(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140072
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】電源装置、電源装置を備えたシステムおよび電源装置の絶縁抵抗診断方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/00 20060101AFI20230927BHJP
G01R 31/52 20200101ALI20230927BHJP
【FI】
G01R31/00
G01R31/52
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045919
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊地 拓也
(72)【発明者】
【氏名】山根 太志
【テーマコード(参考)】
2G014
2G036
【Fターム(参考)】
2G014AA17
2G014AB61
2G036AA20
2G036BB08
(57)【要約】
【課題】システムのシャットダウン時間を短縮ことが可能な電源装置、電源装置を備えたシステムおよび電源装置の絶縁抵抗診断方法を提供する。
【解決手段】電源装置は、電池を有し、当該電池と高電圧機器との間で電力供給が行われる電源装置において、電池と高電圧機器との間の電気的な接続/切断の切り替えを制御する制御部と、電池と高電圧機器との間が電気的に切断された後に、電池の絶縁抵抗の診断を行う絶縁抵抗診断部と、を備える。例えば、電源装置を備えるシステムにおいて、絶縁抵抗診断部は、さらに、システムのシャットダウンを終了した後に、電池の絶縁抵抗の診断を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を有し、当該電池と高電圧機器との間で電力供給が行われる電源装置において、
前記電池と前記高電圧機器との間の電気的な接続/切断の切り替えを制御する制御部と、
前記電池と前記高電圧機器との間が電気的に切断された後に、前記電池の絶縁抵抗の診断を行う絶縁抵抗診断部と、
を備える、
電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電源装置を備えるシステムにおいて、
前記絶縁抵抗診断部は、さらに、システムのシャットダウンを終了した後に、前記電池の絶縁抵抗の診断を行う、
システム。
【請求項3】
電池を有し、当該電池と高電圧機器との間で電力供給が行われる電源装置の絶縁抵抗診断方法において、
前記電池と前記高電圧機器との間の電気的な接続/切断の切り替えを制御する制御ステップと、
前記電池と前記高電圧機器との間が電気的に切断された後に、前記電池の絶縁抵抗の診断を行う絶縁抵抗診断ステップと、
を備える、
絶縁抵抗診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電源装置、電源装置を備えたシステムおよび電源装置の絶縁抵抗診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電池と高電圧機器との間で電力供給が行われる電源装置が知られている。安全性を担保するため、電池は、絶縁性のケースにより被覆されている。
【0003】
電池の絶縁性が十分に確保できていることを確認するために、特許文献1には、電池の絶縁状態を診断する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電源装置を備えたシステム、例えば、電源装置を搭載した電気自動車やハイブリット自動車では、自動車の運転を終え、キーオフ操作が行われると、システムのシャットダウン制御が行われる。システムのシャットダウン制御中に、電池の絶縁抵抗診断が行われる場合、絶縁抵抗診断にかかる時間の分だけ、システムのシャットダウン時間が長くなるという問題がある。
【0006】
本開示の目的は、システムのシャットダウン時間を短縮することが可能な電源装置、電源装置を備えたシステムおよび電源装置の絶縁抵抗診断方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本開示における電源装置は、
電池を有し、当該電池と高電圧機器との間で電力供給が行われる電源装置において、
前記電池と前記高電圧機器との間の電気的な接続/切断の切り替えを制御する制御部と、
前記電池と前記高電圧機器との間が電気的に切断された後に、前記電池の絶縁抵抗の診断を行う絶縁抵抗診断部と、
を備える。
【0008】
本開示におけるシステムは、上記の電源装置を備え、
絶縁抵抗診断部は、さらに、システムのシャットダウンを終了した後に、前記電池の絶縁抵抗の診断を行う。
【0009】
本開示における電源装置の絶縁抵抗診断方法は、
電池を有し、当該電池と高電圧機器との間で電力供給が行われる電源装置の絶縁抵抗診断方法において、
前記電池と前記高電圧機器との間の電気的な接続/切断の切り替えを制御する制御ステップと、
前記電池と前記高電圧機器との間が電気的に切断された後に、前記電池の絶縁抵抗の診断を行う絶縁抵抗診断ステップと、
を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、システムのシャットダウン時間を短縮ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る電源装置の構成を示す図である。
【
図2】
図2は、比較例に係るシステムのシャットダウン制御、および、本実施の形態に係るシステムのシャットダウン制御のそれぞれの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本開示の実施の形態に係る電源装置1を示すブロック図である。
【0013】
図1に示す電源装置1は、例えば、電気自動車やハイブリッド自動車などの車両に搭載される。本実施の形態では、電源装置1を備えるシステムの一例として車両を挙げて説明する。
【0014】
電源装置1は、電池パックBPを有する。
図1にn個の電池パックBP1、…、BPnを示す。なお、nは、2以上の整数である。電池パックBPは、組電池10と、監視部20とを有する。電池パックBPは絶縁性のケースにより周囲が被覆されている。
【0015】
組電池10は、複数のリチウムイオン電池セルを互いに直列接続することにより構成される。組電池10の直列回路の正極側端子から正極側電源ライン11Pが導出されている。組電池10の直列回路の負極側端子から負極側電源ライン11Nが導出されている。正極側電源ライン11Pには正極側リレー12Pが接続されている。負極側電源ライン11Nには負極側リレー12Nが接続されている。
【0016】
正極側リレー12Pおよび負極側リレー12Nには、ジャンクションボックスJBを介してモーター駆動部や、DC/DCコンバータや、充電器や、電動架装や、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒーターや、エアコンプレッサーなどの高電圧機器50が接続されている。
【0017】
[監視部20]
監視部20は、複数の電池パックBPのそれぞれに搭載され、電池パックBPを監視および制御する。監視部20は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して監視部20の所定機能を実行する。
【0018】
監視部20は、複数のリチウムイオン電池セルのそれぞれの電圧を調整する機能、電池パックBP内の電流、電圧、温度を監視する機能、電池パックBPの充放電電流を制御する機能、電池パックBPの絶縁抵抗を検出する機能(本開示の「絶縁抵抗診断部」に対応する)、電池パックBP内のリレー(正極側リレー12Pおよび負極側リレー12Nを含む)のオンオフを制御する機能(本開示の「制御部」に対応する)を備えている。
【0019】
正極側リレー12Pおよび負極側リレー12Nのそれぞれがオンされることで、電池パックBPと高電圧機器との間が電気的に接続される。正極側リレー12Pまたは負極側リレー12Nのいずれかがオフされることで、電池パックBPと高電圧機器との間が電気的に切断される。
【0020】
電池パックBPの絶縁抵抗を診断する絶縁抵抗診断は、電池パックBPと高電圧機器との間が電気的に切断された後に、公知の方法により行われる。絶縁抵抗診断は、例えば、電池パックBPの筐体(絶縁体)と電池パックBPに含まれる導体部(例えば、セル等の活電部)との間の絶縁抵抗値を測定することにより行われる。
【0021】
[電池ECU30]
電池ECU30は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して電池ECU30の所定機能を実行する。このとき、記憶部(不図示)に格納されている各種データが参照される。記憶部は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。電池ECU30は、例えば、車両の各部を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)に組み込まれても良く、制御ECU40と一体的に構成されてもよく、また、車両ECUや制御ECU40とは別個に設けられても良い。
【0022】
電池ECU30は、制御ECU40との通信、ジャンクションボックスJB内の電圧、電流の監視、ジャンクションボックスJB内のリレーのオンオフを制御する機能等を有する。
【0023】
[制御ECU40]
制御ECU40は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して制御ECU40の所定機能を実行する。このとき、記憶部(不図示)に格納されている各種データが参照される。記憶部は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。制御ECU40は、例えば、車両の各部を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)に組み込まれても良く、電池ECU30と一体的に構成されてもよく、また、車両ECUや電池ECU30とは別個に設けられても良い。
【0024】
なお、車両ECUは、電池ECU30や制御ECU40などの各ECUの停止処理や、各ECUのシャットダウン処理を行う。
【0025】
図2は、比較例に係るシステムのシャットダウン制御、および、本実施の形態に係るシステムのシャットダウン制御のそれぞれの一例を示す図である。
図2に示す「リレーオープン」は、正極側リレー12Pおよび負極側リレー12Nのいずれかがオフされることを意味する。自動車の運転を終え、キーオフ操作が行われると、システムのシャットダウン制御が行われる。
図2の上側に示す比較例に係るシステムのシャッタダウン制御では、先ず、電池ECU30や制御ECU40などの各ECUの停止処理が行われる。次に、上記する電池パックBPの絶縁抵抗診断が行われる。次に、各ECUのシャットダウン処理が行われる。このように、システムのシャットダウン制御中に、電池パックBPの絶縁抵抗診断が行われた場合、絶縁抵抗診断にかかる時間の分だけ、システムのシャットダウン時間が長くなるという問題がある。比較例では、各ECUの停止処理が行われた後に、電池パックBPの絶縁抵抗診断が開始される。
【0026】
図2の下側に示す本実施の形態に係るシステムのシャットダウン制御中には、各ECUの停止処理および各ECUのシャットダウン処理が行われ、電池パックBPの絶縁抵抗診断が行われない。本実施の形態では、電池パックBPの絶縁抵抗診断は、システムのシャットダウン時間経過後に行われる。換言すれば、絶縁抵抗診断は、電池パックBP以外の要素のシャットダウン終了した後に行われる。
【0027】
本開示の実施の形態に係る電源装置1は、電池パックBPを有し、電池パックBPと高電圧機器50との間で電力供給が行われる電源装置において、電池パックBPと高電圧機器50との間の電気的な接続/切断の切り替えを制御する制御部と、電池パックBPと高電圧機器50との間が電気的に切断された後に、電池パックBPの絶縁抵抗の診断を行う絶縁抵抗診断部と、を備える。
【0028】
上記構成によれば、電池パックBPと高電圧機器50との間が電気的に切断された後に、電池パックBPの絶縁抵抗の診断が行われるため、電池パックBPの絶縁抵抗値を正確に測定することが可能となる。
【0029】
また、本開示の実施の形態に係る電源装置1では、絶縁抵抗診断部は、さらに、システムのシャットダウン終了後に電池の絶縁抵抗の診断を行う。これにより、システムのシャットダウン時間を短縮することが可能となる。
【0030】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示の実施をするにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本開示は、車両のシャットダウン時間を短縮ことが要求される電源装置を備えた車両に好適に利用される。
【符号の説明】
【0032】
BP,BP1,…,BPn バッテリーパック
1 電源装置
10 組電池
11P 正極側電源ライン
11N 負極側電源ライン
12P 正極側リレー
12N 負極側リレー
20 監視部
30 電池ECU
40 車両ECU
50 高電圧機器