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特開2023-140007切削加工システム、制御方法、プログラム及び制御システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140007
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】切削加工システム、制御方法、プログラム及び制御システム
(51)【国際特許分類】
   B24B 49/12 20060101AFI20230927BHJP
   B24B 27/06 20060101ALI20230927BHJP
   B23Q 17/20 20060101ALI20230927BHJP
   B27C 5/02 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B24B49/12
B24B27/06 M
B23Q17/20 Z
B27C5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045840
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 孝輔
(72)【発明者】
【氏名】新開 弘一
(72)【発明者】
【氏名】楠 智和
(72)【発明者】
【氏名】中谷 友洋
(72)【発明者】
【氏名】西村 嘉徳
【テーマコード(参考)】
3C029
3C034
3C158
【Fターム(参考)】
3C029BB00
3C029BB10
3C034AA19
3C034BB93
3C034CA03
3C034CA04
3C034CA22
3C034CB01
3C034CB08
3C034CB13
3C034CB18
3C034DD08
3C034DD20
3C158AA02
3C158AA06
3C158AA18
3C158AB04
3C158AC02
3C158AC05
3C158BA02
3C158BA07
3C158BB06
3C158BB08
3C158BB09
3C158CB03
(57)【要約】
【課題】切削加工の作業効率を高めること。
【解決手段】切削加工システム1は、切削ユニット10と、撮像ユニット20と、制御装置60と、を備える。切削ユニット10は、対象物3に対して切削を行う切削工具11を有する。切削ユニット10は、制御装置60による制御により、切削工具11を用いて対象物3に対して切削を行う。撮像ユニット20は、対象物3を撮像する。制御装置60は、領域抽出部67と、加工制御部71と、を有する。領域抽出部67は、撮像ユニット20が対象物3を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルLM1に入力することによって、対象物3の表面において切削加工が可能な加工可能領域R1を抽出する。加工制御部71は、加工可能領域R1に対して切削を行うよう切削ユニット10を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削ユニットと、撮像ユニットと、制御装置と、を備え、
前記切削ユニットは、対象物に対して切削を行う切削工具を有し、前記制御装置による制御により、前記切削工具を用いて前記対象物に対して切削を行い、
前記撮像ユニットは、前記対象物を撮像し、
前記制御装置は、
前記撮像ユニットが前記対象物を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルに入力することによって、前記対象物の表面において切削加工が可能な加工可能領域を抽出する領域抽出部と、
前記加工可能領域に対して切削を行うよう前記切削ユニットを制御する加工制御部と、を有する、
切削加工システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記加工可能領域に前記対象物から切り出す1又は複数の加工物の加工位置を割り当てる配置パターンを作成するネスティング処理部を更に有し、
前記加工制御部は、前記ネスティング処理部で作成した前記配置パターンに基づいて前記加工位置で切削を行うように前記切削ユニットを制御する、
請求項1記載の切削加工システム。
【請求項3】
前記制御装置は、第1学習部を更に備え、
前記第1学習部は、切削加工に不適な加工不可領域をそれぞれ有する複数の前記対象物の画像を教師データとして、機械学習を行うことによって前記第1学習済みモデルを生成する、
請求項1又は2に記載の切削加工システム。
【請求項4】
前記制御装置は、良否判定部と、出力部とを更に有し、
前記良否判定部は、加工後に前記撮像ユニットが前記対象物を撮像して得た加工後画像に基づいて、前記対象物の加工の良否を判定し、
前記出力部は、前記良否判定部の判定結果を出力する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の切削加工システム。
【請求項5】
前記制御装置は、良否判定部と、第2学習部とを更に有し、
前記ネスティング処理部は、前記加工前画像における前記加工可能領域の画像を第2学習済みモデルに入力することによって前記配置パターンを作成し、
前記良否判定部は、加工後に前記撮像ユニットが前記対象物を撮像して得た加工後画像に基づいて、前記対象物の加工の良否を判定し、
前記第2学習部は、前記ネスティング処理部が作成した前記配置パターンと、前記良否判定部の判定結果とを教師データとして、前記第2学習済みモデルを再学習する、
請求項2に記載の切削加工システム。
【請求項6】
前記良否判定部は、良品と判定される前記対象物の加工後の状態に関する良品データと、不良と判定される前記対象物の前記加工後画像とを教師データとして機械学習を行うことによって生成された第3学習済みモデルに、前記加工後画像を入力することによって、前記対象物の加工の良否を判定する、
請求項4に記載の切削加工システム。
【請求項7】
画像合成部を更に備え、
前記撮像ユニットは、移動可能に設けられた前記切削ユニットに取り付けられ、複数の撮像位置のそれぞれで前記対象物を撮像しており、
前記画像合成部は、前記撮像ユニットが前記複数の撮像位置のそれぞれで前記対象物を撮像して得た複数の画像を合成することによって前記加工前画像を生成する、
請求項1~6のいずれか1項に記載の切削加工システム。
【請求項8】
前記撮像ユニットが前記複数の撮像位置のそれぞれで前記対象物を撮像して得た前記複数の画像のそれぞれについて歪み補正を行う補正部を更に備え、
前記画像合成部は、前記補正部により前記複数の画像の歪み補正が行われた後の複数の補正済み画像を合成することによって前記加工前画像を生成する、
請求項7記載の切削加工システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記加工前画像から前記対象物の上面に対応する部分画像を抽出する上面抽出部を更に備え、
前記領域抽出部は、前記加工前画像において、前記上面抽出部が抽出した前記部分画像から、前記加工可能領域を抽出する、
請求項1~8のいずれか1項に記載の切削加工システム。
【請求項10】
前記上面抽出部は、前記対象物の上面及び側面が写る複数の画像を教師データとして機械学習を行うことにより生成された第4学習済みモデルに、前記加工前画像を入力することによって前記対象物の上面に対応する前記部分画像を抽出する、
請求項9に記載の切削加工システム。
【請求項11】
切削ユニットと、撮像ユニットと、を備える切削加工システムの制御方法であって、
前記切削ユニットは、対象物に対して切削を行う切削工具を有し、
前記撮像ユニットは、前記対象物を撮像し、
前記制御方法は、
前記撮像ユニットが前記対象物を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルに入力することによって、前記対象物の表面において切削加工が可能な加工可能領域を抽出する領域抽出ステップと、
前記加工可能領域に対して切削を行うよう前記切削ユニットを制御する加工制御ステップと、を含む、
制御方法。
【請求項12】
コンピュータシステムに、請求項11に記載の制御方法を実行させるための
プログラム。
【請求項13】
撮像ユニットが対象物を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルに入力することによって、前記対象物の表面において切削加工が可能な加工可能領域を抽出する領域抽出部と、
前記加工可能領域に対して切削を行うように、前記対象物に対して切削を行う切削工具を有する切削ユニットを制御する加工制御部と、を有する、
制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に切削加工システム、制御方法、プログラム及び制御システムに関し、より詳細には対象物に対して切削を行う切削加工システム、制御方法、プログラム及び制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、切断装置を開示する。この切断装置は、パレット上の切断領域に配置された被切断材を撮像する撮像機と、切断トーチと、制御装置とで構成されている。撮像機は、被切断材の配置されたパレット上の切断領域を撮像する。制御装置は、撮像機によって撮像された画像を処理し、被切断材に対して予め記憶されている切断すべき図形を割り当てる。そして、制御装置は、割り当てたデータに基づいて切断トーチを制御し、被切断材の切断を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003-251464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被切断材の表面に切削加工に適さない部位(例えば木材の節など)がある場合、被切断材において切削加工に適さない部位以外の加工可能領域を判断し、加工可能領域を設定する作業を人が行っているため、作業の効率が悪かった。
【0005】
本開示の目的は、切削加工の作業効率を高めることができる切削加工システム、切削加工方法、プログラム及び制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の切削加工システムは、切削ユニットと、撮像ユニットと、制御装置と、を備える。前記切削ユニットは、対象物に対して切削を行う切削工具を有する。前記切削ユニットは、前記制御装置による制御により、前記切削工具を用いて前記対象物に対して切削を行う。前記撮像ユニットは、前記対象物を撮像する。前記制御装置は、領域抽出部と、加工制御部と、を有する。前記領域抽出部は、前記撮像ユニットが前記対象物を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルに入力することによって、前記対象物の表面において切削加工が可能な加工可能領域を抽出する。前記加工制御部は、前記加工可能領域に対して切削を行うよう前記切削ユニットを制御する。
【0007】
本開示の一態様の制御方法は、切削ユニットと、撮像ユニットと、を備える切削加工システムの制御方法であり、領域抽出ステップと、加工制御ステップと、を含む。前記切削ユニットは、対象物に対して切削を行う切削工具を有する。前記撮像ユニットは、前記対象物を撮像する。前記領域抽出ステップでは、前記撮像ユニットが前記対象物を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルに入力することによって、前記対象物の表面において切削加工が可能な加工可能領域を抽出する。前記加工制御ステップでは、前記加工可能領域に対して切削を行うよう前記切削ユニットを制御する。
【0008】
本開示の一態様のプログラムは、コンピュータシステムに、前記制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0009】
本開示の一態様の制御システムは、領域抽出部と、加工制御部と、を有する。前記領域抽出部は、撮像ユニットが対象物を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルに入力することによって、前記対象物の表面において切削加工が可能な加工可能領域を抽出する。前記加工制御部は、前記加工可能領域に対して切削を行うように、前記対象物に対して切削を行う切削工具を有する切削ユニットを制御する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、切削加工の作業効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態に係る切削加工システムの構成を示すブロック図である。
図2図2は、同上の切削加工システムの概略的なシステム構成図である。
図3図3は、同上の切削加工システムの動作を示すフローチャートである。
図4図4は、同上の切削加工システムの撮像ユニットによる撮像動作を説明する説明図である。
図5図5は、同上の切削加工システムの撮像ユニットが撮像した複数の画像の一例を示す説明図である。
図6図6は、同上の切削加工システムの画像合成部で合成された加工前画像の一例を示す説明図である。
図7図7は、同上の切削加工システムの上面抽出部が抽出した上面の加工前画像の一例を示す説明図である。
図8図8は、同上の切削加工システムが加工前画像から加工可能領域を抽出した抽出結果を示す説明図である。
図9図9は、同上の切削加工システムが対象物から切り出す加工物の一例を示す外観斜視図である。
図10図10は、同上の切削加工システムのネスティング処理部によって作成された配置パターンの一例を示す図である。
図11図11は、同上の切削加工システムによって切削加工が施された後の対象物を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に説明する実施形態及び変形例は、本開示の一例に過ぎず、本開示は、以下の実施形態及び変形例に限定されない。以下の実施形態及び変形例以外であっても、本開示に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0013】
(実施形態)
以下、実施形態に係る切削加工システム1について、図1図11を用いて説明する。
【0014】
(1)概要
本実施形態に係る切削加工システム1は、図1及び図2に示すように、切削ユニット10と、撮像ユニット20と、制御システム2としての制御装置60と、を備える。切削ユニット10は、切削作業の対象である対象物3(図2及び図4参照)に対して切削を行う切削工具11を有する。切削ユニット10は、制御装置60による制御により、切削工具11を用いて対象物3に対して切削を行う。撮像ユニット20は、対象物3を撮像する。制御システム2としての制御装置60は、図1に示すように、領域抽出部67と、加工制御部71と、を有する。領域抽出部67は、撮像ユニット20が対象物3を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルLM1に入力することによって、対象物3の表面において切削加工が可能な加工可能領域R1(図8参照)を抽出する。加工制御部71は、加工可能領域R1に対して切削を行うよう切削ユニット10を制御する。
【0015】
ここにおいて、対象物3は、例えば木、金属、又は合成樹脂などの部材であり、以下では対象物3が木材である場合を例に説明する。切削加工が可能な「加工可能領域」とは、対象物3の表面において加工不可領域を除いた領域である。「加工不可領域」は、切削加工に不適な領域であり、換言すると切削加工を避けた方がよい領域である。加工不可領域は、例えば対象物3が木材である場合、節301が存在する領域、又は、対象物3から切り出される加工物の仕上がり状態において木目の向きが美観上好ましくない向きとなる領域等を含み得る。加工不可領域は、対象物3において反り、凹凸、汚れ等が存在する領域を含み得る。対象物3が、以前に加工物の切り出し等の加工が行われた後の端材である場合に、既に切削等の加工が行われた後の加工痕302が存在する領域を含み得る。また、加工不可領域は、切削加工システム1が備えるテーブル状の台座50(図2参照)に対象物3を固定するための固定部材(例えばネジ等)303が存在する領域を含み得る。なお、加工不可領域は、切削加工に不適な領域より若干広めに設定されるのが好ましく、切削加工に不適な領域と、その周囲に設けた所定の幅のバッファ領域とを含むことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、領域抽出部67が、撮像ユニット20によって撮像された対象物3の加工前画像を第1学習済みモデルLM1に入力することによって、加工可能領域R1を抽出しているので、人が対象物3を見て加工可能領域を手動で設定する必要がない。したがって、切削加工システム1による切削加工の作業効率を高めることができる、という利点がある。
【0017】
以下において、図2に示すように、前後方向、左右方向及び上下方向を規定する。左右方向は、後述する一対の第1部材31が並ぶ方向である。上下方向は、対象物3の厚さ方向である。前後方向は、左右方向及び上下方向の双方と直交する方向である。図2には、これらの方向(上、下、左、右、前、後)を表す矢印を示すが、この矢印は、単に説明を補助する目的で記載しているに過ぎず、実体を伴わない。また、上記の方向の規定は、本実施形態の切削加工システム1の使用形態を限定する趣旨ではない。
【0018】
(2)構成
以下、本実施形態に係る切削加工システム1の詳細な構成について説明する。
【0019】
切削加工システム1は、上述したように、切削ユニット10と、撮像ユニット20と、制御システム2としての制御装置60と、を備える。また、切削加工システム1は、切削屑除去ユニット40と、ロボットユニット30と、台座50とを更に備える。また、切削加工システム1は、制御装置60が抽出した加工可能領域等の情報を、切削加工システム1のユーザが使用する表示端末80に表示させている。
【0020】
(2.1)ロボットユニット
ロボットユニット30は、図2に示すように、一対の第1部材31、一対の第2部材32及び第3部材33を有している。
【0021】
一対の第1部材31は、対象物3が配置される台座50を挟むように配置される。各第1部材31は、前後方向に沿って延在する。一対の第1部材31は、一対の第2部材32と一対一に対応付けられ、対応する第2部材32が前後方向に移動可能となるよう当該第2部材32を支持する。
【0022】
一対の第2部材32は、前後方向に移動可能となるよう、対応する第1部材31に支持される。一対の第2部材32は、上下方向に沿って延在する。すなわち、一対の第2部材32は、上下方向における一端が前後方向に移動可能となるよう、対応する第1部材31に支持される。
【0023】
第3部材33は、左右方向に沿って延在する。第3部材33は、上下方向に移動可能に一対の第2部材32に支持される。具体的には、第3部材33の左右方向における両端部のうち一端部は一対の第2部材32のうち一方の第2部材32に支持される。第3部材33の両端部のうち他端部は一対の第2部材32のうち他方の第2部材32に支持される。
【0024】
一対の第2部材32の前後方向での移動、及び第3部材33の左右方向での移動は、制御装置60によって制御される。
【0025】
(2.2)切削ユニット
切削ユニット10は、図1及び図2に示すように、切削作業の対象である対象物3に対して切削を行う切削工具11を有する。切削ユニット10は、本体部12を有する。切削工具11は、本体部12に取り付けられる。切削ユニット10は、制御装置60による制御により、切削工具11を用いて対象物3に対して切削を行う。ここで、対象物3は、例えば木材である。
【0026】
切削ユニット10は、切削工具11を着脱可能に構成されている。切削ユニット10には、対象物3の材料、切削により切り取る部位の形状等に応じて適切な切削工具11が取り付けられる。つまり、切削ユニット10は、対象物3の材料、切削により切り取る部位の形状等に応じて使い分けられる複数種類の切削工具11と、切削工具11を付け替え可能なホルダとを備えている。切削ユニット10は、複数種類の切削工具11の中から対象物3の材料、加工の形状等に応じて選択した切削工具11をホルダに装着し、ホルダに装着した切削工具11を用いて対象物3に対する切削加工を行う。
【0027】
切削ユニット10は、左右方向に移動可能となるようロボットユニット30の第3部材33に取り付けられる。切削ユニット10は、制御装置60の制御により、第3部材33において左右方向に移動する。
【0028】
(2.3)切削屑除去ユニット
切削屑除去ユニット40は、制御装置60による制御により、切削ユニット10が対象物3に対して切削を行う際に発生する切削屑を除去する。切削屑除去ユニット40は、切削ユニット10に取り付けられる。具体的には、切削工具11と本体部12との間に取り付けられる。
【0029】
切削屑除去ユニット40は、図1に示すように、吸引部41と、回転ブラシ部42と、研磨部43と、吹付部44と、を含む。
【0030】
吸引部41は、切削屑を吸引する。具体的には、吸引部41は、制御装置60の制御により、切削屑を吸引する。
【0031】
回転ブラシ部42は、対象物3に対して切削が行われた切削面に付着した切削屑を切削面から取り除く。回転ブラシ部42は、上下方向に沿った軸を中心軸とする円筒形状に形成され、側面にブラシが設けられている。回転ブラシ部42は、制御装置60の制御により上記中心軸を回転軸として回転することで、切削面に付着した切削屑を切削面から取り除く。
【0032】
研磨部43は、切削面を研磨する。研磨部43は、上記中心軸を軸とする円筒形状の回転ドラムと、回転ドラムの周面に保持されたサンドペーパのような研磨材とを有している。研磨部43の回転ドラムは、回転ブラシ部42に挟み込まれるように配置されている。回転ブラシ部42が制御装置60の制御により回転することで、研磨部43の回転ドラムが回転し、回転ドラムの周面に保持された研磨材が切削面を研磨する。なお、研磨部43は切削屑除去ユニット40に必須の構成要素ではない。
【0033】
切削屑除去ユニット40は、切削ユニット10の切削により発生する切削屑の他、研磨部43の研磨により発生する研磨粉を除去する。具体的には、切削屑除去ユニット40では、研磨部43の研磨により発生する研磨粉を回転ブラシ部42が切削面から取り除き、取り除かれた研磨粉を切削屑と共に吸引部41が吸引する。
【0034】
吹付部44は、対象物3において加工された部位(加工部位)にエアを吹き付ける。これにより、加工部位に溜まった切削屑(切削により発生する切削屑、及び研磨部43の研磨により発生する研磨粉を含む)を空気中に舞い上がらせて、吸引部41で切削屑を吸引することができる。
【0035】
(2.4)撮像ユニット
撮像ユニット20は、制御装置60による制御により、切削ユニット10による切削が行われる前の対象物3の加工前画像を撮像する。また、撮像ユニット20は、制御装置60による制御により、切削ユニット10による切削が行われた後の対象物3の加工後画像を撮像する。なお、加工後画像は、切削により加工された加工物が対象物3から完全に切り離されていない状態、すなわち加工物の一部が対象物と繋がっている状態で対象物3を撮像した画像である。
【0036】
撮像ユニット20は、左右方向に移動可能となるようロボットユニット30の第3部材33に取り付けられている。また、撮像ユニット20は、ロボットユニット30の第3部材33が前後方向に移動することによって、第3部材33と共に前後方向に移動可能となっている。つまり、撮像ユニット20はロボットユニット30を介して間接的に切削ユニット10に取り付けられており、切削ユニット10の切削工具11が切削を行う加工位置を含む所定範囲の画像を撮影する。つまり、撮像ユニット20は、移動可能に設けられた切削ユニット10に取り付けられており、図4に示すように複数の撮像位置のそれぞれで対象物3を撮像する。
【0037】
撮像ユニット20は、図1及び図2に示すように、撮像装置21を含む。撮像装置21は、対象物3の少なくとも一部を撮像する。本実施形態では、撮像装置21が対象物3の全体を一度に撮影できないため、制御装置60は、撮像ユニット20を移動させることによって複数の撮影位置で撮像装置21により対象物3を撮像させる。つまり、撮像ユニット20は、移動可能に設けられた切削ユニット10に取り付けられ、撮影位置を変えて対象物3を複数回撮像している。そして、制御装置60の画像合成部65が、複数の撮影位置でそれぞれ撮像された複数の画像を合成することによって、対象物3の全体を表した1枚の画像を生成する。言い換えると、画像合成部65は、切削ユニット10による切削が行われる前の状態で撮像ユニット20が複数の撮像位置のそれぞれで対象物3を撮像して得た複数の画像を合成することによって加工前画像を生成する。同様に、画像合成部65は、切削ユニット10による切削が行われた後の状態で撮像ユニット20が複数の撮像位置のそれぞれで対象物3を撮像して得た複数の画像を合成することによって加工前画像を生成する。なお、1枚の加工前画像又は加工後画像を合成するために撮像される複数の画像のうち隣接する2つの画像は、境界部分で部分的に重なっていてもよいし、重なりがなく境界部分で接していてもよい。
【0038】
このように、本実施形態では、撮像ユニット20の画角に対象物3の全体が収まらない場合でも、1台の撮像ユニット20の撮像位置を変えて対象物3を撮像した複数の画像を合成することで対象物3の全体を表す加工前画像を生成することができる。よって、対象物3の全体を撮像するために複数の撮像ユニット20を備える必要がなく、撮像ユニット20の台数を減らすことで、切削加工システム1のシステム構成を簡素化することができる。
【0039】
なお、撮像装置21は、広角レンズを備えることによって撮像範囲を広げており、広角レンズを備えていない場合に比べて広い範囲の画像を撮像することによって、対象物3の全体の画像を取得するために必要な撮影回数を減らすことができる。
【0040】
(2.5)台座
台座50は、一対の第1部材31に挟まれるように配置されている。台座50は、図2に示すように、板部51と、複数(図示例では4つ)の位置決めユニット52と、工具保持ユニット53と、を有している。
【0041】
板部51には、対象物3が配置される。4つの位置決めユニット52のうち2つの位置決めユニット52は左右方向に沿って並び、残り2つの位置決めユニット52は、前後方向に沿って並んでいる。対象物3の1つの辺を左右方向に沿って並ぶ2つの位置決めユニット52に接触させ、当該1つの辺と交差する別の辺を前後方向に沿って並ぶ2つの位置決めユニット52に接触させることで、対象物3の配置位置が決定される。なお、対象物3の四隅に設けた孔に通された固定部材303を板部51のネジ穴にネジ込むことによって、対象物3を板部51に固定してもよい。
【0042】
工具保持ユニット53は、切削ユニット10の本体部12に取り付けられる1つ以上の切削工具11(図示例では、切削工具11a,11b)を保持する。切削ユニット10は、工具保持ユニット53に保持されている複数種類の切削工具11の中から、対象物3の材料、又は切削により切り取る部位の形状等に応じて適切な切削工具11を選択し、選択した切削工具11を本体部12に設けられたホルダに装着する。そして、切削ユニット10は、ホルダに装着した切削工具11を用いて対象物3に対して切削を行う。
【0043】
(2.6)表示端末
表示端末80は、切削加工システム1のユーザが使用するコンピュータ端末である。表示端末80は、パーソナルコンピュータでもよいし、ノート型のコンピュータ或いはタブレット型のコンピュータでもよく、スマートフォン等でもよい。
【0044】
表示端末80は、通信部81と、表示部82と、制御部83と、を備える。
【0045】
通信部81は、制御装置60と通信するための通信インタフェースである。通信部81は、例えばケーブル90を介して制御装置60と通信を行う。なお、通信部81は、制御装置60と無線通信方式で通信を行ってもよい。
【0046】
表示部82は、例えば液晶ディスプレイ等のディスプレイ装置である。
【0047】
制御部83は、通信部81が制御装置60から受信した各種の情報に基づいて、受信した各種の情報を表示部82に表示する。
【0048】
(2.7)制御装置
制御装置60は、図1に示すように、通信部61、記憶部62及び制御部63を有している。
【0049】
制御装置60は、例えばプロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部63として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているが、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0050】
通信部61は、切削ユニット10、撮像ユニット20、ロボットユニット30、切削屑除去ユニット40、及び表示端末80のそれぞれと通信するための通信インタフェースである。通信部61は、ケーブル90を介して、切削ユニット10、撮像ユニット20、ロボットユニット30、切削屑除去ユニット40、及び表示端末80のそれぞれと通信を行う。なお、通信部61は、切削ユニット10、撮像ユニット20、ロボットユニット30、切削屑除去ユニット40、及び表示端末80のそれぞれと無線通信方式で通信を行ってもよい。
【0051】
記憶部62は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等から選択されるデバイスで構成される。
【0052】
記憶部62は、制御部63が推論フェーズを行う際に使用する第1~第4学習済みモデルLM1~LM4を記憶している。
【0053】
また、記憶部62は、切削を行うために必要なプログラムを記憶している。例えば、記憶部62は、工具制御プログラム、切削屑除去プログラム及び撮像制御プログラムを記憶する。工具制御プログラムは、切削ユニット10(切削工具11)を対象物3において目標形状に沿って移動するように制御するためのプログラムである。切削屑除去プログラムは、切削屑除去ユニット40が切削屑を除去するよう設定されたプログラムである。撮像制御プログラムは、撮像ユニット20の動作を制御するよう設定されたプログラムである。撮像制御プログラムは、例えば、対象物3に対する撮像経路(撮像順序)を含む。
【0054】
記憶部62は、対象物3から加工すべき加工物の加工図面データ及び加工物情報を記憶している。加工図面データは、二次元CADの図面データでもよいし、三次元CADの図面データでもよい。加工図面データは、加工物の寸法を含む。加工物情報は、加工物に関する情報を含む。加工物に関する情報は、例えば、三次元加工を行うか否かの情報、加工する際の最大の深さ、複数の加工物を切削する際に加工物間に設ける隙間の最小値、加工物における穴の有無、等の情報を含む。
【0055】
また、記憶部62は、対象物3の属性情報を加工図面データに対応付けて記憶している。属性情報は、例えば、対象物3の材料の種別、サイズ、厚み等の情報を含む。なお、属性情報は、対象物3に対する加工工程を表す工程情報、工具(切削工具11)の進入位置を表す進入位置情報、工具(切削工具11)の退避位置(対象物3から離脱する位置)を表す退避位置情報、等の情報を含んでもよい。工程情報は、例えば、対象物3から加工する加工物の輪郭を加工するために切削ユニット10を移動させる経路などを表す情報である。
【0056】
制御部63は、図1に示すように、補正部64、画像合成部65、上面抽出部66、領域抽出部67、ネスティング処理部68、良否判定部69、出力部70、加工制御部71、学習部72、等の機能を含む。また、学習部72は、機械学習を行うことによって第1、第3、第4学習済みモデルLM1、LM3、LM4をそれぞれ生成する第1、第3、第4学習部73、75、76を備えている。なお、図1において、補正部64、画像合成部65、上面抽出部66、領域抽出部67、ネスティング処理部68、良否判定部69、出力部70、加工制御部71、及び学習部72は実体のある構成を示しているわけではなく、制御部63によって実現される機能を示している。同様に、第1、第3、第4学習部73、75、76は実体のある構成を示しているわけではなく、制御部63によって実現される機能を示している。
【0057】
補正部64は、撮像ユニット20が撮像した画像の歪み補正を行う。撮像ユニット20が備える撮像装置21は、広い範囲を撮像できるように広角レンズを備えているため、撮像装置21が撮像した画像には、例えば正方形が樽形に歪むような歪みが発生する可能性がある。補正部64は、撮像装置21が撮像した画像に対して、広角レンズによる歪みを補正する補正処理を行っており、広角レンズによる歪みを低減した補正済み画像を出力する。なお、撮像ユニット20は、1枚の加工前画像を撮像するために撮像位置を変えて対象物3を複数回撮影しているので、補正部64は、撮像ユニット20が複数の撮像位置のそれぞれで対象物3を撮像して得た複数の画像のそれぞれについて歪み補正を行っている。
【0058】
画像合成部65は、撮像ユニット20の撮像装置21が複数の撮像位置のそれぞれで撮像した複数の画像を合成することによって、対象物3の全体を表す合成画像を生成する。ここで、画像合成部65は、切削ユニット10が対象物3に対して切削を行う前に撮像ユニット20で撮像された複数の画像(例えば図5における6枚の画像P11~P16)を合成することで、加工前に対象物3を撮像した加工前画像P10(図6参照)を生成することができる。つまり、画像合成部65は、撮像ユニット20が対象物3を複数回撮像して得た複数の画像を合成することによって加工前画像を生成する。なお、図6に示す加工前画像P10では対象物3の表面の状態の表示を省略している。また、画像合成部65は、切削ユニット10が対象物3に対して切削を行った後に撮像ユニット20で撮像された複数の画像を合成することで、加工後に対象物3を撮像した加工後画像を生成することができる。
【0059】
なお、図5では、複数の画像P11~P16が対象物3の上面のみが写るような画像となっているが、撮像装置21は広角レンズを備えているので、各画像P11~P16には対象物3の側面も映り込む可能性がある。そのため、複数の画像P11~P16を合成した加工前画像P10(図6参照)は、対象物3の上面310だけでなく、側面320も映り込んだような画像となる可能性がある。
【0060】
また、撮像装置21は広角レンズを備えているので、撮像ユニット20で撮像された画像には、例えば正方形が樽形に歪むような歪みが発生する。本実施形態では、画像合成部65が、加工前画像を合成する際、補正部64によって複数の画像の歪み補正が行われた後の複数の補正済み画像を合成することで加工前画像を生成しているので、加工前画像の歪みを低減することができる。なお、画像合成部65は、加工後画像を合成する際、補正部64により複数の画像の歪み補正が行われた後の複数の補正済み画像を合成することで加工後画像を生成しており、加工後画像の歪みを低減することができる。
【0061】
上面抽出部66は、画像合成部65が生成した加工前画像(図6における加工前画像P10)から、対象物3の上面310に対応する部分画像P20(図7参照)を抽出する。例えば、上面抽出部66は、第4学習済みモデルLM4に、加工前画像P10を入力することによって対象物3の上面310に対応する部分画像P20を抽出する。第4学習済みモデルLM4は、例えば第4学習部76が、上面310及び側面320が写る複数の加工前画像P10を教師データとして機械学習を行うことにより生成された学習モデルである。なお、一般的な画像処理では、上面310及び側面320が写る画像から上面310を抽出するためにはエッジ検出等の演算処理を行う必要がある。本実施形態では、加工前画像P10を第4学習済みモデルLM4に入力することによって上面310の部分画像P20を抽出しているので、エッジ検出等の画像処理で上面の部分画像P20を抽出する場合に比べて処理時間を短縮できる。
【0062】
領域抽出部67は、加工前画像を第1学習済みモデルLM1に入力することによって、対象物3の表面(上面)において切削加工が可能な切削可能領域を抽出する。ここにおいて、領域抽出部67は、加工前画像において、上面抽出部66が抽出した部分画像P20から、加工可能領域R1を抽出する。切削ユニット10は対象物3の上面に対して切削加工を行うので、対象物3の側面等を除外した上面の部分画像P20から加工可能領域R1を抽出することで、加工可能領域R1の抽出処理に必要な計算量を低減でき、抽出処理にかかる時間を短縮できる。
【0063】
ネスティング処理部68は、加工前画像に対象物3から切り出す1又は複数の加工物100(図9参照)の加工位置を割り当てる配置パターンPT1(図10参照)を作成する。ネスティング処理部68は、加工可能領域R1の形状及び大きさ、記憶部62に記憶されている加工物100の加工図面データ、加工物100の完成時の形状等に基づいて、例えば、加工可能領域R1に配置可能な加工物100の個数が最大となるような配置パターンPT1を作成する。ネスティング処理部68は、遺伝的アルゴリズムを用いた演算処理を行うことによって、加工可能領域R1に複数の加工物100が最適な位置に配置されるような配置パターンPT1を作成する。配置パターンPT1は、加工物100の平面視の形状を示す図形が、加工物100の加工位置に並べられた図である。図10では、加工物100の配置位置を二点鎖線で表示している。なお、ネスティング処理部68が加工可能領域R1に1又は複数の加工物100を配置する配置ルールは適宜変更が可能である。ネスティング処理部68は、例えば加工可能領域R1に所定個数の加工物100を配置したときの面積が最小となるように、加工可能領域R1に1又は複数の加工物100を配置してもよい。また、ネスティング処理部68が加工可能領域R1に配置する加工物100は1種類に限定されない。ネスティング処理部68は、形状又は大きさが異なる複数種類の加工物100を加工可能領域R1に配置してもよく、加工可能領域R1に複数種類の加工物100がそれぞれの個数ずつ配置可能なような配置パターンPT1を作成してもよい。
【0064】
加工制御部71は、加工可能領域R1に対して切削を行うように切削ユニット10及びロボットユニット30を制御する。より具体的には、加工制御部71は、ネスティング処理部68が作成した配置パターンPT1に基づいて、1又は複数の加工物100の加工位置で切削を行うように切削ユニット10及びロボットユニット30を制御する。切削ユニット10はロボットユニット30によって移動させられるので、加工制御部71は、切削ユニット10及びロボットユニット30を制御することによって、配置パターンPT1で設定された加工位置で1又は複数の加工物100の切削加工を行わせる。
【0065】
良否判定部69は、切削ユニット10による対象物3の加工後に、撮像ユニット20が対象物3を撮像して得た加工後画像に基づいて、対象物3の加工の良否を判定する。具体的には、良否判定部69は、第3学習済みモデルLM3に、加工後画像を入力することによって、対象物3の加工の良否を判定する。第3学習済みモデルLM3は、良品と判定される対象物3の加工後の状態に関する良品データと、不良と判定される対象物の加工後画像とを教師データとして機械学習を行うことによって生成された学習済みモデルである。なお、良品データは、加工物100に関する図面データ(例えば二次元CADの図面データ又は三次元CADの図面データ)、加工物100に関する図面データに基づいて作成されたバーチャル画像の画像データ、及び良品と判定される対象物の加工後画像のうちの少なくとも一つを含む。また、加工後画像は、1又は複数の加工物100が対象物3に部分的に連結されている状態で撮像された画像であり、1又は複数の加工物100は対象物3との連結部分を切断することによって対象物3から切り離される。
【0066】
良否判定部69が、加工の良否を判定することによって、図11に示すように対象物3を切削することによって製造された加工物100の輪郭部分等に所定の大きさを超える欠損B1等が発生している場合には、加工が不良であると判定することができる。また、良否判定部69は、加工物100の表面の模様(例えば木目など)が所望の模様と一致しているか否かを判断することによって、加工の良否を判定してもよい。また、良否判定部69は、加工物100の表面の凹凸、汚れの有無等を判断することで、加工の良否を判定してもよい。このように、良否判定部69が加工の良否を判定することで、加工物100の品質の向上を図ることができる。
【0067】
出力部70は、良否判定部69の判定結果を出力する。例えば、出力部70は、通信部61を介して表示端末80に、良否判定部69の判定結果を出力しており、表示端末80の表示部82に良否判定部69の判定結果が表示される。これにより、切削加工システム1のユーザは、加工物100の加工の良否を把握できる。なお、出力部70は、画像合成部65が合成した加工前画像P10、上面抽出部66が抽出した上面の部分画像P20、領域抽出部67が抽出した加工可能領域R1、及び、ネスティング処理部68が作成した配置パターンPT1のうち少なくとも1つを更に出力してもよい。これにより、切削加工システム1のユーザは、対象物3の加工前画像P10、上面の部分画像P20、加工可能領域R1、配置パターンPT1等を把握することができる。
【0068】
学習部72は、上述した第1、第3、第4学習済みモデルLM1、LM3、LM4をそれぞれ機械学習により生成する第1学習部73、第3学習部75、及び第4学習部76を備える。なお、図1に示す第2学習部74については変形例において説明する。
【0069】
第1学習部73は、例えば、切削加工に不適な加工不可領域をそれぞれ有する複数の対象物3の画像のデータセットを教師データとして、機械学習を行うことによって第1学習済みモデルLM1を生成する。なお、第1学習部73は、切削加工に不適な加工不可領域をそれぞれ有する複数の対象物3の画像と、複数の対象物3の画像のそれぞれでユーザが設定した加工不可領域の情報とのデータセットを教師データとして機械学習を行うことで第1学習済みモデルLM1を生成する。第1学習済みモデルLM1は、対象物3の画像(加工前画像P10)が入力されると、加工前画像P10に存在する加工不可領域を判定し、加工不可領域を除いた加工可能領域R1を抽出する。
【0070】
第3学習部75は、例えば、対象物3に対して切削を行った後の複数の加工後画像と、複数の加工後画像のそれぞれについてユーザが判定した加工の良否の情報とのデータセットを教師デ-タとして機械学習を行うことにより第3学習済みモデルLM3を生成する。第3学習済みモデルLM3は、対象物3を切削した後の状態を撮像した加工後画像が入力されると、加工の良否を判定した結果を出力する。第3学習済みモデルLM3は、加工が不良であると判定した場合、加工が不良であると判定した箇所の情報を更に出力してもよい。
【0071】
第4学習部76は、対象物3の上面及び側面がそれぞれ写った複数の画像と、複数の画像のそれぞれについて画像処理によって検出された上面部分の画像、又はユーザが設定した上面部分の画像の情報とのデータセットを教師データとして機械学習を行うことによって第4学習済みモデルLM4を生成する。第4学習済みモデルLM4は、対象物3の上面及び側面が写った画像が入力されると、上面の部分画像を出力する。
【0072】
なお、第1、第3、第4学習部73、75、76は、人工知能のプログラム(アルゴリズム)に、教師データを用いて学習させる。人工知能のプログラムは、機械学習のモデルであって、例えば、階層モデルの一種であるニューラルネットワークが用いられる。第1、第3、第4学習部73、75、76は、ニューラルネットワークに学習用データセットで機械学習(例えば、深層学習)を行わせることで、学習済みモデルを生成する。また、第1、第3、第4学習部73、75、76は、新たに取得した学習用データセットを用いて再学習を行うことで、学習済みモデルの性能の向上を図ってよい。
【0073】
なお、制御装置60が第1、第3、第4学習部73、75、76を備えることは必須ではない。制御装置60は、外部のシステムで作成された第1、第3、第4学習済みモデルLM1、LM3、LM4を用いて推論フェーズを行ってもよい。また、制御装置60の記憶部62に第1、第3、第4学習済みモデルLM1、LM3、LM4が記憶されていることは必須ではなく、例えばクラウド上に存在する第1、第3、第4学習済みモデルLM1、LM3、LM4を用いて推論フェーズを行ってもよい。
【0074】
(3)動作
以下、本実施形態に係る切削加工システム1の動作及び制御システム2としての制御装置60の動作について、図3を参照して説明する。なお、図3に示すフローチャートは、本実施形態に係る切削加工システム1及び制御装置60の制御方法の一例に過ぎず、処理の順序が適宜変更されてもよいし、処理が適宜追加又は省略されてもよい。
【0075】
切削加工システム1のユーザ、又は、切削等の作業対象の対象物3をハンドリングするロボットが、対象物3を、台座50の位置決めユニット52で位置決めされた状態で板部51に配置する。
【0076】
制御装置60は、台座50に対象物3が配置されると、撮像ユニット20に対象物3の加工前の状態を撮影させるため、撮像ユニット20及びロボットユニット30に撮像指示を送信する(ステップS1)。本実施形態では、撮像ユニット20が複数の撮像位置のそれぞれで対象物3を撮像し、複数の撮像位置でそれぞれ撮像された複数の画像を合成して1枚の加工前画像を生成する。そのため、制御装置60は、ロボットユニット30を制御して撮像ユニット20を複数の撮像位置に所定の順番で移動させる(図4参照)。ロボットユニット30が撮像ユニット20を移動させることによって、撮像ユニット20が複数の撮像位置のそれぞれに到着すると、制御装置60は撮像ユニット20を制御して対象物3を撮像させる。
【0077】
撮像ユニット20により1枚の加工前画像を生成するために必要な複数の画像(例えば図6の画像P11~P16)の撮影が完了すると、補正部64が複数の画像のそれぞれの歪み補正を行って複数の補正済み画像を生成する(ステップS2)。
【0078】
そして、画像合成部65が、複数の補正済み画像を合成することによって、複数の補正済み画像を境界部分で繋ぎ合わせた加工前画像P10(図6参照)を生成する(ステップS3)。この時、出力部70は、画像合成部65が合成した加工前画像P10を表示端末80に出力してもよく、切削加工システム1のユーザは、表示部82に表示された加工前画像P10を確認することができる。
【0079】
加工前画像P10には対象物3の上面310だけでなく側面320等が写り込んでいる可能性がある。そこで、上面抽出部66が、加工前画像P10を第4学習済みモデルLM4に入力することによって対象物3の上面310に対応する部分画像P20(図7参照)を抽出する(ステップS4)。
【0080】
上面の部分画像P20を抽出すると、領域抽出部67は、上面の部分画像P20を第1学習済みモデルLM1に入力することによって、加工可能領域R1を抽出する(ステップS5)。この時、出力部70は、加工可能領域R1を示す一点鎖線のようなマーカが表示された部分画像P20(図8参照)を表示端末80に出力してもよく、切削加工システム1のユーザは、表示部82に表示された部分画像P20に基づいて加工可能領域R1を確認することができる。
【0081】
加工可能領域R1を抽出すると、ネスティング処理部68は、加工可能領域R1の情報と加工物100の情報とに基づいて遺伝的アルゴリズムを用いた演算処理を行うことによって、加工可能領域R1に1又は複数の加工物100を配置した配置パターンPT1(図10参照)を作成する(ステップS6)。
【0082】
配置パターンPT1を作成すると、加工制御部71が、配置パターンPT1に基づいて、1又は複数の加工物100の加工位置に切削ユニット10を移動させて1又は複数の加工物100の切削加工を行わせるために工具制御プログラムが使用する制御パラメータを作成する。工具制御プログラムが使用する制御パラメータは、例えば、切削ユニット10が加工位置を辿るように移動する移動経路の情報、及び、加工位置で対象物3を切削する作業に関する作業パラメータ(切削の形状及び深さなど)などの情報を含む。加工制御部71は、作成した制御パラメータを用いて工具制御プログラムを実行することによって切削ユニット10及びロボットユニット30を制御し、1又は複数の加工物100の加工位置で切削ユニット10に対象物3に対する切削加工を行わせる(ステップS7)。
【0083】
切削加工が終了すると、制御装置60は、撮像ユニット20に対象物3の加工後の状態を撮影させるため、撮像ユニット20及びロボットユニット30に撮像指示を送信する。このとき、制御装置60は、ロボットユニット30を制御して撮像ユニット20を複数の撮像位置に所定の順番で移動させる。ロボットユニット30が撮像ユニット20を移動させることによって、撮像ユニット20が複数の撮像位置のそれぞれに到着すると、制御装置60は撮像ユニット20を制御して対象物3を撮像させる。
【0084】
撮像ユニット20により1枚の加工後画像を生成するために必要な複数の画像の撮影が完了すると、補正部64が複数の画像のそれぞれの歪み補正を行って複数の補正済み画像を生成する。
【0085】
そして、画像合成部65が、複数の補正済み画像を合成することによって、複数の補正済み画像を境界部分で繋ぎ合わせた加工後画像を合成する(ステップS8)。この時、出力部70は、画像合成部65が合成した加工後画像を表示端末80に出力してもよく、切削加工システム1のユーザは、表示部82に表示された加工後画像を確認することができる。
【0086】
加工後画像を撮影すると、良否判定部69が、加工後画像を第3学習済みモデルLM3に入力することによって、対象物3の加工の良否を判定する(ステップS9)。このとき、出力部70は、良否判定部69の判定結果を表示端末80に出力しており(ステップS10)、切削加工システム1のユーザは、表示部82に表示された加工の良否判定の結果を確認することができる。
【0087】
(4)変形例
以下に、変形例を列記する。なお、以下に説明する変形例は、上記実施形態と適宜組み合わせて適用可能である。
【0088】
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。
【0089】
また、切削加工システム1又は制御システム2と同様の機能は、切削加工システム1の制御方法、コンピュータプログラム、又はプログラムを記録した非一時的な記録媒体等で具現化されてもよい。一態様に係る切削加工システム1の制御方法は、切削ユニット10と、撮像ユニット20と、を備える切削加工システム1の制御方法であり、領域抽出ステップと、加工制御ステップと、を含む。切削ユニット10は、対象物3に対して切削を行う切削工具11を有する。撮像ユニット20は、対象物3を撮像する。領域抽出ステップでは、撮像ユニット20が対象物3を撮像して得た加工前画像を第1学習済みモデルLM1に入力することによって、対象物3の表面において切削加工が可能な加工可能領域R1を抽出する。加工制御ステップでは、加工可能領域R1に対して切削を行うよう切削ユニット10を制御する。一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに、上記の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0090】
本開示における切削加工システム1及び制御システム2は、それぞれコンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における切削加工システム1及び制御システム2としての機能がそれぞれ実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0091】
上記の実施形態では、ネスティング処理部68は、遺伝的アルゴリズムを用いた演算処理によって配置パターンPT1を作成しているが、学習済みモデルを用いて配置パターンPT1を作成してもよい。すなわち、ネスティング処理部68は、加工前画像における加工可能領域R1の画像を第2学習済みモデルLM2に入力することによって、対象物3から切り出す1又は複数の加工物100(図9参照)の加工位置を割り当てる配置パターンPT1(図10参照)を作成してもよい。
【0092】
また、学習部72は、第2学習済みモデルLM2を生成する第2学習部74を備えることも好ましい。第2学習部74は、例えば、加工可能領域R1をそれぞれ含む複数の画像と、加工物100の加工図面データと、複数の画像のそれぞれでユーザが設定した加工物100の配置パターンPT1の情報とのデータセットを教師デ-タとして、機械学習を行うことにより第2学習済みモデルLM2を生成する。第2学習済みモデルLM2は、加工可能領域R1を含む画像(例えば上面の部分画像P20)と加工物100の情報とが入力されると、加工可能領域R1に1又は複数の加工物100を配置する配置パターンPT1を出力する。なお、第2学習部74は、ネスティング処理部68が作成した配置パターンPT1と、良否判定部69の判定結果とのデータセットを教師データとして、第2学習済みモデルLM2を再学習してもよい。具体的には、第2学習部74は、配置パターンPT1と、配置パターンPT1に基づいて切削を行った対象物3について良否判定部69が加工の良否を判定した結果とを教師データとして機械学習を行うことで、不良品が少なくなるように配置パターンPT1を再学習してもよい。
【0093】
なお、第2学習部74は、人工知能のプログラム(アルゴリズム)に、教師データを用いて学習させる。人工知能のプログラムは、機械学習のモデルであって、例えば、階層モデルの一種であるニューラルネットワークが用いられる。第2学習部74は、ニューラルネットワークに学習用データセットで機械学習(例えば、深層学習)を行わせることで、学習済みモデルを生成する。また、第2学習部74は、新たに取得した学習用データセットを用いて再学習を行うことで、学習済みモデルの性能の向上を図ってよい。
【0094】
なお、制御装置60が第2学習部74を備えることは必須ではない。制御装置60は、外部のシステムで作成された第2学習済みモデルLM2を用いて推論フェーズを行ってもよい。また、制御装置60の記憶部62に第2学習済みモデルLM2が記憶されていることは必須ではなく、例えばクラウド上に存在する第2学習済みモデルLM2を用いて推論フェーズを行ってもよい。
【0095】
また、切削加工システム1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは切削加工システム1に必須の構成ではなく、切削加工システム1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、切削加工システム1の少なくとも一部の機能、例えば、切削加工システム1の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。同様に、制御システム2における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは制御システム2に必須の構成ではなく、制御システム2の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、切削加工システム1又は制御システム2の少なくとも一部の機能、例えば、制御システム2の制御部63が備える機能の一部がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。例えば、制御システム2が、第1~第4学習部73~76を備えることは必須ではなく、第1~第4学習部73~76の一部又は全部が制御装置60とは異なる外部装置に設けられていてもよい。つまり、制御システム2は、外部装置で作成された第1~第4学習済みモデルLM1~LM4を用いて推論フェーズを行ってもよい。また、制御システム2が、第1~第4学習済みモデルLM1~LM4を保持することは必須ではなく、クラウド上にある第1~第4学習済みモデルLM1~LM4を用いて推論フェーズを行ってもよい。
【0096】
(まとめ)
第1の態様の切削加工システム(1)は、切削ユニット(10)と、撮像ユニット(20)と、制御装置(60)と、を備える。切削ユニット(10)は、対象物(3)に対して切削を行う切削工具(11)を有する。切削ユニット(10)は、制御装置(60)による制御により、切削工具(11)を用いて対象物(3)に対して切削を行う。撮像ユニット(20)は、対象物(3)を撮像する。制御装置(60)は、領域抽出部(67)と、加工制御部(71)と、を有する。領域抽出部(67)は、撮像ユニット(20)が対象物(3)を撮像して得た加工前画像(P10)を第1学習済みモデル(LM1)に入力することによって、対象物(3)の表面において切削加工が可能な加工可能領域(R1)を抽出する。加工制御部(71)は、加工可能領域(R1)に対して切削を行うよう切削ユニット(10)を制御する。
【0097】
この態様によれば、領域抽出部(67)が、撮像ユニット(20)によって撮像された対象物(3)の加工前画像(P10)を第1学習済みモデル(LM1)に入力することによって、加工可能領域(R1)を抽出しているので、人が対象物(3)を見て加工可能領域(R1)を手動で設定する必要がない。したがって、切削加工システム(1)による切削加工の作業効率を高めることができる。
【0098】
第2の態様の切削加工システム(1)では、第1の態様において、制御装置(60)は、ネスティング処理部(68)を更に有する。ネスティング処理部(68)は、加工可能領域(R1)に対象物(3)から切り出す1又は複数の加工物(100)の加工位置を割り当てる配置パターン(PT1)を作成する。加工制御部(71)は、ネスティング処理部(68)で作成した配置パターン(PT1)に基づいて加工位置で切削を行うように切削ユニット(10)を制御する。
【0099】
この態様によれば、人が配置パターン(PT1)を設定する必要がないから、切削加工システム(1)による切削加工の作業効率をさらに高めることができる。
【0100】
第3の態様の切削加工システム(1)では、第1又は2の態様において、制御装置(60)は、第1学習部(73)を更に備える。第1学習部(73)は、切削加工に不適な加工不可領域をそれぞれ有する複数の対象物(3)の画像を教師データとして、機械学習を行うことによって第1学習済みモデル(LM1)を生成する。
【0101】
この態様によれば、第1学習部(73)が機械学習を行って第1学習済みモデル(LM1)を生成しているので、より適切な領域を加工可能領域(R1)として抽出することができる。
【0102】
第4の態様の切削加工システム(1)では、第1~3のいずれかの態様において、制御装置(60)は、良否判定部(69)と、出力部(70)とを更に有する。良否判定部(69)は、加工後に撮像ユニット(20)が対象物(3)を撮像して得た加工後画像に基づいて、対象物(3)の加工の良否を判定する。出力部(70)は、良否判定部(69)の判定結果を出力する。
【0103】
この態様によれば、切削加工システム(1)のユーザは、出力部(70)の判定結果に基づいて加工の良否を把握することができる。
【0104】
第5の態様の切削加工システム(1)では、第2の態様において、制御装置(60)は、良否判定部(69)と、第2学習部(74)とを更に有する。ネスティング処理部(68)は、加工前画像(P10)における加工可能領域(R1)の画像を第2学習済みモデルに入力することによって配置パターン(PT1)を作成する。良否判定部(69)は、加工後に撮像ユニット(20)が対象物(3)を撮像して得た加工後画像に基づいて、対象物(3)の加工の良否を判定する。第2学習部(74)は、ネスティング処理部(68)が作成した配置パターン(PT1)と、良否判定部(69)の判定結果とを教師データとして、第2学習済みモデル(LM2)を再学習する。
【0105】
この態様によれば、良否判定部(69)が対象物(3)の加工の良否を判定した結果を配置パターン(PT1)の作成に反映することができる。
【0106】
第6の態様の切削加工システム(1)では、第4の態様において、良否判定部(69)は、第3学習済みモデル(LM3)に、加工後画像を入力することによって、対象物(3)の加工の良否を判定する。第3学習済みモデル(LM3)は、良品と判定される対象物(3)の加工後の状態に関する良品データと、不良と判定される対象物(3)の加工後画像とを教師データとして機械学習を行うことによって生成された学習済みモデルである。
【0107】
この態様によれば、良否判定部(69)は、第3学習済みモデル(LM3)を用いて加工の良否を判定することができる。
【0108】
第7の態様の切削加工システム(1)は、第1~6のいずれかの態様において、画像合成部(65)を更に備える。撮像ユニット(20)は、移動可能に設けられた切削ユニット(10)に取り付けられ、複数の撮像位置のそれぞれで対象物(3)を撮像する。画像合成部(65)は、撮像ユニット(20)が複数の撮像位置のそれぞれで対象物(3)を撮像して得た複数の画像を合成することによって加工前画像(P10)を生成する。
【0109】
この態様によれば、1台の撮像ユニット(20)の画角に対象物(3)の全体が収まらない場合でも、1台の撮像ユニット(20)を用いて対象物(3)の全体の加工前画像(P10)を取得できるから、撮像ユニット(20)の台数を減らして、切削加工システム(1)の構成を簡素化することができる。
【0110】
第8の態様の切削加工システム(1)は、第7の態様において、撮像ユニット(20)が複数の撮像位置のそれぞれで対象物(3)を撮像して得た複数の画像のそれぞれについて歪み補正を行う補正部(64)を更に備える。画像合成部(65)は、補正部(64)により複数の画像の歪み補正が行われた後の複数の補正済み画像を合成することによって加工前画像(P10)を生成する。
【0111】
この態様によれば、補正部(64)が歪み補正を行うことで、画像合成部(65)は歪みが少ない加工前画像(P10)を生成することができる。
【0112】
第9の態様の切削加工システム(1)では、第1~8のいずれかの態様において、制御装置(60)は、加工前画像(P10)から対象物(3)の上面に対応する部分画像(P20)を抽出する上面抽出部(66)を更に備える。領域抽出部(67)は、加工前画像(P10)において、上面抽出部(66)が抽出した部分画像(P20)から、加工可能領域(R1)を抽出する。
【0113】
この態様によれば、領域抽出部(67)は、対象物(3)の上面に対応する部分画像(P20)から加工可能領域(R1)を抽出しているので、上面以外の側面等も含む画像から加工可能領域(R1)を抽出する場合に比べて処理量を減らすことができる。
【0114】
第10の態様の切削加工システム(1)では、第9の態様において、上面抽出部(66)は、第4学習済みモデル(LM4)に、加工前画像(P10)を入力することによって対象物(3)の上面に対応する部分画像(P20)を抽出する。第4学習済みモデル(LM4)は、対象物(3)の上面及び側面が写る複数の画像を教師データとして機械学習を行うことにより生成された学習済みモデルである。
【0115】
この態様によれば、エッジ検出などの画像処理で上面に対応する部分画像(P20)を抽出する場合に比べて、上面に対応する部分画像(P20)を抽出する処理にかかる時間を短縮することができる。
【0116】
第11の態様の制御方法は、切削ユニット(10)と、撮像ユニット(20)と、を備える切削加工システム(1)の制御方法であり、領域抽出ステップと、加工制御ステップと、を含む。切削ユニット(10)は、対象物(3)に対して切削を行う切削工具(11)を有する。撮像ユニット(20)は、対象物(3)を撮像する。領域抽出ステップでは、撮像ユニット(20)が対象物(3)を撮像して得た加工前画像(P10)を第1学習済みモデル(LM1)に入力することによって、対象物(3)の表面において切削加工が可能な加工可能領域(R1)を抽出する。加工制御ステップでは、加工可能領域(R1)に対して切削を行うよう切削ユニット(10)を制御する。
【0117】
この態様によれば、領域抽出ステップで、撮像ユニット(20)によって撮像された対象物(3)の加工前画像(P10)を第1学習済みモデル(LM1)に入力することによって、加工可能領域(R1)を抽出しているので、人が対象物(3)を見て加工可能領域(R1)を手動で設定する必要がない。したがって、切削加工システム(1)による切削加工の作業効率を高めることができる。
【0118】
第12の態様のプログラムは、コンピュータシステムに、第11の態様の制御方法を実行させるためのプログラムである。
【0119】
この態様によれば、切削加工システム(1)による切削加工の作業効率を高めることができる。
【0120】
第13の態様の制御システムは、領域抽出部(67)と、加工制御部(71)と、を有する。領域抽出部(67)は、撮像ユニット(20)が対象物(3)を撮像して得た加工前画像(P10)を第1学習済みモデル(LM1)に入力することによって、対象物(3)の表面において切削加工が可能な加工可能領域(R1)を抽出する。加工制御部(71)は、加工可能領域(R1)に対して切削を行うように、対象物(3)に対して切削を行う切削工具(11)を有する切削ユニット(10)を制御する。
【0121】
この態様によれば、領域抽出部(67)が、撮像ユニット(20)によって撮像された対象物(3)の加工前画像(P10)を第1学習済みモデル(LM1)に入力することによって、加工可能領域(R1)を抽出しているので、人が対象物(3)を見て加工可能領域(R1)を手動で設定する必要がない。したがって、切削ユニット(10)による切削加工の作業効率を高めることができる。
【0122】
上記態様に限らず、実施形態に係る切削加工システム(1)の種々の構成(変形例を含む)は、切削加工システム(1)の制御方法、(コンピュータ)プログラム、又はプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化可能である。
【0123】
第2~第10の態様に係る構成については、切削加工システム(1)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0124】
1 切削加工システム
3 対象物
10 切削ユニット
11 切削工具
20 撮像ユニット
60 制御装置
64 補正部
65 画像合成部
66 上面抽出部
67 領域抽出部
68 ネスティング処理部
69 良否判定部
70 出力部
71 加工制御部
73 第1学習部
74 第2学習部
LM1 第1学習済みモデル
LM2 第2学習済みモデル
LM3 第3学習済みモデル
LM4 第4学習済みモデル
P10 加工前画像
P20 部分画像
PT1 配置パターン
R1 加工可能領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11