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特開2023-140049光ファイバを用いた風向計測方法及び風向計測装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140049
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】光ファイバを用いた風向計測方法及び風向計測装置
(51)【国際特許分類】
   G01H 9/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
G01H9/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045890
(22)【出願日】2022-03-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100197561
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 三喜男
(72)【発明者】
【氏名】種平 貴文
(72)【発明者】
【氏名】小池 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】山賀 勇真
(72)【発明者】
【氏名】三国 祐亮
【テーマコード(参考)】
2G064
【Fターム(参考)】
2G064AA01
2G064AA11
2G064AB01
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
(57)【要約】
【課題】光ファイバを用いて風向を精度良く計測する。
【解決手段】センサ部11を有する光ファイバ10と、センサ部11に入射光を出力する光源2と、センサ部11からの反射光を検出する光検出部3とを用いて風向を計測する光ファイバを用いた風向計測では、センサ部11の軸方向中央部に配置された中央規制部21によってセンサ部11の軸方向中央部が初期位置から一方側へ移動することを規制し、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部11が振動するときに、入射光に対するセンサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の振動数を算出し、算出されたセンサ部11の振動数から、センサ部の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向に延びるセンサ部を有する光ファイバと、前記センサ部に入射光を出力する光源と、前記センサ部からの反射光を検出する光検出部とを用いて風向を計測する光ファイバを用いた風向計測方法であって、
計測環境下に両端部が支持された状態で前記センサ部を配置し、
前記センサ部の軸方向中央部における前記センサ部の軸方向に直交する直交方向一方側に配置されて前記センサ部の軸方向に直交する方向に延在する中央規制部によって前記センサ部の軸方向中央部が初期位置から前記直交方向一方側へ移動することを規制し、
前記中央規制部によって前記センサ部の軸方向中央部が初期位置から前記直交方向一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によって前記センサ部が振動するときに、前記光源によって出力された入射光に対して前記センサ部によって反射されて前記光検出部によって検出される前記センサ部からの反射光に基づいて、前記センサ部の振動数を算出し、
算出された前記センサ部の振動数から、前記センサ部の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する、
光ファイバを用いた風向計測方法。
【請求項2】
前記センサ部は、風向の計測方向に直交する方向に配置される、
請求項1に記載の光ファイバを用いた風向計測方法。
【請求項3】
前記センサ部からの反射光に基づいて、前記センサ部の軸方向中央部を規制する前記中央規制部の法線方向と、前記法線方向及び前記センサ部の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測する、
請求項2に記載の光ファイバを用いた風向計測方法。
【請求項4】
前記光ファイバは、平行に配置される2つのセンサ部を有し、
前記2つのセンサ部は、前記中央規制部によってそれぞれ反対側から規制される、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の光ファイバを用いた風向計測方法。
【請求項5】
光ファイバを用いた風向計測装置であって、
軸方向に延びるセンサ部を有する光ファイバと、
前記センサ部に入射光を出力する光源と、
前記センサ部からの反射光を検出する光検出部と、
前記センサ部の軸方向中央部における前記センサ部の軸方向に直交する直交方向一方側に前記センサ部の軸方向に直交する方向に延在して配置され、前記センサ部の軸方向中央部が初期位置から前記直交方向一方側へ移動することを規制する中央規制部と、
前記光源によって出力された入射光に対して前記センサ部によって反射されて前記光検出部によって検出される前記センサ部からの反射光に基づいて風向を計測する風向計測手段と、を備え、
前記センサ部は、計測環境下に両端部が支持された状態で配置され、
前記風向計測手段は、前記中央規制部によって前記センサ部の軸方向中央部が初期位置から前記直交方向一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によって前記センサ部が振動するときに、前記光源によって出力された入射光に対して前記センサ部によって反射されて前記光検出部によって検出される前記センサ部からの反射光に基づいて、前記センサ部の振動数を算出し、算出された前記センサ部の振動数から、前記センサ部の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する、
光ファイバを用いた風向計測装置。
【請求項6】
前記センサ部は、風向の計測方向に直交する方向に配置される、
請求項5に記載の光ファイバを用いた風向計測装置。
【請求項7】
前記風向計測手段は、前記センサ部からの反射光に基づいて、前記センサ部の軸方向中央部を規制する前記中央規制部の法線方向と、前記法線方向及び前記センサ部の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測する、
請求項6に記載の光ファイバを用いた風向計測装置。
【請求項8】
前記光ファイバは、平行に配置される2つのセンサ部を有し、
前記2つのセンサ部は、前記中央規制部によってそれぞれ反対側から規制される、
請求項5から請求項7の何れか1項に記載の光ファイバを用いた風向計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ファイバを用いた風向計測方法及び風向計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車体前部にエンジンと駆動モータとを備えた電動車両などの車両では、エンジンルーム内に配置されるエンジン及び駆動モータが発熱することから、エンジンルーム内の温度管理を行うためなど、エンジンルーム内に流れる風の状態を計測することが行われている。
【0003】
風の状態を計測するものとして、光ファイバを用いて風の状態を計測するものが知られている。例えば特許文献1には、センサ部を有する光ファイバを用い、風を受ける受風部を備えたレバーをセンサ部に連結して風によって受風部に作用する力をレバーによってセンサ部に増幅させて作用させ、センサ部の変化から風の状態を計測するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4831695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1に記載のものは、風を受ける受風部を備えたレバーを介して光ファイバのセンサ部を変化させて風の状態を計測することから、光ファイバを用いて風向を計測する場合、受風部を備えたレバーによって風の状態が変化して風向を正確に検出することができないおそれがある。スペースが限られたエンジンルーム内の風の状態を検出する場合、受風部を備えたレバーによる風の状態変化が大きく風向を精度良く計測することができないおそれがある。前記特許文献1に記載のものはまた、一次元方向のみの風向を計測するものであり、風向を精度良く計測することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、光ファイバを用いて風向を計測する際に、風向を精度良く計測することができるようにすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、軸方向に延びるセンサ部を有する光ファイバと、前記センサ部に入射光を出力する光源と、前記センサ部からの反射光を検出する光検出部とを用いて風向を計測する光ファイバを用いた風向計測方法であって、計測環境下に両端部が支持された状態で前記センサ部を配置し、前記センサ部の軸方向中央部における前記センサ部の軸方向に直交する直交方向一方側に配置されて前記センサ部の軸方向に直交する方向に延在する中央規制部によって前記センサ部の軸方向中央部が初期位置から前記直交方向一方側へ移動することを規制し、前記中央規制部によって前記センサ部の軸方向中央部が初期位置から前記直交方向一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によって前記センサ部が振動するときに、前記光源によって出力された入射光に対して前記センサ部によって反射されて前記光検出部によって検出される前記センサ部からの反射光に基づいて、前記センサ部の振動数を算出し、算出された前記センサ部の振動数から、前記センサ部の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する、光ファイバを用いた風向計測方法を提供する。
【0008】
本発明によれば、光ファイバを用いて風向を計測する際に、中央規制部によってセンサ部の軸方向中央部が初期位置から一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部が振動するときに、センサ部の振動数から、センサ部の振動数と風向との関係を示す特性データを用いて風向が計測される。
【0009】
これにより、センサ部の軸方向中央部の移動が規制された光ファイバのセンサ部の変化から風向を直接的に計測することができるので、風向を精度良く検出することができる。風を受ける受風部を備えたレバーを用いる必要がなく、受風部を備えたレバーを用いる場合のように風の状態が変化することを抑制することができ、エンジンルーム内などの限られたスペースにおいても風向を精度良く検出することができる。
【0010】
前記センサ部は、風向の計測方向に直交する方向に配置されることが好ましい。
【0011】
本構成により、風向の計測方向に直交する方向にセンサ部が配置されるので、風向の計測方向に直交する方向にセンサ部が配置されない場合に比して、風向を精度良く検出することができる。
【0012】
前記センサ部からの反射光に基づいて、前記センサ部の軸方向中央部を規制する前記中央規制部の法線方向と、前記法線方向及び前記センサ部の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測し得る。
【0013】
本構成により、センサ部からの反射光に基づいて、センサ部の軸方向中央部を規制する中央規制部の法線方向と、前記法線方向及びセンサ部の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向が計測されるので、90度の角度範囲の風向を計測することができ、風向を精度良く検出することができる。
【0014】
前記光ファイバは、平行に配置される2つの前記センサ部を有し、前記2つのセンサ部は、前記中央規制部によってそれぞれ反対側から規制されることが好ましい。
【0015】
本構成により、平行に配置される2つのセンサ部が備えられ、2つのセンサ部は、中央規制部によって反対側から規制されるので、2つのセンサ部の軸方向に直交する直交方向一方側及び他方側からの風向を直接的に計測することができ、広範囲に亘って風向を計測することができる。
【0016】
本発明はまた、光ファイバを用いた風向計測装置であって、軸方向に延びるセンサ部を有する光ファイバと、前記センサ部に入射光を出力する光源と、前記センサ部からの反射光を検出する光検出部と、前記センサ部の軸方向中央部における前記センサ部の軸方向に直交する直交方向一方側に前記センサ部の軸方向に直交する方向に延在して配置され、前記センサ部の軸方向中央部が初期位置から前記直交方向一方側へ移動することを規制する中央規制部と、前記光源によって出力された入射光に対して前記センサ部によって反射されて前記光検出部によって検出される前記センサ部からの反射光に基づいて風向を計測する風向計測手段と、を備え、前記センサ部は、計測環境下に両端部が支持された状態で配置され、前記風向計測手段は、前記中央規制部によって前記センサ部の軸方向中央部が初期位置から前記直交方向一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によって前記センサ部が振動するときに、前記光源によって出力された入射光に対して前記センサ部によって反射されて前記光検出部によって検出される前記センサ部からの反射光に基づいて、前記センサ部の振動数を算出し、算出された前記センサ部の振動数から、前記センサ部の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する、光ファイバを用いた風向計測装置を提供する。
【0017】
本発明によれば、光ファイバを用いて風向を計測する際に、中央規制部によってセンサ部の軸方向中央部が初期位置から一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部が振動するときに、センサ部の振動数から、センサ部の振動数と風向との関係を示す特性データを用いて風向が計測される。
【0018】
これにより、センサ部の軸方向中央部の移動が規制された光ファイバのセンサ部の変化から風向を直接的に計測することができるので、風向を精度良く検出することができる。風を受ける受風部を備えたレバーを用いる必要がなく、受風部を備えたレバーを用いる場合のように風の状態が変化することを抑制することができ、エンジンルーム内などの限られたスペースにおいても風向を精度良く検出することができる。
【0019】
前記センサ部は、風向の計測方向に直交する方向に配置されることが好ましい。
【0020】
本構成により、風向の計測方向に直交する方向にセンサ部が配置されるので、風向の計測方向に直交する方向にセンサ部が配置されない場合に比して、風向を精度良く検出することができる。
【0021】
前記風向計測手段は、前記センサ部からの反射光に基づいて、前記センサ部の軸方向中央部を規制する前記中央規制部の法線方向と、前記法線方向及び前記センサ部の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測し得る。
【0022】
本構成により、センサ部からの反射光に基づいて、センサ部の軸方向中央部を規制する中央規制部の法線方向と、前記法線方向及びセンサ部の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向が計測されるので、90度の角度範囲の風向を計測することができ、風向を精度良く検出することができる。
【0023】
前記光ファイバは、平行に配置される2つの前記センサ部を有し、前記2つのセンサ部は、前記中央規制部によってそれぞれ反対側から規制されることが好ましい。
【0024】
本構成により、平行に配置される2つのセンサ部が備えられ、2つのセンサ部は、中央規制部によって反対側から規制されるので、2つのセンサ部の軸方向に直交する直交方向一方側及び他方側からの風向を直接的に計測することができ、広範囲に亘って風向を計測することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、光ファイバを用いて風向を計測する際に、風向を精度良く計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の第1実施形態に係る風向計測装置の概略構成図である。
図2】光ファイバのセンサ部の断面図である。
図3】センサ部の振動を変更する振動変更機構を説明する説明図である。
図4】カルマン渦による光ファイバの振動を説明する説明図である。
図5】反射光の光強度の周波数スペクトルを示す図である。
図6】周波数シフト量とひずみ量との関係を示す特性データである。
図7】所定風向によるセンサ部の振動を説明する説明図である。
図8】所定風向によるセンサ部の振動を説明する別の説明図である。
図9】センサ部のひずみ量の時間変化を示すグラフである。
図10】センサ部の振動数と強度との関係を示す特性データである。
図11】センサ部の振動数と強度との関係を示す別の特性データである。
図12】センサ部の振動数と風向との関係を示す風向特性データである。
図13】風向計測装置の計測制御を示すフローチャートである。
図14】計測処理制御を示すフローチャートである。
図15】本発明の第2実施形態に係る風向計測装置の要部を示す図である。
図16】所定風向によるセンサ部の振動を説明する説明図である。
図17】所定風向によるセンサ部の振動を説明する別の説明図である。
図18】センサ部の振動数と風向との関係を示す風向特性データである。
図19】風向計測装置の計測制御を示すフローチャートである。
図20】計測処理制御を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1は、本発明の実施形態に係る風向計測装置の概略構成図である。図1に示す風向計測装置1は、光ファイバ10を用いた風向計測装置であり、光ファイバ10と、光ファイバ10に入射光を出力する光源2と、入射光に対する光ファイバ10のセンサ部11からの反射光を検出する光検出部としての光検出器3と、光ファイバ10のセンサ部11の振動を変更する振動変更機構20と、光源2及び光検出器3に接続された制御ユニット30とを備えている。風向計測装置1はまた、熱線式風速計などの風速計5を備えている。
【0029】
光源2は、光ファイバ10のセンサ部11に入射光として1510nm~1570nmの赤外光を順次出力するように構成されている。光検出器3は、入射光に対してセンサ部11から反射される反射光としてのレイリー散乱光を検出するように構成されている。センサ部11からの反射光は、反射光を光検出器3に導くミラー4を介して光検出器3に導入されるようになっている。
【0030】
図2は、光ファイバのセンサ部の断面図である。図2に示すように、光ファイバ10は、軸方向に延びるセンサ部11を備えている。光ファイバ10は、高い屈折率を有するコア13と、コア13の屈折率よりも低い屈折率を有してコア13を被覆するクラッド14と、クラッド14を被覆する被膜15とを備えている。光ファイバ10は、コア13に導入された光をクラッド14で全反射させて伝送できるようになっている。光ファイバ10の他の部分についてもセンサ部11と同様に形成されている。
【0031】
コア13は、円柱状に形成され、クラッド14は、円筒状に形成されてコア13の外周に配置され、被膜15は、円筒状に形成されてクラッド14の外周に配置されている。コア13とクラッド14とは、透明な誘電体である石英ガラスから形成され、被膜15は、樹脂材料から形成されている。光ファイバ10は、センサ部11に入射光が入力されるとコア13のガラス分子に応じて反射光としてのレイリー散乱光を生じ、反射光の光強度を検出することでセンサ部11のひずみを算出できるようになっている。
【0032】
光ファイバ10は、風の状態を計測する計測環境下に配置されるセンサ部11と、センサ部11の両端部に形成された被支持部12とを有している。センサ部11は、風向の計測方向に直交する方向に延びるように配置される。例えば、エンジンルーム内において車体前側から車体後側に流れる風向を計測する場合、センサ部11は、車体前後方向に直交する方向である車幅方向に延びるように配置される。
【0033】
図3は、センサ部の振動を変更する振動変更機構を説明する説明図である。図3に示すように、センサ部11の両端部に設けられた被支持部12は、支持ユニット6に支持されている。支持ユニット6は、図示しない基部に離間して固定して配置された第1支持部7及び第2支持部8を有し、センサ部11の一方の被支持部12が第1支持部7に固定して支持され、センサ部11の他方の被支持部12が第2支持部8に支持されている。センサ部11の他方の被支持部12は光源2及び光検出器3などに接続されている。
【0034】
センサ部11の振動を変更する振動変更機構20は、センサ部11が直線状に延びる初期位置からセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側へセンサ部11の軸方向中央部16が移動することを規制する中央規制部21によって構成されている。
【0035】
中央規制部21は、断面略四角形状に形成された棒状部材によって形成され、支持ユニット6の前記基部に固定して取り付けられている。中央規制部21は、センサ部11の軸方向中央部16におけるセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側である上側に当接して配置されてセンサ部11の軸方向に直交する方向に延在している。中央規制部21は、センサ部11の両端部からセンサ部11の長さD1の半分の長さ(D1/2)の位置におけるセンサ部11の移動を規制する。
【0036】
図4は、カルマン渦による光ファイバの振動を説明する説明図である。図4では、光ファイバ10を円形断面で示している。光ファイバ10のセンサ部11に中央規制部21が設けられていない場合、図4に示すように、風の流れ方向(白矢印で示す方向)に直交する方向に延びるように配置された光ファイバ10に風が作用する場合、光ファイバ10の後方に交互に配列された非対称の渦であるカルマン渦17が発生する。光ファイバ10は、カルマン渦17によって風の流れ方向及び光ファイバ10の軸方向にそれぞれ直交する方向である上下方向(黒矢印で示す方向)に周期的に振動する。
【0037】
図5は、反射光の光強度の周波数スペクトルを示す図である。図5では、横軸に周波数をとり、縦軸に光ファイバ10のセンサ部11によって反射される反射光の光強度をとって表している。光ファイバ10のセンサ部11に中央規制部21が設けられていない場合、図5の実線で示すように、無風環境下に配置されたセンサ部11に出力された入射光に対してセンサ部11によって反射される反射光の光強度の時間変化をフーリエ変換した光強度の周波数スペクトル(基本周波数特性データ)は、センサ部11のガラス分子の状態に応じて複数のピークを有している。
【0038】
一方、センサ部11が有風環境下に配置されると、センサ部11に風が作用してセンサ部11がカルマン渦17によって振動してセンサ部11にひずみが発生する。センサ部11にひずみが発生すると、センサ部11によって反射される反射光の光強度の周波数スペクトルは、図5の二点鎖線で示すように、複数のピークがそれぞれ周波数方向に移動してずれる。
【0039】
センサ部11が有風環境下に配置されて振動する場合、反射光の光強度の周波数スペクトルでは、所定周波数f1におけるピークP1が、風に応じて所定周波数f1におけるピークP1から所定周波数f2におけるピークP2との間で変動する。所定周波数f1におけるピークP1の周波数のずれ量である周波数シフト量X1は、センサ部11のひずみ量に対応する。
【0040】
図6は、周波数シフト量とひずみ量との関係を示す特性データである。図6では、横軸に反射光の光強度の周波数スペクトルにおける所定周波数f1におけるピークの周波数シフト量X1をとり、縦軸にセンサ部11のひずみ量をとって表している。センサ部11は、図6に示す周波数シフト量とひずみ量との関係を示す特性データ(ひずみ特性データ)に従って、周波数シフト量が大きくなると、ひずみ量が略比例して大きくなる。図6では、周波数シフト量とひずみ量とがゼロ以上である場合を示しているが、ゼロより小さい場合についても同様に、周波数シフト量が大きくなると、ひずみ量が略比例して大きくなる。
【0041】
図6に示す周波数シフト量とひずみ量との関係を示す特性データは、無風環境下に配置されたセンサ部11に所定ひずみ量を生じさせた状態で、入射光に対してセンサ部11から反射される反射光を検出し、反射光の光強度の時間変化をフーリエ変換した光強度の周波数スペクトルを、無風環境下に配置されてひずみ量がゼロであるときの光強度の周波数スペクトルと比較して周波数シフト量を算出することで、予め取得される。
【0042】
周波数シフト量とひずみ量との関係を示す特性データを用いることで、反射光の光強度の周波数スペクトルにおける所定周波数f1に対するピークP1の周波数シフト量X1から、センサ部11のひずみ量が算出される。これにより、センサ部11が有風環境下に配置されて振動する場合に、センサ部11のひずみ量の時間変化が算出される。
【0043】
本実施形態では、中央規制部21によって、センサ部11の軸方向中央部16が初期位置からセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側へ移動することを規制することで、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部11が振動するときに、センサ部11の振動数を算出し、センサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。
【0044】
図7は、所定風向によるセンサ部の振動を説明する説明図である。図7に示すように、センサ部11に中央規制部21が設けられる場合、センサ部11の軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の延在方向一方側である前側(白矢印A1で示す方向)からセンサ部11に風が作用すると、センサ部11の軸方向中央部16は、センサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側である上側への移動が規制されるので、カルマン渦17によって、初期位置(実線で示す位置)と、センサ部11の軸方向に直交する直交方向他方側である下側(二点鎖線で示す位置)との間において周期的に振動する。
【0045】
センサ部11の軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の法線方向である下側(矢印A2で示す方向)からセンサ部11に風が作用する場合、及びセンサ部11の軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の延在方向一方側から中央規制部21の法線方向に向けて-45度の前下側から(矢印A3で示す方向)からセンサ部11に風が作用する場合についてもそれぞれ、センサ部11の軸方向中央部16は、センサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側である上側への移動が規制された状態で、カルマン渦17に応じて振動する。
【0046】
図8は、所定風向によるセンサ部の振動を説明する別の説明図である。図8(a)は、図7において白矢印A1で示す方向である風向がゼロ度である場合についてセンサ部11の振動を示し、図8(b)は、図7において矢印A2で示す方向である風向が-90度である場合についてセンサ部11の振動を示している。センサ部11に作用する風向は、センサ部11の軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の延在方向一方側である前側をゼロ度とし、センサ部11の軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の法線方向である下側を-90度とする。
【0047】
図8(a)に示すように、センサ部11に風向がゼロ度である風が作用する場合、センサ部11は、風向に応じたカルマン渦によって振動し、軸方向中央部16がセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側である上側への移動が規制され、センサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側である上側及び下側に周期的に振動する。
【0048】
図8(b)に示すように、センサ部11に風向が-90度である風が作用する場合、センサ部11は、風向に応じたカルマン渦によって振動し、軸方向中央部16がセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側である上側への移動が規制され、センサ部11の軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の延在方向一方側及び他方側に周期的に振動する。
【0049】
センサ部11に風向が-45度である風が作用する場合についても、センサ部11は、風向に応じたカルマン渦によって振動し、軸方向中央部16がセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側である上側への移動が規制された状態で振動する。
【0050】
このように、センサ部11に風が作用するとき、中央規制部21によってセンサ部11の軸方向中央部16がセンサ部11の軸方向に直交する方向一方側に移動することを規制することで、カルマン渦によって振動するセンサ部11の振動を変更させることができる。
【0051】
本実施形態では、中央規制部21によってセンサ部11の軸方向中央部16が初期位置からセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部11が振動するときに、光源2によって出力された入射光に対してセンサ部11によって反射されて光検出部3によって検出されるセンサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の振動数を算出し、算出されたセンサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。
【0052】
図9は、センサ部のひずみ量の時間変化を示すグラフである。図9では、横軸に時間をとり、縦軸にセンサ部11のひずみ量をとって表示している。図9では、所定風速、具体的には2.3m/sの風速において風向がゼロ度である風がセンサ部11に作用する場合について、例えば0.1秒ごとにセンサ部11のひずみ量を算出し、センサ部11のひずみ量の時間変化を示している。
【0053】
本実施形態に係る風向計測装置1では、計測環境下で風向を計測する前に、センサ部11について、基本周波数特性データ及びひずみ特性データを取得するとともに、センサ部11の振動数と風向との関係を示す風向特性データを取得する。
【0054】
センサ部11の振動数と風向との関係を示す風向特性データを取得するため、所定風速及び所定風向を有する風を発生させる風発生装置を用いて、センサ部11に風を作用させた場合について、センサ部11からの反射光に基づいて周波数と反射光の光強度との関係を示す風ひずみ周波数特性データ(風ひずみ周波数スペクトル)を算出する。
【0055】
そして、風ひずみ周波数特性データを、基本周波数特性データと比較して光強度ピークの周波数シフト量を算出し、周波数シフト量とひずみ量との関係を示すひずみ特性データを用い、センサ部11のひずみ量を算出する。図9に示すように、例えば0.1秒ごとにセンサ部11のひずみ量を算出し、センサ部11のひずみ量の時間変化を算出する。
【0056】
図10は、振動数と強度との関係を示す特性データである。図10では、横軸にセンサ部11の振動数をとり、縦軸に強度をとって表示している。図10では、2.3m/sの風速において風向がゼロ度である風がセンサ部11に作用する場合について示している。
【0057】
図9に示すようにセンサ部11のひずみ量の時間変化が算出されると、図10に示すように、センサ部11のひずみ量の時間変化を示すひずみ量波形をフーリエ変換してセンサ部11の振動数と強度との関係を示す特性データ(振動数スペクトル)を算出する。そして、図10において矢印で示すように、センサ部11の振動数として振動数スペクトルにおける四次成分のピークの振動数f11を算出する。
【0058】
図11は、センサ部の振動数と強度との関係を示す別の特性データである。図11では、横軸にセンサ部11の振動数をとり、縦軸に強度をとって表示している。図11では、2.3m/sの風速において風向が-90度である風がセンサ部11に作用する場合について示している。
【0059】
センサ部11に風向が-90度である風を作用させた場合についても、風向がゼロ度である風を作用させた場合と同様に、風ひずみ周波数特性データ(風ひずみ周波数スペクトル)を算出し、風ひずみ周波数特性データを、基本周波数特性データと比較して光強度ピークの周波数シフト量を算出し、周波数シフト量とひずみ量との関係を示すひずみ特性データを用い、センサ部11のひずみ量の時間変化を算出する。
【0060】
センサ部11のひずみ量の時間変化が算出されると、センサ部11の振動数と強度との関係を示す特性データ(振動数スペクトル)を算出し、図11において矢印で示すように、センサ部11の振動数として振動数スペクトルにおける四次成分のピークの振動数f13を算出する。
【0061】
また、センサ部11に風向が-45度である風を作用させた場合についても、風向がゼロ度である風を作用させた場合と同様にして、センサ部11の振動数と強度との関係を示す特性データ(振動数スペクトル)を算出し、センサ部11の振動数として振動数スペクトルにおける四次成分のピークの振動数f12を算出する。
【0062】
所定風速について風向ゼロ度、-45度、-90度についてそれぞれセンサ部11の振動数として振動数スペクトルにおけるピークの振動数を算出すると、所定風速についてセンサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す風向特性データを算出する。
【0063】
図12は、センサ部の振動数と風向との関係を示す風向特性データである。図12では、横軸に風向をとり、縦軸にセンサ部の振動数をとって表示している。図12では、2.3m/sの風速について風向ゼロ度、-45度、-90度についてそれぞれセンサ部11の振動数として振動数スペクトルにおける四次成分のピークの振動数を示し、風向がゼロ度、-45度、-90度である場合についてそれぞれf11、f12、f13として示している。本実施形態では、センサ部11の振動数f11、f12、f13として、これに限定されるものではないが、2.3m/sの風向である場合には229.8Hz,214.8Hz,224.7Hzとして算出された。
【0064】
そして、センサ部11の振動数と風向との関係を示す風向特性データとして線形関数の関係式である風向特性データL10を算出する。風向特性データL10として、風向がゼロ度から-45度までは、風向がゼロ度であるときの振動数f11と風向が-45度であるときの振動数f12とを結ぶ線形関数の風向特性データL11を算出し、風向が-45度から-90度までは、風向が-45度であるときの振動数f12と風向が-90度であるときの振動数f13とを結ぶ線形関数の風向特性データL12を算出する。
【0065】
本実施形態では、他の風速についても同様にして、センサ部11の振動数と風向との関係を示す風向特性データとして線形関数の関係式である風向特性データL10を算出する。例えば1.0m/s~10m/sまでの風速範囲において、0.1m/s間隔ごとに、センサ部11の振動数と風向との関係を示す風向特性データを算出する。
【0066】
所定風速及び所定風向における風向特性データが算出されると、計測環境下に光ファイバ10のセンサ部11が風向の計測方向に直交する方向に配置され、中央規制部21によってセンサ部11の軸方向中央部16が初期位置からセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部11が振動するときに、センサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の振動数を算出し、算出されたセンサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。風速を計測する計測制御は、制御ユニット30によって実行される。
【0067】
風向計測装置1では、光源2によって出力された入射光に対してセンサ部11によって反射されて光検出器3によって検出されるセンサ部11からの反射光に基づいて風向を計測する風向計測は、制御ユニット30によって行われる。
【0068】
制御ユニット30は、演算部において、光源2などの作動を制御すると共に、光源2によって出力された入射光に対してセンサ部11によって反射されて光検出器3によって検出されるセンサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の振動数を算出し、算出されたセンサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測するようになっている。
【0069】
制御ユニット30には、ディスプレイなどの表示装置が設けられ、表示装置に風向を出力するようになっている。制御ユニット30にはまた、図示しない計測スイッチが設けられ、制御ユニット30は、計測スイッチがON状態で計測を行い、OFF状態で計測を終了するようになっている。制御ユニット30には、記憶部に、光ファイバ10の基本周波数特性データ、ひずみ特性データ及び風向特性データが記憶されると共に計測制御プログラムなどが記憶されている。なお、制御ユニット30は、コンピュータを主要部として構成されている。
【0070】
図13は、風向計測装置の計測制御を示すフローチャートである。風向を計測する際には、中央規制部21によってセンサ部11の軸方向中央部16が規制された状態で、計測環境下に光ファイバ10のセンサ部11が風向の計測方向に直交する方向に配置される。風向を計測する計測制御は、制御ユニット30によって実行される。
【0071】
図13に示すように、制御ユニット30では、計測スイッチがON状態とされて計測制御を行う際に先ず、基本周波数特性データが取得され(ステップS1)、ひずみ特性データが取得され(ステップS2)、風向特性データが取得され(ステップS3)、そして計測処理制御が行われる(ステップS4)。
【0072】
図14は、計測処理制御を示すフローチャートである。図14に示すように、計測処理制御では、計測環境下において、例えば中央規制部21上に配置された熱線式風速計などの風速計5を用いて風速が計測され(ステップS11)、計測環境下において計測周波数特性データが算出される(ステップS12)。計測周波数特性データとして、計測環境下に配置されたセンサ部11に入射光を出力し、センサ部11によって反射される反射光の光強度の時間変化をフーリエ変換した光強度の周波数スペクトルが算出される。
【0073】
次に、ステップS12において算出された計測周波数特性データが、ステップS1において取得された基本周波数特性データと比較されて光強度ピークの周波数シフト量が算出される(ステップS13)。計測環境下の反射光の光強度の周波数スペクトルが、無風環境下の反射光の光強度の周波数スペクトルと比較され、反射光の光強度の所定周波数におけるピークの周波数のずれ量である光強度ピークの周波数シフト量の時間変化が算出される。
【0074】
反射光の光強度ピークの周波数シフト量の時間変化から、ステップS2において取得された周波数シフト量とひずみ量との関係を示すひずみ特性データを用いて、センサ部11のひずみ量の時間変化が算出され、算出されたセンサ部11のひずみ量の時間変化であるひずみ量波形をフーリエ変換してセンサ部11の振動数と強度との関係を示す特性データ(振動数スペクトル)が算出され(ステップS14)、センサ部11の振動数として振動数スペクトルにおける四次成分のピークの振動数faが算出される(ステップS15)。
【0075】
ステップS15においてセンサ部の振動数として振動数faが算出されると、所定風速におけるセンサ部11の振動数計測範囲であるか否かが判定される(ステップS16)。図12に示すように、所定風速におけるセンサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データにおいて、センサ部11の振動数の最大値である最大振動数f11とセンサ部11の振動数の最小値である最小振動数f13との間である振動数計測範囲であるか否かが判定される。
【0076】
ステップS16での判定結果がイエス(YES)の場合、ステップS15において算出されたセンサ部11の振動数faから、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向が算出される(ステップS17)。図12に示すように、センサ部11の振動数faから、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向がθaとして算出される。ステップS17において風向が算出されると、表示装置に風向を出力する(ステップS18)。
【0077】
一方、ステップS16での判定結果がノーの場合、表示装置に風向を計測不能として出力する(ステップS20)。ステップS18又はステップS20において風向を出力すると、風向の計測処理を終了するか否かが判定される(ステップS19)。ステップ19では計測スイッチがOFF状態であるか否かが判定される。ステップS19での判定結果がノーの場合、ステップS11に戻って再び風向が算出され、ステップS19での判定結果がイエスの場合、風向の計測を終了する。
【0078】
このように、風向計測装置1では、計測環境下にセンサ部11の軸方向中央部16が中央規制部21によって初期位置からセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側へ移動することが規制された状態でセンサ部11を配置し、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部11が振動するときに、光源2によって出力された入射光に対してセンサ部11によって反射されて光検出部3によって検出されるセンサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の振動数を算出し、算出されたセンサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。
【0079】
本実施形態では、センサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の軸方向中央部16を規制する中央規制部21の法線方向と、前記法線方向及びセンサ部11の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測する。
【0080】
風向計測装置1は、例えば、図7に示すように、中央規制部21の延在方向が車体前側から車体後側に向かう方向であるとともにセンサ部11の軸方向が車幅方向であり、且つ中央規制部21がセンサ部11の車体上側に当接するように配置される。この場合、風向計測装置1は、センサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の軸方向中央部16を規制する中央規制部21の法線方向である車体下側の方向と、前記法線方向及びセンサ部11の軸方向に直交する方向である車体前側の方向との間の角度範囲の風向を計測する。
【0081】
本実施形態では、センサ部11の振動数として振動数スペクトルにおける四次成分のピークの振動数を算出しているが、他の成分のピークの振動数を算出するようにすることも可能である。本実施形態では、風向特性データを算出するため、風向ゼロ度、-45度、-90度についてそれぞれセンサ部11の振動数を算出しているが、他の風向についてセンサ部11の振動数を算出するようにしてもよい。
【0082】
このように、本実施形態では、光ファイバ10を用いて風向を計測する際に、中央規制部21によってセンサ部11の軸方向中央部16が初期位置から一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦17によってセンサ部11が振動するときに、センサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データを用いて風向が計測される。
【0083】
これにより、センサ部11の軸方向中央部16の移動が規制された光ファイバ10のセンサ部11の変化から風向を直接的に計測することができるので、風向を精度良く検出することができる。風を受ける受風部を備えたレバーを用いる必要がなく、受風部を備えたレバーを用いる場合のように風の状態が変化することを抑制することができ、エンジンルーム内などの限られたスペースにおいても風向を精度良く検出することができる。
【0084】
また、センサ部11は、風向の計測方向に直交する方向に配置される。これにより、風向の計測方向に直交する方向にセンサ部が配置されない場合に比して、風向を精度良く検出することができる。
【0085】
また、センサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の軸方向中央部16を規制する中央規制部21の法線方向と、前記法線方向及びセンサ部11の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測する。これにより、90度の角度範囲の風向を計測することができ、風向を精度良く検出することができる。
【0086】
図15は、本発明の第2実施形態に係る風向計測装置の要部を示す図である。第2実施形態に係る風向計測装置31は、第1実施形態に係る風向計測装置1において、光ファイバ10が平行に配置される2つのセンサ部を有するものであり、風向計測装置1と同様の構成については説明を省略する。
【0087】
風向計測装置31は、風向計測装置1と同様に、光ファイバ10と、光源2と、光検出器3と、光ファイバ10のセンサ部11の振動を変更する振動変更機構20と、光源2及び光検出器3に接続された制御ユニット30と、熱線式風速計などの風速計5とを備えている。
【0088】
図15に示すように、風向計測装置31では、光ファイバ10のセンサ部11は、平行に配置される2つのセンサ部11a、11bである第1センサ部11a及び第2センサ部11bを有している。光源2は、第1センサ部11a及び第2センサ部11bに入射光を出力し、光検出器3は、第1センサ部11a及び第2センサ部11bからの反射光を検出するようになっている。
【0089】
第1センサ部11a及び第2センサ部11bはそれぞれ、風向の計測方向に直交する方向に延びるように配置される。例えば、エンジンルーム内において車体前側から車体後側に流れる風向を計測する場合、第1センサ部11a及び第2センサ部11bは、車体前後方向に直交する方向である車幅方向に延びるように配置される。
【0090】
第1センサ部11a及び第2センサ部11bは、同一長さを有し、第1センサ部11a及び第2センサ部11bの一方の被支持部12がそれぞれ第1支持部7に固定して支持され、第1センサ部11a及び第2センサ部11bの他方の被支持部12がそれぞれ第2支持部8に支持されている。第1センサ部11a及び第2センサ部11bの他方の被支持部12はそれぞれ光源2及び光検出器3などに接続されている。
【0091】
振動変更機構20は、第1センサ部11a及び第2センサ部11bがそれぞれ直線状に延びる初期位置から第1センサ部11a及び第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向一方側へそれぞれ第1センサ部11a及び第2センサ部11bの軸方向中央部16が移動することを規制する中央規制部21によって構成されている。
【0092】
中央規制部21は、第1センサ部11a及び第2センサ部11bがそれぞれ直線状に延びる初期位置から第1センサ部11a及び第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向一方側へ第1センサ部11a及び第2センサ部11bの軸方向中央部16a、16bが移動することを規制する中央規制部21a,21bを有している。
【0093】
中央規制部21a,21bはそれぞれ、断面略四角形状に形成された棒状部材によって形成され、支持ユニット6の前記基部に固定して取り付けられている。中央規制部21a、21bはそれぞれ、第1センサ部11a及び第2センサ部11bの両端部から第1センサ部11a及び第2センサ部11bの長さの半分の長さの位置における第1センサ部11a及び第2センサ部11bの移動を規制する。
【0094】
中央規制部21aは、風向計測装置1の中央規制部21と同様に、第1センサ部11aの軸方向中央部16aにおける第1センサ部11aの軸方向に直交する直交方向一方側である上側に当接して配置されて第1センサ部11aの軸方向に直交する方向に延在している。一方、中央規制部21bは、第2センサ部11bの軸方向中央部16bにおける第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向一方側である下側に当接して配置されて第2センサ部11bの軸方向に直交する方向に延在している。
【0095】
中央規制部21aは、第1センサ部11aが初期位置から第1センサ部11aの軸方向に直交する直交方向一方側である上側へ第1センサ部11aの軸方向中央部16aが移動することを規制し、中央規制部21bは、第2センサ部11bが初期位置から第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向一方側である下側へ第2センサ部11bの軸方向中央部16bが移動することを規制する。第1センサ部11a及び第2センサ部11bは、中央規制部21a、21bによってそれぞれ反対側から規制されている。
【0096】
本実施形態では、中央規制部21によって、第1センサ部11a及び第2センサ部11bの軸方向中央部16が初期位置から第1センサ部11a及び第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向一方側へ移動することを規制した状態で、風向に応じたカルマン渦によって第1センサ部11a及び第2センサ部11bが振動するときに、第1センサ部11a及び第2センサ部11bの振動数を算出し、第1センサ部11a及び第2センサ部11bの振動数から、第1センサ部11a及び第2センサ部11bの振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。
【0097】
図16は、所定風向によるセンサ部の振動を説明する説明図である。図16に示すように、第1センサ部11aに中央規制部21aが設けられる場合、風向計測装置1のセンサ部11と同様に、第1センサ部11aの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21aの延在方向一方側である前側(白矢印A1で示す方向)から第1センサ部11aに風が作用すると、第1センサ部11aの軸方向中央部16は、第1センサ部11aの軸方向に直交する直交方向一方側である上側への移動が規制されるので、カルマン渦17によって、初期位置(実線で示す位置)と、第1センサ部11aの軸方向に直交する直交方向他方側である下側(二点鎖線で示す位置)との間において周期的に振動する。
【0098】
第1センサ部11aの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の法線方向である下側(矢印A2で示す方向)から第1センサ部11aに風が作用する場合、及び第1センサ部11aの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の延在方向一方側から中央規制部21の法線方向に向けて-45度の前下側から(矢印A3で示す方向)から第1センサ部11aに風が作用する場合についてもそれぞれ、第1センサ部11aの軸方向中央部16aは、第1センサ部11aの軸方向に直交する直交方向一方側である上側への移動が規制された状態で、カルマン渦17に応じて振動する。
【0099】
第2センサ部11bに中央規制部21bが設けられる場合、第1センサ部11aに中央規制部21aが設けられる場合とは反対側に、第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21aの延在方向一方側である前側(白矢印A1で示す方向)から第2センサ部11bに風が作用すると、第2センサ部11bの軸方向中央部16bは、第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向一方側である下側への移動が規制されるので、カルマン渦17によって、初期位置(実線で示す位置)と、第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向他方側である上側(二点鎖線で示す位置)との間において周期的に振動する。
【0100】
第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21bの法線方向である上側(矢印A4で示す方向)から第2センサ部11bに風が作用する場合、及び第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21bの延在方向一方側から中央規制部21の法線方向に向けて45度の前上側から(矢印A5で示す方向)から第2センサ部11bに風が作用する場合についてもそれぞれ、第2センサ部11bの軸方向中央部16bは、第2センサ部11bの軸方向に直交する直交方向一方側である下側への移動が規制された状態で、カルマン渦17に応じて振動する。
【0101】
図17は、所定風向によるセンサ部の振動を説明する別の説明図である。図17は、図16において白矢印A1で示す方向である風向がゼロ度である場合についてセンサ部11a、11bの振動を示している。センサ部11a、11bに作用する風向は、センサ部11a、11bの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21の延在方向一方側である前側をゼロ度とし、センサ部11aの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21aの法線方向である下側を-90度とし、センサ部11bの軸方向に直交する直交方向且つ中央規制部21bの法線方向である上側を90度とする。
【0102】
図17に示すように、センサ部11aに風向がゼロ度である風が作用する場合、センサ部11aは、風向に応じたカルマン渦によって振動し、軸方向中央部16aが上側への移動が規制された状態で振動する。センサ部11bに風向がゼロ度である風が作用する場合、センサ部11bは、風向に応じたカルマン渦によって振動し、軸方向中央部16bが下側への移動が規制された状態で振動する。
【0103】
センサ部11aに風向が-90度である風が作用する場合、及びセンサ部11aに風向が-45度である風が作用する場合についても、風向計測装置1のセンサ部11と同様に、センサ部11aは、軸方向中央部16がセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側である上側への移動が規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によって振動する。
【0104】
センサ部11bに風向が90度である風が作用する場合、及びセンサ部11bに風向が45度である風が作用する場合は、センサ部11aに風向が-90度である風が作用する場合、及びセンサ部11aに風向が-45度である風が作用する場合と上下方向に反対側であることを除き、センサ部11aと略同様に、センサ部11bは、軸方向中央部16bが下側への移動が規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によって振動する。
【0105】
このように、センサ部11a、11bに風が作用するとき、中央規制部21a、21bによってセンサ部11a、11bの軸方向中央部16a、16bがセンサ部11a、11bの移動を規制することでカルマン渦によって振動するセンサ部11の振動を変更させることができる。
【0106】
本実施形態においても、中央規制部21a、21bによってセンサ部11a、11bの軸方向中央部16a、16bが初期位置からセンサ部11a、11bの軸方向に直交する直交方向一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦17によってセンサ部11a、11bが振動するときに、センサ部11a、11bからの反射光に基づいて、センサ部11a、11bの振動数を算出し、算出されたセンサ部11a、11bの振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。
【0107】
風向計測装置31についても、風向計測装置1と同様に、計測環境下で風向を計測する前に、センサ部11a、11bについてそれぞれ、基本周波数特性データ及びひずみ特性データを取得するとともに、センサ部11の振動数と風向との関係を示す風向特性データを取得する。
【0108】
センサ部11aにおける風向特性データは、風向計測装置1のセンサ部11と同様に、所定風速について風向ゼロ度、-45度、-90度についてそれぞれセンサ部11の振動数として振動数スペクトルにおけるピークの振動数を算出すると、所定風速についてセンサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す風向特性データを算出する。
【0109】
センサ部11aについて、図12に示すように、例えば2.3m/sの風速では、風向がゼロ度、-45度、-90度である場合についてそれぞれセンサ部11の振動数として振動数スペクトルにおけるピークの振動数f11、f12、f13が229.8Hz,214.8Hz,224.7Hzとして算出される。
【0110】
そして、センサ部11aについて風向特性データL10として、風向がゼロ度から-45度までは、風向がゼロ度であるときの振動数f11と風向が-45度であるときの振動数f12とを結ぶ線形関数の風向特性データL11を算出し、風向が-45度から-90度までは、風向が-45度であるときの振動数f12と風向が-90度であるときの振動数f13とを結ぶ線形関数の風向特性データL12を算出する。
【0111】
図18は、センサ部の振動数と風向との関係を示す風向特性データである。図18では、横軸に風向をとり、縦軸にセンサ部の振動数をとって表示し、センサ部11bの風向特性データを示している。図18では、2.3m/sの風速について風向ゼロ度、45度、90度についてそれぞれセンサ部11bの振動数として振動数スペクトルにおける四次成分のピークの振動数を示し、風向がゼロ度、45度、90度である場合についてそれぞれf21、f22、f23として示している。本実施形態では、センサ部11bの振動数f21、f22、f23として、これに限定されるものではないが、2.3m/sの風向である場合には229.8Hz,214.8Hz,224.7Hzとして算出された。
【0112】
そして、センサ部11bの振動数と風向との関係を示す風向特性データとして線形関数の関係式である風向特性データL20を算出する。風向特性データL20として、風向がゼロ度から45度までは、風向がゼロ度であるときの振動数f21と風向が45度であるときの振動数f22とを結ぶ線形関数の風向特性データL21を算出し、風向が45度から90度までは、風向が45度であるときの振動数f22と風向が90度であるときの振動数f23とを結ぶ線形関数の風向特性データL22を算出する。
【0113】
他の風速についても同様にして、センサ部11a、センサ部11bについてそれぞれ、センサ部11a、11bの振動数と風向との関係をそれぞれ示す風向特性データとして線形関数の関係式である風向特性データL10、L20を算出する。センサ部11aは、風向ゼロ度を超えて風向90度までの風向を有する風が作用する場合、センサ部11aの振動数がセンサ部11a、11bの振動数計測範囲より非常に小さくなり、センサ部11bは、風向ゼロ度より小さく風向-90度までの風向を有する風が作用する場合、センサ部11bの振動数がセンサ部11a、11bの振動数計測範囲より非常に小さくなる。
【0114】
本実施形態についても、所定風速及び所定風向における風向特性データが算出されると、計測環境下に光ファイバ10のセンサ部11が風向の計測方向に直交する方向に配置され、中央規制部21によってセンサ部11の軸方向中央部が初期位置からセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部11が振動するときに、センサ部11からの反射光に基づいて、センサ部の振動数を算出し、算出されたセンサ部の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。風速を計測する計測制御は、制御ユニット30によって実行される。
【0115】
本実施形態についても、制御ユニット30は、計測スイッチがON状態で計測を行い、OFF状態で計測を終了するようになっている。制御ユニット30には、記憶部に、光ファイバ10の基本周波数特性データ、ひずみ特性データ及び風向特性データが記憶されると共に計測制御プログラムなどが記憶されている。
【0116】
図19は、風向計測装置の計測制御を示すフローチャートである。風向を計測する際には、平行に配置された2つのセンサ部11a、11bの軸方向中央部16が中央規制部21a、21bによってそれぞれ規制された状態で、計測環境下に光ファイバ10のセンサ部11a、11bが風向の計測方向に直交する方向に配置される。
【0117】
図19に示すように、制御ユニット30では、計測スイッチがON状態とされて計測制御を行う際に先ず、第1センサ部11a及び第2センサ部11bについてそれぞれ、基本周波数特性データが取得され(ステップS21)、ひずみ特性データが取得され(ステップS22)、風向特性データが取得され(ステップS23)、そして計測処理制御が行われる(ステップS24)。
【0118】
図20は、計測処理制御を示すフローチャートである。図15に示すように、計測処理制御では、計測環境下において、例えば中央規制部21a上に配置された熱線式風速計などの風速計5を用いて風速が計測され(ステップS31)、第1センサ部11a及び第2センサ部11bについてそれぞれ、計測環境下において計測周波数特性データが算出される(ステップS32)。計測周波数特性データとして、計測環境下に配置されたセンサ部11a、11bにそれぞれ入射光を出力し、センサ部11a、11bによってそれぞれ反射される反射光の光強度の時間変化をフーリエ変換した光強度の周波数スペクトルが算出される。
【0119】
次に、第1センサ部11a及び第2センサ部11bについてそれぞれ、ステップS32において算出された計測周波数特性データが、ステップS21において取得された基本周波数特性データと比較されて光強度ピークの周波数シフト量が算出される(ステップS33)。計測環境下の反射光の光強度の周波数スペクトルが、無風環境下の反射光の光強度の周波数スペクトルと比較され、反射光の光強度の所定周波数におけるピークの周波数のずれ量である光強度ピークの周波数シフト量の時間変化が算出される。
【0120】
反射光の光強度ピークの周波数シフト量の時間変化から、ステップS22において取得された周波数シフト量とひずみ量との関係を示すひずみ特性データを用いて、センサ部11a、11bのひずみ量の時間変化が算出され、算出されたセンサ部11a、11bのひずみ量の時間変化であるひずみ量波形をそれぞれフーリエ変換してセンサ部11a、11bの振動数と強度との関係を示す特性データ(振動数スペクトル)が算出され(ステップS34)、センサ部11a、11bの振動数として振動数スペクトルにおける四次成分のピークの振動数fbが算出される(ステップS35)。
【0121】
ステップS35においてセンサ部11a、11bの振動数として振動数が算出されると、所定風速における第1センサ部11aの振動数計測範囲であるか否かが判定される(ステップS36)。図12に示すように、所定風速におけるセンサ部11aの振動数と風向との関係を示す特性データL10において、センサ部11aの振動数の最大値である最大振動数f11とセンサ部11aの振動数の最小値である最小振動数f13との間である振動数計測範囲(最小振動数f13以上最大振動数f11以下)であるか否かが判定される。
【0122】
ステップS36での判定結果がイエスの場合、ステップS35において算出された第1センサ部11aの振動数faから、センサ部11aの振動数と風向との関係を示す特性データL10に基づいて風向が算出される(ステップS37)。図12に示すように、センサ部11aの振動数faから、センサ部11aの振動数と風向との関係を示す特性データL10に基づいて風向がθaとして算出される。ステップS37において風向が算出されると、表示装置に風向を出力する(ステップS38)。
【0123】
一方、ステップS36での判定結果がノーの場合、所定風速における第2センサ部11bの振動数計測範囲であるか否かが判定される(ステップS40)。図18に示すように、所定風速におけるセンサ部11bの振動数と風向との関係を示す特性データL20において、センサ部11bの振動数の最大値である最大振動数f21とセンサ部11bの振動数の最小値である最小振動数f23との間である振動数計測範囲(最小振動数f23以上最大振動数f21未満)であるか否かが判定される。
【0124】
ステップS40での判定結果がイエスの場合、ステップS35において算出された第2センサ部11bの振動数fbから、センサ部11bの振動数と風向との関係を示す特性データL20に基づいて風向が算出される(ステップS41)。図18に示すように、センサ部11bの振動数fbから、センサ部11bの振動数と風向との関係を示す特性データL20に基づいて風向がθbとして算出される。ステップS41において風向が算出されると、表示装置に風向を出力する(ステップS42)。
【0125】
一方、ステップS40での判定結果がノーの場合、表示装置に風向を計測不能として出力する(ステップS43)。ステップS38、ステップS42又はステップS43において風向を出力すると、風向の計測処理を終了するか否かが判定される(ステップS39)。ステップ39では計測スイッチがOFF状態であるか否かが判定される。ステップS39での判定結果がノーの場合、ステップS31に戻って再び風向が算出され、ステップS39での判定結果がイエスの場合、風向の計測を終了する。
【0126】
風向計測装置31においても、計測環境下にセンサ部11の軸方向中央部16が中央規制部21によって初期位置からセンサ部11の軸方向に直交する直交方向一方側へ移動することが規制された状態でセンサ部11を配置し、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部11が振動するときに、光源2によって出力された入射光に対してセンサ部11によって反射されて光検出部3によって検出されるセンサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の振動数を算出し、算出されたセンサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データに基づいて風向を計測する。
【0127】
本実施形態では、第1センサ部11aからの反射光に基づいて、第1センサ部11aの軸方向中央部16aを規制する中央規制部21aの法線方向と、前記法線方向及びセンサ部11aの軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測し、第2センサ部11bからの反射光に基づいて、第2センサ部11bの軸方向中央部16bを規制する中央規制部21bの法線方向と、前記法線方向及び第2センサ部11bの軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測する。
【0128】
このように、本実施形態においても、光ファイバ10を用いて風向を計測する際に、中央規制部21によってセンサ部11の軸方向中央部16が初期位置から一方側へ移動することが規制された状態で、風向に応じたカルマン渦によってセンサ部11が振動するときに、センサ部11の振動数から、センサ部11の振動数と風向との関係を示す特性データを用いて風向が計測される。これにより、センサ部11の軸方向中央部16の移動が規制された光ファイバ10のセンサ部11の変化から風向を直接的に計測することができるので、風向を精度良く検出することができる。風を受ける受風部を備えたレバーを用いる必要がなく、受風部を備えたレバーを用いる場合のように風の状態が変化することを抑制することができ、エンジンルーム内などの限られたスペースにおいても風向を精度良く検出することができる。
【0129】
また、センサ部11は、風向の計測方向に直交する方向に配置される。これにより、風向の計測方向に直交する方向にセンサ部が配置されない場合に比して、風向を精度良く検出することができる。
【0130】
また、センサ部11からの反射光に基づいて、センサ部11の軸方向中央部16を規制する中央規制部21の法線方向と、前記法線方向及びセンサ部11の軸方向に直交する方向との間の角度範囲の風向を計測する。これにより、90度の角度範囲の風向を計測することができ、風向を精度良く検出することができる。
【0131】
また、光ファイバ10は、平行に配置される2つのセンサ部11a、11bを有し、2つのセンサ部11a、11bは、中央規制部21a、21bによってそれぞれ反対側から規制される。これにより、2つのセンサ部11a、11bの軸方向に直交する直交方向一方側及び他方側からの風向を直接的に計測することができ、広範囲に亘って風向を計測することができる。
【0132】
本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0133】
以上のように、本発明によれば、風向を精度良く計測することが可能であるから、例えば車両のエンジンルーム内の風向を計測する場合など、光ファイバを用いて風向を計測する際に好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0134】
1,31 風向計測装置
2 光源
3 光検出部
5 風速計
10 光ファイバ
11,11a,11b センサ部
21,21a,21b 中央規制部
30 制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
図16
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図18
図19
図20