(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140025
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/34 20140101AFI20230927BHJP
B60L 53/14 20190101ALI20230927BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20230927BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20230927BHJP
【FI】
E05B83/34
B60L53/14
B60K15/05 B
B60K1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045858
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】田中 優希
【テーマコード(参考)】
2E250
3D038
3D235
5H125
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ49
2E250KK02
2E250LL13
2E250MM03
2E250RR11
3D038CA34
3D038CC16
3D235BB41
3D235HH09
5H125AA01
5H125AC24
5H125FF12
(57)【要約】
【課題】手動でロックを解除でき、かつ、構成が簡素化されたロック装置を提供する。
【解決手段】ロック装置40は、ロックピン41と、ロックピン41をロック位置からアンロック位置に移動させるインプットカム52を有する電動式の駆動機構50と、インプットカム52に対して一体に回転可能に取り付けられており、突出部70bを有するレバー70と、突出部70bに連結され、手動で操作される伝達部材80と、伝達部材80を湾曲させて配索するガイド部28kを有するカバー28とを備える。レバー70は、伝達部材80が操作されることによって、第1回転角度位置から第2回転角度位置に回転可能である。第1回転角度位置では、突出部70bが基準線Sに対して回転軸Aまわりに間隔を空けて位置している。第2回転角度位置では、突出部70bが基準線S上に位置している。
【選択図】
図26
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動可能な対象物をロックするロック位置と、前記対象物のロックを解除したアンロック位置との間を移動可能であるロック部材と、
前記ロック部材を前記ロック位置から前記アンロック位置に移動させるとともに、前記アンロック位置から前記ロック位置への前記ロック部材の移動を許容する回転可能なカム部材を有する電動式の駆動機構と、
前記カム部材に対して一体に回転可能に取り付けられており、前記カム部材の回転軸に対して径方向外側に突出した連結部を有するレバーと、
前記連結部に連結され、手動で操作されるワイヤと、
前記レバーと前記ワイヤとが配置され、前記ワイヤを湾曲させて配索するガイド部を有するガイド部材と
を備え、
前記レバーは、前記ワイヤの操作によって、第1回転角度位置から第2回転角度位置に回転可能で、
前記第1回転角度位置では、前記ロック部材が前記ロック位置に位置し、かつ、前記連結部が、前記ガイド部と前記カム部材の前記回転軸とを結んだ基準線に対して前記回転軸まわりに間隔を空けて位置し、
前記第2回転角度位置では、前記ロック部材が前記アンロック位置に位置し、かつ、前記連結部が前記基準線上に位置する、ロック装置。
【請求項2】
前記対象物は、パネルの受給口を開放可能に閉塞するリッド開閉装置が備えるリッドであり、
前記リッドは、前記パネル内に退避して前記リッドによって前記受給口を閉塞した後退位置と、前記パネル外に突出して前記受給口を開放させた進出位置との間を、前記カム部材の回転によって移動可能なアームを有し、
前記ワイヤは、前記ガイド部材に保持される被保持部と、前記被保持部に連なり、前記レバーの回転に伴い移動する可動部とを有し、
前記レバーは、前記駆動機構によって、前記第1回転角度位置と、前記アームが前記進出位置に位置する第3回転角度位置との間を前記第2回転角度位置を経て回転可能であり、
前記可動部の長さは、前記レバーが前記第1回転角度位置に位置するときの前記連結部と前記ガイド部との直線距離である第1距離以上で、かつ、前記レバーが前記第3回転角度位置に位置するときの前記連結部と前記ガイド部との直線距離である第2距離以上である、請求項1に記載のロック装置。
【請求項3】
前記レバーは、前記カム部材に取り付けられたレバー本体を備え、
前記連結部は、前記レバー本体から径方向外側に向かって突出している、請求項1又は2に記載のロック装置。
【請求項4】
前記カム部材及び前記レバーのうちの一方は、前記カム部材の前記回転軸に沿って突出する取付部を有し、
前記カム部材及び前記レバーのうちの他方は、前記取付部を貫通させて前記カム部材に取り付けられる取付孔を有する、請求項3に記載のロック装置。
【請求項5】
前記ワイヤには、前記連結部に回転可能に連結される被連結部が設けられている、請求項3又は4に記載のロック装置。
【請求項6】
前記被連結部には、前記ワイヤより相対的に硬い基端部が設けられている、請求項5に記載のロック装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、前記ガイド部から、前記レバーが前記第1回転角度位置に位置するときの前記連結部に向かって延びるガイド壁を有する、請求項2に記載のロック装置。
【請求項8】
前記ガイド部材は、前記基準線に対して前記ガイド壁とは反対側に、前記ワイヤが当接可能な突出部を備える、請求項7に記載のロック装置。
【請求項9】
前記第1距離と前記第2距離はそれぞれ、前記レバーが前記第2回転角度位置に位置するときの前記連結部と前記ガイド部との直線距離よりも長い、請求項2に記載のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気自動車の給電口を開放可能に閉塞するリッドのためのロック装置が開示されている。このロック装置は、リッドをロックするロック位置とリッドのロックを解除したアンロック位置との間を移動可能なロック部材と、ロック部材を移動させるモータを含む電動式の作動機構とを備える。また、ロック装置は、モータの故障等によって作動機構によるロック部材の移動が不可能なとき、ロック位置のロック部材をアンロック位置に移動させる手動式のロック解除機構を備える。ロック解除機構は車内(例えばトランク)に操作部が配置されたワイヤを備え、ワイヤの先端には、ロック部材に接続するための長孔を有する偏平部が設けられている。ロック部材には長孔内に挿通される爪状突起が形成されている。通常時にロック部材がロック位置とアンロック位置との間を移動しても、爪状突起は長孔の内部を移動するだけであるため、ロック部材の移動に伴うワイヤの移動は抑制され得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のロック装置では、偏平部の加工のため、ロック解除機構を製造する工数が増加するおそれがある。また、ロック部材は、長穴に挿入される爪状突起等の追加の構成を必要とする。そのため、ロック部材を含むロック解除機構の構成が複雑になるおそれがある。
【0005】
本発明は、手動でロックを解除でき、かつ、構成が簡素化されたロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、移動可能な対象物をロックするロック位置と、前記対象物のロックを解除したアンロック位置との間を移動可能であるロック部材と、前記ロック部材を前記ロック位置から前記アンロック位置に移動させるとともに、前記アンロック位置から前記ロック位置への前記ロック部材の移動を許容する回転可能なカム部材を有する電動式の駆動機構と、前記カム部材に対して一体に回転可能に取り付けられており、前記カム部材の回転軸に対して径方向外側に突出した連結部を有するレバーと、前記連結部に連結され、手動で操作されるワイヤと、前記レバーと前記ワイヤとが配置され、前記ワイヤを湾曲させて配索するガイド部を有するガイド部材とを備え、前記レバーは、前記ワイヤの操作によって、第1回転角度位置から第2回転角度位置に回転可能で、前記第1回転角度位置では、前記ロック部材が前記ロック位置に位置し、かつ、前記連結部が、前記ガイド部と前記カム部材の前記回転軸とを結んだ基準線に対して前記回転軸まわりに間隔を空けて位置し、前記第2回転角度位置では、前記ロック部材が前記アンロック位置に位置し、かつ、前記連結部が前記基準線上に位置する、ロック装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、ワイヤが操作されることによって、レバーが第1回転角度位置から第2回転角度位置に回転され、カム部材もレバーと一体で回転される。ここで、第1回転角度位置ではロック部材はロック位置にあり、第2回転角度位置ではロック部材はアンロック位置にある。そのため、ワイヤが操作されることによって、対象物を手動で回転させることができる。また、本発明では、ワイヤが連結されたレバーをカム部材に取り付けることのみによって、ロック解除機構を構成でき、対象物を手動でアンロックできる。そのため、構成が簡素化され得る。
【発明の効果】
【0008】
本発明のロック装置によれば、手動でロックを解除でき、かつ、構成が簡素化され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るリッド開閉装置の斜視図。
【
図4】背面側から見たリッド開閉装置の分解斜視図。
【
図8A】スピンドル、インプットカム、及びロックピンの分解斜視図。
【
図8B】
図8Aとは異なる方向から見たスピンドル、インプットカム、及びロックピンの分解斜視図。
【
図12】駆動機構及びカバーを除いた
図3のXII-XII線断面図。
【
図15】駆動機構による第1アンロック状態を示す
図13と同様の断面図。
【
図16】駆動機構による第1アンロック状態を示す
図14と同様の断面図。
【
図17】駆動機構による第2アンロック状態を示す
図13と同様の断面図。
【
図18】駆動機構による第2アンロック状態を示す
図14と同様の断面図。
【
図19】駆動機構によりリッドを開作動させたときのインプットカム、アーム、ロックピン、レバー、及びワイヤの動きを示すグラフ。
【
図20】駆動機構によりリッドを閉作動させたときのインプットカム、アーム、ロックピン、レバー、及びワイヤの動きを示すグラフ。
【
図21】駆動機構を除いた閉状態のリッド開閉装置の平面図。
【
図22】リッド開作動時の第1状態を示す
図21と同様の平面図。
【
図23】リッド開作動時の第2状態を示す
図21と同様の平面図。
【
図24】リッド開作動時の第3状態を示す
図21と同様の平面図。
【
図25】ロック時のリッド開閉装置におけるレバー、ワイヤ、及びカバーの平面図。
【
図26】非常時にアンロックした際のリッド開閉装置におけるレバー、ワイヤ、及びカバーの平面図。
【
図27】非常時にロック解除部材を操作したときのインプットカム、アーム、ロックピン、レバー、及びワイヤの動きを示すグラフ。
【
図28】非常時にリッドを閉作動させたときのインプットカム、アーム、ロックピン、レバー、及びワイヤの動きを示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0011】
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るロック装置40を備えるリッド開閉装置10は、自動車のサイドパネル(パネル)1に取り付けられている。サイドパネル1には、車幅方向Yに貫通した受給口2が設けられている。
【0012】
図面に付したX方向は自動車の車長方向であり、Y方向は自動車の車幅方向であり、Z方向は自動車の車高方向である。個々の図において、X方向の矢印が示す向きが前側であり、矢印とは逆向きが後側である。Y方向の矢印が示す向きが車内側(内側)であり、矢印とは逆向きが車外側(外側)である。Z方向の矢印が示す向きが上側であり、矢印とは逆向きが下側である。
【0013】
図1を参照すると、リッド開閉装置10は、充電プラグ(図示せず)が接続される給電コネクタ(受給部)15を備える。但し、受給部は、ガソリン及び軽油等の液体燃料、並びに水素及びLPガス等の気体燃料のうちのいずれかを補給するためのものでもよい。
【0014】
図4及び
図5を参照すると、リッド開閉装置10は、サイドパネル1(
図1参照)に対して車幅方向Yの内側に取り付けられるベース20と、受給口2(
図1参照)を開放可能に閉塞する移動可能なリッド(対象物)30を備える。リッド30は、一端側の枢着部36がベース20に軸支されたアーム32を備え、
図3に示す閉位置と
図2に示す開位置との間を回転可能である。アーム32は、第1アーム部34と第2アーム部35によって構成されたアーム本体33と、枢着部36の一部を構成するスピンドル37とを備える。
【0015】
ロック装置40は、リッド30が
図3に示す閉位置にある状態でアーム32を移動不可能にロックする。ロック装置40は、ロックピン(ロック部材)41、トーションスプリング46、カバー(ガイド部材)28、電動式の駆動機構50、及び手動で操作されるロック解除部材65を備える。ロック解除部材65は、レバー70と伝達部材80とを備える。伝達部材80は、ワイヤ81と被連結部材82とを備える。
【0016】
図4及び
図5を参照すると、駆動機構50は、モータ(駆動源)51と、カム面53aを有するインプットカム(カム部材)52とを備える。モータ51とインプットカム52との間にはカバー28が配置されている。また、モータ51とカバー28との間にはレバー70と伝達部材80の一部とが配置されている。本実施形態の駆動機構50は、スピンドル37に駆動力を伝達してリッド30を開閉させる差動機構60を備える。差動機構60は、スピンドル37に設けられた凹部39と、インプットカム52に設けられた凸部54とを備える。閉位置のリッド30を開位置に回転させるとき、差動機構60は、ロックピン41の回転開始に対してスピンドル37の回転を遅延させる。
【0017】
図13から
図16を参照すると、ロックピン41は、駆動機構50又はロック解除部材65によってロック位置からアンロック位置に移動され、トーションスプリング46によってアンロック位置からロック位置に移動される。ロックピン41がロック位置にあるとき、リッド30は移動できないようにロックされている。ロックピン41がアンロック位置にあるとき、リッド30のロックは解除され、リッド30は移動できるようにアンロックされている。
【0018】
駆動機構50の開作動によってロックピン41がアンロック位置に回転されるとき、モータ51の駆動力がインプットカム52及び差動機構60(
図5参照)を介してスピンドル37に伝わることで、アーム32が
図2に示すサイドパネル1外へ突出した進出位置に回転する。これにより、リッド30は、
図2に示すように、受給口2を開放した姿勢(開位置)になる。また、駆動機構50の閉作動によってアーム32は、
図3に示すサイドパネル1内に退避した後退位置に回転する。これにより、リッド30は、
図3に示すように、受給口2を閉塞した姿勢(閉位置)になり、ロックピン41はトーションスプリング46の付勢力によってロック位置に回転される。
【0019】
ロック解除部材65は、モータ51の故障等によって駆動機構50によりロックピン41を作動できない非常時に使用される。つまり、駆動機構50が故障していない正常時には、ロック解除部材65は使用されない。
図4を参照すると、ロック解除部材65は、モータ51と同様に、インプットカム52を回転させるように取り付けられている。具体的には、被連結部材82を介してワイヤ81が接続されたレバー70がインプットカム52に取り付けられ、ワイヤ81を引っ張ることによってインプットカム52は回転させられる。すなわち、レバー70とワイヤ81とを用いることによって、モータ51の代わりに手動で駆動力を発生させ、ロックピン41をロック位置からアンロック位置に回転させる。その結果、
図3に示す閉位置から
図2に示す開位置へのリッド30の手動による回転が可能になる。
【0020】
このように、本実施形態におけるロック装置40は、正常時には駆動機構50とトーションスプリング46とによって、アンロック状態とロック状態とを切り替える。また、非常時には、ロック装置40は、ロック解除部材65によって手動でインプットカム52が回転させられることによって、ロック状態からアンロック状態に切り替える。
【0021】
以下、ベース20、カバー28、アーム32、ロックピン41、トーションスプリング46、駆動機構50、差動機構60、及びロック解除部材65について具体的に説明する。
【0022】
図1及び
図4を参照すると、ベース20は、受給口2を塞ぐベース本体21と、アーム32を軸支する軸受部24とを備える。
【0023】
ベース本体21には、給電コネクタ15を取り付ける取付部22が設けられている。ベース本体21の外周縁には、リッド30との間を水密にシールするシール部材23が取り付けられている。ベース本体21には更に、車幅方向Yから見て受給口2内に位置するように、アーム32を進退可能に挿通する挿通孔21aと、図示しないスイッチを配置する開口21bとが設けられている。
【0024】
図4及び
図5を参照すると、軸受部24は、ベース本体21と一体構造であり、取付部22に対して車長方向Xの前側に隣接し、車幅方向Yの内側に突出している。軸受部24は、
図4において上側に位置する端壁部25、
図4において下側に位置する端壁部26、及び端壁部25,26を連結する側壁部27を備える。端壁部25,26は車高方向Zに間隔をあけて設けられている。側壁部27は、端壁部25,26の車長方向Xの前端間と、端壁部25,26の車幅方向Yの外端間とを閉鎖している。端壁部25,26の車長方向Xの後端間と端壁部25,26の車幅方向Yの内端間とは開放され、端壁部25,26間には隙間29が形成されている。
【0025】
図5を参照すると、端壁部25,26間の隙間29にはアーム本体33が差し込まれ、端壁部25,26に枢着部36が回転可能に支持されている。端壁部25の上面側には、インプットカム52を回転可能に配置する第1配置部25a、ロックピン41を回転可能に配置する第2配置部25b、及びトーションスプリング46を配置する第3配置部25cが設けられている。また、端壁部25には、ロックピン41の回転を規制するストッパ25iが設けられている。
【0026】
図4及び
図5を参照すると、配置部25a~25cの上端は、カバー28によって覆われている。カバー28と端壁部25の上面側との間には、ロックピン41、トーションスプリング46、及びインプットカム52が収容されている。カバー28の上面側には、モータ51を取り付けるための取付片28aが突設されている。また、カバー28には、外部のモータ51と内部のインプットカム52を接続するための貫通孔28bが設けられている。また、カバー28には、レバー70の配置構造と、ワイヤ81の配索構造とが設けられており、これらの具体的な構成については、後に詳述する。
【0027】
図1から
図3を参照すると、リッド30が備えるアーム32は、挿通孔21aを通してベース20の車幅方向Yの内側から外側に跨がって配置されている。
図5を参照すると、アーム32は、軸受部24に軸支された枢着部36を備え、枢着部36と一体で回転移動する。より具体的には、アーム32は、第1アーム部34と第2アーム部35とによって構成されたアーム本体33と、枢着部36を構成するスピンドル37とを備える。
【0028】
第1アーム部34は、枢着部36の回転軸Aまわりの周方向に延びる円弧状で、ベース本体21の挿通孔21aに挿通されている。第1アーム部34のうち、車幅方向Yの外側に位置する先端がリッド30に連なっている。
【0029】
図5及び
図12を参照すると、第2アーム部35は、板状で、端壁部25,26間の隙間29に差し込まれ、軸受部24から車幅方向Yの内側に突出している。第2アーム部35の車幅方向Yの内端には、第1アーム部34が機械的に接続されている。隙間29に差し込まれる第2アーム部35の車幅方向Yの外端には、断面非円形状の差込孔35bを有する筒部35aが形成されている。差込孔35bを貫通して筒部35aにスピンドル37が取り付けられている。筒部35aとスピンドル37によって枢着部36が構成されている。
【0030】
スピンドル37は、取付棒37a、フランジ部37b、及び軸部37cを備える。スピンドル37は、軸受部24のうち円形状の貫通孔からなる第1配置部25aに、車高方向Zの上側から差し込んで取り付けられている。
【0031】
取付棒37aは、差込孔35bの形状と対応する断面非円形状の棒体であり、差込孔35bを貫通して取り付けられ、筒部35aと一体に回転する。
【0032】
フランジ部37bは、取付棒37aの上端に連なり、筒部35aの車高方向Zの上側に位置している。フランジ部37bは、枢着部36の回転軸Aが延びる方向から見て、円形状の筒部35aの直径と同じ直径の円形状である。
図12に最も明瞭に示すように、フランジ部37bは、端壁部25の第1配置部25aの孔壁に回転可能に支持されている。
図8A、
図8B、及び
図12を参照すると、フランジ部37bの中心には、インプットカム52を軸支する軸部37dが突設されている。フランジ部37bには更に、ロックピン41が係合する係合溝38と、差動機構60を構成する凹部39とが設けられている。なお、係合溝38と凹部39については後に詳述する。
【0033】
引き続き
図5、
図8B、及び
図12を参照すると、軸部37cは、取付棒37aの下端に設けられ、筒部35aから車高方向Zの下側に突出している。軸部37cは、第1配置部25aに対して車高方向Zに対向する端壁部26に形成された軸孔26a内に配置され、軸孔26aの孔壁に回転可能に支持されている。
【0034】
図5及び
図13を参照すると、ロックピン41は、軸受部24の第2配置部25bに配置されている。
図8A及び
図8Bを参照すると、ロックピン41は、筒部41aとロックピン本体41bを備える。
【0035】
【0036】
図5及び
図13を参照すると、筒部41aは、上端開口の凹みからなる第2配置部25bに形成された軸部25dに嵌合され、枢着部36の回転軸Aと平行な回転軸Bまわりに回転可能である。回転軸Aと回転軸Bの配置は、ロックピン41の回転と係合溝38への係合が阻害されない限り、幾何学的に厳密な意味での平行でなくてもよい。
【0037】
図8A及び
図8Bを参照すると、ロックピン本体41bは、スピンドル37のフランジ部37bに隣接するように、筒部41aから車長方向Xの前側に突出している。ロックピン本体41bの車高方向Z(回転軸Bが延びる方向)の厚みは、スピンドル37のフランジ部37bの厚みよりも厚い。
【0038】
ロックピン本体41bの車高方向Zの下側部分は、係合溝38に係合する係合凸部42を構成する。ロックピン本体41bの車高方向Zの上側部分は、インプットカム52のカム面53aに当接可能なカムフォロワ43を構成する。つまり、係合凸部42とカムフォロワ43は、車高方向Zに隣接して一体に設けられている。ロックピン本体41bには更に、トーションスプリング46を取り付ける取付部44が設けられている。
【0039】
ここで、スピンドル37の係合溝38とロックピン41の係合凸部42とについて説明する。
【0040】
図8B及び
図9を参照すると、スピンドル37の係合溝38は、フランジ部37bの外周面から内向きに窪んでいる。係合溝38は、ベース面38a、当接面38b、及び規制面38cによって画定されている。係合溝38の当接面38bの外端には、ガイド面38dが形成されている。
【0041】
ベース面38aは、XY平面に沿って延びる平坦な扇形状である。軸受部24(
図5参照)にスピンドル37を配置した状態では、ベース面38aはロックピン41よりも車高方向Zの下側に位置する。
【0042】
当接面38bは、ベース面38aから直交方向に突出し、フランジ部37bの径方向に延びる平坦面である。当接面38bが延びる方向は、ロックピン41の係脱を阻害しない限り、幾何学的に厳密な意味でフランジ部37bの径方向でなくてもよい。また、当接面38bは、ロックピン41の係脱を阻害しない限り、幾何学的に厳密な意味での平坦面でなくてもよい。
【0043】
規制面38cは、ベース面38aから直交方向に突出し、当接面38bに対して交差する方向に延びる平坦面である。
図14を参照すると、規制面38cは、ロック位置の係合凸部42に沿って延び、枢着部36の回転軸Aに向けたロックピン41の回転を規制する。規制面38cと当接面38bとがなす角は、90度以上に設定されており、好ましくは90度よりも大きく90度に近い角度(例えば92度)に設定されている。
【0044】
ガイド面38dは、フランジ部37bの径方向における当接面38bの外端に設けられ、規制面38cとは反対側に傾斜した平坦面である。より具体的には、ガイド面38dは、フランジ部37bの径方向の内側から外側に向けて、
図2に示す開位置のリッド30を
図3に示す閉位置に回転させるときにスピンドル37が閉回転する向きd2に傾斜している。
【0045】
図8A及び
図10を参照すると、ロックピン41の係合凸部42は、カムフォロワ43よりも枢着部36の回転軸A側に突出している。つまり、ロックピン41の回転軸Bまわりの周方向における係合凸部42の横幅は、カムフォロワ43の横幅よりも大きい。
図14を参照すると、係合凸部42のうち筒部41aとは反対側の先端部42aは、断面円弧状に面取りされている。アーム32が
図14に示す後退位置に回転した状態では、
図3に示す閉位置のリッド30を
図2に示す開位置に回転させる向きd1へのスピンドル37の開回転によって、先端部42aに係合溝38の当接面38bが当接可能である。
【0046】
ロックピン41には、
図13及び
図14に示すロック位置と
図15及び
図16に示すアンロック位置とが設定されている。
図13及び
図14に示すロック位置では、スピンドル37を介して
図3に示す閉位置のリッド30を移動不可能にロックする。
図15及び
図16に示すアンロック位置では、スピンドル37を介してリッド30のロックを解除し、リッド30を開閉可能とする。ロックピン41の回転角度位置は、回転軸Bまわりの周方向における係合凸部42の横幅の中心線が延びる方向として定義される。
【0047】
図14に示すように、ロックピン41のロック位置は、係合凸部42が当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置よりも枢着部36の回転軸A側に回転した第2回転角度位置に設定されている。
図16に示すように、ロックピン41のアンロック位置は、スピンドル37のフランジ部37bの外周に係合凸部42が当接する回転角度位置に設定されている。
【0048】
当接面38bに対して係合凸部42が直交方向に延びる第1回転角度位置は、リッド30が不正開操作されたとき、係合凸部42への当接面38bの当接(押圧)によって、アンロック位置側へのロックピン41の回転を阻止可能な限界位置である。前述の第2回転角度位置を含む第1回転角度位置よりも回転軸A側は、リッド30の不正開放を阻止できる開放阻止領域であり、この領域に回転した係合凸部42を当接面38bが押圧すると、ロックピン41はロック位置側に回転する。但し、ロックピン41の回転は、係合溝38の規制面38cへの当接によって規制される。これにより、向きd1へのスピンドル37の開回転は、係合凸部42への当接面38bの当接によって阻止される。その結果、リッド30は、
図2に示す開位置に回転できず、
図3に示す閉位置のまま動かない。そのため、係合凸部42が当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置よりも枢着部36の回転軸A側に回転した第2回転角度位置を、ロックピン41のロック位置に設定している。但し、係合凸部42が第1回転角度位置に位置する姿勢を、ロックピン41のロック位置としてもよい。
【0049】
一方、係合凸部42が当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置よりも回転軸Aから離れる側は、リッド30の不正開放を阻止不可能な領域である。この領域に回転した係合凸部42を当接面38bが押圧すると、ロックピン41には枢着部36の回転軸Aから離れる向きに回転する力が作用する。これにより、ロックピン41は
図16に示すアンロック位置に向けて回転し、係合凸部42が係合溝38から離脱する。その結果、スピンドル37は向きd1に回転可能である。そのため、係合凸部42が当接面38bに対して直交方向に延びる第1回転角度位置よりも枢着部36の回転軸Aから離れ、スピンドル37のフランジ部37bの外周に係合凸部42が当接する回転角度位置を、ロックピン41のアンロック位置に設定している。
【0050】
図8A及び
図8Bを参照すると、カムフォロワ43は、ロックピン本体41bのうち係合凸部42よりも上側の部分によって構成されている。カムフォロワ43は、係合凸部42よりも車長方向Xの前側に突出している。カムフォロワ43の筒部41aとは反対側の先端のうち、枢着部36の回転軸A側(車幅方向Yの外側)に位置する角部には、カム面53aに摺接する円弧状の面取り部43aが設けられている。ロックピン41が
図13及び
図14に示すロック位置にあるとき、カムフォロワ43とインプットカム52のカム面53aとの間の隙間は、係合凸部42とスピンドル37の当接面38bとの間の隙間よりも大きい。そのため、ロックピン41がロック位置にあるとき、リッド30が開操作されると、スピンドル37の回転によって当接面38bが係合凸部42に当接し、カムフォロワ43にはカム面53aが当接しない。これにより、リッド30の不正操作によって、インプットカム52を介してロックピン41がアンロック位置に向けて回転することを防止している。
【0051】
図8B及び
図10を参照すると、取付部44は、ロックピン本体41bのうちカムフォロワ43の面取り部43aとは反対側に設けられている。取付部44は、車幅方向Yの内側に突出した枠体からなり、トーションスプリング46が引っ掛けて取り付けられる。
【0052】
図5及び
図13を参照すると、トーションスプリング46は、軸受部24のうち上端開口の凹みからなる第3配置部25cに配置されている。トーションスプリング46は、ロックピン41を枢着部36の回転軸Aに向けて回転させるように付勢する。
【0053】
図4及び
図5を参照すると、駆動機構50は、1個のモータ51とインプットカム52を備える。
【0054】
モータ51は、電気的に接続された駆動回路(図示せず)がECU(Electronic Control Unit)によって制御されることで、正転及び逆転が可能な駆動源である。正転によってモータ51は、インプットカム52とスピンドル37とを回転させ、ロックピン41をロック位置からアンロック位置に回転させるとともに、インプットカム52と差動機構60を介して
図3に示す後退位置のアーム32を
図2に示す進出位置に回転させる。逆転によってモータ51は、インプットカム52と差動機構60を介して
図2に示す進出位置のアーム32を
図3に示す後退位置に回転させる。これにより、トーションスプリング46の付勢力による
図15に示すアンロック位置から
図13に示すロック位置へのロックピン41の回転を許容する。
【0055】
図5及び
図12を参照すると、インプットカム52は、第1配置部25aに配置されたスピンドル37のフランジ部37b上に配置され、モータ51から受けた駆動力によって回転するカム部材である。インプットカム52は、モータ51から受けた駆動力をロックピン41に伝達し、ロック位置のロックピン41をアンロック位置に向けて移動させるカム面53aを備える。また、インプットカム52は、モータ51から受けた駆動力をスピンドル37に伝達する差動機構60を構成する凸部54を一体に備える。なお、凸部54については後に詳述する。
【0056】
図8A及び
図8Bを参照すると、インプットカム52は、枢着部36の回転軸Aが延びる方向から見て扇形板状の本体52aと、本体52aの中心から突出する取付部52bとを備える。
図4を参照すると、取付部52bは、貫通孔28bを貫通してカバー28外へ突出してモータ51に接続される。取付部52bは、回転軸Aに沿って延びるように突出しており、外周面に放射状に突出する複数の凸条を備える断面非円形状である。但し、取付部52bはモータ51側に設けられ、インプットカム52に接続されてもよい。
【0057】
図12を参照すると、インプットカム52の中心には、軸孔52cが設けられている。インプットカム52は、スピンドル37の軸部37dへの軸孔52cの嵌合によってフランジ部37b上に軸支され、枢着部36の回転軸Aまわりに回転する。すなわち、枢着部36の回転軸Aは、インプットカム52の回転軸と一致する。
【0058】
図8B及び
図11を参照すると、本体52aには、係合溝38への係合凸部42の係合を許容するための切り欠き53が形成されている。切り欠き53は、インプットカム52の外周面から内向きに窪み、車高方向Zに貫通している。切り欠き53が係合溝38の上側に位置するように、枢着部36の回転軸Aに沿ってインプットカム52がスピンドル37上に隣接して配置されている。
【0059】
枢着部36の回転軸Aが延びる方向から見て、枢着部36の回転軸Aまわりの切り欠き53の角度範囲αは、係合溝38を露出可能な広さで形成されている。より具体的には、
図3に示す後退位置のアーム32を
図2に示す進出位置に移動させる開回転時、及び
図2に示す進出位置のアーム32を
図3に示す後退位置に移動させる閉回転時のいずれでも、スピンドル37の係合溝38が露出する角度範囲αで切り欠き53が形成されている。
【0060】
切り欠き53を画定する壁面のうちの1つは、インプットカム52の回転力を伝達して、
図14に示すロック位置のロックピン41を
図16に示すアンロック位置に向けて回転させるカム面53aを構成する。具体的には、切り欠き53は、枢着部36の回転軸Aまわりの周方向に対向するカム面53aと対向面53b、及び周方向に延びる内周面53cとで画定されている。カム面53aは、インプットカム52が開回転する向きd1の後側に位置する。カム面53aは、対向面53bに向けて円弧状に膨出している。
【0061】
図5及び
図8Aを参照すると、差動機構60は、スピンドル37の凹部39とインプットカム52の凸部54とで構成されている。但し、凹部39をインプットカム52に設け、凸部54をスピンドル37に設けてもよい。
【0062】
凸部54は、インプットカム52のうちスピンドル37と対向する下面の外周部に設けられている。枢着部36の回転軸Aが延びる方向から見て、凸部54は、扇形状であり、インプットカム52からスピンドル37に向けて突出している。
【0063】
凹部39は、スピンドル37のフランジ部37bに設けられている。凹部39は、フランジ部37bの外周面から内向きに窪み、インプットカム52と対向する上面を開放した扇形状の溝からなり、内部に凸部54が配置される(
図14参照)。
【0064】
図14を参照すると、枢着部36の回転軸Aまわりの周方向において、凸部54を形成する角度範囲βは、凹部39を形成する角度範囲γよりも小さい。これにより、回転軸Aまわりの周方向における凸部54と凹部39の間には、角度範囲β,γの差分の隙間61が形成されている。この隙間61の角度範囲(γ-β)が、インプットカム52の回転開始に対して遅延させて枢着部36を回転させる差動角度範囲である。
【0065】
差動角度範囲(γ-β)は、ロック位置のロックピン41を第1回転角度位置を越えてアンロック位置側に回転させるときのインプットカム52の回転角度よりも大きい。これにより、
図14に示すロック位置のロックピン41が、第1回転角度位置を越えてアンロック位置側に回転した後、凸部54及び凹部39それぞれの対向面が当接して、スピンドル37が回転し始める。その結果、ロックピン41を
図16に示すアンロック位置に回転させながら、
図3に示す後退位置のアーム32を
図2に示す進出位置に回転させることができる。
【0066】
以下、ロック解除部材65について説明する。
【0067】
ロック解除部材65は、レバー70と伝達部材80とを備える。伝達部材80は、ワイヤ81と被連結部材82とを備える。レバー70、ワイヤ81の一部、及び被連結部材82は、カバー28の上面に配置されている。
【0068】
図6を参照すると、カバー28は、基部28c、凹部28d、及び隆起部28e,28fを備える。
図6では、説明のため、初期位置に位置するレバー70の外形のみを点線で示している。
【0069】
基部28cは、車長方向Xと車幅方向Yとに沿って延びる。基部28cの上面には、保持溝28mと許容空間28nとが、隆起部28e,28fによって画定されている。保持溝28mにはワイヤ81の被保持部81a(
図7参照)が配索され、許容空間28nにはワイヤ81の可動部81b(
図7参照)が配索されている。
【0070】
凹部28dは、基部28cの車幅方向Yの外側に設けられ、基部28cに対して車高方向Zの下側に向かって円形に凹んでいる。凹部28dの上面にはレバー70が配置されている。
【0071】
隆起部28eは、基部28cの車長方向Xの後側に設けられ、基部28cに対して車高方向Zの上側に向かって隆起している。隆起部28eは、側壁部28g,28h及び突出部28iを有する。
【0072】
側壁部28gは、隆起部28eの車幅方向Yの内側に位置する部分によって構成され、車長方向Xに沿って延びている。
【0073】
側壁部28hは、隆起部28eの車長方向Xの後側に位置する部分によって構成され、車幅方向Yに沿って延びている。
【0074】
突出部28iは、隆起部28eの車幅方向Yの外側に位置する部分によって構成され、許容空間28n内に向けて突出している。突出部28iには、駆動機構50によってアーム32が進出位置に回転された際に、レバー70が連動して回転することによって移動する被連結部材82(
図7参照)及びワイヤ81(
図7参照)が当接可能である。
【0075】
隆起部28fは、基部28cの車長方向Xの前側に設けられ、基部28cに対して車高方向Zの上側に向かって隆起している。隆起部28fは、ガイド部28k、及びガイド壁28lを有する。
【0076】
隆起部28fの側面28jは、側壁部28gに対向するように、側壁部28gの内面に平行に延びている。
【0077】
保持溝28mは、基部28c、側壁部28gの一部、及び隆起部28fの側面28jによって画定されている。
【0078】
ガイド部28kは、保持溝28mを画定する側面28jの車長方向Xの後側に隣接して設けられ、許容空間28n内に向かって円弧状に突出している。
【0079】
ガイド壁28lは、ガイド部28kの車幅方向Yの外側に隣接して設けられており、車幅方向Yの内側から外側に向けて車長方向Xの前側に傾斜して延びている。より具体的には、ガイド壁28lは、ガイド部28kから、レバー70が初期位置に位置するときの後述の突出部(連結部)70bに向かって延びている。つまり、ガイド部28kから凹部28dに向かうに従って、凹部28dから車長方向Xの前側に離れる向きに傾斜している。
【0080】
許容空間28nは、基部28c、側壁部28gの一部、側壁部28h、突出部28i、ガイド部28kの一部、及びガイド壁28lによって画定されている。許容空間28nは、レバー70の回転に伴うワイヤ81の可動部81b(
図7参照)の移動を許容する。
【0081】
カバー28には、基準線Sが設定されている。基準線Sは、回転軸Aに垂直な断面において、レバー70の回転軸Aを通り、ガイド部28kの車長方向Xの後側に接する直線である。
【0082】
基準線Sに対するガイド壁28lと突出部28iとの位置関係について説明すると、ガイド壁28lは、基準線Sに対して車長方向Xの前側に位置し、突出部28iは、基準線Sに対して車長方向Xの後側に位置している。つまり、突出部28iは、基準線Sに対してガイド壁28lとは反対側に設けられている。
【0083】
図4及び
図7を参照すると、カバー28の上面に配置されているレバー70は、レバー本体70aと突出部70bとを有し、枢着部36の回転軸Aに一致する回転軸を中心にインプットカム52と一体で回転する。レバー70は、駆動機構50による動作と伝達部材80による動作とで、回転角度が異なる。具体的には、駆動機構50によるレバー70の回転角度は、伝達部材80によるレバー70の回転角度より相対的に大きい。
【0084】
正常時の駆動機構50によるリッド開閉装置10の動作では、アーム32が後退位置から進出位置に回転する際、レバー70は、
図21に示す初期位置(第1回転角度位置)から
図22に示すロック解除位置(第2回転角度位置)を経て、
図24に示す最大回転位置(第3回転角度位置)まで回転する。また、アーム32が進出位置から後退位置に回転する際、レバー70は、最大回転位置からロック解除位置を経て、初期位置まで回転する。
【0085】
非常時の伝達部材80によるリッド開閉装置10の動作では、ワイヤ81を操作することによって、レバー70は
図25に示す初期位置から
図26に示すロック解除位置まで回転する。後に詳述するが、レバー70が初期位置からロック解除位置まで回転することによって、ロックピン41がロック位置からアンロック位置まで回転し、リッド30を手動で開閉することができる。
【0086】
レバー本体70aは、車高方向Zから見て略円形状で、車高方向Zに所定の厚みを有する。また、レバー本体70aの中央には、レバー本体70aを車高方向Zに貫通するように取付孔70cが設けられている。本実施形態では、取付孔70cは、車高方向Zから見て回転軸Aを中心とする円形であり、取付部52bへ圧入することによって、レバー70がインプットカム52に対して相対的に回転しないように取り付けられている。但し、取付孔70cは、インプットカム52の取付部52bの断面形状に対応する断面非円形状に形成されてもよい。
【0087】
突出部70bは、レバー本体70aの外周の一部から径方向の外側に向かって突出している。つまり、突出部70bは、回転軸Aに対して径方向外側に突出している。突出部70bは、板状の支持板70d,70eを有する。支持板70dは、レバー本体70aの上側の面である上面70fと面一に設けられており、支持板70dの略中央には、車高方向Zに貫通する支持孔70hが設けられている。支持板70eは、レバー本体70aの下側の面である下面70gと面一に設けられており、支持板70eの略中央には、車高方向Zに貫通する支持孔70iが設けられている。支持孔70h,70iの孔壁に被連結部材82が回転可能に連結されている。支持板70d,70e間には隙間が形成され、被連結部材82の接続部82aの支持孔70h,70iの軸心を中心とした回転移動が許容されている。
【0088】
以下、
図21、
図22、及び
図24を参照して、レバー70の初期位置(第1回転角度位置)、ロック解除位置(第2回転角度位置)、及び最大回転位置(第3回転角度位置)の設定について具体的に説明する。
【0089】
図21を参照すると、初期位置は、突出部70bが基準線Sに対して回転軸Aまわりの向きd2側に角度θ1の間隔を空けて位置している。レバー70が初期位置に位置するとき、
図3に示すアーム32は後退位置に位置し、
図13及び
図14に示すロックピン41はロック位置に位置している。初期位置では、突出部70bは、ガイド部28kより車長方向Xの前側に位置している。
【0090】
図22を参照すると、ロック解除位置は、突出部70b、より具体的には支持孔70h,70iの中心が基準線S上に位置しているときのレバー70の回転角度位置に設定されている。ここで、初期位置とロック解除位置の間のレバー70の回転角度はθ1である。角度θ1は、
図13に示すロック位置のロックピン41を
図15に示すアンロック位置に移動させるときのインプットカム52の回転角度よりも大きい。また、角度θ1は、リッド30を
図2に示す開位置に移動させるときのインプットカム52の回転角度よりも小さい。本実施形態では、角度θ1は、リッド30とサイドパネル1との間にユーザの指を挿入できる程度にリッド30を回転させたときのインプットカム52の回転角度と等しい。初期位置のレバー70をロック解除位置に回転させると、インプットカム52とスピンドル37を介して、ロック位置のロックピン41をアンロック位置に回転できる。
【0091】
図24を参照すると、最大回転位置は、ロック解除位置からインプットカム52が開回転する向きd1に、角度θ2回転したときのレバー70の回転角度位置に設定されている。つまり、最大回転位置では、突出部70bは、基準線Sに対して回転軸Aまわりに初期位置とは反対側に角度θ2の間隔を空けて位置し、突出部28iより車幅方向Yの外側に位置している。初期位置とロック解除位置の間の角度θ1と、ロック解除位置と最大回転位置の間の角度θ2とを加算した回転角度(θ1+θ2)は、モータ51によるインプットカム52の回転角度に等しい。そのため、レバー70が最大回転位置に位置するとき、
図2に示すアーム32は進出位置に位置する。
【0092】
図7及び
図21を参照すると、ワイヤ81の一端は、カバー28内に配置されて被連結部材82を介してレバー70に接続され、ワイヤ81の他端は、カバー28から外部へ突出して図示しない操作レバーに接続されている。操作レバーは自動車のボンネット内又はトランク内に配置され、操作レバーの操作力は、ワイヤ81と被連結部材82とを介してレバー70に伝達される。具体的には、操作レバーを引っ張ることによって、レバー70が回転する。
【0093】
図21を参照すると、本実施形態では、ワイヤ81は、被保持部81aと可動部81bとを有する。被保持部81aは、モータ51によってインプットカム52が回転させられる際、つまり、正常時にリッド30が開閉する際、保持溝28mに保持されることによって移動が抑制される部分である。可動部81bは、被保持部81aに連なり、正常時にリッド30が開閉する際、レバー70の回転に伴って許容空間28nで移動する部分である。
【0094】
図2及び
図4を参照すると、カバー28の車高方向Zの上側にはモータ51が配置され、許容空間28n(
図6参照)は、モータ51に覆われている。そのため、可動部81b(
図21参照)の車高方向Zの移動は、基部28c(
図21参照)の上面とモータ51の底面とによって制限されている。
【0095】
図7を参照すると、ワイヤ81は、可撓性を有する合成樹脂、例えばナイロンから成る。ワイヤ81の延在方向に垂直な断面の形状は、丸形やH形等の任意の形であり得る。
【0096】
被連結部材82は、接続部(基端部)82aと被連結部82bとを有し、ワイヤ81より相対的に硬い材料によって形成されている。
【0097】
接続部82aは筒状で、ワイヤ81のレバー70側の一端81cが接続されている。
図23を参照すると、接続部82aは、レバー70の突出部70bから突出し、カバー28の突出部28i(
図6参照)に当接する長さで設けられている。但し、接続部82a設けることなく、ワイヤ81を被連結部82bに直接接続してもよい。
【0098】
被連結部82bは、ワイヤ81の先端に位置するように接続部82aの端部に設けられている。被連結部82bは、接続部82aの延在方向に垂直な方向に沿って延びている。被連結部82bの延在方向に垂直な断面の形状は、円形である。被連結部82bの端部82cが突出部70bの支持孔70hに挿入され、被連結部82bの端部82cとは反対側の端部82dが支持孔70iに挿入されることによって、被連結部材82はレバー70に対して回転可能に連結されている。すなわち、ワイヤ81は、被連結部材82を介して突出部70bに回転可能に連結されている。なお、被連結部材82は設けられていなくてもよく、ワイヤ81が直接突出部70bに連結されていてもよい。
【0099】
ここで、
図21を参照すると、レバー70が初期位置に位置するとき、つまり、ロックピン41がロック位置に位置するとき、回転軸Aに垂直な断面におけるガイド部28kと突出部70bとの直線距離は、距離(第1距離)L1である。より詳細には、レバー70が初期位置に位置するとき、回転軸Aに垂直な断面におけるガイド部28kと支持孔70hの中心との直線距離は、距離L1である。
【0100】
図24を参照すると、レバー70が最大回転位置に位置するとき、つまり、アーム32が進出位置に位置するとき、回転軸Aに垂直な断面におけるガイド部28kと突出部70bの直線距離は、距離(第2距離)L2である。より詳細には、レバー70が最大回転位置に位置するとき、回転軸Aに垂直な断面におけるガイド部28kと支持孔70hの中心との直線距離は、距離L2である。
【0101】
ワイヤ81の可動部81bの長さは、距離L1以上かつ距離L2以上である。また、距離L1,L2はそれぞれ、レバー70がロック解除位置(第2回転角度位置)に位置するときの、回転軸Aに垂直な断面におけるガイド部28kと突出部70bの直線距離L0(
図22参照)よりも長い。言い換えると、距離L1,L2はそれぞれ、ケーブル80が連結されるレバー70の支持孔70h、70iが基準線S上に位置するときの、回転軸Aに垂直な断面におけるガイド部28kと突出部70bの直線距離L0よりも長い。
【0102】
次に、駆動機構50によるリッド開閉装置10の正常時の動作を、
図19及び
図20を参照して説明する。
【0103】
図19及び
図20は、モータ51の回転角度位置に対するインプットカム52、アーム32、ロックピン41、レバー70、及びワイヤ81の動きを示すグラフである。そのうち、
図19は、駆動機構50により閉位置のリッド30を開位置に回転させるリッド開作動時を示し、
図20は、駆動機構50により開位置のリッド30を閉位置に回転させるリッド閉作動時を示す。
【0104】
図19を参照すると、閉位置のリッド30を開位置に回転させるとき、モータ51は、初期回転角度位置(0)から最大回転角度位置(max)まで正転する。これにより、インプットカム52は、
図13及び
図14に示す閉回転角度位置から
図17及び
図18に示す開回転角度位置まで、向きd1へ開回転する。この間、アーム32、ロックピン41、レバー70、及びワイヤ81は、以下のように作動する。
【0105】
インプットカム52の開回転によってカム面53aが一体に回転するため、ロック位置のロックピン41は、カム面53aとカムフォロワ43のクリアランス分の遅延時間を経て、アンロック位置に向けて移動し始める(
図19のSa1参照)。一方、差動機構60の隙間61によって、インプットカム52の回転力はスピンドル37に伝わらないため、
図19にSb1で示すように、アーム32は後退位置に停止している。レバー70は、インプットカム52の回転に伴い、初期位置からロック解除位置に向けて移動し始める(
図19のSd1参照)。
【0106】
インプットカム52が差動機構60の隙間61分(差動角度範囲γ-β)回転すると、凹部39と凸部54の対向面が当接する(
図19のSb2参照)。よって、その後はインプットカム52の回転力が伝わってスピンドル37が回転するため、後退位置のアーム32が進出位置に向けて回転し始める(
図19のSb3参照)。ロックピン41は、カム面53aとカムフォロワ43の摺接によってアンロック位置に向けて回転し続ける。
【0107】
スピンドル37の回転によって、カム面53aとカムフォロワ43の摺接に引き続き、ガイド面38dに係合凸部42が摺接する(
図19のSa2参照)。これにより、ロックピン41は引き続きアンロック位置に向けて回転する。
【0108】
その後、ガイド面38dの外端が係合凸部42に摺接する位置までスピンドル37が回転すると、ロックピン41はアンロック位置まで回転する(
図19のSa3参照)。ロックピン41は、
図15及び
図16に示すように、トーションスプリング46の付勢力によってスピンドル37のフランジ部37bの外周に圧接されて、アンロック位置に保持される(
図19のSa4参照)。その後、インプットカム52の回転に伴い、レバー70は、ロック解除位置まで回転する(
図19のSd2参照)。
【0109】
続いて、インプットカム52が開回転角度位置まで回転すると、
図17及び
図18に示すように、スピンドル37を介してアーム32が進出位置まで回転する。その結果、リッド30は開位置に回転する。この状態でロックピン41は、トーションスプリング46の付勢力によってフランジ部37bの外周に圧接され、アンロック位置に維持される。また、インプットカム52の回転に伴い、レバー70は、最大回転位置まで回転する(
図19のSd3参照)。
【0110】
レバー70が初期位置から最大回転位置まで回転する間、可動部81bは、許容空間28n内を移動する。具体的には、可動部81bは、
図21から
図23に順に示すように、側壁部28hに向けて膨らむように移動した後、
図24に示すように、突出部28iに当接して車幅方向Yの外側に向けて引き込まれる。なお、レバー70が初期位置から最大回転位置まで回転する間、ワイヤ81は、可動部81bのみが移動し、被保持部81aは移動しない。つまり、ワイヤ81は、延在方向に引っ張られることなく、最大引込位置に保持される(
図19のSe1参照)。
【0111】
図20を参照すると、開位置のリッド30を閉位置に回転させるとき、モータ51は、最大回転角度位置(max)から初期回転角度位置(0)まで逆転する。これにより、インプットカム52は、
図17及び
図18に示す開回転角度位置から
図13及び
図14に示す閉回転角度位置まで、向きd2へ閉回転する。この間、アーム32、ロックピン41、レバー70、及びワイヤ81は、以下のように作動する。
【0112】
インプットカム52の閉回転に伴って、レバー70は、最大回転位置から初期位置に向けて回転し始める。
【0113】
また、インプットカム52の閉回転によってカム面53aが一体に回転するが、カム面53aはカムフォロワ43から離れた回転角度位置に回転しているため、ロックピン41は回転することなくアンロック位置に保持される(
図20のSa5参照)。また、差動機構60の隙間61によって、インプットカム52の回転力はスピンドル37に伝わらないため、
図20にSb4で示すように、アーム32も回転しない。
【0114】
インプットカム52が差動機構60の隙間61分(差動角度範囲γ-β)回転すると、凹部39と凸部54の対向面が当接する(
図20のSb5参照)。よって、その後は、インプットカム52の回転力が伝わってスピンドル37が回転するため、進出位置のアーム32が後退位置に向けて回転し始める(
図20のSb6参照)。この際もロックピン41は移動しない。
【0115】
インプットカム52の閉回転によってアーム32が後退位置に向けて回転し始めた後、レバー70は、ロック解除位置を通過する(
図20のSd4参照)。
【0116】
スピンドル37の回転によって、ガイド面38dに係合凸部42が位置すると(
図20のSa6参照)、その後は、トーションスプリング46の付勢力によって、アンロック位置のロックピン41がロック位置に向けて回転し始める(
図20のSa7参照)。
【0117】
続いて、当接面38bの外端に係合凸部42が当接する角度位置にスピンドル37が回転されると(
図20のSb7参照)、
図13及び
図14に示すように、トーションスプリング46の付勢力によって、ロックピン41がロック位置に回転し、軸受部24に形成されたストッパ25iに当接して停止する(
図20のSa8参照)。
【0118】
最後に、スピンドル37の係合溝38とロックピン41の係合凸部42のクリアランス分、インプットカム52、レバー70、及びスピンドル37が回転する。これにより、インプットカム52は閉回転角度位置まで回転し、レバー70は初期位置まで回転する。また、スピンドル37を介してアーム32は後退位置まで回転し、リッド30は閉位置に回転する。
【0119】
レバー70が最大回転位置から初期位置まで回転する間、ワイヤ81の可動部81bは、許容空間28n内を移動する。具体的には、可動部81bは、
図24から
図22に順に示すように、車幅方向Yの内側に向けて移動した後、ガイド壁28lの接近するように移動する。その後、可動部81bは、
図21に示すように、ガイド部28kとガイド壁28lとに沿って延びるまで移動する。なお、レバー70が最大回転位置から初期位置まで回転する間、ワイヤ81は、可動部81bのみが移動し、被保持部81aは移動しない。つまり、ワイヤ81は、延在方向に引っ張られることなく、最大引込位置に保持される(
図20のSe2参照)。
【0120】
以上のように、本実施形態のロック装置40では、1個のモータ51によって、
図2に示す進出位置と
図3に示す後退位置との間のアーム32の回転を阻害することなく、ロックピン41によるリッド30のロック状態とアンロック状態を切り換えることができる。また、ワイヤ81の可動部81bのみが許容空間28nで移動するため、ワイヤ81全体が移動することが抑制され得る。
【0121】
次に、ロック解除部材65によるリッド開閉装置10のロック解除動作を、
図25から
図27を参照して説明する。
【0122】
図25及び
図26は、ユーザがロック解除部材65を操作したときの操作ストロークに対するレバー70、ワイヤ81、及び被連結部材82の位置を示す図である。
図25は、操作ストロークが初期位置(0)にあるときの図である。
図26は、操作ストロークが最大操作位置(max)にあるときの図である。
【0123】
操作レバー(図示せず)を初期位置(0)から最大操作位置(max)まで操作すると、ワイヤ81は、最大引込位置から進出位置まで引っ張られる(
図27のSe1参照)。これにより、レバー70は、ガイド部28kを支点として引っ張られるワイヤ81によって、
図25に示す初期位置から
図26に示すロック解除位置まで回転する(
図27のSd1参照)。
【0124】
インプットカム52は、レバー70と一体に回転し(
図27のSc1参照)、カム面53aによってロック位置のロックピン41はアンロック位置に向けて回転し始める(
図27のSa1参照)。また、スピンドル37は、インプットカム52が差動機構60の隙間61分(差動角度範囲γ-β)回転すると(
図27のSb1参照)、回転し始める(
図27のSb2参照)。
【0125】
インプットカム52とスピンドル37の回転によって、ロックピン41がアンロック位置に移動すると、ロックピン41は、
図15及び
図16に示すように、トーションスプリング46の付勢力によってスピンドル37のフランジ部37bの外周に圧接されて、アンロック位置に保持される(
図27のSa2参照)。また、レバー70がロック解除位置まで回転すると、アーム32は
図27にSb3で示す位置まで回転する。このとき、本実施形態では、リッド30は、ユーザがリッド30を把持できる程度にサイドパネル1から開いている。
【0126】
操作レバー(図示せず)の操作を終えたユーザが、車外からリッド30を把持し、
図2に示す開位置に向けて手動で回転させることによって、アーム32は進出位置に向けてさらに回転する(
図27のSb4参照)。この際、差動機構60の隙間61によって、スピンドル37の回転力はインプットカム52に伝わらないため、インプットカム52は
図27のSc2に示すように回転せず、レバー70も
図27のSd2に示すように回転しない。この間、ワイヤ81は、進出位置に保持されている(
図27のSe2参照)。
【0127】
凹部39と凸部54の対向面が当接すると、その後はスピンドル37の回転力が伝わって、インプットカム52は、
図27のSc3に示すように開回転角度位置の近傍まで回転し、レバー70は、
図27のSd3に示すように最大回転位置の近傍まで回転する。アーム32が進出位置に位置するとき、インプットカム52は、開回転角度位置から向きd2に隙間61分開けて位置しており、レバー70は、最大回転位置から向きd2に隙間61分開けて位置している。また、ワイヤ81は、進出位置から最大引込位置に向けて、レバー70によって引っ張られるが、最大引込位置までは引っ張られない(
図27のSe3参照)。
【0128】
次に、
図28を参照して、手動で開放したリッド30を手動で閉じるときのリッド開閉装置10の動作を説明する。
【0129】
開状態のリッド30を閉操作すると、リッド30は開位置(max)から閉位置(0)まで回転する。これにより、アーム32は進出位置から後退位置まで回転する(
図28のSb5参照)。アーム32の回転開始時には、差動機構60の隙間61によって、スピンドル37の回転力はインプットカム52に伝わらないため、インプットカム52は
図28のSc4に示すように回転せず、レバー70も
図28のSd4に示すように回転しない。凹部39と凸部54の対向面が当接すると、その後はスピンドル37の回転力が伝わって、インプットカム52は、
図28のSc5に示すように閉回転角度位置に向けて回転し、レバー70は、
図28のSd5に示すように初期位置に向けて回転する。
【0130】
リッド30の操作によって、ガイド面38dが係合凸部42に摺接する位置までスピンドル37が回転されると(
図28のSb6参照)、トーションスプリング46の付勢力によって、アンロック位置のロックピン41がロック位置に向けて回転し始める(
図28のSa3参照)。
【0131】
続いて、当接面38bの外端に係合凸部42が当接する角度位置にスピンドル37が回転すると(
図28のSb7参照)、ロックピン41は、トーションスプリング46の付勢力によってロック位置まで回転し(
図28のSa4参照)、ストッパ25iに当接した状態で停止する。インプットカム52は、カム面53aとカムフォロワ43との摺接によって、閉回転角度位置に向けて回転する(
図28のSc6参照)。レバー70は、インプットカム52と一体に、初期位置に向けて回転する(
図28のSd6参照)。そして、インプットカム52とレバー70とは、初期位置から向きd1にカム面53aとカムフォロワ43とのクリアランス分離れた位置で停止する(
図28のSc7,Sd7参照)。
【0132】
アーム32が進出位置から後退位置まで回転する間、ワイヤ81の可動部81bは、一部を保持溝28mに残した状態で、ガイド壁28lに接近するように許容空間28nを移動する(
図28のSe4参照)。そして、ロックピン41がトーションスプリング46の付勢力によってロック位置まで回転するとき、可動部81bはレバー70によって車幅方向Yの外側に向けて引っ張られ、最大引込位置に向けて移動する(
図28のSe5参照)。その後、ワイヤ81は、最大引込位置まで引っ張られることなく停止する(
図28のSe6参照)。
【0133】
以上のように、本実施形態のロック装置40では、駆動機構50によるロックピン41の回転が不可能な状態であっても、ロック解除部材65の操作、及びリッド30の操作によって、リッド30を開閉できる。
【0134】
本実施形態に係るリッド開閉装置10によれば、操作レバー(図示せず)が操作され、ワイヤ81が操作されることによって、レバー70が初期位置からロック解除位置に回転され、インプットカム52もレバー70と一体で回転される。ここで、初期位置ではロックピン41はロック位置にあり、ロック解除位置ではロックピン41はアンロック位置にある。そのため、操作レバー(図示せず)が操作されることによって、リッド30を手動で回転させることができる。また、本実施形態では、被連結部材82を介してワイヤ81が連結されたレバー70をインプットカム52に取り付けることのみによって、ロック解除機構を構成でき、リッド30を手動でアンロックできる。そのため、構成が簡素化され得る。
【0135】
モータ51によってインプットカム52が回転させられる際、ワイヤ81のうちガイド部28kに接する箇所から突出部70bにわたって延びる部分の長さ、すなわち、可動部81bの長さは、距離L1以上かつ距離L2以上である。また、レバー70は、初期位置と最大回転位置との間をロック解除位置を経て回転する。そのため、モータ51によるリッド30の開閉動作中に被保持部81aが移動することが抑制され得る。従って、正常時のリッド30の開閉中に、ワイヤ81が移動する範囲を制限することができ、作動音や作動不良を防ぐことができる。
【0136】
突出部70bはレバー本体70aから径方向外側に突出している。そのため、リッド30を手動で開放する際に必要なモーメントを容易に得ることができる。
【0137】
レバー70はインプットカム52の取付部52bに嵌合によって組み付けられるため、組み付け作業性を向上できる。
【0138】
ワイヤ81は、被連結部材82を介してレバー70に対して回転可能に取り付けられている。そのため、レバー70は滑らかに回転でき、リッド30の自動又は手動による開閉が容易になり得る。
【0139】
被連結部材82には接続部82aが設けられており、接続部82aの長さ等の調整によって、インプットカム52が回転した際のワイヤ81の撓みを規制できる。換言すると、ワイヤ81が意図せぬ形状となることが防止され得る。そのため、リッド30の開閉作動中に作動不良が生じることを防止できる。
【0140】
カバー28はガイド壁28lを備えるため、リッド30が閉じた状態でのワイヤ81の位置を規制できる。従って、リッド30を手動でアンロックする必要がある場合、ワイヤ81を容易に引っ張ることができる。
【0141】
アーム32が進出位置に移動する際、ワイヤ81と被連結部材82とが突出部28iに当接するため、ワイヤ81の撓みが規制され得る。換言すると、ワイヤ81の形状が意図せぬ形状となることが防止され得る。そのため、リッド30の開閉動作中に作動不良が生じることを防止できる。
【0142】
距離L1,L2はそれぞれ、レバー70が第2回転角度位置(ロック解除位置)に位置するときの、突出部70bとガイド部28kとの直線距離L0よりも長い。そのため、モータ51によるリッド30の開閉動作中に被保持部81aが移動することを抑制し得る。従って、正常時のリッド30の開閉中に、ワイヤ81が移動する範囲を制限することができ、より作動音や作動不良を防ぐことができる。
【0143】
なお、本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0144】
駆動機構50は、ロックピン41のみを移動可能な専用機構であってもよい。つまり、ロックピン41とリッド30は、異なる駆動機構によって作動されてもよい。また、駆動機構50のカム部材にはギアが用いられてもよい。カムは、インプットカム52に連動して移動可能であれば、インプットカム52とは別の部材に設けられてもよい。つまり、カム部材は、カム面53aを有しないインプットカム52と、インプットカム52と連動するカム面53aを備えた別部材とで構成されていてもよい。
【0145】
ロック装置40によりロックする対象物は、リッド開閉装置10が備えるリッド30以外であってもよい。
【符号の説明】
【0146】
1 サイドパネル(パネル)
2 受給口
10 リッド開閉装置
15 給電コネクタ
15a 接続部
20 ベース
21 ベース本体
21a 挿通孔
21b 開口
22 取付部
23 シール部材
24 軸受部
25 端壁部
25a 第1配置部
25b 第2配置部
25c 第3配置部
25d 軸部
25i ストッパ
26 端壁部
26a 軸孔
27 側壁部
28 カバー(ガイド部材)
28a 取付片
28b 貫通孔
28c 基部
28d 凹部
28e,28f 隆起部
28g,28h 側壁部
28i 突出部
28j 側面
28k ガイド部
28l ガイド壁
28m 保持溝
28n 許容空間
29 隙間
30 リッド(対象物)
32 アーム
33 アーム本体
34 第1アーム部
35 第2アーム部
35a 筒部
35b 差込孔
36 枢着部
37 スピンドル
37a 取付棒
37b フランジ部
37c 軸部
37d 軸部
38 係合溝
38a ベース面
38b 当接面
38c 規制面
38d ガイド面
39 凹部
40 ロック装置
41 ロックピン(ロック部材)
41a 筒部
41b ロックピン本体
42 係合凸部
42a 先端部
43 カムフォロワ
43a 面取り部
44 取付部
46 トーションスプリング
50 駆動機構
51 モータ(駆動源)
52 インプットカム(カム部材)
52a 本体
52b 取付部
52c 軸孔
53 切り欠き
53a カム面
53b 対向面
53c 内周面
54 凸部
60 差動機構
61 隙間
65 ロック解除部材
70 レバー
70a レバー本体
70b 突出部(連結部)
70c 取付孔
70d,70e 支持板
70f 上面
70g 下面
70h,70i 支持孔
80 伝達部材
81 ワイヤ
81a 被保持部
81b 可動部
81c 一端
82 被連結部材
82a 接続部(基端部)
82b 被連結部
82c,82d 端部
80h 他端
α カムの角度範囲
β 差動機構の凸部の角度範囲
γ 差動機構の凹部の角度範囲
L1 距離(第1距離)
L2 距離(第2距離)