(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139889
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ダイヤフラム構造及びダイヤフラム型シリンダ
(51)【国際特許分類】
F15B 15/10 20060101AFI20230927BHJP
F16J 10/00 20060101ALI20230927BHJP
F16J 15/18 20060101ALI20230927BHJP
F16J 3/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
F15B15/10 F
F16J10/00 Z
F16J15/18 B
F16J3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045643
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005175
【氏名又は名称】藤倉コンポジット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177231
【弁理士】
【氏名又は名称】鴨志田 伸一
(72)【発明者】
【氏名】落部 奨之
【テーマコード(参考)】
3H081
3J043
3J044
3J045
【Fターム(参考)】
3H081AA01
3H081AA15
3H081BB03
3J043AA12
3J043BA06
3J043CA01
3J043DA03
3J043HA05
3J044AA03
3J044AA20
3J044BA06
3J044DA04
3J044DA06
3J044DA10
3J045AA20
3J045BA02
3J045CA10
3J045CA11
3J045CB01
3J045EA10
(57)【要約】
【課題】本発明は、軸体の周面と支持体の孔の周面とにそれぞれ溝を形成して両溝に亘ってピンを嵌め込むことで軸体の軸方向の回転に伴うダイヤフラムの回転を抑制するダイヤフラム構造に比べて、簡単な構成で軸体の軸方向の回転に伴うダイヤフラムの回転を抑制することができるダイヤフラム構造の提供を目的とする。
【解決手段】本発明のダイヤフラム構造100は、ダイヤフラム20と、ダイヤフラム20を貫通し、ダイヤフラム20に対して軸方向及び周方向に沿って移動可能な軸体50であって、ダイヤフラム20の凸面側からダイヤフラム20に接触する接触面54Xが形成されている軸体50と、ダイヤフラム20の周縁が固定され、軸体20の軸方向に沿う孔32Aが形成され、孔32Aの内側に軸体50の一部52を嵌め込んで、軸体50が軸方向に沿って移動可能となるように軸体50を支持する支持体32と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に第1の貫通孔が形成されているダイヤフラムと、
前記第1の貫通孔を通って前記ダイヤフラムを貫通し、前記ダイヤフラムに対して軸方向及び周方向に沿って移動可能な軸体であって、少なくとも軸方向における前記ダイヤフラムの凸面側から前記ダイヤフラムに接触する接触面が形成されている軸体と、
前記ダイヤフラムの周縁が固定され、前記軸体の軸方向に沿う孔が形成され、前記孔の内側に前記軸体の一部を嵌め込んで、前記軸体が前記軸方向に沿って移動可能となるように前記軸体を支持する支持体と、
を備えるダイヤフラム構造。
【請求項2】
前記ダイヤフラムは、中央に前記第1の貫通孔が形成されている弾性体と、前記弾性体における前記第1の貫通孔が形成されている部分に固定され、前記弾性体よりも摩擦係数が小さいリング部材とを有する、
請求項1に記載のダイヤフラム構造。
【請求項3】
前記軸体における、前記ダイヤフラムを挟んで前記接触面の反対側の部分には、前記ダイヤフラムの凹面側から前記ダイヤフラムに接触する他の接触面が形成されている、
請求項1又は2に記載のダイヤフラム構造。
【請求項4】
前記支持体と前記ダイヤフラムとの間に配置され、前記ダイヤフラムを前記ダイヤフラムの凹面側から加圧するコイルばね、
を備える請求項1~3のいずれか一項に記載のダイヤフラム構造。
【請求項5】
さらに、前記ダイヤフラムを挟んで前記支持体の反対側に配置され、前記軸方向から見て前記ダイヤフラムの中央に重なる部分に第2の貫通孔が形成され、前記支持体とで前記ダイヤフラムの周縁を把持しつつ前記ダイヤフラムとで第1の空間を形成する筐体、
を備え、
前記ダイヤフラムは、中央に前記第1の貫通孔が形成されている本体と、前記本体における前記第1の貫通孔が形成されている部分に固定されている貫通部材とを有し、
前記貫通部材は、前記本体における前記第1の貫通孔が形成されている部分に固定されているリング部材と、前記リング部材から前記軸方向に突出している筒部材とを含み、
前記筒部材は、その外周面を前記筐体における第2の貫通孔を形成する周面に接触させつつその内周面に前記軸体の外周面を接触させて、前記軸体を支持する、
請求項1~4のいずれか一項に記載のダイヤフラム構造。
【請求項6】
さらに、Oリングを備え、
前記筐体における前記第2の貫通孔を形成する周面には、周溝が形成されており、
前記Oリングは、前記周溝に嵌め込まれ、前記軸体又は前記筒部材と前記筐体とに挟まれながら圧縮変形されて、前記軸方向における前記軸体又は前記筒部材と前記筐体との隙間を遮断する、
請求項5に記載のダイヤフラム構造。
【請求項7】
前記軸体と前記支持体とは、前記軸体がその周方向に回転すると前記軸体が前記支持体に接触して前記軸体の回転を停止させるように構成されている、
請求項1~6のいずれか一項に記載のダイヤフラム構造。
【請求項8】
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、前記ダイヤフラムの中心から外周までの最長距離が距離D1、最短距離が距離D2である真円以外の形状であり、
前記孔の周面の一部の面は、前記中心からの距離が距離D1よりも近くかつ距離D2よりも遠くなる位置で前記軸体の一部の面に対向している、
請求項1~7のいずれか一項に記載のダイヤフラム構造。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載のダイヤフラム構造と、
前記ダイヤフラムを挟んで前記支持体の反対側に配置され、前記軸方向から見て前記ダイヤフラムの中央に重なる部分に第2の貫通孔が形成され、前記支持体とで前記ダイヤフラムの周縁を把持しつつ前記ダイヤフラムとで第1の空間を形成する筐体と、
を備え、
前記支持体は、前記ダイヤフラムとで第2の空間を形成し、
前記軸体は、前記第2の貫通孔を通って前記筐体を貫通しており、前記第1の空間又は前記の第2の空間の内部の圧力変化による前記ダイヤフラムの変形に伴い前記軸方向に移動する、
ダイヤフラム型シリンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラム構造及びダイヤフラム型シリンダに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、その
図1、請求項1等に示されるように、(1)ばね室17と加圧室19とが形成され、かつばね室17と加圧室19とを区画するダイヤフラム16が装着されたシリンダ本体13と、(2)ダイヤフラム16に固定さればね室17を貫通してシリンダ本体13の外部に突出する主軸22と、(3)シリンダ本体13に固定され、主軸22に形成されたガイド溝35に係合し主軸22の直線移動を案内するガイドピン36と、(4)主軸22の外側に装着され、主軸22に求心力を加えつつ後退方向のばね力を加える円錐形のコイルばね27と、(5)主軸22に取り付けられ、加圧室19に供給された流体による主軸22の前進限位置を規制する前進側のストッパ32と、を備えるダイヤフラムシリンダが開示されている。そして、特許文献1によれば、このダイヤフラムシリンダは、ダイヤフラムの撓みや傾斜を防止することによってダイヤフラムの耐久性を向上させることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述のとおり、特許文献1に開示されているダイヤフラムシリンダは、主軸22がダイヤフラム16に固定されていることを前提とした構造である。このダイヤフラムシリンダは、主軸22の軸周りの動きに伴いダイヤフラム16が動かないようにするために、シリンダ本体13にガイドピン36を固定し主軸22にガイド溝35を形成したうえでガイドピン36をガイド溝35に係合させて、主軸22がその軸周りに回転しないようにしてこれに伴うダイヤフラム16の回転も抑制している。この技術を実施するためには、少なくとも、ガイドピン36を構成要素とし、主軸22にはガイド溝35の加工を施す必要がある。そのため、このダイヤフラムシリンダは、その構成が複雑である。
【0005】
また、このダイヤフラムシリンダでは、主軸22が軸方向に往復移動する際に、ガイドピン36がガイド溝35を形成する面に押し付けられることになる。つまり、主軸22の往復移動の際に、ガイド溝35を形成する面に接触するガイドピン36の直線部分に軸周りに回転しようとする主軸22からの回転力が集中する。その結果、ガイドピン36とガイド溝35を形成する面とから摩耗紛が生成されて、主軸22とガイド溝25との隙間に摩耗紛が付着する虞がある。この隙間に存在する摩耗紛の量は、このダイヤフラムシリンダの使用期間の長さにより増加する。そして、主軸22とガイド溝25との隙間に一定以上の量の摩耗紛が付着すると、主軸22の軸方向の移動動作が不安定になる虞がある。
【0006】
本発明は、軸体の周面と支持体の孔の周面とにそれぞれ溝を形成して両溝に亘ってピンを嵌め込むことで軸体の軸方向の回転に伴うダイヤフラムの回転を抑制するダイヤフラム構造に比べて、簡単な構成で軸体の軸方向の回転に伴うダイヤフラムの回転を抑制することができるダイヤフラム構造の提供を目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1態様のダイヤフラム構造は、
中央に第1の貫通孔が形成されているダイヤフラムと、
前記第1の貫通孔を通って前記ダイヤフラムを貫通し、前記ダイヤフラムに対して軸方向及び周方向に沿って移動可能な軸体であって、少なくとも軸方向における前記ダイヤフラムの凸面側から前記ダイヤフラムに接触する接触面が形成されている軸体と、
前記ダイヤフラムの周縁が固定され、前記軸体の軸方向に沿う孔が形成され、前記孔の内側に前記軸体の一部を嵌め込んで、前記軸体が前記軸方向に沿って移動可能となるように前記軸体を支持する支持体と、
を備える。
【0008】
第2態様のダイヤフラム構造は、
第1態様のダイヤフラム構造であって、
前記ダイヤフラムは、中央に前記第1の貫通孔が形成されている弾性体と、前記弾性体における前記第1の貫通孔が形成されている部分に固定され、前記弾性体よりも摩擦係数が小さいリング部材とを有する。
【0009】
第3態様のダイヤフラム構造は、
第1態様又は第2態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸体における、前記ダイヤフラムを挟んで前記接触面の反対側の部分には、前記ダイヤフラムの凹面側から前記ダイヤフラムに接触する他の接触面が形成されている。
【0010】
第4態様のダイヤフラム構造は、
第1態様~第3態様のいずれか一態様のダイヤフラム構造であって、
前記支持体と前記ダイヤフラムとの間に配置され、前記ダイヤフラムを前記ダイヤフラムの凹面側から加圧するコイルばね、
を備える。
【0011】
第5態様のダイヤフラム構造は、
第1態様~第4態様のいずれか一態様のダイヤフラム構造であって、
さらに、前記ダイヤフラムを挟んで前記支持体の反対側に配置され、前記軸方向から見て前記ダイヤフラムの中央に重なる部分に第2の貫通孔が形成され、前記支持体とで前記ダイヤフラムの周縁を把持しつつ前記ダイヤフラムとで第1の空間を形成する筐体、
を備え、
前記ダイヤフラムは、中央に前記第1の貫通孔が形成されている本体と、前記本体における前記第1の貫通孔が形成されている部分に固定されている貫通部材とを有し、
前記貫通部材は、前記本体における前記第1の貫通孔が形成されている部分に固定されているリング部材と、前記リング部材から前記軸方向に突出している筒部材とを含み、
前記筒部材は、その外周面を前記筐体における第2の貫通孔を形成する周面に接触させつつその内周面に前記軸体の外周面を接触させて、前記軸体を支持する。
【0012】
第6態様のダイヤフラム構造は、
第5態様のダイヤフラム構造であって、
さらに、Oリングを備え、
前記筐体における前記第2の貫通孔を形成する周面には、周溝が形成されており、
前記Oリングは、前記周溝に嵌め込まれ、前記軸体又は前記筒部材と前記筐体とに挟まれながら圧縮変形されて、前記軸方向における前記軸体又は前記筒部材と前記筐体との隙間を遮断する。
【0013】
第7態様のダイヤフラム構造は、
第1態様~第6態様のいずれか一態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸体と前記支持体とは、前記軸体がその周方向に回転すると前記軸体が前記支持体に接触して前記軸体の回転を停止させるように構成されている。
【0014】
第8態様のダイヤフラム構造は、
第1態様~第7態様のいずれか一態様のダイヤフラム構造であって、
前記軸方向から見た前記軸体の一部の形状は、前記ダイヤフラムの中心から外周までの最長距離が距離D1、最短距離が距離D2である真円以外の形状であり、
前記孔の周面の一部の面は、前記中心からの距離が距離D1よりも近くかつ距離D2よりも遠くなる位置で前記軸体の一部の面に対向している。
【0015】
一態様のダイヤフラム型シリンダは、
第1態様~第8態様のいずれか一態様のダイヤフラム構造と、
前記ダイヤフラムを挟んで前記支持体の反対側に配置され、前記軸方向から見て前記ダイヤフラムの中央に重なる部分に第2の貫通孔が形成され、前記支持体とで前記ダイヤフラムの周縁を把持しつつ前記ダイヤフラムとで第1の空間を形成する筐体と、
を備え、
前記支持体は、前記ダイヤフラムとで第2の空間を形成し、
前記軸体は、前記第2の貫通孔を通って前記筐体を貫通しており、前記第1の空間又は前記の第2の空間の内部の圧力変化による前記ダイヤフラムの変形に伴い前記軸方向に移動する。
【発明の効果】
【0016】
第1態様のダイヤフラム構造は、軸体の周面と支持体の孔の周面とにそれぞれ溝を形成して両溝に亘ってピンを嵌め込むことで軸体の軸方向の回転に伴うダイヤフラムの回転を抑制するダイヤフラム構造(以下、比較構造という。)に比べて、簡単な構成で軸体の軸方向の回転に伴うダイヤフラムの回転を抑制することができる。
【0017】
第2態様のダイヤフラム構造は、ダイヤフラムが中央に前記第1の貫通孔が形成されている弾性体のみで構成されている場合に比べて、軸体の軸方向の回転に伴うダイヤフラムの回転への影響が小さい。
【0018】
第3態様のダイヤフラム構造は、軸体がダイヤフラムに対して軸方向及び周方向に沿って移動可能に設定されているにも関わらず、簡単な構成で、ダイヤフラムの変形に伴い軸体を軸方向に移動させることができる。
【0019】
第4態様のダイヤフラム構造は、比較構造に比べて、より長期的にコイルばねのばね力に対応して軸体をスムーズに往復移動させることができる。
【0020】
第5態様のダイヤフラム構造は、貫通部材が筒部材を含んでいない場合に比べて、第2の空間の圧縮空気をリング部材の内周面と軸体の外周面との間から第1の空間にリークさせ難い。または、第5態様のダイヤフラム構造は、第2の空間の圧縮空気をリング部材の内周面と軸体との間から第1の空間にリークさせない。
【0021】
第6態様のダイヤフラム構造は、Oリングを備えていない場合に比べて、第2の空間の圧縮空気を第2の貫通孔から外部にリークさせ難い。
【0022】
第7態様及び第8態様のダイヤフラム構造は、比較構造に比べて、軸体から摩耗紛が発生し難い。これに伴い、第7態様及び第8態様のダイヤフラム構造は、比較構造に比べて、より長期にダイヤフラムの変形に伴う軸体の軸方向へのスムーズな移動を実現することができる。
【0023】
一態様のダイヤフラム型シリンダは、比較構造のダイヤフラム構造を備えるダイヤフラム型シリンダに比べて、簡単な構成で軸体の軸方向の回転に伴うダイヤフラムの回転を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施の形態(以下、本実施形態という。)のダイヤフラム型シリンダの斜視図である。
【
図2】本実施形態のダイヤフラム型シリンダの図であって、
図1のII-II切断線で切断された縦断面図の部分拡大図である。
【
図3】
図2のIII-III切断線で切断された本実施形態のダイヤフラム型シリンダの横断面図である。
【
図4】
図2の場合と異なる形状にダイヤフラムが変形した場合における、本実施形態のダイヤフラム型シリンダの縦断面図である。
【
図5】第2実施形態のダイヤフラム型シリンダにおける、
図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
【
図6】第1変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、
図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
【
図7】第2変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、
図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
【
図8】第3変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、
図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
【
図9】第4変形例のダイヤフラム型シリンダにおける、
図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
【
図10】応用例のダイヤフラム型ポンプの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
≪概要≫
以下、第1実施形態及び第2実施形態、各実施形態の複数の変形例並びに複数の応用例について説明する。まず、第1実施形態について説明する。次いで、第2実施形態について説明する。次いで、複数の変形例及び複数の応用例について説明する。本明細書では、異なる実施形態等で参照する各図面において、同じような機能を有する構成要素に対して同じ符号又は同じような符号を付して説明がなされていることに留意されたい。
【0026】
≪第1実施形態≫
まず、第1実施形態の機能及び構成、動作並びに効果について、図面を参照しつつこれらの記載順で説明する。
【0027】
<第1実施形態のダイヤフラム型シリンダの機能及び構成>
図1は、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10の斜視図である。
図2は、ダイヤフラム型シリンダ10の図であって、
図1のII-II切断線で切断された縦断面図の部分拡大図である。
図3は、
図2のIII-III切断線で切断されたダイヤフラム型シリンダ10の横断面図である。
図4は、
図2の場合と異なる形状にダイヤフラム20が変形した場合における、ダイヤフラム型シリンダ10の縦断面図である。
【0028】
ダイヤフラム型シリンダ10は、
図2に示されるように、ダイヤフラム20と、ハウジング30と、OリングORと、コイルばね40と、円盤状板45と、ロッド50(軸体の一例)とを備えている。ダイヤフラム型シリンダ10は、外部装置(一例として制御装置(図示省略)及び制御装置に制御されるコンプレッサー(図示省略))から注入される空気によってダイヤフラム20を変形させて、ロッド50をハウジング30に対してその軸方向における定められた範囲で往復移動させる機能を有する。なお、本実施形態では、少なくとも、ダイヤフラム20と、ロッド50と、後述する第1ハウジング32における貫通孔32Aが形成されている部分とを備える構造を、ダイヤフラム構造100という。
【0029】
〔ダイヤフラム〕
ダイヤフラム20は、変形することでロッド50をその軸方向(図中の符号CLが付された軸に沿う方向)に沿って移動させる機能を有する。
ダイヤフラム20は、
図2に示されるように、一例として、本体22(円盤体の一例)と、中央筒23とを有する。
本体22は、変形可能なゴム製の矩形状の部材であって、円盤状部分22Bと、外周縁部分22C(周縁の一例)と、突出部22Dとを含んで構成されている。円盤状部分22Bの中央には、貫通孔22A(第1の貫通孔の一例)が形成されている。突出部22Dは、円盤状部分22Bと外周縁部分22Cとを全周に亘って繋いでおり、その厚み方向の一方側に向けて突出している。なお、
図4に示される本体22の形状はほぼ自然状態、すなわちほぼ変形していない状態での形状であり、
図2に示される本体22の形状は弾性変形して引張応力がかかっている状態での形状である。また、前述のとおり、本体22は一例として矩形状であるが、この理由はハウジング30の形状による。そのため、本体22を把持するハウジング30の形状、構造等により、本体22の形状を円状その他の形状としてもよい点に留意されたい。
中央筒23は、リング部材24と、筒部材25とを有する。ここで、中央筒23は貫通部材の一例であり、リング部材24は貫通部材の他の一例である。
リング部材24は、中央に貫通孔24Aが形成されているリング状の部材であり、本体22の中央の部分、すなわち、貫通孔22Aが形成されている部分に固定されている。本実施形態では、
図2及び
図4に示されるように、一例として、リング部材24の外周にはその周方向全周に亘る溝24Bが形成されており、溝24Bは貫通孔22Aが形成されている部分に嵌め込まれている。リング部材24は、一例として金属製である。そのため、リング部材24の摩擦係数は、ゴム製の本体22の摩擦係数より小さい。
リング部材24の外径は、
図2及び
図4に示されるように、後述する第1ロッド部52の径及び後述する第2円柱部54Bの径よりも大きく設定されている。また、リング部材24の内径は、リング部材24を貫通するロッド50の第1円柱部54Aの径よりも大きく設定されている。そのため、ダイヤフラム20は、リング部材24を介して貫通孔22A及び貫通孔24Aを貫通しているロッド50の第1円柱部54Aに固定されていない。別言すると、ロッド50は、ダイヤフラム20の中央に固定されていない。ただし、ロッド50の軸と、ダイヤフラム20の軸とは、同じである。各図における符号CLは、ロッド50の軸を示している。以下の説明において、「軸方向」とは、ロッド50の軸に沿った方向を意味する点に留意されたい。
筒部材25は、
図2及び
図4に示されるように、リング部材24から軸方向に突出している筒である。具体的には、筒部材25は、軸CLを中心に軸方向に沿って配置され、軸方向における(第1ロッド部52に対して)第2ロッド部54側に突出している。また、筒部材25の貫通孔25Aは、リング部材24の貫通孔24Aよりも大径となっている。そのため、筒部材25は、リング部材24とで段差を形成している。そして、筒部材25は、
図2及び
図4に示されるように、その外周面を第2ハウジング34における第2の貫通孔34Aを形成する周面に接触させつつその内周面にロッド50(具体的には、後述する第2円柱部54B)の外周面を接触させて、ロッド50を支持している。
【0030】
〔ハウジング及びOリング〕
ハウジング30は、その内部にダイヤフラム20及びロッド50の一部を収容する機能と、ダイヤフラム20を変形させるための加圧空間を形成する機能と、ロッド50が軸方向に沿って移動可能となるようにロッド50を支持する機能とを有する。
ハウジング30は、
図1に示されるように、軸方向から見て矩形状で、その厚み(又は高さ)が軸方向から見た一辺の長さよりも薄い(又は短い)立体である。ハウジング30は、
図1、
図2及び
図4に示されるように、第1ハウジング32(支持体の一例)と、第2ハウジング34(筐体の一例)とを有する。第1ハウジング32は軸方向の一端側に配置され、第2ハウジング34は軸方向の他端側で第1ハウジング32に対向して配置されている。
【0031】
(第1ハウジング)
第1ハウジング32には、その軸方向から見た中心に、貫通孔32A(孔の一例)が形成されている(
図1,
図2及び
図4参照)。また、第1ハウジング32における第2ハウジング34に向く側の面には、貫通孔32Aを囲むように円状の凹み32Bが形成されている。さらに、第1ハウジング32には、その外周面から凹み32Bに亘って貫通する貫通孔OH1が形成されている。貫通孔32Aの内側には、ロッド50の一部が嵌め込まれている。第1ハウジング32における凹み32Bの外側の部分にはダイヤフラム20(本体22)の外周縁部分22Cが配置されており、第1ハウジング32は第2ハウジング34とで外周縁部分22Cを把持することで、外周縁部分22Cを固定している。
以上のような構成により、第1ハウジング32は、ダイヤフラム20及びロッド50とで囲まれた空間R1(第2の空間の一例)を形成している
なお、前述のとおり、貫通孔32Aの内側にはロッド50の一部が嵌め込まれている。貫通孔32Aは、
図3に示されるように、軸方向から見て真円である。第1ハウジング32における貫通孔32Aは、軸方向に往復移動するロッド50のすべり軸受として機能する。
【0032】
(第2ハウジング及びOリング)
第2ハウジング34は、
図1、
図2及び
図4に示されるように、ダイヤフラム20を挟んで第1ハウジング32の反対側に配置されている。第2ハウジング34には、その軸方向から見た中心かつ軸方向から見てダイヤフラム20の中央に重なる部分に、貫通孔34A(第2の貫通孔の一例)が形成されている。さらに、第2ハウジング34における貫通孔34Aを形成する周面には、周方向全周に亘る無端状の周溝34Cが形成されている。周溝34Cには、OリングORが嵌め込まれている。そして、OリングORは、筒部材25と第2ハウジング34とに挟まれながら圧縮変形されて、軸方向における筒部材25と第2ハウジング34との隙間を遮断する機能を有する。第2ハウジング34における第1ハウジング32に向く側の面には、貫通孔34Aを囲むように円状の凹み34Bが形成されている。さらに、第2ハウジング34には、その外周面から凹み34Bに亘って貫通する貫通孔OH2が形成されている。貫通孔34Aの内側には、中央筒23の筒部材25と、筒部材25の内側に配置されているロッド50の一部とが嵌め込まれている。第2ハウジング34における凹み34Bの外側の部分にはダイヤフラム20(本体22)の外周縁部分22Cが配置されており、第2ハウジング34は第1ハウジング32とで外周縁部分22Cを固定している。
以上のような構成により、第2ハウジング34は、ダイヤフラム20及びロッド50とで囲まれた空間R2(第1の空間の一例)を形成している
なお、第2ハウジング34における貫通孔34Aは、軸方向に往復移動するロッド50のすべり軸受として機能する。また、貫通孔OH2には前述の外部装置に接続されるようになっており、貫通孔OH2は、外部装置から供給される圧縮空気を空間R2に供給するための給気ポートとして機能する。
【0033】
〔コイルばね及び円盤状板〕
コイルばね40は、
図2及び
図4に示されるように、軸方向に沿って空間R1に配置され、すなわち、第1ハウジング32とダイヤフラム20との間に配置され、ダイヤフラム20を本体22の凹面側から加圧する機能を有する。ここで、
図2に示されるコイルばね40は自然長よりも若干圧縮されている状態での形状であり、
図4に示されるコイルばね40の形状は
図2に示されるコイルばね40よりも圧縮されている状態での形状である。
また、円盤状板45は、厚み方向の中央が貫通する円盤45Aと、その周縁にリング状の周壁45Bとを有する。前述では、コイルばね40は第1ハウジング32とダイヤフラム20との間に配置され、ダイヤフラム20を本体22の凹面側から加圧することを説明したが、本実施形態では、コイルばね40が本体22に接触してその機能を発揮するのではなく、コイルばね40は、本体22とで円盤状板45を挟んで、別言すると円盤状板45を介して、その機能を発揮するように構成されている。
【0034】
〔ロッド〕
ロッド50は、ダイヤフラム20の変形に伴い軸方向に移動する機能を有する(
図2及び
図4参照)。ロッド50は、
図2及び
図4に示されるように、第1ロッド部52と、第2ロッド部54と、ねじ56とを有する。第1ロッド部52と第2ロッド部54とは軸方向に沿って並べられており、一例としてねじ56により繋げられている。
【0035】
第1ロッド部52は、
図2及び
図4に示されるように、ロッド50における、第1ハウジング32に支持される部分である。別の見方をすると、第1ロッド部52は、第1ハウジング32の貫通孔32Aに嵌め込まれて、ロッド50が軸方向に移動可能となるように第1ハウジング32に支持される部分である。そのため、第1ロッド部52の長さは、貫通孔32Aの長さ(又は深さ)よりも長く設定されている(
図2及び
図4参照)。
本実施形態では、第1ロッド部52は、
図3に示されるように、軸方向から見て一例として真円である。第1ロッド部52は、軸方向の一端から他端に亘る各位置での断面が同じである(
図2及び
図3参照)。また、第1ロッド部52には、軸を中心とする貫通孔(図示省略)が形成されている。
【0036】
第2ロッド部54は、第1円柱部54Aと、第2円柱部54Bとを有する。第1円柱部54Aは、第1ロッド部52の幅よりも小径である。第1円柱部54Aには、軸を中心とする雌めじ(図示所略)が形成されている。第2円柱部54Bは、一例として第1円柱部54Aと一体的に形成されており、第1円柱部54Aの径よりも大径である。第2円柱部54Bは、第2ハウジング34の貫通孔34Aに嵌め込まれて、ロッド50が軸方向に移動可能となるように第2ハウジング34に支持される部分である。そのため、第2円柱部54Bの長さは、貫通孔34Aの長さ(又は深さ)よりも長い(
図2及び
図4参照)。
【0037】
ここで、前述の説明のとおり、第2円柱部54Bは、リング部材24(ダイヤフラム20)の貫通孔24Aを貫通しつつ、リング部材24に固定されていない。すなわち、第2円柱部54Bの外周面は、その全周に亘ってリング部材24の内周面(貫通孔24Aが形成されている部分)を囲みながら、当該内周面に対向している。第2円柱部54Bの外周面は、その全周に亘ってリング部材24の内周面(貫通孔24Aが形成されている部分)を囲みながら、当該内周面に対向している。そのため、本実施形態では、第2円柱部54Bは、ダイヤフラム20に対して、軸方向及び周方向に沿って移動可能に設定されている。
【0038】
また、前述の説明のとおり、第1ロッド部52、第1円柱部54A及び第2円柱部54Bは、これらの記載順で軸方向に沿って並んで配置されているが(
図2及び
図4参照)、第1円柱部54Aの径は、第1ロッド部52の径及び第2円柱部54Bの径よりも小さい設定となっている。そのため、第1ロッド部52と、第2円柱部54Bとは、第1円柱部54Aの外周を囲むように配置されているダイヤフラム20(リング部材24)を、軸方向の一方側と他方側とから、それぞれで挟んでいる。ここで、
図2及び
図4に示されるように、軸方向において第2円柱部54Bにおけるリング部材24に対向する面を対向面54X(接触面の一例)とする。また、軸方向において第1ロッド部52におけるリング部材24に対向する面を対向面52X(他の接触面の一例)とする。対向面54Xと対向面52Xとの距離は、リング部材24の厚みよりも若干大きい設定になっている(
図2及び
図4参照)。この点からも、本実施形態では、第2円柱部54Bは、ダイヤフラム20に対して、軸方向及び周方向に沿って移動可能に設定されている。ただし、ダイヤフラム型シリンダ10の動作時にダイヤフラム20の本体22の変形に伴ってリング部材24が軸方向に移動すると、リング部材24が対向面54X又は対向面52Xに接触しながら押すことになるため、ロッド50は軸方向に移動するようになっている(
図2及び
図4参照)。
【0039】
ねじ56は、
図2及び
図4に示されるように、その頭を第1ロッド部52を挟んで第2ロッド部54の反対側に配置させ、その首(雄ねじ部分)を第1ロッド部52の貫通孔(図示省略)を貫通させ、第1円柱部54Aの雌ねじ(図示省略)で締められている。そのため、第2ロッド部54は、第1ロッド部52に着脱可能に固定されている。また、
図2及び
図4に示されるように、第1ロッド部52、第1円柱部54A及び第2円柱部54Bはこれらの記載順で軸方向に沿って並んでおり、第1円柱部54Aは第1ロッド部52と第2円柱部54Bとを繋ぐ段差部分を構成している。そして、ロッド50は、ダイヤフラム20のリング部材24の貫通孔24Aに第1円柱部54Aを貫通させて、第1ロッド部52と第2ロッド部54の第2円柱部54Bとでリング部材24を軸方向の両側から挟んでいる。
本実施形態では、ねじ56の雄ねじ部分が第1円柱部54Aの雌ねじ(図示省略)で締められると、第1ロッド部52の対向面52Xと第2円柱部54Bの対向面54Xとがそれぞれリング部材24の表面又は裏面に隙間を開けて対向するようになっている。そして、本実施形態では、ロッド50は、リング部材24(ダイヤフラム20)の中央に配置されるようになっている。
【0040】
以上が、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10の機能及び構成についての説明である。
【0041】
<第1実施形態のダイヤフラム型シリンダの動作>
次に、第1実施形態のダイヤフラム型シリンダ10の動作について、
図2及び
図4を参照しながら説明する。
まず、外部装置(図示省略)を作動させ、例えば、コンプレッサーから供給される圧縮空気をパルス制御すると、給気ポートとして機能する貫通孔OH2から空間R2に圧縮空気が断続的に注入される。
この場合において、
図2の状態のダイヤフラム型シリンダ10の空間R2に貫通孔OH2から圧縮空気が注入されると、空間R2の内部の空圧が上昇して、ダイヤフラム20(本体22)が加圧される。加圧に伴って徐々に変形するダイヤフラム20によって、コイルばね40は圧縮される。その結果、第1ロッド部52の対向面52Xがリング部材24に押されて、ダイヤフラム型シリンダ10は
図2の状態から
図4の状態となる。すなわち、ロッド50は、リング部材24が第2ハウジング34に接触する位置から第1ハウジング32に接触する位置まで移動する。なお、空間R2の内部に貫通孔OH2から圧縮空気が注入されることに伴いダイヤフラム20が変形して空間R2の容積が増加すると空間R1の容積はその増加分減少することになるのは、貫通孔OH1を介して空間R1の内部の空気が外部に排気されるためである。
次いで、外部装置のコンプレッサーからの圧縮空気の供給が停止されると、貫通孔OH2が大気開放され、貫通孔OH2を介して空間R2の内部の空気が外部に排出されるとともに貫通孔OH1を介して外部の空気が空間R1の内部に注入される。これに伴い、空間R2の内部の圧縮空気により加圧されていたダイヤフラム20(本体22)はその加圧から解放され、ダイヤフラム20によって圧縮されていたコイルばね40は徐々に自然長に近づいていく。その結果、第2円柱部54Bの対向面54Xがリング部材24に押されて、ダイヤフラム型シリンダ10は
図4の状態から
図2の状態となる。
以上のようにして、空間R1又は空間R2の圧力変化によるダイヤフラム20の変形に伴い、ロッド50は軸方向の定められた範囲を往復移動する。
以上が、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10の動作についての説明である。
【0042】
<第1実施形態の効果>
次に、第1実施形態の効果について説明する。
【0043】
〔第1の効果〕
第1の効果は、ロッド50がダイヤフラム20に固定されていないことの効果である。
前述のとおり、特許文献1に開示されているダイヤフラムシリンダ(以下、比較形態という。)は、シリンダ本体に固定されているガイドピンを主軸(本実施形態のロッド50に相当)に形成されたガイド溝に係合させることで、主軸の軸周りの回転を抑制する(特許文献1の
図1参照)。比較形態のダイヤフラムシリンダを実施するためには、少なくとも、ガイドピンを構成要素とし、ロッド50にガイド溝の加工を施す必要がある。そのため、このダイヤフラムシリンダは、その構成が複雑である。
【0044】
これに対して、本実施形態の場合、
図2及び
図4に示されるように、ロッド50がダイヤフラム20に固定されていない。具体的には、ロッド50は、ダイヤフラム20のリング部材24の貫通孔24Aに隙間を形成した状態で貫通しているだけである。つまり、本実施形態は、簡単な構成(低コスト又は製造容易)で、ロッド50が軸周りに回転してもその回転方向の力がダイヤフラム20に伝わるようになっていない。
【0045】
したがって、本実施形態によれば、比較形態の場合に比べて、簡単な構成で、ロッド50の軸方向の回転に伴うダイヤフラム20の回転を抑制することができる。
【0046】
また、比較形態の場合、前述のとおり、シリンダ本体に固定されているガイドピンを主軸に形成されたガイド溝に係合させることで、主軸の軸周りの回転を抑制する(特許文献1の
図1参照)。そのため、主軸が軸方向に往復移動する際に、ガイド溝を形成する面に接触するガイドピンの直線部分には、軸周りに回転しようとする主軸からの回転力が集中する。その結果、ガイドピンとガイド溝を形成する面とから摩耗紛が生成される。摩耗紛の量は、このダイヤフラムシリンダの使用期間の長さにより増加する。そして、主軸とガイド溝との隙間に一定以上の量の摩耗紛が存在することになると、主軸の軸方向の移動動作が不安定になり得る。
【0047】
これに対して、本実施形態は、ロッド50がダイヤフラム20に固定される構成を採用していないため、ロッド50は外部から回転方向への力がかかると(例えば、作業者が何かしらの理由で回転させると)その力を受けて回転する。しかしながら、ロッド50の回転に伴いダイヤフラム20が回転することがない。また、ロッド50の軸方向の一端から他端に亘る各位置での横断面は真円である。また、ロッド50が嵌る第1ハウジング32、第2ハウジング34及びリング部材24の各貫通孔32A、34A、24Aもその横断面が真円である。すなわち、本実施形態の場合、第1ハウジング32、第2ハウジング34及びリング部材24には、ロッド50の回転方向においてロッド50の周面に対向し、ロッド50の回転に伴いロッド50の周面に接触する対向面が存在していない(
図3参照)。
【0048】
したがって、本実施形態によれば、比較形態の場合に比べて、ロッド50の軸周りの回転に伴う摩耗紛が発生し難い。これに伴い、本実施形態によれば、比較形態の場合に比べて、より長期的にコイルばね40のばね力に対応してロッド50を往復移動させることができる。また、本実施形態によれば、比較形態の場合に比べて、より長期的にダイヤフラム20の変形に伴うロッド50を軸方向へのスムーズな往復移動を実現させることができる。
【0049】
〔第2の効果〕
第2の効果は、ダイヤフラム20が中央に貫通孔22Aが形成され、弾性体である本体22と、本体22に固定され、本体22よりも摩擦係数が小さいリング部材24とを有することの効果である。別の見方をすると、弾性体である本体22を弾性変形させてロッド50を移動させるダイヤフラム20がロッド50に対して本体22よりも摩擦係数が小さいリング部材24を介して取り付けられていることの効果である。
【0050】
例えば、ダイヤフラム20がゴム製の本体22のみで構成され、本体22の内周面をロッド50に対向させて、本体22がロッド50に取り付けられている構成(図示省略)の場合、ロッド50の回転に伴い、ロッド50に接触する本体22がロッド50からの摩擦力により力を受けて捩れる虞がある。
【0051】
これに対して、本実施形態は、本体22が直接的にロッド50に取り付けられているのではなく、リング部材24を介して取り付けられている(
図2及び
図4参照)。また、リング部材24は一例として金属製であり、リング部材24の摩擦係数はゴム製の本体22の摩擦係数より小さい。
【0052】
したがって、本実施形態によれば、ダイヤフラム20がゴム製の本体22のみで構成されている場合に比べて、ロッド50の軸方向の回転に伴うダイヤフラム20の回転への影響が小さい(回転しにくいことで捩れ難い)。
【0053】
〔第3の効果〕
第3の効果は、ロッド50における、ダイヤフラム20を挟んで軸方向の一端側及び他端側(ダイヤフラム20の凸面側及び凹面側)には、ダイヤフラム20に接触する対向面54X、52Xが形成されていること(
図2及び
図4参照)の効果である。
【0054】
本実施形態では、ロッド50は、ダイヤフラム20に固定されていない(
図2及び
図4参照)。しかしながら、ロッド50は、その軸方向の中央でダイヤフラム20に取り付けられ、かつ、ダイヤフラム20を挟んで軸方向の一端側及び他端側にダイヤフラム20に接触する対向面54X、52Xが形成されている(
図2及び
図4参照)。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、ロッド50がダイヤフラム20に固定されていないにも関わらず、簡単な構成で、ダイヤフラム20の変形動作に伴いロッド50を軸方向に移動させることができる。
【0056】
〔第4の効果〕
本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10では、
図2及び
図4に示されるように、中央筒23が、リング部材24と、筒部材25とを有する。ここで、筒部材25は、その外周面を第2ハウジング34における貫通孔34Aを形成する周面に接触させつつその内周面にロッド50の第2円柱部54Bの外周面を接触させて、ロッド50を支持する。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10は、中央筒23が筒部材25を含んでいない場合に比べて、空間R2の圧縮空気をリング部材24の内周面とロッド50の第1円柱部54Aの外周面との間から空間R1にリークさせ難い。または、ダイヤフラム型シリンダ10は、空間R2の圧縮空気をリング部材24の内周面とロッド50の第1円柱部54Aの外周面との間から空間R1にリークさせない。
【0057】
〔第5の効果〕
また、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10では、
図2及び
図4に示されるように、中央筒23が、リング部材24と、筒部材25とを有しつつ、OリングORを備えている。そして、OリングORは、第2ハウジング34に形成されている周溝34Cに嵌め込まれ、筒部材25と第2ハウジング34とに挟まれながら圧縮変形されて、軸方向における筒部材25と第2ハウジング34との隙間を遮断する。
本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10は、OリングORを備えていない場合に比べて、空間R2の圧縮空気を貫通孔34Aから外部にリークさせ難い。
【0058】
以上が本実施形態の効果についての説明である。また、以上が第1実施形態についての説明である。
【0059】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態の機能及び構成、動作並びに効果について、図面を参照しつつこれらの記載順で説明する。以下、本実施形態における第1実施形態と異なる部分についてのみ説明する。
【0060】
<第2実施形態のダイヤフラム型シリンダの機能、構成及び動作>
図5は、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(ダイヤフラム構造100C)における、第1実施形態の
図3に相当する部分の図(横断面図の部分拡大図)である。
本実施形態における第1実施形態(
図1~
図4参照)との相違点は、以下の点である。
第1実施形態ではロッド50の第1ロッド部52が軸方向から見て真円であり、かつ、第1ハウジング32の貫通孔32Aも軸方向から見て真円である(
図3参照)のに対して、
本実施形態では第1ロッド部52Cが軸方向から見て矩形であり、かつ、第1ハウジング32の貫通孔32Cも軸方向から見て矩形状である点
以下、上記の相違点に関係する構成要素(第1ハウジング32の貫通孔32C及び第1ロッド部52C)について、
図5を参照しながら説明する。
【0061】
〔第1ハウジングの貫通孔〕
本実施形態の第1ハウジング32の貫通孔32Cは、
図5に示されるように、軸方向から見て矩形状の内周面を有している。第1ハウジング32は、後述するロッド50Cの周面の形状との関係で、貫通孔32Aに嵌め込まれたロッド50を軸方向に沿って移動可能とする。すなわち、第1ハウジング32における貫通孔32Cは、軸方向に往復移動するロッド50Cのすべり軸受として機能する。ただし、本実施形態の第1ハウジング32は、単なるすべり軸受けとしての機能を発揮するのではなく、ロッド50Cがその軸周りに回転できない又はほぼ回転できないようにロッド50Cを支持する機能も有する。
【0062】
〔第1ロッド部〕
第1ロッド部52Cは、
図5に示されるように、軸方向から見て一例として矩形(正方形)である。第1ロッド部52Cは、軸方向の一端から他端に亘る各位置での断面が同じ矩形である(
図2及び
図4を援用して参照)。そのため、第1ロッド部52Cは、一例として角柱状である。
【0063】
〈ロッドと第1ハウジングとの関係〉
次に、ロッド50C(特に第1ロッド部52C)と第1ハウジング32の貫通孔32Cとの関係について説明する。
【0064】
前述のとおり、軸方向から見たロッド50Cの第1ロッド部52Cの形状は、一例として矩形(多角形、具体的には正多角形の一例である正方形)である(
図5参照)。すなわち、軸方向から見た第1ロッド部52Cの形状は、真円以外の形状である。また、ダイヤフラム20の中心(軸)と、第1ロッド部52Cの中心О(軸)とは、軸方向で重なっている。ここで、
図5に示されるように、中心Оから第1ロッド部52Cの外周における最長距離を距離D1、最短距離を距離D2とする。
これに対して、貫通孔32Cは、
図5に示されるように、軸方向から見ると、4つ角に加工上に必要な4個の逃がし孔32C1に相当する4つの曲面と、各逃がし孔32C1同士を繋ぐ4つの平面34C2に相当する4本の直線とで構成されている。すなわち、貫通孔32Cは、複数(本実施形態では4つ)の逃がし孔32C1に相当する複数の曲面と、各逃がし孔32C1同士を繋ぐ複数(本実施形態では4つ)の平面32C2とで構成されている。ここで、
図5に示されるように、中心Оから貫通孔32Cの周面における4つの平面32C2の大部分、すなわち、貫通孔32Cの周面の大部分の面は、中心Оからの距離が距離D1よりも近くかつ距離D2よりも遠くなる位置(例えば、
図5における距離D3の位置)で第1ロッド部52Cの周面に対向している。
そして、本実施形態の第1ハウジング32は、上記の関係(以下、「本実施形態のロッド50Cと貫通孔32Cとの第1の関係」という。)を満たしたうえで、第1ロッド部52Cを貫通孔32Cに嵌め込んで、ロッド50Cが軸方向に沿って移動可能となるようにロッド50Cを支持している。
【0065】
また、前述の第1の関係に換えて、以下のような別の関係を満たすとしてもよい。具体的には、
図5に示されるように、軸方向から見ると、第1ロッド部52Cは、中心Оを中心とし距離D1未満で距離D2よりも大きい半径を有する仮想円VCに交差する交差面を有する。また、貫通孔32Cは、仮想円VCに交差しつつ第1ロッド部52Cの交差面に対向する対向面を含む。すなわち、別の条件とは、(1)第1ロッド部52Cが軸方向から見て真円以外の形状であって前述の交差面を有すること、及び、(2)貫通孔32Cは前述の交差面に対向する対向面を含むことである(以下、「本実施形態のロッド50Cと貫通孔32Cとの第2の関係」という。)。
【0066】
以上のとおり、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10Cでは、前述の第1の関係又は第2の関係を有することにより、ロッド50Cがその周方向(軸周り)に回転するとロッド50Cが第1ハウジング32に接触して第1ハウジング32がロッド50Cの回転を停止させるように構成されている。
【0067】
以上が、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10Cの機能、構成及び動作における第1実施形態との相違点についての説明である。
【0068】
<第2実施形態の効果>
以下、第2実施形態の効果について説明する。
【0069】
〔第1の効果〕
第1の効果は、本実施形態が前述の第1の関係又は第2の関係を有することの効果である。
第1実施形態のダイヤフラム型シリンダ10は、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10Cと同様に、ロッド50がダイヤフラム20に固定されていない。そのため、第1実施形態の説明したその第1の効果のとおり、簡単な構成で、ロッド50の軸方向の回転に伴うダイヤフラム20の回転を抑制することができる。
しかしながら、第1実施形態の場合、ロッド50はその軸周りに回転可能である。そのため、例えば、作業者がロッド50にワーク(図示省略)を取り付ける際に、ロッド50が軸周りに回転しないようにロッド50を工具(図示省略)で保持する必要がある。これに伴い、例えば、ロッド50の周面の一部であってハウジング30からはみ出した部分にDカット面等を形成しておくことやDカット面を形成するための部分を確保することが必要になる。
これに対して、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10Cは、前述の第1の関係又は第2の関係を有する(
図5参照)。そのため、ロッド50Cがその周方向(軸周り)に回転すると、ロッド50Cが第1ハウジング32に接触して第1ハウジング32がロッド50Cの回転を停止させる。
【0070】
したがって、本実施形態によれば、第1実施形態の場合と異なり、ロッド50の軸方向の回転に伴うダイヤフラム20の回転を抑制することができる。特に、本実施形態の場合、前述の第1の関係又は第2の関係は、ハウジング30の内部の構成により実現できている。そのため、第1実施形態を変形してロッド50におけるハウジング30からはみ出した部分にDカット面等を形成しておく必要がない。
【0071】
〔第2の効果〕
第2の効果は、本実施形態が前述の第1の関係又は第2の関係を有することの別の効果である。
前述のとおり、比較形態(特許文献1に開示されているダイヤフラムシリンダ)は、シリンダ本体に固定されているガイドピンを主軸に形成されたガイド溝に係合させることで、主軸の軸周りの回転を抑制する(特許文献1の
図1参照)。そのため、主軸が軸方向に往復移動する際に、ガイド溝を形成する面に接触するガイドピンの直線部分には、軸周りに回転しようとする主軸からの回転力が集中する。その結果、ガイドピンとガイド溝を形成する面とから摩耗紛が生成される。摩耗紛の量は、このダイヤフラムシリンダの使用期間の長さにより増加する。そして、主軸とガイド溝との隙間に一定以上の量の摩耗紛が存在することになると、主軸の軸方向の移動動作が不安定になり得る。
【0072】
これに対して、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、ロッド50Cと第1ハウジング32の貫通孔32Cとが前述の第1の関係又は第2の関係を有している。そのため、ロッド50Cの軸方向への往復移動時にロッド50Cがその軸周りに回転しようとすると、第1ロッド部52Cの周面は貫通孔32Cを構成する周面(4つの平面32C2)に接触する。すなわち、本実施形態では、前述の比較形態の場合のように、主軸の回転力をガイドピンの直線部分のみで受けるのではなく、ロッド50Cの回転力を貫通孔32Cの周面で受ける。
【0073】
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、比較形態の場合に比べて、ロッド50C(第1ロッド部52C)の周面に摩耗粉を生成させ難い。これに伴い、本実施形態によれば、比較形態の場合に比べて、より長期的にコイルばね40のばね力に対応してロッド50を往復移動させることができる。また、本実施形態によれば、比較形態の場合に比べて、より長期的にダイヤフラム20の変形に伴うロッド50を軸方向へのスムーズな往復移動を実現させることができる。
【0074】
〔第3の効果〕
第3の効果は、ロッド50C(第1ロッド部52C)と、第1ハウジング32の貫通孔32Cとが、互いに平面同士で接触すること(
図5参照)の効果である。
例えば、ロッド50Cの周面が曲面で、貫通孔32Cが曲面である構成、別言すると、曲面同士で面接触する構成(後述する
図9の第4変形例を参照)であったとしても、この構成が前述の第1の関係又は第2の関係を有していれば、この構成は前述の第1の効果を奏する。
ここで、本実施形態の場合、
図5に示されるように、(1)第1ロッド部52Cの周面は複数の平面を有しており、(2)当該複数の平面の各平面に対向する貫通孔32Cの周面は複数の平面34C2のうちのいずれかの平面である。そのため、ロッド50Cの軸方向への往復移動時にロッド50Cがその軸周りに回転しようとすると、第1ロッド部52Cの周面のいずれか1つの平面は当該いずれか一面が対向する貫通孔32Cのいずれかの1つの平面32C2に接触することになる。すなわち、ロッド50Cは、いずれかの1つの平面32C2とで互いの平面同士を面接触させながら、軸方向の定められた区間を往復移動する。その結果、本実施形態の場合、曲面同士で面接触する構成に比べて、ロッド50Cの往復移動時における貫通孔32Cの周面に対する接触面積が大きい。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、曲面同士で面接触する構成に比べて、ロッド50Cがスムーズに移動し易い。これに伴い、平面同士を面接触させる構成は、曲面同士で面接触する構成に比べて、ロッド50C(第1ロッド部52C)の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0075】
〔第4の効果〕
第4の効果は、第1ロッド部52Cが、軸方向から見て、正多角形(本実施形態の場合は正方形)であり、その周面を構成する各平面(本実施形態の場合は4つの平面)が、それぞれ、軸方向から見て正方形状である貫通孔32Cの4つの平面32C2に対向している(
図5参照)ことの効果である。
本実施形態の場合は、第1ロッド部52Cと、貫通孔32Cとは、4組の対向面同士の組み合わせを構成している。
ところで、本実施形態のロッド50Cは、前述の説明のとおり、ダイヤフラム20の中央に固定されている(援用する
図2を参照)。また、ダイヤフラム20を構成する本体22は、変形可能なゴム製の矩形状の部材である。ロッド50Cは、空間R1又は空間R2の圧力変化によるダイヤフラム20の変形に伴う軸方向の定められた範囲の往復移動時(
図2及び
図3参照)に、本体22の取り付け具合の影響を受けて軸周りに若干回転し得る。この場合、本体22は、例えば、ロッド50Cの往路移動時には一の方向に捩れ、復路移動時には往路移動時の捩れを無くそうとしてその逆方向に捩れる。これに伴い、第1ロッド部52Cの周面を構成する各平面と、貫通孔32Cの各平面32C2とは、例えば、往路移動時に4組の対向面同士の組み合わせのうちの一組同士が接触し、復路移動時に往路移動時の一組の反対側の一組同士が接触する。そのため、往路と復路とで、同じ一組同士が接触し難い。特に、本実施形態の場合、軸方向から見た第1ロッド部52Cの形状は正多角形であることから、往路の一組同士の接触面積と、復路の一組の接触面積とは同等となる。すなわち、往路と復路とで、ロッド50Cが第1ハウジング32から受ける接触負荷(摩擦の大きさ)も同等となる。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、往復移動のバランスがよい。これに伴い、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、その製品寿命が長いといえる。
【0076】
〔第5の効果〕
第5の効果は、本実施形態が
図5に示される下記の特有の構成を有することの効果である。
本実施形態の場合、
図5に示されるように、貫通孔32Cは、軸方向から見ると、4つ角に加工上に必要な4個の逃がし孔32C1と、各逃がし孔32C1同士を繋ぐ4つの平面32C2とで構成されている。また、貫通孔32Cに嵌め込まれる第1ロッド部52Cの形状は、軸方向から見ると、矩形(正方形)である。そして、第1ロッド部52Cの4つ角は、それぞれ各逃がし孔32C1の内側に位置している。そのため、ロッド50Cの軸方向への往復移動時にロッド50Cがその軸周りに若干(公差分程度)回転しても、第1ロッド部52Cの4つ角が貫通孔32Cを構成する周面に接触することがない。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、第1ロッド部52Cの4つ角が貫通孔32Cの周面に接触し得る場合に比べて、ロッド50C(第1ロッド部52C)の周面に摩耗粉を生成させ難い。
【0077】
〔第6の効果〕
また、第4の効果の説明のとおり、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、比較形態の場合に比べて、長期的に安定したロッド50Cの往復移動を実現することができる。これに伴い、本実施形態の場合、ダイヤフラム20の本体22は、長期的に安定した変形動作を繰り返すことができる。つまり、長期的にみると、弾性体である本体22に特定の癖が付き難い。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、比較形態の場合に比べて、より長期にダイヤフラム20(本体22)の変形に伴うロッド50Cの軸方向へのスムーズな移動を実現することができる。これに伴い、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、比較形態の場合に比べて、ダイヤフラム20(又は本体22)の交換までの期間を短くすることができる。
【0078】
〔第7の効果〕
本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、第1ロッド部52Cと第2ロッド部54の第2円柱部54Bとでダイヤフラム20のリング部材24を軸方向の両側から挟んでダイヤフラム20を保持している。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、簡単な構成で、ダイヤフラム20をロッド50Cから着脱させることができる。すなわち、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、メインテナンスが容易であるといえる。
【0079】
〔第8の効果〕
本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、ロッド50Cの一部である第1ロッド部52Cによりロッド50Cの軸周りの回転を防止又は抑制している。また、第1ロッド部52Cが嵌め込まれる第1ハウジング32の貫通孔32Cは、凹みではなく第1ハウジング32を貫通している。もし、貫通孔32Cに換えて凹みであれば、ロッド50Cのうちの軸方向の第1ロッド部52C側の端部を対象物(図示省略)の作用部分(押す又は引っ張る等の作用を発揮する部分)として利用することができない。
したがって、本実施形態のダイヤフラム型シリンダ10C(及びダイヤフラム構造100C)は、ロッド50Cの両端部分を、対象物(図示省略)を押す等の作用部分として利用することができる。
なお、本効果は、第1ハウジング32に形成されている孔が貫通孔32Cである場合の効果であり孔が凹みの場合を除外しているが、孔が凹みである形態であっても前述の第1~第7の効果を奏する。すなわち、第1ハウジング32に形成されている孔が貫通孔でなく凹みである変形例も、本発明の技術的範囲に含まれる点に留意されたい。
【0080】
以上が本実施形態の効果についての説明である。また、以上が第2実施形態についての説明である。
【0081】
≪複数の変形例及び複数の応用例≫
以上のとおり、本発明の一例について前述の本実施形態を用いて説明したが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本発明の技術的範囲には、例えば、後述する複数の変形例及び複数の応用例も含まれる。さらに、本発明の技術的範囲には、前述の実施形態及び後述する複数の変形例の1つの形態に対し、(1)その構成要素の一部を他の形態の構成要素に置換する形態(図示省略)、(2)その構成要素に他の形態の構成要素の一部又は全部を追加する形態(図示省略)その他の形態も含まれる。すなわち、本発明の技術的範囲には、本明細書により開示した技術を組み合わせた形態も含まれる。この点については、後述する複数の応用例についても同様である。
【0082】
例えば、第1実施形態では、ロッド50は、第1ロッド部52と、第2ロッド部54と、ねじ56とを有するとして説明した。そして、ねじ56の雄ねじ部分が第1円柱部54Aの雌ねじで締められると、第1ロッド部52と第2円柱部54Bとがリング部材24の軸方向の両側から圧接するように設定されていると説明した。しかしながら、第1ロッド部52及び第2ロッド部54の一方又は他方に雄ねじを設け、他方又は一方に雌ねじを形成して、これらを直接連結するようにしてもよい。この場合、ねじ56が不要になるため、ダイヤフラム型シリンダ10は軸方向の長さを短くすることでコンパクトにすることができる。なお、第2実施形態の場合もこの変形例を適用できる。
【0083】
また、第1実施形態では、ロッド50は、第1ロッド部52と、第2ロッド部54と、ねじ56とを有するとして説明した。しかしながら、これらを一体物として構成してもよい。なお、第2実施形態の場合もこの変形例を適用できる。
【0084】
また、第2実施形態では、ロッド50Cの第1ロッド部52Cは、軸方向から見て矩形であるとして説明した(
図5参照)。しかしながら、
図6に示される第1変形例のダイヤフラム型シリンダ10D(及びダイヤフラム構造100D)の第1ロッド部52Dのように、第1ロッド部52Dの4つ角部分を面取りした形状の複数(一例として4つの)の曲面52D1にしてもよい。
このような構成にすることで、例えロッド50D又は貫通孔32Cの製造ばらつき又は公差ばらつきがあったとしても、絶対にロッド50Dの4つ角部分が貫通孔32Cに接触することがない。
なお、本変形例の第1ロッド部52Dは第1ロッド部52の4つ角部分を面取りして製造されるとしたが、例えば、円柱(図示省略)の周面に機械加工を施して複数(一例として4つ)の平面52D2と複数(一例として4つ)の曲面52D1とを形成させてもよい。このようにすれば、円柱からロッド50Dを製造することができるため、ロッド50Dは高精度かつ低コストで提供することができる。
【0085】
また、例えば、
図7に示される第2変形例のダイヤフラム型シリンダ10E(及びダイヤフラム構造100E)のように、前述の実施形態の第1ハウジング32に形成されている貫通孔32Cを貫通孔32Eにしてもよい。本変形例では、軸方向から見た貫通孔32Eは、前述の実施形態の4つの平面32C2を構成する4本の直線がそれぞれ2本の直線と当該2本の直線の間の円弧線であって第1ロッド部52に向かって凹んでいる円弧線との複合線32E1に変更されている。本変形例の場合も、ロッド50Cと第1ハウジング32の貫通孔32Cとが前述の第2実施形態で説明した第1の関係又は第2の関係を有している。
本変形例の効果は、前述の第2実施形態の場合と同様である。
【0086】
また、例えば、
図8に示される第3変形例のダイヤフラム型シリンダ10F(及びダイヤフラム構造100F)のように、前述の第2実施形態の第1ロッド部52Cを第1ロッド部52Fにしてもよい。本変形例では、前述の第2実施形態において軸方向から見た第1ロッド部52Cの矩形の外周線(4つの平面32C2を構成する4本の直線)は、それぞれ各中央部分が軸側に凹んだ複合線に変更されている。本変形例の場合も、ロッド50Fと第1ハウジング32の貫通孔32Cとが前述の第2実施形態で説明した第1の関係又は第2の関係を有している。
本変形例の効果は、前述の第2実施形態の場合と同様である。
【0087】
また、例えば、
図9に示される第4変形例のダイヤフラム型シリンダ10I(及びダイヤフラム構造100I)のように、前述の実施形態の第1ハウジング32に形成されている貫通孔32Cを貫通孔32Iにしつつ、第1ロッド部52Cを第1ロッド部52Iにしてもよい。具体的には、軸方向から見た貫通孔32Iは、長尺な矩形状の貫通孔と、楕円とを重ね合わせた複合線で囲まれた部分となる。また、軸方向から見た第1ロッド部52Iは、貫通孔32Iの一対の湾曲面に沿って対向する楕円部分となる。本変形例の場合も、ロッド50と第1ハウジング32の貫通孔32Iとが前述の第2実施形態で説明した第1の関係又は第2の関係を有している。
なお、本変形例の場合、貫通孔32Iと第1ロッド部52Iとの間には、比較的大きな隙間が形成されることになるが、このように大きな隙間があっても空間R2の内部の空圧の制御にこの比較的大きな隙間があることは影響しない。むしろ、この比較的大きな隙間があることで、第1ハウジング32の貫通孔OH1をなくしてもよい。
本変形例の効果は、前述の第2実施形態の場合と同様である。
【0088】
また、前述の第1実施形態、第2実施形態及び複数の変形例の説明では、ダイヤフラム構造100等は、ダイヤフラム型シリンダ10等の一部を構成するとして説明した。しかしながら、ダイヤフラム構造100等は、その基本構成を有していれば、例えば、ダイヤフラム型シリンダ10以外の装置の一部を構成するようにしてもよい。例えば、ダイヤフラム構造100等は、
図10の応用例のダイヤフラム型ポンプ10Kの一部を構成してもよい。
また、図示は省略するが、ダイヤフラム構造100、100C等は、ロッド50、50C等を共有する一対のダイヤフラム型ポンプ10Kを備えるポンプの一部を構成するようにしてもよい。
さらに、図示は省略するが、ダイヤフラム構造100、100C等は、スピーカー、動力源その他の装置の一部を構成してもよい。
【0089】
以上が、第1実施形態及び第2実施形態における複数の変形例及び複数の応用例についての説明である。
【符号の説明】
【0090】
10 ダイヤフラム型シリンダ
10 第1ダイヤフラム型シリンダ
100 ダイヤフラム構造
10C ダイヤフラム型シリンダ
100C ダイヤフラム構造
20 ダイヤフラム
22 本体(円盤体の一例)
22A 貫通孔(第1の貫通孔の一例)
22B 円盤状部分
22C 外周縁部分(周縁の一例)
22D 突出部
23 貫通部材
24 リング部材
24A 貫通孔
24B 溝
25 筒部材
25A 貫通孔
30 ハウジング
32 第1ハウジング(支持体の一例)
32A 貫通孔(孔の一例)
32C 貫通孔
32C1 孔
32C2 平面
34 第2ハウジング(筐体の一例)
34A 貫通孔(第2の貫通孔の一例)
34C 周溝
34C2 平面
40 コイルばね
45 円盤状板
45A 円盤
45B 周壁
50 ロッド(軸体の一例)
50C ロッド
52 第1ロッド部
52C 第1ロッド部
52X 対向面(他の接触面の一例)
54 第2ロッド部
54A 第1円柱部
54B 第2円柱部
54X 対向面(接触面の一例)
56 ねじ
D1 距離
D2 距離
D3 距離
OH1 貫通孔
OH2 貫通孔
OR Oリング
R1 空間(第2の空間の一例)
R2 空間(第1の空間の一例)
VC 仮想円