(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139946
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】フィルム延伸装置、およびフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B29C 55/06 20060101AFI20230927BHJP
B29L 7/00 20060101ALN20230927BHJP
【FI】
B29C55/06
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045744
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】吉田 涼
【テーマコード(参考)】
4F210
【Fターム(参考)】
4F210AG01
4F210AJ08
4F210AK04
4F210AK07
4F210AR12
4F210QA03
4F210QC02
4F210QD33
4F210QD36
4F210QD43
4F210QG01
4F210QG18
4F210QM02
4F210QM03
4F210QM11
4F210QM13
(57)【要約】
【課題】フィルムの幅収縮を抑制することができるフィルム延伸装置を提供する。
【解決手段】フィルム延伸装置(100)は、一対のガイドローラ(R1,R2)と、ヒータ(4)とを備え、前記一対のガイドローラ間のフィルムと前記ヒータの放射面との距離は、20~100mmであり、前記一対のガイドローラ間のフィルムの主面に垂直な方向からの平面視において、前記ヒータの放射面の下流側端部は、第1ガイドローラ(R1)の回転軸から上流方向に20mm離れた第1位置(A1)よりも下流方向に位置する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に張力を加えられて搬送されるフィルムの前記搬送方向に離間して配置され、それぞれ前記フィルムの幅方向に延在する一対のガイドローラと、
前記一対のガイドローラ間のフィルムの表面を熱放射により加熱する第1加熱部とを備え、
前記一対のガイドローラ間のフィルムと前記第1加熱部の放射面との距離は、20~100mmであり、
前記一対のガイドローラ間のフィルムの主面に垂直な方向からの平面視において、前記第1加熱部の放射面の下流側端部は、前記一対のガイドローラのうちの下流側の第1ガイドローラの回転軸から上流方向に20mm離れた第1位置よりも下流方向に位置する、フィルム延伸装置。
【請求項2】
前記一対のガイドローラのうちの上流側の第2ガイドローラは、前記一対のガイドローラ間のフィルムの主面を延長した第1仮想平面に対して前記第1加熱部とは反対側から搬送される前記フィルムをガイドし、
前記第1ガイドローラは、搬送される前記フィルムを、前記第1仮想平面に対して前記第1加熱部とは反対側にガイドするように、
前記一対のガイドローラが、それぞれ前記フィルムの裏面に当接する、請求項1に記載のフィルム延伸装置。
【請求項3】
前記平面視において、前記第1加熱部の放射面の下流側端部は、前記第1位置と、前記第1ガイドローラの回転軸から下流方向に20mm離れた第2位置との間に位置する、請求項1または2に記載のフィルム延伸装置。
【請求項4】
前記平面視において、前記第1加熱部の放射面の上流側端部は、前記一対のガイドローラのうちの上流側の第2ガイドローラの回転軸から下流方向に20mm離れた第3位置よりも上流方向に位置する、請求項1から3のいずれか1項に記載のフィルム延伸装置。
【請求項5】
前記一対のガイドローラはそれぞれ、内部に冷媒または熱媒を通すための空間を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載のフィルム延伸装置。
【請求項6】
前記第1加熱部は、少なくとも1つの遠赤外線ヒータを備える、請求項1から5のいずれか1項に記載のフィルム延伸装置。
【請求項7】
前記第1加熱部は、前記フィルムの幅方向に沿って並設された複数の遠赤外線ヒータを備える、請求項6に記載のフィルム延伸装置。
【請求項8】
前記第2ガイドローラに対して上流側に離間して配置され、前記フィルムの幅方向に延在する第3ガイドローラと、
前記第1ガイドローラに対して下流側に離間して配置され、前記フィルムの幅方向に延在する第4ガイドローラと、
前記第3ガイドローラと前記第2ガイドローラとの間のフィルムの表面を熱放射により加熱する第2加熱部と、
前記第1ガイドローラと前記第4ガイドローラとの間のフィルムの表面を熱放射により加熱する第3加熱部と、をさらに備え、
前記第3ガイドローラは、前記第2ガイドローラと前記第3ガイドローラとの間のフィルムの主面を延長した第2仮想平面に対して前記第2ガイドローラとは反対側から搬送される前記フィルムをガイドし、
前記第4ガイドローラは、搬送される前記フィルムを、前記第1ガイドローラと前記第4ガイドローラとの間のフィルムの主面を延長した第3仮想平面に対して前記第1ガイドローラとは反対側にガイドするように、
前記第3ガイドローラおよび前記第4ガイドローラが、それぞれ前記フィルムの表面に当接する、請求項2に記載のフィルム延伸装置。
【請求項9】
搬送方向に張力を加えられて搬送されるフィルムの前記搬送方向に離間して配置され、それぞれ前記フィルムの幅方向に延在する一対のガイドローラによりフィルムに張力を加える工程と、
前記一対のガイドローラ間のフィルムの表面を熱放射により加熱する第1加熱部によりフィルムを加熱する工程と、を含み、
前記一対のガイドローラ間のフィルムと前記第1加熱部の放射面との距離は、20~100mmであり、
前記一対のガイドローラ間のフィルムの主面に垂直な方向からの平面視において、前記第1加熱部の放射面の下流側端部は、前記一対のガイドローラのうちの下流側の第1ガイドローラの回転軸から上流方向に20mm離れた第1位置よりも下流方向に位置する、フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム延伸装置、およびフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1~6は、フィルムの搬送方向に印加される張力と、赤外線ヒータ等の加熱部によるフィルムの加熱とにより、フィルムを搬送方向に延伸するフィルム延伸装置を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2009/119328号
【特許文献2】特開2014-083703号公報
【特許文献3】特開昭52-142776号公報
【特許文献4】特開昭52-141875号公報
【特許文献5】特開昭47-009338号公報
【特許文献6】特開2020-049796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のフィルム延伸装置において、加熱部によるフィルムの加熱は一対のローラ間において実施される。ここで、上記の特許文献1~6において、加熱部とローラとの位置関係を詳細に規定するものはない。本発明者の検討によれば、加熱部とローラとの位置関係を適切に設定しないと、フィルムが幅方向に収縮してしまう可能性があることが判明した。
【0005】
本発明の一態様は、フィルムの幅収縮を抑制することができるフィルム延伸装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフィルム延伸装置は、搬送方向に張力を加えられて搬送されるフィルムの前記搬送方向に離間して配置され、それぞれ前記フィルムの幅方向に延在する一対のガイドローラと、前記一対のガイドローラ間のフィルムの表面を熱放射により加熱する第1加熱部とを備え、前記一対のガイドローラ間のフィルムと前記第1加熱部の放射面との距離は、20~100mmであり、前記一対のガイドローラ間のフィルムの主面に垂直な方向からの平面視において、前記第1加熱部の放射面の下流側端部は、前記一対のガイドローラのうちの下流側の第1ガイドローラの回転軸から上流方向に20mm離れた第1位置よりも下流方向に位置する。
【0007】
また、前記一対のガイドローラのうちの上流側の第2ガイドローラは、前記一対のガイドローラ間のフィルムの主面を延長した第1仮想平面に対して前記第1加熱部とは反対側から搬送される前記フィルムをガイドし、前記第1ガイドローラは、搬送される前記フィルムを、前記第1仮想平面に対して前記第1加熱部とは反対側にガイドするように、前記一対のガイドローラが、それぞれ前記フィルムの裏面に当接してもよい。
【0008】
また、前記平面視において、前記第1加熱部の放射面の下流側端部は、前記第1位置と、前記第1ガイドローラの回転軸から下流方向に20mm離れた第2位置との間に位置してもよい。
【0009】
また、前記平面視において、前記第1加熱部の放射面の上流側端部は、前記一対のガイドローラのうちの上流側の第2ガイドローラの回転軸から下流方向に20mm離れた第3位置よりも上流方向に位置してもよい。
【0010】
また、前記一対のガイドローラはそれぞれ、内部に冷媒または熱媒を通すための空間を有してもよい。
【0011】
また、前記第1加熱部は、少なくとも1つの遠赤外線ヒータを備えてもよい。
【0012】
また、前記第1加熱部は、前記フィルムの幅方向に沿って並設された複数の遠赤外線ヒータを備えてもよい。
【0013】
また、前記フィルム延伸装置は、前記第2ガイドローラに対して上流側に離間して配置され、前記フィルムの幅方向に延在する第3ガイドローラと、前記第1ガイドローラに対して下流側に離間して配置され、前記フィルムの幅方向に延在する第4ガイドローラと、前記第3ガイドローラと前記第2ガイドローラとの間のフィルムの表面を熱放射により加熱する第2加熱部と、前記第1ガイドローラと前記第4ガイドローラとの間のフィルムの表面を熱放射により加熱する第3加熱部と、をさらに備え、前記第3ガイドローラは、前記第2ガイドローラと前記第3ガイドローラとの間のフィルムの主面を延長した第2仮想平面に対して前記第2ガイドローラとは反対側から搬送される前記フィルムをガイドし、前記第4ガイドローラは、搬送される前記フィルムを、前記第1ガイドローラと前記第4ガイドローラとの間のフィルムの主面を延長した第3仮想平面に対して前記第1ガイドローラとは反対側にガイドするように、前記第3ガイドローラおよび前記第4ガイドローラが、それぞれ前記フィルムの表面に当接してもよい。
【0014】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係るフィルムの製造方法は、搬送方向に張力を加えられて搬送されるフィルムの前記搬送方向に離間して配置され、それぞれ前記フィルムの幅方向に延在する一対のガイドローラによりフィルムに張力を加える工程と、前記一対のガイドローラ間のフィルムの表面を熱放射により加熱する第1加熱部によりフィルムを加熱する工程と、を含み、前記一対のガイドローラ間のフィルムと前記第1加熱部の放射面との距離は、20~100mmであり、前記一対のガイドローラ間のフィルムの主面に垂直な方向からの平面視において、前記第1加熱部の放射面の下流側端部は、前記一対のガイドローラのうちの下流側の第1ガイドローラの回転軸から上流方向に20mm離れた第1位置よりも下流方向に位置する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、フィルムの幅収縮を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフィルム延伸装置の概略構成の一例を示す模式図である。
【
図2】上記フィルム延伸装置の概略構成の他の例を示す模式図である。
【
図3】上記フィルム延伸装置のガイドローラの内部構造の一例を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係るフィルム延伸装置の概略構成のさらに他の例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔実施形態1〕
(フィルム延伸装置の概略構成)
図1は、本発明の一実施形態に係るフィルム延伸装置100の概略構成の一例を示す模式図である。
図2は、フィルム延伸装置100の概略構成の他の例を示す模式図である。
図1および
図2は、フィルムFの長さ方向に平行かつ、フィルムFの幅方向に直交する面に直交する方向から見た図である。
図1および
図2において、搬送方向はフィルムFの長さ方向である。
【0018】
図1および
図2に示すように、フィルム延伸装置100は、第1ガイドローラR1、第2ガイドローラR2およびヒータ4(第1加熱部)を備える。フィルム延伸装置100は、さらに第2ガイドローラR2の上流側および第1ガイドローラR1の下流側にそれぞれ駆動ローラ(不図示)を備える。フィルム延伸装置100は、このような離間された駆動ローラの周速差によりフィルムFを搬送方向に延伸する装置である。フィルムFは、例えば熱可塑性フィルムである。フィルムFの幅は、例えば約300mmである。
【0019】
第1ガイドローラR1および第2ガイドローラR2は、搬送方向に張力を加えられて搬送されるフィルムFの搬送方向に離間して配置され、それぞれフィルムFの幅方向に延在する一対のガイドローラR1,R2である。フィルムFに加えられる張力は約188N/mである。
【0020】
第1ガイドローラR1は、一対のガイドローラのうち下流側のガイドローラである。第2ガイドローラR2は、一対のガイドローラのうち上流側のガイドローラである。以下、一対のガイドローラR1,R2を特に区別する必要がない場合は、単にガイドローラRと称する。
【0021】
ヒータ4は、一対のガイドローラR1,R2間のフィルムF(以下、ローラ間フィルムF21と称する)の表面を熱放射により加熱する。ヒータ4は、放射領域におけるフィルムFの表面温度をガラス転移温度より高い温度(例えば約255~275℃)まで加熱する。これにより、フィルムFを一対のガイドローラR1,R2の張力により搬送方向に延伸可能とする。なお、ローラ間フィルムF21の主面に垂直な方向からの平面視(以下、「上記平面視」と称する)において、ヒータ4の放射領域の搬送方向の端部は、ヒータ4の放射面4Sの搬送方向の端部と略一致する。
【0022】
ヒータ4は、少なくとも1つの遠赤外線ヒータを備えてもよい。遠赤外線ヒータそれぞれの放射面は、略矩形形状である。
【0023】
ヒータ4は、フィルムFの幅方向に沿って並設された複数の遠赤外線ヒータを備えてもよい。例えば、幅が約300mmであるフィルムFの表面を幅方向に沿って均一に加熱するように、それぞれ約120mm×120mmの寸法を有する3つの遠赤外線ヒータが設置間隔を約5mm空けて設けられる。このような構成により、ヒータ4の放射領域をフィルムFの幅よりも広くし、ヒータ4により加熱されるフィルムFの表面温度をフィルムFの幅方向にわたって均一に保つことができる。ここで、仮に幅方向に沿って複数の遠赤外線ヒータの温度(ヒータの出力)を一定としたとき、ヒータ4の放射領域における両端部は中心部より温度が低くなる。そのため、ヒータ4は、フィルムFの表面温度を幅方向に沿って均一とするように、ヒータ温度に勾配が(例えば中心部の遠赤外線ヒータほどヒータ温度が低く)設定される。
【0024】
また、ヒータ4は、フィルムFの搬送方向に沿って並設された複数の遠赤外線ヒータを備えてもよい。以下、上述の1つ以上の遠赤外線ヒータの放射面が連結された面のことを、ヒータ4の放射面4Sと称する。
【0025】
また、反射板(不図示)がフィルムFに対してヒータ4の反対側に設けられてもよい。反射板は、ヒータ4から放射された熱または熱線をフィルムFに向かって反射する。
【0026】
第2ガイドローラR2は、ローラ間フィルムF21を延長した第1仮想平面S1に対してヒータ4とは反対側から搬送されるフィルムFをガイドする。第2ガイドローラR2は、フィルムFの裏面に当接する。第1ガイドローラR1は、搬送されるフィルムFを、第1仮想平面S1に対してヒータ4とは反対側にガイドする。第1ガイドローラR1は、フィルムFの裏面に当接する。すなわち、
図1および
図2に示すように、一対のガイドローラR1,R2は、フィルムFの表面がヒータ4側に向かうように、フィルムFの搬送経路を凸状に規定する。
【0027】
上述の構成により、フィルム延伸装置100は、ガイドローラRによる張力とヒータ4の加熱とにより、フィルムFを搬送方向に延伸することができる。また、加熱されたフィルムFをガイドローラRの表面に接触させることにより、フィルムFをガラス転移温度以下に冷却しつつ、フィルムFの冷却による幅方向の収縮をガイドローラRのグリップ力により抑制することができる。ここで、仮にヒータ4によりフィルムFが加熱された後、第1ガイドローラR1がフィルムFに接触するまでにフィルムFの温度が下がってしまうと、フィルムFが幅方向に収縮してしまう。このようなフィルムFの幅方向の収縮を抑制するために、ヒータ4とガイドローラRとの位置関係が以下のように規定される。
【0028】
(ヒータとガイドローラとの位置関係)
図1および
図2を参照し、ヒータ4とガイドローラRとの位置関係について以下に詳細に説明する。
【0029】
ローラ間フィルムF21とヒータ4の放射面4Sとの距離L1(照射距離L1)は、20~100mmである。ローラ間フィルムF21とヒータ4の放射面4Sとの距離L1を近くすることで、フィルムFの表面を効率よく加熱することができる。なお、ヒータ4の照射距離L1は、ヒータ4の出力に応じて設定される。例えば、ヒータ4の出力が140Vである場合、ヒータ4の照射距離L1は40mm程度に設定されることが好ましい。
【0030】
また、
図1および
図2に示すように、上記平面視において、ヒータ4の放射面4Sの下流側端部は、第1位置A1よりも下流方向(
図1および
図2における右方)に位置する。ここで、第1位置A1は、上記平面視において、第1ガイドローラR1の回転軸から上流方向(
図1および
図2における左方)に距離L2(20mm)離れた位置である。これにより、第1ガイドローラR1のグリップ力がフィルムFに働き始める位置までの、フィルムFがヒータ4により加熱されない領域を短くすることができる。したがって、フィルムFの幅収縮を抑制することができる。ここで、ヒータ4の下流側端部は、上記平面視において、
図1に示すように第1ガイドローラR1の回転軸より上流方向にあっても、
図2に示すように第1ガイドローラR1の回転軸より下流方向にあってもよい。
【0031】
さらに、
図1に示すように、上記平面視において、ヒータ4の放射面4Sの下流側端部は、第1位置A1と第2位置A2との間に位置してもよい。ここで、第2位置A2は、上記平面視において、第1ガイドローラR1の回転軸から下流方向に距離L3(20mm)離れた位置である。これにより、ヒータ4の加熱領域の下流側端部と第1ガイドローラR1のグリップ力がフィルムFに働き始める位置とをなるべく近付けることにより、フィルムFの幅収縮を抑制しつつフィルムFの表面を効率よく加熱することができる。
【0032】
さらに、
図1および
図2に示すように、上記平面視において、ヒータ4の放射面4Sの上流側端部は、第3位置A3よりも上流方向に位置してもよい。ここで、第3位置A3は、上記平面視において、第2ガイドローラR2の回転軸から下流方向に距離L4(20mm)離れた位置である。これにより、ヒータ4の加熱領域をローラ間フィルムF21のほぼ全体とすることにより、フィルムの幅収縮を抑制しつつフィルムを効率よく加熱することができる。
【0033】
同様に、
図1に示すように、上記平面視において、ヒータ4の放射面4Sの上流側端部は、第3位置A3と第4位置A4との間に位置してもよい。ここで、第4位置A4は、上記平面視において、第2ガイドローラR2の回転軸から上流方向に距離L5(20mm)離れた位置である。
【0034】
このような、搬送方向におけるローラ間フィルムF21の両端部とヒータ4の放射面4Sの両端部とをできるだけ揃える上述の構成により、フィルムFがヒータ4により加熱されない領域を短くし、フィルムFの幅収縮を抑制することができる。一方、上述の構成により、ガイドローラRはヒータ4の熱放射に晒されてしまう可能性がある。そのため、ガイドローラRの表面温度に分布ができてしまい、フィルムFが均一に延伸されなくなる可能性がある。そのため、ガイドローラRのフィルムFとの接触面の表面温度を均一にするため、ガイドローラRは以下のような内部構造を有してもよい。
【0035】
(ガイドローラの内部構造)
図3は、フィルム延伸装置100のガイドローラRの内部構造(ジャケット構造)の一例を示す模式図である。
図3に示すように、ガイドローラRは、ガイドローラRを温度調整するために、内部に冷媒または熱媒を通すための空間13を有する。
【0036】
ガイドローラRは、ローラ表層部11およびローラ軸部12を備える。ガイドローラRの内部には軸方向に延びた空間13が形成されている。ガイドローラRの軸方向の両端部には、それぞれ冷媒または熱媒の入口14および出口15が形成されている。また、空間13には、軸方向に沿ったらせん状の経路を規定する仕切り部材が設けられている。これにより、入口14から流入される冷媒または熱媒は、(
図3の矢印で示すように)空間13を軸周りに旋回して通過し、出口15へ流出する。そのため、空間13に冷媒または熱媒を通すことにより、ガイドローラRの表面温度を均一に保つことができる。したがって、ガイドローラRがヒータ4の熱放射に晒されてしまう場合であっても、上述のジャケット構造によりガイドローラRのフィルムFとの接触面の表面温度を均一に保つことで、フィルムFを均一に延伸することができる。
【0037】
なお、冷媒または熱媒としては例えば冷却水、あるいは油等が挙げられるが、これに限定されない。冷媒または熱媒は、少なくともガイドローラRの表面温度を、ガラス転移温度より低く制御できればよい。また、
図3では、冷媒または熱媒をワンパスで流す構造を示しているが、これに限定されない。
【0038】
〔実施形態2〕
本発明の他の実施形態について、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0039】
図4は、本発明の一実施形態に係るフィルム延伸装置100の概略構成のさらに他の例を示す模式図である。
図4は、フィルムFの長さ方向に平行かつ、フィルムFの幅方向に直交する面に直交する方向から見た図である。
図4において、搬送方向はフィルムFの長さ方向である。
【0040】
図4に示すように、フィルム延伸装置100は、第3ガイドローラR3、第4ガイドローラR4、ヒータ4A(第2加熱部)およびヒータ4B(第3加熱部)をさらに備える。第3ガイドローラR3は、第2ガイドローラR2に対して上流側に離間して配置され、フィルムFの幅方向に延在する。第4ガイドローラR4は、第1ガイドローラR1に対して下流側に離間して配置され、フィルムFの幅方向に延在する。ヒータ4Aは、第3ガイドローラR3と第2ガイドローラR2との間のフィルムF(以下、ローラ間フィルムF32と称する)の表面を熱放射により加熱する。ヒータ4Bは、第1ガイドローラR1と第4ガイドローラR4との間のフィルムF(以下、ローラ間フィルムF14と称する)の表面を熱放射により加熱する。
【0041】
また、第3ガイドローラR3は、ローラ間フィルムF32の主面を延長した第2仮想平面S2に対して第2ガイドローラR2とは反対側から搬送されるフィルムFをガイドする。第4ガイドローラR4は、搬送されるフィルムFを、ローラ間フィルムF14の主面を延長した第3仮想平面S3に対して第1ガイドローラR1とは反対側にガイドする。第3ガイドローラR3および第4ガイドローラR4は、フィルムFの表面に当接する。すなわち、
図4に示すように、4つのガイドローラR1~R4は、フィルムFの搬送経路を、それぞれ一対のガイドローラに挟まれた(短スパンの)3つの経路に分割する。当該3つの経路において、それぞれローラ間フィルムは、一対のガイドローラの張力とヒータの加熱とにより搬送方向に延伸される。
【0042】
これにより、フィルムFの搬送経路を一対のガイドローラに挟まれた(長スパンの)1つの経路に規定する場合と比較し、フィルムの幅収縮を抑制することができる。
【0043】
なお、ヒータ4Aと一対のガイドローラR2,R3との位置関係は、
図1および
図2で示したヒータ4と一対のガイドローラR1,R2との位置関係と同様に規定されてもよい。また、ヒータ4Bと一対のガイドローラR1,R4との位置関係は、
図1および
図2で示したヒータ4と一対のガイドローラR1,R2との位置関係と同様に規定されてもよい。これにより、フィルムFがヒータ4,4A,4Bにより加熱されない領域を短くし、フィルムFの幅収縮を抑制することができる。
【0044】
また、ヒータ4の温度は、ヒータ4Aの温度よりも10~20℃高く設定されてもよい。同様に、ヒータ4の温度は、ヒータ4Bの温度よりも10~20℃高く設定されてもよい。これにより、フィルム延伸装置100は、フィルムFに対して上流から順に余熱、延伸、緩和プロセスを実施することができる。フィルムFに対して余熱プロセスを実施することで、延伸ムラによるフィルムFの変形およびカールなどを低減することができる。また、フィルムFに対して緩和プロセスを実施することで、フィルムFの温度が下がった時点におけるフィルムFの残留応力を低減することができる。
【0045】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
4 ヒータ(第1加熱部)
4A ヒータ(第2加熱部)
4B ヒータ(第3加熱部)
4S 放射面
13 空間
100 フィルム延伸装置
A1 第1位置
A2 第2位置
A3 第3位置
R1 第1ガイドローラ
R2 第2ガイドローラ
R3 第3ガイドローラ
R4 第4ガイドローラ
S1 第1仮想平面
S2 第2仮想平面
S3 第3仮想平面