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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139871
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】固形製剤搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 47/14 20060101AFI20230927BHJP
   B65G 47/86 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B65G47/14 M
B65G47/86 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045620
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000228110
【氏名又は名称】クオリカプス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】松山 智一
【テーマコード(参考)】
3F072
3F080
【Fターム(参考)】
3F072AA33
3F072KC02
3F072KD03
3F072KD12
3F080AA34
3F080BA01
3F080BC01
3F080BC03
3F080BF14
3F080CC01
3F080CC10
3F080CC14
3F080DA17
3F080DA18
(57)【要約】
【課題】 固形製剤の姿勢変化を確実に行うと共に、変化後の姿勢を確実に維持して次工程に引き渡すことができる固形製剤搬送装置を提供する。
【解決手段】 受取位置P1において起立状態で受け取った固形製剤Fを搬送して引渡位置P2において倒伏状態で次工程に引き渡す方向規制ローラ10を備える固形製剤搬送装置1であって、方向規制ローラ10の収容部11は、固形製剤Fを起立状態で保持する起立保持部と、起立保持部よりも底浅に形成されて固形製剤Fを倒伏状態で保持する倒伏保持部とを備え、起立保持部および倒伏保持部は、方向規制ローラ10の軸方向に隣接配置され、それぞれの底面が前記軸方向に対して傾斜する傾斜面を介して連続しており、起立保持部および倒伏保持部の底面には、固形製剤Fを真空吸着するための起立吸引孔および倒伏吸引孔がそれぞれ形成されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受取位置において起立状態で受け取った固形製剤を搬送して引渡位置において倒伏状態で次工程に引き渡す方向規制ローラを備える固形製剤搬送装置であって、
前記方向規制ローラは、固形製剤を収容する凹状の収容部が外周面の周方向に複数形成され、
前記収容部は、固形製剤を起立状態で保持する起立保持部と、前記起立保持部よりも底浅に形成されて固形製剤を倒伏状態で保持する倒伏保持部とを備え、
前記起立保持部および倒伏保持部は、前記方向規制ローラの軸方向に隣接配置され、それぞれの底面が前記軸方向に対して傾斜する傾斜面を介して連続しており、
前記起立保持部および倒伏保持部の底面には、固形製剤を真空吸着するための起立吸引孔および倒伏吸引孔がそれぞれ形成され、
固形製剤は、前記受取位置から前記引渡位置まで搬送される間に、前記起立吸引孔により吸引される第1吸引区間を通過した後、前記倒伏吸引孔により吸引される第2吸引区間を通過するように構成された固形製剤搬送装置。
【請求項2】
前記傾斜面は、前記起立吸引孔から前記倒伏吸引孔まで前記軸方向の全体にわたって形成されている請求項1に記載の固形製剤搬送装置。
【請求項3】
前記起立保持部は、前記軸方向の端部における内壁が、前記軸方向の直交面に沿うように形成されて固形製剤を支持する請求項1または2に記載の固形製剤搬送装置。
【請求項4】
前記第1吸引区間と前記第2吸引区間との間に、固形製剤が前記起立吸引孔および倒伏吸引孔のいずれによっても吸引されない無吸引区間が形成されている請求項1から3のいずれかに記載の固形製剤搬送装置。
【請求項5】
前記第2吸引区間を起立状態で搬送される固形製剤と接触して倒伏させるガイド部材を更に備える請求項1から4のいずれかに記載の固形製剤搬送装置。
【請求項6】
前記第2吸引区間を起立状態で搬送される固形製剤に圧縮気体を吹き付けて倒伏させる圧縮気体吹付装置を更に備える請求項1から5のいずれかに記載の固形製剤搬送装置。
【請求項7】
前記倒伏保持部の深さは、固形製剤の厚みの半分程度に設定されている請求項1から6のいずれかに記載の固形製剤搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形製剤を搬送する固形製剤搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
錠剤やカプセル剤などの固形製剤を搬送する装置として、例えば特許文献1に開示された構成が知られている。図9に斜視図で示すように、この固形製剤搬送装置50は、固形製剤60を貯蔵するホッパ51と、ホッパ51の底部に設けられ固形製剤60の方向を規制するガイド部52と、ガイド部52に案内された固形製剤60を収容する第1の収容ポケット53aを有する供給ドラム53と、第1の収容ポケット53aから固形製剤60が移し替えられる第2の収容ポケット54aを有する規制ドラム54とを備えており、ホッパ51に貯蔵された固形製剤60を、供給ドラム53および規制ドラム54によりスラット55に搬送することができる。
【0003】
固形製剤60は、ガイド部52により縦方向に整列された状態で、供給ドラム53の第1の収容ポケット53aに収容される。この後、固形製剤60は、縦方向の状態のまま規制ドラム54の第2の収容ポケット54aに収容され、規制ドラム54による搬送中に規制ガイド56のV字状の溝部56aに当接することにより、第2の収容ポケット54a内で倒伏して横方向に保持される。こうして、固形製剤60が、横方向の姿勢でスラット55に引き渡される。
【0004】
上記従来の固形製剤搬送装置50は、規制ドラム54による固形製剤60の搬送中に、固形製剤60の姿勢を起立状態から倒伏状態に変化させることができる。ところが、倒伏後は、スラット55に引き渡されるまでの間、固形製剤60が規制ガイド56の内面を摺動するため、摩擦抵抗によって固形製剤60の姿勢が変化してしまい、固形製剤60が、想定とは異なる姿勢でスラット55に供給されるおそれや、スラット55から落下するおそれがあった。
【0005】
また、特許文献2には、起立状態で受け取った固形製剤を搬送して倒伏状態で引き渡す方向規制ドラムを備える製剤搬送装置が開示されている。方向規制ドラムは、製剤を起立状態で保持する複数の起立保持部と、各起立保持部の搬送方向下流側に隣接配置されて製剤を倒伏状態で保持する複数の倒伏保持部とを備えている。この製剤搬送装置は、起立保持部に保持された製剤を、方向規制ドラムの回転中に吸引して倒伏保持部に移動させる姿勢変化ノズルを備えており、方向規制ドラムによる搬送中に製剤の姿勢変化を確実に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第2897801号公報
【特許文献2】国際公開第2017/163399号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2に開示された製剤搬送装置は、方向規制ドラムの起立保持部および倒伏保持部が周方向に沿って隣接配置されているため、図9に示す規制ドラム54の第2の収容ポケット54aに比べて、起立保持部および倒伏保持部の周方向長さを長くする必要があることから、搬送処理能力を維持するためには方向規制ドラムを高速回転させる必要がある。このため、方向規制ドラムから固形製剤を次工程に引き渡す際に、固形製剤の姿勢が不安定になって想定とは異なる姿勢になるおそれがあるため、この点で改良の余地があった。
【0008】
そこで、本発明は、固形製剤の姿勢変化を確実に行うと共に、変化後の姿勢を確実に維持して次工程に引き渡すことができる固形製剤搬送装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の前記目的は、受取位置において起立状態で受け取った固形製剤を搬送して引渡位置において倒伏状態で次工程に引き渡す方向規制ローラを備える固形製剤搬送装置であって、前記方向規制ローラは、固形製剤を収容する凹状の収容部が外周面の周方向に複数形成され、前記収容部は、固形製剤を起立状態で保持する起立保持部と、前記起立保持部よりも底浅に形成されて固形製剤を倒伏状態で保持する倒伏保持部とを備え、前記起立保持部および倒伏保持部は、前記方向規制ローラの軸方向に隣接配置され、それぞれの底面が前記軸方向に対して傾斜する傾斜面を介して連続しており、前記起立保持部および倒伏保持部の底面には、固形製剤を真空吸着するための起立吸引孔および倒伏吸引孔がそれぞれ形成され、固形製剤は、前記受取位置から前記引渡位置まで搬送される間に、前記起立吸引孔により吸引される第1吸引区間を通過した後、前記倒伏吸引孔により吸引される第2吸引区間を通過するように構成された固形製剤搬送装置により達成される。
【0010】
この固形製剤搬送装置において、前記傾斜面は、前記起立吸引孔から前記倒伏吸引孔まで前記軸方向の全体にわたって形成されていることが好ましい。
【0011】
前記起立保持部は、前記軸方向の端部における内壁が、前記軸方向の直交面に沿うように形成されて固形製剤を支持することが好ましい。
【0012】
前記第1吸引区間と前記第2吸引区間との間に、固形製剤が前記起立吸引孔および倒伏吸引孔のいずれによっても吸引されない無吸引区間が形成されていることが好ましい。
【0013】
前記第2吸引区間を起立状態で搬送される固形製剤と接触して倒伏させるガイド部材を更に備えることが好ましい。あるいは、前記第2吸引区間を起立状態で搬送される固形製剤に圧縮気体を吹き付けて倒伏させる圧縮気体吹付装置を更に備えることが好ましい。
【0014】
前記倒伏保持部の深さは、固形製剤の厚みの半分程度に設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、固形製剤の姿勢変化を確実に行うと共に、変化後の姿勢を確実に維持して次工程に引き渡すことができる固形製剤搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る固形製剤搬送装置の概略構成を示す正面図である。
図2図1に示す固形製剤搬送装置の斜視図である。
図3図1に示す固形製剤搬送装置の平面図である。
図4図1に示す固形製剤搬送装置の作動を説明するための要部断面図である。
図5図1に示す固形製剤搬送装置の他の要部断面図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る固形製剤搬送装置の要部断面図である。
図7図6に示す固形製剤搬送装置の作動を説明するための要部断面図である。
図8】本発明の更に他の実施形態に係る固形製剤搬送装置の要部断面図である。
図9】従来の固形製剤搬送装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。図1は、 本発明の一実施形態に係る固形製剤搬送装置の概略構成を示す正面図であり、一部を断面で示している。また、図2および図3は、それぞれ図1に示す固形製剤搬送装置の斜視図および平面図である。図1から図3に示すように、固形製剤搬送装置1は、起立状態で受け取った錠剤やカプセル剤などの固形製剤Fを搬送して倒伏状態で次工程に引き渡す方向規制ローラ10と、方向規制ローラ10により起立状態で搬送される固形製剤Fと接触して倒伏させるガイド部材20とを備えている。
【0018】
方向規制ローラ10は、水平に延びる回転軸R周りに矢示方向に回転自在に支持されており、外周面の周方向に沿って凹状の収容部11が複数形成されている。収容部11は、方向規制ローラ10の軸方向(回転軸R方向)にも複数形成されていることが好ましく、本実施形態では軸方向に2列に形成されている。各収容部11は、固形製剤Fを起立状態で保持する起立保持部12と、固形製剤Fを倒伏状態で保持する倒伏保持部13とを備えている。起立保持部12の深さは、特に制限されるものではないが、起立状態の固形製剤Fが方向規制ローラ10の外周面から半分程度突出する深さであることが好ましい。倒伏保持部13の深さは、起立保持部12よりも底浅に形成されていればよいが、固形製剤Fの厚みの半分程度が方向規制ローラ10の外周面から突出する深さであることが好ましい。
【0019】
製剤Fの倒伏状態とは、固形製剤Fの保持位置において方向規制ローラ10の外周面に接する仮想平面上で、固形製剤Fの姿勢が最も安定する状態をいう。例えば、固形製剤Fが円板状の錠剤である場合には、固形製剤Fの径方向に広がる平面が上記の仮想平面と略平行な状態が倒伏状態であり、固形製剤Fが筒状のカプセル剤の場合には、固形製剤Fの軸線方向が上記の仮想平面と略平行な状態が倒伏状態である。一方、固形製剤Fの起立状態とは、上述した倒伏状態以外の状態をいう。すなわち、固形製剤Fの径方向あるいは長手方向が上記の仮想平面と直交する状態だけでなく、傾斜する状態も起立状態に含まれる。
【0020】
図3に示すように、起立保持部12および倒伏保持部13は、方向規制ローラ10の軸方向に隣接配置されている。起立保持部12の底面には起立吸引孔121が形成され、倒伏保持部13の底面には倒伏吸引孔131が形成されている。起立保持部12および倒伏保持部13の底面同士は、方向規制ローラ10の軸方向に対して傾斜する傾斜面14を介して連続しており、傾斜面14に沿った収容部11の深さが、起立保持部12側から倒伏保持部13側に向けて徐々に浅くなるように形成されている。なお、図3においては、固形製剤Fが収容部11に収容されない状態で示している。
【0021】
図1に示すように、方向規制ローラ10の内部には、軸線に沿って延びる2種類の吸引流路15,16がそれぞれ複数形成されている。一方の吸引流路15は、方向規制ローラ10の軸方向に配置された複数の起立保持部12のそれぞれと、連通路17を介して連通する。他方の吸引流路16は、方向規制ローラ10の軸方向に配置された複数の倒伏保持部13のそれぞれと、連通路(図示せず)を介して連通する。
【0022】
吸引流路15,16は、真空吸引装置(図示せず)に連通可能とされている。方向規制ローラ10の回転により、一方の吸引流路15が第1吸引区間S1を通過する間は、起立保持部12において起立吸引孔121による吸引が行われる。一方の吸引流路15が第1吸引区間S1から外れると、起立保持部12における吸引が解除される。
【0023】
方向規制ローラ10の回転により、他方の吸引流路16が第2吸引区間S2を通過する間は、倒伏保持部13において倒伏吸引孔131による吸引が行われる。他方の吸引流路16が第2吸引区間S2から外れると、倒伏保持部13における吸引が解除される。
【0024】
ガイド部材20は、不図示のブラケットにより方向規制ローラ10の近傍に支持されており、方向規制ローラ10の収容部11に起立状態で収容された固形製剤Fが接触して倒伏するガイド部21を備えている。ガイド部21は、第1吸引区間S1と第2吸引区間S2との間に跨るように、方向規制ローラ10の外周面に沿って配置されている。ガイド部21は、収容部11に倒伏状態で収容された固形製剤Fとは接触しないように、方向規制ローラ10の外周面との間に若干の隙間sをあけて配置されている。
【0025】
図3に示すように、ガイド部21は、固形製剤との接触位置が、方向規制ローラ10の回転に伴い収容部11の起立保持部12側から倒伏保持部13側に向けて徐々に変化するように、回転軸Rに対して平面視で傾斜するように形成されることが好ましく、これによって固形製剤を確実に倒伏させることができる。
【0026】
上記の構成を備える固形製剤搬送装置1は、受取位置P1において起立状態で受け取った固形製剤Fを搬送し、引渡位置P2において倒伏状態で次工程のローラやコンベア等に引き渡すことができる。本実施形態においては、受取位置P1における固形製剤Pの供給が、方向規制ローラ10の上方に配置された供給ローラ30により行われ、引渡位置P2における次工程への引き渡しが、方向規制ローラ10の下方に配置された受取ローラ40に対して行われる。供給ローラ30および受取ローラ40の周速は、固形製剤Fの受け渡しを所望の位置で確実に行うことで搬送を安定化させるため、方向規制ローラ10の周速に一致させることが好ましい。
【0027】
供給ローラ30は、凹状のポケット31が外周面に複数形成されており、図9に示す供給ドラム53と同様にホッパ(図示せず)から供給された固形製剤Fをポケット31に起立状態で収容し、方向規制ローラ10と逆方向に回転して搬送する。ポケット31に収容された固形製剤Fは、吸引エリアA1を通過する間の吸着状態を経て、受取位置P1で方向規制ローラ10の収容部11に供給される。
【0028】
図4は、受取位置P1で収容部11に供給された固形製剤Fの姿勢変化を示す要部断面図である。図4(a)に示すように、収容部11に起立状態で供給された固形製剤Fは、第1吸引区間S1(図1参照)を通過する間、起立吸引孔121に吸着されて起立状態のまま起立保持部12に保持された後、ガイド部材20のガイド部21と接触することにより矢示方向に倒伏する。本実施形態においては、方向規制ローラ10の軸方向に沿った起立保持部12の端部122における内壁が、方向規制ローラ10の軸方向の直交面Cに沿うように形成されており、この部分で固形製剤Fが起立状態で支持されているため、傾斜面14に向けた固形製剤Fの倒伏を確実に行うことができる。
【0029】
そして、固形製剤Fが第1吸引区間S1を通過後に第2吸引区間S2を通過することにより、図4(b)に示すように倒伏吸引孔131に吸着されて、倒伏状態で倒伏保持部13に保持される。図1に示すように、第2吸引区間S2は、引渡位置P2まで続いており、引渡位置P2で固形製剤Fの吸着が解除されて、倒伏状態の固形製剤Fが次工程に引き渡される。
【0030】
本実施形態の固形製剤搬送装置1は、収容部11の起立保持部12および倒伏保持部13が方向規制ローラ10の軸方向に隣接配置されているため、方向規制ローラ10の周方向に沿って多数の収容部11を配置することが可能である。したがって、方向規制ローラ10を過度に高速回転させる必要がないため、搬送処理能力を良好に維持しつつ、固形製剤Fの倒伏状態を確実に維持して次工程に引き渡すことができる。
【0031】
また、起立保持部12および倒伏保持部13のそれぞれの底面が、方向規制ローラ10の軸方向に対して傾斜する傾斜面14を介して連続しているため、起立状態から倒伏状態までの固形製剤Fの姿勢変化を緩やかに、且つ確実に行うことができ、これによって倒伏後の固形製剤Fの姿勢を安定させて、倒伏保持部13の倒伏吸引孔131に正しく吸着させることができる。
【0032】
本実施形態の傾斜面14は、断面直線状に形成されているが、特に限定されるものではなく、例えば、外方に向けて凸となる断面円弧状に形成されていてもよい。傾斜面14は、本実施形態のように、起立吸引孔121から倒伏吸引孔131までの全体にわたって形成されていることが好ましいが、起立吸引孔121と倒伏吸引孔131との間の一部のみに形成されてもよい。
【0033】
図1および図2に示すように、受取ローラ40は、矢示のように方向規制ローラ20の回転方向と逆方向に回転駆動され、引渡位置P2において倒伏状態で受け取った固形製剤Fを外周面のポケットに収容し、吸引エリアA2を通過する間、固形製剤Fを吸着して搬送する。
【0034】
図5は、引渡位置P2で受取ローラ40に引き渡される固形製剤Fを示す要部断面図である。倒伏保持部13に倒伏状態で保持された固形製剤Fは、方向規制ローラ10の外周面から突出した状態で搬送されるため、受取ローラ40のポケット41に収容される際に、倒伏保持部13からポケット41への落下距離fを少なくすることができる。これにより、受取ローラ40に固形製剤Fを引き渡す際の固形製剤Fの姿勢を、より安定させることができる。
【0035】
方向規制ローラ10の外周面からの固形製剤Fの突出量は、多すぎると受取ローラ40への引き渡しが困難になることから、倒伏保持部13の深さdが、固形製剤Fの厚みtの半分程度(例えば、45~55%)に設定されることが好ましい。
【0036】
本実施形態の固形製剤搬送装置1は、固形製剤Fの倒伏状態を確実に維持して、次工程である受取ローラ40に引き渡すことができるので、例えば、受取ローラ40の外周面の近傍に、撮像装置やマーキング装置などを配置することで、固形製剤Fの表裏面における外観検査やマーキングを容易且つ正確に行うことができる。なお、固形製剤Fの表裏面の検査やマーキングは、方向規制ローラ10による搬送中に行うこともできる。
【0037】
以上、本発明の一実施形態について詳述したが、本発明の具体的な態様は上記実施形態に限定されない。例えば、本実施形態の固形製剤搬送装置1は、方向規制ローラ10による搬送中の固形製剤Fの姿勢変化を、固形製剤Fとガイド部材20との接触によって確実に行うように構成しているが、収容部11に収容された固形製剤Fの自重や、起立吸引孔121から倒伏吸引孔131への吸引の切り換えによって、固形製剤Fの姿勢変化を行うことが可能であることから、ガイド部材20を備えない構成であってもよく、固形製剤Fとガイド部材20との接触が問題になるおそれがある場合に特に好適である。
【0038】
ガイド部材20を備えない構成の場合には、図6に示すように、第1吸引区間S1と第2吸引区間S2との間に、固形製剤Fが起立吸引孔および倒伏吸引孔のいずれによっても吸引されない無吸引区間S3が形成されていることが好ましい。固形製剤Fが無吸引区間S3を通過する間は、図7に示すように、固形製剤Fが、起立吸引孔121および倒伏吸引孔131のいずれにも吸着されずに傾斜面14に沿う状態になるため、この状態を経て第2吸引区間S2に搬送されることで、固形製剤Fを倒伏吸引孔131に確実に吸着させて、倒伏状態にすることができる。なお、ガイド部材20を備えることなく固形製剤Fを倒伏可能な構成であっても、万一倒伏しない場合に備えて、第2吸引区間S2にガイド部材20を設けてもよい。
【0039】
第2吸引区間S2において固形製剤Fを確実に倒伏させるための構成としては、ガイド部材20が固形製剤Fに作用する構成以外に、例えば、図8に示すように、圧縮気体供給源(図示せず)に接続された圧縮気体吹付装置200から、起立状態の固形製剤Fに圧縮気体を吹き付けることにより、固形製剤Fに対して傾斜面14に向けた適度な押圧力を作用させる構成であってもよい。この構成によれば、固形製剤Fのスムーズな姿勢変化を促して確実に倒伏状態にすることができると共に、固形製剤の姿勢変化を非接触で行うことができるため固形製剤Fへのダメージを最小限に抑えることができる。固形製剤Fに対する圧縮気体の吹き付けは、第2吸引区間S2に加えて、図6に示す無吸引区間S3や第1吸引区間S1で行ってもよい。圧縮気体の吹き付けは、起立状態の固形製剤Fが方向規制ローラ10の表面から突出する部分に行うことが好ましく、例えば、圧縮気体吹付装置200の噴射エリアを固形製剤Fが通過する間、この部分の一方面に圧縮気体を連続的に噴射することが好ましい。圧縮気体吹付装置200は、第2吸引区間S2においてガイド部材20と並存させてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 固形製剤搬送装置
10 方向規制ローラ
11 収容部
12 起立保持部
121 起立吸引孔
13 倒伏保持部
131 倒伏吸引孔
14 傾斜面
20 ガイド部材
P1 受取位置
P2 引渡位置
F 固形製剤
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9