(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139868
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】スイッチング回路
(51)【国際特許分類】
H02M 1/00 20070101AFI20230927BHJP
H02M 1/08 20060101ALI20230927BHJP
H03K 17/16 20060101ALI20230927BHJP
H03K 17/687 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
H02M1/00 H
H02M1/00 E
H02M1/08 A
H03K17/16 F
H03K17/687 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045616
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 卓司
【テーマコード(参考)】
5H740
5J055
【Fターム(参考)】
5H740AA04
5H740AA05
5H740BA12
5H740BB05
5H740BB09
5H740BB10
5H740BC01
5H740BC02
5H740HH06
5H740JA01
5H740JB01
5H740JB02
5H740KK01
5H740MM08
5H740MM11
5J055AX25
5J055AX27
5J055AX56
5J055AX64
5J055BX16
5J055DX13
5J055DX22
5J055EY01
5J055EY10
5J055EY12
5J055EY21
5J055EZ53
5J055FX05
5J055FX13
5J055GX01
5J055GX03
(57)【要約】
【課題】 スイッチング素子の誤点弧を抑制するとともに、対象スイッチング素子のゲートに負電位が印加される期間を短くする。
【解決手段】 スイッチング回路であって、対象ゲート制御回路が、ゲートオフ電位として、第1ゲートオフ電位と、低電位主端子の電位よりも低い第2ゲートオフ電位を対象スイッチング素子のゲートに印加可能である。対象ゲート制御回路が、対向ダイオードに順電流が流れているか否かを判定可能である。対象ゲート制御回路が、対向ダイオードに順電流が流れている状態で対向スイッチング素子がターンオンする第1タイミングでは対象スイッチング素子のゲートに第1ゲートオフ電位を印加し、対向ダイオードに順電流が流れていない状態で対向スイッチング素子がターンオンする第2タイミングでは対象スイッチング素子のゲートに第2ゲートオフ電位を印加する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング回路(20a)であって、
高電位配線(12)と、
出力配線(16a)と、
低電位配線(14)と、
前記高電位配線に接続された高電位主端子と前記出力配線に接続された低電位主端子とゲートを有する第1スイッチング素子(21)と、
前記出力配線に接続された高電位主端子と前記低電位配線に接続された低電位主端子とゲートを有する第2スイッチング素子(22)と、
前記第1スイッチング素子の前記高電位主端子に接続されたカソードと前記第1スイッチング素子の前記低電位主端子に接続されたアノードを有する第1ダイオード(23)と、
前記第2スイッチング素子の前記高電位主端子に接続されたカソードと前記第2スイッチング素子の前記低電位主端子に接続されたアノードを有する第2ダイオード(24)と、
前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子のうちの一方を対象スイッチング素子とするとともに他方を対向スイッチング素子としたときに、前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位をゲートオン電位とゲートオフ電位の間で変更する対象ゲート制御回路(25)と、
前記対向スイッチング素子の前記ゲートの電位をゲートオン電位(VCC)とゲートオフ電位の間で変更する対向ゲート制御回路(26)、
を有し、
前記対象ゲート制御回路と前記対向ゲート制御回路が、前記対象スイッチング素子と前記対向スイッチング素子が交互にオンするように前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位と前記対向スイッチング素子の前記ゲートの電位を制御し、
前記対象ゲート制御回路が、前記ゲートオフ電位として、前記対象スイッチング素子の前記低電位主端子の電位以上である第1ゲートオフ電位と、前記対象スイッチング素子の前記低電位主端子の電位よりも低い第2ゲートオフ電位(-VNG)を前記対象スイッチング素子の前記ゲートに印加可能であり、
前記第1ダイオードと前記第2ダイオードのうちの前記対象スイッチング素子に対して並列に接続されている方が対象ダイオードであり、
前記第1ダイオードと前記第2ダイオードのうちの前記対向スイッチング素子に対して並列に接続されている方が対向ダイオードであり、
前記対象ゲート制御回路が、前記対向ダイオードに順電流が流れている状態で前記対向スイッチング素子がターンオンする第1タイミング(t5)では前記対象スイッチング素子の前記ゲートに前記第1ゲートオフ電位を印加し、前記対向ダイオードに順電流が流れていない状態で前記対向スイッチング素子がターンオンする第2タイミング(Tb)では前記対象スイッチング素子の前記ゲートに前記第2ゲートオフ電位を印加する、
スイッチング回路。
【請求項2】
前記対象ゲート制御回路が、前記出力配線に流れる電流の向きに基づいて前記対向ダイオードに順電流が流れているか否かを判定する、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項3】
前記対象ゲート制御回路が、前記対向スイッチング素子と前記対向ダイオードの並列回路に流れる電流の向きに基づいて前記対向ダイオードに順電流が流れているか否かを判定する、請求項1に記載のスイッチング回路。
【請求項4】
前記対象ゲート制御回路と前記対向ゲート制御回路に、前記対向スイッチング素子のターンオン指令とターンオフ指令を含む対向指令信号(SG2)が入力され、
前記対向ゲート制御回路が、前記対向指令信号に基づいて前記対向スイッチング素子の前記ゲートの電位を制御し、
前記対象ゲート制御回路が、前記対向ダイオードに順電流が流れている状態で前記ターンオン指令を受信すると、前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位を前記第1ゲートオフ電位から前記第2ゲートオフ電位に低下させ、その後、前記対向スイッチング素子のターンオンが完了するまで前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位を前記第2ゲートオフ電位に維持する、
請求項1~3のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項5】
前記対象ゲート制御回路が、前記対向スイッチング素子の前記ゲートの電位に基づいて前記対向スイッチング素子のターンオンが完了したか否かを判定する、請求項4に記載のスイッチング回路。
【請求項6】
前記対象ゲート制御回路が、前記対象スイッチング素子の前記高電位主端子と前記低電位主端子の間の電圧に基づいて前記対向スイッチング素子のターンオンが完了したか否かを判定する、請求項4に記載のスイッチング回路。
【請求項7】
前記対象ゲート制御回路が、前記第2タイミングにおける前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位の上昇量を検出する上昇量検出回路(46a)と、
前記上昇量検出回路で検出される前記上昇量が高いほど、前記第2ゲートオフ電位を低くする上昇量-第2ゲートオフ電位補正回路(46b)、
を有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【請求項8】
前記上昇量検出回路が、
前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位のピーク値をホールドするピーク値ホールド回路と、
前記ピーク値がホールドされてから次の前記第2タイミングが到来するまでに前記ピーク値をリセットするリセット回路(46b-7)と、
を有する、請求項7に記載のスイッチング回路。
【請求項9】
温度センサと、
前記温度センサで検出される温度が高いほど、前記第2ゲートオフ電位を低くする温度-第2ゲートオフ電位補正回路(46b)、
をさらに有する請求項1~8のいずれか一項に記載のスイッチング回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、スイッチング回路に関する。
【0002】
特許文献1に開示のインバータ回路は、高電位配線と低電位配線の間に直列に接続された2つのスイッチング素子を有している。また、2つのスイッチング素子の接続点に、出力配線が接続されている。また、インバータ回路は、スイッチング素子ごとにゲート制御回路を有している。各ゲート制御回路は、対応するスイッチング素子のゲート電位を制御する。ゲート制御回路は、ゲート電位をゲートオン電位とゲートオフ電位に切り換えることで、スイッチング素子をスイッチングさせる。また、ゲート制御回路は、ゲートオフ電位として、0V以上の第1ゲートオフ電位と0V未満の第2ゲートオフ電位を印加することができる。直列に接続されたうちの一方のスイッチング素子がターンオンするタイミングにおいて、容量結合によって、他方のスイッチング素子のゲート電位が瞬間的に上昇する場合がある。これに対し、各ゲート制御回路は、自身が接続されたスイッチング素子(以下、対象スイッチング素子という)がオフ状態にあり、対象スイッチング素子に対して直列に接続されたスイッチング素子(以下、対向スイッチング素子という)がオンするタイミングにおいて、対象スイッチング素子のゲートに第2ゲートオフ電位(すなわち、負電位)を印加する。これによって、対象スイッチング素子のゲート電位が容量結合によって上昇した場合でも、対象スイッチング素子が誤ってオンすること(以下、誤点弧という)が抑制される。また、スイッチング素子のゲートに負電位が印加されると、スイッチング素子が劣化し易い。これに対し、各ゲート制御回路は、対向スイッチング素子がターンオンするタイミング以外のオフ期間では、対象スイッチング素子のゲートに第1ゲートオフ電位を印加する。これによって、対象スイッチング素子の劣化が抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書では、対象スイッチング素子の誤点弧を抑制できるとともに、対象スイッチング素子のゲートに負電位が印加される期間をより短くすることが可能な技術を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特許文献1の技術では、対向スイッチング素子がターンオンするタイミングにおいて、常に、対象スイッチング素子のゲートに負電位を印加する。しかしながら、対向スイッチング素子に並列接続されたダイオードに順電流が流れている状態で対向スイッチング素子がターンオンしても、容量結合による対象スイッチング素子のゲート電位の上昇は生じず、対象スイッチング素子の誤点弧は生じない。したがって、本明細書が開示するスイッチング回路は、以下の構成を有する。
【0006】
本明細書が開示するスイッチング回路は、高電位配線と、出力配線と、低電位配線と、前記高電位配線に接続された高電位主端子と前記出力配線に接続された低電位主端子とゲートを有する第1スイッチング素子と、前記出力配線に接続された高電位主端子と前記低電位配線に接続された低電位主端子とゲートを有する第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子の前記高電位主端子に接続されたカソードと前記第1スイッチング素子の前記低電位主端子に接続されたアノードを有する第1ダイオードと、前記第2スイッチング素子の前記高電位主端子に接続されたカソードと前記第2スイッチング素子の前記低電位主端子に接続されたアノードを有する第2ダイオードと、前記第1スイッチング素子と前記第2スイッチング素子のうちの一方を対象スイッチング素子とするとともに他方を対向スイッチング素子としたときに前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位をゲートオン電位とゲートオフ電位の間で変更する対象ゲート制御回路と、前記対向スイッチング素子の前記ゲートの電位をゲートオン電位とゲートオフ電位の間で変更する対向ゲート制御回路、を有する。前記対象ゲート制御回路と前記対向ゲート制御回路が、前記対象スイッチング素子と前記対向スイッチング素子が交互にオンするように前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位と前記対向スイッチング素子の前記ゲートの電位を制御する。前記対象ゲート制御回路が、前記ゲートオフ電位として、前記対象スイッチング素子の前記低電位主端子の電位以上である第1ゲートオフ電位と、前記対象スイッチング素子の前記低電位主端子の電位よりも低い第2ゲートオフ電位を前記対象スイッチング素子の前記ゲートに印加可能である。前記第1ダイオードと前記第2ダイオードのうちの前記対象スイッチング素子に対して並列に接続されている方が対象ダイオードである。前記第1ダイオードと前記第2ダイオードのうちの前記対向スイッチング素子に対して並列に接続されている方が対向ダイオードである。前記対象ゲート制御回路が、前記対向ダイオードに順電流が流れている状態で前記対向スイッチング素子がターンオンする第1タイミングでは前記対象スイッチング素子の前記ゲートに前記第1ゲートオフ電位を印加し、前記対向ダイオードに順電流が流れていない状態で前記対向スイッチング素子がターンオンする第2タイミングでは前記対象スイッチング素子の前記ゲートに前記第2ゲートオフ電位を印加する。
【0007】
なお、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子は、FET(field effect transistor)であってもよいし、IGBT(insulated gate bipolar transistor)であってもよい。また、第1ダイオードは、第1スイッチング素子とは別に設けられたダイオードであってもよい。また、第1スイッチング素子がFETである場合には、第1ダイオードは第1スイッチング素子のボディダイオードであってもよい。また、第2ダイオードは、第2スイッチング素子とは別に設けられたダイオードであってもよい。また、第2スイッチング素子がFETである場合には、第2ダイオードは第2スイッチング素子のボディダイオードであってもよい。また、本明細書において、ゲートオン電位は、スイッチング素子をオンさせるのに必要なゲート電位を意味する。すなわち、ゲートオン電位は、スイッチング素子のゲート閾値以上の電位を意味する。また、本明細書において、ゲートオフ電位は、スイッチング素子をオフさせるのに必要なゲート電位を意味する。すなわち、ゲートオフ電位は、スイッチング素子のゲート閾値未満の電位を意味する。また、本明細書において、順電流は、ダイオードの内部をアノードからカソードに向かって流れる電流を意味する。
【0008】
このスイッチング回路では、対象ゲート制御回路が、対向ダイオードに順電流が流れている状態で対向スイッチング素子がターンオンする第1タイミングでは、対象スイッチング素子のゲートに第1ゲートオフ電位(すなわち、0V以上の電位)を印加する。第1タイミングでは、対向スイッチング素子がターンオンしても、容量結合による対象スイッチング素子のゲート電位の上昇は生じない。したがって、第1タイミングにおいて対象スイッチング素子のゲートに負電位を印加しなくても、誤点弧は生じない。また、第1タイミングにおいて対象スイッチング素子のゲートに0V以上の第1ゲートオフ電位を印加することで、対象スイッチング素子のゲートに負電位が印加される期間を短くすることができる。これによって、対象スイッチング素子の劣化を抑制できる。また、このスイッチング回路では、対象ゲート制御回路が、対向ダイオードに順電流が流れていない状態で対向スイッチング素子がターンオンする第2タイミングでは、対象スイッチング素子のゲートに第2ゲートオフ電位(すなわち、負電位)を印加する。第2タイミングでは、対向スイッチング素子がターンオンすることによって、容量結合による対象スイッチング素子のゲート電位の上昇が生じる場合がある。したがって、第2タイミングにおいて対象スイッチング素子のゲートに負電位を印加することで、誤点弧を抑制できる。以上に説明したように、このスイッチング回路によれば、対象スイッチング素子の誤点弧を抑制できるとともに、対象スイッチング素子のゲートに負電位が印加される期間を従来よりも短くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図5】制御IC47が実行する処理を示すフローチャート。
【
図6】制御IC57が実行する処理を示すフローチャート。
【
図7】流入方向の動作における各値の変化を示すグラフ。
【
図8】流出方向の動作における各値の変化を示すグラフ。
【
図9】起動時の動作における各値の変化を示すグラフ。
【
図10】スイッチング回路20aの変形例の回路図。
【
図12】ドレイン電位検出回路の一例を示す回路図。
【
図13】ドレイン電位検出回路の一例を示す回路図。
【
図18】ゲートオフ電位Voffの算出方法を示すグラフ。
【
図20】スイッチング回路20a5の変形例の回路図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書が開示する一例のスイッチング回路では、前記対象ゲート制御回路が、前記出力配線に流れる電流の向きに基づいて前記対向ダイオードに順電流が流れているか否かを判定してもよい。
【0011】
出力配線に直列回路(すなわち、第1スイッチング素子と第2スイッチング素子の直列回路)から流出する方向に電流が流れている場合には、第1スイッチング素子がオフしているときに第2ダイオードに順電流が流れる。また、出力配線に直列回路に流入する方向に電流が流れている場合には、第2スイッチング素子がオフしているときに第1ダイオードに順電流が流れる。したがって、出力配線に流れる電流の向きに基づいて対向ダイオードに順電流が流れているか否かを適切に判定することができる。
【0012】
本明細書が開示する一例のスイッチング回路では、前記対象ゲート制御回路が、前記対向スイッチング素子と前記対向ダイオードの並列回路に流れる電流の向きに基づいて前記対向ダイオードに順電流が流れているか否かを判定してもよい。
【0013】
対向スイッチング素子と対向ダイオードの並列回路に対向ダイオードのアノードからカソードに向かう向きに電流が流れていれば、対向ダイオードに順電流が流れている。したがって、当該並列回路に流れる電流の向きに基づいて対向ダイオードに順電流が流れているか否かを適切に判定することができる。
【0014】
本明細書が開示する一例のスイッチング回路では、前記対象ゲート制御回路と前記対向ゲート制御回路に、前記対向スイッチング素子のターンオン指令とターンオフ指令を含む対向指令信号が入力されてもよい。前記対向ゲート制御回路が、前記対向指令信号に基づいて前記対向スイッチング素子の前記ゲートの電位を制御してもよい。前記対象ゲート制御回路が、前記対向ダイオードに順電流が流れている状態で前記ターンオン指令を受信すると、前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位を前記第1ゲートオフ電位から前記第2ゲートオフ電位に低下させ、その後、前記対向スイッチング素子のターンオンが完了するまで前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位を前記第2ゲートオフ電位に維持してもよい。
【0015】
この構成によれば、対象スイッチング素子のゲートに第2ゲートオフ電位(すなわち、負電位)が印加される期間をより短くすることができる。
【0016】
本明細書が開示する一例のスイッチング回路では、前記対象ゲート制御回路が、前記対向スイッチング素子の前記ゲートの電位に基づいて前記対向スイッチング素子のターンオンが完了したか否かを判定してもよい。
【0017】
この構成によれば、対向スイッチング素子のターンオンが完了したか否かを好適に判定することができる。
【0018】
本明細書が開示する一例のスイッチング回路では、前記対象ゲート制御回路が、前記対象スイッチング素子の前記高電位主端子と前記低電位主端子の間の電圧に基づいて前記対向スイッチング素子のターンオンが完了したか否かを判定してもよい。
【0019】
この構成によれば、対向スイッチング素子のターンオンが完了したか否かを好適に判定することができる。
【0020】
本明細書が開示する一例のスイッチング回路は、前記対象ゲート制御回路が、前記第2タイミングにおける前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位の上昇量を検出する上昇量検出回路と、前記上昇量検出回路で検出される前記上昇量が高いほど前記第2ゲートオフ電位を低くする上昇量-第2ゲートオフ電位補正回路、を有していてもよい。
【0021】
この構成によれば、対象スイッチング素子の劣化を効果的に抑制できる。
【0022】
本明細書が開示する一例のスイッチング回路では、前記上昇量検出回路が、前記対象スイッチング素子の前記ゲートの電位のピーク値をホールドするピーク値ホールド回路と、前記ピーク値がホールドされてから次の前記第2タイミングが到来するまでに前記ピーク値をリセットするリセット回路と、を有していてもよい。
【0023】
この構成によれば、第2タイミングにおける対象スイッチング素子のゲートの電位の上昇量を好適に検出できる。
【0024】
本明細書が開示する一例のスイッチング回路は、温度センサと、前記温度センサで検出される温度が高いほど前記第2ゲートオフ電位を低くする温度-第2ゲートオフ電位補正回路、をさらに有していてもよい。
【0025】
この構成によれば、対象スイッチング素子の劣化を効果的に抑制できる。
【実施例0026】
図1に示すインバータ10は、車両に搭載されている。また、車両には、バッテリ80とモータ82が搭載されている。モータ82は、三相モータである。モータ82は、車両の駆動輪を駆動させて、車両を走行させる。インバータ10は、高電位配線12、低電位配線14、及び、3つの出力配線16a~16cを有している。高電位配線12は、バッテリ80の正極に接続されている。低電位配線14は、バッテリ80の負極に接続されている。したがって、高電位配線12と低電位配線14の間にバッテリ80の出力電圧(すなわち、直流電圧)が印加される。出力配線16a~16cは、モータ82に接続されている。インバータ10は、バッテリ80によって高電位配線12と低電位配線14の間に供給される直流電力を三相交流電力に変換し、三相交流電力を出力配線16a~16cに出力する。インバータ10によって出力された三相交流電力は、出力配線16a~16cを介してモータ82に供給される。
【0027】
インバータ10は、3つのスイッチング回路20を有する。各スイッチング回路20は、スイッチング素子21とスイッチング素子22を有している。スイッチング素子21、22は、FET(すなわち、field effect transistor)である。但し、スイッチング素子21、22が、IGBT(すなわち、insulated gate bipolar transistor)であってもよい。スイッチング素子21のドレインは、高電位配線12に接続されている。スイッチング素子21のソースは、スイッチング素子22のドレインに接続されている。スイッチング素子22のソースは、低電位配線14に接続されている。各スイッチング回路20は、ゲート制御回路25、26を有している。ゲート制御回路25は、スイッチング素子21のゲートG21に接続されている。ゲート制御回路25は、スイッチング素子21のゲート電位Vg21を制御することで、スイッチング素子21をスイッチングさせる。ゲート制御回路26は、スイッチング素子22のゲートG22に接続されている。ゲート制御回路26は、スイッチング素子22のゲート電位Vg22を制御することで、スイッチング素子22をスイッチングさせる。各スイッチング回路20は、ダイオード23、24を有している。ダイオード23、24は、スイッチング素子21、22のボディダイオードであってもよいし、ダイオード23、24とは別に設けられたダイオードであってもよい。ダイオード23は、スイッチング素子21に対して並列に接続されている。ダイオード23のアノードはスイッチング素子21のソースに接続されている。ダイオード23のカソードはスイッチング素子21のドレインに接続されている。ダイオード24は、スイッチング素子22に対して並列に接続されている。ダイオード24のアノードはスイッチング素子22のソースに接続されている。ダイオード24のカソードはスイッチング素子22のドレインに接続されている。3つのスイッチング回路20のそれぞれは、対応する出力配線16に接続されている。すなわち、3つのスイッチング回路20のうちのスイッチング回路20aに、出力配線16aが接続されている。3つのスイッチング回路20のうちのスイッチング回路20bに、出力配線16bが接続されている。3つのスイッチング回路20のうちのスイッチング回路20cに、出力配線16cが接続されている。3つのスイッチング回路20のそれぞれにおいて、スイッチング素子21のソースとスイッチング素子22のドレインとの接続点に、出力配線16が接続されている。各スイッチング回路20の各スイッチング素子21、22がスイッチングすることで、出力配線16a~16cに三相交流電力が出力される。
【0028】
インバータ10は、電流センサ31~33を有している。電流センサ31は、出力配線16aの電流Iout1を検出する。電流センサ32は、出力配線16bの電流Iout2を検出する。電流センサ33は、出力配線16cの電流Iout3を検出する。
【0029】
インバータ10は、制御装置30を有している。制御装置30には、外部から、モータ82に対する制御目標値が入力される。また、制御装置30には、電流センサ31~33で検出された電流Iout1~Iout3の検出値が入力される。制御装置30は、モータ82対する制御目標値、電流Iout1~Iout3等に基づいて、3つのスイッチング回路20に対する信号SG1、SG2を算出する。信号SG1はスイッチング素子21のスイッチングタイミングを指令する値であり、信号SG2はスイッチング素子22のスイッチングタイミングを指令する値である。制御装置30は、スイッチング回路20毎に異なる信号SG1、SG2を算出する。制御装置30は、信号SG1、SG2を対応するスイッチング回路20に送信する。また、制御装置30は、電流Iout1~Iout3に基づいて、信号CPを算出する。信号CPは、電流Iout1~Iout3の向きを示す信号である。すなわち、信号CPは、電流Ioutが、スイッチング回路20からモータ82に向かう向き(以下、流出方向という)に流れているか、モータ82からスイッチング回路20に向かう向き(以下、流入方向という)に流れているかを示す信号である。制御装置30は、電流Iout1の向きを示す信号CPをスイッチング回路20aに送信し、電流Iout2の向きを示す信号CPをスイッチング回路20bに送信し、電流Iout3の向きを示す信号CPをスイッチング回路20cに送信する。
【0030】
次に、スイッチング回路20の詳細について説明する。なお、スイッチング回路20a~20cの構成は等しいので、以下では、スイッチング回路20aについて説明する。
図2は、スイッチング回路20aが有するゲート制御回路25、26の詳細を示している。なお、以下の説明において、ゲート制御回路25内の各電位はスイッチング素子21のソースの電位を基準とする電位を意味し、ゲート制御回路25内の各電位はスイッチング素子22のソースの電位を基準とする電位を意味する。
【0031】
ゲート制御回路25は、スイッチング素子21のゲート電位Vg21を変化させることで、スイッチング素子21をスイッチングさせる。ゲート制御回路25は、VCC配線43と、ソース配線48と、直流電源46を有している。VCC配線43には、電位VCCが印加されている。ソース配線48は、スイッチング素子21のソースに接続されている。すなわち、ソース配線48の電位は、0V(すなわち、スイッチング素子21のソースと同電位)である。また、直流電源46は、0Vよりも低い負電位-VNGを出力する。ゲート制御回路25は、ゲート電位Vg21を、電位VCC、0V、及び、負電位-VNGの間で変化させる。スイッチング素子21のゲート閾値(すなわち、スイッチング素子21をオンさせるのに必要な最低限のゲート電位Vg21)は、電位VCCよりも低く、0Vよりも高い。したがって、電位VCCはスイッチング素子21をオンさせるゲートオン電位であり、0Vと負電位-VNGはスイッチング素子21をオフさせるゲートオフ電位である。ゲート制御回路25は、ゲートオンスイッチ40、ゲートオフスイッチ41、ゲートオフスイッチ42、ゲートオン抵抗44、ゲートオフ抵抗45、及び、制御IC47を有している。
【0032】
ゲートオンスイッチ40とゲートオン抵抗44は、VCC配線43とゲートG21の間に直列に接続されている。ゲートオンスイッチ40は、FET等のスイッチング素子によって構成されている。ゲートオンスイッチ40は、制御IC47によって制御される。ゲートオンスイッチ40がオンすると、VCC配線43からゲートオンスイッチ40とゲートオン抵抗44を通ってゲートG21へゲート電流が流れ、ゲートG21が充電される。これによって、ゲート電位Vg21を電位VCCまで上昇させることができる。
【0033】
ゲートオフ抵抗45とゲートオフスイッチ41は、ゲートG21とソース配線48の間に直列に接続されている。ゲートオフスイッチ41は、FET等のスイッチング素子によって構成されている。ゲートオフスイッチ41は、制御IC47によって制御される。ゲートオフスイッチ41がオンすると、ゲートG21からゲートオフ抵抗45とゲートオフスイッチ41とを通ってソース配線48へゲート電流が流れ、ゲートG21が放電される。これによって、ゲート電位Vg21を0Vまで低下させることができる。
【0034】
直流電源46は、正極と負極の間に電圧VNGを印加する。直流電源46の正極は、ソース配線48に接続されている。したがって、直流電源46の負極の電位は、負電位-VNG(すなわち、スイッチング素子21のソースよりも低い電位)である。直流電源46の負極は、ゲートオフスイッチ42を介してゲートG21に接続されている。ゲートオフスイッチ42は、FET等のスイッチング素子によって構成されている。ゲートオフスイッチ42は、制御IC47によって制御される。ゲートオフスイッチ42がオンすると、ゲートG21に負電位-VNGが印加される。なお、負電位-VNGは、-VNG=Vgth-Vin・Ciss/Crssを満たす値に設定することができる。なお、Vgthはスイッチング素子21のゲート閾値であり、Vinは高電位配線12と低電位配線14の間の電圧であり、Cissはスイッチング素子21の入力容量であり、Crssはスイッチング素子21の帰還容量である。
【0035】
上述したように、制御IC47は、ゲートオンスイッチ40、ゲートオフスイッチ41、及び、ゲートオフスイッチ42を制御する。制御IC47がこれらを制御することで、ゲート電位Vg21が制御される。また、制御IC47は、ゲート電位検出配線49によってゲートG21に接続されており、ゲート電位Vg21を検出することができる。制御IC47には、信号CP、SG1、SG2、Son1、Son2が入出力される。これらの信号の制御IC47に対する入出力は、絶縁素子38を介して行われる。上述したように、信号CP、SG1、SG2は、制御装置30から送信される信号であり、制御IC47に入力される。信号Son1は、スイッチング素子21がオンしているかオフしているかを示す信号であり、制御IC47から後述する制御IC57へ送信される。制御IC47は、ゲート電位検出配線49を介してゲート電位Vg21を検出し、検出したゲート電位Vg21に基づいてスイッチング素子21がオンしているかオフしているかを判定し、判定結果を信号Son1として制御IC57へ送信する。信号Son2は、スイッチング素子22がオンしているかオフしているかを示す信号であり、制御IC57から制御IC47へ送信される。
【0036】
ゲート制御回路26は、スイッチング素子22のゲート電位Vg22を変化させることで、スイッチング素子22をスイッチングさせる。ゲート制御回路26は、VCC配線53と、ソース配線58と、直流電源56を有している。VCC配線53には、電位VCCが印加されている。ソース配線58は、スイッチング素子22のソースに接続されている。すなわち、ソース配線58の電位は、0V(すなわち、スイッチング素子22のソースと同電位)である。また、直流電源56は、0Vよりも低い負電位-VNGを出力する。ゲート制御回路26は、ゲート電位Vg22を、電位VCC、0V、及び、負電位-VNGの間で変化させる。スイッチング素子22のゲート閾値(すなわち、スイッチング素子22をオンさせるのに必要な最低限のゲート電位Vg22)は、電位VCCよりも低く、0Vよりも高い。したがって、電位VCCはスイッチング素子22をオンさせるゲートオン電位であり、0Vと負電位-VNGはスイッチング素子22をオフさせるゲートオフ電位である。ゲート制御回路26は、ゲートオンスイッチ50、ゲートオフスイッチ51、ゲートオフスイッチ52、ゲートオン抵抗54、ゲートオフ抵抗55、及び、制御IC57を有している。
【0037】
ゲートオンスイッチ50とゲートオン抵抗54は、VCC配線53とゲートG22の間に直列に接続されている。ゲートオンスイッチ50は、FET等のスイッチング素子によって構成されている。ゲートオンスイッチ50は、制御IC57によって制御される。ゲートオンスイッチ50がオンすると、VCC配線53からゲートオンスイッチ50とゲートオン抵抗54を通ってゲートG22へゲート電流が流れ、ゲートG22が充電される。これによって、ゲート電位Vg22を電位VCCまで上昇させることができる。
【0038】
ゲートオフ抵抗55とゲートオフスイッチ51は、ゲートG22とソース配線58の間に直列に接続されている。ゲートオフスイッチ51は、FET等のスイッチング素子によって構成されている。ゲートオフスイッチ51は、制御IC57によって制御される。ゲートオフスイッチ51がオンすると、ゲートG22からゲートオフ抵抗55とゲートオフスイッチ51とを通ってソース配線58へゲート電流が流れ、ゲートG22が放電される。これによって、ゲート電位Vg22を0Vまで低下させることができる。
【0039】
直流電源56は、正極と負極の間に電圧VNGを印加する。直流電源56の正極は、ソース配線58に接続されている。したがって、直流電源56の負極の電位は、負電位-VNG(すなわち、スイッチング素子22のソースよりも低い電位)である。直流電源56の負極は、ゲートオフスイッチ52を介してゲートG22に接続されている。ゲートオフスイッチ52は、FET等のスイッチング素子によって構成されている。ゲートオフスイッチ52は、制御IC57によって制御される。ゲートオフスイッチ52がオンすると、ゲートG22に負電位-VNGが印加される。なお、負電位-VNGは、-VNG=Vgth-Vin・Ciss/Crssを満たす値に設定することができる。なお、Vgthはスイッチング素子22のゲート閾値であり、Vinは高電位配線12と低電位配線14の間の電圧であり、Cissはスイッチング素子22の入力容量であり、Crssはスイッチング素子22の帰還容量である。
【0040】
上述したように、制御IC57は、ゲートオンスイッチ50、ゲートオフスイッチ51、及び、ゲートオフスイッチ52を制御する。制御IC57がこれらを制御することで、ゲート電位Vg22が制御される。また、制御IC57は、ゲート電位検出配線59によってゲートG22に接続されており、ゲート電位Vg22を検出することができる。制御IC57には、信号CP、SG1、SG2、Son1、Son2が入出力される。これらの信号の制御IC57に対する入出力は、絶縁素子38を介して行われる。上述したように、信号CP、SG1、SG2は、制御装置30から送信される信号であり、制御IC57に入力される。信号Son2は、スイッチング素子22がオンしているかオフしているかを示す信号であり、制御IC57から制御IC47へ送信される。制御IC57は、ゲート電位検出配線59を介してゲート電位Vg22を検出し、検出したゲート電位Vg22に基づいてスイッチング素子22がオンしているかオフしているかを判定し、判定結果を信号Son2として制御IC47へ送信する。信号Son1は、スイッチング素子21がオンしているかオフしているかを示す信号であり、上述したように制御IC47から制御IC57へ送信される。
【0041】
次に、スイッチング回路20a内を流れる電流の経路について説明する。制御IC47、57は、デッドタイムを挟んでスイッチング素子21とスイッチング素子22が交互にオンするようにこれらを制御する。すなわち、制御IC47、57は、スイッチング素子21がオンしているとともにスイッチング素子22がオフしている第1オンタイム、スイッチング素子21、22が共にオフしている第1デッドタイム、スイッチング素子22がオンしているとともにスイッチング素子21がオフしている第2オンタイム、及び、スイッチング素子21、22が共にオフしている第2デッドタイムがこの順序で繰り返されるように、スイッチング素子21、22を制御する。スイッチング回路20a内の電流経路は、スイッチング素子21、22の状態に応じて変化する。また、スイッチング回路20a内の電流経路の変化態様は、出力配線16aに流れる電流Iout1の向きに応じて異なる。
【0042】
図3は、
図1に示す電流Iout1の向きが流出方向である場合の電流経路の変化態様を示している。
図3(a)が第1オンタイム、
図3(b)が第1デッドタイム、
図3(c)が第2オンタイム、
図3(d)が第2デッドタイムを示している。
図3(a)に示すように、第1オンタイムでは、スイッチング素子21がオンしているとともにスイッチング素子22がオフしているので、スイッチング素子21を通って高電位配線12から出力配線16aへ電流Iが流れる。この状態では、出力配線16aの電位は高電位配線12の電位と略等しい。次に、第1デッドタイム(すなわち、
図3(b))でスイッチング素子21がオフする。すると、スイッチング素子21で電流が停止する。すると、モータ82のインダクタンスLによって生じる誘導電圧によって出力配線16aの電位が低下し、ダイオード24がオンする。このため、ダイオード24を通って低電位配線14から出力配線16aへ電流が流れる。すなわち、ダイオード24に順電流が流れる。この状態では、出力配線16aの電位は低電位配線14の電位と略等しい。次に、第2オンタイム(すなわち、
図3(c))でスイッチング素子22がオンする。すると、ダイオード24とスイッチング素子22の並列回路を通って低電位配線14から出力配線16aへ電流Iが流れるようになる。すなわち、スイッチング素子22がオンすると、電流Iの流れる経路がダイオード24とスイッチング素子22に分岐する。言い換えると、スイッチング素子22がオンしても、電流Iが低電位配線14から出力配線16aへ流れる状態は変化せず、出力配線16aの電位はほとんど変化しない。したがって、スイッチング素子21に印加される電圧はほとんど変化しない。このため、ダイオード24に順電流が流れている状態でスイッチング素子22がオンしても、スイッチング素子21が誤点弧するおそれはない。次に、第2デッドタイム(すなわち、
図3(d))でスイッチング素子22がオフする。すると、スイッチング素子22で電流が停止する。この状態では、ダイオード24を通って低電位配線14から出力配線16aへ電流Iが流れる。次に、再び第1オンタイム(すなわち、
図3(a))となり、スイッチング素子21がオンする。すると、上述したように、スイッチング素子21を通って高電位配線12から出力配線16aへ電流Iが流れ、出力配線16aの電位が高電位配線12の電位と略等しくなる。すなわち、スイッチング素子21がオンすると、出力配線16aの電位が、低電位配線14と略同電位から高電位配線12と略同電位まで急上昇する。このように出力配線16aの電位が急上昇するので、スイッチング素子22のドレインの電位が急上昇する。すると、スイッチング素子22のドレインとゲートG22の間の容量結合によって、ゲート電位Vg22が瞬間的に上昇する。ゲート電位Vg22の瞬間的な上昇によって、スイッチング素子22が誤点弧するおそれがある。すなわち、ダイオード23に順電流が流れていない状態でスイッチング素子21がオンすると、スイッチング素子22が誤点弧するおそれがある。以上に説明したように、電流Iout1の向きが流出方向である場合には、スイッチング素子21がオンするときにスイッチング素子22が誤点弧するおそれがある一方で、スイッチング素子22がオンするときにはスイッチング素子21が誤点弧するおそれはない。
【0043】
図4は、
図1に示す電流Iout1の向きが流入方向である場合の電流経路の変化態様を示している。
図4(a)が第1オンタイム、
図4(b)が第1デッドタイム、
図4(c)が第2オンタイム、
図4(d)が第2デッドタイムを示している。
図4(c)に示すように、第2オンタイムでは、スイッチング素子22がオンしているとともにスイッチング素子21がオフしているので、スイッチング素子22を通って出力配線16aから低電位配線14へ電流Iが流れる。この状態では、出力配線16aの電位は低電位配線14の電位と略等しい。次に、第2デッドタイム(すなわち、
図4(d))でスイッチング素子22がオフする。すると、スイッチング素子22で電流が停止する。すると、モータ82のインダクタンスLによって生じる誘導電圧によって出力配線16aの電位が上昇し、ダイオード23がオンする。このため、ダイオード23を通って出力配線16aから高電位配線12へ電流Iが流れる。すなわち、ダイオード23に順電流が流れる。この状態では、出力配線16aの電位は高電位配線12の電位と略等しい。次に、第1オンタイム(すなわち、
図4(a))でスイッチング素子21がオンする。すると、ダイオード23とスイッチング素子21の並列回路を通って出力配線16aから高電位配線12へ電流Iが流れるようになる。すなわち、スイッチング素子21がオンすると、電流Iの流れる経路がダイオード23とスイッチング素子21に分岐する。言い換えると、スイッチング素子21がオンしても、電流Iが出力配線16aから高電位配線12へ流れる状態は変化せず、出力配線16aの電位はほとんど変化しない。したがって、スイッチング素子22に印加される電圧はほとんど変化しない。このため、ダイオード23に順電流が流れている状態でスイッチング素子21がオンしても、スイッチング素子22が誤点弧するおそれはない。次に、第1デッドタイム(すなわち、
図4(b))でスイッチング素子21がオフする。すると、スイッチング素子21で電流が停止する。この状態では、ダイオード23を通って出力配線16から高電位配線12へ電流Iが流れる。次に、再び第2オンタイム(すなわち、
図4(c))となり、スイッチング素子22がオンする。すると、上述したように、スイッチング素子22を通って出力配線16aから低電位配線14へ電流Iが流れ、出力配線16aの電位が低電位配線14の電位と略等しくなる。すなわち、スイッチング素子22がオンすると、出力配線16aの電位が、高電位配線12と略同電位から低電位配線14と略同電位まで急低下する。このように出力配線16aの電位が急低下するので、スイッチング素子21のドレインのソースに対する電位が急上昇する。すると、スイッチング素子21のドレインとゲートG21の間の容量結合によって、ゲート電位Vg21が瞬間的に上昇する。ゲート電位Vg21の瞬間的な上昇によって、スイッチング素子21が誤点弧するおそれがある。すなわち、ダイオード24に順電流が流れていない状態でスイッチング素子22がオンすると、スイッチング素子21が誤点弧するおそれがある。以上に説明したように、電流Iout1の向きが流入方向である場合には、スイッチング素子22がオンするときにスイッチング素子21が誤点弧するおそれがある一方で、スイッチング素子21がオンするときにはスイッチング素子22が誤点弧するおそれはない。
【0044】
次に、スイッチング回路20によるゲート電位Vg21、Vg22の制御方法について説明する。
図5は、制御IC47が実行する処理を示している。また、
図6は、制御IC57が実行する処理を示している。制御IC47、57は、インバータ10の動作中に
図5、6の処理を繰り返し実行する。
【0045】
まず、電流Iout1の向きが流出方向である場合について説明する。電流Iout1の向きが流出方向の場合には、制御装置30は、信号CPをHIGHに制御する。
図7は、電流Iout1の向きが流出方向である場合の各値の変化を示している。
図7において、期間Ton1は第1オンタイムであり、期間Td1は第1デッドタイムであり、期間Ton2は第2オンタイムであり、期間Td2は第2デッドタイムである。また、上述したように、信号SG1はスイッチング素子21のオン-オフを指令する値であり、信号SG2はスイッチング素子22のオン-オフを指令する値である。
【0046】
図7に示すように、第2オンタイムTon2では、信号SG1がOFFであり、信号SG2がONである。信号SG1がOFFであるので、制御IC47は、
図5のステップS2でYESと判定し、ステップS4を実行する。制御IC47は、信号CPがHIGHであるので、ステップS4でYESと判定し、ステップS12を実行する。ステップS12では、制御IC47は、ゲートオンスイッチ40をオフ、ゲートオフスイッチ41をオン、ゲートオフスイッチ42をオフに制御することで、ゲート電位Vg21を0Vに制御する。また、第2オンタイムTon2では、信号SG2がONであるので、制御IC57は、
図6のステップS52でNOと判定し、ステップS64を実行する。ステップS64では、制御IC57は、ゲートオンスイッチ50をオン、ゲートオフスイッチ51、52をオフに制御することで、ゲート電位Vg22を電位VCCに制御する。したがって、
図7に示すように、第2オンタイムTon2では、ゲート電位Vg21が0Vに制御され、ゲート電位Vg22が電位VCCに制御される。このため、第2オンタイムTon2では、スイッチング素子21がオフしており、スイッチング素子22がオンしている。その結果、
図3(c)に示す電流経路で電流Iが流れる。この状態では、出力配線16aの電位が低電位配線14の電位と略等しいので、スイッチング素子21のドレイン-ソース間の電圧Vds21は高く、スイッチング素子22のドレイン-ソース間の電圧Vds22は低い。
【0047】
その後、タイミングt1において、信号SG2がONからOFFに切り替わる。タイミングt1において、信号SG1はOFFに維持される。タイミングt1の後の期間は、信号SG1と信号SG2が共にOFFである第2デッドタイムTd2である。信号SG2がONからOFFに切り替わると、制御IC57が、
図6のステップS52でYESと判定し、ステップS54を実行する。制御IC57は、信号CPがHIGHであるので、ステップS54でYESと判定し、ステップS56を実行する。制御IC57は、信号SG1がOFFであるので、ステップS56でNOと判定し、ステップS62を実行する。ステップS62では、制御IC57は、ゲートオンスイッチ50をオフ、ゲートオフスイッチ51をオン、ゲートオフスイッチ52をオフに制御する。このため、ゲートオフ抵抗55とゲートオフスイッチ52を介してゲートG22が放電される。したがって、タイミングt1の後に、ゲート電位Vg22が0Vまで低下し、スイッチング素子22がオフする。制御IC57は、第2デッドタイムTd2の間にステップS52、S54、S56、S62を繰り返すことでゲート電位Vg22を0Vに維持する。また、制御IC47は、第2デッドタイムTd2中に第2オンタイムTon2と同様にして、ゲート電位Vg21を0Vに維持し、スイッチング素子21をオフに維持する。したがって、第2デッドタイムTd2では、
図3(d)に示す電流経路で電流Iが流れる。第2デッドタイムTd2では、第2オンタイムTon2から電圧Vds21、Vds22はほとんど変化しない。
【0048】
その後、タイミングt2において、信号SG1がOFFからONに切り替わる。タイミングt2において、信号SG2はOFFに維持される。すなわち、タイミングt2の後の期間は、信号SG1がONで信号SG2がOFFである第1オンタイムTon1である。
【0049】
タイミングt2において信号SG1がOFFからONに切り替わると、制御IC47が、
図5のステップS2でNOと判定し、ステップS14を実行する。ステップS14では、制御IC47は、ゲートオンスイッチ40をオン、ゲートオフスイッチ41、42をオフに制御する。このため、ゲートオン抵抗44とゲートオンスイッチ40を介してゲートG21が充電される。したがって、タイミングt2の後に、ゲート電位Vg21が上昇する。ゲート電位Vg21は、タイミングt2から所定時間経過後に電位VCCまで達する。制御IC47は、ゲート電位検出配線49を介してゲート電位Vg21をモニタしている。タイミングt2の後に、制御IC47は、ゲート電位Vg21に基づいてスイッチング素子21のターンオンが完了したか否かを判定する。制御IC47は、ゲート電位Vg21が基準値(例えば、電位VCCに近い値)まで上昇したときにスイッチング素子21のターンオンが完了したと判定することができる。また、他の例では、制御IC47は、ゲート電位Vg21の上昇速度が基準値以下まで低下したとき(すなわち、ゲート電位Vg21が安定したとき)にスイッチング素子21のターンオンが完了したと判定することができる。制御IC47は、スイッチング素子21のターンオンが完了していない場合には信号Son1としてLOWを出力し、スイッチング素子21のターンオンが完了した場合には信号Son1としてHIGHを出力する。
図7では、制御IC47は、タイミングt3において信号Son1をLOWからHIGHに切り換える。
【0050】
また、タイミングt2において信号SG1がOFFからONに切り替わると、制御IC57が、ステップS56でYESと判定し、ステップS58を実行する。ステップS58では、制御IC57は、信号Son1に基づいて、スイッチング素子21のターンオンが完了したか否かを判定する。タイミングt2の直後の期間Ta(すなわち、タイミングt2からタイミングt3の間の期間Ta)では、スイッチング素子21のターンオンが完了しておらず、信号Son1はLOWである。したがって、制御IC57は、ステップS58でNOと判定し、ステップS60を実行する。ステップS60では、制御IC57は、ゲートオンスイッチ50をオフ、ゲートオフスイッチ51をオフ、ゲートオフスイッチ52をオンに制御することで、ゲート電位Vg22を負電位-VNGに制御する。期間Taでは、制御IC57は、ステップS58、S60を繰り返してゲート電位Vg22を負電位-VNGに維持する。その後、タイミングt3で信号Son1がLOWからHIGHに切り替わると、制御IC57は、ステップS58でYESと判定し、ステップS62を実行する。上述したように、ステップS62では、制御IC57は、ゲート電位Vg22を0Vに制御する。タイミングt3以降の第1オンタイムTon1では、制御IC57は、ステップS52、S54、S56、S58、S62を繰り返すことで、ゲート電位Vg22を0Vに維持する。このように、第1オンタイムTon1では、制御IC57は、タイミングt2からタイミングt3の間の期間Taでゲート電位Vg22を負電位-VNGに制御し、タイミングt3以降にゲート電位Vg22を0Vに制御する。
【0051】
タイミングt2において信号SG1がOFFからONに切り替わると、期間Taにおいてスイッチング素子21がターンオンする。その結果、上述したように、
図3(d)の状態から
図3(a)の状態へ電流経路が変化し、出力配線16aの電位が急上昇する。このため、期間Ta内に、電圧Vds21が急低下し、電圧Vds22が急上昇する。電圧Vds22が急上昇した結果、スイッチング素子22のドレインとゲートG22の間の容量結合によって、ゲートG22の電位が瞬間的に上昇する場合がある。すなわち、
図7に示すように、期間Taにおいてゲート電位Vg22の瞬間的な上昇84が生じる場合がある。本実施例では、期間Taにおいて制御IC57がゲート電位Vg22を負電位-VNGに制御しているので、上昇84が生じても、ゲート電位Vg22がゲート閾値を超え難い。これによって、スイッチング素子22の誤点弧が抑制される。
【0052】
その後、タイミングt4において信号SG1がONからOFFに切り替わる。タイミングt4において、信号SG2はOFFに維持される。すなわち、タイミングt4の後の期間は、信号SG1と信号SG2が共にOFFである第1デッドタイムTd1である。信号SG1がONからOFFに切り替わると、制御IC47が、
図5のステップS2でYESと判定し、ステップS4を実行する。制御IC47は、信号CPがHIGHであるので、ステップS4でYESと判定し、ステップS12を実行する。上述したように、ステップS12では、制御IC47は、ゲート電位Vg21を0Vに制御する。したがって、スイッチング素子21がターンオフする。また、信号SG1がONからOFFに切り替わると、制御IC57が、
図6のステップS56でNOと判定し、ステップS62を実行する。上述したように、ステップS62では、制御IC57は、ゲート電位Vg22を0Vに制御する。したがって、スイッチング素子22がオフに維持される。したがって、タイミングt4において、
図3(a)に示す状態から
図3(b)に示す状態へ電流経路が切り替わる。このとき、出力配線16aの電位が急低下するので、電圧Vds21が急上昇し、電圧Vds22が急低下する。
【0053】
その後、タイミングt5において信号SG2がOFFからONに切り替わる。タイミングt5において、信号SG1はOFFに維持される。すなわち、タイミングt5の後の期間は、信号SG2がONで信号SG1がOFFである第2オンタイムTon2である。信号SG2がOFFからONに切り替わると、制御IC57が、
図6のステップS52でNOと判定し、ステップS64を実行する。上述したように、ステップS64では、制御IC57は、ゲート電位Vg22を電位VCCに制御する。したがって、スイッチング素子22がターンオンする。また、タイミングt5において信号SG2がOFFからONに切り替わっても、制御IC47は動作を変更しない。すなわち、制御IC47は、第1デッドタイムTd1から第2オンタイムTon2にかけて、ステップS2、S4、S12を繰り返し実行し、ゲート電位Vg21を0Vに制御する。すなわち、制御IC47は、スイッチング素子21をオフ状態に維持する。したがって、タイミングt5において、
図3(b)に示す状態から
図3(c)に示す状態に電流経路が切り替わる。上述したように、
図3(b)に示す電流経路から
図3(c)に示す電流経路に切り替わるときに、出力配線16aの電位はほとんど変化しない。したがって、タイミングt5において、ゲート電位Vg21の瞬間的な上昇は生じない。このため、タイミングt5においてゲート電位Vg21を負電位に制御しなくても、スイッチング素子21の誤点弧は生じない。
【0054】
次に、電流Iout1の向きが流入方向である場合について説明する。電流Iout1の向きが流入方向の場合には、制御装置30は、信号CPをLOWに制御する。
図8は、電流Iout1の向きが流入方向である場合の各値の変化を示している。
【0055】
図8に示すように、第1オンタイムTon1では、信号SG1がONであり、信号SG2がOFFである。信号SG1がONであるので、制御IC47は、
図5のステップS2でNOと判定し、ステップS14を実行する。上述したように、制御IC47、ステップS14でゲート電位Vg21を電位VCCに制御する。また、信号SG2がOFFであるので、制御IC57は、
図6のステップS52でYESと判定し、ステップS54を実行する。信号CPがLOWであるので、制御IC57は、ステップS54でNOと判定し、ステップS62を実行する。上述したように、制御IC57は、ステップS62でゲート電位Vg22を0Vに制御する。このため、第1オンタイムTon1では、スイッチング素子21がオンしており、スイッチング素子22がオフしている。その結果、
図4(a)に示す電流経路で電流Iが流れる。この状態では、出力配線16aの電位が高電位配線12の電位と略等しいので、電圧Vds21は低く、電圧Vds22は高い。
【0056】
その後、タイミングt11において、信号SG1がONからOFFに切り替わる。タイミングt11において、信号SG2はOFFに維持される。タイミングt11の後の期間は、信号SG1と信号SG2が共にOFFである第1デッドタイムTd1である。信号SG1がONからOFFに切り替わると、制御IC47が、
図5のステップS2でYESと判定し、ステップS4を実行する。制御IC47は、信号CPがLOWであるので、ステップS4でNOと判定し、ステップS6を実行する。制御IC47は、信号SG2がOFFであるので、ステップS6でNOと判定し、ステップS12を実行する。上述したように、ステップS12では、制御IC47は、ゲート電位Vg22を0Vに制御する。また、制御IC57は、第1デッドタイムTd1中に第1オンタイムTon1と同様にして、ゲート電位Vg22を0Vに維持する。したがって、第1デッドタイムTd1では、
図4(b)に示す電流経路で電流Iが流れる。第1デッドタイムTd1では、第1オンタイムTon1から電圧Vds21、Vds22はほとんど変化しない。
【0057】
その後、タイミングt12において、信号SG2がOFFからONに切り替わる。タイミングt12において、信号SG1はOFFに維持される。すなわち、タイミングt12の後の期間は、信号SG2がONで信号SG1がOFFである第2オンタイムTon2である。
【0058】
タイミングt12において信号SG2がOFFからONに切り替わると、制御IC57が、
図6のステップS52でNOと判定し、ステップS64を実行する。ステップS64では、制御IC57は、ゲートオンスイッチ50をオン、ゲートオフスイッチ51、52をオフに制御する。このため、ゲートオン抵抗54とゲートオンスイッチ50を介してゲートG22が充電される。したがって、タイミングt12の後に、ゲート電位Vg22が上昇する。ゲート電位Vg22は、タイミングt12から所定時間経過後に電位VCCまで達する。制御IC57は、ゲート電位検出配線59を介してゲート電位Vg22をモニタしている。タイミングt12の後に、制御IC57は、ゲート電位Vg22に基づいてスイッチング素子22のターンオンが完了したか否かを判定する。制御IC57は、ゲート電位Vg22が基準値(例えば、電位VCCに近い値)まで上昇したときにスイッチング素子22のターンオンが完了したと判定することができる。また、他の例では、制御IC57は、ゲート電位Vg22の上昇速度が基準値以下まで低下したとき(すなわち、ゲート電位Vg22が安定したとき)にスイッチング素子22のターンオンが完了したと判定することができる。制御IC57は、スイッチング素子22のターンオンが完了していない場合には信号Son2としてLOWを出力し、スイッチング素子22のターンオンが完了した場合には信号Son2としてHIGHを出力する。
図8では、制御IC57は、タイミングt13において信号Son2をLOWからHIGHに切り換える。
【0059】
また、タイミングt12において信号SG2がOFFからONに切り替わると、制御IC47が、ステップS6でYESと判定し、ステップS8を実行する。ステップS8では、制御IC47は、信号Son2に基づいて、スイッチング素子22のターンオンが完了したか否かを判定する。タイミングt12の直後の期間Tb(すなわち、タイミングt12からタイミングt13の間の期間Tb)では、スイッチング素子22のターンオンが完了しておらず、信号Son2はLOWである。したがって、制御IC47は、ステップS8でNOと判定し、ステップS10を実行する。ステップS10では、制御IC47は、ゲートオンスイッチ50をオフ、ゲートオフスイッチ51をオフ、ゲートオフスイッチ52をオンに制御することで、ゲート電位Vg21を負電位-VNGに制御する。期間Tbでは、信号Son2がLOWに維持されるので、制御IC47はステップS8、S10を繰り返してゲート電位Vg21を負電位-VNGに維持する。その後、タイミングt13で信号Son2がLOWからHIGHに切り替わると、制御IC47は、ステップS8でYESと判定し、ステップS12を実行する。上述したように、ステップS12では、制御IC47は、ゲート電位Vg22を0Vに制御する。タイミングt13以降の第2オンタイムTon2では、制御IC47は、ステップS2、S4、S6、S8、S12を繰り返すことで、ゲート電位Vg21を0Vに維持する。このように、第2オンタイムTon2では、制御IC47は、タイミングt12からタイミングt13の間の期間Tbでゲート電位Vg21を負電位-VNGに制御し、タイミングt13以降にゲート電位Vg21を0Vに制御する。
【0060】
タイミングt12において信号SG2がOFFからONに切り替わると、期間Tbにおいてスイッチング素子22がターンオンする。その結果、上述したように、
図4(b)の状態から
図4(c)の状態へ電流経路が変化し、出力配線16aの電位が急低下する。このため、期間Tb内に、電圧Vds21が急上昇し、電圧Vds22が急低下する。電圧Vds21が急上昇した結果、スイッチング素子21のドレインとゲートG21の間の容量結合によって、ゲート電位Vg21が瞬間的に上昇する場合がある。すなわち、
図8に示すように、期間Tbにおいてゲート電位Vg21の瞬間的な上昇86が生じる場合がある。本実施例では、期間Tbにおいて制御IC47がゲート電位Vg21を負電位-VNGに制御しているので、上昇86が生じても、ゲート電位Vg21がゲート閾値を超え難い。これによって、スイッチング素子21の誤点弧が抑制される。
【0061】
その後、タイミングt14において信号SG2がONからOFFに切り替わる。タイミングt14において、信号SG1はOFFに維持される。すなわち、タイミングt14の後の期間は、信号SG1と信号SG2が共にOFFである第2デッドタイムTd2である。信号SG2がONからOFFに切り替わると、制御IC57が、
図6のステップS52でYESと判定し、ステップS54を実行する。制御IC57は、信号CPがLOWであるので、ステップS54でNOと判定し、ステップS62を実行する。上述したように、ステップS62では、制御IC57は、ゲート電位Vg22を0Vに制御する。また、信号SG2がONからOFFに切り替わると、制御IC47が、
図5のステップS6でNOと判定し、ステップS12を実行する。上述したように、ステップS12では、制御IC47は、ゲート電位Vg21を0Vに制御する。したがって、タイミングt14において、
図4(c)に示す状態から
図4(d)に示す状態へ電流経路が切り替わる。このとき、出力配線16aの電位が急上昇するので、電圧Vds21が急低下し、電圧Vds22が急上昇する。
【0062】
その後、タイミングt15において信号SG1がOFFからONに切り替わる。タイミングt15において、信号SG2はOFFに維持される。すなわち、タイミングt15の後の期間は、信号SG1がONで信号SG2がOFFである第1オンタイムTon1である。信号SG1がOFFからONに切り替わると、制御IC47が、
図5のステップS2でNOと判定し、ステップS14を実行する。上述したように、ステップS14では、制御IC47は、ゲート電位Vg21を電位VCCに制御する。また、タイミングt5において信号SG1がOFFからONに切り替わっても、制御IC57は動作を変更しない。すなわち、制御IC57は、第2デッドタイムTd2から第1オンタイムTon1にかけて、ステップS52、S54、S62を繰り返し実行し、ゲート電位Vg22を0Vに制御する。したがって、タイミングt15において、
図4(d)に示す状態から
図4(a)に示す状態に電流経路が切り替わる。上述したように、
図4(d)に示す電流経路から
図4(a)に示す電流経路に切り替わるときに、出力配線16aの電位はほとんど変化しない。したがって、タイミングt15において、ゲート電位Vg22の瞬間的な上昇は生じない。このため、タイミングt15においてゲート電位Vg22を負電位に制御しなくても、スイッチング素子22の誤点弧は生じない。
【0063】
以上に説明したように、ゲート制御回路25は、ダイオード24に順電流が流れていない状態でスイッチング素子22がターンオンするタイミング(すなわち、
図8の期間Tb)ではゲートG21に負電位-VNGを印加することで、スイッチング素子21の誤点弧を抑制する。また、ゲート制御回路25は、ダイオード24に順電流が流れている状態でスイッチング素子22がターンオンするタイミング(すなわち、
図7のタイミングt5)ではゲートG21に0Vを印加する。タイミングt5においてゲートG21に負電位を印加しなくても、誤点弧は生じない。また、タイミングt5において負電位を印加しないことで、スイッチング素子21に与えるストレスを軽減することができる。また、ゲート制御回路26は、ダイオード23に順電流が流れていない状態でスイッチング素子21がターンオンするタイミング(すなわち、
図7の期間Ta)ではゲートG22に負電位-VNGを印加することで、スイッチング素子22の誤点弧を抑制する。また、ゲート制御回路26は、ダイオード23に順電流が流れている状態でスイッチング素子21がターンオンするタイミング(すなわち、
図8のタイミングt15)ではゲートG22に0Vを印加する。タイミングt15においてゲートG22に負電位を印加しなくても、誤点弧は生じない。また、タイミングt15において負電位を印加しないことで、スイッチング素子22に与えるストレスを軽減することができる。
【0064】
また、ゲート制御回路25は、
図8に示すように、信号SG1がONからOFFに切り替わるタイミングt11の後ではゲート電位Vg21を0Vに低下させ、信号SG2がOFFからONに切り替わるタイミングt12以降にゲート電位Vg21を負電位-VNGに制御する。このように、タイミングt11からタイミングt12の間の期間ではゲートG21に負電位-VNGを印加しないことで、スイッチング素子21に与えるストレスを軽減することができる。また、ゲート制御回路25は、スイッチング素子22のターンオンが完了したタイミングt13以降にゲート電位Vg21を負電位-VNGから0Vに上昇させる。これによって、ゲートG21に負電位-VNGが印加される期間をより短縮することができ、スイッチング素子21に与えるストレスを軽減することができる。また、ゲート制御回路26は、
図7に示すように、信号SG2がONからOFFに切り替わるタイミングt1の後ではゲート電位Vg22を0Vに低下させ、信号SG1がOFFからONに切り替わるタイミングt2以降にゲート電位Vg22を負電位-VNGに制御する。このように、タイミングt1からタイミングt2の間の期間ではゲートG22に負電位-VNGを印加しないことで、スイッチング素子22に与えるストレスを軽減することができる。また、ゲート制御回路26は、スイッチング素子21のターンオンが完了したタイミングt3以降にゲート電位Vg22を負電位-VNGから0Vに上昇させる。これによって、ゲートG22に負電位-VNGが印加される期間をより短縮することができ、スイッチング素子22に与えるストレスを軽減することができる。
【0065】
なお、上述したように、電流Iout1の向きが流出方向である状態でスイッチング素子22がターンオンする場合には、ダイオード24に順方向に電流が流れている。したがって、
図5のステップS4、S6の判定は、ダイオード24に順方向に電流が流れているか否かを判定しているのに等しい。また、上述したように、電流Iout1の向きが流入方向である状態でスイッチング素子21がターンオンする場合には、ダイオード23に順方向に電流が流れている。したがって、
図6のステップS54、S56の判定は、ダイオード23に順方向に電流が流れているか否かを判定しているのに等しい。このように、実施例1では、ゲート制御回路25、26は、出力配線16aに流れる電流Iout1の向きに基づいて、ダイオード23、24に順方向に電流が流れているか否かを判定する。
【0066】
また、実施例1のスイッチング回路20aによれば、スイッチング回路20aの起動時における誤点弧を抑制できる。
図9は、起動時における各値の変化を示している。
図9において、タイミングt0はスイッチング回路20aの起動タイミングであり、タイミングtxは起動後に最初に信号SG2がOFFからONに切り替わるタイミングである。従来の制御では、スイッチング素子のターンオフをトリガとしてスイッチング素子のゲートに負電位を印加するので、起動後に最初にスイッチング素子22がターンオンするタイミングtxに応じてスイッチング素子21のゲート電位Vg21を負電位に制御することができない。これに対して、実施例1のスイッチング回路20aでは、制御IC47が、タイミングtxにおいて、ステップS2でNOと判定し、ステップS4でNOと判定し、ステップS6でYESと判定し、ステップS8でNOと判定する。したがって、ステップS10で、ゲート電位Vg21を負電位-VNGに制御する。このため、
図9に示すように、タイミングtxの直後の期間Tcにゲート電位Vg21が負電位-VNGに制御される。このため、起動時にスイッチング素子21の誤点弧を防止できる。
【0067】
実施例1の電位VCCは、ゲートオン電位の一例である。実施例1の0Vは、第1ゲートオフ電位の一例である。実施例1の負電位-VNGは、第2ゲートオフ電位の一例である。なお、実施例1及び以下に説明する実施例2~5において、第1ゲートオフ電位として、0V以上かつゲート閾値未満の任意の値を採用してもよい。
【0068】
実施例1のゲート制御回路25は対象ゲート制御回路の一例であり、実施例1のゲート制御回路26は対向ゲート制御回路の一例である。この場合、スイッチング素子21が対象スイッチング素子の一例である。また、スイッチング素子21のドレインが対象スイッチング素子の高電位主端子の一例である。また、スイッチング素子21のソースが対象スイッチング素子の低電位主端子の一例である。また、スイッチング素子22が対向スイッチング素子の一例である。また、スイッチング素子22のドレインが対向スイッチング素子の高電位主端子の一例である。また、スイッチング素子22のソースが対向スイッチング素子の低電位主端子の一例である。また、ダイオード23が対象ダイオードの一例である。また、ダイオード24が対向ダイオードの一例である。また、タイミングt5が第1タイミングの一例である。また、期間Tbが第2タイミングの一例である。また、信号SG2が対向指令信号の一例である。また、信号SG2がOFFからONに切り替わることが、ターンオン指令の一例である。また、信号SG2がONからOFFに切り替わることが、ターンオフ指令の一例である。以下に説明する実施例2~5でも、同様に対応付けることができる。
【0069】
また、実施例1のゲート制御回路26は対象ゲート制御回路の一例であり、実施例1のゲート制御回路25は対向ゲート制御回路の一例であると見ることもできる。この場合、スイッチング素子22が対象スイッチング素子の一例である。また、スイッチング素子22のドレインが対象スイッチング素子の高電位主端子の一例である。また、スイッチング素子22のソースが対象スイッチング素子の低電位主端子の一例である。また、スイッチング素子21が対向スイッチング素子の一例である。また、スイッチング素子21のドレインが対向スイッチング素子の高電位主端子の一例である。また、スイッチング素子21のソースが対向スイッチング素子の低電位主端子の一例である。また、ダイオード24が対象ダイオードの一例である。また、ダイオード23が対向ダイオードの一例である。また、タイミングt15が第1タイミングの一例である。また、期間Taが第2タイミングの一例である。また、信号SG1が対向指令信号の一例である。また、信号SG1がOFFからONに切り替わることが、ターンオン指令の一例である。また、信号SG1がONからOFFに切り替わることが、ターンオフ指令の一例である。以下に説明する実施例2~5でも、同様に対応付けることができる。
【0070】
なお、実施例1では、制御IC47、57がゲート電位Vg21、Vg22に基づいてスイッチング素子21、22のターンオンが完了したか否かを判定した。しかしながら、実施例1の変形例では、
図10に示すように、スイッチング回路20aが、ゲート電位判定回路49x、59xを有していてもよい。ゲート電位判定回路49xは、コンパレータ49yによってゲート電位Vg21を参照電位Vref21と比較し、比較結果を信号Son1として制御IC57へ送信する。なお、参照電位Vref21は、スイッチング素子21のターンオンが完了したときのゲート電位Vg21に設定されている。ゲート電位判定回路59xは、コンパレータ59yによってゲート電位Vg22を参照電位Vref22と比較し、比較結果を信号Son2として制御IC47へ送信する。なお、参照電位Vref22は、スイッチング素子22のターンオンが完了したときのゲート電位Vg22に設定されている。この構成でも、スイッチング素子21、22のターンオンが完了したか否かを示す信号Son1、Son2を、制御IC47、57に適切に送信することができる。
実施例2のスイッチング回路20a2では、ドレイン電位検出回路49aが、スイッチング素子21のソース-ドレイン間の電圧Vds21を検出する。さらに、ドレイン電位検出回路49aは、電圧Vds21に基づいてスイッチング素子22がオンしているか否かを判定する。すなわち、タイミングt13でスイッチング素子22がオンすると、電圧Vds22が低電圧となり、その結果、電圧Vds21が高電圧となる。したがって、ドレイン電位検出回路49aは、電圧Vds21が所定値以上であるか否かによって、スイッチング素子22がオンしているか否かを判定することができる。ドレイン電位検出回路49aによる判定結果(すなわち、スイッチング素子22がオンしているか否かを示す判定結果)は、信号Son2として制御IC47に入力される。従って、制御IC47は、ステップS8において、ドレイン電位検出回路49aから入力される信号Son2に基づいてスイッチング素子22のターンオンが完了したか否かを判定することができる。
また、実施例2のスイッチング回路20a2では、ドレイン電位検出回路59aが、スイッチング素子22のソース-ドレイン間の電圧Vds22を検出する。さらに、ドレイン電位検出回路59aは、電圧Vds22に基づいてスイッチング素子21がオンしているか否かを判定する。すなわち、タイミングt3でスイッチング素子21がオンすると、電圧Vds21が低電圧となり、その結果、電圧Vds22が高電圧となる。したがって、ドレイン電位検出回路59aは、電圧Vds22が所定値以上であるか否かによって、スイッチング素子21がオンしているか否かを判定することができる。ドレイン電位検出回路59aによる判定結果(すなわち、スイッチング素子21がオンしているか否かを示す判定結果)は、信号Son1として制御IC57に入力される。従って、制御IC57は、ステップS58において、ドレイン電位検出回路59aから入力される信号Son1に基づいてスイッチング素子21のターンオンが完了したか否かを判定することができる。
実施例2の構成によれば、制御IC47、57の間での信号Son1、Son2の送受信が不要となるので、ゲート制御回路25、26の構成を簡略化することができる。
また、実施例2の変形例では、ドレイン電位検出回路49aが、電圧Vds21の上昇速度が所定値以下まで低下したとき(すなわち、電圧Vds21が安定したとき)にスイッチング素子22のターンオンが完了したと判定することができる。また、ドレイン電位検出回路59aが、電圧Vds22の上昇速度が所定値以下まで低下したとき(すなわち、電圧Vds22が安定したとき)にスイッチング素子21のターンオンが完了したと判定することができる。