(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139863
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】熱可塑性エラストマー組成物、射出成形品、及びエアバッグ収納カバー
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20230927BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230927BHJP
B29C 45/00 20060101ALI20230927BHJP
B60R 21/215 20110101ALI20230927BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L23/08
B29C45/00
B60R21/215
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045607
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】515107720
【氏名又は名称】MCPPイノベーション合同会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】山條 佑樹
【テーマコード(参考)】
3D054
4F206
4J002
【Fターム(参考)】
3D054AA07
3D054BB02
3D054BB09
3D054FF17
4F206AA03
4F206AA11
4F206AA45
4F206AH26
4F206AR17
4F206AR20
4F206JA07
4F206JL02
4J002BB05X
4J002BP02W
4J002GN00
(57)【要約】
【課題】低温耐衝撃性を維持しながら、フローマーク性に優れた成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物及びその射出成形品を提供する。
【解決手段】成分(A):プロピレン系ブロック共重合体と、成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体とを含有し、かつ、下記式を満足する熱可塑性エラストマー組成物。この熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形品。
式:[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(B)のメルトフローレート]/[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(A)のメルトフローレート]≧0.5
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成分(A):プロピレン系ブロック共重合体と、成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体とを含有し、かつ、下記式を満足する熱可塑性エラストマー組成物。
式:[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(B)のメルトフローレート]/[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(A)のメルトフローレート]≧0.5
【請求項2】
前記成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(試験温度230℃、荷重21.18N)が1~20g/10minである、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項3】
前記成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(試験温度230℃、荷重21.18N)が10~100g/10minである、請求項1又は2に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項4】
前記成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンの炭素数が3~8である請求項1~3のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項5】
ISO 180を参照し、作成したノッチ付きIZOD衝撃強度測定用の試験片を用いて-45℃雰囲気下にて測定したIZOD衝撃値が60kJ/m2以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項6】
キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃、せん断速度243/secで測定した際のダイスウェル比が1.34以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形品。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いたエアバッグ収納カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低温耐衝撃性と成形外観に優れた熱可塑性エラストマー組成物と、この熱可塑性エラストマー組成物よりなる射出成形品及びエアバッグ収納カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車用エアバッグシステムは自動車等の衝突の際に運転手や搭乗者を保護するシステムであり、衝突の際の衝撃を感知する装置とエアバッグ装置とからなる。このエアバッグ装置は、ステアリングホイール、助手席前方のインストルメントパネル、運転席及び助手席のシート、フロント及びサイドピラー等に設置される。
【0003】
エアバッグ装置におけるエアバッグ収納カバーは、エアバッグ膨張時に設計通りに開裂するように、その構造や材質において種々提案がなされている。
【0004】
オレフィン系熱可塑性エラストマーからなるエアバッグ収納カバーとしては、例えば、特許文献1に、流動性が高く低分子量の特定のプロピレン系ブロック共重合体と、流動性が低く高分子量の特定のエチレン・α-オレフィン共重合体とを含むものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、エアバッグ展開出力向上による低温域でのエアバッグ収納カバーの破損が懸念されるため、安全性の向上、設計の自由度等の観点から低温耐衝撃性に優れた材料が望まれている。また、エアバッグ収納カバーは、従来から塗装工程を経て製造されているが、塗装品では、塗装ラインの増設等、塗装工程によるコストの問題がある。このため、より安価に製造するために、近年では無塗装で製造可能な材料が望まれている。そして、無塗装のエアバッグ収納カバーに対し、意匠性の観点から、成形時に発生するフローマーク性が改善された成形品、即ち、フローマークが目立たず、外観に優れた成形品が望まれている。
【0007】
本発明者らの詳細な検討によれば、前記特許文献1に記載されている熱可塑性エラストマー組成物は、フローマーク性の観点で改良の余地があった。
【0008】
本発明はこのような従来技術の問題を鑑みてなされたものである。即ち、本発明の課題は、低温耐衝撃性を維持しながら、フローマーク性に優れた成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物及びその射出成形品、及び該熱可塑性エラストマー組成物からなるエアバッグ収納カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を重ねた結果、プロピレン系ブロック共重合体及びエチレン・α-オレフィン共重合体を含有する熱可塑性エラストマー組成物において、プロピレン系ブロック共重合体とエチレン・α-オレフィン共重合体の試験温度230℃、荷重21.18Nで測定されるメルトフローレートの値の関係を特定範囲とすることで上記課題を解決し得ることを見出した。
【0010】
即ち、本発明の要旨は以下の[1]~[8]に存する。
【0011】
[1] 成分(A):プロピレン系ブロック共重合体と、成分(B):エチレン・α-オレフィン共重合体とを含有し、かつ、下記式を満足する熱可塑性エラストマー組成物。
式:[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(B)のメルトフローレート]/[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(A)のメルトフローレート]≧0.5
【0012】
[2] 前記成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体のメルトフローレート(試験温度230℃、荷重21.18N)が1~20g/10minである、[1]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0013】
[3] 前記成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体のメルトフローレート(試験温度230℃、荷重21.18N)が10~100g/10minである、[1]又は[2]に記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0014】
[4] 前記成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体のα-オレフィンの炭素数が3~8である[1]~[3]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0015】
[5] ISO 180を参照し、作成したノッチ付きIZOD衝撃強度測定用の試験片を用いて-45℃雰囲気下にて測定したIZOD衝撃値が60kJ/m2以上である、[1]~[4]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0016】
[6] キャピラリーレオメーター(JIS K7199参照)における試験温度210℃、せん断速度243/secで測定した際のダイスウェル比が1.34以上である、[1]~[5]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物。
【0017】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を射出成形してなる射出成形品。
【0018】
[8][1]~[6]のいずれかに記載の熱可塑性エラストマー組成物を用いたエアバッグ収納カバー。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低温耐衝撃性を維持しながら、フローマーク性に優れた成形品を可能とする熱可塑性エラストマー組成物を提供できる。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いた本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、任意に変形して実施することができる。なお、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
【0021】
本発明において「エアバッグ収納カバー」とは、エアバッグを収納する容器全般を意味するものであり、例えば、エアバッグが収納されている容器において、エアバッグが展開する際の開口部、又はこの開口部と一体となっている容器全体である。
【0022】
[熱可塑性エラストマー組成物]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)としてプロピレン系ブロック共重合体、成分(B)としてエチレン・α-オレフィン共重合体を含有し、かつ、試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(A)と成分(B)のメルトフローレートの値の比が下記式を満たすものである。
式:[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(B)のメルトフローレート]/[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(A)のメルトフローレート]≧0.5
【0023】
以下、試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(A)のメルトフローレートを「MFR(A)」、試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(B)のメルトフローレートを「MFR(B)」、[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(B)のメルトフローレート]/[試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される成分(A)のメルトフローレート]を「MFR(B)/MFR(A)」と表記する場合がある。
なお、本発明において、成分(A)及び成分(B)のメルトフローレート(MFR)は、ISO 1133に準拠して、試験温度230℃、荷重21.18Nで測定される値である。
MFR(B)/MFR(A)は、外観の観点で、0.7以上が好ましく、0.9以上がより好ましい。一方、MFR(B)/MFR(A)の上限は、特に限定されないが、通常100以下であり、低温耐衝撃性と外観の両立の観点から、70以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、15以下であることが更に好ましい。
【0024】
<メカニズム>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物より得られる成形品は、低温耐衝撃性を維持しながら、フローマーク性に優れるという効果を奏する。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物がこのような効果を奏する理由の詳細は定かではないが、以下のように考えられる。
成形性と低温耐衝撃性を両立するために、流動性の高い樹脂成分(例えば流動性の高いプロピレン系ブロック共重合体)と流動性の低いゴム成分(例えば流動性の低いエチレン・α-オレフィン共重合体)よりなる熱可塑性エラストマー組成物を成形に供した場合のフローマークの発生メカニズムを以下のように考えられる。
流動性の高い樹脂成分と、分子量が高く流動性の低いゴム成分よりなる熱可塑性エラストマー組成物は、一般に、コンパウンド時に生じる粘度ギャップから、樹脂成分がマトリックス、ゴム成分がドメインを構成する海島構造の形態をとる。この場合に、樹脂成分と比較してゴム成分が凝集しやすいため、樹脂成分のマトリックス中にゴム成分が十分に微分散されず、ドメイン形状が大きくなりやすい傾向になる。そして、このような熱可塑性エラストマー組成物を用いて成形すると、成形時の流動体内にゴム成分に由来する大きなドメインが存在していることにより、流動性が安定せず、フローマークが発生する。
このようにして発生するフローマークを抑制するためには、樹脂成分とゴム成分とをコンパウンドする際の樹脂成分中のゴム成分の微分散を促すことが考えられる。そのためには、樹脂成分とゴム成分の粘度差を小さくする方向に制御する、もしくはゴム成分を低分子量化させる方向に制御することが有効である。こうすることでコンパウンド時に発生するせん断応力によりゴム成分を分散させやすくなり、樹脂成分よりなるマトリックス中に存在するゴム成分よりなるドメインの微分散が達成できると考えられる。
具体的には、用途に求められる低温耐衝撃性を備えるために、樹脂成分を高分子量化させ流動性を下げる一方で、ゴム成分を低分子量化させ流動性を高めることで、低温耐衝撃性を維持しつつ、コンパウンド時のゴム成分の分散を細かくすることができ、その結果、樹脂流動性が安定するようになり、フローマーク性に優れたものと考える。
【0025】
<成分(A)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)として、プロピレン系ブロック共重合体を含有する。成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体は、通常、プロピレン単独重合体成分と他の重合体成分とを含むものである。成分(A)のプロピレン単独重合体成分の含有率は、成分(A)全体に対し、通常50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、より好ましくは75%~92質量%である。成分(A)のプロピレン単独重合体成分の含有率が上記下限値以上であることにより、耐熱性及び剛性が良好となる傾向にある。成分(A)のプロピレン単独重合体成分の含有率が上記上限値以下であることにより、低温耐衝撃性が良好となる傾向がある。このプロピレン単独重合体成分の含有率は、組成の異なるプロピレン系共重合体の2種以上を混合して成分(A)を構成する場合、成分(A)全体としてプロピレン単独重合体成分の含有率が上記数値範囲内であればよい。
【0026】
なお、成分(A)中のプロピレン単独重合体成分の含有率及び後述のプロピレン単独重合体成分以外のプロピレンとエチレン及び/又は他のα-オレフィンとの共重合体成分の含有率、後述の成分(B)のエチレン単位の含有率及びα-オレフィン単位の含有率は、それぞれ赤外分光法により求めることができる。
【0027】
成分(A)は、成分(A)全体に対しプロピレン単独重合体成分を前述の好適な含有率で含むと共に、プロピレンとエチレン及び/又はプロピレン以外のα-オレフィン(以下、「他のα-オレフィン」と称す場合がある。)との共重合体成分を含有するものである。成分(A)のプロピレン単独重合体成分以外のプロピレンとエチレン及び/又は他のα-オレフィンとの共重合体成分としては、例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・他のα-オレフィンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・他のα-オレフィンブロック共重合体、又はその他のプロピレン系ブロック共重合体が挙げられる。
【0028】
成分(A)中のプロピレン単独重合体成分以外のプロピレンとエチレン及び/又は他のα-オレフィンとの共重合体成分の含有率は、通常50質量%以下であり、好ましくは40質量%以下であり、より好ましくは8~25質量%である。
【0029】
成分(A)に含まれるプロピレン・他のα-オレフィンブロック共重合体成分又はプロピレン・エチレン・他のα-オレフィンブロック共重合体成分の他のα-オレフィン単位としては、炭素数4~20のα-オレフィン単位を挙げることができる。炭素数4~20のα-オレフィンとしては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-へプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、2-エチル-1-ヘキセン、2,2,4-トリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。他のα-オレフィンとしては、好ましくは炭素数4~10のα-オレフィンであり、より好ましくは1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンである。
これらの他のα-オレフィン単位は、成分(A)中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0030】
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体としては、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・1-ブテンブロック共重合体、プロピレン・1-ヘキセンブロック共重合体、プロピレン・1-オクテンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-ヘキセンブロック共重合体、プロピレン・エチレン・1-オクテンブロック共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレンブロック共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体を例示することができる。
【0031】
好ましくは、エチレン及び炭素数4~10のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1種の単量体とプロピレンとのブロック共重合体、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体である。これらの中でも特に、成分(A)としては、低温耐衝撃性及び高温強度の観点から、第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でプロピレン・エチレン共重合体を重合して得られるプロピレン系ブロック共重合体であることが好ましい。
【0032】
成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)の下限は、得られる成形品の低温耐衝撃性能と外観のバランスの観点から、好ましくは1g/10min以上、より好ましくは3g/10min以上、更に好ましくは5g/10min以上である。成分(A)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)の上限は、低温耐衝撃性の観点から、好ましくは20g/10min以下、より好ましくは15g/10min以下である。
成分(A)は、成分(A)としてのメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が上記数値範囲内となるように、MFRの異なる複数種類の成分(A)を用いてもよい。
【0033】
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体の製造方法としては、公知のオレフィン重合用触媒を用いた公知の重合方法が用いられる。例えば、チーグラー・ナッタ系触媒を用いた重合法を挙げることができる。該重合法には、スラリー重合法、溶液重合法、塊状重合法、気相重合法等を用いることができ、これらを2種以上組み合わせてもよい。
【0034】
また、成分(A)は市販のものを用いてもよい。成分(A)の市販品としては、例えば、プライムポリマー社製「PrimPolypro(登録商標)」、住友化学社製「住友ノーブレン(登録商標)」、サンアロマー社製「ポリプロピレンブロックコポリマー」、日本ポリプロ社製「ノバテック(登録商標)PP」、LyondellBasell社製「Moplen(登録商標)」、LyondellBasell社製「ADFLEX(登録商標)」、LyondellBasll社製「Hifax(登録商標)」、ExxonMobil社製「ExxonMobilPP」、FormosaPlastics社製「Formolene(登録商標)」、Borealis社製「BorealisPP」、LGChemical社製「SEETECPP」、A.Schulman社製「ASIPOLYPROPYLENE」、INEOSOlefins&Polymers社製「INEOSPP」、Braskem社製「BraskemPP」、HanwhaTOTALPETROCHEMICALS社製「HanwhaTotal」、Sabic社製「Sabic(登録商標)PP」、TOTALPETROCHEMICALS社製「TOTALPETROCHEMICALSPolypropylene」、SK社製「YUPLENE(登録商標)」が挙げられる。
【0035】
成分(A)のプロピレン系ブロック共重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0036】
<成分(B)>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(B)として、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有する。成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレン単位の含有率とα-オレフィン単位の含有率との合計を100質量%としたときに、エチレン単位の含有率が50~80質量%、α-オレフィン単位の含有率が20~50質量%であることが好ましい。エチレン単位の含有率が上記範囲内であると、他の成分との親和性が良好となって熱可塑性エラストマー組成物における成分(B)の微分散性が向上する傾向にある。
【0037】
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体としては、エチレン・α-オレフィンランダム共重合体、エチレン・α-オレフィンブロック共重合体等が挙げられる。
【0038】
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体を構成するα-オレフィンは、限定されないが、具体的には、プロピレン、1-ブテン、3-メチル-1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンが挙げられる。これらのα-オレフィン単位は、成分(B)中に1種のみが含まれていてもよく、2種以上が含まれていてもよい。
【0039】
これらの中でも、α-オレフィンとしては炭素数が4~8であるものが好ましく、1-オクテンがより好ましい。エチレン・α-オレフィン共重合体がα-オレフィン単位として1-オクテン単位を含むことで引張強さが良好となる。
【0040】
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、上記したα-オレフィン単位に加え、非共役ジエンに基づく単量体単位(非共役ジエン単位)等の他の単量体単位を有していてもよい。該非共役ジエン単位としては、1,4-ヘキサジエン単位、1,6-オクタジエン単位、2-メチル-1,5-ヘキサジエン単位、6-メチル-1,5-ヘプタジエン単位、7-メチル-1,6-オクタジエン単位のような鎖状非共役ジエン単位;シクロへキサジエン単位、ジシクロペンタジエン単位、メチルテトラヒドロインデン単位、5-ビニルノルボルネン単位、5-エチリデン-2-ノルボルネン単位、5-メチレン-2-ノルボルネン単位、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン単位、6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン単位のような環状非共役ジエン単位が挙げられる。これらの中でも好ましくは、ジシクロペンタジエン単位、5-エチリデン-2-ノルボルネン単位である。
【0041】
成分(B)のエチレン・α-オレフィンブロック共重合体が非共役ジエン単位等の他の単量体単位を有する場合、その含有率は成分(B)全体に対して、通常10質量%以下、好ましくは5質量%以下である。
【0042】
本発明に用いる成分(B)として具体的には、エチレン-1-ブテン共重合体ゴム、エチレン-1-ヘキセン共重合体ゴム、エチレン-1-オクテン共重合体ゴム等を例示することができる。これらは1種で用いられてもよく、2種以上組み合わせて用いられてもよい。中でも、エチレン-1-ブテン共重合体ゴム、エチレン-1-オクテン共重合体ゴムが好ましい。
【0043】
成分(B)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)の下限は、得られる成形品の低温耐衝撃性と外観のバランスの観点から、好ましくは10g/10min以上であり、より好ましくは12g/10min以上、更に好ましくは14g/10min以上である。成分(B)のメルトフローレート(230℃、荷重21.18N)の上限は、成形性の観点から、好ましくは100g/10min以下、より好ましくは90g/10min以下、更に好ましくは80g/10min以下である。
【0044】
成分(B)は市販のものを用いてもよい。成分(B)の市販品としては、例えば、ダウ・ケミカル社製「Engage(登録商標)」シリーズ、「Engage(登録商標)-XLT」シリーズや「INFUSE(登録商標)」シリーズ、SK社製「Solumer(登録商標)」シリーズ、三井化学社製「タフマー(登録商標)」シリーズ、「三井EPT」、JSR社製「JSR EPR」、住友化学社製「エスプレン(登録商標)」、LANXESS社製「Keltan(登録商標)」が挙げられる。
【0045】
成分(B)のエチレン・α-オレフィン共重合体は、1種のみを用いてもよく、共重合成分組成や物性等の異なるものを2種以上混合して用いてもよい。
【0046】
<含有割合>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は成分(A)及び成分(B)を含有し、成分(A)と成分(B)の合計を100質量%とした場合に、成分(A)の含有率の下限は低温強度の観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。一方、成分(A)の含有率の上限は成形性の観点から80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。成分(B)の含有率の下限は成形性の観点から、20質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、40質量%以上が更に好ましい。一方、成分(B)の含有率の上限は低温強度の観点から80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。
【0047】
<その他の成分>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じてその他の成分を配合することができる。
【0048】
その他の成分としては、例えば、成分(A)及び(B)以外の熱可塑性樹脂やエラストマー等の樹脂、酸化防止剤、充填材、熱安定剤、耐候助剤、離型剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物を挙げることができる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
成分(A)、成分(B)以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂;ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂;ポリメチルメタクリレート系樹脂、スチレン系エラストマー;ポリエステル系エラストマー;ポリブタジエン、ポリオレフィン樹脂(成分(A),(B)に該当するものを除く。)を挙げることができる。
【0050】
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、フォスファイト系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が挙げられる。酸化防止剤を用いる場合、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、通常0.01~3.0質量部の範囲で用いられる。
【0051】
充填材としては、例えば、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、金属石鹸、二酸化チタン、カーボンブラックを挙げることができる。充填材を用いる場合、成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、通常0.1~50質量部で用いられる。
【0052】
<熱可塑性エラストマー組成物の製造方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、成分(A)及び成分(B)と、必要に応じて用いられるその他の成分を通常の押出機やバンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダーブラベンダー等を用いて常法で混練して製造することができる。これらの製造方法の中でも、押出機、特に二軸押出機を用いることが好ましい。本発明の熱可塑性エラストマー組成物を押出機等で混練して製造する際には通常160~240℃、好ましくは180~220℃に加熱した状態で溶融混練することによって製造することができる。
【0053】
<熱可塑性エラストマー組成物の特性>
(MFR)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物における、ISO 1133(2011年)に準拠して温度230℃、荷重21.18Nで測定されたメルトフローレート(MFR)の下限は、通常0.5g/10min以上であり、好ましくは1g/10min以上であり、より好ましくは5g/10min以上である。一方、その上限は、通常50g/10min以下であり、好ましくは45g/10min以下であり、より好ましくは40g/10min以下であり、特に好ましくは35g/10min以下である。熱可塑性エラストマー組成物のMFRを上記数値範囲とすることで、成形性、低温耐衝撃性、外観に優れる傾向にある。
【0054】
(ダイスウェル比)
フローマーク性向上の観点から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物において、(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1D(JIS K7199)を使用して、下記条件で測定、算出した熱可塑性エラストマー組成物のダイスウェル比の値は、1.34以上であることが好ましい。ダイスウェル比が1.34以上であれば、成形ノズルから金型へ組成物が流入した際に安定した流動挙動となる。この観点から、本発明の熱可塑性エラストマー組成物の上記ダイスウェル比は1.40以上であることがより好ましい。一方、ダイスウェル比の上限値に制限はないが、通常2.00以下である。
試験温度:210℃
L/D:10(D=1mm)
せん断速度:243/sec
ダイスウェル比は下記計算式(I)により算出した。
St=Dm/Dt (I)
St,Dm,Dtは以下を示す。
St:ダイスウェル比
Dm:ダイの出口の下10mmの位置において、試験温度で測定した押出し試料の直径(mm)
Dt:試験温度で測定したキャピラリーダイの直径(mm)
【0055】
(低温耐衝撃性)
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は低温耐衝撃性に優れたものである。本発明において、低温耐衝撃性は後掲の実施例に示す方法による-45℃でのアイゾット衝撃強さにより評価される。本発明においては、-45℃でのアイゾット衝撃強さの値が、50kJ/m2以上であることが好ましく、60kJ/m2以上であることがより好ましく、70kJ/m2以上であることが更に好ましい。
【0056】
<成形方法>
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を通常の射出成形法又は、必要に応じて、ガスインジェクション成形法、射出圧縮成形法、ショートショット発泡成形法等の各種成形法を用いて成形品とすることができ、本発明のエアバッグ収納カバーを製造することができる。特に、本発明のエアバッグ収納カバーは射出成形により製造することが好ましく、射出成形を行う際の成形条件は以下の通りである。
【0057】
エアバッグ収納カバーを射出成形する際の成形温度は一般に150~300℃であり、好ましくは160~280℃である。射出圧力は通常、5~100MPaであり、好ましくは10~80MPaである。また、金型温度は通常0~80℃であり、好ましくは20~60℃である。
【0058】
[エアバッグ収納カバー]
本発明の熱可塑性エラストマー組成物を用いて上記のようにして成形される本発明のエアバッグ収納カバーは、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適に用いられる。
本発明のエアバッグ収納カバーは、運転席用エアバッグ収納カバー、助手席用エアバッグ収納カバー、歩行者用エアバッグ収納カバー、ニー・エアバッグ収納カバー、サイド・エアバッグ収納カバー、カーテン・エアバッグ収納カバー等のいずれにも好適に用いることができる。
【実施例0059】
以下、実施例および比較例によって、本発明をより詳細に説明する。なお本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例によって限定されるものではない。以下の実施例における各種の製造条件や評価結果の値は、本発明の実施態様における上限または下限の好ましい値としての意味を持つものであり、好ましい範囲は前記した上限または下限の値と、下記実施例の値または実施例同士の値との組み合わせで規定される範囲であってもよい。
【0060】
[熱可塑性エラストマー組成物の原料]
<成分(A)>
(A-1):プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの)
日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標) PP BC3B
MFR(ISO 1133):10g/10min(測定条件:230℃、荷重21.18N)
(A-2):プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの)
日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標) PP BC03B
MFR(ISO 1133):30g/10min(測定条件:230℃、荷重21.18N)
(A-3):プロピレン系ブロック共重合体(第1工程でプロピレン単独重合体を重合し、続いて第2工程でエチレン・プロピレン共重合体を重合して得られたもの)
日本ポリプロ社製ノバテック(登録商標) PP BC06NCA
MFR(ISO 1133):60g/10min(測定条件:230℃、荷重21.18N)
【0061】
[成分(B)]
(B-1):エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
ダウ・ケミカル社製 Engage8407
MFR(ISO 1133):70g/10min(測定条件:230℃、荷重21.18N)
(B-2):エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
ダウ・ケミカル社製 Engage8200
MFR(ISO 1133):10g/10min(測定条件:230℃、荷重21.18N)
(B-3):エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
ダウ・ケミカル社製 Engage8100
MFR(ISO 1133):2g/10min(測定条件:230℃、荷重21.18N)
(B-4):エチレン・1-オクテン共重合体ゴム
ダウ・ケミカル社製 Engage8100
MFR(ISO 1133):1g/10min(測定条件:230℃、荷重21.18N)
【0062】
[熱可塑性エラストマー組成物の評価方法]
(1) 低温耐衝撃性(アイゾッド衝撃強さ)
熱可塑性エラストマー組成物を、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度30mm/s、シリンダー設定温度220℃、金型温度40℃にて、アイゾット衝撃強さ用の試験片として、厚さ4mm×幅10mm×長さ80mmに成形した。その後、ダンベルにノッチを入れ(ノッチの寸法と評価方法はISO 180(2013年)に準拠)、-45℃の条件で測定した。
表中、(P)は「部分破壊(Partial break)を示す。記載がないものは「完全破壊(break)」を示す。
【0063】
(2) フローマーク性
フローマーク性は、インラインスクリュウタイプ射出成形機(住友電装社製「SE180DU」)により、射出速度20mm/s、シリンダー設定温度230℃、金型温度40℃にて、熱可塑性エラストマー組成物からティアライン入りの成形外観確認用試験片(厚さ3mm×幅100mm×長さ350mmのシートにゲートからそれぞれ5cm、12.5cm、20cm、27cmの位置に最薄部の厚みが0.7mmとなるようティアラインを設置、)を成形し、ティアラインを除く平行部の外観を目視観察し、下記基準で判定した。
判定基準
×:フローマークが目立ち、外観が悪い。
△:フローマークが確認されるが市場許容範囲である。
〇:フローマークが確認されない。
【0064】
(3) ダイスウェル比
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1D(JIS K7199)を使用して、下記条件で熱可塑性エラストマー組成物の押出工程中に測定した。
試験温度:210℃
L/D:10(D=1mm)
せん断速度:243/sec
ダイスウェル比は下記計算式(I)により算出した。
St=Dm/Dt (I)
St,Dm,Dtは以下を示す。
St:ダイスウェル比
Dm:ダイの出口の下10mmの位置において、試験温度で測定した押出し試料の直径(mm)
Dt:試験温度で測定したキャピラリーダイの直径(mm)
【0065】
[実施例1]
成分(A-1):50質量部、成分(B-1):50質量部、の合計100質量部に対して、酸化防止剤(BASFジャパン社製商品名イルガノックス(登録商標)1010)0.1質量部、酸化防止剤(BASFジャパン社製商品名イルガフォス(登録商標)168)0.1質量部、離型剤(Crodaジャパン製商品名CrodamideVRX(登録商標)0.1質量部、及び黒色顔料(カーボン濃度40質量%品)1.5質量部をヘンシェルミキサーにて1分間ブレンドし、同方向二軸押出機(神戸製鋼製「TEX30α」、L/D=45、シリンダブロック数:13)へ第1の供給口より30kg/hrの速度で投入し、180~210℃の範囲で昇温させ、溶融混練を行った後、ペレット化して熱可塑性エラストマー組成物を製造した。得られた熱可塑性エラストマー組成物の評価結果を表-1に示す
【0066】
[実施例2、比較例1~4]
表-1に示す原料配合とした以外は実施例1と同様にして熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。得られた熱可塑性エラストマー組成物について、実施例1と同様に評価した。評価結果を表-1に示す。
なお、表1には、成分(A)のMFR(A)と成分(B)のMFR(B)の値から算出されるMFR(B)/MFR(A)を併記した。
【0067】
【0068】
[評価結果の考察]
表-1に示す通り、本発明の熱可塑性エラストマー組成物に該当する実施例1及び2は低温耐衝撃性能とフローマーク性に優れていた。
一方、比較例1は優れた低温耐衝撃性能を有するが、フローマークがはっきり確認され、フローマーク性に劣るものであった。
比較例2~4は、フローマーク性は優れるものの、低温耐衝撃性に劣るものであった。
本発明の熱可塑性エラストマー組成物は、低温耐衝撃性とフローマーク性に優れるため、各種用途に好適に用いることができる。本発明の熱可塑性エラストマー組成物は例えば、エアバッグ収納カバー、インストルメントパネル、センターパネル、センターコンソールボックス、ドアトリム、ピラー、アシストグリップ、ハンドル等の自動車内装部品、マッドガード・クロメット等の自動車外装部品、家電部品、建材、家具等として有用である。これらの中でも本発明の熱可塑性エアストマー組成物はエアバッグ収納カバーとして特に有用であり、このエアバッグ収納カバーの中でも、例えば、自動車等の高速移動体が衝突事故等の際に、その衝撃や変形を感知することにより作動し、膨張展開によって乗員を保護するエアバッグシステムのエアバッグ収納カバーとして好適である。