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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139905
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】トイレ装置
(51)【国際特許分類】
   E03D 9/10 20060101AFI20230927BHJP
   E03D 11/11 20060101ALI20230927BHJP
   E03D 11/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
E03D9/10
E03D11/11
E03D11/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045678
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松本 ひとみ
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 弘明
(72)【発明者】
【氏名】牧 道太郎
(72)【発明者】
【氏名】楠目 真之
【テーマコード(参考)】
2D038
2D039
【Fターム(参考)】
2D038AA04
2D039AA02
2D039AD04
2D039CB02
2D039EA00
2D039FD01
(57)【要約】
【課題】高さ寸法の拡大を抑えることができるトイレ装置を提供する。
【解決手段】トイレ装置1は、便鉢部11と、汚物F及び便鉢部11に吐水された洗浄水Wを貯留する貯留部30と、貯留部30の下流側に伸びており、下流側に向けて上り傾斜した上昇路13と、上昇路13の下流側に設けられており、上下方向において、貯留部30の最下端よりも高い位置に配置された粉砕ポンプ40と、を備えている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便鉢部と、
汚物及び前記便鉢部に吐水された洗浄水を貯留する貯留部と、
前記貯留部の下流側に伸びており、下流側に向けて上り傾斜した上昇路と、
前記上昇路の下流側に設けられており、上下方向において、前記貯留部の最下端部よりも高い位置に配置されたポンプ部と、
を備えているトイレ装置。
【請求項2】
前記ポンプ部と前記上昇路との接続部分は、上下方向において、前記上昇路の上流端の上端よりも高い請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項3】
前記ポンプ部は、前記上昇路の後方に向けて水平方向に伸びる下流端部に接続されている請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のトイレ装置。
【請求項4】
前記ポンプ部は、前記上昇路の下流側に向けて上り傾斜した下流端部に接続されている請求項1及び2のいずれか一項に記載のトイレ装置。
【請求項5】
前記ポンプ部よりも上流側に設けられ、前記汚物を粉砕する粉砕部を備えている請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のトイレ装置。
【請求項6】
前記粉砕部は前記ポンプ部に一体的に設けられている請求項5に記載のトイレ装置。
【請求項7】
前記ポンプ部は、回転軸部と、前記回転軸部に取り付けられて回転する排出羽を有しており、
前記粉砕部は、前記回転軸部に取り付けられて回転する粉砕刃を有している請求項5及び請求項6のいずれか一項に記載のトイレ装置。
【請求項8】
前記ポンプ部は、前記汚物を粉砕する粉砕機能を具備した排出羽を有している請求項1に記載のトイレ装置。
【請求項9】
前記便鉢部の下部に形成された排出口を開閉するフラッパ弁を備えており、
前記貯留部は前記フラッパ弁よりも下流側に設けられている請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載のトイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はトイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は従来のトイレ装置を開示している。このトイレ装置は、便鉢部、貯留部、及びポンプを備えている。貯留部は、便鉢部の下部に形成された排出口に接続されている。貯留部は、便鉢部から落下した汚物及び洗浄水を貯留する。ポンプは、貯留部の下部に設けられている。このトイレ装置は、貯留部に貯留した汚物を粉砕し、粉砕した汚物を含む汚水をポンプによって貯留部から排出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009-102979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたトイレ装置は、便鉢部の排出口よりも下方に貯留部を配置し、さらに貯留部の下部にポンプを設けているため、便鉢部よりも下側に貯留部やポンプを配置するスペースが必要となり、全体の高さ寸法が大きくなるおそれがある。つまり、このトイレ装置は、便鉢部の上端の高さが一般的な大便器の高さよりも高い位置になるおそれがある。あるいは、このトイレ装置は、便鉢部の上端を一般的な大便器と同じ高さにすると、大便器を設置した設置面よりも下方に貯留部を配置しなければならないおそれがある。
【0005】
本開示は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、高さ寸法の拡大を抑えることができるトイレ装置を提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のトイレ装置は、便鉢部と、汚物及び前記便鉢部に吐水された洗浄水を貯留する貯留部と、前記貯留部の下流側に伸びており、下流側に向けて上り傾斜した上昇路と、前記上昇路の下流側に設けられており、上下方向において、前記貯留部の最下端部よりも高い位置に配置されたポンプ部と、を備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1のトイレ装置における便器洗浄前の状態を示す概略図である。
図2】実施形態1のトイレ装置における粉砕ポンプ起動時の状態を示す概略図である。
図3】実施形態1のトイレ装置に備えられた粉砕ポンプの要部を示す斜視図である。
図4】実施形態1のトイレ装置に備えられた粉砕ポンプの要部を示す断面図である。
図5】実施形態1のトイレ装置に備えられた粉砕ポンプを示す正面図である。
図6】実施形態1の粉砕刃を示す正面図である。
図7】実施形態2のトイレ装置における便器洗浄前の状態を示す概略図である。
図8】実施形態2のトイレ装置における粉砕ポンプ起動時の状態を示す概略図である。
図9】実施形態3のトイレ装置における便器洗浄前の状態を示す概略図である。
図10】実施形態3のトイレ装置における粉砕ポンプ起動時の状態を示す概略図である。
図11】粉砕機能を具備した排出羽を備えた粉砕ポンプの要部を示す斜視図である。
図12図11の排出羽の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示のトイレ装置1,2を具体化した実施形態1及び2について、図面を参照しつつ説明する。以下の説明において、上下方向は、大便器10を水平な設置面に設置した状態における上下方向である。前後方向は、大便器10を水平な設置面に設置した状態において、便鉢部11に対して給水管21が接続されている方向が後方であり、その逆方向が前方である。左右方向は、大便器10を水平な設置面に設置した状態において、大便器10の前方から大便器10の後方を見た際の左右方向である。各図において、上方向はX軸の正方向、下方向はX軸の負方向、前方向はY軸の正方向、後方向はY軸の負方向である。
【0009】
<実施形態1>
実施形態1のトイレ装置1は、図1及び図2に示すように、大便器10、及び粉砕ポンプ40を備えている。大便器10は、便鉢部11、上昇路13、及び給水部20を有している。便鉢部11は上方に向けて開口した鉢形状である。便鉢部11は、後側下端部に後方に向けて開口した排出口11Aが形成されている。便鉢部11は後側上部に図示しない吐水口が形成されている。吐水口は、給水部20から供給された洗浄水Wを吐水する。
【0010】
上昇路13は円筒状である。上昇路13の上流端は、便鉢部11の後側下端部に形成された排出口11Aに接続している。上昇路13は便鉢部11に通じている。上昇路13は後方に向けて斜め上方に伸びている。つまり、上昇路13は下流側に向けて上り傾斜している。上昇路13の下流端部13Dは、後方に向けて水平方向に伸びている。
【0011】
大便器10は、便鉢部11の下部と、上昇路13とによって貯留部30を構成している。上昇路13は貯留部30の下流側に伸びている。貯留部30は、便器洗浄を実行する前において、図1に示すように、洗浄水Wが貯留されている。大便器10は、便器洗浄を実行する前の待機状態において、貯留部30に貯留した洗浄水Wによって水封が形成されている。貯留部30に貯留した洗浄水Wによって形成された水封の水面(封水面)は、上昇路13の上流端の上端Hよりも高い位置になる。上昇路13の上流端の上端Hは、封水面の最も低い位置である。貯留部30は、便器洗浄が実行された後、後述する粉砕ポンプ40が起動する前の状態において、図2に示すように、汚物F(排泄物やトイレットペーパー等)や洗浄水W等を一時的に貯留する。
【0012】
給水部20は、図1及び図2に示すように、給水管21を有している。給水管21の上流端部は、図示しない洗浄タンク等の給水源に接続されている。給水管21の下流端部は、大便器10に接続されている。給水部20は、便器洗浄を実行すると所定水量の洗浄水Wを大便器10に供給する。給水部20から供給された洗浄水Wは、便鉢部11の吐水口から吐水され、便鉢部11に沿って旋回しつつ貯留部30に流れ込む。
【0013】
粉砕ポンプ40は、図3から図5に示すように、回転駆動部50、ハウジング60、4個の排出羽70、及び粉砕刃80を有している。回転駆動部50は電動モータによって回転軸部51を回転駆動する。回転軸部51は、回転駆動部50の前面の中央部から突出して前後方向に伸びている。回転軸部51は円柱状である。
【0014】
ハウジング60は回転駆動部50の前面よりも前方に設けられている。ハウジング60は、側壁部61と、前壁部63とを有している。ハウジング60の側壁部61は円筒状である。ハウジング60の側壁部61の後端縁は回転駆動部50の前面に連続している。ハウジング60の側壁部61の中心軸と回転軸部51の中心軸とは、同一直線上に伸びている。ハウジング60の側壁部61は流出口65が形成されている。流出口65は排出管90の上流端が接続されている。排出管90は、流出口65の下流側近傍において、ハウジング60の側壁部61の接線方向に伸びている。排出管90はハウジング60内に通じている。
【0015】
ハウジング60の前壁部63は、図4に示すように、側壁部61の前端部に取り付けられている。前壁部63は、側壁部61との間にパッキンPを挟み込んでおり、側壁部61に水密状に取り付けられている。ハウジング60の前壁部63は中央部が円形に開口した流入口67が形成されている。ハウジング60の前壁部63は、流入口67に沿って連続した円筒状の接続部69が前方向に伸びている。接続部69は、図1及び図2に示すように、上昇路13の後方に向けて水平方向に伸びる下流端部13Dに接続されている。ハウジング60は上昇路13に通じている。粉砕ポンプ40のハウジング60の接続部69と上昇路13の下流端部13Dとの接続部分は、上下方向において、上昇路13の上流端の上端Hよりも高い。粉砕ポンプ40は、上昇路13の下流側に設けられており、上下方向において、貯留部30の最下端部Lよりも高い位置に配置されている。
【0016】
各排出羽70は、図3から図5に示すように、回転駆動部50の回転軸部51と共に回転する円板71の前面に設けられている。円板71は、中心を回転駆動部50の回転軸部51が貫通し、回転軸部51に固定されている。回転軸部51は、円板71の前面及び後面に直交する方向に伸びている。各排出羽70は、円板71の前面から前方に立ち上がり、径方向に伸びた平板である。各排出羽70の円板71の中心に近い縁部70Aは、図3に示すように、前方に向けて円板71の外周方向に傾斜している。各排出羽70の前端縁部70Bは、円板71の前面に平行に伸びている。各排出羽70の円板71の外周縁に近い縁部70Cは、円板71の前面及び排出羽70の前端縁部70Bに直交している。各排出羽70の後端縁部70Dは、円板71の前面に連続している。各排出羽70は、前後方向の寸法よりも円板71の径方向の寸法が長い。各排出羽70と円板71は、ハウジング60内に収容されている。各排出羽70は、図5に示すように、円板71の周方向に等間隔に配置されている。つまり、回転駆動部50の回転軸部51の前方から見た正面視(以下、「正面視」という。)において、円板71の周方向に隣り合う排出羽70のそれぞれが伸びている方向に沿った仮想線が交差する角度αは90度である。
【0017】
粉砕刃80は金属板を切断及び曲げ加工によって形成されている。粉砕刃80は、図5及び図6に示すように、正面視において、外形が略長方形状である。粉砕刃80は、基板部81、及び一対の傾斜片部85を有している。一対の傾斜片部85は、粉砕刃80の長手方向の両端部のそれぞれに設けられている。粉砕刃80は、傾斜片部85以外の部分が基板部81に相当する。
【0018】
基板部81は、図6に示すように、中央部82、及び一対の両端部83を有している。基板部81の中央部82は、基板部81の前方から見た正面視において、長方形状である。各両端部83は、基板部81の前方から見た正面視において、長方形状である。各両端部83は、中央部82の対角から伸びた中央部82の長辺82Lのそれぞれに連続している。各両端部83の一方の長辺である第1長辺83LAは、中央部82の短辺82Sの延長線上に伸びている。各両端部83の他方の長辺である第2長辺83LBは、中央部82の長辺82Lの略中央から伸びている。
【0019】
各傾斜片部85は、略正方形状である。各傾斜片部85は、基板部81の各両端部83の第2長辺83LBに連続し、第2長辺83LBを折り目にして折られ、前方に向けて傾斜している。粉砕刃80は、基板部81の中央部82の中心を回転駆動部50の回転軸部51の先端部が貫通する貫通孔82Aが形成されている。粉砕刃80は、基板部81の前方から見た正面視において、貫通孔82Aの中心点に対して2回軸対称の形状である。粉砕刃80は、図3から図5に示すように、基板部81の中央部82の貫通孔82Aを貫通した回転軸部51に固定されている。回転軸部51は、基板部81の前面及び後面に直交する方向に伸びている。粉砕刃80は、回転駆動部50の回転軸部51と共に回転する。
【0020】
粉砕ポンプ40は、図3から図5に示すように、回転駆動部50が駆動して回転軸部51が回転すると、各排出羽70及び粉砕刃80が回転する。粉砕ポンプ40は、各排出羽70が回転軸部51と共に回転することによって、粉砕刃80で破砕された汚物F等の固形物(大便やトイレットペーパ)と洗浄水W等とを攪拌しつつ、遠心力によってハウジング60内の汚水を流出口65から排出管90へ送り出す。粉砕ポンプ40は、各排出羽70が回転軸部51と共に回転することによって、ハウジング60内に汚物Fや洗浄水W等を吸い込む。つまり、粉砕ポンプ40は、遠心ポンプとして機能するポンプ部を有している。粉砕ポンプ40のポンプ部は、ハウジング60、回転駆動部50、及び各排出羽70によって構成されている。
【0021】
粉砕ポンプ40は、粉砕刃80が回転軸部51と共に回転することによって、ハウジング60内の汚物F等の固形物を粉砕刃80が粉砕しつつ、洗浄水W等と攪拌して流動性の高い汚水にする。つまり、粉砕ポンプ40は、汚物F等の固定物を粉砕する粉砕部を有している。粉砕ポンプ40の粉砕部は、ハウジング60、回転駆動部50、及び粉砕刃80によって構成されている。このように、粉砕ポンプ40は、ポンプ部と、粉砕部とを一体的に設けている。粉砕刃80は、各排出羽70よりも前方に設けられている。つまり、粉砕刃80は、各排出羽70よりも上流側に配置されている。このことから、この粉砕ポンプ40は、ポンプ部よりも上流側に粉砕部を設けていると言うことができる。
【0022】
このトイレ装置1は、便器洗浄を実行する前の待機状態において、図1に示すように、大便器10の貯留部30に洗浄水Wが貯留されている。待機状態における大便器10の貯留部30に貯留されている洗浄水Wの水量は、一例として約1.5Lである。このトイレ装置1の大便器10は、貯留部30に貯留した洗浄水Wによって水封を形成している。
【0023】
このトイレ装置1は、便器洗浄を実行すると、給水部20から所定水量の洗浄水Wを大便器10に供給し、大便器10の吐水口から便鉢部11に洗浄水Wを吐水する。このトイレ装置1は、1回の便器洗浄において、一例として約1.5Lの洗浄水Wを大便器10の吐水口から吐水する。このトイレ装置1は、便器洗浄が実行されて所定水量の洗浄水Wが便鉢部11に吐水されると、図2に示すように、貯留部30内の水位が上昇して、洗浄水W等が粉砕ポンプ40のハウジング60内に流入し、粉砕ポンプ40のハウジング60内が満水状態になる。ここでいう満水状態は、ハウジング60内が完全に満水である状態に限らず、粉砕ポンプ40のポンプ部が貯留部30から汚物Fや洗浄水W等をハウジング60内に吸い込み、ハウジング60内の汚水を流出口65から送り出すことができる程度にハウジング60内に洗浄水W等が流入している状態であればよい(以下同じ)。
【0024】
粉砕ポンプ40のハウジング60内が満水状態になると、このトイレ装置1は粉砕ポンプ40の回転駆動部50を起動する。すると、粉砕ポンプ40は、ポンプ部による吸引力によって、貯留部30に滞留していた汚物Fや洗浄水W等を吸い込み、ハウジング60内に流入させる。粉砕ポンプ40は、粉砕部において、ハウジング60内の汚物F等の固形物を粉砕刃80で粉砕しつつ、洗浄水W等と攪拌し、流動性の高い汚水にする。粉砕ポンプ40は、ポンプ部による圧送力によって、ハウジング60内の汚水を流出口65から排出管90へ送り出す。粉砕ポンプ40は、貯留部30から汚物Fや洗浄水W等が無くなると、回転駆動部50を停止する。このトイレ装置1は、回転駆動部50が停止すると、給水部20から所定水量の洗浄水Wを大便器10に供給して、大便器10の吐水口から吐水された洗浄水Wが貯留部30に貯留され、便器洗浄を終了する。この所定水量は、一例として約1.5Lである。これによって、このトイレ装置1は、便器洗浄を実行する前の待機状態に復帰する。
【0025】
<実施形態2>
実施形態2のトイレ装置2は、図7及び図8に示すように、大便器100が実施形態1の大便器10と異なる。実施形態1と同様な構成は同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0026】
大便器100は、便器本体110、給水部20、連結管120、フラッパ弁130、及び貯留部150を備えている。便器本体110は、便鉢部111と周壁部113とを有している。便鉢部111は便器本体110の前側に設けられている。便鉢部111は上方に向けて開口した鉢形状である。便鉢部111は下端部に鉛直方向に開口した排出口111Aが形成されている。排出口111Aは、便鉢部111の下端部に鉛直方向に円筒状に伸びている。排出口111Aの下端部は、円筒状のパッキン115が取り付けられている。排出口111Aの中心軸とパッキン115の中心軸とは同一直線上に伸びている。排出口111Aの内径とパッキン115の内径とは略同一である。便鉢部111は後側上部に図示しない吐水口が形成されている。吐水口は、給水部20から供給された洗浄水Wを吐水する。周壁部113は、便鉢部111の上端縁から下方に広がり、便鉢部111を囲むように形成されている。便器本体110は、便鉢部111より下方に周壁部113に囲まれた内部空間Sを形成している。
【0027】
連結管120は円筒状である。連結管120は、中心軸が上下方向に延びた状態で便鉢部111の下部に接続している。連結管120の中心軸は、便鉢部111の排出口111Aの中心軸と同一直線状に伸びている。連結管120の内径は、便鉢部111の排出口111Aに取り付けられたパッキン115の外径よりも大きい。連結管120の上端縁部は、便鉢部111の排出口111Aの周りに接続している。連結管120は便器本体110の内部空間Sに収容されている。
【0028】
フラッパ弁130は連結管120内に取り付けられている。フラッパ弁130は便鉢部111の下部に形成された排出口111Aを開閉する。フラッパ弁130は、フラッパ弁本体131、支持部材133、及び引張りコイルばね135を有している。フラッパ弁本体131は円板状である。フラッパ弁本体131の外径は、便鉢部111の排出口111Aに取り付けられたパッキン115の外径よりも大きく、連結管120の内径よりも小さい。フラッパ弁130が便鉢部111の排出口111Aを閉じた状態は、フラッパ弁本体131が水平状態に位置して便鉢部111の排出口111Aに取り付けられたパッキン115の下端縁に上面が接触した状態である。
【0029】
支持部材133は、第1支持部133A、及び第2支持部133Bを有している。第1支持部133A、及び第2支持部133Bは、棒状である。第1支持部133Aの一方の端部は、フラッパ弁本体131の下面の中央部に連結されている。第1支持部133Aは、フラッパ弁本体131の下面に沿って伸びている。第1支持部133Aの他方の端部は、フラッパ弁本体131の外縁よりも外方向まで伸びている。第2支持部133Bの一方の端部は、第1支持部133Aの他方の端部に連続している。第2支持部133Bは、第1支持部133Aに直交する方向であって、フラッパ弁130が便鉢部111の排出口111Aを閉じた状態において、一方の端部から他方の端部に向けて下方に伸びている。第2支持部133Bの長さは、第1支持部133Aの長さよりも短い。支持部材133は回転支持されている。支持部材133の回転軸は、第1支持部133Aと第2支持部133Bとが連続している部分である。支持部材133の回転軸は、便鉢部111の排出口111Aより後方であり、僅に下方において、左右水平方向に伸びている。フラッパ弁本体131は、便鉢部111の排出口111Aに取り付けられたパッキン115の下端縁に上面が接触して排出口111Aを閉じた状態と、上面が排出口111Aから離れて前方に向けて下方に傾斜して排出口111Aを開いた状態との間を回転移動する。
【0030】
引張りコイルばね135は、一方の端部が第2支持部133Bの他方の端部に連結され、他方の端部が連結管120の側面に連結されている。引張りコイルばね135の引張力は、フラッパ弁本体131を閉じる方向に作用している。フラッパ弁130は、フラッパ弁本体131の上面に汚物Fや洗浄水W等が載っていない場合、引張りコイルばね135の引張力によって、便鉢部111の排出口111Aを閉じている。フラッパ弁130は、フラッパ弁本体131の上面に汚物Fや洗浄水W等が載り、その重さが所定の重さよりも重くなった場合、フラッパ弁本体131が下方に回転して便鉢部111の排出口111Aを開き、汚物Fや洗浄水W等がフラッパ弁本体131から下方に落下する。フラッパ弁130は、汚物Fや洗浄水W等がフラッパ弁本体131上から落下すると、引張りコイルばね135の引張り力によって、フラッパ弁本体131が上方に回転して便鉢部111の排出口111Aを閉じる。
【0031】
貯留部150は、流入部151と、上昇路153とを有している。流入部151の上端部は、上方に開口した挿入口151Aを形成している。挿入口151Aは円筒状である。挿入口151Aの内径は、連結管120の外径よりも大きく形成されている。挿入口151Aは円筒状のパッキン157が取り付けられている。パッキン157は挿入口151Aの内周面に接触している。挿入口151Aは連結管120の下端部を挿入している。連結管120の下端部の外周面は、挿入口151Aに取り付けられたパッキン157の内周面に接触している。流入部151は、大便器100の内部空間Sに収容されている。
【0032】
上昇路153は貯留部150の下流側に伸びている。上昇路153は円筒状である。上昇路153の上流端は、流入部151の下部後方に形成された開口に沿って流入部151の下端部に接続している。上昇路153は流入部151に通じている。上昇路153は、後方に向けて斜め上方に伸びている。つまり、上昇路153は、下流側に向けて上り傾斜している。上昇路153の長さは、上昇路153の下流端部に粉砕ポンプ40のハウジング60の接続部69を接続することができる長さであればよい。上昇路153の下流端部の上端は、上下方向において、流入部151の上端部よりも低い。上昇路153は大便器100の内部空間Sに収容されている。
【0033】
貯留部150は、便器洗浄を実行する前の待機状態において、図7に示すように、洗浄水W等を貯留していない。なお、貯留部150は、便器洗浄を実行する前の待機状態において、先回の便器洗浄における洗浄水W等の残水が貯留されている場合もある。このトイレ装置2の大便器100は、便器洗浄を実行する前の待機状態において、フラッパ弁130が便鉢部111の排出口111Aを閉じている。貯留部150は、後述する粉砕ポンプ40が起動する前の状態において、図8に示すように、汚物Fや洗浄水W等を一時的に貯留する。
【0034】
粉砕ポンプ40のハウジング60の接続部69は、上昇路153の斜め上方に伸びた下流端部に接続されている。つまり、粉砕ポンプ40は、上昇路153の下流側に向けて上り傾斜した下流端部に接続されている。このため、粉砕ポンプ40は、駆動部の回転軸部51が上昇路153に沿って斜めに傾斜した状態で配置されている。粉砕ポンプ40のハウジング60の接続部69と上昇路153の下流端部との接続部分は、上下方向において、上昇路153の上流端の上端Hよりも高い。粉砕ポンプ40は、上昇路153の下流側に設けられており、上下方向において、貯留部150の最下端部Lよりも高い位置に配置されている。このトイレ装置2は、上昇路153の下流端部が低い位置であるため、粉砕ポンプ40を低い位置に配置することができる。また、このトイレ装置2は、上昇路153が短いため、粉砕ポンプ40の後端部が便器本体110の後端から後方にはみ出さないように配置することができる。
【0035】
このトイレ装置2は、便器洗浄を実行すると、給水部20から所定水量の洗浄水Wを大便器100に供給し、大便器100の吐水口から便鉢部111に洗浄水Wを吐水する。このトイレ装置2は、1回の便器洗浄において、一例として約1Lの洗浄水Wを大便器100の吐水口から吐水する。このトイレ装置2は、便器洗浄が実行されて洗浄水Wが便鉢部111に吐水されると、フラッパ弁130のフラッパ弁本体131の上面に汚物Fや洗浄水W等が載り、フラッパ弁本体131が下方に回転して便鉢部111の排出口111Aを開き、汚物Fや洗浄水W等がフラッパ弁本体131から下方に落下する。フラッパ弁130は、汚物Fや洗浄水W等がフラッパ弁本体131上から貯留部150内に落下すると、便鉢部111の排出口111Aを閉じる。汚物Fや洗浄水W等が貯留部150内に落下して貯留されると、このトイレ装置2は、図8に示すように、貯留部150内の水位が上昇して、洗浄水W等が粉砕ポンプ40のハウジング60内に流入し、粉砕ポンプ40のハウジング60内が満水状態になる。
【0036】
粉砕ポンプ40のハウジング60内が満水状態になると、このトイレ装置2は粉砕ポンプ40の回転駆動部50を起動する。すると、粉砕ポンプ40は、ポンプ部による吸引力によって、貯留部150に滞留していた汚物Fや洗浄水W等を吸い込み、ハウジング60内に流入させる。粉砕ポンプ40は、粉砕部において、ハウジング60内の汚物F等の固形物を粉砕刃80で粉砕しつつ、洗浄水W等と攪拌し、流動性の高い汚水にする。粉砕ポンプ40は、ポンプ部による圧送力によって、ハウジング60内の汚水を流出口65から排出管90へ送り出す。粉砕ポンプ40は、貯留部150から汚物Fや洗浄水W等が無くなると、回転駆動部50を停止して、便器洗浄を終了する。これによって、このトイレ装置2は、便器洗浄を実行する前の待機状態に復帰する。
【0037】
以上説明したように、実施形態1及び2のトイレ装置1,2は、便鉢部11,111と、汚物F及び便鉢部11,111に吐水された洗浄水Wを貯留する貯留部30,150と、貯留部30,150の下流側に伸びており、下流側に向けて上り傾斜した上昇路13,153と、上昇路13,153の下流側に設けられており、上下方向において、貯留部30,150の最下端部Lよりも高い位置に配置されたポンプ部と、を備えている。
【0038】
これらトイレ装置1,2は、下流側に向けて上り傾斜した上昇路13,153の下流側に設けられたポンプ部が貯留部30,150の最下端部Lよりも高い位置に配置されているため、便鉢部11,111より下側にポンプ部を配置するスペースを必要としない。このため、これらトイレ装置1,2は、全体の高さ寸法の拡大を抑えることができる。これらトイレ装置1,2は、貯留部30,150からポンプ部までの距離を短くすることによって、少ない洗浄水Wでポンプ部を駆動することができるため、節水化を図ることができる。
【0039】
実施形態1のトイレ装置1において、ポンプ部と上昇路13との接続部分は、上下方向において、上昇路13の上流端の上端Hよりも高い。このトイレ装置1は、貯留部30に貯留した洗浄水Wによって水封を形成することができる。
【0040】
実施形態1のトイレ装置1のポンプ部は、上昇路13の後方に向けて水平方向に伸びる下流端部13Dに接続されている。このトイレ装置1は、上昇路13に接続されたポンプ部による高さ寸法の拡大を抑えることができる。
【0041】
実施形態2のトイレ装置2のポンプ部は、上昇路153の下流側に向けて上り傾斜した下流端部に接続されている。このトイレ装置2は、上昇路153に接続されたポンプ部による前後方向の寸法の拡大を抑えることができる。
【0042】
実施形態1及び2のトイレ装置1,2は、ポンプ部よりも上流側に設けられ、汚物Fを粉砕する粉砕部を備えている。これらトイレ装置1,2は、粉砕部がポンプ部よりも上流側に設けられているため、粉砕部において、汚物Fを粉砕して洗浄水W等と攪拌して流動性の高い汚水にし、ポンプ部によって良好に汚水を送り出すことができる。
【0043】
実施形態1及び2の粉砕部はポンプ部に一体的に設けられている。これらトイレ装置1,2は、粉砕部をポンプ部と別に設けるものに比べて、全体の高さ寸法の拡大を抑えることができる。
【0044】
実施形態1及び2のポンプ部は、回転軸部51と、回転軸部51に取り付けられて回転する排出羽70を有しており、粉砕部は、回転軸部51に取り付けられて回転する粉砕刃80を有している。これらトイレ装置1,2は、排出羽70と粉砕刃80とを同じ回転駆動部50によって回転させることができる。このため、これらトイレ装置1,2は、回転駆動部50を排出羽70と粉砕刃80とが別々に有する場合に比べて、全体の高さ寸法の拡大を抑えることができる。
【0045】
実施形態2のトイレ装置2は、便鉢部111の下部に形成された排出口111Aを開閉するフラッパ弁130を備えており、貯留部150はフラッパ弁130よりも下流側に設けられている。このトイレ装置2は、より少ない洗浄水Wでポンプ部を駆動して汚水を送り出すことができるため、より節水化を図ることができる。
【0046】
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態1及び2に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も技術的範囲に含まれる。
(1)実施形態1の大便器10の上昇路13は、下流端部13Dが 後方に向けて水平方向に伸びている。これに対し、大便器210の上昇路213は、図9及び図10に示すように、下流端部を含む全体が下流側に向けて上り傾斜していてもよい。この場合、下流側に向けて上り傾斜した上昇路213の下流端部に粉砕ポンプ40のハウジング60の接続部69を接続することによって、図10に示すように、より少ない洗浄水Wで粉砕ポンプ40のハウジング60内を満水にし、粉砕ポンプ40を駆動することができる。図9及び図10において、実施形態1のトイレ装置1と同じ構成は同じ符号を付している。
【0047】
(2)実施形態1及び2の粉砕ポンプ40は、粉砕刃80と排出羽70とを別々に有していた。これに対し、粉砕ポンプ140は、図11に示すように、排出羽70と別体の粉砕刃80を有さず、汚物Fを粉砕する粉砕機能を具備した複数の排出羽170を有していてもよい。図11において、実施形態1の粉砕ポンプ40と同じ構成は同じ符号を付している。
【0048】
この場合、20枚の排出羽170は、円板171の外周縁部に並んで設けられている。円板171は、図12に示すように、外周縁から中心に向けて切り込まれた第1切込辺171Aが周方向に等間隔に20個形成され、各第1切込辺171Aに連続して外周縁に平行に切り込まれた第2切込辺171Bが形成されている。第2切込辺171Bは、第1切込辺171Aに連続した一方の端部から隣の第1切込辺171Aよりも手前まで伸びている。各排出羽170は、第2切込辺171Bの他方の端部から径方向に外周縁に向けて伸びる仮想直線を折り目Xにして折られ、第2切込辺171Bの一方の端部に連続して伸びる第1切込辺171A側に向けて後方に傾斜して形成されている。
【0049】
この排出羽170が外周縁部に並んで設けられた円板171が回転軸部51と共に回転することによって、粉砕ポンプ140は、ハウジング60内の汚物F等の固形物を粉砕しつつ、洗浄水W等と攪拌して流動性の高い汚水にして、ハウジング60内の流出口65から排出管90へ送り出すことができる。
【0050】
(3)トイレ装置は、車載トイレ、仮設トイレ等の移動するものであってもよい。
(4)実施形態1及び2のトイレ装置は、粉砕部を備えている。これに対し、トイレ装置は、粉砕部を備えていなくてもよい。
(5)実施形態1及び2のトイレ装置は、粉砕部とポンプ部とが一体的に設けられている。これに対し、粉砕部とポンプ部とは、別体であってもよい。
(6)実施形態2の大便器はフラッパ弁を備えている。これに対し、大便器はフラッパ弁を備えていなくてもよい。
(7)実施形態2の大便器のフラッパ弁は機械式である。これに対し、大便器のフラッパ弁は電動式であってもよい。
(8)排出羽及び粉砕刃は、実施形態1及び2の形態に限らず、他の形態であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1,2…トイレ装置、11,111…便鉢部、F…汚物、30,150…貯留部、13,153…上昇路、50,60,70…ポンプ部(50…回転駆動部、60…ハウジング、70…排出羽)、50,60,80…粉砕部(80…粉砕刃)、70…排出羽、130…フラッパ弁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12