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特開2023-139888ダイヤフラム構造及びダイヤフラム型シリンダ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139888
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ダイヤフラム構造及びダイヤフラム型シリンダ
(51)【国際特許分類】
   F15B 15/10 20060101AFI20230927BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20230927BHJP
   F16J 10/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
F15B15/10 F
F16J3/02 Z
F16J10/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045642
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177231
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨志田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】落部 奨之
【テーマコード(参考)】
3H081
3J044
3J045
【Fターム(参考)】
3H081AA01
3H081AA15
3H081BB03
3H081CC29
3J044AA02
3J044BA06
3J044CC14
3J044DA06
3J044DA20
3J045AA20
3J045BA02
3J045CA01
3J045CA10
3J045EA10
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軸体の周面と支持体の孔の周面とにそれぞれ溝を形成して両溝に亘ってピンを嵌め込むことで軸体を周方向に回転させない構成に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難いダイヤフラム構造を提供する。
【解決手段】ダイヤフラム構造100は、ダイヤフラム20と、ダイヤフラム20の中央に固定されている軸体50と、軸体50の軸方向に沿う孔32Aが形成され、孔32Aの内側に軸体50の一部を嵌め込んで、軸体50が軸方向に沿って移動可能となるように軸体50を支持する支持体32と、を備え、軸方向から見た軸体の一部52の形状は、ダイヤフラム20の中心から外周までの最長距離と最短距離が距離が異なる真円以外の形状であり、孔32Aの周面の一部の面は、中心からの距離が最長距離よりも近くかつ最短距離よりも遠くなる位置で軸体の一部32Aの面に対向している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの中央に固定されている軸体と、
前記ダイヤフラムの周縁が固定され、前記軸体の軸方向に沿う孔が形成され、前記孔の内側に前記軸体の一部を嵌め込んで、前記軸体が前記軸方向に沿って移動可能となるように前記軸体を支持する支持体と、
を備え、
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、前記ダイヤフラムの中心から外周までの最長距離が距離D1、最短距離が距離D2である真円以外の形状であり、
前記孔の周面の一部の面は、前記中心からの距離が距離D1よりも近くかつ距離D2よりも遠くなる位置で前記軸体の一部の面に対向している、
ダイヤフラム構造。
【請求項2】
前記軸方向から見て、前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D2である最短点とを結ぶ直線に直交する直交線であって、前記最短点を含む直交線は、前記軸体の一部の外周における、前記軸方向から見て前記ダイヤフラムの中心から距離D1である最長点を含む、
請求項1に記載のダイヤフラム構造。
【請求項3】
前記軸体の一部の外周は、少なくとも一面以上の第1平面を含み、
前記最短点は、前記少なくとも一面以上の第1平面のいずれかの面上に存在し、
前記孔の周面の一部の面は、前記少なくとも一面以上の第1平面に対向する、少なくとも一面以上の第2平面である、
請求項1又は2に記載のダイヤフラム構造。
【請求項4】
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、多角形である、
請求項3に記載のダイヤフラム構造。
【請求項5】
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、正多角形である、
請求項4に記載のダイヤフラム構造。
【請求項6】
前記孔の周面の一部の面における、前記軸体の複数の角に対向する部分は、前記ダイヤフラムの中心から距離D1よりも遠くなる位置で、前記複数の角に対向している、
請求項4又は5に記載のダイヤフラム構造。
【請求項7】
前記軸方向から見て、(1)前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D2である最短点とを結ぶ直線に直交する第1の直交線であって、前記最短点を含む第1の直交線と、(2)前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D1である最長点とを結ぶ直線に直交する第2の直交線であって、前記最長点を含む第2の直交線との交点は、前記軸方向から見た前記軸体の一部の外側に存在する、
請求項1に記載のダイヤフラム構造。
【請求項8】
前記軸方向から見て、(1)前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D2である最短点とを結ぶ直線に直交する直交線であって、前記最短点を含む直交線と、(2)前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D1である最長点とを結ぶ直線との交点は、前記軸方向から見た前記軸体の一部の外側に存在する、
請求項1に記載のダイヤフラム構造。
【請求項9】
前記軸体の一部の外周は、少なくとも一面以上の第1平面を含み、
前記最短点は、前記少なくとも一面以上の第1平面のいずれかの面上に存在し、
前記孔の周面の一部の面は、前記少なくとも一面以上の第1平面に対向する、少なくとも一面以上の第2平面である、
請求項7又は8に記載のダイヤフラム構造。
【請求項10】
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、多角形状であり、
少なくとも一面以上の第1平面は、複数の第1平面であり、
前記軸体の一部の外周は、前記複数の第1平面と、複数の曲面とで構成されており、
前記複数の第1平面と、前記複数の曲面とは、前記軸体の周方向において互い違いに配置されている、
請求項9に記載のダイヤフラム構造。
【請求項11】
前記軸方向から見た前記軸体の少なくとも一部は、前記軸体の内側にある2つの焦点で描かれる楕円の一部であり、
前記孔の周面の少なくとも一部の面は、前記軸体の一部における前記楕円の一部に相当する曲面に対向する他の曲面であって、前記軸方向から見て前記2つの焦点で描かれる他の楕円に相当する他の曲面である、
請求項7記載のダイヤフラム構造。
【請求項12】
前記支持体と前記ダイヤフラムとの間に配置され、前記ダイヤフラムを前記ダイヤフラムの凹面側から加圧するコイルばね、
を備える請求項1~11のいずれか一項に記載のダイヤフラム構造。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載のダイヤフラム構造と、
前記ダイヤフラムを挟んで前記支持体の反対側に配置され、前記軸方向から見て前記ダイヤフラムの中央に重なる部分に第1の貫通孔が形成され、前記支持体とで前記ダイヤフラムの周縁を把持しつつ前記ダイヤフラムとで第1の空間を形成する筐体と、
を備え、
前記支持体は、前記ダイヤフラムとで第2の空間を形成し、
前記ダイヤフラムの中央には、第2の貫通孔が形成され、
前記軸体は、前記第2の貫通孔を通って前記ダイヤフラムを貫通しつつ前記第1の貫通孔を通って前記筐体を貫通しており、前記第1の空間又は前記の第2の空間の内部の圧力変化による前記ダイヤフラムの変形に伴い前記軸方向に移動する、
ダイヤフラム型シリンダ。
【請求項14】
前記ダイヤフラムは、中央に前記第2の貫通孔が形成されている本体と、前記本体における前記第2の貫通孔が形成されている部分に固定されている貫通部材とを有し、
前記ダイヤフラムは、前記貫通部材を介して前記軸体を固定し、かつ、前記軸体から着脱可能とされている、
請求項13に記載のダイヤフラム型シリンダ。
【請求項15】
前記軸体は、前記支持体に支持される第1の軸体と、前記第1の軸体に着脱可能に固定され、前記第1の貫通孔を通って前記筐体を貫通している第2の軸体とを有し、
前記貫通部材は、前記第1の軸体と前記第2の軸体とにより前記軸方向の両側から挟まれて把持されている、
請求項14に記載のダイヤフラム型シリンダ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラム構造及びダイヤフラム型シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、その図1、請求項1等に示されるように、(1)ばね室17と加圧室19とが形成され、かつばね室17と加圧室19とを区画するダイヤフラム16が装着されたシリンダ本体13と、(2)ダイヤフラム16に固定さればね室17を貫通してシリンダ本体13の外部に突出する主軸22と、(3)シリンダ本体13に固定され、主軸22に形成されたガイド溝35に係合し主軸22の直線移動を案内するガイドピン36と、(4)主軸22の外側に装着され、主軸22に求心力を加えつつ後退方向のばね力を加える円錐形のコイルばね27と、(5)主軸22に取り付けられ、加圧室19に供給された流体による主軸22の前進限位置を規制する前進側のストッパ32と、を備えるダイヤフラムシリンダが開示されている。
そして、特許文献1によれば、このダイヤフラムシリンダは、ダイヤフラムの撓みや傾斜を防止することによってダイヤフラムの耐久性を向上させることができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-304131号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されているダイヤフラムシリンダは、シリンダ本体13に固定されているガイドピン36を主軸22に形成されたガイド溝35に係合させることで、主軸22の軸周りの回転を抑制する(特許文献1の図1参照)。そのため、主軸22が軸方向に往復移動する際に、ガイドピン36はガイド溝35を形成する面に押し付けられる。別の見方をすると、主軸22が軸方向に往復移動する際に、ガイド溝35を形成する面に接触するガイドピン36の直線部分には、軸周りに回転しようとする主軸22からの回転力が集中する。その結果、ガイドピン36とガイド溝35を形成する面とから摩耗紛が生成されて、主軸22とガイド溝25との隙間に摩耗紛が存在することになる。この隙間に存在する摩耗紛の量は、このダイヤフラムシリンダの使用期間の長さにより増加する。このようなメカニズムにより、主軸22とガイド溝25との隙間に一定以上の量の摩耗紛が存在することになると、主軸22の軸方向の移動動作が不安定になる虞がある。
【0005】
本発明は、軸体の周面と支持体の孔における前記軸体の周面に対向する周面とにそれぞれ溝を形成して両溝に亘ってピンを嵌め込むことで軸体を周方向に回転させない構成に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難いダイヤフラム構造の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様のダイヤフラム構造は、
ダイヤフラムと、
前記ダイヤフラムの中央に固定されている軸体と、
前記ダイヤフラムの周縁が固定され、前記軸体の軸方向に沿う孔が形成され、前記孔の内側に前記軸体の一部を嵌め込んで、前記軸体が前記軸方向に沿って移動可能となるように前記軸体を支持する支持体と、
を備え、
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、前記ダイヤフラムの中心から外周までの最長距離が距離D1、最短距離が距離D2である真円以外の形状であり、
前記孔の周面の一部の面は、前記中心からの距離が距離D1よりも近くかつ距離D2よりも遠くなる位置で前記軸体の一部の面に対向している。
【0007】
第2態様のダイヤフラム構造は、
第1態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸方向から見て、前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D2である最短点とを結ぶ直線に直交する直交線であって、前記最短点を含む直交線は、前記軸体の一部の外周における、前記軸方向から見て前記ダイヤフラムの中心から距離D1である最長点を含む。
【0008】
第3態様のダイヤフラム構造は、
第1態様又は第2態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸体の一部の外周は、少なくとも一面以上の第1平面を含み、
前記最短点は、前記少なくとも一面以上の第1平面のいずれかの面上に存在し、
前記孔の周面の一部の面は、前記少なくとも一面以上の第1平面に対向する、少なくとも一面以上の第2平面である。
【0009】
第4態様のダイヤフラム構造は、
第3態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、多角形である。
【0010】
第5態様のダイヤフラム構造は、
第4態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、正多角形である。
【0011】
第6態様のダイヤフラム構造は、
第4態様又は第5態様のダイヤフラム構造であって、
前記孔の周面の一部の面における、前記軸体の複数の角に対向する部分は、前記ダイヤフラムの中心から距離D1よりも遠くなる位置で、前記複数の角に対向している。
【0012】
第7態様のダイヤフラム構造は、
第1態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸方向から見て、(1)前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D2である最短点とを結ぶ直線に直交する第1の直交線であって、前記最短点を含む第1の直交線と、(2)前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D1である最長点とを結ぶ直線に直交する第2の直交線であって、前記最長点を含む第2の直交線との交点は、前記軸方向から見た前記軸体の一部の外側に存在する。
【0013】
第8態様のダイヤフラム構造は、
第1態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸方向から見て、(1)前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D2である最短点とを結ぶ直線に直交する直交線であって、前記最短点を含む直交線と、(2)前記ダイヤフラムの中心と、前記ダイヤフラムの中心から距離D1である最長点とを結ぶ直線との交点は、前記軸方向から見た前記軸体の一部の外側に存在する。
【0014】
第9態様のダイヤフラム構造は、
第7態様又は第8態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸体の一部の外周は、少なくとも一面以上の第1平面を含み、
前記最短点は、前記少なくとも一面以上の第1平面のいずれかの面上に存在し、
前記孔の周面の一部の面は、前記少なくとも一面以上の第1平面に対向する、少なくとも一面以上の第2平面である。
【0015】
第10態様のダイヤフラム構造は、
第9態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、多角形状であり、
少なくとも一面以上の第1平面は、複数の第1平面であり、
前記軸体の一部の外周は、前記複数の第1平面と、複数の曲面とで構成されており、
前記複数の第1平面と、前記複数の曲面とは、前記軸体の周方向において互い違いに配置されている。
【0016】
第11態様のダイヤフラム構造は、
第7態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸方向から見た前記軸体の少なくとも一部は、前記軸体の内側にある2つの焦点で描かれる楕円の一部であり、
前記孔の周面の少なくとも一部の面は、前記軸体の一部における前記楕円の一部に相当する曲面に対向する他の曲面であって、前記軸方向から見て前記2つの焦点で描かれる他の楕円に相当する他の曲面である。
【0017】
第12態様のダイヤフラム構造は、
第1態様~第11態様のいずれか一態様のダイヤフラム構造であって、
前記支持体と前記ダイヤフラムとの間に配置され、前記ダイヤフラムを前記ダイヤフラムの凹面側から加圧するコイルばね、
を備える。
【0018】
第1態様のダイヤフラム型シリンダは、
第1態様~第12態様のいずれか一態様のダイヤフラム構造と、
前記ダイヤフラムを挟んで前記支持体の反対側に配置され、前記軸方向から見て前記ダイヤフラムの中央に重なる部分に第1の貫通孔が形成され、前記支持体とで前記ダイヤフラムの周縁を把持しつつ前記ダイヤフラムとで第1の空間を形成する筐体と、
を備え、
前記支持体は、前記ダイヤフラムとで第2の空間を形成し、
前記ダイヤフラムの中央には、第2の貫通孔が形成され、
前記軸体は、前記第2の貫通孔を通って前記ダイヤフラムを貫通しつつ前記第1の貫通孔を通って前記筐体を貫通しており、前記第1の空間又は前記の第2の空間の内部の圧力変化による前記ダイヤフラムの変形に伴い前記軸方向に移動する。
【0019】
第2態様のダイヤフラム型シリンダは、
第1態様のダイヤフラム型シリンダであって、
前記ダイヤフラムは、中央に前記第2の貫通孔が形成されている本体と、前記本体における前記第2の貫通孔が形成されている部分に固定されている貫通部材とを有し、
前記ダイヤフラムは、前記貫通部材を介して前記軸体を固定し、かつ、前記軸体から着脱可能とされている。
【0020】
第3態様のダイヤフラム型シリンダは、
第2態様のダイヤフラム型シリンダであって、
前記軸体は、前記支持体に支持される第1の軸体と、前記第1の軸体に着脱可能に固定され、前記第1の貫通孔を通って前記筐体を貫通している第2の軸体とを有し、
前記貫通部材は、前記第1の軸体と前記第2の軸体とにより前記軸方向の両側から挟まれて把持されている。
【発明の効果】
【0021】
第1態様のダイヤフラム構造は、軸体の周面と支持体の孔における前記軸体の周面に対向する周面とにそれぞれ溝を形成して両溝に亘ってピンを嵌め込むことで軸体を周方向に回転させない構成(以下、比較構成という。)に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0022】
第2態様のダイヤフラム構造は、比較構成に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0023】
第3態様のダイヤフラム構造は、最短点が球面上に存在する構成に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0024】
第4態様のダイヤフラム構造は、軸方向から見た軸体の一部の形状が楕円である構成に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0025】
第5態様のダイヤフラム構造は、軸方向から見た軸体の一部の形状が正多角形以外の多角形である構成に比べて、軸体の往復移動を安定させることができる。
【0026】
第6態様のダイヤフラム構造は、孔の周面の一部の面における軸体の複数の角に対向する部分が、ダイヤフラムの中心から距離D1となる位置で、前記複数の角に対向している構成に比べて、軸体の横断面が多角形であっても各角の孔の周面への接触が抑制される。これに伴い、第6態様のダイヤフラム構造は、軸体の横断面が多角形であるにも関わらず、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0027】
第7態様及び第8態様のダイヤフラム構造は、本構成以外の構成に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0028】
第9態様のダイヤフラム構造は、最短点が球面上に存在する構成に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0029】
第10及び第11態様のダイヤフラム構造は、軸方向から見た軸体の一部が多角形である構成に比べて、軸体の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0030】
第12態様のダイヤフラム構造は、比較構成に比べて、より長期的にコイルばねのばね力に対応して軸体をスムーズに往復移動させることができる。
【0031】
第1態様のダイヤフラム型シリンダは、比較構成を備えるダイヤフラム型シリンダに比べて、より長期にダイヤフラムの変形に伴う軸体の軸方向へのスムーズな移動を実現することができる。
【0032】
第2態様のダイヤフラム型シリンダは、比較構成を備えるダイヤフラム型シリンダに比べて、ダイヤフラムの交換までの期間を長くすることができる。
【0033】
第3態様のダイヤフラム型シリンダは、簡単な構成で、ダイヤフラムを軸体から着脱させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】本発明の実施の形態(以下、本実施形態という。)のダイヤフラム型シリンダの斜視図である。
図2】本実施形態のダイヤフラム型シリンダの図であって、図1のII-II切断線で切断された縦断面図の部分拡大図である。
図3図2のIII-III切断線で切断された本実施形態のダイヤフラム型シリンダの横断面図である。
図4図2の場合と異なる形状にダイヤフラムが変形した場合における、本実施形態のダイヤフラム型シリンダの縦断面図である。
図5】第1変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
図6】第2変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
図7】第3変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
図8】第4変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
図9】第5変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
図10】第6変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
図11】軸方向から見た第1ロッド部の複数の変形例であって、図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
図12】第5変形例及び第6変形例を補足する図である。
図13】第7~第9変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
図14】応用例のダイヤフラム型ポンプの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
≪概要≫
以下、本実施形態、本実施形態の複数の変形例及び複数の応用例について説明する。まず、本実施形態について説明する。次いで、複数の変形例及び複数の応用例について説明する。本明細書では、異なる実施形態等で参照する各図面において、同じような機能を有する構成要素に対して同じ符号又は同じような符号を付することに留意されたい。
【0036】
≪本実施形態≫
以下、本実施形態の機能及び構成、動作並びに効果について、図面を参照しつつこれらの記載順で説明する。
【0037】
<本実施形態のダイヤフラム型シリンダの機能及び構成>
図1は、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10の斜視図である。図2は、ダイヤフラム型シリンダ10の図であって、図1のII-II切断線で切断された縦断面図の部分拡大図である。図3は、図2のIII-III切断線で切断されたダイヤフラム型シリンダ10の横断面図である。図4は、図2の場合と異なる形状にダイヤフラム20が変形した場合における、ダイヤフラム型シリンダ10の縦断面図である。
【0038】
ダイヤフラム型シリンダ10は、図2に示されるように、ダイヤフラム20と、ハウジング30と、OリングORと、コイルばね40と、円盤状板45と、ロッド50(軸体の一例)とを備えている。ダイヤフラム型シリンダ10は、外部装置(一例として制御装置(図示省略)及び制御装置に制御されるコンプレッサー(図示省略))から注入される空気によってダイヤフラム20を変形させて、ロッド50をハウジング30に対してその軸方向における定められた範囲で往復移動させる機能を有する。なお、本実施形態では、少なくとも、ダイヤフラム20と、ロッド50と、後述する第1ハウジング32における貫通孔32Aが形成されている部分とを備える構造を、ダイヤフラム構造100という。
【0039】
〔ダイヤフラム〕
ダイヤフラム20は、変形することでロッド50をその軸方向(図中の符号CLが付された軸に沿う方向)に沿って移動させる機能を有する。
ダイヤフラム20は、図2に示されるように、一例として、本体22と、中央筒23とを有する。
本体22は、変形可能なゴム製の矩形状の部材であって、円盤状部分22Bと、外周縁部分22C(周縁の一例)と、突出部22Dとを含んで構成されている。円盤状部分22Bの中央には、貫通孔22A(第2の貫通孔の一例)が形成されている。突出部22Dは、円盤状部分22Bと外周縁部分22Cとを全周に亘って繋いでおり、その厚み方向の一方側に向けて突出している。なお、図4に示される本体22の形状はほぼ自然状態、すなわちほぼ変形していない状態での形状であり、図2に示される本体22の形状は弾性変形して引張応力がかかっている状態での形状である。また、前述のとおり、本体22は一例として矩形状であるが、この理由はハウジング30の形状による。そのため、本体22を把持するハウジング30の形状、構造等により、本体22の形状を円状その他の形状としてもよい点に留意されたい。
中央筒23は、リング部材24と、筒部材25とを有する。ここで、中央筒23は貫通部材の一例であり、リング部材24は貫通部材の他の一例である。
リング部材24は、中央に貫通孔24A(第2の貫通孔の他の一例)が形成されているリング状の部材であり、本体22の中央の部分、すなわち、貫通孔22Aが形成されている部分に固定されている。リング部材24は、一例として金属製である。なお、リング部材24の外径は、図2及び図4に示されるように、後述する第1ロッド部52の幅及び第2円柱部54Bの径よりも大きく設定されている。
筒部材25は、図2及び図4に示されるように、リング部材24から軸方向に突出している筒である。具体的には、筒部材25は、軸CLを中心に軸方向に沿って配置され、軸方向における(第1ロッド部52に対して)第2ロッド部54側に突出している。また、筒部材25の貫通孔25Aは、リング部材24の貫通孔24Aよりも大径となっている。そのため、筒部材25は、リング部材24とで段差を形成している。そして、筒部材25は、図2及び図4に示されるように、その外周面を第2ハウジング34における第2の貫通孔34Aを形成する周面に接触させつつその内周面にロッド50(具体的には、後述する第2円柱部54B)の外周面を接触させて、ロッド50を支持している。
ダイヤフラム20は、図2及び図4に示されるように、リング部材24を介して貫通孔22A及び貫通孔24Aを貫通しているロッド50を固定している。別言すると、ロッド50は、ダイヤフラム20の中央に固定されている。より具体的には、ロッド50の軸と、ダイヤフラム20の軸とは、同じである。各図における符号CLは、ロッド50の軸を示している。本明細書の説明において、「軸方向」とは、ロッド50の軸に沿った方向を意味する点に留意されたい。
【0040】
〔ハウジング及びOリング〕
ハウジング30は、その内部にダイヤフラム20及びロッド50の一部を収容する機能と、ダイヤフラム20を変形させるための加圧空間を形成する機能と、ロッド50が軸方向に沿って移動可能となるようにロッド50を支持する機能とを有する。
ハウジング30は、図1に示されるように、軸方向から見て矩形状で、その厚み(又は高さ)が軸方向から見た一辺の長さよりも薄い(又は短い)立体である。ハウジング30は、図1図2及び図4に示されるように、第1ハウジング32(支持体の一例)と、第2ハウジング34(筐体の一例)とを有する。第1ハウジング32は軸方向の一端側に配置され、第2ハウジング34は軸方向の他端側で第1ハウジング32に対向して配置されている。
【0041】
(第1ハウジング)
第1ハウジング32には、その軸方向から見た中心に、貫通孔32A(孔の一例)が形成されている(図1図2及び図4参照)。また、第1ハウジング32における第2ハウジング34に向く側の面には、貫通孔32Aを囲むように円状の凹み32Bが形成されている。さらに、第1ハウジング32には、その外周面から凹み32Bに亘って貫通する貫通孔OH1が形成されている。貫通孔32Aの内側には、ロッド50の一部が嵌め込まれている。第1ハウジング32における凹み32Bの外側の部分にはダイヤフラム20(本体22)の外周縁部分22Cが配置されており、第1ハウジング32は第2ハウジング34とで外周縁部分22Cを把持することで、外周縁部分22Cを固定している。
以上のような構成により、第1ハウジング32は、ダイヤフラム20及びロッド50とで囲まれた空間R1(第2の空間の一例)を形成している
なお、前述のとおり、貫通孔32Aの内側にはロッド50の一部が嵌め込まれている。貫通孔32Aは、図3に示されるように、軸方向から見て矩形状の内周面を有している。第1ハウジング32は、後述するロッド50の周面の形状との関係で、貫通孔32Aに嵌め込まれたロッド50を軸方向に沿って移動可能とする。すなわち、第1ハウジング32における貫通孔32Aは、軸方向に往復移動するロッド50のすべり軸受として機能する。ただし、第1ハウジング32は、単なるすべり軸受けとしての機能を発揮するのではなく、ロッド50がその軸周りに回転できない又はほぼ回転できないようにロッド50を支持するようになっている。
【0042】
(第2ハウジング及びOリング)
第2ハウジング34は、図1図2及び図4に示されるように、ダイヤフラム20を挟んで第1ハウジング32の反対側に配置されている。第2ハウジング34には、その軸方向から見た中心かつ軸方向から見てダイヤフラム20の中央に重なる部分に、貫通孔34A(第1の貫通孔の一例)が形成されている。さらに、第2ハウジング34における貫通孔34Aを形成する周面には、周方向全周に亘る無端状の周溝34Cが形成されている。周溝34Cには、OリングORが嵌め込まれている。そして、OリングORは、筒部材25と第2ハウジング34とに挟まれながら圧縮変形されて、軸方向における筒部材25と第2ハウジング34との隙間を遮断する機能を有する。第2ハウジング34における第1ハウジング32に向く側の面には、貫通孔34Aを囲むように円状の凹み34Bが形成されている。さらに、第2ハウジング34には、その外周面から凹み34Bに亘って貫通する貫通孔OH2が形成されている。貫通孔34Aの内側には、中央筒23の筒部材25と、筒部材25の内側に配置されているロッド50の一部とが嵌め込まれている。第2ハウジング34における凹み34Bの外側の部分にはダイヤフラム20(本体22)の外周縁部分22Cが配置されており、第2ハウジング34は第1ハウジング32とで外周縁部分22Cを固定している。
以上のような構成により、第2ハウジング34は、ダイヤフラム20及びロッド50とで囲まれた空間R2(第1の空間の一例)を形成している
なお、第2ハウジング34における貫通孔34Aは、軸方向に往復移動するロッド50のすべり軸受として機能する。また、貫通孔OH2には前述の外部装置に接続されるようになっており、貫通孔OH2は、外部装置から供給される圧縮空気を空間R2に供給するための給気ポートとして機能する。
【0043】
〔コイルばね及び円盤状板〕
コイルばね40は、図2及び図4に示されるように、軸方向に沿って空間R1に配置され、すなわち、第1ハウジング32とダイヤフラム20との間に配置され、ダイヤフラム20を本体22の凹面側から加圧する機能を有する。ここで、図2に示されるコイルばね40は自然長よりも若干圧縮されている状態での形状であり、図4に示されるコイルばね40の形状は図2に示されるコイルばね40よりも圧縮されている状態での形状である。
また、円盤状板45は、厚み方向の中央が貫通する円盤45Aと、その周縁にリング状の周壁45Bとを有する。前述では、コイルばね40は第1ハウジング32とダイヤフラム20との間に配置され、ダイヤフラム20を本体22の凹面側から加圧することを説明したが、本実施形態では、コイルばね40が本体22に接触してその機能を発揮するのではなく、コイルばね40は、本体22とで円盤状板45を挟んで、別言すると円盤状板45を介して、その機能を発揮するように構成されている。
【0044】
〔ロッド〕
ロッド50は、ダイヤフラム20の変形に伴い軸方向に移動する機能を有する(図2及び図4参照)。ロッド50は、図2及び図4に示されるように、第1ロッド部52(軸体の一部及び第1の軸体の一例)と、第2ロッド部54(第2の軸体の一例)と、ねじ56とを有する。第1ロッド部52と第2ロッド部54とは軸方向に沿って並べられており、一例としてねじ56により繋げられている。
【0045】
第1ロッド部52は、図2及び図4に示されるように、ロッド50における、第1ハウジング32に支持される部分である。別の見方をすると、第1ロッド部52は、第1ハウジング32の貫通孔32Aに嵌め込まれて、ロッド50が軸方向に移動可能となるように第1ハウジング32に支持される部分である。そのため、第1ロッド部52の長さは、貫通孔32Aの長さ(又は深さ)よりも長く設計されている(図2及び図4参照)。
本実施形態では、第1ロッド部52は、図3に示されるように、軸方向から見て一例として矩形(正方形)である。第1ロッド部52は、軸方向の一端から他端に亘る各位置での断面が同じ矩形である(図2及び図3参照)。そのため、第1ロッド部52は、一例として角柱状である。また、第1ロッド部52には、軸を中心とする貫通孔(図示省略)が形成されている。
【0046】
第2ロッド部54は、第1円柱部54Aと、第2円柱部54Bとを有する。第1円柱部54Aは、第1ロッド部52の幅よりも小径である。第1円柱部54Aには、軸を中心とする雌めじ(図示所略)が形成されている。第2円柱部54Bは、一例として第1円柱部54Aと一体的に形成されており、第1円柱部54Aの径よりも大径である。第2円柱部54Bは、第2ハウジング34の貫通孔34Aに嵌め込まれて、ロッド50が軸方向に移動可能となるように第2ハウジング34に支持される部分である。そのため、第2円柱部54Bの長さは、貫通孔34Aの長さ(又は深さ)よりも長い(図2及び図4参照)。
【0047】
ねじ56は、図2及び図4に示されるように、その頭を第1ロッド部52を挟んで第2ロッド部54の反対側に配置させ、その首(雄ねじ部分)を第1ロッド部52の貫通孔(図示省略)を貫通させ、第1円柱部54Aの雌ねじ(図示省略)で締められている。そのため、第2ロッド部54は、第1ロッド部52に着脱可能に固定されている。また、図2及び図4に示されるように、第1ロッド部52、第1円柱部54A及び第2円柱部54Bはこれらの記載順で軸方向に沿って並んでおり、第1円柱部54Aは第1ロッド部52と第2円柱部54Bとを繋ぐ段差部分を構成している。そして、ロッド50は、ダイヤフラム20のリング部材24の貫通孔24Aに第1円柱部54Aを貫通させて、第1ロッド部52と第2ロッド部54の第2円柱部54Bとでリング部材24を軸方向の両側から挟んでリング部材24を把持している。
本実施形態では、ねじ56の雄ねじ部分が第1円柱部54Aの雌ねじ(図示省略)で締められると、第1ロッド部52と第2円柱部54Bとがリング部材24の軸方向の両側からリング部材24を圧接するようになっている。そのため、本実施形態では、ロッド50は、リング部材24(ダイヤフラム20)の中央に固定されるようになっている。
【0048】
〈ロッドと第1ハウジングとの関係〉
ここまでは本実施形態の各構成要素についてそれぞれ別々に説明してきたが、以下、ロッド50(特に第1ロッド部52)と第1ハウジング32の貫通孔32Aとの関係について説明する。
【0049】
前述のとおり、軸方向から見たロッド50の第1ロッド部52の形状は、一例として矩形(多角形、具体的には正多角形の一例である正方形)である(図3参照)。すなわち、軸方向から見た第1ロッド部52の形状は、真円以外の形状である。また、ダイヤフラム20の中心(軸)と、第1ロッド部52の中心О(軸)とは、軸方向で重なっている。ここで、図3に示されるように、中心Оから第1ロッド部52の外周における最長距離を距離D1、最短距離を距離D2とする。
これに対して、第1ハウジング32の貫通孔32Aは、図3に示されるように、軸方向から見ると、4つ角に加工上に必要な4個の逃がし孔32A1に相当する4つの曲面と、各逃がし孔32A1同士を繋ぐ4つの平面34A2に相当する4本の直線とで構成されている。すなわち、第1ハウジング32の貫通孔32Aは、複数(本実施形態では4つ)の逃がし孔32A1に相当する複数の曲面と、各逃がし孔32A1同士を繋ぐ複数(本実施形態では4つ)の平面32A2(第2平面の一例)とで構成されている。ここで、図3に示されるように、中心Оから貫通孔32Aの周面における4つの平面32A2における大部分、すなわち、貫通孔32Aの周面の大部分の面は、中心Оからの距離が距離D1よりも近くかつ距離D2よりも遠くなる位置(例えば、図3における距離D3の位置)で第1ロッド部52の周面52A(第1平面の一例。本実施形態の場合は周面52Aは4つの平面)に対向している。
そして、本実施形態の第1ハウジング32は、上記の関係(以下、「本実施形態のロッド50と貫通孔32Aとの第1の関係」という。)を満たしたうえで、第1ロッド部52を貫通孔32Aに嵌め込んで、ロッド50が軸方向に沿って移動可能となるようにロッド50を支持している。
【0050】
また、前述の第1の関係に換えて、以下のような別の関係を満たすとしてもよい。具体的には、図3に示されるように、軸方向から見ると、第1ロッド部52は、中心Оを中心とし距離D1未満で距離D2よりも大きい半径を有する仮想円VCに交差する交差面を有する。また、貫通孔32Aは、仮想円VCに交差しつつ第1ロッド部52の交差面に対向する対向面を含む。すなわち、別の条件とは、(1)第1ロッド部52が軸方向から見て真円以外の形状であって前述の交差面を有すること、及び、(2)貫通孔32Aは前述の交差面に対向する対向面を含むことである(以下、「本実施形態のロッド50と貫通孔32Aとの第2の関係」という。)。
【0051】
以上が、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10の機能及び構成についての説明である。
【0052】
<本実施形態のダイヤフラム型シリンダの動作>
次に、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10の動作について、図2及び図4を参照しながら説明する。
まず、外部装置(図示省略)を作動させ、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気をパルス制御すると、給気ポートとして機能する貫通孔OH2から空間R2に圧縮空気が断続的に注入される。
この場合において、図2の状態のダイヤフラム型シリンダ10の空間R2に貫通孔OH2から圧縮空気が注入されると、空間R2の内部の空圧が上昇して、ダイヤフラム20(本体22)が加圧される。加圧に伴って徐々に変形するダイヤフラム20によって、コイルばね40は圧縮される。その結果、ダイヤフラム型シリンダ10は、図2の状態から図4の状態となる。すなわち、ロッド50は、リング部材24が第2ハウジング34に接触する位置から第1ハウジング32に接触する位置まで移動する。なお、空間R2の内部に貫通孔OH2から圧縮空気が注入されることに伴いダイヤフラム20が変形して空間R2の容積が増加すると空間R1の容積はその増加分減少することになるのは、貫通孔OH1を介して空間R1の内部の空気が外部に排気されるためである。
次いで、外部装置のコンプレッサーからの圧縮空気の供給が停止されると、貫通孔OH2が大気開放され、貫通孔OH2を介して空間R2の内部の空気が外部に排出されるとともに貫通孔OH1を介して外部の空気が空間R1の内部に注入される。これに伴い、空間R2の内部の圧縮空気により加圧されていたダイヤフラム20(本体22)はその加圧から解放され、ダイヤフラム20によって圧縮されていたコイルばね40は徐々に自然長に近づいていく。その結果、ダイヤフラム型シリンダ10は、図4の状態から図2の状態となる。
以上のようにして、空間R1又は空間R2の圧力変化によるダイヤフラム20の変形に伴い、ロッド50は軸方向の定められた範囲を往復移動する。
以上が、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10の動作についての説明である。
【0053】
<本実施形態の効果>
以下、本実施形態の効果について説明する。
【0054】
〔第1の効果〕
前述のとおり、特許文献1に開示されているダイヤフラムシリンダ(以下、比較形態という。)は、シリンダ本体に固定されているガイドピンを主軸に形成されたガイド溝に係合させることで、主軸の軸周りの回転を抑制する(特許文献1の図1参照)。そのため、主軸が軸方向に往復移動する際に、ガイド溝を形成する面に接触するガイドピンの直線部分には、軸周りに回転しようとする主軸からの回転力が集中する。その結果、ガイドピンとガイド溝を形成する面とから摩耗紛が生成される。摩耗紛の量は、このダイヤフラムシリンダの使用期間の長さにより増加する。そして、主軸とガイド溝との隙間に一定以上の量の摩耗紛が存在することになると、主軸の軸方向の移動動作が不安定になり得る。
これに対して、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、ロッド50と第1ハウジング32の貫通孔32Aとが前述の第1の関係又は第2の関係を有している。そのため、ロッド50の軸方向への往復移動時にロッド50がその軸周りに回転しようとすると、第1ロッド部52の周面52Aは貫通孔32Aを構成する周面(4つの平面32A2)に接触する。すなわち、本実施形態では、前述の比較形態の場合のように、主軸の回転力をガイドピンの直線部分のみで受けるのではなく、ロッド50の回転力を貫通孔32Aの周面で受ける。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、比較形態の場合に比べて、ロッド50(第1ロッド部52)の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0055】
〔第2の効果〕
例えば、ロッド50の周面が曲面で、貫通孔32Aが曲面である構成、別言すると、曲面同士で面接触する構成(後述する図10の第6変形例を参照)であったとしても、この構成が前述の第1の関係又は第2の関係を有していれば、この構成は前述の第1の効果を奏する。
ここで、本実施形態の場合、図3に示されるように、(1)第1ロッド部52の周面52Aは複数の平面を有しており、(2)当該複数の平面の各平面に対向する貫通孔32Aの周面は複数の平面34A2のうちのいずれかの平面である。そのため、ロッド50の軸方向への往復移動時にロッド50がその軸周りに回転しようとすると、第1ロッド部52の周面52Aのいずれか1つの平面は当該いずれか一面が対向する貫通孔32Aのいずれかの1つの平面32A2に接触することになる。すなわち、ロッド50は、いずれかの1つの平面32A2とで互いの平面同士を面接触させながら、軸方向の定められた区間を往復移動する。その結果、本実施形態の場合、曲面同士で面接触する構成に比べて、ロッド50の往復移動時における貫通孔32Aの周面に対する接触面積が大きい。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、曲面同士で面接触する構成に比べて、ロッド50がスムーズに移動し易い。これに伴い、平面同士を面接触させる構成は、曲面同士で面接触する構成に比べて、ロッド50(第1ロッド部52)の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0056】
〔第3の効果〕
本実施形態のロッド50の第1ロッド部52は、図3に示されるように、軸方向から見て、正多角形(本実施形態の場合は正方形)であり、その周面52Aを構成する各平面(本実施形態の場合は4つの平面)は、それぞれ、軸方向から見て正方形状である貫通孔32Aの4つの平面32A2に対向している。すなわち、本実施形態の場合は、第1ロッド部52と、貫通孔32Aとは、4組の対向面同士の組み合わせを構成している。
ところで、本実施形態のロッド50は、前述の説明のとおり、ダイヤフラム20の中央に固定されている(図2参照)。また、ダイヤフラム20を構成する本体22は、変形可能なゴム製の部材、つまり、弾性部材である。ロッド50は、空間R1又は空間R2の圧力変化によるダイヤフラム20の変形に伴って軸方向の定められた範囲を往復移動時に(図2及び図3参照)、本体22の取り付け具合の影響を受けて軸周りに若干回転し得る。この場合、本体22は、例えば、ロッド50の往路移動時には一の方向に捩れ、復路移動時には往路移動時の捩れを無くそうとしてその逆方向に捩れる。これに伴い、第1ロッド部52の周面52Aを構成する各平面と、貫通孔32Aの各平面32A2とは、例えば、往路移動時に4組の対向面同士の組み合わせのうちの一組同士が接触し、復路移動時に往路移動時の一組の反対側の一組同士が接触する。そのため、往路と復路とで、同じ一組同士が接触し難い。特に、本実施形態の場合、軸方向から見た第1ロッド部52の形状は正多角形であることから、往路の一組同士の接触面積と、復路の一組の接触面積とは同等となる。すなわち、往路と復路とで、ロッド50が第1ハウジング32から受ける接触負荷(摩擦の大きさ)も同等となる。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、往復移動のバランスがよい。これに伴い、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、その製品寿命が長いといえる。
【0057】
〔第4の効果〕
また、本実施形態の場合、図3に示されるように、貫通孔32Aは、軸方向から見ると、4つ角に加工上に必要な4個の逃がし孔32A1と、各逃がし孔32A1同士を繋ぐ4つの平面32A2とで構成されている。また、貫通孔32Aに嵌め込まれる第1ロッド部52の形状は、軸方向から見ると、矩形(正方形)である。そして、第1ロッド部52の4つ角は、それぞれ各逃がし孔32A1の内側に位置している。そのため、ロッド50の軸方向への往復移動時にロッド50がその軸周りに若干(公差分程度)回転しても、第1ロッド部52の4つ角が貫通孔32Aを構成する周面に接触することがない。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、第1ロッド部52の4つ角が貫通孔32Aの周面に接触し得る場合に比べて、ロッド50(第1ロッド部52)の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0058】
〔第5の効果〕
本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、第1ハウジング32とダイヤフラム20との間に配置され、ダイヤフラム20を本体22の凹面側から加圧するコイルばね40を備えている。そして、本実施形態のロッド50は、コイルばね40の伸縮量に対応してハウジング30に対する相対位置を変化させる。
ここで、第1の効果の説明のとおり、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、比較形態の場合に比べて、ロッド50(第1ロッド部52)の周面に摩耗粉を生成させ難い。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、比較形態の場合に比べて、より長期的にコイルばねのばね力に対応して軸体をスムーズに往復移動させることができる。これに伴い、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、比較形態の場合に比べて、長期的に安定したロッド50の往復移動を実現することができる。
【0059】
〔第6の効果〕
また、第5の効果の説明のとおり、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、比較形態の場合に比べて、長期的に安定したロッド50の往復移動を実現することができる。これに伴い、本実施形態の場合、ダイヤフラム20の本体22は、長期的に安定した変形動作を繰り返すことができる。つまり、長期的にみると、弾性体である本体22に特定の癖が付き難い。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、比較形態の場合に比べて、より長期にダイヤフラム20(本体22)の変形に伴うロッド50の軸方向へのスムーズな移動を実現することができる。これに伴い、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、比較形態の場合に比べて、ダイヤフラム20(又は本体22)の交換までの期間を短くすることができる。
【0060】
〔第7の効果〕
本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、第1ロッド部52と第2ロッド部54の第2円柱部54Bとでダイヤフラム20のリング部材24を軸方向の両側から挟んでダイヤフラム20を把持している。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、簡単な構成で、ダイヤフラム20をロッド50から着脱させることができる。すなわち、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、メインテナンスが容易であるといえる。
【0061】
〔第8の効果〕
本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、ロッド50の一部である第1ロッド部52によりロッド50の軸周りの回転を防止又は抑制している。また、第1ロッド部52が嵌め込まれる第1ハウジング32の貫通孔32Aは、凹みではなく第1ハウジング32を貫通している。もし、貫通孔32Aに換えて凹みであれば、ロッド50のうちの軸方向の第1ロッド部52側の端部を対象物(図示省略)の作用部分(押す又は引っ張る等の作用を発揮する部分)として利用することができない。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10(及びダイヤフラム構造100)は、ロッド50の両端部分を、対象物(図示省略)を押す等の作用部分として利用することができる。
なお、本効果は、第1ハウジング32に形成されている孔が貫通孔32Aである場合の効果であり孔が凹みの場合を除外しているが、孔が凹みである形態であっても前述の第1~第7の効果を奏する。すなわち、第1ハウジング32に形成されている孔が貫通孔でなく凹みである変形例も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意されたい。
【0062】
以上が本実施形態の効果についての説明である。また、以上が本実施形態についての説明である。
【0063】
≪複数の変形例及び複数の応用例≫
以上のとおり、本発明の一例について前述の本実施形態を用いて説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、後述する複数の変形例及び複数の応用例も含まれる。さらに、本発明の技術的範囲には、前述の実施形態及び後述する複数の変形例の1つの形態に対し、(1)その構成要素の一部を他の形態の構成要素に置換する形態(図示省略)、(2)その構成要素に他の形態の構成要素の一部又は全部を追加する形態(図示省略)その他の形態も含まれる。すなわち、本発明の技術的範囲には、本明細書により開示した技術を組み合わせた形態も含まれる。この点については、後述する複数の応用例についても同様である。
【0064】
例えば、本実施形態では、ロッド50は、第1ロッド部52と、第2ロッド部54と、ねじ56とを有するとして説明した。そして、ねじ56の雄ねじ部分が第1円柱部54Aの雌ねじで締められると、第1ロッド部52と第2円柱部54Bとがリング部材24の軸方向の両側から圧接するように設定されていると説明した。しかしながら、第1ロッド52及び第2ロッド54の一方又は他方に雄ねじを設け、他方又は一方に雌ねじを形成して、これらを直接連結するようにしてもよい。この場合、ねじ56が不要になるため、ダイヤフラム型シリンダ10は軸方向の長さを短くすることでコンパクトにすることができる。
【0065】
また、本実施形態では、ロッド50は、第1ロッド部52と、第2ロッド部54と、ねじ56とを有するとして説明した。しかしながら、これらを一体物として構成してもよい。
【0066】
また、本実施形態では、ロッド50の第1ロッド部52は、軸方向から見て矩形であるとして説明した(図3参照)。しかしながら、図5に示される第1変形例のダイヤフラム型シリンダ10D(及びダイヤフラム構造100D)の第1ロッド部52Dのように、第1ロッド部52の4つ角部分を面取りした形状の複数(一例として4つの)の曲面52D1にしてもよい。
このような構成にすることで、例えロッド50又は貫通孔32Aの製造ばらつき又は公差ばらつきがあったとしても、絶対にロッド50の4つ角部分が貫通孔32Aに接触することがない。
なお、本変形例の第1ロッド部52Dは第1ロッド部52の4つ角部分を面取りして製造されるとしたが、例えば、円柱(図示省略)の周面に機械加工を施して複数(一例として4つ)の平面52D2(第1平面の一例)と複数(一例として4つ)の曲面52D1とを形成させてもよい。このようにすれば、円柱からロッド50を製造することができるため、ロッド52Dは高精度かつ低コストで提供することができる。
【0067】
また、例えば、図6に示される第2変形例のダイヤフラム型シリンダ10E(及びダイヤフラム構造100E)のように、前述の実施形態の第1ハウジング32に形成されている貫通孔32Aを貫通孔32Eにしてもよい。本変形例では、軸方向から見た貫通孔32Eは、前述の実施形態の4つの平面32A2を構成する4本の直線がそれぞれ2本の直線と当該2本の直線の間の円弧線であって第1ロッド部52に向かって凹んでいる円弧線との複合線32E1に変更されている。本変形例の場合も、ロッド50と第1ハウジング32の貫通孔32Aとが前述の実施形態で説明した第1の関係又は第2の関係を有している。
本変形例の効果は、前述の実施形態の場合と同様である。
【0068】
また、例えば、図7に示される第3変形例のダイヤフラム型シリンダ10F(及びダイヤフラム構造100F)のように、前述の実施形態の第1ロッド部52を第1ロッド部52Fにしてもよい。本変形例では、前述の実施形態において軸方向から見た第1ロッド部52の矩形の外周線(4つの平面32A2を構成する4本の直線)は、それぞれ各中央部分が軸側に凹んだ複合線に変更されている。本変形例の場合も、ロッド50と第1ハウジング32の貫通孔32Aとが前述の実施形態で説明した第1の関係又は第2の関係を有している。
本変形例の効果は、前述の実施形態の場合と同様である。
【0069】
また、例えば、図8に示される第4変形例のダイヤフラム型シリンダ10G(及びダイヤフラム構造100G)のように、前述の実施形態の第1ハウジング32に形成されている貫通孔32Aを貫通孔32Gにしてもよい。本変形例では、軸方向から見た貫通孔32Gは、前述の実施形態の4つの平面32A2を構成する4本の直線がそれぞれ2本の直線と当該2本の直線の間の円弧線であって第1ロッド部52に向かって突出している円弧線との複合線32G1に変更されている。さらに、前述の実施形態の第1ロッド部52は、第2変形例の第1ロッド部52F(図7参照)に変更されている。本変形例の場合も、ロッド50と第1ハウジング32の貫通孔32Aとが前述の実施形態で説明した第1の関係又は第2の関係を有している。
本変形例の効果は、前述の実施形態の場合と同様である。
【0070】
また、例えば、図9に示される第5変形例のダイヤフラム型シリンダ10H(及びダイヤフラム構造100H)のように、前述の実施形態の第1ハウジング32に形成されている貫通孔32Aを貫通孔32Hにしてもよい。軸方向から見た貫通孔32Hは4つ角が湾曲した矩形状であり、軸方向から見た第1ロッド部3252Hも4つ角が湾曲した矩形状である。本変形例の場合も、ロッド50と第1ハウジング32の貫通孔32Aとが前述の実施形態で説明した第1の関係又は第2の関係を有している。
なお、本変形の場合、第1ロッド部52Hの外周にも貫通孔32Hにも角(稜線部分)がない。そのため、ロッド50Hの軸方向への往復移動時にロッド50Hがその軸周りに若干(公差分程度)回転して第1ロッド部52Hが貫通孔32Hの周面に接触しても角と面とが接触することがあり得ない。
本変形例の効果は、前述の実施形態の場合と同様である。
【0071】
また、例えば、図10に示される第6変形例のダイヤフラム型シリンダ10I(及びダイヤフラム構造100I)のように、前述の実施形態の第1ハウジング32に形成されている貫通孔32Aを貫通孔32Iにしつつ、第1ロッド部52を第1ロッド部52Iにしてもよい。具体的には、軸方向から見た貫通孔32Iは、長尺な矩形状の貫通孔と、楕円とを重ね合わせた複合線で囲まれた部分となる。また、軸方向から見た第1ロッド部52Iは、貫通孔32Iの一対の湾曲面に沿って対向する楕円部分となる。本変形例の場合も、ロッド50と第1ハウジング32の貫通孔32Aとが前述の実施形態で説明した第1の関係又は第2の関係を有している。
なお、本変形例の場合、貫通孔32Iと第1ロッド部52Iとの間には、比較的大きな隙間が形成されることになるが、このように大きな隙間があっても空間R2の内部の空圧の制御にこの比較的大きな隙間があることは影響しない。むしろ、この比較的大きな隙間があることで、第1ハウジング32の貫通孔OH1をなくしてもよい。
本変形例の効果は、前述の実施形態の場合と同様である。
【0072】
また、本実施形態では、図3に示されるように、軸方向から見たロッド50の第1ロッド部52の形状は一例として正方形とした。しかしながら、軸方向から見た第1ロッド部52の形状と第1ハウジング32との関係が、前述の第1の関係又は第2の関係を有していれば、軸方向から見た第1ロッド部52の形状は正方形でなくてもよい。
例えば、図11(a)~図11(h)の例示のように、軸方向から見た第1ロッド部52a~52hの形状は、三角形(正三角形、二等辺三角形及び直角三角形)、五角形、六角形、七角形、八角形、十角形その他の多角形であってもよい。また、四角形の場合、本実施形態のように正方形でなく長方形(図示省略)であってもよい。すなわち、軸方向から見た第1ロッド部の形状は、図11(a)~図11(h)の例示のように、正多角形及び正多角形以外の多角形であってもよい。
これらの場合において、軸方向から見た第1ロッド部の形状は、前述の第1の関係又は第2の関係を前提として、以下の第1の条件、第2の条件及び第3の条件のいずれか1つの条件を満たす。すなわち、本発明の技術的範囲には、これらの条件を満たすすべての形態が含まれる。

(第1の条件)
第1の条件とは、以下のとおりである。
「ロッド50の軸方向から見て、ダイヤフラム20の中心Оと、ダイヤフラム20の中心から距離D2である最短点とを結ぶ直線(破線L1)に直交する直交線(一点鎖線L2)であって、前記最短点を含む直交線(一点鎖線L2)は、ロッド50の一部(第1ロッド部52)の外周における、前記軸方向から見て中心Оから距離D1である最長点を含むこと」
本条件から、ロッド50の軸方向への往復移動時にロッド50がその軸周りに回転しようとすると、第1ロッド部52の周面は第1ハウジング32の貫通孔を構成する周面に接触することになる。すなわち、本条件は、ロッド50の軸方向への往復移動時にロッド50の軸周りの回転を阻止又は抑制するための条件といえる。
なお、図11(a)~図11(h)の例示では、軸方向から見た第1ロッド部の形状が多角形であるとしたが、本条件は多角形でなくても満たす場合がある。そして、本発明の技術的範囲には、軸方向から見た第1ロッド部の形状が多角形以外の形状であってもよい。

(第2の条件)
第2の条件とは、以下のとおりである。
「(1)ロッド50の一部(第1ロッド部52)の外周は、少なくとも一面以上の平面PL(第1平面)を含み、(2)ダイヤフラム20の中心から距離D2である最短点は、前記少なくとも一面以上の平面PLのいずれかの面上に存在し、かつ、(3)第1ハウジング32の貫通孔の周面の一部の面は、前記少なくとも一面以上の平面PLに対向する、少なくとも一面以上の平面(第2平面(図示省略))であること」
本条件から、ロッド50が軸方向への往復移動時に、第1ロッド部52と第1ハウジング32の貫通孔とは、互いの平面同士を接触させることになる。すなわち、本条件は、ロッド50の軸方向への往復移動時にロッド50の軸周りの回転を阻止又は抑制しつつ、ロッド50の往復移動時の接触負荷を低減させる(スムーズな移動を実現させる)条件といえる。

(第3の条件)
第3の条件とは、第1の条件及び第2の条件を満たすことである。
【0073】
また、図9の第5変形例及び図10の第6変形例について補足すると、以下のことがいえる。
例えば、図12(a)及び図12(b)に示されるように、図9の第5変形例の第1ロッド部52H及び図10の第6変形例の第1ロッド部50Iは、前述の第1の関係又は第2の関係を前提として、以下の条件を満たす。

(第4の条件)
「ロッド50の軸方向から見て、(1)ダイヤフラム20の中心Оと、中心Оから距離D2である最短点とを結ぶ直線SL1に直交する直交線OL1(第1の直交線の一例)であって、前記最短点を含む直交線OL1と、(2)中心Оと、中心Оから距離D1である最長点とを結ぶ直線SL2に直交する直交線OL2(第2の直交線の一例)であって、前記最長点を含む直交線OL2との交点IP1は、前記軸方向から見たロッド50の一部(第1ロッド部52)の外側に存在すること」
本条件からは、前述の図9の第5変形例の効果を奏する条件といえる。

なお、図9の第5変形例の第1ロッド部52Hは、更に下記の条件を満たす。

(第5の条件)
「ロッド50の軸方向から見て、(1)ダイヤフラム20の中心Оと、中心Оから距離D2である最短点とを結ぶ直線SL1に直交する直交線OL1であって、前記最短点を含む直交線OL1と、(2)中心Оと、中心Оから距離D1である最長点とを結ぶ直線SL2との交点IP2は、前記軸方向から見たロッド50の一部(第1ロッド部52)の外側に存在すること」
本条件からは、前述の図9の第5変形例の効果を奏する条件といえる。
【0074】
また、図10及び図12(b)の第6変形例では、軸方向から見た第1ロッド部52Iは楕円であり、軸方向から見た第1ハウジング32に形成されている貫通孔32Iは、長尺な矩形状の貫通孔と、楕円とを重ね合わせた複合線で囲まれた部分であるとして説明した。
しかしながら、図13(a)の第7変形例のダイヤフラム型シリンダ10J(及びダイヤフラム構造100J)のように、第6変形例を更に変形して、貫通孔32Iを、軸方向から見て第1ロッド52Iの場合と同じ2つの焦点FPで描かれる楕円となる貫通孔32Jとしてもよい。
また、図13(b)の第8変形例のように、軸方向から見た第1ロッド部52Iの一部が楕円に相当する曲面であり、残りが楕円には相当しない面52I1としてもよい。また、図13(c)の第9変形例のように、軸方向から見た第1ハウジング32Jの一部が楕円に相当する曲面であり、残りが楕円には相当しない面32J1としてもよい。さらに、図示は省略するが、第8変形例と第9変形例とを組み合わせた形態であってもよい。
第8~第9変形例は、前述の第4の条件を満たす。
なお、第6変形例、第8~第9変形例は、以下の発明に包含される形態といえる。

軸体(一例として第1ロッド52I等)の軸方向から見た前記軸体の少なくとも一部は、前記軸体の内側にある2つの焦点FPで描かれる楕円の一部であり、
孔(一例として第1ハウジング32I等)の周面の少なくとも一部の面は、前記軸体の一部における前記楕円の一部に相当する曲面に対向する他の曲面であって、前記軸方向から見て前記2つの焦点で描かれる他の楕円に相当する他の曲面である。
ダイヤフラム。
【0075】
また、前述の実施形態及び複数の変形例の説明では、ダイヤフラム構造100等は、ダイヤフラム型シリンダ10等の一部を構成するとして説明した。しかしながら、ダイヤフラム構造100等は、その基本構成を有していれば、例えば、ダイヤフラム型シリンダ10以外の装置の一部を構成するようにしてもよい。例えば、ダイヤフラム構造100等は、図14の応用例のダイヤフラム型ポンプ10Kの一部を構成してもよい。
また、図示は省略するが、ダイヤフラム構造100等は、ロッド50を共有する一対のダイヤフラム型ポンプ10Kを備えるポンプの一部を構成するようにしてもよい。
さらに、図示は省略するが、ダイヤフラム構造100等は、スピーカー、動力源その他の装置の一部を構成してもよい。
【0076】
以上が、本実施形態の複数の変形例及び複数の応用例についての説明である。
【符号の説明】
【0077】
10 ダイヤフラム型シリンダ
100 ダイヤフラム構造
20 ダイヤフラム
22 本体
22A 貫通孔
22B 円盤状部分
22C 外周縁部分
22D 突出部
23 貫通部材
24 リング部材
24A 貫通孔(第2の貫通孔の他の一例)
25 筒部材
25A 貫通孔
30 ハウジング
32 第1ハウジング(支持体の一例)
32A 貫通孔(孔の一例)
32A2 平面(第2平面の一例)
32B 凹み
34C 周溝
34 第2ハウジング(筐体の一例)
34A 貫通孔
40 コイルばね
45 円盤状板
45A 円盤
45B 周壁
50 ロッド(軸体の一例)
52 第1ロッド部
52A 周面(第1平面の一例)
52D 第1ロッド部
52D1 曲面
52D2 平面(第1平面の一例)
54 第2ロッド部
54A 第1円柱部
54B 第2円柱部
56 ねじ
CL 軸
D1 最長距離
D2 最短距離
OH1 貫通孔
OH2 貫通孔
OL1 直交線(第1の直交線の一例)
OL2 直交線(第2の直交線の一例)
OR Oリング
R1 空間(第2の空間)
R2 空間(第2の空間)
VC 仮想円

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14