(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140006
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】建具及び建具の製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 3/82 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
E06B3/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045838
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000413
【氏名又は名称】永大産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】和佐本 哲明
【テーマコード(参考)】
2E016
【Fターム(参考)】
2E016HA09
2E016KA07
2E016LA01
2E016LB12
2E016LC02
2E016MA01
2E016MA07
2E016MA11
2E016NA02
2E016RA01
(57)【要約】
【課題】反りを抑制することができる建具及び建具の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示に係る建具1は、木材製の枠体2と、該枠体2の開口を覆うようにして前記枠体2の見付け面に接着されている木材製の面材4とを備える建具1において、前記枠体2の内側に、軸長方向が前記枠体2の見込み方向に沿うようにして紙製の円筒5が複数配置されており、該円筒5の端面は前記面材4の内面に接着されており、前記円筒5の径方向の曲げに対する剛性は、前記枠体2の長手方向の曲げに対する剛性及び前記面材4の長手方向の曲げに対する剛性夫々よりも大きいことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材製の枠体と、
該枠体の開口を覆うようにして前記枠体の見付け面に接着されている木材製の面材と
を備える建具において、
前記枠体の内側に、軸長方向が前記枠体の見込み方向に沿うようにして紙製の円筒が複数配置されており、
該円筒の端面は前記面材の内面に接着されており、
前記円筒の径方向の曲げに対する剛性は、前記枠体の長手方向の曲げに対する剛性及び前記面材の長手方向の曲げに対する剛性夫々よりも大きいことを特徴とする建具。
【請求項2】
前記円筒は、紙が複数回巻き重ねられたものであることを特徴とする請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記枠体の内側に、前記枠体を補強する補強材が配されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の建具。
【請求項4】
前記円筒は、前記枠体、前記補強材、又は他の前記円筒に、ステープル留めにより固定されていることを特徴とする請求項3に記載の建具。
【請求項5】
複数の前記円筒の材積比Rは(1)式を満たすことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の建具。
R=P/D×100<21%…(1)
但し、
P:複数の前記円筒が前記面材に接着されている面積
D:前記建具の見付け面積
【請求項6】
木材製の枠体と、
該枠体の見付け面に接着されている木材製の面材と
を備える建具を製造する製造方法において、
前記枠体の内側に、軸長方向が前記枠体の見込み方向に沿うようにして紙製の円筒を複数配置し、
前記枠体の前記見付け面及び前記円筒の端面に接着剤を塗布し、
前記枠体の前記見付け面及び前記円筒の前記端面に前記面材を接着することを特徴とする建具の製造方法。
【請求項7】
前記枠体の内側に前記円筒を配置する場合に、仕様に応じて予め決定された個数の前記円筒を配置することを特徴とする請求項6に記載の建具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具及び建具の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載のフラッシュパネル(建具)は、枠体、2枚の面材、及びコアを備える。枠体及び各面材は木材製(木質材製又は無垢材製)である。コアは1枚の段ボール又はボール紙等が円筒状に形成されたものであり、枠体の内側に配される。コアの軸長方向は枠体の見込み方向に沿う。コアの軸長方向の長さは枠体の見込み寸法よりも大きい。2枚の面材は枠体を表裏から挟み、各面材は枠体の見付け面及びコアの端面に接着される。コアは、2枚の面材の間で圧縮されることにより、枠体の内側から各面材を支持する。この結果、面材の凹みを抑制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば湿度の上昇に伴って枠体及び面材が膨張し、建具に反りが生じることがある。
建具の反りを抑制するために、コアを利用することが考えられる。しかしながら、特許文献1に記載のフラッシュパネルの場合、2枚の面材の間でコアを圧縮する必要上、コアが枠体及び面材夫々よりも変形しやすいので、枠体及び面材を保形することができない。
【0005】
本開示の目的は、反りを抑制することができる建具及び建具の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る建具は、木材製の枠体と、該枠体の開口を覆うようにして前記枠体の見付け面に接着されている木材製の面材とを備える建具において、前記枠体の内側に、軸長方向が前記枠体の見込み方向に沿うようにして紙製の円筒が複数配置されており、該円筒の端面は前記面材の内面に接着されており、前記円筒の径方向の曲げに対する剛性は、前記枠体の長手方向の曲げに対する剛性及び前記面材の長手方向の曲げに対する剛性夫々よりも大きいことを特徴とする。
【0007】
本開示にあっては、枠体の開口を覆うようにして、枠体の見付け面に面材が接着されている。枠体の内側には複数の円筒が配されている。建具はフラッシュ構造を有し、複数の円筒は建具のコアとして機能する。
各円筒は紙製である。枠体及び面材夫々は木材製である。枠体、面材、及び円筒は、例えば吸湿することによって膨張する。
枠体及び面材の膨張に伴い、建具は反ろうとする。
【0008】
円筒は径方向に膨張し、円筒の軸長方向は枠体の見込み方向に沿う。故に、円筒の膨張が建具の反りを助長することはない。
また、面材の内面(面材の両面の内、枠体側の面)に円筒の端面が接着されているので、円筒が面材を補強する。
しかも、円筒の径方向の曲げに対する剛性は、枠体の長手方向の曲げに対する剛性及び面材の長手方向の曲げに対する剛性夫々よりも大きい。換言すれば、円筒は枠体及び面材夫々が反る方向には変形しにくい。故に、円筒は枠体及び面材を保形する。
以上の結果、コアを利用して建具の反りを抑制することができる。
【0009】
本開示に係る建具は、前記円筒は、紙が複数回巻き重ねられたものであることを特徴とする。
【0010】
本開示にあっては、紙が複数回巻き重ねられてなる円筒は、1枚の紙が円筒状に形成されたものに比べて、長手方向及び径方向等の剛性が大きく、変形しにくい。このような円筒は、例えばリボン状又はシート状の紙を適宜の円管に複数回巻き付けることによって、容易に得ることができる。
【0011】
本開示に係る建具は、前記枠体の内側に、前記枠体を補強する補強材が配されていることを特徴とする。
【0012】
本開示にあっては、補強材が枠体の内側から枠体を補強するので枠体が歪む虞はない。
【0013】
本開示に係る建具は、前記円筒は、前記枠体、前記補強材、又は他の前記円筒に、ステープル留めにより固定されていることを特徴とする。
【0014】
本開示にあっては、個々の円筒が配置ズレすることを防止すると共に、固定された部材同士で補強し合うことができる。
【0015】
本開示に係る建具は、複数の前記円筒の材積比Rは(1)式を満たすことを特徴とする。
R=P/D×100<21%…(1)
但し、
P:複数の前記円筒が前記面材に接着されている面積
D:前記建具の見付け面積
【0016】
本開示にあっては、材積比Rが(1)式を満たす複数の円筒が枠体の内側に配されて面材に接着されている。円筒の個数が多いほど建具の反りは抑制されるが、多数の円筒を枠体の内側に配することは困難又は煩雑な作業であり、多数の円筒を準備するためのコストが嵩む。R<21%の場合、建具の反りを実用上十分に抑制しつつ、円筒の配置を容易にし、円筒のコストを低減することができる。
【0017】
本開示に係る建具の製造方法は、木材製の枠体と、該枠体の見付け面に接着されている木材製の面材とを備える建具を製造する製造方法において、前記枠体の内側に、軸長方向が前記枠体の見込み方向に沿うようにして紙製の円筒を複数配置し、前記枠体の前記見付け面及び前記円筒の端面に接着剤を塗布し、前記枠体の前記見付け面及び前記円筒の前記端面に前記面材を接着することを特徴とする。
【0018】
本開示にあっては、枠体の開口を覆うようにして、枠体の見付け面に面材が接着される。枠体の内側には複数の円筒が配される。建具はフラッシュ構造を有し、複数の円筒は建具のコアとして機能する。
各円筒は紙製である。枠体及び面材夫々は木材製である。枠体、面材、及び円筒は、例えば吸湿することによって膨張する。
枠体及び面材の膨張に伴い、建具は反ろうとする。
【0019】
円筒は径方向に膨張し、円筒の軸長方向は枠体の見込み方向に沿う。故に、円筒の膨張が建具の反りを助長することはない。
また、面材の内面(面材の両面の内、枠体側の面)に円筒の端面が接着されているので、円筒が面材を補強する。
以上の結果、コアを利用して建具の反りを抑制することができる。
【0020】
建具の製造の際、接着剤は枠体の見付け面及び円筒の端面に塗布されるので、必要十分な量の接着剤を塗布することができる。仮に、接着剤が面材に塗布される場合、面材の、枠体にも円筒にも接触しない部分に接着剤が塗布されてしまうので、接着剤の無駄が生じる。
【0021】
本開示に係る建具は、前記枠体の内側に前記円筒を配置する場合に、仕様に応じて予め決定された個数の前記円筒を配置することを特徴とする。
【0022】
本開示にあっては、仕様に応じた適切な個数の円筒を枠体の内側に配する。円筒が少なすぎないので建具の反りを実用上十分に抑制することができる。また、円筒が多すぎないので円筒を容易に配置することができると共に円筒のコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示の建具及び建具の製造方法によれば、建具の反りを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】実施の形態1に係る建具の一部切り欠き正面図である。
【
図2】
図1におけるII-II線による断面図である。
【
図6】実施の形態2に係る他の構成を有する建具の正面図である。
【
図8】実施の形態3に係る他の構成を有する建具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本開示の実施の形態について説明する。以下の説明では、図において矢符で示す上下、前後、及び左右を使用する。
【0026】
実施の形態 1.
図1は実施の形態1に係る建具の一部切り欠き正面図である。
図中1は建具であり、建具1は枠体2を備える。
枠体2は矩形状をなし、各2本の縦枠21及び横枠22を備える。
2本の縦枠21夫々は上下に延び、互いに左右に対向している。2本の横枠22夫々は左右に延びる。2本の横枠22の一方は2本の縦枠21夫々の上端部に架け渡され、他方は2本の縦枠21夫々の下端部に架け渡されている。隣り合う縦枠21と横枠22とは、例えばビス留めによって互いに固定されている。縦枠21及び横枠22夫々は木材製であり、例えばLVL(単板積層材)製である。
【0027】
枠体2の内側には、枠体を補強する補強材31~36が配されている。補強材31~36夫々の見込み寸法(前後長さ)は枠体2の見込み寸法に等しい。補強材31~36夫々の素材は限定されないが、例えば木材製である。補強材31~36夫々は、例えばビス留めによって枠体2に固定されている。
本実施においては、上側の横枠22に、横材である補強材31が固定されている。補強材31は2本の縦枠21にわたる。補強材31と下側の横枠22とには、縦材である補強材32が架け渡されている。補強材31は左右に2本並設されている。補強材31同士は互いに適長離隔している。補強材31,32により、横枠22が枠体2の内外に向けて湾曲する虞はない。
【0028】
更に、縦枠21と補強材32とに、横材である補強材33が架け渡されている。補強材33は上下に複数(図中5本)並設されている。補強材33同士は互いに適長離隔している。同様に、2本の補強材32には複数(図中2本)の補強材34が架け渡されている。補強材32~34により、縦枠21が枠体2の内外に向けて湾曲する虞はない。
【0029】
右側の縦枠21の長手方向の中途には補強材35が固定されている。補強材35は隣り合う2本の補強材33にわたる。補強材35は、例えば上下に延びる複数の棒材が左右に隣接したものである(後述する
図3参照)。
補強材36は、枠体2の隅部に固定されている。図中3つの補強材36が右上隅部と左右下隅部とに配されている。
本実施の形態では補強材31~36は左右非対称に配されているが、左右対称でもよい。
【0030】
建具1は取っ手11を備える。
取っ手11は、複数の補強材33の内、右側の縦枠21及び補強材35夫々に隣接する補強材33と、補強材35とに固定されている。建具1が開き戸である場合、取っ手11は、例えば使用者に把持されるハンドルと、ハンドルを支持し、補強材33,35に固定される基部とを備える。取っ手11は枠体2の前側及び後側夫々に1つずつ設けられている。
【0031】
図2は
図1におけるII-II線による断面図である。
図1及び
図2に示すように、建具1は2枚の面材4を備える。
2枚の面材4夫々は矩形状をなす。2枚の面材4は前後に向かい合う。各面材4は木材製であり、例えばMDF(中質繊維板)である。
【0032】
2枚の面材4の間に枠体2が挟まれている。面材4の上下左右の寸法は、枠体2の上下左右の寸法に等しい。面材4は、枠体2の開口を覆う。前側の面材4の内面(後面)は、枠体2及び補強材31~36夫々の前側の見付け面(前面)に接着されている。同様に、後側の面材4の内面は、枠体2及び補強材31~36夫々の後側の見付け面に接着されている。
【0033】
面材4の外面及び枠体2の左右の端面夫々は、例えば図示しない化粧シートによって化粧されている。前述した取っ手11は、例えばビスが取っ手11の基部と化粧シートに覆われた面材4とを貫通するようにして、補強材33,35に固定されている。
【0034】
建具1は複数の円筒5を備える。
円筒5の軸長方向の長さは枠体2の見込み寸法に等しい。円筒5は、不図示の紙が複数回巻き重ねられたものである。例えば円筒5の内径は3インチであり、円筒5の厚さは10mmである。
【0035】
円筒5は、軸長方向が枠体2の見込み方向(前後方向)に沿い、且つ、周面の一部が他の部材に接触するようにして、枠体2の内側に配置されている。円筒5は、自身に隣接する部材に、ステープル留めにより固定されている。
ステープル留めによって円筒5が固定される部材は、枠体2の縦枠21若しくは横枠22、又は、枠体2に直接的若しくは間接的に固定された部材(補強材31~36、或いは他の円筒5等)である。円筒5が縦枠21、横枠22、又は補強材31~36に固定される場合、図示しないステープルは円筒5の端面と縦枠21、横枠22、又は補強材31~36の見付け面とに跨ることが望ましい。円筒5同士が固定される場合、図示しないステープルは2つの円筒5夫々の端面に跨ることが望ましい。
【0036】
円筒5の前側の端面は前側の面材4の内面に接着されている。円筒5の後側の端面は後側の面材4の内面に接着されている。
円筒5の、径方向の曲げ(例えば
図2に破線の矢符で示す方向の曲げ)に対する剛性は、枠体2の、長手方向の曲げ(例えば
図2に白抜き矢符で示す方向の曲げ)に対する剛性よりも大きい。同様に、円筒5の径方向の曲げに対する剛性は、面材4の長手方向の曲げに対する剛性よりも大きい。
【0037】
複数の円筒5の材積比Rは(1)式を満たす。
R=P/D×100<21%…(1)
但し、Pは複数の円筒5が面材4に接着されている面積であり、Dは建具1の見付け面積である。
【0038】
以上のような建具1はフラッシュ構造を有し、複数の円筒5は建具1のコアとして機能する。
枠体2、面材4、及び円筒5は、例えば吸湿することによって膨張する。建具1は板状なので、枠体2及び面材4の膨張に伴い、建具1は例えば
図2に白抜き矢符で示す方向に反ろうとする。
【0039】
一方、円筒5は径方向に膨張する。故に、円筒5の膨張が建具1の反りを助長することはない。
また、ステープル留め又は接着によって円筒5が他の部材に固定されているので、円筒5が位置ズレすることを防止すると共に、固定された部材同士で(例えば枠体2若しくは面材4と円筒5とで、又は円筒5同士で)補強し合うことができる。
【0040】
しかも、円筒5の径方向の曲げに対する剛性は、枠体2の長手方向の曲げに対する剛性及び面材4の長手方向の曲げに対する剛性夫々よりも大きい。換言すれば、円筒5は枠体2及び面材4夫々が反る方向には変形しにくい。故に、円筒5は枠体2及び面材4を保形する。
以上の結果、コアを利用して建具1の反りを抑制することができる。
【0041】
紙が複数回巻き重ねられてなる円筒5は、1枚の紙が円筒状に形成されたものに比べて、長手方向及び径方向等の剛性が大きく、変形しにくい。このような円筒5は、例えばリボン状又はシート状の紙を適宜の円管に複数回巻き付けることによってスパイラル紙管又は平巻紙管を形成し、形成したスパイラル紙管又は平巻紙管を所定の長さに切断することによって、容易に得ることができる。前述の円管に巻き付けるべき紙は、例えばライナー紙、クラフト紙、又はボール紙である。
【0042】
次に、建具1の製造手順について説明する。
図3は枠体2の正面図である。
作業者は、各2本の縦枠21及び横枠22を準備して枠体2を形成する。作業者は、補強材31~36を準備して枠体2を補強する。補強材31~36が枠体2の内側から枠体2を補強するので、建具1の製造中又は製造後に枠体2が歪む虞はない。
【0043】
図4は円筒5の配置を説明するための正面図である。
設計者は、建具1の仕様に応じて、複数の円筒5の材積比Rが(1)式を満たすように円筒5の個数を決定する。作業者は、設計者によって予め決定された個数の円筒5を準備する。
例えば、円筒5の個数の決定の際に、設計者は、建具1に求められる反りにくさと枠体2の内部寸法とに応じて、各円筒5の外径、厚さ、及び長さ、並びに円筒5の個数及び配置を決定する。この場合、円筒5の準備の際に、作業者は、設計者によって予め決定された外径及び厚さの紙管を調達又は製造し、調達又は製造した紙管を予め決定された長さに切断する。
【0044】
円筒5は、建具1を製造するための専用品でもよく、市販の紙筒から形成した汎用品でもよい。又は、円筒5は、例えば市販の化粧シートが販売時に巻き付けられていた芯材から形成したリサイクル品でもよい。リサイクル品の場合、廃材を利用するので建具1の製造コストを低減することができ、廃材の量を低減することができるので環境に配慮することができる。
複数の円筒5夫々のサイズ及び円筒5を構成する紙の種類等が互いに同じである場合、サイズ及び紙の種類等が他の円筒5とは異なる円筒5が交じっている場合に比べて、コストダウンを図ることができる。
【0045】
複数の円筒5を準備し終えた作業者は、枠体2の内側に、軸長方向が枠体2の見込み方向に沿うようにして、各円筒5が他の部材に接触するようにして複数の円筒5夫々を所定の位置に配すると共に、ステープルを用いて隣接する部材に固定する。
本実施の形態においては、40個の円筒5が枠体2の周方向に並び、各円筒5は縦枠21、横枠22、及び補強材31,33,35,36の内の少なくとも何れか1つに接してステープル留めされる。補強材32,34にステープル留めされる円筒5及び他の円筒5のみにステープル留めされる円筒5はない。複数の円筒5は左右対称に配される。
なお、円筒5の個数及び配置はここで例示したものに限定されない。
【0046】
円筒5の個数が多いほど建具1の反りは抑制されるが、多数の円筒5を枠体2の内側に配することは困難又は煩雑な作業であり、多数の円筒5を準備するためのコストが嵩む。R<21%の場合、建具1の反りを実用上十分に抑制しつつ、円筒5の配置を容易にし、円筒5のコストを低減することができる。
【0047】
枠体2の内側に円筒5を配した後で、作業者は、枠体2の見付け面及び円筒5の端面に接着剤を塗布し(不図示)、枠体2の見付け面及び円筒5の端面に面材4を接着する。この作業を、作業者は前後の面材4夫々に対して行なう(
図2参照)。
また、作業者は、化粧シートによる化粧及び取っ手11の固定を行なう(
図1参照)。
【0048】
建具1の製造の際、接着剤は枠体2及び補強材31~36夫々の見付け面と円筒5の端面とに塗布されるので、必要十分な量の接着剤を塗布することができる。仮に、接着剤が面材4に塗布される場合、面材4の、枠体2にも補強材31~36にも円筒5にも接触しない部分に接着剤が塗布されてしまうので、接着剤の無駄が生じる。
円筒5は複数の紙が径方向に積層されたような構成なので、円筒5の端面は面材4の一面よりも接着剤を吸収しやすい。作業者が、接着剤が塗布された円筒5の端面の状態を視認することにより、円筒5の端面に必要十分な量の接着剤が塗布されたか否かを判断することができる。
【0049】
なお、円筒5は、紙製に限定されず、木材製、竹製、又は合成樹脂等でもよい。同一の建具1が、互いに素材が異なる複数の円筒5を備えてもよい。ただし、円筒5は、枠体2と面材4とを接着するために用いる接着剤によって面材4に接着することが可能でなければならない。
円筒5は、枠体2又は補強材31~36に、或いは互いに固定されていなくてもよい。この場合、円筒5はステープル留めによる固定が可能な構成でなくてもい。
建具1のコアは、複数の円筒5に限定されず、例えば複数の角筒でもよい。
複数の円筒5の材積比Rは(1)式を満たしていなくてもよい。この場合、複数の円筒5が上下左右方向に圧縮された状態で枠体2の内側に詰め込まれてもよい。
【0050】
補強材31~36並びに円筒5夫々のサイズ、個数、及び配置等は、実施の形態1にて例示したものに限定されない。これらは建具1の仕様に応じて適切に設計される。以下に示す建具1は、補強材31~36及び円筒5の構成を除き、実施の形態1の建具1と略同様である。以下では、実施の形態1との差異について説明し、その他、実施の形態1と同一の構成要素には同一の符号を付してそれらの説明を省略する。
【0051】
実施の形態 2.
図5は実施の形態2に係る建具1の正面図である。
図6は実施の形態2に係る他の構成を有する建具1の正面図である。
図5以降の正面図では、前側の面材4の図示を省略してある。
実施の形態1の建具1の場合、縦枠21と補強材32との間において5本の補強材33が上下に並設されている。一方、
図5に示す建具1の場合、2本の補強材33が上下に並設されており、
図6に示す建具1の場合、補強材33が存在しない。
また、本実施の形態においては、4つの補強材36が枠体2の4隅に配されている。
【0052】
図5に示す建具1は、円筒5に替えて、複数の円筒51を備える。円筒51と円筒5との違いは、円筒51の内径が10インチであり、厚さが5mmであることである。
円筒51の外径は縦枠21と補強材32との離間距離に等しい。円筒51は縦枠21と補強材32とにわたり、縦枠21及び補強材32夫々に、ステープル留めにより固定されている。円筒51は補強材32,34と共に縦枠21の湾曲の防止に寄与する。
【0053】
図6に示す建具1は、円筒5に替えて、各複数の円筒51,52を備える。円筒52と円筒5との違いは、円筒52の内径が6インチであることである。
円筒52は、2つの円筒51にわたるか、又は円筒51と円筒51以外の部材(図中、縦枠21、補強材31,35,36、又は円筒52)とにわたり、隣接する部材夫々に、ステープル留めにより固定されている。複数の円筒51,52は、補強材31及び下隅の補強材36を介して上下2本の横枠22にわたるようにして並んでいるので、横枠22の湾曲の防止に寄与する。
図6に示す建具1においては、左右2本の縦枠21に補強材35が固定されており、補強材31~36が左右対称に配されている。
【0054】
実施の形態 3.
図7は実施の形態3に係る建具1の正面図である。
図8は実施の形態3に係る他の構成を有する建具1の正面図である。
本実施の形態1の建具1は実施の形態2の
図6に示す建具1に類似するが、補強材32,34に替えて、補強材37を備える。
補強材37は、左右2本の縦枠21に架け渡されている横材であり、縦枠21が枠体2の内外に向けて湾曲することを防止する。なお、複数本の補強材37が上下に並設されてもよい。
【0055】
図7に示す建具1の場合、補強材31,37及び2本の縦枠21に囲まれた空間に、複数の円筒51が配されている。複数の円筒51は2本の縦枠21にわたるようにして並んでいる。故に、複数の円筒51は縦枠21の湾曲の防止に寄与する。
図6に示す建具1とは異なり、
図7に示す建具1は円筒52を備えておらず、自身とは異なる円筒51のみに固定される円筒51が存在している。
【0056】
図8に示す建具1は、
図7に示す建具1とは異なり円筒5のみを備えている。円筒5は円筒51,52よりも小径なので、多数個の円筒5を枠体2の内側に配することができる。多数個の円筒5が縦枠21を補強するので、2本の縦枠21にわたるように複数の円筒5を並べなくても、縦枠21の湾曲を防止することができる。
本実施の形態における建具1は、何れも2本の横枠22にわたる補強材を備えていないが、横枠22は縦枠21よりも湾曲しにくい上に、補強材31及び各複数の円筒5,51が横枠22を補強するので、横枠22の湾曲を防止することができる。
【0057】
今回開示された実施の形態は、全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述した意味ではなく、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0058】
1 建具
2 枠体
31~37 補強材
4 面材
5,51,52 円筒