またはその付近に停止し、その結果、交差点における交通流の乱れや他の交通参加者との接触・衝突のリスクなどを生じてしまうような状況を意味する。例えば、RMFの作動によって所定の減速度で減速しても、後述する交差点付近の停止禁止領域の手前で車両1を停止させることができない段階(地点もしくは時点)にある場合、交差点近傍でRMFが作動すると判断される。すなわち、RMFの作動によって所定の減速度(例えば、4.0m/s)で減速すると、車両1が停止禁止領域内に停止することになる交差点手前の所定領域を、交差点近傍と定義することができる。
【0066】
なお、いわゆる「交差点近傍」であっても、すでに車両1が自動走行の目標経路に追従するように右左折専用レーンを走行している場合や、自動走行による自動操舵が発生している場合などは、以下に説明する交差点近傍におけるRMFの作動から除外するようにしてもよい。これは、すでに右左折の準備を行っている状況でRMF用に経路を変更することで、かえってリスクが増大してしまうおそれがあるためである。
【0067】
以下に、本実施の形態におけるRMF用の目標停止位置の設定について説明する。
【0068】
[RMF用の目標停止位置の設定]
本実施の形態においては、以下の基本方針によりRMF用の目標停止位置を設定する。
(1)他の交通参加者との交錯点削減
複数の目標停止位置候補を設定することにより、他の交通参加者との交錯点を削減する。
(2)他の交通参加者の交通流への影響低減
交差点を含む交差点付近の所定領域に停止禁止領域を設定することにより、他の交通参加者の交通流への影響を低減する。
(3)リスクファクタの比較による目標停止位置の決定
複数の目標停止位置候補のリスクファクタを比較して目標停止位置を決定する。
【0069】
以下に、RMF用の目標停止位置の設定について詳細に説明する。
【0070】
(1)他の交通参加者との交錯点削減
まず、図7(a),(b)を用いて、他の交通参加者との交錯点の削減を考慮した複数の目標停止位置候補の設定について説明する。自動運行装置10は、環境状態推定部11によって測位手段24による自車位置情報と地図情報データベース23の地図情報とのマッチングにより自車位置を取得し、RMF部12によって、自車位置および周辺の地図情報に基づいて、自動走行中は常時、RMFの作動に備えて複数の目標停止位置候補を探索するように構成されている。RMF用の目標停止位置候補としては、他の交通参加者との交錯点の削減を考慮して、自動運行装置10が設定したグローバル経路とは異なる経路上の位置を設定してもよい。
【0071】
図7(a)は、信号機のない十字路の交差点C1の例を示している。図7(a)に示すように、交差点C1の周辺には、交差点C1の手前の車両1の他に、右方直進車2、左方直進車3、および対向直進車4が存在する可能性がある。また、交差点C1の手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者、交差点C1の先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者、左折先の横断歩道D3を渡ろうとしている歩行者、および右折先の横断歩道D4を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。
【0072】
交差点C1の近傍でRMFが作動する場合、目標経路としてとり得る進行方向は、交差点C1の直進方向、左折方向または右折方向である。そこで、図7(a)に示す例において、RMF部12は、交差点C1を直進する経路上に目標停止位置候補T1を設定し、交差点C1を左折する経路上に目標停止位置候補T2を設定する。目標停止位置候補T1,T2はそれぞれ、自車線の左側方または路肩などのエリアに設定される。RMFが作動した場合には、車両1は矢印PB1,PB2で示すRMFによる経路に沿って位置T1または位置T2に自動的に誘導されて停止する。
【0073】
このように、RMF部12は、交差点C1を直進する経路、または左折する経路のみで到達可能なエリアに目標停止位置候補T1,T2を設定し、交差点C1を右折する経路上には目標停止位置候補を設定しない。交差点C1を直進または左折する経路上に目標停止位置候補T1,T2を設定しても、図7(a)に示すように、右方直進車2との交錯のリスク領域RA1、左方直進車3との交錯のリスク領域RA2、および歩行者との交錯のリスク領域RA3~RA5は残るが、交差点C1を右折する経路を除外することにより、左方直進車3および対向直進車4との交錯のリスク領域RB1、および歩行者との交錯のリスク領域RB2は解消することができる。
【0074】
図7(b)は、信号機のない丁字路の交差点C2の例を示している。図7(b)に示すように、交差点C2の周辺には、交差点C2の手前の車両1の他に、右方直進車2および左方直進車3が存在する可能性がある。また、交差点C2の手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者、左折先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者、および右折先の横断歩道D3を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。
【0075】
交差点C2の近傍でRMFが作動する場合、目標経路PAとしてとり得る進行方向は、交差点C2の左折方向または右折方向である。そこで、図7(b)に示す例において、RMF部12は、交差点C2を左折する経路上に目標停止位置候補T1を設定する。目標停止位置候補T1は、自車線の左側方または路肩などのエリアに設定される。RMFが作動した場合には、車両1は矢印PBで示すRMFによる経路に沿って位置T1に自動的に誘導されて停止する。
【0076】
このように、RMF部12は、交差点C2を左折する経路のみで到達可能なエリアに目標停止位置候補T1を設定し、交差点C2を右折する経路上には目標停止位置候補を設定しない。交差点C2を左折する経路上に目標停止位置候補T1を設定しても、図7(b)に示すように、右方直進車2との交錯のリスク領域RA1および歩行者との交錯のリスク領域RA2,RA3は残るが、交差点C2を右折する経路を除外することにより、左方直進車3との交錯のリスク領域RB1、および歩行者との交錯のリスク領域RB2は解消することができる。
【0077】
(2)他の交通参加者の交通流への影響低減
次に、図8(a),(b)を用いて、他の交通参加者の交通流への影響を考慮した複数の目標停止位置候補の設定について説明する。
【0078】
図8(a)は、信号機のない十字路の交差点C1の例を示している。図8(a)に示すように、交差点C1の手前には車両1が存在している。交差点C1の手前、交差点C1の先、左折先および右折先には横断歩道が設けられている。交差点C1の近傍でRMFが作動する場合、目標経路PAとしてとり得る進行方向は、交差点C1の直進方向、左折方向または右折方向である。
【0079】
交差点C1とその付近には、目標停止位置候補の探索から除外する停止禁止区間(停止禁止領域)Aが設けられる。RMF作動によって交差点C1もしくはその直前や直後に車両1を停止させると、他の交通参加者の交通流を妨げてしまう可能性がある。そこで、停止禁止区間Aを設けることにより、他の交通参加者の交通流への影響を低減する。停止禁止区間Aには目標停止位置候補を設定しないので、停止禁止区間Aは、目標停止位置の設定から除外される範囲であるともいえる。
【0080】
停止禁止区間Aは、交差点C1における他の交通参加者の交通流への影響を低減するように適切な範囲が設定される。例えば、交差路端内側の領域、停止線がある交差点では停止線内の領域、停止線・横断歩道がない交差点では交差路端から所定距離(例えば6メートル)以内の領域、停止線なし・横断歩道ありの交差点では、横断歩道内の領域、または駐停車禁止区間を、交差点および交差点付近の停止禁止区間Aとして設定することができる。
【0081】
なお、進行方向の先に目標停止位置候補の探索から除外する進行禁止方向は設定しない。すなわち、十字路交差点においては、右折方向、すなわち車両1が対向車線を横切る必要のある進行方向にRMF用の目標停止位置を設定することも可能である。
【0082】
図8(a)は、交差路端から所定距離以内の領域を停止禁止区間Aとして設定した例を示している。この場合、RMF部12は、交差点C1を直進する経路上の、停止禁止区間Aを越えた停止可能区間Bに目標停止位置候補T1を設定し、交差点C1を左折する経路上の、停止禁止区間Aを越えた停止可能区間Bに目標停止位置候補T2を設定し、交差点C1を右折する経路上の、停止禁止区間Aを越えた停止可能区間Bに目標停止位置候補T3を設定する。目標停止位置候補T1~T3はそれぞれ、自車線の左側方または路肩などのエリアに設定される。RMFが作動した場合には、車両1は矢印PB1,PB2,PB3で示すRMFによる経路に沿って位置T1、位置T2または位置T3に自動的に誘導されて停止する。
【0083】
図8(b)は、信号機のない丁字路の交差点C2の例において、交差路端から所定距離以内の領域を停止禁止区間Aとして設定した例を示している。図14(b)に示すように、交差点C2の手前には車両1が存在し、交差点C2の手前、左折先および右折先には横断歩道が設けられている。交差点C1の近傍でRMFが作動する場合、目標経路PAとしてとり得る進行方向は、交差点C2の左折方向または右折方向である。
【0084】
この場合、RMF部12は、交差点C2を左折する経路上の、停止禁止区間Aを越えた停止可能区間Bに目標停止位置候補T1を設定し、交差点C2を右折する経路上の、停止禁止区間Aを越えた停止可能区間Bに目標停止位置候補T2を設定する。目標停止位置候補T1,T2は、自車線の左側方または路肩などのエリアに設定される。RMFが作動した場合には、車両1は矢印PB1、PB2で示すRMFによる経路に沿って位置T1または位置T2に自動的に誘導されて停止する。
【0085】
(3)リスクファクタの比較による目標停止位置の決定
次に、複数の目標停止位置候補のリスクファクタの比較による目標停止位置の決定について説明する。
【0086】
RMF部12は、上記(1)および(2)で説明したように、交錯点の削減と交通流への影響低減を考慮して複数の目標停止位置候補を設定する。RMF部12は、設定した複数の目標停止位置候補のそれぞれについて、車両1が現在位置から目標停止位置候補に到達するまでのリスクの高さを表すリスクファクタRFを算出する。リスクファクタRFは、リスクが高いほど大きな値をとる。
【0087】
リスクファクタRFは、具体的には、交差点およびその付近における車両1と他の交通参加者との交錯点の数に関するポイントRf1、車両1の現在位置から各目標停止位置候補までの予測走行距離に関するポイントRf2、および車両1の現在位置から各目標停止位置候補までの予測走行時間に関するポイントRf3の合計(Rf1+Rf2+Rf3)として算出する。
【0088】
交錯点の数に関するポイントRf1は、車両1と他の交通参加者との交錯点の数が多いほど、接触や衝突のリスクが高くなるという観点に基づいて、車両1の現在位置から目標停止位置候補に至る経路中における他の交通参加者との交錯点の数に基づいて算出される。例えば、交錯点が1箇所の場合は10ポイント、2箇所の場合は20ポイント、・・・5箇所の場合は50ポイントというように、交錯点が1つ増えるごとに10ポイントずつ加算される。
【0089】
交錯点の数は、例えば地図情報や外界センサ21によって取得される外界情報に基づいて把握することができる。本実施の形態においては、車両1の経路が走行車線を横切る場合は、実車両の有無に関わらず他車両との交錯の可能性があると判断して交錯点の数をカウントする。また、車両1の経路が横断歩道を横切る場合は、歩行者の有無に関わらず歩行者との交錯の可能性があると判断して交錯点の数をカウントする。すなわち、GNSS等の測位手段24による自車位置情報と地図情報データベース23の地図情報から取得される車両1の経路と道路条件に基づいて最大となる交錯点の数をカウントする。
【0090】
予測走行距離に関するポイントRf2は、車両1が停止するまでの距離が長いほど接触や衝突のリスクが高くなるという観点に基づいて、車両1の現在位置から目標停止位置候補に至るまでの予測走行距離に基づいて算出される。例えば、予測走行距離が10メートルの場合は0.5ポイント、20メートルの場合は1ポイント、・・・50メートルの場合は2.5ポイントというように、予測走行距離が10メートル増えるごとに0.5ポイントずつ加算される。予測走行距離は、例えば自車位置および周辺の地図情報に基づいて推定することができる。
【0091】
予測走行時間に関するポイントRf3は、車両1が停止するまでの時間が長いほど接触や衝突のリスクが高くなるという観点に基づいて、車両1の現在位置から目標停止位置候補に至るまでの予測走行時間に基づいて算出される。予測走行時間が10秒の場合は1ポイント、20秒の場合は2ポイント、・・・50秒の場合は5ポイントというように、予測走行時間が10秒増えるごとに1ポイントずつ加算される。予測走行時間は、例えば、これには限定されないが、車両1が車速40km/hで走行中にRMFが作動し、減速度4.0m/sで10km/hまで減速した後、定速走行して目標停止位置候補に到達する直前に緩やかに減速(例えば、減速度1.96m/s)して目標停止位置候補で停止すると仮定して算出される。
【0092】
なお、上述した交錯点の数に関するポイントRf1、予測走行距離に関するポイントRf2、および予測走行時間に関するポイントRf3の具体的な値は一例であり、上記以外の値を用いることももちろん可能である。ただし、交錯点の数に関するポイントRf1,予測走行時間に関するポイントRf3、および予測走行距離に関するポイントRf2の順で重みが大きくなるように重みづけをすることが好ましい。これは、他の交通参加者と交錯する可能性のある交錯点の数が多いほどリスクが高いこと、さらに、目標停止位置で停止するまでの走行時間が長いほど、走行距離が長い場合よりもリスクが増大すると考えられること、等を考慮したものである。
【0093】
また、複数の目標停止位置候補のリスクファクタが同じ値となった場合、目標停止位置候補への進行方向が、交差点を直進する方向、交差点において車両1が対向車線を横切らないで曲がる方向、および交差点において車両1が対向車線を横切って曲がる方向の順で優先的に、目標停止位置Sとして選択する。
【0094】
RMF部12は、複数の目標停止位置候補について算出したリスクファクタRFを比較し、リスクファクタRFが最も小さい目標停止位置候補を目標停止位置Sとして選択する。
【0095】
図9を参照して、信号機のない丁字路の交差点C2における目標停止位置Sの選択について説明する。図9に示す例においては、交差点C2の周辺には、交差点C2の手前の車両1の他に、右方直進車2および左方直進車3が存在する可能性がある。車両1から見て前方の道路および交差道路には、横断歩道が設けられており、交差点手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者、左折先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者、および右折先の横断歩道D3を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。車両1の自動運行装置10によって計画された目標経路PAは、交差点C2を左折または右折する経路PAである。RMF部12は、図9に示すように、交差点C2を左折する経路上の停止可能区間Bに、目標停止位置候補T1を設定し、交差点C2を右折する経路上の停止可能区間Bに、目標停止位置候補T2を設定し、目標停止位置候補T2のさらに先の駐車スペースに目標停止位置候補T3を設定する。
【0096】
目標停止位置候補T1について、交錯点の数はリスク領域RA1における右方直進車2との交錯点、リスク領域RA2における横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者との交錯点、およびリスク領域RA3における横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者との交錯点の3箇所であり、交錯点の数に関するポイントRf1=30である。車両1の現在位置から目標停止位置候補T1までの予測走行距離が100メートル、予測走行時間が33秒であるとすると、予測走行距離に関するポイントRf2=5、予測走行時間に関するポイントRf3=3.3である。この場合、目標停止位置候補T1のリスクファクタRFは、38.3(=Rf1+Rf2+Rf3)である。
【0097】
目標停止位置候補T2について、交錯点の数は、リスク領域RA1における右方直進車2との交錯点、リスク領域RA4における左方直進車3との交錯点、リスク領域RA2における横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者との交錯点、およびリスク領域RA5における横断歩道D3を渡ろうとしている歩行者との交錯点の4箇所であり、交錯点の数に関するポイントRf1=40である。車両1の現在位置から目標停止位置候補T2までの予測走行距離が100メートル、予測走行時間が33秒であるとすると、予測走行距離に関するポイントRf2=5、予測走行時間に関するポイントRf3=3.3である。この場合、目標停止位置候補T2のリスクファクタRFは、48.3(=Rf1+Rf2+Rf3)である。
【0098】
目標停止位置候補T3について、交錯点の数は、目標停止位置候補T2と同様に、右方直進車2との交錯点、左方直進車3との交錯点、および横断歩道D1,D3をそれぞれ渡ろうとしている歩行者との交錯点の4箇所であり、交錯点の数に関するポイントRf1=40である。車両1の現在位置から目標停止位置候補T2までの予測走行距離が200メートル、予測走行時間が69秒であるとすると、予測走行距離に関するポイントRf2=10、予測走行時間に関するポイントRf3=6.9である。この場合、目標停止位置候補T2のリスクファクタRFは、56.9(=Rf1+Rf2+Rf3)である。
【0099】
RMF部12は、複数の目標停止位置候補T1,T2,T3のそれぞれについて算出されたリスクファクタRFを比較し、リスクファクタRFが最も小さい左折経路上の目標停止位置候補T1を目標停止位置Sとして選択する。
【0100】
次に、図10を参照して、信号機のない十字路の交差点C1における目標停止位置Sの選択について説明する。図10に示す例においては、交差点C1の周辺には、交差点C1の手前の車両1の他に、右方直進車2、左方直進車3、および対向直進車4が存在する可能性がある。車両1から見て交差点C1を直進する道路および交差道路には、横断歩道が設けられており、交差点手前の横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者、交差点の先の横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者、左折先の横断歩道D3を渡ろうとしている歩行者、および右折先の横断歩道D4を渡ろうとしている歩行者が存在する可能性がある。車両1の自動運行装置10によって計画された目標経路PAは、交差点C1を、直進、左折または右折する経路PAである。
【0101】
RMF部12は、図10に示すように、交差点C1を直進する経路上の停止可能区間Bに、目標停止位置候補T1を設定し、目標停止位置候補T1のさらに先の停止可能区間Bに目標停止位置候補T2を設定する。また、交差点C1を左折する経路上の停止可能区間Bに、目標停止位置候補T3を設定し、交差点C1を右折する経路上の停止可能区間Bに目標停止位置候補T4を設定する。
【0102】
目標停止位置候補T1について、交錯点の数はリスク領域RA1における右方直進車2との交錯点、リスク領域RA2における左方直進車3との交錯点、リスク領域RA3における横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者との交錯点、およびリスク領域RA4における横断歩道D2を渡ろうとしている歩行者との交錯点の4箇所である。したがって、交錯点の数に関するポイントRf1=40である。車両1の現在位置から目標停止位置候補T1までの予測走行距離が100メートル、予測走行時間が33秒であるとすると、予測走行距離に関するポイントRf2=5、予測走行時間に関するポイントRf3=3.3である。この場合、目標停止位置候補T1のリスクファクタRFは、48.3(=Rf1+Rf2+Rf3)である。
【0103】
目標停止位置候補T2について、交錯点の数は、目標停止位置候補T1と同様に、右方直進車2との交錯点、左方直進車3との交錯点、および横断歩道D1,D2をそれぞれ渡ろうとしている歩行者との交錯点の4箇所である。したがって、交錯点の数に関するポイントRf1=40である。車両1の現在位置から目標停止位置候補T2までの予測走行距離が200メートル、予測走行時間が69秒であるとすると、予測走行距離に関するポイントRf2=10、予測走行時間に関するポイントRf3=6.9である。この場合、目標停止位置候補T2のリスクファクタRFは、56.9(=Rf1+Rf2+Rf3)である。
【0104】
目標停止位置候補T3について、交錯点の数はリスク領域RA1における右方直進車2との交錯点、リスク領域RA3における横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者との交錯点、およびリスク領域RA5における横断歩道D3を渡ろうとしている歩行者との交錯点の3箇所であり、交錯点の数に関するポイントRf1=30である。車両1の現在位置から目標停止位置候補T3までの予測走行距離が100メートル、予測走行時間が33秒であるとすると、予測走行距離に関するポイントRf2=5、予測走行時間に関するポイントRf3=3.3である。この場合、目標停止位置候補T1のリスクファクタRFは、38.3(=Rf1+Rf2+Rf3)である。
【0105】
目標停止位置候補T4について、交錯点の数はリスク領域RA1における右方直進車2との交錯点、リスク領域RA6における左方直進車3との交錯点および対向直進車4との交錯点、リスク領域RA3における横断歩道D1を渡ろうとしている歩行者との交錯点、およびリスク領域RA7における横断歩道D4を渡ろうとしている歩行者との交錯点の5箇所であり、交錯点の数に関するポイントRf1=50である。車両1の現在位置から目標停止位置候補T4までの予測走行距離が100メートル、予測走行時間が33秒であるとすると、予測走行距離に関するポイントRf2=5、予測走行時間に関するポイントRf3=3.3である。この場合、目標停止位置候補T1のリスクファクタRFは、58.3(=Rf1+Rf2+Rf3)である。
【0106】
RMF部12は、複数の目標停止位置候補T1~T4のそれぞれについて算出されたリスクファクタRFを比較し、リスクファクタRFが最も小さい左折経路上の目標停止位置候補T3を目標停止位置Sとして選択する。
【0107】
[自動走行中のRMF作動フロー]
次に、自動走行中に遠隔監視・操作が困難な状況になった場合のRMF作動の流れについて説明する。図11に、本実施の形態によるRMF作動の流れを説明するフローチャートを示す。
【0108】
(1)遠隔監視・操作による自動走行作動(ステップS100)
遠隔操作基地局25Rのオペレータからの発進指令により、自動運行装置10による自動走行を行う。自動運行装置10は、生成した目標経路および目標車速に従って車両1の走行制御を行う。
【0109】
(2)複数の目標停止位置候補設定(ステップS101)
RMF部12は、測位手段24による自車位置情報と地図情報データベース23の地図情報に基づいて目標停止位置候補の探索を行い、目的地までのグローバル経路の途中にRMF作動に備えて複数の目標停止位置候補を設定する。RMF部12は、自動走行中、交差点の近傍に限らず常時(例えば所定のインターバルで)、複数の目標停止位置候補を設定する。複数の目標停止位置候補は常にアップデートされ、車両1の現在位置に基づく最新の目標停止位置候補が設定される。
【0110】
(3)通信障害判定(ステップS110)
遠隔監視・操作による自動運行装置10の作動中、RMF部12は、通信機25を介した遠隔操作基地局25Rとの通信が正常に行われ、自動走行の継続が可能か否かを常時(例えば所定のインターバルで)、判定する。通信機25の故障、遠隔操作基地局25Rとの通信の遮断などの通信障害によって自動運行装置10による自動走行の遠隔監視・操作の継続が困難な状況になったと判定されると、RMFを作動するためステップS111に進む。一方、通信障害が発生しておらず、遠隔監視・操作の継続が可能な場合は、ステップS101へ戻って自動走行を継続する。
【0111】
(4)遠隔監視・操作停止(ステップS111~S113)
遠隔監視・操作の継続が困難な状況になったと判定された場合は、通信障害発生のフラグを立て(ステップS111)、これと同時に、報知部17によって車内外に遠隔監視・操作による自動運行装置10の作動(自動走行)を停止することを報知する(ステップS112)とともに、遠隔監視・操作による自動運行装置10の作動を停止する。
【0112】
(5)RMF作動報知(ステップS120)
遠隔監視・操作の継続が困難な状況になったことによりRMFが作動することを、報知部17によって車両1の乗員・乗客に報知する。報知部17によって車外に報知するようにしてもよい。
【0113】
(6)目標停止位置選択(ステップS121)
複数の目標停止位置候補の中から、目標停止位置Sを選択する。RMF部12は、ステップS101で設定した複数の目標停止位置候補のそれぞれについて、上述したようにリスクファクタRFを算出し、リスクファクタRFが最も低い目標停止位置候補を、目標停止位置Sとして選択する。経路生成部13は、環境状態推定部11によって取得された自車位置情報、地図情報、隣接車線の区分線位置、他車位置および速度、自車の運動状態などに基づいて、選択された目標停止位置SまでのRMF作動用の目標経路を生成する。
【0114】
(7)RMF作動(ステップS122)
車両1を目標停止エリア内に安全に停止させるRMFの作動を開始する。RMFは、RMF作動用の目標経路に従って目標停止位置Sまで車両1を自力で走行させ、減速・停止させる機能である。
【0115】
(8)目標停止位置Sでの停止可否判定(ステップS128)
RMF部12は、環境状態推定部11を介して外界センサ21から提供される目標停止位置S周辺の障害物情報に基づいて、目標停止位置Sの周辺の障害物の有無を検知し、目標停止位置Sでの停止の可否を判定する。目標停止位置Sの周辺に障害物が存在しない場合は、停止可能と判断してステップS130へ進む。
【0116】
一方、例えば、目標停止位置Sに他車両が存在していたり、目標停止位置S付近で工事が行われていたりする場合は、目標停止位置S周辺の障害物により車両1が目標停止位置Sに停止できないと判断する。この場合、ステップS121へ戻って新たな目標停止位置Sを選択する。
【0117】
(9)RMFによる減速・停止(ステップS130~S132)
自動運行装置10は、目標停止位置Sの方向の方向指示器(不図示)を作動させる(ステップS130)。車両制御部14は、RMF作動用の目標経路に従って車両1を減速しながら走行するように速度制御および操舵制御を行い、目標停止位置Sで停止させる(ステップS131)。自動運行装置10は、ハザードランプ(不図示)を点滅させる(ステップS132)。
【0118】
(10)RMF完了判定(ステップS133~S134)
RMF部12は、自車位置情報と地図情報に基づいて車両1が停止した位置と目標停止位置Sとをマッチングし、両者が合致するかを判定する。合致しない場合はステップS131へ戻って目標停止位置Sまで走行させる。車両1の停止位置と目標停止位置Sとが合致した場合はRMF完了と判定してステップS134へ進み、RMFを停止する。これにより、一連のRMFの処理が終了する。
【0119】
以上説明した本実施の形態による車両1の走行制御装置においては、以下のような作用効果を奏することができる。
【0120】
遠隔監視・操作による自動走行を実行するための自動運行装置10を備えた車両1の走行制御装置は、遠隔監視・操作の継続が困難な状況になった場合に、車両1を目標停止位置に停止させるリスク軽減制御を実行するリスク軽減機能(RMF)を有する。自動運行装置10は、自動走行中に、RMFの作動に備えて、車両1の位置情報および地図情報に基づき、目標停止位置候補の探索を実行し、交差点近傍においてRMFが作動する場合、自動走行の目標経路PAとは異なる経路に位置する目標停止位置候補を含む複数の目標停止位置候補のそれぞれについて、車両1が現在位置から目標停止位置候補に到達するまでのリスクの高さを表すリスクファクタRFを算出し、複数の目標停止位置候補の中からリスクファクタRFが最も低い目標停止位置候補を、目標停止位置Sとして選択するように構成されている。
【0121】
自動走行中に複数の目標停止位置候補の探索を実行しておくので、RMFの作動を開始する際に、速やかに目標停止位置Sを選択することができる。交差点近傍においてRMFが作動する場合は、各目標停止位置候補のリスクファクタRFを比較することにより、リスクファクタが最も低い目標停止位置を選択することができ、交通流の乱れや他の交通参加者と接触・衝突を誘発するおそれを最小限にすることができる。
【0122】
リスクファクタRFは、交差点および交差点付近における車両1と他の交通参加者との交錯点の数に関するポイントRf1、車両1の現在位置から目標停止位置候補までの予測走行時間に関するポイントRf3、および車両の現在位置から目標停止位置候補までの予測走行距離に関するポイントRf2の合計として算出される。交錯点の数については、他の交通参加者と交錯する可能性のある交錯点の数が少ないほど、接触・衝突の可能性が低くなる。予測走行時間に関しては、目標停止位置までの移動時間が短いほど、遠隔監視・操作の継続が困難な状況での走行を短縮することができる。予測走行距離に関しては、目標停止位置までの移動距離が短いほど、遠隔監視・操作の継続が困難な状況での走行を短縮することができる。したがって、交差点通過時の他の交通参加者との交錯点の削減、および目標停止位置までの走行時間・走行距離の低下などの観点から、適切な目標停止位置を決定することができる。なお、本実施の形態においては、実際に他の交通参加者が存在するか否かに関わらず、GNSS等の測位手段24による自車位置情報と地図情報データベース23の地図情報に基づく道路構造から交錯点の数をカウントするので、RMF部12における処理の負荷軽減を図ることも可能となる。
【0123】
リスクファクタRFは、交錯点の数に関するポイントRf1、予測走行時間に関するポイントRf3、および予測走行距離に関するポイントRf2の順で重みが大きくなるように重みづけをして算出される。例えば、路肩工事での通行規制等、外部影響により、距離が短くても目標停止位置までの所要時間がかかる場合が想定されるため、予測走行距離よりも予測走行時間の重みづけを重くする。
【0124】
複数の目標停止位置候補のリスクファクタRFがそれぞれ同じ値の場合、目標停止位置候補への進行方向が、交差点を直進する方向、交差点において車両1が対向車線を横切らずに曲がる方向、および交差点において車両1が対向車線を横切って曲がる方向の順で優先的に、目標停止位置Sとして選択される。直進方向に目標停止位置Sを設定した場合、外界センサ21によって速やかに目標停止位置Sの周辺の障害物の有無を検出して停止可能か否かを判定できるので、直進方向の目標停止位置候補を優先的に選択する。交差点において車両1が対向車線を横切らずに曲がる方向(例えば左折方向)、および交差点において車両1が対向車線を横切って曲がる方向(例えば右折方向)に関しては、右折方向よりも左折方向の方が、対向直進車4との交錯点がなくリスクが低いと考えられる。
【0125】
交差点および交差点付近には、目標停止位置候補の探索から除外する停止禁止領域Aが設定される。交差点付近のリスクが高いエリアを停止禁止領域Aとして設定し、停止禁止領域Aには目標停止位置Sを設定しないように構成するので、他の交通参加者との交錯点を少なくとも部分的に解消することができ、他の交通参加者と接触・衝突を誘発するおそれを低減することができる。
【0126】
-変形例-
(1)上述した実施の形態においては、RMFの作動に備えて、常時、複数の目標停止位置候補を探索し、複数の目標停止位置候補の中から目標停止位置Sを選択した。目標停止位置Sの周辺に障害が存在して停止できないという事態が想定されるため、目標停止位置候補の数は多い方が好ましい。RMF部12での処理負荷の観点から、目標停止位置候補の数は、少なくとも2箇所とし、選択した目標停止位置Sに停止できない場合には、同一経路上に位置する目標停止位置候補を追加していくように構成してもよい。
【0127】
(2)上述した実施の形態においては、交差点近傍においてRMFが作動する場合の目標停止位置Sの決定について説明した。ただし、交差点近傍に限らず、多車線路など、RMFの作動によって車線変更や進路変更を行う必要のある状況においても、上述した実施の形態による目標停止位置Sの決定方法を適用することができる。
【0128】
(3)上述した実施の形態においては、交錯点の数に関するポイントRf1、予測走行距離に関するポイントRf2、および予測走行時間に関するポイントRf3の合計としてリスクファクタRFを算出した。ただし、これには限定されず、交錯点の数に関するポイントRf1、予測走行距離に関するポイントRf2、および予測走行時間に関するポイントRf3の少なくとも1つを用いてリスクファクタRFを算出するようにしてもよい。また、交錯点の数、予測走行距離、および予測走行時間以外のファクターに基づいてリスクファクタRFを算出するように構成してもよい。
【0129】
(4)上述した実施の形態においては、交通ルールとして左側通行を例として説明したが、本実施の形態は、交通ルールが右側通行の場合にも適用可能である。右側通行の場合、交差点を右折する方向が、対向車線を横切らないで曲がる方向、交差点を左折する方向が、対向車線を横切って曲がる方向となる。
【0130】
以上、本発明のいくつかの実施形態について述べたが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内においてさらに各種の変形および変更が可能であることを付言する。
【符号の説明】
【0131】
1 車両
10 自動運行装置
11 環境状態推定部
12 RMF部
13 経路生成部
14 車両制御部
15 ACCコントローラ
16 自動操舵コントローラ
17 報知部
21 外界センサ
22 内界センサ
23 地図情報データベース
24 測位手段(GNSS)
25 通信機
31 EPSコントローラ
32 エンジンコントローラ
33 ESP/ABSコントローラ
34 手動操舵(ハンドル)
35 手動操作(アクセルペダル)
36 手動操作(ブレーキペダル)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11