(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139866
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20230927BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20230927BHJP
H01M 8/04029 20160101ALI20230927BHJP
H01M 8/0438 20160101ALI20230927BHJP
H01M 8/04313 20160101ALI20230927BHJP
H01M 8/04228 20160101ALI20230927BHJP
H01M 8/04303 20160101ALI20230927BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20230927BHJP
H01M 8/04701 20160101ALI20230927BHJP
F24D 18/00 20220101ALI20230927BHJP
F24H 15/136 20220101ALI20230927BHJP
F24H 15/219 20220101ALI20230927BHJP
F24H 15/258 20220101ALI20230927BHJP
H01M 8/12 20160101ALN20230927BHJP
F24D 101/30 20220101ALN20230927BHJP
F24D 103/17 20220101ALN20230927BHJP
【FI】
H01M8/04 H
H01M8/00 Z
H01M8/04029
H01M8/0438
H01M8/04313
H01M8/04228
H01M8/04303
H01M8/0432
H01M8/04701
F24D18/00
F24H15/136
F24H15/219
F24H15/258
H01M8/12 101
F24D101:30
F24D103:17
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045613
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】御堂 俊哉
【テーマコード(参考)】
3L122
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
3L122AA02
3L122AA28
3L122AA54
3L122AA62
3L122AB22
3L122AB33
3L122BA32
3L122BA34
3L122BB14
3L122BB15
3L122DA01
3L122EA22
3L122EA47
3L122EA50
5H126BB06
5H127AA07
5H127AB08
5H127AB23
5H127AC18
5H127BA02
5H127BA05
5H127BA13
5H127BA18
5H127BA34
5H127BA37
5H127BA47
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB19
5H127BB37
5H127DA11
5H127DB93
5H127DC93
5H127EE02
5H127EE03
5H127EE29
5H127GG03
5H127GG09
(57)【要約】
【課題】電気ヒータが無い場合でも、貯湯タンクと熱交換器との間で湯水を循環させる循環流路の凍結を防止できる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池1と運転制御装置Cと漏洩検知装置Yと貯湯タンク2と循環流路6とを備える燃料電池システムにおいて、運転制御装置Cは、累積時間をリセットするために燃料電池1の運転を所定期間停止させる停止予定期間を記憶する記憶部31と停止予定期間における循環流路6の凍結リスクを判定する判定部32とを有しており、停止予定期間における凍結リスクが有ると判定されたタイミングが停止予定期間の始期から所定期間よりも大きい判定期間遡ったタイミングであり、且つ、停止予定期間における凍結リスクが閾値を超えているとき、記憶部31に記憶された停止予定期間を前倒しする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転により発生した電力を電力負荷部に供給可能な燃料電池と、前記燃料電池の運転を制御する運転制御装置と、前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給路での漏洩を検知する漏洩検知装置と、熱負荷部に供給可能な湯水を貯える貯湯タンクと、前記燃料電池の排熱と前記貯湯タンクの前記湯水との間で熱交換する熱交換器と、前記貯湯タンクと前記熱交換器との間で前記湯水を循環させる循環流路と、を備える燃料電池システムにおいて、
前記漏洩検知装置は、所定の漏洩判定期間において前記燃料供給路における燃料の流量が所定流量以下である累積時間が所定時間未満であるときに漏洩が発生したと判定するように構成されており、
前記運転制御装置は、前記累積時間をリセットするために前記燃料電池の運転を所定期間停止させる停止予定期間を記憶する記憶部と、前記停止予定期間における前記循環流路の凍結リスクを判定する判定部と、を有しており、前記停止予定期間における前記凍結リスクが有ると判定されたタイミングが前記停止予定期間の始期から前記所定期間よりも大きい判定期間遡ったタイミングであり、且つ、前記停止予定期間における前記凍結リスクが閾値を超えているとき、前記記憶部に記憶された前記停止予定期間を前倒しする、燃料電池システム。
【請求項2】
前記判定部は、気象データに含まれる外気温に基づいて前記凍結リスクを判定する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記運転制御装置は、前記停止予定期間において前記外気温が所定温度以下である合計時間が設定値以上であるとき、前記凍結リスクが閾値を超えているものとして、前記記憶部に記憶された前記停止予定期間を前倒しする、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記記憶部には、第1温度と当該第1温度よりも高い温度の第2温度を含む複数の目標温度が記憶されており、
前記運転制御装置は、前記貯湯タンクに貯えられた前記湯水を、選択した1つの前記目標温度に上昇させる蓄熱モードを実行可能に構成されている、請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記運転制御装置は、前記凍結リスクが有ると判定され、且つ、前記停止予定期間において前記外気温が前記所定温度以下である合計時間が前記設定値未満であるとき、前記記憶部に記憶された前記停止予定期間を前倒しせずに、前記第1温度を前記目標温度として選択して前記蓄熱モードを実行させる、請求項4に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記運転制御装置は、前記停止予定期間における前記凍結リスクが有ると判定されたタイミングが前記停止予定期間の始期から前記所定期間以下の期間遡ったタイミングであるとき、前記記憶部に記憶された前記停止予定期間を前倒しせずに、前記第2温度を前記目標温度として選択して前記蓄熱モードを実行させる、請求項4に記載の燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池と、貯湯タンクと、燃料電池の排熱と貯湯タンクの湯水との間で熱交換する熱交換器と、を備えた燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、燃料電池として固体酸化物形燃料電池(SOFC)を備えた発電効率の高い燃料電池システムが知られている。この燃料電池システムは、改質器において原燃料を改質して生成された水素と酸素を含む空気とを反応させて発電した電力を電力負荷部に供給し、該反応により発生した熱を、熱交換器を介して給湯用途や暖房用途である熱負荷部に供給する。固体酸化物形燃料電池の改質器等のガス機器には商用ガス(例えば都市ガス13A)が供給されており、この商用ガスは、一般的に、ガスの漏洩を検知して警報やガス遮断動作等を行う保護機能を備えたガス漏洩検知装置を介して供給される。従来、ガス漏洩検知装置としては、ガス供給管に設けられたマイコン機能付きのガスメータ(以下、「マイコンメータ」と称する)が用いられている(例えば、特許文献1~2参照)。
【0003】
マイコンメータには種々の安全機能が搭載されているが、その1つに「所定時間ガスが流れ続けたときに警報を発したりガス供給を遮断したりする機能」が備わっている。これは、例えばゴム管やガス管に損傷がありガスが微量に漏れ続けた場合にガス漏れを検出することが目的とされている機能であり、一定時間以上(例えば30日間)の連続したガスの微流出を検知して警報を発したりガス供給を遮断したりするという機能である。
【0004】
この警報が発せられたりガス供給が遮断されたりすると、警報等の解除のため、ガス供給事業者による点検が必要となる場合が多く、また警報等の解除には所定時間ガス流量の無い状態が必要となる。この解除作業はユーザーへの負担であることに加え、連続的にガスを使用している燃料電池を一時的に停止させる措置が必要となる。一旦、燃料電池の運転が停止してしまうと定常運転の状態に戻るまでに時間がかかり、特に固体酸化物形燃料電池の場合、停止行程に10~20時間程度、再起動行程に2~4時間程度必要となることもあり、ユーザーに意図しない不便を強いてしまう。そこで、特許文献1~2に記載の燃料電池システムは、ガス漏洩検知装置の警報等を回避するために、計画的に燃料電池を停止させる停止予定期間を設けている。
【0005】
特許文献1に記載の燃料電池システムは、少なくとも停電発生予測期間には燃料電池の自立運転が可能なように燃料電池の停止予定期間を変更する停止予定変更部を備えている。
【0006】
特許文献2に記載の燃料電池システムは、燃料電池の排熱と貯湯タンクの湯水との間で熱交換する熱交換器と、貯湯タンクと熱交換器との間で湯水を循環させる循環流路とを備え、貯湯タンクに水道水を供給する水道管に電気ヒータを設けて、燃料電池の停止期間中に水道管及び周辺機器が凍結することを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2016-42411号公報
【特許文献2】特開2020-46090号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
貯湯タンクと熱交換器との間で湯水を循環させる循環流路には、貯湯タンクで蓄熱しきれない熱を外気との熱交換によって放熱する放熱器を備えていることがある。特に、この放熱器周辺は循環流路の凍結に起因して故障するおそれがあり、燃料電池システムの効率的な自立運転に支障がでる。
【0009】
一方、特許文献1に記載の燃料電池システムでは、停電発生予測期間と燃料電池の停止予定期間とが重複しないように制御しているものの、循環流路の凍結防止を図る技術ではない。また、特許文献2に記載の燃料電池システムでは、水道管の凍結防止のために電気ヒータを別途設ける必要があり、一定のコストがかかる。
【0010】
そこで、電気ヒータが無い場合でも、貯湯タンクと熱交換器との間で湯水を循環させる循環流路の凍結を防止できる燃料電池システムが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る燃料電池システムの特徴構成は、運転により発生した電力を電力負荷部に供給可能な燃料電池と、前記燃料電池の運転を制御する運転制御装置と、前記燃料電池に燃料を供給する燃料供給路での漏洩を検知する漏洩検知装置と、熱負荷部に供給可能な湯水を貯える貯湯タンクと、前記燃料電池の排熱と前記貯湯タンクの前記湯水との間で熱交換する熱交換器と、前記貯湯タンクと前記熱交換器との間で前記湯水を循環させる循環流路と、を備える燃料電池システムにおいて、前記漏洩検知装置は、所定の漏洩判定期間において前記燃料供給路における燃料の流量が所定流量以下である累積時間が所定時間未満であるときに漏洩が発生したと判定するように構成されており、前記運転制御装置は、前記累積時間をリセットするために前記燃料電池の運転を所定期間停止させる停止予定期間を記憶する記憶部と、前記停止予定期間における前記循環流路の凍結リスクを判定する判定部と、を有しており、前記停止予定期間における前記凍結リスクが有ると判定されたタイミングが前記停止予定期間の始期から前記所定期間よりも大きい判定期間遡ったタイミングであり、且つ、前記停止予定期間における前記凍結リスクが閾値を超えているとき、前記記憶部に記憶された前記停止予定期間を前倒しする点にある。
【0012】
本構成では、運転制御装置が、燃料電池の停止予定期間における循環流路の凍結リスクの有無を判定する判定部を有しており、この判定部により停止予定期間における凍結リスクが有ると判定され、当該凍結リスクが閾値を超えているときに、記憶部に記憶された停止予定期間を前倒しする。その結果、燃料電池を計画的に停止(前倒しした停止予定期間で停止)したとしても、貯湯タンクと熱交換器との間で湯水を循環させる循環流路が凍結するリスクを低減できる。
【0013】
また、本構成では、停止予定期間における凍結リスクが有ると判定されたタイミングが停止予定期間の始期から所定期間よりも大きい判定期間遡ったタイミングであるときに、停止予定期間を前倒しするため、凍結リスクが有る所定期間(前倒しする前の停止予定期間)までに燃料電池を再起動させることができる。さらに、本構成のように、循環流路の凍結リスクが小さい(凍結リスクが閾値を超えていない)ときには停止予定期間を前倒しせずに、循環流路の凍結リスクが大きい(凍結リスクが閾値を超えている)ときにのみ停止予定期間を前倒しすれば、より効率的に循環流路の凍結を防止できる。このため、電気ヒータが無い場合でも、貯湯タンクと熱交換器との間で湯水を循環させる循環流路の凍結を防止できる。
【0014】
他の特徴構成として、前記判定部は、気象データに含まれる外気温に基づいて前記凍結リスクを判定する点にある。
【0015】
本構成のように、気象データの情報を活用して外気温に基づく凍結リスクを判定すれば、計画的に停止予定期間の前倒しを実行できる。しかも、気象データはあらゆる場所で入手できるため、汎用性が高い。
【0016】
他の特徴構成として、前記運転制御装置は、前記停止予定期間において前記外気温が所定温度以下である合計時間が設定値以上であるとき、前記凍結リスクが閾値を超えているものとして、前記記憶部に記憶された前記停止予定期間を前倒しする点にある。
【0017】
本構成のように、所定期間において外気温が所定温度以下である合計時間が設定値以上であるときに循環流路の凍結リスクが大きい(凍結リスクが閾値を超えている)と判定して停止予定期間を前倒しすれば、演算負荷を小さくできる。
【0018】
他の特徴構成として、前記記憶部には、第1温度と当該第1温度よりも高い温度の第2温度を含む複数の目標温度が記憶されており、前記運転制御装置は、前記貯湯タンクに貯えられた前記湯水を、選択した1つの前記目標温度に上昇させる蓄熱モードを実行可能に構成されている点にある。
【0019】
本構成では、貯湯タンクに貯えられた湯水を燃料電池からの排熱で加熱して目標温度に上昇させる蓄熱モードが実行可能であるため、燃料電池を停止する停止予定期間において貯湯タンクの湯水を循環流路に循環させるだけで、蓄熱モードにより貯えられた熱を循環流路に与えて凍結を防止できる。このとき、記憶部に第1温度と当該第1温度よりも高い温度の第2温度を含む複数の目標温度を記憶させておけば、凍結リスクの程度に応じて最適な目標温度を選択できる。
【0020】
他の特徴構成として、前記運転制御装置は、前記凍結リスクが有ると判定され、且つ、前記停止予定期間において前記外気温が前記所定温度以下である合計時間が前記設定値未満であるとき、前記記憶部に記憶された前記停止予定期間を前倒しせずに、前記第1温度を前記目標温度として選択して前記蓄熱モードを実行させる点にある。
【0021】
本構成では、凍結リスクが有ると判定され且つ停止予定期間において外気温が所定温度以下である合計時間が設定値未満であるとき、蓄熱モードにおいて相対的に低温の第1温度を目標温度(例えば、燃料電池の定格出力運転における通常の目標温度)として選択しているため、特別な制御を行わなくても貯湯タンクに熱を貯えることができる。そして、この蓄熱モードで貯湯タンクに貯えられた熱を、前倒ししなかった停止予定期間において循環流路に与えて凍結を防止できる。
【0022】
他の特徴構成として、前記運転制御装置は、前記停止予定期間における前記凍結リスクが有ると判定されたタイミングが前記停止予定期間の始期から前記所定期間以下の期間遡ったタイミングであるとき、前記記憶部に記憶された前記停止予定期間を前倒しせずに、前記第2温度を前記目標温度として選択して前記蓄熱モードを実行させる点にある。
【0023】
本構成のように、判定されたタイミングが停止予定期間の始期から所定期間以下の期間遡ったタイミングであれば、停止予定期間を前倒しした場合、凍結リスクが有る所定期間(前倒しする前の停止予定期間)までに燃料電池を再起動させることができなくなり、循環流路が凍結するおそれがあるため、記憶部に記憶された停止予定期間の前倒しは行わない。一方で、蓄熱モードにおいて相対的に高温の第2温度を目標温度として選択しているため、比較的早期に貯湯タンクに熱を貯えることができる。そして、この蓄熱モードで貯湯タンクに貯えられた熱を、前倒ししなかった停止予定期間において循環流路に与えて凍結を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る燃料電池システムの実施形態について、図面に基づいて説明する。ただし、以下の実施形態に限定されることなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能である。
【0026】
図1に示すように、一般家庭等の施設には、燃料電池システムXと、電力負荷部3とが設けられている。燃料電池システムX及び電力負荷部3は、電力系統15に連系される電力線PLに接続される。電力線PLには、施設の受電電力を測定する電力メーター(不図示)が設置されている。
【0027】
電力メーターで測定された受電点電力に関する情報は、管理装置(不図示)に伝達される。例えば、受電点電力に関する情報は、10秒毎などの所定のタイミングで管理装置に伝達される。管理装置は、複数の施設に設けられた夫々の燃料電池システムXを集中管理可能なメインサーバである。
【0028】
電力負荷部3は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設に設置される燃料電池システムX及び電力系統15の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。
【0029】
燃料電池システムXは、電力系統15に連系される固体酸化物形燃料電池1(燃料電池の一例)を備える。また、固体酸化物形燃料電池1の発電電力は、電力変換部12にて所定の電圧、周波数、位相に変換して電力線PLに供給される。燃料電池システムX及び電力変換部12の動作は、運転制御装置Cにより制御される。
【0030】
運転制御装置Cは、所定の上限出力電力と下限出力電力との間で、燃料電池システムXから電力線PLへの出力電力を調節できる。例えば、運転制御装置Cは、燃料電池システムXの出力電力を上限出力電力に維持して連続運転(定格出力運転)させることができる。また、運転制御装置Cは、燃料電池システムXの出力電力を、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(負荷追従運転)を行わせることもできる。例えば、運転制御装置Cは、電力系統15から供給される電力がゼロ又はゼロに近い値になるように燃料電池システムXの出力電力を調節することで、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転を行わせることができる。
【0031】
運転制御装置Cは、電力変換部12から電力線PLに供給する出力電力についての情報及び電力メーターでの測定電力についての情報を有しているため、電力負荷部3の負荷電力を導出できる。なお、電力メーターでの測定電力の符号がプラス(順潮流)の場合は負荷電力が燃料電池システムXの出力電力よりも大きい状態であることを意味し、電力メーターでの測定電力の符号がマイナス(逆潮流)の場合は燃料電池システムXの出力電力が負荷電力よりも大きい状態であることを意味する。
【0032】
図1は、燃料電池システムXの構成を示す図である。燃料電池システムXは、燃料計Y(漏洩検知装置の一例)と、固体酸化物形燃料電池1を含む燃料電池システムXの運転を制御する運転制御装置Cと、貯湯タンク2と、熱交換器Eと、を備える。
【0033】
燃料電池システムXは、運転により発生した電力を電力負荷部3に供給すると共に運転により発生した熱を熱負荷部4に供給する固体酸化物形燃料電池1を備える。電力負荷部3は、固体酸化物形燃料電池1から供給される電力に加えて、電力系統15から供給される電力も消費することが可能である。つまり、固体酸化物形燃料電池1は、運転により発生した電力を電力負荷部3に供給可能で、且つ、電力系統15から電力負荷部3に電力供給可能な状態及び運転により発生した電力を電力系統15に供給可能な状態で電力系統15と連系されている。
【0034】
熱負荷部4は、固体酸化物形燃料電池1から発生する熱に加えて、原燃料を燃焼して熱を発生する補助熱源装置11から供給される熱を消費することもできる。
【0035】
固体酸化物形燃料電池1は、供給される改質用水を蒸発させる気化器1bと、原燃料(炭化水素を含むガス、例えば都市ガス13A)を水蒸気改質して燃料ガス(水素を含むガス)を生成する改質器1aと、改質器1aで生成された燃料ガスを用いて発電する複数の燃料電池セルSを有するセルスタックと、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部1cと、を容器1Aの内部に備える。このセルスタックは電力変換部12に電気的に接続される。
【0036】
セルスタックは、改質器1aで生成された燃料ガスが通流する燃料通流部(図示せず)を有するアノード50と、酸素(空気)が通流する空気通流部(図示せず)を有するカソード60とを備えた燃料電池セルSを、複数個電気的に直列接続した状態で備えている。図示は省略するが、燃料電池セルSは、アノード50とカソード60との間に固体電解質層を備えた固体酸化物形に構成される。アノード50に燃料ガスが供給され、カソード60に酸素が供給される。
【0037】
セルスタックの下部には、改質器1aから燃料ガス流路L4を通して供給される燃料ガスを受け入れるガスマニホールド1eが設けられる。このガスマニホールド1eに供給された燃料ガスが複数の燃料電池セルSの下端から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排出燃料ガスは、上端の燃料ガス排出口50aから排出される。
【0038】
固体酸化物形燃料電池1には、空気供給流路L5が接続された空気導入部70が設けられており、この空気供給流路L5の途中には、エアフィルタ21とエアブロア22とエア流量計23とが設けられる。エアブロア22の作動により、空気が空気供給流路L5を通して容器1A内に供給される。エアフィルタ21は、エアブロア22によって空気供給流路L5に吸い込まれた空気中の塵などの異物を捕らえる。エア流量計23は、容器1A内に供給される空気の単位時間当たりの流量を測定する。複数の燃料電池セルSの夫々には容器1A内の空気が下方側から上方側に通流して発電反応に供される。発電反応に供されたのちの排空気は、上端の空気排出口60aから排出される。
【0039】
セルスタックの上方には、燃料ガス排出口50aから排出される発電反応に用いられなかった水素を含む排出燃料ガスと、空気排出口60aから排出される排空気と、を燃焼させる燃焼空間が形成される。これら排出燃料ガスと排空気とが、セルスタックからのオフガスとなる。この燃焼空間には点火器1dも設けられる。つまり、セルスタックの上方の燃焼空間によって、セルスタックからのオフガスを燃焼する燃焼部1cが実現される。加えて、一体で構成された気化器1bと改質器1aとが、燃焼部1cとして機能するセルスタックの上方の燃焼空間に隣接して設けられている。
【0040】
容器1Aには、燃焼部1cにて発生した燃焼排ガスを、熱交換器Eを経由させて外部に排出するための排気部80が下部に形成されている。そして、容器1A内には、排気部80から外部に排出される燃焼排ガス中の一酸化炭素ガス等を除去する燃焼触媒部90(例えば、白金系触媒)が設けられている。
【0041】
気化器1bは、供給される改質用水を、燃焼部1cから伝えられる燃焼熱を用いて加熱して蒸発させる。改質用水タンク24に貯えられている改質用水は、改質用水タンク24に連結される改質用水流路L2を介して気化器1bに供給される。具体的には、改質用水ポンプPが動作することで改質用水タンク24に貯えられている改質用水が改質用水流路L2を通流して気化器1bの内部に流入する。
【0042】
気化器1bには原燃料流路L1を介して原燃料も供給される。原燃料流路L1の途中には質量流量計Faと原燃料ブロアBとが設けられている。質量流量計Faには例えば原燃料の熱拡散作用を利用して測定を行う熱式質量流量計が用いられる。更に、原燃料ブロアBの下流側の原燃料流路L1には、原燃料(例えば、都市ガス等)に含まれる硫黄化合物を取り除くための脱硫器20が設けられている。そして、原燃料ブロアBが動作することで、原燃料が原燃料流路L1を通流し且つ脱硫器20で脱硫された後で気化器1bの内部に流入する。運転制御装置Cは、質量流量計Faを用いて測定される原燃料の流量が目標の流量になるように原燃料ブロアB及び開閉バルブV1の動作を制御する。以上のようにして、気化器1bでは、運転制御装置Cによって単位時間当たりの供給量が制御された原燃料及び水蒸気が混合された混合ガスが生成され、混合ガス流路L3を介して改質器1aに供給される。
【0043】
改質器1aは、気化器1bから供給される混合ガスに含まれる原燃料の水蒸気改質処理を行う。図示は省略するが、改質器1aの内部には改質触媒が充填されており、この改質触媒の触媒作用によって原燃料が改質処理される。
【0044】
固体酸化物形燃料電池1の発電電力は電力変換部12に供給される。電力変換部12は固体酸化物形燃料電池1の発電電力を電力系統15から受電する受電電力と同じ電圧及び同じ周波数にする。電力変換部12の動作は運転制御装置Cが制御する。電力変換部12は、発電電力供給ライン13を介して受電電力供給ライン14に電気的に接続される。そして、固体酸化物形燃料電池1からの発電電力が電力変換部12,発電電力供給ライン13及び受電電力供給ライン14(上述した電力線PLに相当)を介して電力負荷部3に供給される。この受電電力供給ライン14は電力系統15に接続されている。つまり、固体酸化物形燃料電池1は、運転により発生した電力を電力系統15に供給可能な状態で電力系統15と連系されている。
【0045】
受電電力供給ライン14には、電力負荷部3の電力負荷を計測する電力負荷計測部16が設けられ、その計測結果が運転制御装置Cに伝達される。そして、運転制御装置Cは、電力系統15から供給される電力がゼロ又はゼロに近い値になるように燃料電池システムXの出力電力を調節することで、電力負荷部3の負荷電力に追従させる運転(負荷追従運転)を行わせることができる。この負荷追従運転は、上述した電力メーター付近での受電点電力の計測値に基づいて固体酸化物形燃料電池1の発電電力を制御してもよいし、電力負荷計測部16で検出される電力負荷と固体酸化物形燃料電池1から受電電力供給ライン14に供給される発電電力とが等しくなるように制御してもよい。また、運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1を定格出力で動作させることも可能である。ただし、負荷追従運転において、電力負荷計測部16で計測される電力負荷が、固体酸化物形燃料電池1の最低発電電力(電力変換部12により受電電力供給ライン14に供給される最低発電電力)よりも小さい場合、余剰電力が発生する。また、定格出力運転において、固体酸化物形燃料電池1を定格出力で動作させ、電力変換部12からの出力電力が電力負荷よりも大きい場合にも、余剰電力が発生する。電力系統15への電力の逆潮流が可能な場合には、その余剰電力を電力系統15へ供給してもよい。
【0046】
電力負荷部3は、例えば照明装置、空調装置などの様々な装置であり、施設に設置される燃料電池システムX及び電力系統15の少なくとも一方から電力供給を受けることができる。なお、電力負荷部3にどのような装置を含めるのかは適宜設定可能である。例えば、固体酸化物形燃料電池1を運転するために用いられる補機等を電力負荷部3から除外するような設定も可能である。また、電力負荷部3の待機電力を、電力負荷計測部16で計測する電力負荷から減算してもよい。
【0047】
貯湯タンク2には、固体酸化物形燃料電池1で発生した熱が湯水の形態で貯えられる。つまり、貯湯タンク2は、固体酸化物形燃料電池1の運転により発生した熱を用いて加温された湯水が貯留される。貯湯タンク2の下部には、給水路17を介して上水が供給される。貯湯タンク2の内部では、相対的に低温の湯水がその下部に貯えられ、相対的に高温の湯水がその上部に貯えられるように構成されている。
【0048】
貯湯タンク2に貯えられている湯水は、排熱回収用ポンプ7を作動させることにより、循環流路6を通って固体酸化物形燃料電池1の燃焼排ガスが流通する熱交換器Eと貯湯タンク2との間で循環する。循環流路6の途中には、循環流路6を通って貯湯タンク2から熱交換器Eへと流れる湯水からの放熱を行うための放熱器8が設置されている。貯湯タンク2の上部に貯留されている相対的に高温の湯水は、貯湯タンク2の上部に接続されている湯水供給路5及び補助熱源装置11を介して熱負荷部4に供給される。また、給水路17と湯水供給路5とを接続するために、第一接続路18と第二接続路19とが設けられており、第一接続路18と湯水供給路5との接続部には三方弁V2が配置されており、第二接続路19には遮断弁V3が配置されている。三方弁V2は、高温の湯水を遮断する遮断ポジションと、給水路17の水を高温の湯水に混合させる調温ポジションと、高温の湯水のみ湯水供給路5に流通させる高温ポジションとに切り替え可能である。遮断弁V3は、第二接続路19と湯水供給路5との連通,非連通を切り替え可能な開閉弁である。
【0049】
熱交換器Eは、固体酸化物形燃料電池1の排熱と貯湯タンク2の湯水との間で熱交換する公知の熱交換器である。本実施形態における熱交換器Eは、循環流路6のうち、放熱器8の下流側に設けられている。貯湯タンク2の下部に貯えられている湯水は、循環流路6を循環することにより、熱交換器Eを介して加熱されて、貯湯タンク2の上部に戻される。循環流路6のうち、熱交換器Eよりも下流側には、公知の温度センサTが設けられており、この温度センサTは、熱交換器Eで加熱された湯水の温度を計測して、運転制御装置Cに加熱された湯水の温度を出力する。
【0050】
熱負荷部4は、給湯用途や暖房用途等である。熱負荷部4が給湯用途の場合、湯水は貯湯タンク2へ帰還しない。熱負荷部4が暖房用途の場合、湯水が保有している熱のみが消費されて、湯水は貯湯タンク2へと帰還することもある。
【0051】
燃料計Yは、固体酸化物形燃料電池1に原燃料流路L1(燃料供給路の一例)を介して供給される原燃料(燃料)、及び、補助熱源装置11やガスコンロ等で構成される他の燃料消費機器Kに原燃料流路L6(燃料供給路の一例)を介して供給される原燃料(燃料)の合計体積を計測する体積流量計Fbを備える。燃料計Yは、固体酸化物形燃料電池1に原燃料を供給する原燃料流路L1,L6での漏洩を検知する。この体積流量計Fbは、2つの計量室を仕切る可動式の膜の動作回数から原燃料の使用量(合計体積)を計測する膜式ガスメータ、又は、超音波センサによりガスの流速を測定して原燃料の使用量(合計体積)を計測する超音波式ガスメータで構成される。
【0052】
体積流量計Fbは、少なくとも「所定時間ガスが流れ続けたときに警報を発したりガス供給を遮断したりする機能」を含む安全機能を有するマイコンメータで構成される。この安全機能の1つとして、所定の漏洩判定期間中(例えば30日間)に、ごく微量(所定流量)以下の流量(合計体積)となる累積時間が所定時間(例えば1時間)に達していないときに漏洩が発生したと判定して警報を発し或いはガス供給を遮断し、所定時間に達していれば累積時間をリセットする(累積時間をゼロにする)機能を備えている。本実施形態では、累積時間をリセットするために、固体酸化物形燃料電池1の運転を所定期間(機種に応じて、停止,起動を含め12時間~24時間)停止させる停止予定期間を、所定間隔(例えば、27日間隔)で設けている。
【0053】
続いて、
図1~
図3を用いて、燃料電池システムXの運転制御装置Cの詳細について説明する。
【0054】
図1に示すように、運転制御装置Cは、少なくとも固体酸化物形燃料電池1の運転を制御する。この運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1の停止予定期間等を記憶する記憶部31と、停止予定期間における凍結リスクを判定する判定部32と、少なくとも固体酸化物形燃料電池1の停止制御を実行する制御部33と、を有している。運転制御装置Cは、情報処理機能,情報記憶機能及び情報通信機能等を有するハードウェア及びソフトウェアで構成されており、施設に設けられているが、一部又は全部が管理装置に設けられていてもよい。記憶部31は、運転制御装置Cを作動させるプログラム等を格納した記憶媒体で構成されており、各施設に設けられているが、一部又は全部が管理装置に設けられていてもよい。
【0055】
記憶部31は、体積流量計Fbでカウントされた累積時間をリセットするために、固体酸化物形燃料電池1の運転を所定期間(例えば24時間)停止させる停止予定期間を、所定間隔(例えば、27日間隔)で記憶している。また、記憶部31は、後述する蓄熱モードを実行するために、複数の目標温度(例えば、第1温度としての60℃および第2温度としての80℃)を記憶している。本実施形態における運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1が停止から起動まで長時間(例えば、24時間)要することから、記憶部31に記憶された停止予定期間(例えば、24時間)における凍結リスクが有ると判定されたタイミングが停止予定期間の始期から所定期間(例えば、24時間)よりも大きい判定期間(例えば、2日以上)遡ったタイミングであるときに、記憶部31に記憶された停止予定期間を変更する(前倒しする)ことができる。変更後の停止予定期間は、変更前の停止予定期間の始期よりも判定期間(例えば、2日以上)遡った時期に設定することができる。
【0056】
判定部32は、気象データに含まれる外気温(予想外気温)に基づいて停止予定期間における凍結リスクを判定する。気象データは気象庁が公開している計測地点(予測地区)ごとの予測データであり、外気温、降水量や風速等が含まれている。気象データに含まれる外気温は、管理装置を介して運転制御装置Cが受信してもよいし、運転制御装置Cが直接受信してもよい。判定部32は、燃料電池システムXが存在する地点に最も近い予測地点における外気温の予測データに基づいて、停止予定期間における凍結リスクを判定する。
【0057】
図2には、判定部32が凍結リスクを判定する一例を示されている。2021年9月は、すべての日の予想最低気温が第一所定温度(例えば3℃)を超えているため、判定部32が「凍結リスク無し」と判定する。この場合、例えば、2021年9月に含まれる停止予定期間は、「凍結リスク無し」と判定される。一方、2022年1月は、殆どの日の予想最低気温が第一所定温度以下であるため、判定部32が「凍結リスク有り」と判定する。この場合、例えば、2022年1月に含まれる停止予定期間は、「凍結リスク有り」と判定される。
なお、凍結リスクの有無は、最低気温が第一所定温度以下である日が所定日数(例えば20日)以上ある月を「凍結リスク有り」としてもよいし、停止予定期間が含まれる日とその所定日数前(例えば3日前程度)の最低気温が第一所定温度以下であれば、「凍結リスク有り」としてもよい。
【0058】
判定部32は、「凍結リスク有り」と判定したとき、更に停止予定期間における凍結リスクが閾値を超えているか否かを判定する。凍結リスクが閾値を超えているか否かの判定基準の一例として、予め記憶部31に記憶された停止予定期間のうち、固体酸化物形燃料電池1の運転を停止させる所定期間(例えば24時間)において、外気温が第二所定温度(例えば3℃、所定温度に相当)以下である合計時間が設定値(例えば8時間)以上か否かを用いる。判定部32は、外気温が第二所定温度以下である合計時間が設定値未満である2022年1月10日を「凍結リスク小」と判定し、外気温が第二所定温度以下である合計時間が設定値以上である2022年1月21日を「凍結リスク大」と判定する。
【0059】
運転制御装置Cは、判定部32が「凍結リスク有り」と判定した場合であって、所定期間において外気温が第二所定温度(例えば3℃)以下である合計時間が設定値(例えば8時間)以上であるとき、「凍結リスク大」と判定する。そして、「凍結リスク有り」且つ「凍結リスク大」と判定したタイミングが、所定期間よりも大きい判定期間(例えば2日以上)を停止予定期間の始期から遡ったタイミング(例えば、停止開始日より少なくとも2日前)であれば、記憶部31に記憶された停止予定期間を前倒しする。この停止予定期間の前倒しとして、運転制御装置Cは、修正前の停止予定期間を削除或いは当該修正前の停止予定期間に上書きして、修正停止予定期間として記憶部31に記憶させ、この修正停止予定期間から、所定間隔(例えば、27日間隔)で次の停止予定期間が更新されることとなる。この修正停止予定期間としては、当初の停止予定期間に対して直近の期間であって、所定期間において外気温が第二所定温度(例えば3℃)以下である合計時間が設定値(例えば8時間)未満の期間が選定される。
【0060】
制御部33は、記憶部31に記憶された固体酸化物形燃料電池1の停止予定期間又は修正停止予定期間の始期が到来したとき、固体酸化物形燃料電池1の運転を所定期間(機種に応じて、停止,起動を含め12時間~24時間)停止させる。また、制御部33は、貯湯タンク2に貯えられた湯水を、記憶部31に記憶された複数の目標温度(例えば第1温度としての60℃および第2温度としての80℃)から選択した1つの目標温度に上昇させる蓄熱モードを実行可能に構成されている。この蓄熱モードは、熱交換器Eを経た循環流路6を流通する湯水の温度(温度センサTの計測値)が目標温度となるように、制御部33が排熱回収用ポンプ7を制御して、循環流路6を流通する湯水の流速を調整する。例えば、制御部33は、目標温度が温度センサTの計測値よりも大きいときは、循環流路6を流通する湯水の流速を低減させる。一方、制御部33は、目標温度が温度センサTの計測値よりも小さいときは、循環流路6を流通する湯水の流速を増加させる、又は、放熱器8を制御して循環流路6を流通する湯水から熱を奪う。ここで、「蓄熱モード」とは、温度センサTの計測値が目標温度となるように所定時間(例えば8時間)運転して停止予定期間の始期までに、貯湯タンク2に貯えられた湯水のほぼ全量が目標温度となる満蓄状態に制御するモードである。なお、停止予定期間の始期までに、貯湯タンク2に貯えられた湯水のほぼ全量が目標温度となっていなくても、所定量の熱が蓄熱される状態にまで蓄熱モードを実行することとしてもよい。
【0061】
運転制御装置Cは、判定部32が「凍結リスク有り」と判定した場合であって、所定期間において外気温が第二所定温度(例えば3℃)以下である合計時間が設定値(例えば8時間)未満であるとき、「凍結リスク小」と判定し、相対的に低温の第1温度を目標温度(例えば、燃料電池の定格出力運転における通常の目標温度である60℃)として選択して、制御部33が排熱回収用ポンプ7又は放熱器8を制御し、蓄熱モード(低蓄熱モード)を実行する。一方、運転制御装置Cは、判定部32が「凍結リスク有り」と判定した場合であって、この判定タイミングが停止予定期間の始期から判定期間(例えば2日)よりも短い期間遡ったタイミングであるとき、特に停止予定期間の始期から所定期間以下の期間遡ったタイミング(例えば、停止予定期間の始期前24時間以内の期間遡ったタイミング)にあるとき、相対的に高温の第2温度を目標温度(例えば80℃)として選択して、制御部33が排熱回収用ポンプ7又は放熱器8を制御し、蓄熱モード(高蓄熱モード)を実行する。
【0062】
運転制御装置Cは、蓄熱モードを実行した場合、制御部33は、記憶部31に記憶された固体酸化物形燃料電池1の停止予定期間で(つまり、停止予定期間の前倒しは行わず、当初の停止予定期間で)固体酸化物形燃料電池1の運転を停止させると共に、当該停止予定期間において排熱回収用ポンプ7を作動させて、貯湯タンク2に貯えられている湯水を循環流路6に流通させる。これにより、判定部32が「凍結リスク有り」と判定した場合において、蓄熱モードで貯湯タンク2に貯えられた熱を循環流路6に与え、循環流路6の凍結を防止することができる。
【0063】
次に、
図3を用いて、運転制御装置Cの制御形態を説明する。まず、運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1を運転させる(#31)。
【0064】
次いで、運転制御装置Cの判定部32が、停止予定期間における循環流路6の凍結リスクの有無を判定する(#32)。判定部32は、停止予定期間において、外気温の最低気温が第一所定温度(例えば3℃)以下であれば、「凍結リスク有り」と判定し(#32Yes)、外気温の最低気温が第一所定温度より大きければ、「凍結リスク無し」と判定する(#32No)。次いで、「凍結リスク有り」と判定した場合(#32Yes)、「凍結リスク有り」と判定されたタイミングが、所定期間(例えば24時間)よりも大きい判定期間(例えば2日以上)を停止予定期間の始期から遡ったタイミング(例えば、発電停止日よりN日以上前)であれば、判定部32が凍結リスクの大小を判定する(#33No、#34)。例えば、判定部32は、所定期間において外気温が第二所定温度(例えば3℃)以下である合計時間が設定値(例えば8時間)以上であるとき、「凍結リスク大」と判定する(#34Yes)。「凍結リスク大」と判定された場合(#34Yes)、記憶部31に記憶された停止予定期間を前倒して修正停止予定期間に変更する(#35)。そして、制御部33は、固体酸化物形燃料電池1の修正停止予定期間の始期が到来したとき、固体酸化物形燃料電池1の運転を所定期間停止させる(#36)。
【0065】
このように、気象データの情報を活用して外気温に基づく凍結リスクを判定すれば、計画的に停止予定期間の前倒しを実行できる。しかも、気象データはあらゆる場所で入手できるため、汎用性が高い。本実施形態における運転制御装置Cは、固体酸化物形燃料電池1の停止予定期間における循環流路6の凍結リスクの有無を判定する判定部32を有しており、この判定部32により停止予定期間における凍結リスクが有ると判定され、当該凍結リスクが閾値を超えているときに、記憶部31に記憶された停止予定期間を前倒しする。その結果、固体酸化物形燃料電池1を計画的に停止(前倒しした停止予定期間で停止)したとしても、貯湯タンク2と熱交換器Eとの間で湯水を循環させる循環流路6が凍結するリスクを低減できる。
【0066】
また、本実施形態では、停止予定期間における凍結リスクが有ると判定されたタイミングが停止予定期間の始期から所定期間よりも大きい判定期間遡ったタイミングであるときに、停止予定期間を前倒しするため、凍結リスクが有る所定期間(前倒しする前の停止予定期間)までに固体酸化物形燃料電池1を再起動させることができる。さらに、循環流路6の凍結リスクが小さい(凍結リスクが閾値を超えていない)ときには停止予定期間を前倒しせずに、循環流路6の凍結リスクが大きい(凍結リスクが閾値を超えている)ときにのみ停止予定期間を前倒しすれば、より効率的に循環流路6の凍結を防止できる。また、本実施形態のように、所定期間において凍結リスクの合計時間が設定値以上であるときに循環流路6の凍結リスクが大きいと判定して、停止予定期間を前倒しすれば、運転制御装置Cの演算負荷が小さい。
【0067】
図3に戻り、#34の判定の結果、判定部32が、「凍結リスク小」と判定した場合(#34No)、蓄熱モードにおいて相対的に低温の第1温度を目標温度(例えば、燃料電池の定格出力運転における通常の目標温度である60℃)として選択し、制御部33が排熱回収用ポンプ7又は放熱器8を制御する(#37の低蓄熱モード)。次いで、制御部33は、記憶部31に記憶された固体酸化物形燃料電池1の停止予定期間が到来したとき、固体酸化物形燃料電池1の運転を停止させると共に、排熱回収用ポンプ7を作動させて、低蓄熱モードにより貯湯タンク2に貯えられた湯水を循環流路6に流通させる(#39)。これにより、特別な制御を行わなくても貯湯タンク2に熱を貯えることができる。そして、この低蓄熱モードで貯湯タンク2に貯えられた熱を、前倒ししなかった停止予定期間において循環流路6に与えて凍結を防止できる。
【0068】
#33の判定の結果、判定部32により「凍結リスク有り」と判定されたタイミングが所定期間よりも大きい判定期間(例えば2日以上)を停止予定期間の始期から遡ったタイミングより後(例えば、発電停止日よりN日以内)にあるとき(#33Yes)、蓄熱モードにおいて相対的に高温の第2温度を目標温度(例えば80℃)として選択し、制御部33が排熱回収用ポンプ7又は放熱器8を制御する(#38の高蓄熱モード)。次いで、制御部33は、記憶部31に記憶された固体酸化物形燃料電池1の停止予定期間が到来したとき、固体酸化物形燃料電池1の運転を停止させると共に、排熱回収用ポンプ7を作動させて、高蓄熱モードにより貯湯タンク2に貯えられた湯水を循環流路6に流通させる(#39)。すなわち、判定されたタイミングが停止予定期間の始期から判定期間よりも短い期間遡ったタイミングであるとき、特に停止予定期間の始期から所定期間以下の期間遡ったタイミングであれば、停止予定期間を前倒しした場合、凍結リスクが有る所定期間(前倒しする前の停止予定期間)までに固体酸化物形燃料電池1を再起動させることができなくなり、凍結するおそれがあるため、記憶部31に記憶された停止予定期間の前倒しは行わない。一方で、蓄熱モードにおいて相対的に高温の第2温度を目標温度として選択しているため、比較的早期に貯湯タンク2に熱を貯えることができる。そして、この高蓄熱モードで貯湯タンク2に貯えられた熱を、前倒ししなかった停止予定期間において循環流路6に与えて凍結を防止できる。
【0069】
[その他の実施形態]
<1>上述した実施形態では、燃料電池システムXが固体酸化物形燃料電池1を備えたが、燃料電池システムXが、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸形燃料電池(PAFC)又は溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)を備えてもよい。
【0070】
<2>上述した蓄熱モードにおいて固体酸化物形燃料電池1の排熱を貯湯タンク2に貯える際には、三方弁V2を遮断ポジションとし、遮断弁V3を開弁することで、貯湯タンク2の熱を他の用途に使用できないように制限することが好ましい。また、蓄熱モードが実行された以降の停止予定期間において固体酸化物形燃料電池1の運転を停止させて、貯湯タンク2の湯水を循環流路6に循環させることで、循環流路6の凍結を防止する際には、湯水を間欠的に循環させてもよいし、湯水を継続的に循環させてもよい。
【0071】
<3>上述した実施形態における判定部32は、気象データに含まれる外気温(予想外気温)に基づいて停止予定期間における凍結リスクを判定した。これに代えて、判定部32は、給水路17の水温となる水道水の温度に基づいて凍結リスクを判定してもよく、特に限定されない。
【0072】
<4>上述した実施形態では、燃料計Yの漏洩判定を回避するために、燃料電池システムXの停止予定期間を変更したが、燃料電池システムXの停止予定期間の変更理由は特に限定されない。例えば、ガスや電気の使用実績が長時間無い等の場合、光熱費メリットを考慮して燃料電池システムXの停止予定期間が予定されていることがある。つまり、停止予定期間は、燃料電池システムXの運転を所定期間停止させることが予定されているものであれば、どの様な形態であってもよい。
【0073】
<5>上記実施形態では、具体的な数値を挙げて燃料電池システムXで行われる制御例について説明したが、それらの数値は例示目的で記載したものであり適宜変更可能である。例えば、燃料電池システムXを停止する所定期間及び停止予定期間を12時間としてもよい。
【0074】
なお、上述した実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能である。また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、燃料電池の排熱と貯湯タンクの湯水との間で熱交換する熱交換器と、貯湯タンクと熱交換器との間で湯水を循環させる循環流路と、を備える燃料電池システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 :固体酸化物形燃料電池(燃料電池)
2 :貯湯タンク
3 :電力負荷部
4 :熱負荷部
6 :循環流路
31 :記憶部
32 :判定部
C :運転制御装置
E :熱交換器
L1 :原燃料流路(燃料供給路)
L6 :原燃料流路(燃料供給路)
X :燃料電池システム
Y :燃料計(漏洩検知装置)