(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023139974
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】水質計及び付着防止方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/00 20230101AFI20230927BHJP
E02B 1/00 20060101ALI20230927BHJP
B63B 59/04 20060101ALI20230927BHJP
C02F 1/30 20230101ALI20230927BHJP
【FI】
C02F1/00 U
E02B1/00 301Z
C02F1/00 V
B63B59/04
C02F1/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045787
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507030863
【氏名又は名称】株式会社セシルリサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】柳川 敏治
(72)【発明者】
【氏名】尾山 圭二
(72)【発明者】
【氏名】西田 有理花
(72)【発明者】
【氏名】山下 桂司
(72)【発明者】
【氏名】神谷 享子
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 伸介
【テーマコード(参考)】
4D037
【Fターム(参考)】
4D037AA05
4D037AA06
4D037AB03
4D037AB18
4D037BA16
4D037BB01
4D037BB02
(57)【要約】
【課題】継続的に水中での測定を正確に行うことができる水質計、及び生物及びバイオフィルムの付着を好ましく抑制できる付着防止方法を提供すること。
【解決手段】センサ装置と、センサ装置の検出部に対して光を照射する照射装置と、照射装置を制御する制御部と、を有する水質計であり、照射装置から照射される光は、400~420nmの波長域においてピークを有し、センサ装置は、予め定められた所定の検出タイミング毎に検出動作を行い、制御部は、所定の検出タイミング以外の照射時間毎に照射装置から検出部に対して間欠的に光が照射されるように、照射装置を制御する、水質計。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサ装置と、前記センサ装置の検出部に対して光を照射する照射装置と、前記照射装置を制御する制御部と、を有する水質計であり、
前記照射装置から照射される光は、400~420nmの波長域においてピークを有し、
前記センサ装置は、予め定められた所定の検出タイミング毎に検出動作を行い、
前記制御部は、前記所定の検出タイミング以外の照射時間毎に前記照射装置から前記検出部に対して間欠的に光が照射されるように、前記照射装置を制御する、水質計。
【請求項2】
前記制御部は、前記照射時間の合計が、前記照射時間と前記照射装置から光が照射されない時間との合計に対して30~70%となるように、前記照射装置を制御する、請求項1に記載の水質計。
【請求項3】
前記照射装置の照射面は、前記検出部に対向して配置される、請求項1又は2に記載の水質計。
【請求項4】
水中に浸漬される対象物への生物及びバイオフィルムの付着を防止する付着防止方法であって、
400~420nmの波長域においてピークを有する光を、光が照射される時間の割合が、光が照射される時間と光が照射されない時間との合計に対して30~70%となるように、前記対象物に対して間欠的に照射する、付着防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水質計及び生物防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水温計、塩分濃度計、溶存酸素濃度計、クロロフィル計等の水質計を水中に浸漬させ、環境測定を行うことが行われている。長期間に亘り、例えば海洋環境の測定を行う場合、水質計のセンサ装置にフジツボ類やイガイ類等の付着生物や藻類、バイオフィルム等の異物が付着することで、水質計で正確な測定を行うことが困難になるという問題がある。また、水質計以外にも、水中に浸漬されている水中構造物(例えば、火力発電所、原子力発電所等の海水系統設備)において、点検窓に対して上記フジツボ類やイガイ類等の付着生物やバイオフィルム等の異物が付着することで、上記水中構造物の点検を行うことが困難になるという課題がある。
【0003】
上記課題を解決するため、水中構造物に対して、409~412nmの波長を含む光を照射することで、水中構造物に対する付着生物の付着を防止する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された方法は、水中構造物に対して放射照度の高い光が照射される箇所への付着生物の付着を抑制できる。一方で、光照射装置同士の間や端部等の放射照度の低い光が照射される箇所に対しては、光によって付着生物を誘引してしまう可能性や、藻類等の植物の繁茂が促進されてしまう可能性があり、生物及びバイオフィルムの付着を抑制する効果が不十分であるという課題があった。また、水質計に対して光を照射した状態で検出を行う場合、正確な検出結果が得られないという課題があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、継続的に水中での測定を正確に行うことができる水質計、及び生物及びバイオフィルムの付着を好ましく抑制できる付着防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1) 本発明は、センサ装置と、前記センサ装置の検出部に対して光を照射する照射装置と、前記照射装置を制御する制御部と、を有する水質計であり、前記照射装置から照射される光は、400~420nmの波長域においてピークを有し、前記センサ装置は、予め定められた所定の検出タイミング毎に検出動作を行い、前記制御部は、前記所定の検出タイミング以外の照射時間毎に前記照射装置から前記検出部に対して間欠的に光が照射されるように、前記照射装置を制御する、水質計に関する。
【0008】
(2) 前記制御部は、前記照射時間の合計が、前記照射時間と前記照射装置から光が照射されない時間との合計に対して30~70%となるように、前記照射装置を制御する、(1)に記載の水質計。
【0009】
(3) 前記照射装置の照射面は、前記検出部に対向して配置される、(1)又は(2)に記載の水質計。
【0010】
(4) また、本発明は、水中に浸漬される対象物への生物及びバイオフィルムの付着を防止する付着防止方法であって、400~420nmの波長域においてピークを有する光を、光が照射される時間の割合が、光が照射される時間と光が照射されない時間との合計に対して30~70%となるように、前記対象物に対して間欠的に照射する、付着防止方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、継続的に水中での測定を正確に行うことができる水質計、並びに生物及びバイオフィルムの付着を好ましく抑制できる付着防止方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る水質計の構成を示す図である。
【
図2】本発明の第2実施形態に係る水質計の構成を示す図である。
【
図3】本発明の第3実施形態に係る水質計の構成を示す図である。
【
図4】本発明の第4実施形態に係る水質計の構成を示す図である。
【
図5】本発明の実施例で使用した実験装置を説明する図である。
【
図6】本発明の比較例に係る試験後の試験板を示す画像である。
【
図7】本発明の実施例に係る試験後の試験板を示す画像である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、本発明は以下の実施形態に制限されず、適宜変更が可能である。
【0014】
<水質計>
本実施形態に係る水質計は、海洋、河川、又は湖沼等の環境における水の水質を所定の期間、例えば1日間以上継続して測定するために用いられる。水質計により測定される水質測定項目としては、例えば、水温、塩分濃度、溶存酸素(DO)濃度、クロロフィル、有機物、濁度、照度、pH、ORP(酸化還元電位)、導電率、比重、深度、流向流速、各種イオン濃度、可視光及び/又は赤外光画像、等が挙げられる。本実施形態に係る水質計は、上記の水質測定項目を複数測定可能であってもよい。
【0015】
本実施形態に係る水質計は、センサ装置と、センサ装置の検出部に対して光を照射する照射装置と、照射装置を制御する制御部と、を有する。
【0016】
《第1実施形態》
本実施形態に係る水質計1は、
図1に示すように、センサ装置としての塩分濃度センサ(検出部31)、及び水温センサ(検出部32)を有する水温塩分計である。水質計1は、上記以外に、照射装置20a及び20bと、本体部4と、制御部5と、支持体7aと、を備える。
【0017】
(照射装置)
照射装置20a及び20bは、400~420nmの波長域においてピークを有する光を、塩分濃度センサの検出部31、及び水温センサの検出部32に対して間欠的に照射する。これにより、塩分濃度センサの検出部31、及び水温センサの検出部32に対する生物及びバイオフィルムの付着が抑制される。照射装置20a及び20bは、例えばLED照射装置であり、1つ又は複数のLED素子を含んで構成される。照射装置20a及び20bは、それぞれ筐体部21a及び21bと、照射面22a及び22bと、を有する。照射面22aは、塩分濃度センサの検出部31が配置される孔部の一方の開口31a、及び水温センサの検出部32に対向して配置される。照射面22bは、塩分濃度センサの検出部31が配置される孔部の他方の開口31bに対向して配置される。
【0018】
上記検出部に付着し得る生物としては、水中に配置される対象物の表面に付着する性質を持つ生物であれば特に限定されないが、例えば、イガイ類、フジツボ類等の付着生物等が挙げられる。付着生物は、初期幼生の間は海中を浮遊しており、付着期幼生になると、適当な対象物に付着して成体に変態する生物である。
【0019】
イガイ類とは、イガイ科(Mytilidae)の二枚貝類の総称であり、例えば、ヒバリガイなどのヒバリガイ亜科(Modiolinae)、イシマテ等のイシマテ亜科(Lithophaginae)、キザミガイ、ホトトギスガイ等のキザミガイ亜科(Crenellinae)、イガイ、カワヒバリガイ、ムラサキイガイ等のイガイ亜科(Mytilinae)等が含まれる。また、フジツボ類とは、甲殻類(Crustacea)、まん脚亜綱(Cirripadia)、及び完胸目(Thoracica)に分類されるものの総称であり、例えば、タテジマフジツボ、アメリカフジツボ、アカフジツボ、サンカクフジツボ、オオアカフジツボ、サラサフジツボ、イワフジツボ、シロスジフジツボ、及びヨーロッパフジツボなどを含むフジツボ型亜目(Balanomorpha)に属するものが含まれる。
【0020】
上記検出部に付着し得るバイオフィルムとは、水中に配置される対象物の表面に、微生物によって形成される構造体である。バイオフィルムは通常は膜状であって、微生物が分泌した多糖等の細胞外高分子物質(EPS, extracellular polymeric substance)を含む。また、バイオフィルムには、微生物の遺骸、排泄物、糞、棲管等が含まれていてもよい。ここで微生物とは、細菌類、真菌類、藍藻類、原生動物等に属する生物が例示できる。また、付着珪藻類、緑藻類、褐藻類、紅藻類等の微小藻体、カイメン類、ヒドロ虫類、クラゲ類、管棲多毛類、コケムシ類、ヨコエビ類等の幼生もこれに含まれる。
【0021】
照射装置20a及び20bから照射される光は、400~420nmの波長域においてピークを有する。波長が380nm以下の紫外線は生物及びバイオフィルムの付着抑制効果があるものの、海水中での透過率が低い問題がある。照射光の波長を上記範囲とすることで、好ましい付着抑制効果が得られる。照射光の波長は、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記以外の波長域を含んでいてもよい。例えば、400~440nmの波長域の光を含んでいてもよい。
【0022】
照射装置20a及び20bから照射される光の放射照度は、生物及びバイオフィルムの付着を抑制する観点から25Wm-2以上であることが好ましく、50Wm-2以上であることがより好ましく、100Wm-2以上であることが更に好ましい。なお、本明細書における放射照度とは、放射照度計Pyranometer LI-200(メイワフォーシス株式会社製)により計測される放射照度の値を意味するものとする。
【0023】
照射装置20a及び20bから間欠的に光を照射することで、連続的に光を照射するよりも、光が照射される検出部31、及び検出部32に対する異物の付着をより好ましく抑制できる。詳細には、連続的に光を照射する場合、強い光が照射される箇所には生物及びバイオフィルム等の異物が付着しないものの、比較的弱い光が照射される光軸の周辺部には、藻類類等の光合成により成長する生物が増殖しやすくなる場合がある。これは、照射装置20a及び20bから照射される光が光合成に有効な光の波長を含むためと考えられる。照射装置20a及び20bから間欠的に光が照射されることで、藻類等の増殖が抑制される。上記の理由については定かではないが、間欠的に光が照射されることで、藻類等の光合成を行うための光量が不足し、成長が阻害されることが理由として考えられる。
【0024】
上記照射装置20a及び20bから間欠的に光が照射されることで、照射装置20a及び20bの照射面22a及び22bに対する藻類等の付着を抑制する効果が得られる。照射装置20a及び20bが複数のLED素子を含んで構成され、連続的に照射装置20a及び20bから光が照射される場合、複数のLED素子同士の間に藻類等が付着することで、照射される光の放射照度が低下する場合がある。しかし、照射装置20a及び20bから間欠的に光が照射されることで、照射装置20a及び20bが複数のLED素子を含む場合であっても、照射される光の放射照度が低下することを抑制できる。また、照射装置20a及び20bから間欠的に光が照射されることで、LED素子の経時的な劣化が抑制されるため、水質計1の耐久性を向上できる。
【0025】
(センサ装置)
塩分濃度センサは、水中の塩分濃度を検出するセンサ装置である。塩分濃度センサの検出部31は、液体が流通可能な孔部内に設けられる。上記孔部に対する生物及びバイオフィルムの付着により海水等の液体の流通が阻害されると、塩分濃度センサによる正確な塩分濃度の測定を行うことができない。本実施形態に係る水質計1の照射装置20a及び20bから照射される光により、検出部31だけでなく、検出部31が配置される孔部に対する生物及びバイオフィルムの付着が抑制される。これにより、塩分濃度センサにより継続的かつ正確に塩分濃度の測定を行うことができる。
【0026】
水温センサは、水温を検出するセンサ装置である。水温センサの検出部32に対し、照射装置20aから照射される光により、検出部32に対する生物及びバイオフィルムの付着が抑制される。これにより、水温センサにより継続的かつ正確に水温の測定を行うことができる。
【0027】
センサ装置としての塩分濃度センサ、及び水温センサは、予め定められた所定の検出タイミング毎に、検出動作を行うように設定される。上記検出を行う検出間隔は特に限定されないが、センサ装置の検出結果が照射装置から照射される光による残熱の影響を受けないようにするため、例えば、10分間以上の間隔とすることができる。上記検出間隔は、1日間隔としてもよい。塩分濃度センサ、及び水温センサの所定の検出タイミングは、同一のタイミングであることが好ましい。
【0028】
(本体部)
本体部4は、塩分濃度センサ、及び水温センサを収容する。上記以外に、本体部4は、塩分濃度センサ、及び水温センサによる測定結果を記憶する記憶部を備えていてもよい。
【0029】
(制御部)
制御部5は、照射装置20a及び20bから間欠的に光が照射されるように、照射装置20a及び20bの照射タイミングを制御する。制御部5は、それぞれ配線6a及び6bにより、照射装置20a及び20bに対して通信可能に接続される。
【0030】
照射装置20a及び20bは、上記塩分濃度センサ、及び水温センサが検出動作を行う所定のタイミング以外の照射時間毎に、塩分濃度センサの検出部31、及び水温センサの検出部32に対して光を照射するように、制御部5によって制御される。照射装置20a及び20bから検出部31、及び検出部32に対して光が照射されている最中に、塩分濃度センサ、及び水温センサが検出動作を行う場合、塩分濃度センサ、及び水温センサにより正確な測定を行うことができない場合がある。しかし、上記構成により、上記塩分濃度センサ、及び水温センサが検出動作を行っている最中には、照射装置20a及び20bは、検出部31、及び検出部32に対して光を照射しないように制御部5により制御される。これにより、塩分濃度センサ、及び水温センサにより正確な測定を行うことができる。正確な測定を行う観点から、上記塩分濃度センサ、及び水温センサが検出動作を行う所定のタイミングは、照射装置20a及び20bから光が照射されない時間の中央のタイミングとすることが好ましい。
【0031】
制御部5は、照射装置20a及び20bから検出部31及び検出部32に対して光が照射される照射時間の割合が、照射時間と照射装置20a及び20bから光が照射されない時間との合計(即ち、経過時間)に対して30~70%となるように、照射装置20a及び20bを制御することが好ましい。これにより、生物及びバイオフィルム等の異物の付着を防止する効果が得られ、かつ、比較的弱い光が照射される箇所に対する藻類等の付着を抑制できる。
【0032】
制御部5は、例えば、センサ装置の検出間隔が20分間隔であり、上記照射時間の割合が50%である場合、センサ装置の検出タイミングから5分経過後に照射装置20a及び20bから検出部31及び検出部32に対して光を照射させる。10分間の照射時間の間、照射装置20a及び20bから継続して光が照射される。制御部5は、10分間の照射時間が経過すると、照射装置20a及び20bからの光の照射を停止させる。その後、5分間経過後に次のセンサ装置の検出タイミングが到来し、センサ装置は検出動作を行う。これによって、例えば照射装置20a及び20bから光が照射されることによる水温上昇等のセンサ装置の検出に与える影響を無くすことができる。
【0033】
(支持体)
支持体7aは、照射装置20a及び20bを固定するための支持体であり、検出部31及び検出部32に対して外部からの水が通水可能に構成される。支持体7aは、例えば枠体形状を有し、材質としても特に限定されず、金属や樹脂等の材質を適宜用いることができる。支持体7aにより、照射面22a及び22bを、検出部31及び検出部32に対向するように配置できる。
【0034】
以下、本発明の他の実施形態について説明する。上記第1実施形態と同様の構成については、説明を省略する場合がある。
【0035】
《第2実施形態》
第2実施形態に係る水質計1aは、
図2に示すように、センサ装置としての溶存酸素(DO)濃度センサ(検出部33)と、水温センサ(検出部34)と、を有する。水質計1aは、上記以外に、照射装置20cと、本体部4aと、制御部5aと、支持体7bと、ワイパー装置8と、を備える。
【0036】
本実施形態に係る照射装置20cは、筐体部21cと、照射面22cと、を有する。本実施形態において、照射装置20cは単一の照射装置であり、照射面22cは、溶存酸素(DO)濃度センサの検出部33、及び水温センサの検出部34に対向して配置される。照射装置20cは、支持体7bにより固定されて支持される。支持体7bは、支持体7aと同様に枠体形状を有する。
【0037】
溶存酸素(DO)濃度センサは、水中の溶存酸素(DO)濃度を測定するセンサ装置である。溶存酸素(DO)濃度センサの検出部33、及び水温センサの検出部34に対して照射装置20cから400~420nmの波長域においてピークを有する光が間欠的に照射されることで、上記検出部33、及び検出部34に対する生物及びバイオフィルムの付着が抑制される。溶存酸素(DO)濃度センサ、及び水温センサの検出タイミング、並びに照射装置20cから光が照射される照射タイミングが制御部5aにより制御される構成は、第1実施形態に係る水質計1と同様である。制御部5aは、本体部4aの内部に収容され、配線6cにより照射装置20cと通信可能に接続される。
【0038】
(ワイパー装置)
ワイパー装置8は、溶存酸素(DO)濃度センサの検出部33、及び水温センサの検出部34に付着する生物及びバイオフィルムを拭き取ることで除去する装置である。ワイパー装置8は、検出部33及び検出部34に回動可能に当接する当接部を有する。上記当接部は、樹脂等の可撓性を有する部材により構成される。水質計1aは、照射装置20cに加えてワイパー装置8を有することにより、仮に一方の装置による検出部33及び検出部34に対する生物及びバイオフィルムの付着抑制又は除去効果が、装置の不調等により十分に得られない場合であっても、他方の装置により検出部33及び検出部34に対する生物及びバイオフィルムの付着抑制又は除去効果が得られるため、より確実にセンサ装置による正確な測定を行うことができる。
【0039】
《第3実施形態》
第3実施形態に係る水質計1cは、
図4に示すように、センサ装置としてのpH/ORPセンサ(検出部36)と、クロロフィル/濁度センサ(検出部37)と、深度センサ(検出部38)と、を有する。水質計1cは、上記以外に、照射装置20eと、本体部4cと、制御部5cと、を備える。
【0040】
本実施形態に係る照射装置20eは、筐体部21eと、照射面22eと、を有する。本実施形態において、照射装置20eは単一の照射装置であり、照射面22eは、pH/ORPセンサの検出部36、クロロフィル/濁度センサの検出部37、及び深度センサの検出部38に対向して配置される。照射装置20eは、支持体7cにより固定されて支持される。支持体7cは、支持体7aと同様に枠体形状を有する。
【0041】
pH/ORPセンサは、水中の水素イオン指数、及び酸化還元電位(ORP)を測定するセンサ装置である。クロロフィル/濁度センサは、水中のクロロフィル濃度、及び濁度を測定するセンサ装置である。深度センサは、水面からの深度を測定するセンサ装置である。
【0042】
pH/ORPセンサの検出部36、クロロフィル/濁度センサの検出部37、及び深度センサの検出部38に対して照射装置20eから400~420nmの波長域においてピークを有する光が間欠的に照射されることで、上記検出部36、検出部37、及び検出部38に対する生物及びバイオフィルムの付着が抑制される。pH/ORPセンサ、クロロフィル/濁度センサ、及び深度センサの検出タイミング、並びに照射装置20eから光が照射される照射タイミングが制御部5cにより制御される構成は、第1実施形態に係る水質計1と同様である。制御部5cは、本体部4cの内部に収容され、配線6eにより照射装置20eと通信可能に接続される。
【0043】
<付着防止方法>
本実施形態に係る付着防止方法は、400~420nmの波長域においてピークを有する光を、水中に浸漬される対象物に間欠的に照射することで、対象物への生物及びバイオフィルムの付着を防止する方法である。対象物に対して光が照射される時間の割合は、光が照射される時間と光が照射されない時間との合計に対して30~70%である。
【0044】
本実施形態に係る付着防止方法が適用できる対象物としては、上記水質計以外に、水中に設置される水中構造物、例えば、火力発電所、原子力発電所等の発電施設における海水系統の設備や、これらの設備点検を行うための点検窓が挙げられる。上記以外に、対象物としては、水中カメラ装置、取水管路、ロータリースクリーン、バースクリーン、ドラムスクリーン、マッセルフィルター、ネットスクリーン、取水ポンプ、循環水ポンプ、循環水管、熱交換器、復水器、軸受冷却水冷却器、潤滑油冷却器、LNG気化器、発電機、放水管路、水車、インペラ、バルブ、回転軸、導水管路、ろ過槽、膜、ダム、船舶、造船所における船体、バラスト水タンク、バラスト水導入・排出管、ポンプ類、水産養殖設備、水産試験場、水産設備、水族館、魚介類飼育水槽における水槽、配管、ポンプ類等であってもよい。
【0045】
400~420nmの波長域においてピークを有する光を対象物に照射する方法としては、上記で説明したLED照射装置を用いることができ、対象物に対する光の照射を制御する方法としては、センサ装置の検出タイミングによる制限を受けないこと以外は、上記制御部5により照射装置20a及び20bを制御する方法と同様の方法を適用できる。
【0046】
以下、本実施形態に係る付着防止方法を水中カメラ装置に適用した例を示す。水中カメラ装置1bは、
図3に示すように、センサ装置としての照度センサ(検出部35)を有する。水中カメラ装置1bは、上記以外に、照射装置20dと、本体部4bと、制御部5bと、ワイパー装置8aと、撮像部(カメラレンズ9)と、を備える。
【0047】
水中カメラ装置1bは、撮像部により定期的に水中画像を撮影可能である。上記水中画像は、例えば、可視光画像である。水中カメラ装置1bは、カメラレンズ9の周囲に複数の照射装置20dを備える。照射装置20dから、400~420nmの波長域においてピークを有する光を照射することが可能であり、更に白色光を照射できることが好ましい。
【0048】
照射装置20dから照射される、400~420nmの波長域においてピークを有する光は、制御部5bにより、光が照射される時間の割合が、光が照射される時間と光が照射されない時間との合計に対して30~70%となるように間欠的に照射される。これにより、カメラレンズ9、及び照度センサの検出部35に対して生物及びバイオフィルム等の異物の付着を防止する効果が得られ、かつ、比較的弱い光が照射される箇所に対する藻類等の付着を抑制できる。
【0049】
照射装置20dから撮像部の撮影タイミングに合わせて光を照射することで、照明として利用してもよい。例えば、撮像部の撮影タイミングに周囲の照度が低い場合に、照射装置20dから白色光を照射する場合は、照明として白色光を照射することで、撮影対象物の色情報を含めた画像を入手することができる。
【0050】
撮像部の撮影タイミングに周囲の照度が低い場合に、照射装置20dから400~420nmの波長域においてピークを有する光を照射する場合は、400~420nmの波長域においてピークを有する光は海中での透過性の高い波長域を有する光であるため、比較的遠い領域に対する水中画像を撮影することができる。
【0051】
照射装置20dは、本実施形態において、カメラレンズ9の周囲に複数(本実施形態においては、7つ)設けられる。
【0052】
照度センサ(検出部35)は、周囲の照度を計測し、周囲の照度が所定の値よりも低い条件(暗い条件)において照射装置20dから照明を点灯するためのものである。
【実施例0053】
以下、実施例に基づいて本発明の内容を更に詳細に説明する。本発明の内容は以下の実施例の記載に限定されない。
【0054】
[付着試験]
図5に示す試験装置を、発電所取水口付近の海中にクレーンで吊り下げることで設置した。設置位置は、大潮干潮時にも海上に試験装置の一部が露出しないよう、最低水面の1m下になるように調整した。試験装置は、
図5に示すように、試験板P1及び試験板P2(塩化ビニル製、25cm×25cm)、並びに試験区としての試験板P2に対してLED光を照射する水中LED照射装置(ピーク波長:405nm、デルフィス社製)を枠体7に固定した。水中LED照射装置の照射面と試験板P2との距離は約35cmとした。試験板P1に対しては光を照射せず、対照区とした。試験板P1及びP2の中央には、それぞれ水温センサの検出部Sを配置し、水温の変化を記録部Mにより記録した。試験期間は2021年8月19日から同9月14日までの約1か月間とした。試験区として、以下の3通りのLED装置を用いて試験を行った。
【0055】
実施例1:小型LED照射装置(6灯タイプ、放射照度設定:(試験板表面の位置で)100Wm-2)を用い、ラボタイマーにより15分毎に照射及び非照射の切替を行い試験板P2の中央に向けて間欠照射した。
比較例1:小型LED照射装置(6灯タイプ、放射照度設定:(試験板表面の位置で)100Wm-2)を用い、試験板P2の中央に向けて連続照射した。
比較例2:大型LED照射装置(36灯タイプ、放射照度設定:(試験板表面の位置で)100Wm-2)を用い、試験板P2の中央に向けて連続照射した。
【0056】
(試験結果)
実施例1、比較例1及び2のいずれの試験板P2においても、対照区の試験板P1と比較して、試験板P2のLED光が照射された中央部付近では生物及びバイオフィルム等の異物の付着が大きく抑制されていることが確認された。一方で、比較例1及び2の試験板P2のLED光が照射された中央部の周辺及び、照射装置の照射面には緑色の緑藻類の付着が確認された。実施例1の試験板P2には上記緑藻類の付着がほとんどみられなかった。
【0057】
図6は、付着試験後の比較例2の試験板P2の異物付着状況を撮影した画像である。比較例2の試験板P2のLED光が照射された中央部の周辺には、緑藻類A、及び繊維状の緑藻類A1が付着していた。
図7は、付着試験後の実施例1の試験板P2の異物付着状況を撮影した画像である。実施例1の試験板P2のLED光が照射された中央部の周辺には、緑藻類の付着が確認されなかった。従って、所定の波長のLED光を間欠的に照射することで、対象物へのLED光の照射箇所に対する生物及びバイオフィルム等の異物の付着だけでなく、照射箇所の周辺の領域に対する緑藻類の付着が抑制できる結果が確認された。
【0058】
水温センサにより検出された水温変化は、比較例1で用いた小型LED照射装置においては、対照区と比較して約0.4℃の水温の上昇、比較例2で用いた大型LED照射装置においては対照区と比較して約0.6℃の水温の上昇がみられた。一方で、実施例1においては、照射を非照射に切り替えると速やかに対照区と同等の水温となることが確認された。
【0059】
比較例1の付着試験後の小型LED照射装置は、付着試験後の放射照度が100Wm-2から58.2Wm-2まで低下していた。比較例2の付着試験後の小型LED照射装置は、付着試験後の放射照度が100Wm-2から22.5Wm-2まで低下していた。比較例1及び比較例2のLED照射装置の照射面を清掃し、再度放射照度を測定すると、放射照度は100Wm-2付近にまで回復した。このため、比較例1及び比較例2の放射照度の低下は、照射面に対する異物の付着によるものであると推察される。一方で、実施例1の小型LED照射装置は、付着試験後の放射照度の低下が確認されなかった。このため、所定の波長のLED光を間欠的に照射することで、LED照射装置の照射面に対する異物の付着が抑制できる結果が確認された。