IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 五洋建設株式会社の特許一覧

特開2023-140067コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム
<>
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図1
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図2
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図3
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図4
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図5
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図6
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図7
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図8
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図9
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図10
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図11
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図12
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図13
  • 特開-コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140067
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】コンクリート床下地評価装置、コンクリート床下地評価方法、学習済モデル生成方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/08 20120101AFI20230927BHJP
   G01N 33/38 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G06Q50/08
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045914
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000166627
【氏名又は名称】五洋建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博幸
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC07
(57)【要約】
【課題】コンクリート床下地の表層含有水分量又は表層放出水分量に応じたコンクリート床下地の状態の評価を行う。
【解決手段】サーバ装置20は、コンクリート床下地の画像データを説明変数とし、そのコンクリート床下地について計測した表層含有水分量又は表層放出水分量を目的変数とした教師データに基づいて、これら説明変数及び目的変数の相関関係を機械学習した学習済モデルを記憶する。作業者はAR表示装置10を頭部に装着した状態で、そのAR表示装置10の撮影装置1005により、表層含有水分量又は表層放出水分量の評価対象となるコンクリート床下地を撮影する。撮影装置1005によって撮影された画像データがサーバ装置20の学習済モデルに説明変数として入力され、この結果、目的変数として出力される表層含有水分量又は表層放出水分量に応じた情報がAR表示装置10にて表示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データと、当該コンクリート床下地の表層に含有される表層含有水分量との相関関係を学習した学習済モデルに対して、撮影装置によって撮影されたコンクリート床下地の画像データを説明変数として入力する入力部と、
前記コンクリート床下地における表層含有水分量を目的変数として取得する取得部と、
取得された前記表層含有水分量に応じた情報を出力する出力部と
を備えるコンクリート床下地評価装置。
【請求項2】
撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データと、当該コンクリート床下地の表層から放出される表層放出水分量との相関関係を学習した学習済モデルに対して、撮影装置によって撮影されたコンクリート床下地の画像データを説明変数として入力する入力部と、
前記コンクリート床下地における表層放出水分量を目的変数として取得する取得部と、
取得された前記表層放出水分量に応じた情報を出力する出力部と
を備えるコンクリート床下地評価装置。
【請求項3】
前記コンクリート床下地の用途を特定する特定部を備え、
前記出力部は、前記目的変数として取得された前記表層含有水分量及び/又は前記表層放出水分量を前記用途に応じて区分し、前記区分の結果に応じた情報を出力する
請求項1又は2に記載のコンクリート床下地評価装置。
【請求項4】
前記出力部によって出力された前記区分の結果に応じた情報に基づいて、前記コンクリート床下地の施工状態を評価する評価部を備える
請求項3記載のコンクリート床下地評価装置。
【請求項5】
前記出力部は、前記区分の結果に応じた情報及び/又は前記評価の結果を前記コンクリート床下地の形状に重畳して表示する
請求項4に記載のコンクリート床下地評価装置。
【請求項6】
前記用途は、前記コンクリート床下地に作用する動荷重の大きさに基づいて分けられている
請求項3~5のいずれか1項に記載のコンクリート床下地評価装置。
【請求項7】
撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データと、当該コンクリート床下地の表層に含有される表層含有水分量との相関関係を学習した学習済モデルに対して、撮影装置によって撮影されたコンクリート床下地の画像データを説明変数として入力するステップと、
前記コンクリート床下地における表層含有水分量を目的変数として取得するステップと、
取得された前記表層含有水分量に応じた情報を出力するステップと
を備えるコンクリート床下地評価方法。
【請求項8】
撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データと、当該コンクリート床下地の表層から放出される表層放出水分量との相関関係を学習した学習済モデルに対して、撮影装置によって撮影されたコンクリート床下地の画像データを説明変数として入力するステップと、
前記コンクリート床下地における表層放出水分量を目的変数として取得するステップと、
取得された前記表層放出水分量に応じた情報を出力するステップと
を備えるコンクリート床下地評価方法。
【請求項9】
撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データを取得するステップと、
前記コンクリート床下地の表層に含有される表層含有水分量又は前記コンクリート床下地の表層から放出される表層放出水分量を取得するステップと、
取得された前記画像データを説明変数とし、取得された前記表層含有水分量及び/又は前記表層放出水分量を目的変数として、当該説明変数と当該目的変数との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成するステップと
を備える学習済モデル生成方法。
【請求項10】
コンピュータに、
撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データを取得するステップと、
前記コンクリート床下地の表層に含有される表層含有水分量又は前記コンクリート床下地の表層から放出される表層放出水分量を取得するステップと、
取得された前記画像データを説明変数とし、取得された前記表層含有水分量及び/又は前記表層放出水分量を目的変数として、当該説明変数と当該目的変数との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成するステップと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート床下地の状態を評価するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート床下地の品質指標の一つである表層水分は、コンクリート床下地表層に含有されている水分と、コンクリート床下地表層から放出される水分とに大別される。表層に含有されている水分である含有水分量は、表層から概ね40mmの範囲に含有され、中長期的な剥離、膨れ、内部結露などの原因となる。表層から放出される水分である放出水分量は、表層に貼付した乾燥試験紙に吸収される水分で表層から概ね5mmの範囲に含有され、仕上げ材施工中の接着不良の原因となる。なお、コンクリート混練前の骨材そのものの品質を評価する仕組みとしては、例えば特許文献1には、骨材の画像を説明変数とし、骨材の表面水率を目的変数とする学習モデルを用いる方法が開示されている。しかしながら、コンクリートを打設した床下地の表層に含まれる含有水分量は、高周波静電容量式水分計による測定が、地表層から放出される水分量の特定は乾燥度試験紙による測定が有効とされるが、測定後に専門家による確認により現地判定された水分量を補正するなど、各水分量の特定までに時間と労力を要している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-135199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上述した背景に鑑みてなされたものであり、コンクリート床下地の表層含有水分量又は表層放出水分量に応じたコンクリート床下地の状態の評価を人工知能を用いて即時的に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明のコンクリート床下地評価装置は、撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データと、当該コンクリート床下地の表層に含有される表層含有水分量との相関関係を学習した学習済モデルに対して、撮影装置によって撮影されたコンクリート床下地の画像データを説明変数として入力する入力部と、前記コンクリート床下地における表層含有水分量を目的変数として取得する取得部と、取得された前記表層含有水分量に応じた情報を出力する出力部とを備える。
【0006】
また、本発明のコンクリート床下地評価装置は、撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データと、当該コンクリート床下地の表層から放出される表層放出水分量との相関関係を学習した学習済モデルに対して、撮影装置によって撮影されたコンクリート床下地の画像データを説明変数として入力する入力部と、前記コンクリート床下地における表層放出水分量を目的変数として取得する取得部と、取得された前記表層放出水分量に応じた情報を出力する出力部とを備える。
【0007】
前記コンクリート床下地の用途を特定する特定部を備え、前記出力部は、前記目的変数として取得された前記表層含有水分量及び/又は前記表層放出水分量を前記用途に応じて区分し、前記区分の結果に応じた情報を出力するようにしてもよい。
【0008】
前記出力部によって出力された前記区分の結果に応じた情報に基づいて、前記コンクリート床下地の施工状態を評価する評価部を備えるようにしてもよい。
【0009】
前記出力部は、前記区分の結果に応じた情報及び/又は前記評価の結果を前記コンクリート床下地の形状に重畳して表示するようにしてもよい。
【0010】
前記用途は、前記コンクリート床下地に作用する動荷重の大きさに基づいて分けられていてもよい。
【0011】
また、本発明のコンクリート床下地評価方法は、撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データと、当該コンクリート床下地の表層に含有される表層含有水分量との相関関係を学習した学習済モデルに対して、撮影装置によって撮影されたコンクリート床下地の画像データを説明変数として入力するステップと、前記コンクリート床下地における表層含有水分量を目的変数として取得するステップと、取得された前記表層含有水分量に応じた情報を出力するステップとを備える。
【0012】
また、本発明のコンクリート床下地評価方法は、撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データと、当該コンクリート床下地の表層から放出される表層放出水分量との相関関係を学習した学習済モデルに対して、撮影装置によって撮影されたコンクリート床下地の画像データを説明変数として入力するステップと、前記コンクリート床下地における表層放出水分量を目的変数として取得するステップと、取得された前記表層放出水分量に応じた情報を出力するステップとを備える。
【0013】
また、本発明の学習済モデル生成方法は、撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データを取得するステップと、前記コンクリート床下地の表層に含有される表層含有水分量又は前記コンクリート床下地の表層から放出される表層放出水分量を取得するステップと、取得された前記画像データを説明変数とし、取得された前記表層含有水分量及び/又は前記表層放出水分量を目的変数として、当該説明変数と当該目的変数との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成するステップとを備える。
【0014】
また、本発明は、コンピュータに、撮像装置により撮影されたコンクリート床下地の画像データを取得するステップと、前記コンクリート床下地の表層に含有される表層含有水分量又は前記コンクリート床下地の表層から放出される表層放出水分量を取得するステップと、取得された前記画像データを説明変数とし、取得された前記表層含有水分量及び/又は前記表層放出水分量を目的変数として、当該説明変数と当該目的変数との相関関係を機械学習させた学習済モデルを生成するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンクリート床下地の表層含有水分量又は表層放出水分量に応じた状態の評価を時間と手間をかけずに行うことができる。
【0016】
また、本発明によれば、コンクリート床下地の表層含有水分量又は表層放出水分量に応じた評価を行うための学習済モデルを生成することができる。
【0017】
また、本発明によれば、コンクリート床下地の表層含有水分量及び/又は表層放出水分量に応じた評価を行うための装置を稼働させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係るコンクリート床下地評価システム1の全体構成の一例を示すブロック図。
図2】同実施形態に係るサーバ装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図3】同実施形態に係るAR表示装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図4】サーバ装置20の機能構成の一例を示すブロック図。
図5】乾燥度試験紙の色見本を例示する図。
図6】色見本の色と、コンクリート床下地の表面から5mmの深さの範囲に含有される水分の量との関係を例示する表。
図7】AR表示装置10の機能構成の一例を示すブロック図。
図8】同実施形態において学習済モデルを生成する方法の一例を示すフローチャート。
図9】同実施形態において学習済モデルを用いて水分量を評価する方法の一例を示すフローチャート。
図10】同実施形態において用途別の表層含有水分量のグレードを例示する表。
図11】同実施形態において用途別の表層放出水分量のグレードを例示する表。
図12】AR表示装置10が有するXYZ座標系を例示する図。
図13】AR表示装置10が表層含有水分量に関する表示を行う場合を例示する図。
図14】AR表示装置10が表層放出水分量に関する表示を行う場合を例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明を実施するための形態の一例について説明する。
[構成]
図1は、本発明の実施形態に係るコンクリート床下地評価システム1の全体構成の一例を示すブロック図である。コンクリート床下地評価システム1は、AR(Augmented Reality)表示装置10と、サーバ装置20と、AR表示装置10及びサーバ装置20を通信可能に接続する通信網30と、サーバ装置20が機械学習を行うための教師データをサーバ装置20に入力するデータ入力装置40及び撮像装置50とを備えている。サーバ装置20と、データ入力装置40及び撮像装置50は通信可能に接続される。
【0020】
図2は、サーバ装置20のハードウェア構成を示す図である。サーバ装置20は、物理的には、プロセッサ2001、メモリ2002、ストレージ2003、通信装置2004、入出力装置2005及びこれらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。これらの各装置は図示せぬ電源から供給される電力によって動作する。
【0021】
サーバ装置20における各機能は、プロセッサ2001、メモリ2002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ2001が演算を行い、通信装置2004による通信を制御したり、他の装置から送信されてきたデータを取得したり、メモリ2002及びストレージ2003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0022】
プロセッサ2001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ2001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)によって構成されてもよい。
【0023】
プロセッサ2001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュール、データなどを、ストレージ2003及び通信装置2004の少なくとも一方からメモリ2002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、後述する動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。サーバ装置20の機能ブロックは、メモリ2002に格納され、プロセッサ2001において動作する制御プログラムによって実現されてもよい。各種の処理は、1つのプロセッサ2001によって実行されてもよいが、2以上のプロセッサ2001により同時又は逐次に実行されてもよい。
【0024】
メモリ2002は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、RAM(Random Access Memory)などの少なくとも1つによって構成されてもよい。メモリ2002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ2002は、本実施形態に係る方法を実施するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0025】
ストレージ2003は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、CD-ROM(Compact Disc ROM)などの光ディスク、ハードディスクドライブ、ソリッドステートドライブ、フレキシブルディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、スマートカード、フラッシュメモリ(例えば、カード、スティック、キードライブ)、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気ストリップなどの少なくとも1つによって構成されてもよい。ストレージ2003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0026】
通信装置2004は、コンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0027】
入出力装置2005は、外部装置からのデータの入出力を受け付ける入出力インターフェースであり、データ入力装置40及び撮像装置50からのデータ入力を受け付ける。
【0028】
図3は、AR表示装置10のハードウェア構成を示す図である。AR表示装置10は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、撮影装置1005、表示装置1006、操作装置1007及びこれらを接続するバスなどを含むコンピュータ装置として構成されている。通信装置1004は無線通信を行う。AR表示装置10によって実現される各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることによって、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信、撮影装置1005による撮影及び表示装置1006による表示を制御したり、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び書き込みの少なくとも一方を制御したりすることによって実現される。
【0029】
AR表示装置10は、ARオブジェクトと呼ばれる仮想的な画像を現実空間に重畳表示する。AR表示を行う方法には、現実空間を撮影した撮影画像を表示する表示面においてARオブジェクトをその撮影画像に重畳して表示する方法と、ユーザの眼の前に配置された光透過型の表示面において、ユーザから表示面を介して見える現実空間に重なるような位置にARオブジェクトを表示する方法とがある。本実施形態のAR表示装置10は、いずれの方法でAR表示を行ってもよい。
【0030】
図4は、サーバ装置20の機能構成の一例を示す図である。取得部21は、サーバ装置20の外部にある装置(AR表示装置10、データ入力装置40及び撮像装置50)から各種のデータを取得する。撮像装置50から取得部21によって取得されるデータには、複数のコンクリート床下地を撮像装置50で撮影した画像を表す画像データが含まれている。データ入力装置40から取得部21によって取得されるデータには、上記の複数のコンクリート床下地の画像データについてそれぞれ計測された表層の含有水分量及び放出水分量が含まれている。これらの撮像装置50及びデータ入力装置40から取得されるデータは、サーバ装置20が機械学習を行うときの教師データとして用いられる。AR表示装置10から取得部21によって取得されるデータには、評価対象となるコンクリート床下地が撮影装置1005によって撮影された画像データが含まれている。AR表示装置10から取得されるデータは、サーバ装置20の機械学習によって生成された学習済モデルに入力される。
【0031】
表層含有水分量は、例えばコンクリート床下地の表面から深さ40mm程度の範囲に含有されている水分の量である。この表層含有水分量は、高周波静電容量式水分計(例えばケット科学研究所製:HI-500またはHI-520-2におけるDモード)により計測可能である。表層含有水分は、中長期的な剥離、膨れ、内部結露などの原因となる。
【0032】
表層放出水分量は、例えばコンクリート床下地の表面から5mmの深さの範囲に含有される水分の量とみなされるものである。表層放出水分量は、乾燥度試験紙により計測可能である。具体的には、乾燥度試験紙(東洋濾紙製)をコンクリート床下地にテープで貼付し、その10分後に、乾燥度試験紙の色と図5に例示する10段階の色見本とを見比べて、最も色合いが近似していると思われる色見本を選ぶことで、その表層放出水分量のグレードを推定することができる。この色見本の色と、コンクリート床下地の表面から5mmの深さの範囲に含有される水分の量との関係を図6に例示する。図6における質量含水率は、埋め込み式セラミックセンサにより実際に計測された、コンクリート床下地の表面から5mmの深さの部分に含有される水分の量である。図5によれば、乾燥度試験紙により計測された表層放出水分量のグレードは、セラミックセンサにより実際に計測された水分の量と相関関係がある。なお、表層放出水分は、コンクリート床下地において仕上げ材施工中の接着不良の原因となる。
【0033】
図4において教師データ生成部22は、撮像装置50及びデータ入力装置40から取得されたデータを用いて、コンクリート床下地の表層含有水分量と表層放出水分量とをそれぞれ別々に導き出す機械学習を行うための教師データを生成する。具体的には、教師データ生成部22は、各々のコンクリート床下地を撮影した画像データを機械学習の説明変数とし、各々のコンクリート床下地について計測された表層含有水分量を機械学習の目的変数とした教師データ、及び、各々のコンクリート床下地を撮影した画像データを機械学習の説明変数とし、各々のコンクリート床下地について計測された表層放出水分量を機械学習の目的変数とした教師データをそれぞれ生成する。
【0034】
モデル生成部23は、各々のコンクリート床下地を撮影した画像データを説明変数とし、各々のコンクリート床下地について計測された表層含有水分量を目的変数とした教師データに基づいた、ニューラルネットワークによる機械学習を行って学習済モデル(以下、表層含有水分学習済モデルという)を生成する。また、モデル生成部23は、各々のコンクリート床下地を撮影した画像データを説明変数とし、各々のコンクリート床下地について計測された表層放出水分量を目的変数とした教師データに基づいた、ニューラルネットワークによる機械学習を行って学習済モデル(以下、表層放出水分学習済モデルという)を生成する。この機械学習によれば、教師データに含まれる説明変数及び目的変数の関係を解析することで、説明変数に相当するデータが入力されたときに目的変数に相当するデータを出力する学習済モデルを生成することができる。
【0035】
モデル格納部24は、モデル生成部23により生成された表層含有水分学習済モデル及び表層放出水分学習済モデルを格納する。評価対象となるコンクリート床下地が撮影された画像データがAR表示装置10から取得部21によって取得され、モデル格納部24に格納された表層含有水分学習済モデルに説明変数として入力されると、その評価対象となるコンクリート床下地における表層含有水分量が目的変数として出力される。また、評価対象となるコンクリート床下地が撮影された画像データがAR表示装置10から取得部21によって取得され、モデル格納部24に格納された表層放出水分学習済モデルに説明変数として入力されると、その評価対象となるコンクリート床下地における表層放出水分量が目的変数として出力される。
【0036】
用途特定部25は、コンクリート床下地の用途を特定する。コンクリート床下地の用途は、コンクリート床下地に作用する動荷重の大きさに基づいて分けられており、例えば動荷重がほぼ作用しない床(住居の一般床等)、動荷重が作用する床(病院の個室、廊下等)、大きな動荷重が作用する床(病院の手術室等)に分けられるが、必ずしもこのような分け方に限定されない。作業者はAR表示装置10の操作装置1007を用いて、表層含有水分量又は表層放出水分量の評価対象となるコンクリート床下地の用途を選択することができるようになっている。用途特定部25は、その選択操作の結果をAR表示装置10から、評価対象となるコンクリート床下地が撮影された画像データに紐づけて取得部21によって取得することで、コンクリート床下地の用途を特定する。
【0037】
評価部26は、表層含有水分学習済モデル及び/又は表層放出水分学習済モデルから出力された目的変数である表層含有水分量及び/又は表層放出水分量を、用途特定部25により特定された用途に応じて区分し、その区分の結果に応じた情報に基づき、コンクリート床下地の施工状態を評価する。出力部27は、評価部26による評価の結果に応じた情報をAR表示装置10に出力する。
【0038】
図7は、AR表示装置10の機能構成の一例を示す図である。作業者はAR表示装置10の撮影装置1005により、表層含有水分量又は表層放出水分量の評価対象となるコンクリート床下地を撮影する。図7において、入力部11は、撮影装置1005によって撮影された画像データを通信網30経由でサーバ装置20に送信することで、サーバ装置20の表層含有水分学習済モデル及び/又は表層放出水分学習済モデルに対して上記画像データを説明変数として入力する。
【0039】
取得部12は、サーバ装置20の表層含有水分学習済モデル及び/又は表層放出水分学習済モデルから目的変数として出力される表層含有水分量及び/又は表層放出水分量に応じて評価部26によって評価された結果に応じた情報を通信網30経由で取得する。
【0040】
表示部13は、取得部12により取得された上記情報を表示する。
【0041】
[動作]
[機械学習ステージにおける動作]
図8は、サーバ装置20が学習済モデルを生成する方法の一例を示すフローチャートである。まず、サーバ装置20の取得部21は、撮像装置50及びデータ入力装置40から、複数のコンクリート床下地を撮影した画像データと、これらのコンクリート床下地について計測された表層含有水分量及び表層放出水分量を示すデータとを紐づけて取得する(ステップS11)。
【0042】
サーバ装置20の教師データ生成部22は、取得部21によって取得された画像データを説明変数とし、取得部21によって取得された表層含有水分量を目的変数とした教師データ、及び、取得部21によって取得された画像データを説明変数とし、取得部21によって取得された表層含有放出量を目的変数とした教師データをそれぞれ生成する(ステップS12)。
【0043】
次に、モデル生成部23は、上記教師データを用いて機械学習を実施し、表層含有水分学習済モデル及び表層放出水分学習済モデルをそれぞれ生成する(ステップS13)。モデル格納部24は、生成された表層含有水分学習済モデル及び表層放出水分学習済モデルを格納する(ステップS14)。
【0044】
[コンクリート床下地評価ステージにおける動作]
図9は、サーバ装置20がコンクリート床下地を評価する方法の一例を示すフローチャートである。作業者はAR表示装置10の操作装置1007を操作して、評価対象となるコンクリート床下地の用途と、表層含有水分量又は表層放出水分量のうちどちらを評価したいのか(以下、水分量種別という)を選択する。サーバ装置20の用途特定部25は、これらの選択操作の結果をAR表示装置10から取得部21を経由して取得することで、対象とするコンクリート床下地の用途を特定するとともに、作業者が希望する水分量種別を特定する(ステップS21)。
【0045】
作業者はAR表示装置10を例えば頭部に装着した状態で、又は手に保持した状態で評価対象となるコンクリート床下地を撮影する。AR表示においては、その表示エリアにおける3次元空間にIMES(Indoor Messaging System)測位や設計図や現地でのトータルステーション測量等により、XYZ座標系が設定されるようになっている。これにより、図12に例示するように、コンクリート床下地として画像認識された床面領域にはXYZ座標系が設定される。
【0046】
AR表示装置10の撮影装置1005による撮影が開始されると、取得部21は、撮影装置1005によって撮影された画像データを通信網30経由で取得する(ステップS22)。評価部26は、取得された画像データを所定のサイズ単位(例えば床面の50cm四方の矩形単位)に分割し、分割した各画像データを、ステップS21にて特定された水分量種別に対応する学習済モデルに説明変数として入力する(ステップS23)。こにより、評価部26は、分割した画像データ単位で、その画像データに対応するコンクリート床下地における表層含有水分量又は表層放出水分量を目的変数として取得する(ステップS24)。
【0047】
評価部26は、分割した画像データ単位で取得した表層含有水分量又は表層放出水分量を、ステップS21にて特定された用途に応じたグレードに区分してコンクリート床下地の施工状態を評価する(ステップS25)。
【0048】
図10は、用途別の表層含有水分量のグレードを例示する表であり、図11は、用途別の表層放出水分量のグレードを例示する表である。図10に示すように、表層含有水分量に関しては、一般床という用途において、I(水分計指示値440未満)、II(水分計指示値620未満)、III(水分計指示値780未満)という3つのグレードに区分されており、動荷重が作用する床という用途において、I(水分計指示値440未満)、II(水分計指示値620未満)という2つのグレードに区分されており、大きな動荷重が作用する床という用途において、I(水分計指示値440未満)という1つのグレードに区分されている。これらのグレードに応じて、コンクリート床下地において使用可能な接着剤が対応付けられている。
【0049】
また、図11に示すように、表層放出水分量に関しては、一般床という用途において、I(色評価値4.0未満)、II(色評価値5.0未満)、III(色評価値6.0未満)という3つのグレードに区分されており、動荷重が作用する床という用途において、I(色評価値4.0未満)、II(色評価値5.0未満)、III(色評価値6.0未満)という3つのグレードに区分されており、大きな動荷重が作用する床という用途において、I(色評価値4.0未満)、II(色評価値5.0未満)という2つのグレードに区分されている。これらのグレードに応じて、コンクリート床下地において使用可能な接着剤が対応付けられている。
【0050】
出力部27は、図10に例示した表に従い、例えば一般床に対しては図13に示すように、表層含有水分量に関するI(水分計指示値440未満)、II(水分計指示値620未満)、III(水分計指示値780未満)という3つのグレードのそれぞれに対応する床面部分GI、GII、GIIIを色分けして表示するよう、AR表示装置10に出力する(ステップS26)。また、出力部27は、図11に例示した表に従い、例えば一般床に対しては図14に示すように、表層放出水分量に関するI(色評価値4.0未満)、II(色評価値5.0未満)、III(色評価値6.0未満)という3つのグレードのそれぞれに対応する床面部分GI、GII、GIIIを色分けして表示するよう、AR表示装置10に出力する(ステップS26)。
【0051】
評価部26は、上記のグレードに基づき、コンクリート床下地の施工状態(例えばコンクリート床下地において表層含有水分量又は表層放出水分量が用途に適合したものであるか否か、次の施工に進んでよいか否か等)を評価するようにしてもよい。出力部27は、これらの評価に基づき、例えばコンクリート床下地において表層含有水分量又は表層放出水分量が用途に適合したものであるか否かといったメッセージや、次の施工に進んでよいか否か等のメッセージをグレード表示と一緒に、又は別個に出力するようにしてもよい。
【0052】
上述した実施形態によれば、作業者がAR表示装置10を用いてコンクリート床下地を観察する行為を行うだけで、表層含有水分量又は表層放出水分量に応じた表示が可能となる。さらに、その表示に従って、作業者がコンクリート床下地において表層含有水分量又は表層放出水分量が用途に適合したものであるか否かを判断したり、使用に適した接着剤を選定したり、次の工程に進めるか否かを判断したりすることが可能となる。
【0053】
なお、上記実施形態においてサーバ装置20が実行していた処理の一部をAR表示装置10が行ってもよい。また、本発明は、上記実施形態に係るAR表示装置10又はサーバ装置20が実行するプログラム又は方法であってもよい。
【符号の説明】
【0054】
1:コンクリート床下地評価システム、10:AR表示装置、11:入力部、12:取得部、13:表示部、20:サーバ装置、21:取得部、22:教師データ生成部、23:モデル生成部、24:モデル格納部、25:用途特定部、26:評価部、27:出力部、30:通信網、40:データ入力装置、50:撮像装置、1001:プロセッサ、1002:メモリ、1003:ストレージ、1004:通信装置、1005:撮影装置、1006:表示装置、1007:操作装置、2001:プロセッサ、2002:メモリ、2003:ストレージ、2004:通信装置、2005入出力装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14