(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140078
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】モータ駆動制御装置、ファンユニット、およびモータ起動制御方法
(51)【国際特許分類】
H02P 25/22 20060101AFI20230927BHJP
H02P 27/06 20060101ALI20230927BHJP
H02P 29/024 20160101ALI20230927BHJP
H02P 29/028 20160101ALI20230927BHJP
【FI】
H02P25/22
H02P27/06
H02P29/024
H02P29/028
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045926
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】土方 英俊
【テーマコード(参考)】
5H501
5H505
【Fターム(参考)】
5H501AA08
5H501BB08
5H501CC01
5H501DD04
5H501EE08
5H501FF01
5H501HA08
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5H501JJ03
5H501JJ12
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5H501LL10
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5H501LL35
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5H501MM01
5H501MM09
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5H505AA04
5H505BB06
5H505CC01
5H505DD01
5H505DD06
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5H505EE49
5H505EE55
5H505FF01
5H505HA09
5H505HB01
5H505HB05
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5H505JJ16
5H505JJ18
5H505LL10
5H505LL20
5H505LL24
5H505LL41
5H505LL55
5H505LL56
5H505LL57
5H505MM01
5H505MM12
5H505MM13
(57)【要約】
【課題】単相2系統駆動のモータの駆動が停止した状態から駆動開始する際に、異常状態を正しく判定することによって、迅速に、かつ、安定した起動をすることができるようにする。
【解決手段】駆動指令信号Scaに基づき、1つのモータ3を駆動する2系統のコイル6_1,6_2に対応して設けられ、対応する系統のコイルに通電する制御を行う2つのモータ駆動回路10_1,10_2と、2つのモータ駆動回路10_1,10_2の少なくとも一方に駆動指令信号Scaを出力する駆動制御回路20と、を備え、駆動制御回路20は、起動時に、2つのモータ駆動回路10_1,10_2の少なくとも一方に駆動指令信号Scaを出力したときに入力される各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する一次判定を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動指令信号に基づき、1つのモータを駆動する2系統のコイルに対応して設けられ、対応する系統のコイルに通電する制御を行う2つのモータ駆動回路と、
前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力する駆動制御回路と、を備え、
前記駆動制御回路は、起動時に、
前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統のFG信号のレベル変化の回数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する一次判定を行う
モータ駆動制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、
前記一次判定の判定結果に応じて、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果と、前記FG信号のレベル毎の時間から計算されるモータの回転数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する二次判定を行う
モータ駆動制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ駆動制御装置において、
前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力して前記一次判定を行い、前記一次判定にて2系統とも異常が無いと判定した場合は、前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力して前記二次判定を行う
モータ駆動制御装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、
前記モータの駆動中において、前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数を検出し、前記レベル変化の回数差に基づきFG故障の有無を判定する三次判定を行う
モータ駆動制御装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、
起動時において、前記一次判定を行う前に、前記2つのモータ駆動回路の両方から入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果および前記FG信号のレベル毎の時間から計算される前記モータの回転数の検出結果から前記モータの空転状態が検出され、かつ、前記モータの回転数が所定の最小回転数以上であった場合、前記一次判定は行わず、前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力して、2系統駆動を開始する
モータ駆動制御装置。
【請求項6】
請求項1から4までのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、前記一次判定として、
前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果に基づく各系統の異常有無の判定と、
当該判定にて少なくとも1つのモータ駆動回路が異常であるとした場合に、その判定結果に応じて、一方のモータ駆動回路の動作を可能にし、他方のモータ駆動回路の動作を停止して、 前記一方のモータ駆動回路から入力される前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果の基づく各系統の異常有無の判定と、を行う
モータ駆動制御装置。
【請求項7】
請求項1から4および6のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記2つのモータ駆動回路は、夫々、
前記駆動制御回路から入力された前記駆動指令信号と前記モータの回転に応じて生成された位置検出信号とに基づいて駆動制御信号を生成するとともに、前記モータの実回転数に対応する周波数を有するFG信号を前記駆動制御回路に出力するインバータ制御回路と、
前記駆動制御信号に基づいて前記コイルを駆動するインバータ回路と、
前記駆動制御回路からの制御に応じて、前記インバータ制御回路から前記インバータ回路への前記駆動制御信号の入力と遮断を切り替える信号遮断回路とを有し、
前記駆動制御回路は、前記一次判定として、
前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果に基づく各系統の異常有無の判定と、
前記判定にて少なくとも1つのモータ駆動回路が異常であるとした場合に、その判定結果に応じて、前記2つのモータ駆動回路の一方の前記信号遮断回路を制御して、一方の系統の前記インバータ制御回路から前記インバータ回路への前記駆動制御信号の入力を可能にし、他方の系統の前記インバータ制御回路から前記インバータ回路への前記駆動制御信号の入力を停止して、前記一方の系統から入力される前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果に基づく各系統の異常有無の判定とを行う
モータ駆動制御装置。
【請求項8】
請求項4および請求項4を引用する請求項6から7までのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記駆動制御回路は、
前記一次判定と前記二次判定と前記三次判定とを順次行う異常判定部と、
前記一次判定および前記二次判定の判定結果に応じて、前記2つのモータ駆動回路のうちの少なくとも1系統に前記駆動指令信号を生成する駆動指令信号生成部と、
を有し、
前記駆動指令信号生成部は、
前記2つのモータ駆動回路の両方を駆動する2系統駆動と、前記2つのモータ駆動回路のうちの第1系統のモータ駆動回路を駆動する第1系統駆動と、前記2つのモータ駆動回路のうちの第2系統のモータ駆動回路を駆動する第2系統駆動とのいずれかに対応する前記駆動指令信号を出力し、
前記起動時の前記一次判定では、前記2系統駆動で動作する2系統起動モードと、前記第1系統駆動で動作する第1系統起動モードと、前記第2系統駆動で動作する第2系統起動モードとに対応し、
前記一次判定の後の前記二次判定では、一次判定の判定結果に応じて、前記2系統駆動で動作する2系統回転待ちモードと、前記第1系統駆動で動作する第1系統回転待ちモードと、前記第2系統駆動で動作する第2系統回転待ちモードとのいずれかに対応し、
前記二次判定の後の駆動時には、前記二次判定の判定結果に応じて、前記2系統駆動で動作する2系統駆動モードと、前記第1系統駆動で動作する第1系統駆動モードと、前記第2系統駆動で動作する第2系統駆動モードとのいずれかに対応し、
前記一次判定または二次判定後には、ロータロックモードの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項9】
請求項8に記載のモータ駆動制御装置において、
前記異常判定部は、前記2系統起動モードにおいて、所定期間における各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数に基づき、2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達しない場合にロータロック仮判定とし、第1系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第1系統正常仮判定とし、第2系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統正常仮判定とし、2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に2系統正常仮判定とする、判定結果を生成し、
前記駆動指令信号生成部は、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記ロータロック仮判定に基づく前記第1系統起動モードと、前記第1系統正常仮判定に基づく前記第1系統起動モードと、前記第2系統正常仮判定に基づく前記第2系統起動モードと、前記2系統正常仮判定に基づく前記2系統回転待ちモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項10】
請求項9に記載のモータ駆動制御装置において、
前記異常判定部は、前記第1系統起動モードにおいて、所定期間における第1系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に前記第1系統正常仮判定とし、前記ロータロック仮判定に基づく前記第1系統起動モードにおいて、所定期間における第1系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数が所定数に達しない場合に前記ロータロック仮判定とし、前記第1系統正常仮判定に基づく前記第1系統起動モードにおいて、所定期間における第1系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数が所定数に達しない場合に第1系統FG故障仮判定とする、判定結果を生成し、
前記駆動指令信号生成部は、前記第1系統起動モードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第1系統正常仮判定に基づく前記第1系統回転待ちモードと、前記ロータロック仮判定に基づく前記第2系統起動モードと、前記第1系統FG故障仮判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項11】
請求項8に記載のモータ駆動制御装置において、
前記異常判定部は、前記第2系統起動モードにおいて、所定期間における第2系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統正常仮判定とし、前記レベル変化の回数が所定数に達しない場合にロータロック判定または第2系統FG故障仮判定とする、判定結果を生成し、
前記駆動指令信号生成部は、前記第2系統起動モードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第2系統正常仮判定に基づく前記第2系統回転待ちモードと、前記ロータロック判定または前記第2系統FG故障仮判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項12】
請求項8から11までのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記異常判定部は、前記2系統回転待ちモードにおいて、前記FG信号に基づく前記モータの回転数と所定期間における各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数に基づき、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第1系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統FG故障仮判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第2系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第1系統FG故障仮判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に2系統正常判定とし、前記回転数が最小回転数に達しない場合にロータロック判定とする、判定結果を生成し、
前記駆動指令信号生成部は、前記2系統回転待ちモードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第2系統FG故障仮判定に基づく前記第1系統駆動モードまたは前記ロータロックモードと、前記第1系統FG故障仮判定に基づく前記第2系統駆動モードまたは前記ロータロックモードと、前記2系統正常判定に基づく前記2系統駆動モードと、前記ロータロック判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項13】
請求項8から11までのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記異常判定部は、前記第1系統回転待ちモードにおいて、前記FG信号に基づく前記モータの回転数と所定期間における各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数に基づき、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第1系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統FG故障判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第2系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第1系統FG故障仮判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に2系統正常判定とし、前記回転数が最小回転数に達しない場合にロータロック判定とする、判定結果を生成し、
前記駆動指令信号生成部は、前記第1系統回転待ちモードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第2系統FG故障判定に基づく前記第1系統駆動モードと、前記第1系統FG故障仮判定に基づく前記ロータロックモードと、2系統正常判定に基づく前記2系統駆動モードと、前記ロータロック判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項14】
請求項8から11までのいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置において、
前記異常判定部は、前記第2系統回転待ちモードにおいて、前記FG信号に基づく前記モータの回転数と所定期間における各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数に基づき、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第1系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統FG故障仮判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第2系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第1系統FG故障判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に2系統正常判定とし、前記回転数が最小回転数に達しない場合にロータロック判定とする、判定結果を生成し、
前記駆動指令信号生成部は、前記第2系統回転待ちモードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第2系統FG故障仮判定に基づく前記ロータロックモードと、前記第1系統FG故障判定に基づく前記第2系統駆動モードと、前記2系統正常判定に基づく前記2系統駆動モードと、前記ロータロック判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成する
モータ駆動制御装置。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか1項に記載のモータ駆動制御装置と、
前記モータと、
前記モータの回転力によって回転するインペラと、を備える
ファンユニット。
【請求項16】
駆動指令信号に基づき、1つのモータを駆動する2系統のコイルに対応して設けられ、対応する系統のコイルに通電する制御を行う2つのモータ駆動回路と、
前記2つのモータ駆動回路に前記駆動指令信号を出力する駆動制御回路と、を備えるモータ駆動制御装置によるモータ起動制御方法であって、
前記駆動制御回路が起動時に前記モータを制御するステップとして、
前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統のFG信号のレベル変化の回数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する一次判定ステップと、
前記一次判定ステップの判定結果に応じて、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果と、前記FG信号のレベル毎の時間から計算される回転数の検出結果に基づきから各系統の異常有無を判定する二次判定ステップとを含む
モータ起動制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータ駆動制御装置、ファンユニット、およびモータ起動制御方法に関し、特には、2系統駆動に対応した2つのモータ駆動回路を有するモータ駆動制御装置、ファンユニット、およびモータ起動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サーバ等の電子機器の内部を冷却するためのファン(以下、「ファンモータ」とも称する。)において、モータを駆動するための駆動回路の故障によってモータを所定の方向に回転させる(正回転させる)ことができなくなった場合に、外力が作用してモータが正回転とは反対の方向に強制的に回転する(逆回転する)おそれがある。
【0003】
例えば、ハウジング内部に複数のファンモータが設けられたサーバにおいて、一つのファンモータが故障した場合に、他のファンモータの回転によって発生した風が故障したファンモータに流入すると、その故障したファンモータが逆回転する可能性がある。サーバ内の1つのファンモータが逆回転した場合、サーバの内圧低下により冷却機能が低下し、サーバの動作に悪影響を及ぼすおそれがある。そのため、サーバ等の電子機器に搭載されるファンモータには、正回転を可能な限り継続させることが求められている。
【0004】
上述の課題を解決するために、2つの駆動系統を有するモータ駆動制御装置が知られている。例えば、特許文献1には、2系統のコイルを有するモータを駆動するためのモータ駆動制御装置において、モータの各系統のコイルを夫々独立して駆動する2つのモータ駆動回路を設けることが開示されている。このモータ駆動制御装置によれば、一方の駆動回路が故障した場合においても、他方の駆動回路を用いてモータの駆動を継続することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のような単相2系統駆動において、マイクロコントローラ(MCU)が2つのモータ駆動部に駆動指令信号を出力すると、駆動指令信号に基づきインバータ回路を駆動して、モータが回転し、2つのモータ駆動部がモータの位置・速度信号である電気角1周期当たり1パルスのFG信号をMCUに出力する。MCUは入力された2つのFG信号と極数からモータの回転数を計算し、それぞれのFG信号が異常検出時間を超えて切り替えが発生しない場合に異常として検出し、2系統の両方が異常を検出した場合をロータロック、いずれか一方が異常を検出した場合をFG故障として判定している。
【0007】
このとき、モータを停止状態から起動すると、モータ電圧が低電圧の場合や駆動指令信号が低回転数の場合、あるいは、2系統の一方のモータ駆動部が(モータ回転に伴う通電方向切替ができなくなる)ホールセンサ故障の場合、電源電圧や停止位置により、駆動力不足や駆動妨害によって、モータにホールド(保持状態)やチャタリング(往復運動)が発生し、正常状態のモータをFG故障として誤判定してしまう、あるいは、FG故障状態のモータをロータロックとして誤判定してしまい、モータの起動が安定しなくなる問題がある。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、単相2系統駆動のモータの駆動が停止した状態から駆動開始する際に、ロータロック、FG故障などの異常状態を正しく判定することによって、迅速に、かつ、安定した起動をすることができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置は、駆動指令信号に基づき、1つのモータを駆動する2系統のコイルに対応して設けられ、対応する系統のコイルに通電する制御を行う2つのモータ駆動回路と、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力する駆動制御回路と、を備え、前記駆動制御回路は、起動時に、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統のFG信号のレベル変化の回数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する一次判定を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るモータ駆動制御装置によれば、単相2系統駆動のモータの駆動が停止した状態から駆動開始する際に、異常状態を正しく判定することによって、迅速に、かつ、安定した起動をすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】検出電圧出力回路の構成例を示す回路図である。
【
図3】駆動制御回路の機能構成を示すブロック図である。
【
図5A】PWM信号をオンし、ゲート遮断しない場合のインバータ回路における第1の通電状態を模式的に示す回路図である。
【
図5B】PWM信号をオンし、ゲート遮断しない場合のインバータ回路における第2の通電状態を模式的に示す回路図である。
【
図6A】PWM信号をオフし、ゲート遮断しない場合のインバータ回路における第1の通電状態を模式的に示す回路図である。
【
図6B】PWM信号をオフし、ゲート遮断しない場合のインバータ回路における第2の通電状態を模式的に示す回路図である。
【
図7A】PWM信号をオフし、ゲート遮断する場合のインバータ回路における第1の通電状態を模式的に示す回路図である。
【
図7B】PWM信号をオフし、ゲート遮断する場合のインバータ回路における第2の通電状態を模式的に示す回路図である。
【
図8】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける判定シーケンスを示す図である。
【
図9】一次判定における2系統起動モードでの判定条件の概要を示す図である。
【
図10】一次判定における第1系統起動モードでの判定条件の概要を示す図である。
【
図11】一次判定における第2系統起動モードでの判定条件の概要を示す図である。
【
図12】二次判定における各回転待ちモードでの判定条件の概要を示す図である。
【
図13】各駆動モードにおける各系統の駆動および検出状態を示す図である。
【
図14】2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図15】ロータロックモードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図16】第2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図17】第1系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図18】第1系統のチャタリングを経て2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図19】第2系統のチャタリングを経て2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図20】惰性回転を経て2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
【
図21】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける電源投入時の処理流れの一例を示すフローチャートである。
【
図22】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおけるロータロック判定時の処理流れの一例を示すフローチャートである。
【
図23】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける2系統起動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図24】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける2系統回転待ちモード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図25】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける2系統駆動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図26】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第1系統起動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図27】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第1系統回転待ちモード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図28】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第1系統駆動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図29】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第2系統起動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図30】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第2系統回転待ちモード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【
図31】本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第2系統駆動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。なお、以下の説明では、一例として、発明の構成要素に対応する図面上の参照符号を、括弧を付して記載している。
【0013】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ駆動制御装置(1)は、駆動指令信号に基づき、1つのモータを駆動する2系統のコイルに対応して設けられ、対応する系統のコイルに通電する制御を行う2つのモータ駆動回路と、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力する駆動制御回路と、を備え、前記駆動制御回路は、起動時に、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統のFG信号のレベル変化の回数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する一次判定を行うことを特徴とする。
【0014】
〔2〕上記〔1〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御回路は、前記一次判定の判定結果に応じて、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果と、前記FG信号のレベル毎の時間から計算される前記モータの回転数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する二次判定を行うこととしてもよい。
【0015】
〔3〕上記〔2〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力して前記一次判定を行い、前記一次判定にて2系統とも異常が無いと判定した場合は、前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力して前記二次判定を行うこととしてもよい。
【0016】
〔4〕上記〔2〕または〔3〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御回路は、前記モータの駆動中において、前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数を検出し、前記レベル変化の回数差に基づきFG故障の有無を判定する三次判定を行うこととしてもよい。
【0017】
〔5〕上記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御回路は、起動時において、前記一次判定を行う前に、前記2つのモータ駆動回路の両方から入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果および前記FG信号のレベル毎の時間から計算される前記モータの回転数の検出結果から前記モータの空転状態が検出され、かつ、前記モータの回転数が所定の最小回転数以上であった場合、前記一次判定は行わず、前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力して、2系統駆動を開始することとしてもよい。
【0018】
〔6〕上記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御回路は、前記一次判定として、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果に基づく各系統の異常有無の判定と、当該判定にて少なくとも1つのモータ駆動回路が異常であるとした場合に、その判定結果に応じて、一方のモータ駆動回路の動作を可能にし、他方のモータ駆動回路の動作を停止して、 前記一方のモータ駆動回路から入力される前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果の基づく各系統の異常有無の判定と、を行うこととしてもよい。
【0019】
〔7〕上記〔1〕から〔4〕および〔6〕のいずれかに記載のモータ駆動制御装置において、前記2つのモータ駆動回路は、夫々、前記駆動制御回路から入力された前記駆動指令信号と前記モータの回転に応じて生成された位置検出信号とに基づいて駆動制御信号を生成するとともに、前記モータの実回転数に対応する周波数を有するFG信号を前記駆動制御回路に出力するインバータ制御回路と、前記駆動制御信号に基づいて前記コイルを駆動するインバータ回路と、前記駆動制御回路からの制御に応じて、前記インバータ制御回路から前記インバータ回路への前記駆動制御信号の入力と遮断を切り替える信号遮断回路とを有し、前記駆動制御回路は、前記一次判定として、前記2つのモータ駆動回路の両方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果に基づく各系統の異常有無の判定と、前記判定にて少なくとも1つのモータ駆動回路が異常であるとした場合に、その判定結果に応じて、前記2つのモータ駆動回路の一方の前記信号遮断回路を制御して、一方の系統の前記インバータ制御回路から前記インバータ回路への前記駆動制御信号の入力を可能にし、他方の系統の前記インバータ制御回路から前記インバータ回路への前記駆動制御信号の入力を停止して、前記一方の系統から入力される前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果に基づく各系統の異常有無の判定とを行うこととしてもよい。
【0020】
〔8〕上記〔4〕および〔4〕を引用する〔6〕から〔7〕までのいずれかに記載のモータ駆動制御装置において、前記駆動制御回路は、前記一次判定と前記二次判定と前記三次判定とを順次行う異常判定部と、前記一次判定および前記二次判定の判定結果に応じて、前記2つのモータ駆動回路のうちの少なくとも1系統に前記駆動指令信号を生成する駆動指令信号生成部と、を有し、前記駆動指令信号生成部は、前記2つのモータ駆動回路の両方を駆動する2系統駆動と、前記2つのモータ駆動回路のうちの第1系統のモータ駆動回路を駆動する第1系統駆動と、前記2つのモータ駆動回路のうちの第2系統のモータ駆動回路を駆動する第2系統駆動とのいずれかに対応する前記駆動指令信号を出力し、前記起動時の前記一次判定では、前記2系統駆動で動作する2系統起動モードと、前記第1系統駆動で動作する第1系統起動モードと、前記第2系統駆動で動作する第2系統起動モードとに対応し、前記一次判定の後の前記二次判定では、一次判定の判定結果に応じて、前記2系統駆動で動作する2系統回転待ちモードと、前記第1系統駆動で動作する第1系統回転待ちモードと、前記第2系統駆動で動作する第2系統回転待ちモードとのいずれかに対応し、前記二次判定の後の駆動時には、前記二次判定の判定結果に応じて、前記2系統駆動で動作する2系統駆動モードと、前記第1系統駆動で動作する第1系統駆動モードと、前記第2系統駆動で動作する第2系統駆動モードとのいずれかに対応し、前記一次判定または二次判定後には、モードの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成することとしてもよい。
【0021】
〔9〕上記〔8〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記異常判定部は、前記2系統起動モードにおいて、所定期間における各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数に基づき、2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達しない場合にロータロック仮判定とし、第1系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第1系統正常仮判定とし、第2系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統正常仮判定とし、2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に2系統正常仮判定とする、判定結果を生成し、前記駆動指令信号生成部は、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記ロータロック仮判定に基づく前記第1系統起動モードと、前記第1系統正常仮判定に基づく前記第1系統起動モードと、前記第2系統正常仮判定に基づく前記第2系統起動モードと、前記2系統正常仮判定に基づく前記2系統回転待ちモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成することとしてもよい。
【0022】
〔10〕上記〔9〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記異常判定部は、前記第1系統起動モードにおいて、所定期間における第1系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に前記第1系統正常仮判定とし、前記ロータロック仮判定に基づく前記第1系統起動モードにおいて、所定期間における第1系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数が所定数に達しない場合に前記ロータロック仮判定とし、前記第1系統正常仮判定に基づく前記第1系統起動モードにおいて、所定期間における第1系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数が所定数に達しない場合に第1系統FG故障仮判定とする、判定結果を生成し、前記駆動指令信号生成部は、前記第1系統起動モードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第1系統正常仮判定に基づく前記第1系統回転待ちモードと、前記ロータロック仮判定に基づく前記第2系統起動モードと、前記第1系統FG故障仮判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成することとしてもよい。
【0023】
〔11〕上記〔8〕に記載のモータ駆動制御装置において、前記異常判定部は、前記第2系統起動モードにおいて、所定期間における第2系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統正常仮判定とし、前記レベル変化の回数が所定数に達しない場合にロータロック判定または第2系統FG故障仮判定とする、判定結果を生成し、前記駆動指令信号生成部は、前記第2系統起動モードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第2系統正常仮判定に基づく前記第2系統回転待ちモードと、前記ロータロック判定または前記第2系統FG故障仮判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成することとしてもよい。
【0024】
〔12〕上記〔8〕から〔11〕のいずれかに記載のモータ駆動制御装置において、前記異常判定部は、前記2系統回転待ちモードにおいて、前記FG信号に基づく前記モータの回転数と所定期間における各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数に基づき、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第1系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統FG故障仮判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第2系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第1系統FG故障仮判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に2系統正常判定とし、前記回転数が最小回転数に達しない場合にロータロック判定とする、判定結果を生成し、前記駆動指令信号生成部は、前記2系統回転待ちモードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第2系統FG故障仮判定に基づく前記第1系統駆動モードまたは前記ロータロックモードと、前記第1系統FG故障仮判定に基づく前記第2系統駆動モードまたは前記ロータロックモードと、前記2系統正常判定に基づく前記2系統駆動モードと、前記ロータロック判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成することとしてもよい。
【0025】
〔13〕上記〔8〕から〔11〕のいずれかに記載のモータ駆動制御装置において、前記異常判定部は、前記第1系統回転待ちモードにおいて、前記FG信号に基づく前記モータの回転数と所定期間における各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数に基づき、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第1系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統FG故障判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第2系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第1系統FG故障仮判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に2系統正常判定とし、前記回転数が最小回転数に達しない場合にロータロック判定とする、判定結果を生成し、前記駆動指令信号生成部は、前記第1系統回転待ちモードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第2系統FG故障判定に基づく前記第1系統駆動モードと、前記第1系統FG故障仮判定に基づく前記ロータロックモードと、2系統正常判定に基づく前記2系統駆動モードと、前記ロータロック判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成することとしてもよい。
【0026】
〔14〕上記〔8〕から〔11〕のいずれかに記載のモータ駆動制御装置において、前記異常判定部は、前記第2系統回転待ちモードにおいて、前記FG信号に基づく前記モータの回転数と所定期間における各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数に基づき、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第1系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第2系統FG故障仮判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ第2系統のみ前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に第1系統FG故障判定とし、前記回転数が最小回転数に達し、かつ2系統ともに前記レベル変化の回数が所定数に達した場合に2系統正常判定とし、前記回転数が最小回転数に達しない場合にロータロック判定とする、判定結果を生成し、前記駆動指令信号生成部は、前記第2系統回転待ちモードにおいて、前記異常判定部において生成された判定結果に応じて、前記第2系統FG故障仮判定に基づく前記ロータロックモードと、前記第1系統FG故障判定に基づく前記第2系統駆動モードと、前記2系統正常判定に基づく前記2系統駆動モードと、前記ロータロック判定に基づく前記ロータロックモードとのいずれかの動作モードに対応する前記駆動指令信号を生成することとしてもよい。
【0027】
〔15〕本発明の代表的な実施の形態に係るファンユニットは、上記〔1〕から〔14〕のいずれかに記載のモータ駆動制御装置と、前記モータと、前記モータの回転力によって回転するインペラと、を備えることを特徴とする。
【0028】
〔16〕本発明の代表的な実施の形態に係るモータ起動制御方法は、駆動指令信号に基づき、1つのモータを駆動する2系統のコイルに対応して設けられ、対応する系統のコイルに通電する制御を行う2つのモータ駆動回路と、前記2つのモータ駆動回路に前記駆動指令信号を出力する駆動制御回路と、を備えるモータ駆動制御装置によるモータ起動制御方法であって、前記駆動制御回路が起動時に前記モータを制御するステップとして、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統のFG信号のレベル変化の回数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する一次判定ステップと、前記一次判定ステップの判定結果に応じて、前記2つのモータ駆動回路の少なくとも一方に前記駆動指令信号を出力したときに入力される各系統の前記FG信号の前記レベル変化の回数の検出結果と、前記FG信号のレベル毎の時間から計算される回転数の検出結果に基づきから各系統の異常有無を判定する二次判定ステップとを含むことを特徴とする。
【0029】
2.実施の形態の具体例
以下、本発明の実施の形態の具体例について図を参照して説明する。なお、以下の説明において、各実施の形態において共通する構成要素には同一の参照符号を付し、繰り返しの説明を省略する。
【0030】
図1は、実施の形態に係るモータ駆動制御システムの構成を示す図である。
【0031】
図1に示されるモータ駆動制御システム100は、駆動対象の負荷としてのモータ3と、モータ3を駆動するモータ駆動制御装置1と、モータ駆動制御装置1を制御する上位装置2とを備えている。
【0032】
モータ駆動制御システム100は、例えば、電気機器システムに用いられ、複数のファンの動作を1つの制御装置によって制御して、複数の冷却対象のそれぞれに対して送風するファンシステムを構成している。本実施の形態に係るモータ駆動制御システム100は、例えば、サーバ内の閉ざされた空間に配置されて、当該サーバを構成する各種の電子部品等を冷却する冷却システムを構成している。
【0033】
例えば、モータ3の出力軸(図示せず)には、インペラ(羽根車)4が接続されており、モータ3とインペラ4とは、モータ3の回転力によってインペラ4を回転させて風を発生させる一つのファン(ファンモータ)5を構成している。
【0034】
ファン5とモータ駆動制御装置1とは、一つのファンユニット101を構成している。なお、
図1には、一例として、一つのファンユニット101のみが図示されているが、モータ駆動制御システム100が備えるファンユニット101の個数は特に制限されない。
【0035】
上位装置2(ホストデバイス)は、例えば、ファン5を搭載したサーバ内のCPU等のプログラム処理装置である。上位装置2は、モータ駆動制御装置1に速度指令信号Scを出力することにより、モータ駆動制御装置1を介してモータ3の回転を制御するとともに、モータ駆動制御装置1からモータ3(ファン5)の駆動状態に関するモータ駆動情報信号Soを取得してモータ3(ファン5)の動作を監視する。
【0036】
速度指令信号Scは、モータ3の駆動に関する指令を含む信号である。速度指令信号Scは、例えば、モータ3の目標回転速度(目標回転数)を指示する指令を含む。例えば、速度指令信号Scは、モータ3の目標回転速度に対応したデューティ比のPWM(パルス幅変調)信号である。なお、速度指令信号Scは、目標回転速度に対応する周波数を有するPFM信号やモータのトルクの目標値を示すトルク指令信号等、他の形式の信号であってもよい。
【0037】
モータ3は、例えば、ブラシレスDCモータである。例えば、モータ3は、ティース(図示せず)に巻回された2系統のコイル(巻線)6_1,6_2を備えた単相のブラシレスモータである。コイル6_1,6_2の周辺には、それぞれ位置検出器7_1,7_2が設けられている。
【0038】
位置検出器7_1,7_2は、モータ3のロータの位置に応じて位置検出信号をそれぞれ出力する装置である。位置検出器7_1,7_2は、例えば、ロータの磁石の磁束に応じた信号を出力するホール素子をそれぞれ含んで構成されている。それぞれのホール素子は、位置検出信号として、位相が互いに異なる2つの信号を出力する。例えば、正の極性を有するホール信号Vhpと負の極性を有するホール信号Vhnをそれぞれ出力する。
【0039】
位置検出器7_1は、コイル6_1に対応する位置に配置され、後述するモータ駆動回路10_1のインバータ制御回路11_1にホール信号(位置検出信号)Vhp,Vhnを出力する。同様に、位置検出器7_2は、コイル6_2に対応する位置に配置され、後述するモータ駆動回路10_2のインバータ制御回路11_2にホール信号(位置検出信号)Vhp,Vhnを出力する。
このとき、位置検出器7_1と位置検出器7_2は、例えば、相対位置が電気角でπ/2(90度)になる位置に配置される。
【0040】
モータ駆動制御装置1は、モータ3の回転を制御するための装置である。モータ駆動制御装置1は、モータ3を構成する単相の2系統のコイル6_1,6_2にインバータ回路12_1,12_2を経由して周期的に駆動電流を流すことで、モータ3を回転させる。
【0041】
モータ駆動制御装置1には、外部から直流の電源電圧Vdcが供給され、電源電圧Vdcによってモータ駆動制御装置1内の回路が動作可能に構成されている。
【0042】
モータ駆動制御装置1は、上位装置2から出力された速度指令信号Scにしたがってモータ3を駆動する。また、モータ駆動制御装置1は、上位装置2に対して、モータ3の状態に関する情報を出力する。例えば、モータ駆動制御装置1は、モータ3の実回転速度(実回転数)に応じた合成FG信号Fgやモータ3の異常な状態を示す信号をモータ駆動情報信号Soとして上位装置2に出力する。これにより、上位装置2は、モータ3の回転状態やモータ3の異常の有無等を知ることができる。
【0043】
モータ駆動制御装置1は、例えば、モータ3の2系統のコイル6_1,6_2をそれぞれ駆動する2系統のモータ駆動回路10_1,10_2と、2系統のモータ駆動回路10_1,10_2の動作を制御する駆動制御回路20と、電源回路23と、2系統の検出電圧出力回路24_1,24_2と、報知回路25とを備えている。検出電圧出力回路24_1はコイル6_1に対応し、検出電圧出力回路24_2はコイル6_2に対応して設けられている。なお、モータ駆動制御装置1は、上述した回路に加えて、例えば、突入電流の抑制や電源の逆接続による回路の故障を防止するための保護回路等を備えていてもよい。
【0044】
モータ駆動制御装置1の電源端子Pvには、モータ3およびモータ駆動制御装置1を駆動するための主電源としての電源電圧Vdc(直流電圧)が供給される。電源電圧Vdcは、電源端子Pvから電源ラインLpに供給される。電源ラインLpは、モータ駆動回路10_1,10_2を介してモータ3を駆動するための電力を供給する電力供給経路である。
【0045】
電源回路23は、モータ駆動制御装置1内の一部の回路に供給する電源電圧を生成する回路である。電源回路23は、例えば、シリーズレギュレータやスイッチングレギュレータ等によって実現されている。電源回路23は、例えば、電源端子Pvに供給された電源電圧Vdcを降圧して直流電圧を生成し、駆動制御回路20に供給する。
【0046】
検出電圧出力回路24_1,24_2は、モータ3の巻線の断線や電圧異常等の異常な状態を検出するために用いる2系統の検出電圧Vs_1,Vs_2をそれぞれ出力する回路である。具体的には、検出電圧出力回路24_1は、コイル(巻線)6_1の中点の電圧(巻線中点電圧)Vm_1に応じた電圧を生成し、検出電圧Vs_1として出力し、検出電圧出力回路24_2は、コイル(巻線)6_2の中点の電圧(巻線中点電圧)Vm_2に応じた電圧を生成し、検出電圧Vs_2として出力する。以下、検出電圧Vs_1,Vs_2を「巻線中点検出電圧Vs」とも表記する。なお、コイル6_1、6_2の巻線中点電圧Vm_1,Vm_2の詳細については後述する。
【0047】
図2は、第1系統の検出電圧出力回路24_1の構成例を示す図である。なお、第2系統の検出電圧出力回路24_2も、
図3に示す検出電圧出力回路24_1と同様に構成されているので、ここでは、検出電圧出力回路24_1のみ説明し、検出電圧出力回路24_2の説明を省略する。
【0048】
図2に示すように、検出電圧出力回路24_1は、例えば、分圧回路240と、抵抗R21およびキャパシタC21と、整流素子D21とを含む。分圧回路240は、入力端子Pm1_1から入力するコイル6_1の巻線中点電圧Vm_1を分圧して出力する回路である。分圧回路240は、例えば、コイル6_1としての巻線の中点と基準電位としてのグラウンド電位(GND)との間に直列に接続された2つの抵抗Ra1,Rb1を含んで構成されている。検出電圧出力回路24_1は、抵抗Ra1,Rb1に基づく分圧比に基づいてコイル6_1の巻線中点電圧Vm_1を分圧し、整流素子D21を介して巻線中点検出電圧Vs_1として出力端子Pm2_1から出力する。検出電圧出力回路24_1から出力された巻線中点検出電圧Vs_1は、駆動制御回路20に入力される。
【0049】
巻線中点検出電圧Vs_1はキャパシタC21により保持される。キャパシタC21は、インバータ回路12_1のスイッチング(オンデューティ)により、分圧回路240から整流素子D21を経由して充電され、抵抗R21により放電される。このとき、整流素子D21により、インバータ回路12_1のスイッチング(オフデューティ)による放電が、キャパシタC21に影響しないことを利用して、キャパシタC21の充電速度が放電速度より速くなるよう調整する。
【0050】
報知回路25は、駆動制御回路20によってモータ3の異常が検出された場合に、その旨を外部に報知するための回路である。報知回路25は、例えば、
図1に示すように、制御端子が駆動制御回路20の信号出力端子P3に接続されるとともに、駆動制御回路20の出力端子P2から出力されるモータ駆動情報信号Soを上位装置2に伝達するための信号線とグラウンド電位(GND)との間に接続されたスイッチ素子(例えば、バイポーラトランジスタ)Qcを含んで構成されている。
【0051】
駆動制御回路20は、モータ駆動制御装置1の動作を統括的に制御する回路である。駆動制御回路20は、電源回路23から電源電圧が供給されることによって動作する。本実施の形態において、駆動制御回路20は、例えば、CPU等のプロセッサと、RAM,ROM、フラッシュメモリ等の各種記憶装置と、カウンタ(タイマ)、A/D変換回路、クロック発生回路、および入出力インターフェース回路等の周辺回路とがバスや専用線を介して互いに接続された構成を有するプログラム処理装置であり、例えば、マイクロコントローラ(MCU:Micro Controller Unit)である。
【0052】
本実施の形態において、駆動制御回路20は、一つの半導体装置(IC:Integrated Circuit)としてパッケージ化されているが、これに限られるものではない。
【0053】
駆動制御回路20は、外部(上位装置2や2系統のモータ駆動回路10_1,10_2等)との間で信号の送受信を行うための複数の外部端子を有している。
図1には、複数の外部端子の一例として、電源電圧が供給される電源端子VDD、入力端子P1、出力端子P2、信号出力端子P3,P4,P5,P6,P7、信号入力端子P8,P9,P10,P11が参照符号とともに図示されている。
【0054】
図3は、駆動制御回路20の機能構成を示すブロック図である。
【0055】
駆動制御回路20は、主たる機能として、モータ駆動回路10_1,10_2の動作を制御する駆動制御機能と、ロータロックや、2系統のモータ駆動回路10_1,10_2における異常の有無を判定する異常判定機能とを有している。具体的には、
図3に示すように、駆動制御回路20は、上記機能の実現するための機能部として、状態制御部21および監視部22を有している。
【0056】
状態制御部21は、さらに、速度指令デューティ比算出部211と、動作態様制御部212と、駆動指令デューティ比出力部213と、第1系統駆動指令信号生成部214と、第2系統駆動指令信号生成部215とを有している。
【0057】
監視部22は、さらに、第1系統FG信号測定部221と、第2系統FG信号測定部222と、回転数測定部223と、異常判定部224と、FG信号生成部225と、測定選択部226と、電圧測定部227とを有している。
【0058】
状態制御部21および監視部22におけるそれぞれの構成は、例えば、駆動制御回路20を構成するプログラム処理装置において、プロセッサが、メモリに記憶されたプログラムに従って各種演算処理を実行するとともに、カウンタ,信号キャプチャやA/D変換回路等の周辺回路を制御することによって実現される。
【0059】
監視部22は、モータ3(ファン5)およびの各系統における動作状態を監視する機能部である。監視部22では、モータ3および2系統のモータ駆動回路10_1,10_2における異常の有無を判定するとともに、回転数を測定し、上位装置2へ送るFG信号を生成する。具体的には、2系統のモータ駆動回路10_1,10_2から信号入力端子P8,P9に入力されるFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化に基づいて、回転数と判定結果とを生成するとともに、FG信号Fg_1,Fg_2を合成した合成FG信号Fgを生成する。生成した回転数と判定結果とは、状態制御部21に渡し、合成FG信号Fgは、出力端子P2から出力し、上位装置2に入力される。なお、監視部22では、検出電圧出力回路24_1,24_2から信号入力端子P10,P11に入力される巻線中点検出電圧Vs_1,Vs_2に基づいて、モータ3の異常の検出も行う。
【0060】
ここで、FG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化とは、例えば、FG信号Fg_1,Fg_2が「ハイ」レベルである状態と「ロー」レベルである状態との2つの状態に変化することをいう。レベル変化に基づいて判定をするとは、FG信号Fg_1,Fg_2の状態の変化の回数と、状態毎の時間などを検出して判定する概念を含む。この実施の形態では、FG信号Fg_1,Fg_2が「ハイ」レベルである状態と「ロー」レベルである状態との間で変化をしたか否かの回数によって一次判定における判定をし、二次判定では、これに加えて、状態毎の時間から算出される回転数を検出して、判定している。
【0061】
第1系統FG信号測定部221は、第1系統のモータ駆動回路10_1のインバータ制御回路11_1からFG信号Fg_1を受け取って、FG信号Fg_1のレベルの変化からFG信号Fg_1のレベル変化の回数とレベル毎の時間を測定し、モータ3の回転数を検出する。
【0062】
第2系統FG信号測定部222は、第2系統のモータ駆動回路10_2のインバータ制御回路11_2からFG信号Fg_2を受け取って、FG信号Fg_2のレベルの変化からFG信号Fg_2のレベル変化の回数とレベル毎の時間を測定し、モータ3の回転数を検出する。
【0063】
回転数測定部223は、第1系統FG信号測定部221で測定したFG信号Fg_1と、第2系統FG信号測定部222で測定したFG信号Fg_2とのレベル毎の時間からモータ3の回転数を算出する。FG信号Fg_1,Fg_2は、それぞれの系統における磁極の変化に応じて、電気角1周期当たりに1パルスの変化をする信号である。
【0064】
具体的には、監視部22が有する経過タイマにより、各系統のFG信号測定部221,222が測定した、FG信号Fg_1,Fg_2のレベルが変化したときに経過タイマにおいて計時された時間であるFG切替時間(例:t1,t2)を、回転数測定部223が利用する。経過タイマとは、予め決められた時間で定期的にカウントアップし、上限でフラグをセットして循環するカウンタで、いわゆる時計として動作する。回転数測定部223は、直前にFG信号のレベルが変化した系統と、今回のFG信号のレベルが変化した系統との関係から電気角の周期を特定する。ここで、電気角の周期は、同じ系統が続いた場合(例:t1a→t1bまたはt2a→t2b)は電気角の1/2周期とし、別の系統に切り替わった場合(例:t1a→t2a、t2a→t1bおよびt1b→t2b)は電気角の1/4周期として特定する。回転数測定部223は、また、経過タイマの直前のFG切替時間(例:txa、ここでxは1または2となってFG信号の系統を表し、aはFG信号の立ち上がりであることを表す。)と経過タイマの今回のFG切替時間(例:txb、ここでxは1または2となってFG信号の系統を表し、bはFG信号の立ち下がりであることを表す)から2つのFG切替時間が発生した期間(例:txb-txa)を算出する。回転数測定部223は、さらに、経過タイマで2つのFG切替時間が発生した期間に、特定した電気角の周期とモータ3の極数を利用して、回転数として計算する。このとき、片側の系統がFG故障として判定された第1系統駆動モードや第2系統駆動モードの場合、故障側の系統からのFG信号のレベルが変化した時間を利用しなくてもよい。
【0065】
異常判定部224は、一次判定と二次判定と三次判定との複数の段階で各系統の異常判定を実行する。異常判定部224は、一次判定と二次判定と三次判定とを順次行う。
【0066】
監視部22は、FG待機時間や回転待機時間を計時するための待機タイマ、拘束保護時間を計時するための拘束保護タイマ、各系統のFG切替時間やFG切替時間からの閾値時間を計時するための経過タイマを有しており、異常判定部224は、各判定において、必要に応じてタイマの計時を利用しながら判定を行う。待機タイマのFG待機時間とは、一次判定に要する時間である。待機タイマの回転待機時間とは、二次判定に要する時間である。経過タイマのFG切替時間からの閾値時間とは、例えば、t1a→t1bやt2a→t2bが閾値時間内に発生しないことから、モータ3の回転数をゼロとして扱う時間である。拘束保護時間とは、ロータロックが解除されるまでの時間である。
【0067】
異常判定部224は、一次判定では、起動時に、2系統のモータ駆動回路10_1,10_2の少なくとも一方に駆動指令信号Sca(Sca_1,Sca_2)を出力したときに入力される各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する。
【0068】
異常判定部224は、二次判定では、一次判定の判定結果に応じて、2系統のモータ駆動回路10_1,10_2の少なくとも一方に駆動指令信号Sca(Sca_1,Sca_2)を出力したときに入力される各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数の検出結果と、FG信号Fg_1,Fg_2のレベル毎の時間から計算される回転数の検出結果に基づき各系統の異常有無を判定する。
【0069】
異常判定部224は、三次判定では、モータ3の駆動中において、2系統のモータ駆動回路10_1,10_2の両方に駆動指令信号Sca_1,Sca_2をそれぞれ出力したときに入力される各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数を検出し、2系統のFG信号Fg_1,Fg_2におけるレベル変化の回数差に基づきFG故障の有無を判定する。三次判定は、二次判定の終了後に実行される判定である。
【0070】
異常判定部224は、起動時において、一次判定を行う前に、2系統のモータ駆動回路10_1,10_2の両方に駆動指令信号Sca_1,Sca_2をそれぞれ出力したときに入力される各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数の検出結果およびFG信号Fg_1,Fg_2のレベル毎の時間から計算される回転数の検出結果からモータ3の空転状態を検出してもよい。空転状態とは、駆動していないにもかかわらず、モータ3が回転している状態である。異常判定部224は、モータ3が空転状態であることを検出し、かつモータ3の回転数が所定の最小回転数以上であった場合は、一次判定は行わないこととする。
【0071】
異常判定部224における判定の詳細については、後述する。
【0072】
FG信号生成部225は、上位装置2へ出力する合成FG信号Fgを生成する。
【0073】
測定選択部226は、巻線中点検出電圧Vs_1,Vs_2の何れか一方の測定を選択する。
【0074】
電圧測定部227は、測定することを選択された巻線中点検出電圧Vs_1,Vs_2を測定して、測定した値を異常判定部224に入力する。
【0075】
状態制御部21では、上位装置2から入力端子P1に入力する速度指令信号Scと、監視部22から受け取る回転数や判定結果とに基づいて、モータ3の駆動を指示する第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2とを適宜生成して、信号出力端子P6、P7から出力する。出力した駆動指令信号Sca_1,Sca_2は、モータ駆動回路10_1,10_2に入力される。
【0076】
ここで、駆動指令信号Sca_1,Sca_2は、上述した速度指令信号Scと同様に、モータ3の目標回転速度(目標回転数)を指示する指令を含み、例えば、モータ3の目標回転速度に対応したデューティ比を有するPWM信号である。
【0077】
状態制御部21は、モータ3の回転の停止を指示する場合には、例えば、デューティ比が0%の駆動指令信号Sca_1,Sca_2を出力し、設定可能な最大回転速度でモータ3を回転させるように指示する場合には、デューティ比が100%の駆動指令信号Sca_1,Sca_2を出力する。このように、駆動制御回路20は、駆動指令信号Sca_1,Sca_2のデューティ比を変えることによって、モータ3の制御内容をモータ駆動回路10_1,10_2に指示する。
【0078】
状態制御部21において、速度指令デューティ比算出部211は、上位装置2から入力する速度指令信号Scとモータ3の回転数とから速度指令デューティを算出する。
【0079】
動作態様制御部212は、監視部22から受け取る判定結果に基づいて、動作モード(起動モード,回転待ちモード,駆動モード),動作系統(2系統,第1系統,第2系統)を決定するとともに各種フラグの設定を行う。
【0080】
本実施の形態で設定するフラグとしては、「ロータロック仮判定フラグ」、「ロータロックフラグ」、「第1系統故障フラグ」、「第2系統故障フラグ」などを含んでいるが、これに限定されない。
【0081】
動作態様制御部212は、監視部22から受け取る判定結果に応じたフラグを設定する。動作態様制御部212は、現在の動作モードと設定したフラグとに応じた動作モードで駆動指令デューティ比出力部213が動作するように制御する。動作モードについては、後述する。
【0082】
駆動指令デューティ比出力部213は、決定された動作モードに基づいて、第1系統駆動指令信号生成部214と第2系統駆動指令信号生成部215とに対して、適宜、駆動指令デューティ比を出力する。駆動指令デューティ比は、決定された動作モードに応じたデューティであり、速度指令デューティとゼロデューティとのいずれかのデューティである。速度指令デューティは、速度指令信号Scから算出されたデューティ比である。ゼロデューティは、待機時やロータロック時に用いられるデューティ比である。故障時は予め決められたデューティ比である故障デューティを使用してもよい。
【0083】
駆動指令デューティ比出力部213は、決定された動作モードに基づいて、第1系統駆動指令信号生成部214と第2系統駆動指令信号生成部215とに対して、適宜、駆動制御信号の入力と遮断を切り替える制御信号St_1,St_2の生成指示を行う。
【0084】
状態制御部21において、第1系統駆動指令信号生成部214および第2系統駆動指令信号生成部215は、駆動指令デューティ比出力部213から受け取った駆動指令デューティ比に基づいて、第1系統の駆動指令信号Sca_1や第2系統の駆動指令信号Sca_2をそれぞれ生成する。このとき、駆動指令デューティ比出力部213から受け取った制御信号St_1,St_2の生成指示に基づいて、制御信号St_1,St_2を生成する。
【0085】
第1系統駆動指令信号生成部214は、生成した第1系統の駆動指令信号Sca_1を、信号出力端子P6から出力し、第2系統駆動指令信号生成部215は、生成した第2系統の駆動指令信号Sca_2を、信号出力端子P7から出力する。駆動指令信号Sca_1は、第1系統のモータ駆動回路10_1に入力される。同様に、駆動指令信号Sca_2は、第2系統のモータ駆動回路10_2に入力される。第1系統駆動指令信号生成部214や第2系統駆動指令信号生成部215から出力された制御信号St_1,St_2は、信号遮断回路13_1,13_2にそれぞれ入力される。
【0086】
なお、駆動指令信号Sca_1,Sca_2は、例えば、目標回転速度に対応する周波数のPFM信号など、他の形式の信号であってもよい。
【0087】
モータ駆動回路10_1,10_2は、それぞれ、駆動指令信号Sca_1,Sca_2に基づいてモータ3に通電する制御を行う回路である。モータ駆動回路10_1,10_2は、電源ラインLpから電力(電源電圧Vdc)が供給されることにより、動作可能に構成されている。
【0088】
第1系統のモータ駆動回路10_1は、例えば、インバータ制御回路11_1と、インバータ制御回路11_1による制御に基づいてコイル6_1に通電するインバータ回路12_1と、信号遮断回路13_1とを有している。同様に、第2系統のモータ駆動回路10_2は、例えば、インバータ制御回路11_2と、インバータ制御回路11_2による制御に基づいてコイル6_2に通電するインバータ回路12_2と、信号遮断回路13_2とを有している。
【0089】
第1系統のモータ駆動回路10_1は、一端が電源ラインLpに接続されたヒューズF1を有している。第1系統のモータ駆動回路10_1を構成するインバータ回路12_1およびインバータ制御回路11_1の電源端子VCCには、電源ラインLpからヒューズF1を介して電源電圧Vdcが供給される。同様に、第2系統のモータ駆動回路10_2は、一端が電源ラインLpに接続されたヒューズF2を有している。第2系統のモータ駆動回路10_2を構成するインバータ回路12_2、およびインバータ制御回路11_2の電源端子VCCには、電源ラインLpからヒューズF2を介して電源電圧Vdcが供給される。
【0090】
インバータ制御回路11_1,11_2は、いずれも、例えば、市販のモータ駆動制御用の汎用IC(integrated circuit)を用いて実現されている。なお、インバータ制御回路11_1,11_2は、汎用ICによる構成に限定されず、例えば、マイクロコントローラ(MCU)によって構成してもよい。
【0091】
第1系統のインバータ回路12_1は、インバータ制御回路11_1から出力された第1駆動制御信号Sda_1および第2駆動制御信号Sdb_1に基づいて、負荷駆動端子16_1,17_1に接続されたモータ3のコイル6_1を駆動する。同様に、第2系統のインバータ回路12_2は、インバータ制御回路11_2から出力された第1駆動制御信号Sda_2および第2駆動制御信号Sdb_2に基づいて、負荷駆動端子16_2,17_2に接続されたモータ3のコイル6_2を駆動する。第1駆動制御信号Sda_1、Sda_2および第2駆動制御信号Sdb_1,Sdb_2の詳細については後述する。
【0092】
インバータ回路12_1,12_2は、例えば、複数のスイッチ素子としてのトランジスタを含むHブリッジ回路である。具体的には、第1系統のインバータ回路12_1と第2系統のインバータ回路12_2は、電源電圧Vdcが供給される電源ラインLpとグラウンド電位(GND)との間に互いに並列に接続されている。第1系統のインバータ回路12_1は、電源ラインLpとグラウンド電位との間に直列に接続され、第1駆動制御信号Sda_1に基づいてスイッチング動作を行うハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2と第2駆動制御信号Sdb_1に基づいてスイッチング動作を行うローサイドのスイッチ素子Q3,Q4とを有する。また、第2系統のインバータ回路12_2は、電源ラインLpとグラウンド電位との間に直列に接続され、第1駆動制御信号Sda_2に基づいてスイッチング動作を行うハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2と第2駆動制御信号Sdb_2に基づいてスイッチング動作を行うローサイドのスイッチ素子Q3,Q4とを有する。
【0093】
スイッチ素子Q1~Q4は、例えばトランジスタである。より具体的には、ハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2は、例えば、Pチャネル型のMOSFETであり、ローサイドのスイッチ素子Q3,Q4は、例えば、Nチャネル型のMOSFETである。なお、スイッチ素子Q1,Q3からなるスイッチングレグおよびスイッチ素子Q2,Q4からなるスイッチングレグは、
図1に示すように、電流検出用抵抗Rsを介してグラウンド電位に接続されていてもよい。
【0094】
更に、インバータ回路12_1は、負荷としてのコイル6_1を駆動するための負荷駆動端子16_1,17_1を有しており、インバータ回路12_2は、負荷としてのコイル6_2を駆動するための負荷駆動端子16_2,17_2を有している。負荷駆動端子16_1,16_2は、インバータ回路12_1,12_2のスイッチ素子Q1とスイッチ素子Q3とが共通に接続されるノードであって、それぞれ、コイル6_1,6_2の一端に接続されている。負荷駆動端子17_1,17_2は、インバータ回路12_1,12_2のスイッチ素子Q2とスイッチ素子Q4とが共通に接続されるノードであって、それぞれ、コイル6_1,6_2の他端に接続されている。
【0095】
インバータ回路12_1,12_2を構成する各スイッチ素子Q1~Q4は、インバータ制御回路11_1,11_2から出力される第1駆動制御信号Sdaおよび第2駆動制御信号Sdbによって、オン・オフが制御される。
【0096】
第1系統のインバータ制御回路11_1は、駆動制御回路20から供給される駆動指令信号Sca_1と位置検出器7_1から出力されたホール信号Vhp,Vhnに基づいて、第1駆動制御信号Sda_1および第2駆動制御信号Sdb_1を生成し、インバータ回路12_1を駆動する。インバータ制御回路11_1は、生成した第1駆動制御信号Sda_1および第2駆動制御信号Sdb_1を出力する出力端子Pd1~Pd4を有している。
【0097】
同様に、第2系統のインバータ制御回路11_2は、駆動制御回路20から供給される駆動指令信号Sca_2と位置検出器7_2から出力されたホール信号Vhp,Vhnに基づいて、第1駆動制御信号Sda_2および第2駆動制御信号Sdb_2を生成し、インバータ回路12_2を駆動する。インバータ制御回路11_2は、生成した第1駆動制御信号Sda_2および第2駆動制御信号Sdb_2を出力する出力端子Pd1~Pd4を有している。
【0098】
具体的には、インバータ制御回路11_1は、ホール信号(位置検出信号)Vhp,Vhnに基づいてコイル6_1の通電方向を決定し、駆動制御回路20から入力された駆動指令信号Sca_1に応じたデューティ比を有する第1駆動制御信号Sda_1と、ホール信号Vhp,Vhnに同期した第2駆動制御信号Sdb_1とをそれぞれ出力する。例えば、第1駆動制御信号Sda_1は、インバータ回路12_1のハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2の制御電極(ゲート電極)に直接供給され、第2駆動制御信号Sdb_1は、後述する信号遮断回路13_1を介してインバータ回路12_1のローサイドのスイッチ素子Q3,Q4の制御電極(ゲート電極)に供給される。
【0099】
同様に、インバータ制御回路11_2は、ホール信号(位置検出信号)Vhp,Vhnに基づいてコイル6_2の通電方向を決定し、駆動制御回路20から入力された駆動指令信号Sca_2に応じたデューティ比を有する第1駆動制御信号Sda_2と、ホール信号Vhp,Vhnに同期した第2駆動制御信号Sdb_2とをそれぞれ出力する。例えば、第1駆動制御信号Sda_2は、インバータ回路12_2のハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2の制御電極(ゲート電極)に直接供給され、第2駆動制御信号Sdb_2は、後述する信号遮断回路13_2を介してインバータ回路12_2のローサイドのスイッチ素子Q3,Q4の制御電極(ゲート電極)に供給される。
【0100】
第1系統のインバータ制御回路11_1は、ホール信号Vhp,Vhnに応じたタイミングでモータ3のコイル6_1に流れる電流の向きが交互に切り替わるように第1駆動制御信号Sda_1および第2駆動制御信号Sdb_1を生成し、コイル6_1の通電を制御する。第2系統のインバータ制御回路11_2も同様に、コイル6_2の通電を制御する。
【0101】
例えば、第1系統のインバータ制御回路11_1は、位置検出器7_1から出力されたホール信号Vhp,Vhnの切り替わりタイミングに応じて、ローサイドのスイッチ素子Q4をオンし、かつローサイドのスイッチ素子Q3をオフするように第2駆動制御信号Sdb_1を生成するとともに、ハイサイドのスイッチ素子Q2をオフし、かつハイサイドのスイッチ素子Q1をPWM駆動するように第1駆動制御信号Sda_1を生成する。また、インバータ制御回路11_1は、次のホール信号Vhp,Vhnの切り替わりタイミングに応じて、ローサイドのスイッチ素子Q3をオンし、かつローサイドのスイッチ素子Q4をオフするように第2駆動制御信号Sdb_1を生成するとともに、ハイサイドのスイッチ素子Q1をオフし、かつハイサイドのスイッチ素子Q2をPWM駆動するように第1駆動制御信号Sda_1を生成する。
【0102】
このように、第1系統のインバータ制御回路11_1は、位置検出器7_1から出力されたホール信号Vhp,Vhnの切り替わりタイミングに応じて、コイル6_1に流れる電流の向きが切り替わるように、オンさせるローサイドのスイッチ素子とPWM駆動するハイサイドのスイッチ素子を切り替える。第2系統のインバータ制御回路11_2も、同様に、位置検出器7_2から出力されたホール信号Vhp,Vhnの切り替わりタイミングに応じて、コイル6_2に流れる電流の向きが切り替わるように、オンさせるローサイドのスイッチ素子とPWM駆動するハイサイドのスイッチ素子を切り替える。
【0103】
第1系統のインバータ制御回路11_1は、更に、位置検出器7_1からのホール信号Vhp,Vhnに基づいて、モータ3の実際の回転速度(実回転速度)に対応する周波数を有する回転速度信号であるFG(Frequency Generator)信号Fg_1を生成して出力する。同様に、第2系統のインバータ制御回路11_2は、位置検出器7_2からのホール信号Vhp,Vhnに基づいて、モータ3の実際の回転速度(実回転速度)に対応する周波数を有する回転速度信号であるFG(Frequency Generator)信号Fg_2を生成して出力する。
【0104】
FG信号Fg_1,Fg_2は、例えば、所定のデューティ比を有する矩形波状の信号である。例えば、FG信号Fg_1,Fg_2は、モータ3の実回転速度に対応する周波数を有し、回転速度が一定の場合にデューティ比が50%になるように生成される2値信号(デジタル信号)である。このFG信号Fg_1,Fg_2を利用して、駆動制御回路20は、モータ3の実回転速度(実回転数)に応じた合成FG信号Fgを生成し、出力端子P2から出力する。
【0105】
信号遮断回路13_1は、駆動制御回路20から出力された制御信号St_1に応じて、インバータ制御回路11_1からインバータ回路12_1のローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への第2駆動制御信号Sdb_1の入力と遮断を切り替える回路である。
図1に示すように、信号遮断回路13_1は、インバータ制御回路11_1における第2駆動制御信号Sdb_1が出力される出力端子Pd3,Pd4とインバータ回路12_1のローサイドのスイッチ素子Q3,Q4の制御電極(ゲート電極)との間に設けられている。
【0106】
同様に、信号遮断回路13_2は、駆動制御回路20から出力された制御信号St_2に応じて、インバータ制御回路11_2からインバータ回路12_2のローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への第2駆動制御信号Sdb_2の入力と遮断を切り替える回路である。
図1に示すように、信号遮断回路13_2は、インバータ制御回路11_2における第2駆動制御信号Sdb_2が出力される出力端子Pd3,Pd4とインバータ回路12_2のローサイドのスイッチ素子Q3,Q4の制御電極(ゲート電極)との間に設けられている。
【0107】
図4は、信号遮断回路13_1の構成例を示す図である。なお、信号遮断回路13_2も、
図4に示す信号遮断回路13_1と同様に構成されているので、ここでは、信号遮断回路13_1のみ説明し、信号遮断回路13_2の説明を省略する。
【0108】
信号遮断回路13_1は、端子Ps1~Ps5を有している。端子Ps1,Ps2は、インバータ制御回路11_1の第2駆動制御信号Sdb_1が出力される出力端子Pd3,Pd4にそれぞれ接続されている。端子Ps3は、インバータ回路12_1のローサイドのスイッチ素子Q3の制御電極(ゲート電極)に接続され、端子Ps4は、インバータ回路12_1のローサイドのスイッチ素子Q4の制御電極(ゲート電極)に接続されている。端子Ps5は、駆動制御回路20の制御信号St_1が出力される信号出力端子P4に接続されている。
【0109】
図4に示すように、信号遮断回路13_1は、遮断用スイッチ素子Q11,Q12と切替用スイッチ素子Q13,Q14とを有する。遮断用スイッチ素子Q11は、インバータ制御回路11_1の出力端子Pd3とインバータ回路12_1のローサイドのスイッチ素子Q3の制御電極(ゲート電極)との間に接続されている。遮断用スイッチ素子Q12は、インバータ制御回路11_1の出力端子Pd4とインバータ回路12_1のローサイドのスイッチ素子Q4の制御電極(ゲート電極)との間に接続されている。
【0110】
遮断用スイッチ素子Q11,Q12は、例えば、PNP型のバイポーラトランジスタであり、切替用スイッチ素子Q13,Q14は、例えば、NPN型のバイポーラトランジスタである。
【0111】
切替用スイッチ素子Q13の第1主電極(例えばエミッタ電極)はグラウンド電位に接続され、切替用スイッチ素子Q13の第2主電極(例えばコレクタ電極)は遮断用スイッチ素子Q11の制御電極(ベース電極)に接続されている。切替用スイッチ素子Q14の第1主電極(例えばエミッタ電極)はグラウンド電位に接続され、切替用スイッチ素子Q14の第2主電極(例えばコレクタ電極)は遮断用スイッチ素子Q12の制御電極(ベース電極)に接続されている。
【0112】
切替用スイッチ素子Q13,Q14の制御電極(ベース電極)は、端子Ps5を介して駆動制御回路20の制御信号St_1が出力される信号出力端子P4に接続されている。
【0113】
なお、
図4に示すように、遮断用スイッチ素子Q11,Q12および切替用スイッチ素子Q13,Q14としての各トランジスタの電極には抵抗が接続されていてもよい。例えば、各トランジスタにおいて、ベース電極に抵抗が接続され、エミッタ電極とベース電極との間に抵抗が接続されていてもよい。
【0114】
信号遮断回路13_1において、遮断用スイッチ素子Q11,Q12のオン・オフの切り替えは、駆動制御回路20からの制御信号St_1によって制御される。
【0115】
例えば、制御信号St_1がハイレベルであるとき、切替用スイッチ素子Q13,Q14がオンする。これにより、遮断用スイッチ素子Q11,Q12がオンし、インバータ制御回路11_1の出力端子Pd3,Pd4から出力された第2駆動制御信号Sdbのスイッチ素子Q3,Q4の制御電極への入力が可能となる。
【0116】
一方、制御信号St_1がローレベルやハイインピーダンスであるとき、切替用スイッチ素子Q13,Q14がオフする。これにより、遮断用スイッチ素子Q11,Q12がオフし、インバータ制御回路11_1の出力端子Pd3,Pd4から出力された第2駆動制御信号Sdb_1のスイッチ素子Q3,Q4の制御電極への入力が遮断される。
【0117】
ここで、モータ3が正常な状態またはホールセンサ故障である場合におけるインバータ回路12_1、12_2の動作形態について説明する。なお、この説明では、基本的には、第1系統と第2系統との違いによる相違はない。
図5から
図7を用いた説明では、第1系統と第2系統との違いによる相違はない部分については、系統を識別するための添え字(_1,_2)を省略して表記し、第1系統と第2系統を特に区別せずに表現している。
【0118】
先ず、駆動制御回路20において、駆動指令信号Scaを出力するが、制御信号Stを出力しない制御をしたときのインバータ回路12の動作形態について説明する。この制御では、PWM信号がオンであり、かつゲート遮断がない。
【0119】
図5Aおよび
図5Bは、PWM信号がオンであり、かつゲート遮断がないときのインバータ回路12における第1の通電状態と第2の通電状態とをそれぞれ模式的に示す回路図である。
【0120】
図5Aおよび
図5Bには、信号遮断回路13によってローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への信号入力が可能な状態(信号遮断なし)において、インバータ制御回路11が駆動指令信号Scaおよびホール信号Vhp,Vhnに応じて第1駆動制御信号Sdaおよび第2駆動制御信号Sdbを出力した場合がそれぞれ示されている。
【0121】
なお、
図5Aおよび
図5Bにおいて、矢印はホール信号Vhp,Vhnに基づいたコイル6の通電方向、電流Imはインバータ回路12に流れる電流を表している。
図5Aには、電流Imがハイサイドのスイッチ素子Q1からコイル6を通ってローサイドのスイッチ素子Q4に流れる場合(通電方向:Q1→Q4)が示され、
図5Bには、電流Imがハイサイドのスイッチ素子Q2からコイル6を通ってローサイドのスイッチ素子Q3に流れる場合(通電方向:Q2→Q3)が示されている。
【0122】
例えば、モータ3が正常である場合においては、駆動指令PWM信号である第1駆動制御信号Sdaおよび第2駆動制御信号Sdbにより、コイル6に通電されると、ロータが回転してホール信号Vhp,Vhnによって通電方向が
図5Aの第1の通電状態と
図5Bの第2の通電状態との間で切替が発生して、モータ3を駆動する。
【0123】
また、ホールセンサ故障の場合においては、駆動指令PWM信号である第1駆動制御信号Sdaおよび第2駆動制御信号Sdbにより、コイル6に通電されると、ロータが回転するが、故障が発生すると、ホール信号Vhp,Vhnによって通電方向の切替が
図5Aの第1の通電状態と
図5Bの第2の通電状態との間で発生せず、一方方向の通電が維持される。その結果、モータ3に強いブレーキが発生する。
【0124】
また、この状態において、インバータ回路12の巻線中点検出電圧Vsについて考える。例えば、モータ3が正常である場合において、
図5Aに示すように、インバータ制御回路11がローサイドのスイッチ素子Q3をオフ、スイッチ素子Q4をオンし、かつハイサイドのスイッチ素子Q2をオフし、スイッチ素子Q1をPWM駆動している場合(通電方向:Q1→Q4)には、電流Imは、電源電圧VdcからヒューズF1(F2)、スイッチ素子Q1、コイル6_1(6_2)、スイッチ素子Q4を通って流れる。このとき、電流検出用抵抗Rsを十分小さい抵抗値のため無視すると、コイル6の巻線中点電圧Vmは、電源電圧(直流電圧)Vdcをコイル6の2つの抵抗成分Rc/2によって分圧した電圧、すなわち“Vm=Vdc/2”となる。この場合、検出電圧出力回路24は、コイル6の巻線中点電圧Vm(=Vdc/2)に抵抗Ra1,Rb1に基づく分圧比を乗じた大きさの巻線中点検出電圧Vs(=Vdc/2×分圧比)を出力する。
【0125】
また、
図5Bに示すように、インバータ制御回路11がローサイドのスイッチ素子Q4をオフ、スイッチ素子Q3をオンし、かつハイサイドのスイッチ素子Q1をオフし、スイッチ素子Q2をPWM駆動している場合(通電方向:Q2→Q3)には、電源電圧VdcからヒューズF1、スイッチ素子Q2、コイル6、スイッチ素子Q3を通って電流Imが流れる。このときも
図4Aの場合と同様に、コイル6の巻線中点電圧Vmは“Vdc/2”となり、検出電圧出力回路24は、コイル6の巻線中点電圧Vm(=Vdc/2)に抵抗Ra1,Rb1に基づく分圧比を乗じた大きさの巻線中点検出電圧Vs(=Vdc/2×分圧比)を出力する。
【0126】
したがって、信号遮断回路13によってローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への信号入力が可能な状態(信号遮断なし)において、モータ3が正常である場合には、巻線中点検出電圧Vsは“Vdc/2×分圧比”となる。
【0127】
次に、駆動制御回路20において、駆動指令信号Scaと制御信号Stとの両方を出力しない制御をしたときのインバータ回路12の動作形態について説明する。この制御では、PWM信号がオフであり、かつゲート遮断がない。
【0128】
図6Aおよび
図6Bは、PWM信号がオフであり、かつゲート遮断がない場合のインバータ回路12における第1の通電状態と第2の通電状態とをそれぞれ模式的に示す図である。
【0129】
図6Aおよび
図6Bには、信号遮断回路13によってローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への信号入力が可能な状態(信号遮断なし)において、インバータ制御回路11が駆動指令PWM信号である第1駆動制御信号Sdaおよび第2駆動制御信号Sdbを出力しない場合が示されている。
【0130】
インバータ制御回路11が駆動指令PWM信号である第1駆動制御信号Sdaおよび第2駆動制御信号Sdbを出力しない場合、インバータ回路12のハイサイドのスイッチ素子Q1、Q2は両方とも常にオープンになる。また、信号遮断回路13によってローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への信号入力が可能な状態(信号遮断なし)となるので、インバータ回路12のローサイドのスイッチ素子Q3,Q4側では、コイル6と位置検出器7によるスイッチ素子Q3,Q4の一方のオン状態と他方の寄生ダイオードにより還流回路が形成される。
【0131】
例えば、モータ3が正常である場合においては、ホール信号Vhp,Vhnにより、
図6Aの第1の通電状態および
図6Bの第2の通電状態との間で切替が発生する。モータ3が他力で回転されると、還流回路に対して逆方向に誘起電圧が発生するため、モータ3に弱いブレーキが発生する。モータ3が他力で継続回転されると、位置検出器7からのホール信号Vhp,Vhnによる通電方向の切替が発生するが、還流回路も逆転するため、モータ3に弱いブレーキが継続して発生する。
【0132】
ホールセンサ故障の場合においては、ホールセンサの故障により、常に、
図6Aの第1の通電状態または
図6Bの第2の通電状態とのいずれかの状態となり、切替が発生しない。モータ3が他力で回転されると、還流回路に対して逆方向または順方向に誘起電圧が発生する。還流回路に対して逆方向に誘起電圧が発生すると、モータ3に弱いブレーキが発生し、還流回路に対して順方向に誘起電圧が発生すると、モータ3にブレーキが発生しない。モータ3が他力で継続回転されると、ホールセンサの故障により、ホール信号Vhp,Vhnによる通電方向の切替が発生せず、還流回路が維持されるため、モータ3に弱いブレーキとブレーキなしが継続して発生する。
【0133】
次に、駆動制御回路20において、駆動指令信号Scaを出力しないが、制御信号Stを出力する制御をしたときのインバータ回路12の動作形態について説明する。この制御では、PWM信号がオフであり、かつゲート遮断がある。
【0134】
図7Aおよび
図7Bは、PWM信号がオフであり、かつゲート遮断がある場合のインバータ回路における第1の通電状態と第2の通電状態とをそれぞれ模式的に示す図である。
【0135】
図7Aおよび
図7Bには、信号遮断回路13によってローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への信号入力ができない状態(信号遮断あり)において、インバータ制御回路11が駆動指令PWM信号である第1駆動制御信号Sdaおよび第2駆動制御信号Sdbを出力しない場合が示されている。
【0136】
インバータ制御回路11が駆動指令PWM信号である第1駆動制御信号Sdaおよび第2駆動制御信号Sdbを出力しない場合、インバータ回路12のハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2は両方とも常にオープンになる。さらに、信号遮断回路13によってローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への信号入力ができない状態(信号遮断あり)となるので、インバータ回路12のローサイドのスイッチ素子Q3,Q4は両方とも常にオープンになる。すなわち、すべてのスイッチ素子Q1,Q2,Q3,Q4が常にオープンになり、モータ3がフリーになる。このとき、モータ3の回転に影響するブレーキは発生しない。
【0137】
例えば、モータ3が正常である場合においては、ホール信号Vhp,Vhnにより、
図7Aの第1の通電状態および
図7Bの第2の通電状態との間で切替が発生する。モータ3が他力で回転されると、ホール信号Vhp,Vhnにより、通電方向の切替が発生するが、インバータ回路12のハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2およびローサイドのスイッチ素子Q3,Q4のすべてのオープンが維持される。
【0138】
ホールセンサ故障の場合においては、ホールセンサの故障により、常に、
図7Aの第1の通電状態または
図7Bの第2の通電状態とのいずれかの状態となり、切替が発生しない。モータ3が他力で回転されると、故障によりホール信号Vhp,Vhnによる通電方向の切替が発生せず、インバータ回路12のハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2およびローサイドのスイッチ素子Q3,Q4のすべてのオープンが維持される。
【0139】
本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおいて実行される判定シーケンスについて説明する。
【0140】
図8は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける判定シーケンスを示す図である。
【0141】
本実施の形態のモータ駆動制御システムでは、一次判定、二次判定、三次判定の三段階の判定を実施する。
【0142】
一次判定には、2系統起動モードS1000と、第1系統起動モードS1100と、第2系統起動モードS2200とが含まれる。二次判定には、2系統回転待ちモードS2000と、第1系統回転待ちモードS2100と、第2系統回転待ちモードS2200とが含まれる。三次判定には、2系統駆動モードS3000と、第1系統駆動モードS3100と、第2系統駆動モードS3200とが含まれる。
【0143】
本実施の形態のモータ駆動制御システムでは、一次判定に含まれる動作モードで動作した後に、二次判定に含まれる動作モードを経て、三次判定に含まれる動作モードで動作する。
【0144】
本実施の形態のモータ駆動制御システムでは、一次判定、二次判定、三次判定の他に、ロータロックモードS4000を行なってもよい。ロータロックモードは、各動作モードにおいて、ロータロックであると判定された場合に移行されるモードである。
【0145】
一次判定、二次判定および三次判定に含まれる動作モードでは、所定の駆動状態において各系統のインバータ制御回路11_1、11_2から出力されるFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数を検出することにより、第1系統のモータ駆動回路10_1と第2系統のモータ駆動回路10_2との少なくとも一方についての異常判定を行う。
【0146】
以上で説明した判定シーケンスにおける各動作モードについて、
図9から
図13を用いて、さらに説明する。
【0147】
図9は、一次判定における2系統起動モードでの判定条件の概要を示す図である。
【0148】
図9に示す2系統起動モードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2の両方を出力してモータ3を駆動したときに、各系統のインバータ制御回路11_1,11_2から出力されるFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数を検出することにより、判定を行っている。
【0149】
図9に示すように、2系統ともFG信号Fg_1,Fg_2の切替がないと判断された場合は、ロータロック仮判定がなされて、第1系統起動モードに移行する。第1系統のFG信号Fg_1のみ切替があると判断された場合は、第1系統正常仮判定がなされて、第1系統起動モードに移行する。第2系統のFG信号Fg_2のみ切替があると判断された場合は、第2系統正常仮判定がなされて、第2系統起動モードに移行する。2系統ともFG信号Fg_1,Fg_2の切替があると判断された場合は、2系統正常仮判定がなされて、2系統回転待ちモードに移行する。
【0150】
2系統起動モードにおけるFG信号Fg_1,Fg_2の切替の有無の判断は、具体的には、所定のFG待機時間における各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数(FG切替回数)が、所定の閾値回数を超えた系統については「FG切替あり」と判断し、所定の閾値回数を超えない系統については「FG切替なし」と判断する。
【0151】
図10は、一次判定における第1系統起動モードでの判定条件の概要を示す図である。
【0152】
図10に示す第1系統起動モードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1のみを出力してモータ3を駆動したときに、第1系統のインバータ制御回路11_1から出力されるFG信号Fg_1のレベル変化の回数を検出することにより、判定を行なうことが示されている。
【0153】
図10に示すように、第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判断された場合は、第1系統正常仮判定がなされて、第1系統回転待ちモードに移行する。第1系統のFG信号Fg_1の切替がないと判断された場合は、ロータロック仮判定フラグを確認して、ロータロック仮判定フラグがセットされていたときは、ロータロック仮判定がなされて、第2系統起動モードに移行する。また、ロータロック仮判定フラグを確認して、ロータロック仮判定フラグがセットされていない(クリアである)ときは、第1系統FG故障仮判定がなされて、ロータロックモードに移行する。
【0154】
第1系統起動モードにおけるFG信号Fg_1の切替の有無の判断は、具体的には、所定のFG待機時間における第1系統のFG信号Fg_1のレベル変化の回数(FG切替回数)が、所定の閾値回数を超えた場合に「第1系統FG切替あり」と判断し、所定の閾値回数を超えない場合に「第1系統FG切替なし」と判断する。
【0155】
図11は、一次判定における第2系統起動モードでの判定条件の概要を示す図である。
【0156】
図11に示す第2系統起動モードでは、第2系統の駆動指令信号Sca_2のみを出力してモータ3を駆動したときに、第2系統のインバータ制御回路11_2から出力されるFG信号Fg_2のレベル変化の回数を検出することにより、判定を行なうことが示されている。
【0157】
図11に示すように、第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判断された場合は、第2系統正常仮判定がなされて、第2系統回転待ちモードに移行する。第2系統のFG信号Fg_2の切替がないと判断された場合は、ロータロック仮判定フラグを確認して、ロータロック仮判定フラグがセットされていたときは、ロータロック判定がなされて、ロータロックモードに移行する。また、ロータロック仮判定フラグを確認して、ロータロック仮判定フラグがセットされていない(クリアである)ときは、第2系統FG故障仮判定がなされて、ロータロックモードに移行する。
【0158】
第2系統起動モードにおけるFG信号Fg_2の切替の有無の判断は、具体的には、所定のFG待機時間における第2系統のFG信号Fg_2のレベル変化の回数(FG切替回数)が、所定の閾値回数を超えた場合に「第2系統FG切替あり」と判断し、所定の閾値回数を超えない場合に「第2系統FG切替なし」と判断する。
【0159】
図12は、二次判定における各回転待ちモードでの判定条件の概要を示す図である。
【0160】
図12には、2系統回転待ちモードと、第1系統回転待ちモードと、第2系統回転待ちモードとにおける判定の条件が示されている。
【0161】
まず、2系統回転待ちモードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2の両方を出力してモータ3を駆動したときに、各系統のインバータ制御回路11_1,11_2から出力されるFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数を検出し、かつFG信号Fg_1,Fg_2のレベル毎の時間から計算される回転数の検出することにより、判定を行っている。
【0162】
図12に示すように、2系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、第1系統のみFG信号Fg_1の切替があると判断された場合は、第2系統FG故障判定がなされて、第1系統駆動モードに移行する。2系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、第2系統のみFG信号Fg_2の切替があると判断された場合は、第1系統FG故障判定がなされて、第2系統駆動モードに移行する。2系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、2系統ともFG信号Fg_1,Fg_2の切替があると判断された場合は、2系統正常判定がなされて、2系統駆動モードに移行する。2系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数未満であると判断された場合は、ロータロック判定がなされて、ロータロックモードに移行する。
【0163】
2系統回転待ちモードにおけるFG信号Fg_1,Fg_2の切替の有無の判断は、具体的には、所定のFG待機時間における各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数(FG切替回数)が、所定の閾値回数を超えた系統については「FG切替あり」と判断し、所定の閾値回数を超えない系統については「FG切替なし」と判断する。
【0164】
第1系統回転待ちモードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1のみを出力してモータ3を駆動したときに、各系統のインバータ制御回路11_1,11_2から出力されるFG信号Fg_1.Fg_2のレベル変化の回数を検出し、かつFG信号Fg_1,Fg_2のレベル毎の時間から計算される回転数の検出することにより、判定を行っている。
【0165】
図12に示すように、第1系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、第1系統のみFG信号Fg_1の切替があると判断された場合は、第2系統FG故障判定がなされて、第1系統駆動モードに移行する。第1系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、第2系統のみFG信号Fg_2の切替があると判断された場合は、第1系統FG故障仮判定がなされて、ロータロックモードに移行する。第1系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、2系統ともFG信号Fg_1,Fg_2の切替があると判断された場合は、2系統正常判定がなされて、巻き線中点電圧待機時間経過後に2系統駆動モードに移行する。第1系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数未満であると判断された場合は、ロータロック判定がなされて、ロータロックモードに移行する。
【0166】
第1系統回転待ちモードにおけるFG信号Fg_1,Fg_2の切替の有無の判断は、具体的には、所定のFG待機時間における各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数(FG切替回数)が、所定の閾値回数を超えた系統については「FG切替あり」と判断し、所定の閾値回数を超えない系統については「FG切替なし」と判断する。
【0167】
第2系統回転待ちモードでは、第2系統の駆動指令信号Sca_2のみを出力してモータ3を駆動したときに、各系統のインバータ制御回路11_1,11_2から出力されるFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数を検出し、かつFG信号Fg_1,Fg_2のレベル毎の時間から計算される回転数の検出することにより、判定を行っている。
【0168】
図12に示すように、第2系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、第1系統のみFG信号Fg_1の切替があると判断された場合は、第2系統FG故障仮判定がなされて、ロータロックモードに移行する。第2系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、第2系統のみFG信号Fg_2の切替があると判断された場合は、第1系統FG故障判定がなされて、第2系統駆動モードに移行する。第2系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、2系統ともFG信号Fg_1,Fg_2の切替があると判断された場合は、2系統正常判定がなされて、巻き線中点電圧待機時間経過後に2系統駆動モードに移行する。第2系統回転待ちモードにおいて、モータ3の回転数が最小回転数未満であると判断された場合は、ロータロック判定がなされて、ロータロックモードに移行する。
【0169】
第2系統回転待ちモードにおけるFG信号Fg_1,Fg_2の切替の有無の判断は、具体的には、所定のFG待機時間における各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数(FG切替回数)が、所定の閾値回数を超えた系統については「FG切替あり」と判断し、所定の閾値回数を超えない系統については「FG切替なし」と判断する。
【0170】
なお、判定条件の詳細内容は、タイミングチャートおよびフローチャートを用いて後述する。
【0171】
図13は、各駆動モードにおける各系統の駆動および検出状態を示す図である。
【0172】
図13には、待機モードと、2系統駆動モードと、第1系統駆動モードと、第2系統駆動モードと、ロータロックモードとのそれぞれにおいて、実行する各系統の駆動と検出とが示されている。
【0173】
待機モードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2のいずれの駆動指令信号も出力せず、ロータロック検出と故障検出とのいずれも行わない。なお、待機モードでは、起動前に所定の回転数以上の回転で空転していること、いわゆる惰性回転をしていることを検出してもよい。
【0174】
2系統駆動モードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2の両方を出力してモータ3を駆動し、ロータロック検出と故障検出を2系統とも実行する。2系統駆動モードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2としては、速度指令デューティの値が出力される。
【0175】
第1系統駆動モードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1を出力してモータ3を駆動し、第1系統のロータロック検出を実行する。第1系統駆動モードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1としては、速度指令デューティの代わりに、故障デューティの値が出力されてもよい。
【0176】
第2系統駆動モードと、第2系統の駆動指令信号Sca_2を出力してモータ3を駆動し、第2系統のロータロック検出を実行する。第2系統駆動モードでは、第2系統の駆動指令信号Sca_2としては、速度指令デューティの代わりに、故障デューティの値が出力されてもよい。
【0177】
ロータロックモードでは、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2のいずれの駆動指令信号も出力せず、検出も行わない。
【0178】
次に、モータ3の起動時の動作モードの移行について、詳細に説明する。
【0179】
図14は、停止している正常状態のモータが起動され、2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
【0180】
図14において、上から順に、速度指令信号Sc、第1系統のインバータ制御回路11_1における各信号、第1系統の検出電圧出力回路24_1における巻線中点検出電圧Vs_1、第2系統のインバータ制御回路11_2における各信号、第2系統の検出電圧出力回路24_1における巻線中点検出電圧Vs_2の各波形が示されている。第1系統のインバータ制御回路11_1については、第1系統の駆動指令信号Sca_1、第1系統の制御信号St_1、第1系統のインバータ回路12_1のスイッチ素子Q1~Q4のゲート信号とFG信号Fg_1およびレベル変化の回数であるFG切替回数とが示され、第2系統のインバータ制御回路11_2については、第2系統の駆動指令信号Sca_2、第2系統の制御信号St_2、第2系統のインバータ回路12_2のスイッチ素子Q1~Q4のゲート信号とFG信号Fg_2およびレベル変化の回数であるFG切替回数とが示されている。また、横軸は時間を表し、縦軸は各信号の電圧を表している。
【0181】
図14には、待機モードから、2系統起動モードで開始され、2系統回転待ちモードとを経て、2系統駆動モードに移行する際の各信号の波形が示されている。
図14では、2系統起動モードがFG待機時間継続し、2系統回転待ちモードが回転待機時間継続していることが示されている。
【0182】
図14に示す例では、2系統起動モードにおいて、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2が両方出力されており、FG信号Fg_1,Fg_2のいずれにも切替が閾値回数を超えて発生している。
図9の判定表にしたがって、「2系統ともFG切替あり」から、2系統正常仮判定がなされて2系統回転待ちモードに移行する。
【0183】
この2系統起動モードのFG待機時間では、正常なモータ3で駆動力が弱い場合や、故障したモータ3に発生するブレーキによりモータ3にホールド(保持状態)やチャタリング(往復運動)が発生している場合、FG信号Fg_1,Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合があるため、判定にはモータ3の回転数を利用しない。したがって、FG待機時間内における各FG信号Fg_1,Fg_2のレベル変化の回数であるFG切替回数をカウントするが、経過タイマを使用したカウントは行わない。すなわち、2系統起動モードでは、経過タイマで計時される閾値時間内における各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のFG切替時間とモータ3の回転数との更新を行わない。このとき、2系統ともFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が正常に回転したことを仮判定する。
【0184】
次に、2系統回転待ちモードで動作するべく、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2が両方出力される。このとき、FG信号Fg_1,Fg_2のレベル毎の時間から計算される回転数の検出から、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、FG信号Fg_1,Fg_2のいずれにも切替が閾値回数を超えて発生しているので、
図12の判定表にしたがって、「2系統ともFG切替あり」から、2系統正常判定がなされて、第2系統駆動モードに移行している。
【0185】
この2系統回転待ちモードの回転待機時間では、経過タイマを使用して、各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のFG切替時間とモータ3の回転数の更新を行う。このとき、2系統でFG切替回数が閾値回数を超えて発生し、モータ3が最小回転数を超えたことから、モータ3が正常に回転したことを判定する。
【0186】
以上から、2系統起動モードでのFG待機時間におけるFG切替回数と、2系統回転待ちモードでの回転待機時間におけるFG切替回数および回転数により、モータ3が正常に回転したことが判定できる。また、1系統毎に起動を行わず、最初から2系統起動することにより、正常時の起動が速くなる。
【0187】
図15は、外的要因によるロータロック状態のモータが起動され、ロータロックモードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
図15でも、
図14と同様の各信号についての波形が示されている。
【0188】
図15には、待機モードから、2系統起動モードで開始され、第1系統起動モードおよび第2系統起動モードを経て、ロータロックモードに移行する際の各信号の波形が示されている。
図15では、2系統起動モードと第1系統起動モードと第2系統起動モードとが、それぞれFG待機時間継続し、2系統起動モードと第1系統起動モードとの間と第1系統起動モードと第2系統起動モードとの間に起動待機時間が存在することが示されている。起動待機時間は、駆動指令信号Scaのオフ後に制御信号Stのオフが行われることを示しているが、駆動指令信号Scaのオフと制御信号Stのオフが同時でもよい。
【0189】
図15に示す例では、2系統起動モードにおいて、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2が両方出力されているにもかかわらず、FG信号Fg_1,Fg_2のいずれにも切替が閾値回数を超えて発生していない。
図9の判定表にしたがって、「2系統ともFG切替なし」から、ロータロック仮判定がなされて第1系統起動モードに移行する。
【0190】
この2系統起動モードのFG待機時間では、FG信号Fg_1,Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合があるため、FG切替回数を利用する。このとき、2系統ともFG切替回数が閾値回数を超えて発生しないことから、ロータロックを仮判定する。
【0191】
次に、第1系統起動モードで動作するべく、第1系統の駆動指令信号Sca_1のみが出力され、第2系統がゲート遮断される。しかしながら、FG信号Fg_1の切替が閾値回数を超えて発生していないので、
図10の判定表にしたがって、「第1系統FG切替なし、かつロータロック仮判定フラグがセット」から、ロータロック仮判定がなされて、第2系統起動モードに移行する。
【0192】
この第1系統起動モードのFG待機時間では、第2系統が故障していた場合のモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第2系統の駆動オフとゲート遮断を行なうが、FG信号Fg_1によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合がある。したがって、第1系統起動モードにおける判定にはFG切替回数を利用する。このとき、2系統ともFG切替回数が閾値回数を超えて発生しないことから、ロータロックを仮判定する。
【0193】
その後、第2系統起動モードで動作するべく、第2系統の駆動指令信号Sca_2のみが出力され、第1系統がゲート遮断される。しかしながら、FG信号Fg_2の切替が閾値回数を超えて発生していないので、
図11の判定表にしたがって、「第2系統FG切替なし、かつロータロック仮判定フラグがセット」から、ロータロック判定がなされて、ロータロックモードに移行している。
【0194】
この第2系統起動モードのFG待機時間では、第1系統が故障していた場合のモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第1系統の駆動オフとゲート遮断を行なうが、FG信号Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合がある。したがって、第2系統起動モードにおける判定にはFG切替回数を利用する。このとき、2系統ともFG切替回数が閾値回数を超えて発生しないことから、ロータロックを仮判定し、ロータロック仮判定が2系統、第1系統、第2系統のすべての起動モードで連続したことからロータロックを判定する。
【0195】
以上から、この2系統、第1系統、第2系統の順にロータロックを判定することにより、モータ3にホールド(保持状態)が発生していることによる誤判定が発生しない。
【0196】
図16は、停止している第1系統がFG故障状態のモータが起動され、第2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
図16でも、
図14と同様の各信号についての波形が示されている。
【0197】
図16には、待機モードから、2系統起動モードで開始され、第2系統起動モードおよび第2系統回転待ちモードを経て、第2系統駆動モードに移行する際の各信号の波形が示されている。
図16では、2系統起動モードと第2系統起動モードとが、それぞれFG待機時間継続し、第2系統回転待ちモードが、回転待機時間継続し、2系統起動モードと第2系統起動モードとの間に起動待機時間が存在することが示されている。
【0198】
図16に示す例では、2系統起動モードにおいて、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2が両方出力されているにもかかわらず、FG信号Fg_2のみに切替が閾値回数を超えて発生している。
図9の判定表にしたがって、「第2系統のみFG切替あり」から、第2系統正常仮判定がなされて第2系統起動モードに移行する。
【0199】
この2系統起動モードのFG待機時間では、FG信号Fg_1,Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合があるため、判定にはFG切替回数を利用する。このとき、第2系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が故障かどうかは判定できないが、少なくとも第2系統が正常であることを仮判定する。
【0200】
次に、第2系統起動モードで動作するべく、第2系統の駆動指令信号Sca_2のみが出力され、第1系統がゲート遮断される。このとき、FG信号Fg_2の切替が閾値回数を超えて発生しているので、
図11の判定表にしたがって、「第2系統FG切替あり」から、第2系統正常仮判定がなされて、第2系統回転待ちモードに移行する。
【0201】
この第2系統起動モードのFG待機時間では、第1系統が故障していた場合にモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第1系統の駆動オフとゲート遮断を行なうが、FG信号Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合がある。したがって、第2系統起動モードにおける判定ではFG切替回数を利用する。このとき、第2系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が故障かどうかは判定できないが、少なくとも第2系統が正常であることを仮判定する。
【0202】
その後、第2系統回転待ちモードで動作するべく、第2系統の駆動指令信号Sca_2のみが出力され、第1系統がゲート遮断される。このとき、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、FG信号Fg_2のみの切替が閾値回数を超えて発生しているので、
図12の判定表にしたがって、「第2系統のみFG切替あり」から、第1系統FG故障判定がなされて、第2系統駆動モードに移行している。
【0203】
この第2系統回転待ちモードの回転待機時間では、第1系統が故障していた場合にモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第1系統の駆動オフとゲート遮断を行い、経過タイマを使用して、各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のFG切替時間とモータ3の回転数の更新を行う。このとき、第2系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生し、モータ3が最小回転数を超えたことから、第1系統FG故障を判定する。
【0204】
以上から、2系統起動モードでのFG待機時間のFG切替回数と、第2系統起動モードでのFG待機時間のFG切替回数と、第2系統回転待ちモードでの回転待機時間のFG切替回数と回転数により、第1系統FG故障が判定できる。
【0205】
図17は、停止している第2系統がFG故障状態のモータが起動され、第1系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
図17でも、
図14と同様の各信号についての波形が示されている。
【0206】
図17には、待機モードから、2系統起動モードで開始され、第1系統起動モードおよび第1系統回転待ちモードを経て、第1系統駆動モードに移行する際の各信号の波形が示されている。
図17では、2系統起動モードと第1系統起動モードとが、それぞれFG待機時間継続し、第1系統回転待ちモードが、回転待機時間継続し、2系統起動モードと第1系統起動モードとの間に起動待機時間が存在することが示されている。
【0207】
図17に示す例では、2系統起動モードにおいて、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2が両方出力されているにもかかわらず、FG信号Fg_1のみに切替が閾値回数を超えて発生している。
図9の判定表にしたがって、「第1系統のみFG切替あり」から、第1系統正常仮判定がなされて第1系統起動モードに移行する。
【0208】
この2系統起動モードのFG待機時間では、FG信号Fg_1,Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合があるため、判定にはFG切替回数を利用する。このとき、第1系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が故障かどうかは判定できないが、少なくとも第1系統が正常であることを仮判定する。
【0209】
次に、第1系統起動モードで動作するべく、第1系統の駆動指令信号Sca_1のみが出力され、第2系統がゲート遮断される。このとき、FG信号Fg_1の切替のみが閾値回数を超えて発生しているので、
図10の判定表にしたがって、「第1系統FG切替あり」から、第1系統正常仮判定がなされて、第1系統回転待ちモードに移行する。
【0210】
この第1系統起動モードのFG待機時間では、第2系統が故障していた場合にモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第2系統の駆動オフとゲート遮断を行なうが、FG信号Fg_1によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合がある。したがって、第1系統起動モードにおける判定にはFG切替回数を利用する。このとき、第1系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が故障かどうかは判定できないが、少なくとも第1系統が正常であることを仮判定する。
【0211】
その後、第1系統回転待ちモードで動作するべく、第1系統の駆動指令信号Sca_1のみが出力され、第2系統がゲート遮断される。このとき、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、FG信号Fg_1のみの切替が閾値回数を超えて発生しているので、
図12の判定表にしたがって、「第1系統のみFG切替あり」から、第2系統FG故障判定がなされて、第1系統駆動モードに移行している。
【0212】
この第1系統回転待ちモードの回転待機時間では、第2系統が故障していた場合にモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第2系統の駆動オフとゲート遮断を行い、経過タイマを使用して、各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のFG切替時間とモータ3の回転数の更新を行う。このとき、第1系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生し、モータ3が最小回転数を超えたことから、第2系統FG故障を判定する。
【0213】
以上から、2系統起動モードでのFG待機時間のFG切替回数と、第1系統起動モードでのFG待機時間のFG切替回数と、第1系統回転待ちモードでの回転待機時間のFG切替回数と回転数により、第2系統FG故障が判定できる。
【0214】
図18は、停止している正常状態のモータが起動され、第1系統のチャタリングを経て2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
図18でも、
図14と同様の各信号についての波形が示されている。
【0215】
図18には、待機モードから、2系統起動モードで開始され、第2系統起動モードおよび第2系統回転待ちモードを経て、第2系統駆動モードに移行する際の各信号の波形が示されている。
図18では、2系統起動モードと第2系統起動モードとが、それぞれFG待機時間継続し、第2系統回転待ちモードが、回転待機時間および巻線中点電圧待機時間の間継続し、2系統起動モードと第2系統起動モードとの間に起動待機時間が存在することが示されている。
【0216】
図18に示す例では、2系統起動モードにおいて、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2が両方出力されているにもかかわらず、第1系統でチャタリングが発生しているためにFG信号Fg_1に切替が発生せず、FG信号Fg_2のみに切替が閾値回数を超えて発生している。
図9の判定表にしたがって、「第2系統のみFG切替あり」から、第2系統正常仮判定がなされて第2系統起動モードに移行する。
【0217】
この2系統起動モードのFG待機時間では、FG信号Fg_1,Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合があるため、判定にはFG切替回数を利用する。このとき、第2系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が故障かどうかは判定できないが、少なくとも第2系統が正常であることを仮判定する。
【0218】
次に、第2系統起動モードで動作するべく、第2系統の駆動指令信号Sca_2のみが出力され、第1系統がゲート遮断される。このとき、第1系統のチャタリングが収束して、FG信号Fg_1,Fg_2の両方において切替が閾値回数を超えて発生している。しかしながら、第2系統起動モードでは第2系統のFg信号Fg_2の切替のみ監視するので、
図11の判定表にしたがって、「第2系統FG切替あり」から、第2系統正常仮判定がなされて、第2系統回転待ちモードに移行する。
【0219】
この第2系統起動モードのFG待機時間では、第1系統が故障していた場合にモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第1系統の駆動オフとゲート遮断を行なうが、FG信号Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合がある。したがって、第2系統起動モードにおける判定にはFG切替回数を利用する。このとき、第2系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が故障かどうかは判定できないが、少なくとも第2系統が正常であることを仮判定する。
【0220】
その後、第2系統回転待ちモードで動作するべく、第2系統の駆動指令信号Sca_2のみが出力され、第1系統がゲート遮断される。このとき、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、FG信号Fg_1,Fg_2の両方において切替が閾値回数を超えて発生しているので、
図12の判定表にしたがって、「2系統ともFG切替あり」から、2系統正常判定がなされて、巻線中点電圧待機時間後に第2系統駆動モードに移行している。なお、巻線中点電圧待機時間の経過を待つのは、検出電圧出力回路24を利用して、駆動中に巻線中点電圧から故障を判定する場合に、起動時に1系統の回転待ちで停止側のFG信号が復活したときに必要となる。
【0221】
この第2系統回転待ちモードの回転待機時間では、第1系統が故障していた場合にモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第1系統の駆動オフとゲート遮断を行い、経過タイマを使用して、各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のFG切替時間とモータ3の回転数の更新を行う。このとき、2系統ともFG切替回数が閾値回数を超えて発生し、モータ3が最小回転数を超えたことから、2系統正常を判定する。
【0222】
以上から、2系統起動モードでのFG待機時間のFG切替回数と、第2系統起動モードでのFG待機時間のFG切替回数と、第2系統回転待ちモードでの回転待機時間のFG切替回数と回転数により、モータ3にチャタリング(往復運動)が発生していることによる誤判定が発生しない。
【0223】
図19は、停止している正常状態のモータが起動され、第2系統のチャタリングを経て2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
図19でも、
図14と同様の各信号についての波形が示されている。
【0224】
図19には、待機モードから、2系統起動モードで開始され、第1系統起動モードおよび第1系統回転待ちモードを経て、2系統駆動モードに移行する際の各信号の波形が示されている。
図19では、2系統起動モードと第1系統起動モードとが、それぞれFG待機時間継続し、第1系統回転待ちモードが、回転待機時間および巻線中点電圧待機時間の間継続し、2系統起動モードと第1系統起動モードとの間に起動待機時間が存在することが示されている。
【0225】
図19に示す例では、2系統起動モードにおいて、第1系統の駆動指令信号Sca_1と第2系統の駆動指令信号Sca_2が両方出力されているにもかかわらず、第2系統でチャタリングが発生しているためにFG信号Fg_2に切替が閾値回数を超えて発生せず、FG信号Fg_1のみに切替が発生している。
図9の判定表にしたがって、「第1系統のみFG切替あり」から、第1系統正常仮判定がなされて第1系統起動モードに移行する。
【0226】
この2系統起動モードのFG待機時間では、FG信号Fg_1,Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合があるため、判定にはFG切替回数を利用する。このとき、第1系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が故障かどうかは判定できないが、少なくとも第1系統が正常であることを仮判定する。
【0227】
次に、第1系統起動モードで動作するべく、第1系統の駆動指令信号Sca_1のみが出力され、第2系統がゲート遮断される。このとき、第2系統のチャタリングが収束して、FG信号Fg_1,Fg_2の両方において切替が閾値回数を超えて発生している。しかしながら、第1系統起動モードでは第1系統のFg信号Fg_1の切替のみ監視するので、
図10の判定表にしたがって、「第1系統FG切替あり」から、第1系統正常仮判定がなされて、第1系統回転待ちモードに移行する。
【0228】
この第1系統起動モードのFG待機時間では、第2系統が故障していた場合にモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第2系統の駆動オフとゲート遮断を行なうが、FG信号Fg_1,Fg_2によるモータ3の回転数が正しい値にならない場合がある。したがって、第1系統起動モードにおける判定ではFG切替回数を利用する。このとき、第1系統のみFG切替回数が閾値回数を超えて発生したことから、モータ3が故障かどうかは判定できないが、少なくとも第1系統が正常であることを仮判定する。
【0229】
その後、第1系統回転待ちモードで動作するべく、第1系統の駆動指令信号Sca_1のみが出力され、第2系統がゲート遮断される。このとき、モータ3の回転数が最小回転数以上であり、FG信号Fg_1,Fg_2の両方において切替が閾値回数を超えて発生しているので、
図12の判定表にしたがって、「2系統ともFG切替あり」から、2系統正常判定がなされて、巻線中点電圧待機時間後に2系統駆動モードに移行している。
【0230】
この第2系統回転待ちモードの回転待機時間では、第2系統が故障していた場合にモータ3の回転に影響するブレーキを発生させないように、第2系統の駆動オフとゲート遮断を行い、経過タイマを使用して、各系統のFG信号Fg_1,Fg_2のFG切替時間とモータ3の回転数の更新を行う。このとき、2系統ともFG切替回数が閾値回数を超えて発生し、モータ3が最小回転数を超えたことから、2系統正常を判定する。
【0231】
以上から、2系統起動モードでのFG待機時間のFG切替回数と、第1系統起動モードでのFG待機時間のFG切替回数と、第1系統回転待ちモードでの回転待機時間のFG切替回数と回転数により、モータ3にチャタリング(往復運動)が発生していることによる誤判定が発生しない。
【0232】
図20は、惰性回転している正常状態のモータが起動され、2系統駆動モードに至るまでの信号波形の一例を示すタイミングチャートである。
図20でも、
図14と同様の各信号についての波形が示されている。
【0233】
図20には、惰性回転をするモータが、2系統起動モードを経ずに、待機モードから2系統駆動モードに移行する際の各信号の波形が示されている。この動作モードの移行は、起動前に、空転状態であり、モータ3の回転数が最小回転数以上であることを判定した場合に生じる。惰性回転の場合、モータ3を駆動していないにもかかわらず、何らかの力でモータ3が所定回転数以上の回転数で空転している。この場合は、モータ3にホールド(保持状態)やチャタリング(往復運動)が発生していないため、2系統起動モードを経ずに2系統駆動モードに移行することができる。
【0234】
図21は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける電源投入時の処理流れの一例を示すフローチャートである。
【0235】
図21に示すように、例えば、駆動制御回路20が起動した場合、初期化処理を実行する(ステップS1)。例えば、駆動制御回路20がマイコン内部のレジスタ等を初期化する。また、駆動制御回路20は、駆動指令信号Sca_1,Sca_2の出力を停止する(ローレベルにする)とともに、制御信号St_1,St_2をハイレベルにして、ローサイドのスイッチ素子Q3,Q4への第2駆動制御信号Sdb_1,Sdb_2の入力を可能な状態にする(信号遮断なし)ことによって待機モードに切り替える(ステップS2)。このとき、モータ3はフリーになる。
【0236】
次に、駆動制御回路20は、待機モードに切り替わった(ステップS2)後、各系統のFG信号のレベル毎の時間であるFG切替時間、回転数の初期化、経過タイマの開始を実行する(ステップS3)。
【0237】
次に、駆動制御回路20は、モータの空転状態を検出するため、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS4)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS4:YES)、経過タイマから第1系統のFG信号Fg_1のFG切替時間と回転数の更新を行う(ステップS5)。
【0238】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS6)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS6:YES)、経過タイマから第2系統のFG信号Fg_2のFG切替時間と回転数の更新を行う(ステップS7)。
【0239】
続いて、駆動制御回路20は、少なくとも一方のFG切替時間からの経過タイマが、閾値時間を超過しているか否かを判定する(ステップS8)。少なくとも一方のFG切替時間からの経過タイマが、閾値時間を超過していると判定した場合(ステップS8:YES)、各系統のFG切替時間と回転数を初期化する(ステップS9)。
【0240】
続いて、駆動制御回路20は、速度指令信号Scが入力されているか否かを判定する(ステップS10)。速度指令信号Scが入力されていないと判定した場合(ステップS10:NO)、ステップS4の処理に戻る。この、ステップS4からステップS10を繰り返すことにより、速度指令信号Scが入力されていない期間において、モータ3が惰性回転している場合、回転数が更新され、モータ3を停止状態から起動する場合と異なり、モータ3にホールドやチャタリングが発生しないことから、(後述するステップS11においてYESと判定した場合、)各起動モードを経ずに各駆動モードに移行することが可能になる。
【0241】
速度指令信号Scが入力されていると判定した場合(ステップS10:YES)、駆動制御回路20は、モータ3の回転数が最小回転数以上であるか否かを判定する(ステップS11)。モータ3の回転数が最小回転数以上である場合は惰性回転している(空転状態である)といえる。
【0242】
回転数が最小回転数以上であると判定した場合(ステップS11:YES)、第2系統故障フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS12)。第2系統故障フラグがセットされていると判定した場合(ステップS12:YES)、第1系統駆動モードに移行する。
【0243】
第2系統故障フラグがセットされていないと判定した場合(ステップS12:NO)、駆動制御回路20は、第1系統故障フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS13)。第1系統故障フラグがセットされていると判定した場合(ステップS13:YES)、第2系統駆動モードに移行する。
【0244】
第1系統故障フラグがセットされていないと判定した場合(ステップS13:NO)、2系統駆動モードに移行する。
【0245】
ステップS11において、回転数が最小回転数未満であると判定した場合(ステップS11:NO)、第2系統故障フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS14)。第2系統故障フラグがセットされていると判定した場合(ステップS14:YES)、第1系統起動モードに移行する。
【0246】
第2系統故障フラグがセットされていないと判定した場合(ステップS14:NO)、駆動制御回路20は、第1系統故障フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS15)。第1系統故障フラグがセットされていると判定した場合(ステップS15:YES)、第2系統起動モードに移行する。
【0247】
第1系統故障フラグがセットされていないと判定した場合(ステップS15:NO)、2系統起動モードに移行する。
【0248】
図22は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおけるロータロック判定時の処理流れの一例を示すフローチャートである。
【0249】
本実施の形態に係るモータ駆動制御システム100において、ロータロック判定がなされると、ロータロックモードを実行する。ロータロックモードでは、まず、拘束保護タイマにおけるカウントが開始される(ステップS20)。拘束保護タイマが拘束保護時間経過したか否かが判定される(ステップS21)。拘束保護タイマが拘束保護時間経過したと判定した場合(ステップS21:YES)、ロータロックフラグをクリアして(ステップS22)、
図21のステップS2の処理に移動する。拘束保護タイマが拘束保護時間経過していないと判定した場合(ステップS21:NO)、ステップS21の処理を繰り返す。
【0250】
図23は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける2系統起動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0251】
2系統起動モードでは、駆動制御回路20は、まず、各系統のFG切替回数およびロータロック仮判定フラグの初期化をするとともに待機タイマのカウントを開始し(ステップS101)、第1の駆動指令信号Sca_1および第2の駆動指令信号Sca_2を出力するために2系統のPWM出力をオンする(ステップS102)。
【0252】
その後、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS103)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS103:YES)、第1系統のFG切替回数をインクリメントする(ステップS104)。
【0253】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS105)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS105:YES)、第2系統のFG切替回数をインクリメントする(ステップS106)。
【0254】
続いて、駆動制御回路20は、待機タイマがFG待機時間経過したか否かを判定する(ステップS107)。待機タイマがFG待機時間経過していないと判定した場合(ステップS107:NO)、ステップS103の処理に戻る。
【0255】
待機タイマがFG待機時間経過したと判定した場合(ステップS107:YES)、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数も閾値未満であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS108)。
【0256】
第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数も閾値未満であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS108:YES)、ロータロック仮判定がなされて(ステップS109)、ロータロック仮判定フラグをセットし(ステップS110)、2系統PWM出力をオフし(ステップS111)、待機タイマのカウントを開始して(ステップS112)、待機タイマが起動待機時間経過するのを待って(ステップS113)、第1系統起動モードに移行する。
【0257】
第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数も閾値未満であるという条件を満たさないと判定した場合(ステップS108:NO)、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数は閾値未満であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS114)。
【0258】
第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数は閾値未満であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS114:YES)、第1系統正常仮判定がなされて(ステップS115)、ステップS111からステップS113の処理を実行して、第1系統起動モードに移行する。
【0259】
第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数は閾値未満であるという条件を満たさないと判定した場合(ステップS114:NO)、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数は閾値以上であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS116)。
【0260】
第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数は閾値以上であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS116:YES)、第2系統正常仮判定がなされて(ステップS118)、2系統PWM出力をオフし(ステップS119)、待機タイマのカウントを開始して(ステップS120)、待機タイマが起動待機時間経過するのを待って(ステップS121)、待機タイマが起動待機時間経過したら(ステップS121:YES)、第2系統起動モードに移行する。
【0261】
第1系統のFG信号Fg_1のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG信号Fg_2のFG切替回数は閾値以上であるという条件を満たさないと判定した場合(ステップS116:NO)、2系統正常仮判定がなされて(ステップS122)、2系統回転待ちモードに移行する。
【0262】
図24は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける2系統回転待ちモード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0263】
2系統回転待ちモードでは、駆動制御回路20は、まず、各系統のFG切替回数、各系統のFG切替時間および回転数の初期化をするとともに経過タイマおよび待機タイマのカウントを開始する(ステップS201)。
【0264】
その後、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS202)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS202:YES)、第1系統のFG切替回数をインクリメントし、経過タイマから第1系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS203)。
【0265】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS204)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS204:YES)、第2系統のFG切替回数をインクリメントし、経過タイマから第2系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS205)。
【0266】
続いて、駆動制御回路20は、少なくとも一方のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過しているか否かを判定する(ステップS206)。少なくとも一方のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していると判定した場合(ステップS206:YES)、各系統のFG切替回数およびFG切替時間と回転数を初期化する(ステップS207)。
【0267】
続いて、駆動制御回路20は、モータ3の回転数が最小回転数以上であるか否かを判定する(ステップS208)。回転数が最小回転数以上であると判定した場合(ステップS208:YES)、さらに、第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS209)。
【0268】
第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS209:YES)、第2系統FG故障判定がなされて(ステップS210)、第2系統故障フラグをセットし(ステップS211)、第2系統PWM出力をオフするとともに第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオンし(ステップS212)、第1系統駆動モードに移行する。
【0269】
第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満さないと判定した場合(ステップS209:NO)、さらに、第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS213)。
【0270】
第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS213:YES)、第1系統FG故障判定がなされて(ステップS214)、第1系統故障フラグをセットし(ステップS215)、第1系統PWM出力をオフするとともに第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオンし(ステップS216)、第2系統駆動モードに移行する。
【0271】
第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たさないと判定した場合(ステップS213:NO)、2系統正常判定がなされて(ステップS217)、2系統駆動モードに移行する。
【0272】
ステップS208に戻って、回転数が最小回転数以上ではないと判定した場合(ステップS208:NO)、さらに、待機タイマが回転待機時間経過したが否かを判定する(ステップS218)。待機タイマが回転待機時間経過していないと判定した場合(ステップS218:NO)、ステップS202の処理に戻る。なお、ステップS208の判定をステップS218の判定後に行ってもよい。
【0273】
待機タイマが回転待機時間経過していたと判定した場合(ステップS218:YES)、ロータロック判定がなされて(ステップS219)、ロータロックフラグをセットし(ステップS220)、2系統PWM出力をオフして(ステップS221)、ロータロックモードに移行する。
【0274】
図25は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける2系統駆動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0275】
2系統駆動モードでは、駆動制御回路20は、まず、FG信号Fg_1,Fg_2におけるレベル変化の回数差であるFG切替回数差、各系統のFG切替時間および回転数の初期化をするとともに経過タイマのカウントを開始する(ステップS301)。
【0276】
その後、駆動制御回路20は、第1の駆動指令信号Sca_1および第2の駆動指令信号Sca_2を出力するために2系統のPWM出力をオンする(ステップS302)。
【0277】
駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS303)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS303:YES)、FG切替回数差を「1」だけインクリメントし、経過タイマから第1系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS304)。
【0278】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS305)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS305:YES)、FG切替回数差を「1」だけデクリメントし、経過タイマから第2系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS306)。
【0279】
モータが正常に回転している場合、第1系統FG切替の発生後に、第2系統のFG切替が発生するため、FG切替回数差が0と+1または0と-1を繰り返すことになり、±1を超えることはない。但し、第2系統でFG故障が発生し、FG切替が発生しない場合、第1系統のFG切替のみが連続して発生するため、FG切替回数差が正の値で増加することになる。また、第1系統でFG故障が発生し、FG切替が発生しない場合、第2系統のFG切替が連続して発生するため、FG切替回数差が負の値で増加することになる。
【0280】
続いて、駆動制御回路20は、FG切替回数差が、チャタリングの許容回数である閾値回数の正の値(正の閾値回数)より大きいか否かを判定する(ステップS307)。FG切替回数差が閾値回数の正の値より大きいと判定した場合(ステップS307:YES)、第2系統FG故障判定がなされて(ステップS308)、第2系統故障フラグをセットし(ステップS309)、第2系統PWM出力をオフするとともに第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオンし(ステップS310)、第1系統駆動モードに移行する。
【0281】
FG切替回数差が閾値回数の際の値より大きくないと判定した場合(ステップS307:NO)、さらに、FG切替回数差が、チャタリングの許容回数である閾値回数の負の値(負の閾値回数)より小さいか否かを判定する(ステップS311)。FG切替回数差が閾値回数の負の値より小さいと判定した場合(ステップS311:YES)、第1系統FG故障判定がなされて(ステップS312)、第1系統故障フラグをセットし(ステップS313)、第1系統PWM出力をオフするとともに第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオンし(ステップS314)、第2系統駆動モードに移行する。
【0282】
FG切替回数差が閾値回数の負の値より小さくないと判定した場合(ステップS311:NO)、駆動制御回路20は、少なくとも一方のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過しているか否かを判定する(ステップS315)。少なくとも一方のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していると判定した場合(ステップS315:YES)、ロータロック判定がなされて(ステップS316)、ロータロックフラグをセットし(ステップS317)、2系統PWM出力をオフし(ステップS318)、ロータロックモードに移行する。
【0283】
少なくとも一方のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していないと判定した場合(ステップS315:NO)、駆動制御回路20は、速度指令があるか否かを判定する(ステップS319)。速度指令があると判定した場合は(ステップS319:YES)、ステップS302に戻り、速度指令の変更に応じてステップS302でPWM出力のデューティを変更する。速度指令がないと判定した場合は(ステップS319:NO)、2系統のPWM出力をオフして(ステップS320)、
図22のステップS2に戻る。
【0284】
図26は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第1系統起動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0285】
第1系統起動モードでは、駆動制御回路20は、まず、各系統のFG切替回数の初期化を行うとともに、待機タイマのカウントを開始し(ステップS401)、その後、第1の駆動指令信号Sca_1を出力するために第1系統のPWM出力をオンし、第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオンする(ステップS402)。
【0286】
駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS403)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS403:YES)、第1系統のFG切替回数を「1」だけインクリメントする(ステップS404)。
【0287】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS405)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS405:YES)、第2系統のFG切替回数を「1」だけインクリメントする(ステップS406)。
【0288】
続いて、駆動制御回路20は、待機タイマがFG待機時間経過したか否かを判定する(ステップS407)。待機タイマがFG待機時間経過していないと判定した場合(ステップS407:NO)、ステップS403の処理に戻る。
【0289】
待機タイマがFG待機時間経過したと判定した場合(ステップS407:YES)、さらに、第1系統のFG切替回数が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS408)。第1系統のFG切替回数が閾値以上であると判定した場合(ステップS408:YES)、第1系統正常仮判定がなされて(ステップS409)、第1系統回転待ちモードに移行する。
【0290】
第1系統のFG切替回数が閾値以上ではないと判定した場合(ステップS408:NO)、第1系統のPWM出力をオフし、第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオフする(ステップS410)。その後、ロータロック仮判定フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS411)。
【0291】
ロータロック仮判定フラグがセットされていると判定した場合(ステップS411:YES)、ロータロック仮判定がなされて(ステップS412)、待機タイマのカウントを開始して(ステップS413)、待機タイマが起動待機時間経過するのを待って(ステップS414)、第2系統起動モードに移行する。
【0292】
ロータロック仮判定フラグがセットされていないと判定した場合(ステップS411:NO)、第1系統FG故障仮判定がなされて(ステップS415)、ロータロックフラグをセットし(ステップS416)、ロータロックモードに移行する。
【0293】
図27は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第1系統回転待ちモード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0294】
第1系統回転待ちモードでは、駆動制御回路20は、まず、各系統のFG切替回数、各系統のFG切替時間および回転数の初期化をするとともに経過タイマおよび待機タイマのカウントを開始する(ステップS501)。
【0295】
その後、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS502)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS502:YES)、第1系統のFG切替回数をインクリメントし、経過タイマから第1系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS503)。
【0296】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS504)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS504:YES)、第2系統のFG切替回数をインクリメントし、経過タイマから第2系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS505)。
【0297】
続いて、駆動制御回路20は、第1系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過しているか否かを判定する(ステップS506)。第1系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していると判定した場合(ステップS506:YES)、各系統のFG切替回数およびFG切替時間と回転数を初期化する(ステップS507)。
【0298】
続いて、駆動制御回路20は、モータ3の回転数が最小回転数以上であるか否かを判定する(ステップS508)。回転数が最小回転数以上であると判定した場合(ステップS508:YES)、さらに、第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS509)。
【0299】
第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS509:YES)、第2系統FG故障判定がなされて(ステップS510)、第2系統故障フラグをセットし(ステップS511)、第1系統駆動モードに移行する。
【0300】
第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満さないと判定した場合(ステップS509:NO)、さらに、第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS512)。
【0301】
第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS512:YES)、第1系統FG故障仮判定がなされて(ステップS519)、ロータロックフラグをセットし(ステップS520)、第1系統PWM出力をオフするとともに第2系統ゲート遮断信号((制御信号St_2)をオフし(ステップS521)、ロータロックモードに移行する。
【0302】
第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たさないと判定した場合(ステップS512:NO)、2系統正常判定がなされて(ステップS513)、第2系統PWM出力をオンするとともに第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオフし(ステップS514)、待機タイマのカウントを開始して(ステップS515)、待機タイマが起動待機時間経過したら(ステップS516:YES)、2系統駆動モードに移行する。
【0303】
ステップS508に戻って、回転数が最小回転数以上ではないと判定した場合(ステップS508:NO)、駆動制御回路20は、待機タイマがFG待機時間経過したか否かを判定する(ステップS517)。待機タイマがFG待機時間経過していないと判定した場合(ステップS517:NO)、ステップS502の処理に戻る。なお、ステップS508の判定をステップS517の判定後に行ってもよい。
【0304】
待機タイマがFG待機時間経過したと判定した場合(ステップS517:YES)、ロータロック判定がなされて(ステップS518)、ロータロックフラグをセットし(ステップS520)、第1系統PWM出力をオフするとともに第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオフし(ステップS521)、ロータロックモードに移行する。
【0305】
図28は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第1系統駆動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0306】
第1系統駆動モードでは、駆動制御回路20は、まず、第1系統のFG切替時間および回転数の初期化をするとともに経過タイマのカウントを開始し(ステップS601)、第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオンする(ステップS602)。この処理により、第2系統はフリーになり、第2系統によってモータ3の回転に影響するブレーキは発生しない。続いて、速度指令デューティで第1系統のPWM出力をオンする(ステップS603)。このとき、速度指令デューティの代わりに、故障デューティを使用してもよい。
【0307】
その後、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS604)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS604:YES)、経過タイマから第1系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS605)。
【0308】
続いて、駆動制御回路20は、第1系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過しているか否かを判定する(ステップS606)。第1系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していると判定した場合(ステップS606:YES)、ロータロック判定がなされて(ステップS607)、ロータロックフラグをセットし(ステップS608)、第1系統のPWM出力をオフ、第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオフして(ステップS609)、ロータロックモードに移行する。
【0309】
第1系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していないと判定した場合(ステップS606:NO)、速度指令があるか否かを判定する(ステップS610)。速度指令があると判定した場合は(ステップS610:YES)、ステップS603に戻り、速度指令の変更に応じてステップS603でPWM出力のデューティを変更してもよい。速度指令がないと判定した場合は(ステップS610:NO)、第1系統のPWM出力をオフ、第2系統ゲート遮断信号(制御信号St_2)をオフして(ステップS611)、
図21のステップS2に戻る。このとき、モータはフリーになる。
【0310】
図29は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第2系統起動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0311】
第2系統起動モードでは、駆動制御回路20は、まず、各系統のFG切替回数の初期化をするとともに待機タイマのカウントを開始し(ステップS701)、第2系統のPWM出力をオンし、第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオンする(ステップS702)
【0312】
その後、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS703)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS703:YES)、第1系統のFG切替回数を「1」だけインクリメントする(ステップS504)。
【0313】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS705)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS705:YES)、第2系統のFG切替回数を「1」だけインクリメントする(ステップS706)。
【0314】
続いて、駆動制御回路20は、待機タイマがFG待機時間超過しているか否かを判定する(ステップS707)。待機タイマがFG待機時間超過していないと判定した場合(ステップS707:NO)、ステップS703の処理に戻る。
【0315】
待機タイマがFG待機時間超過していると判定した場合(ステップS707:YES)、駆動制御回路20は、第2系統のFG切替回数が閾値以上であるか否かを判定する(ステップS708)。第2系統のFG切替回数が閾値以上であると判定した場合(ステップS708:YES)、第2系統正常仮判定がなされて(ステップS709)、第2系統回転待ちモードに移行する。
【0316】
第2系統のFG切替回数が閾値以上ではないと判定した場合(ステップS708:NO)、駆動制御回路20は、第2系統のPWM出力をオフし、第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオフし(ステップS710)、ロータロック仮判定フラグがセットされているか否かを判定する(ステップS711)。ロータロック仮判定フラグがセットされていると判定した場合(ステップS711:YES)、ロータロック判定がなされて(ステップS712)、ロータロックフラグをセットし(ステップS714)、ロータロックモードに移行する。
【0317】
ロータロック仮判定フラグがセットされていないと判定した場合(ステップS711:NO)、第2系統FG故障仮判定がなされて(ステップS713)、ロータロックフラグをセットし(ステップS714)、ロータロックモードに移行する。
【0318】
図30は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第2系統回転待ちモード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0319】
第2系統回転待ちモードでは、駆動制御回路20は、まず、各系統のFG切替回数、各系統のFG切替時間および回転数の初期化をするとともに経過タイマおよび待機タイマのカウントを開始する(ステップS801)。
【0320】
その後、駆動制御回路20は、第1系統のFG信号Fg_1の切替があるか否かを判定する(ステップS802)。第1系統のFG信号Fg_1の切替があると判定した場合(ステップS802:YES)、第1系統のFG切替回数を「1」だけインクリメントし、経過タイマから第1系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS803)。
【0321】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS804)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS804:YES)、第2系統のFG切替回数を「1」だけインクリメントし、経過タイマから第2系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS805)。
【0322】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過しているか否かを判定する(ステップS806)。第2系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していると判定した場合(ステップS806:YES)、各系統のFG切替回数およびFG切替時間と回転数を初期化する(ステップS807)。
【0323】
続いて、駆動制御回路20は、モータ3の回転数が最小回転数以上であるか否かを判定する(ステップS808)。回転数が最小回転数以上であると判定した場合(ステップS808:YES)、さらに、第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS809)。
【0324】
第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS809:YES)、第2系統FG故障仮判定がなされて(ステップS810)、ロータロックフラグをセットし(ステップS818)、第2系統PWM出力をオフするとともに第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオフし(ステップS819)、ロータロックモードに移行する。
【0325】
第1系統のFG切替回数が閾値以上であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値未満であるという条件を満さないと判定した場合(ステップS809:NO)、さらに、第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たすか否かを判定する(ステップS811)。
【0326】
第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たすと判定した場合(ステップS811:YES)、第1系統FG故障判定がなされて(ステップS820)、第1系統故障フラグをセットし(ステップS821)、第2系統駆動モードに移行する。
【0327】
第1系統のFG切替回数が閾値未満であり、かつ第2系統のFG切替回数が閾値以上であるという条件を満たさないと判定した場合(ステップS811:NO)、2系統正常判定がなされて(ステップS812)、第1系統PWM出力をオンするとともに第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオフし(ステップS813)、待機タイマのカウントを開始して(ステップS814)、待機タイマが起動待機時間経過するのを待って(ステップS815)、2系統駆動モードに移行する。
【0328】
ステップS808に戻って、回転数が最小回転数以上ではないと判定した場合(ステップS808:NO)、駆動制御回路20は、待機タイマがFG待機時間経過したか否かを判定する(ステップS816)。待機タイマがFG待機時間経過していないと判定した場合(ステップS816:NO)、ステップS802の処理に戻る。なお、ステップS808の判定をステップS816の判定後に行ってもよい。
【0329】
待機タイマがFG待機時間経過したと判定した場合(ステップS816:YES)、ロータロック判定がなされて(ステップS817)、ロータロックフラグをセットし(ステップS818)、第2系統PWM出力をオンするとともに第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオフし(ステップS819)、ロータロックモードに移行する。
【0330】
図31は、本実施の形態に係るモータ駆動制御システムにおける第2系統駆動モード処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0331】
第2系統駆動モードでは、駆動制御回路20は、まず、第2系統のFG切替時間および回転数の初期化をするとともに経過タイマのカウントを開始し(ステップS901)、第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオンする(ステップS902)。この処理により、第1系統はフリーになり、第1系統によってモータの回転に影響するブレーキは発生しない。続いて、速度指令デューティで第2系統のPWM出力をオンする(ステップS903)。このとき、速度指令デューティの代わりに、故障デューティを使用してもよい。
【0332】
その後、駆動制御回路20は、第2系統のFG信号Fg_2の切替があるか否かを判定する(ステップS904)。第2系統のFG信号Fg_2の切替があると判定した場合(ステップS904:YES)、経過タイマから第2系統のFG切替時間と回転数を更新する(ステップS905)。
【0333】
続いて、駆動制御回路20は、第2系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過しているか否かを判定する(ステップS906)。第2系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していると判定した場合(ステップS906:YES)、ロータロック判定がなされて(ステップS907)、ロータロックフラグをセットし(ステップS908)、第2系統のPWM出力をオフ、第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオフして(ステップS909)、ロータロックモードに移行する。
【0334】
第2系統のFG切替時間からの経過タイマが閾値時間を超過していないと判定した場合(ステップS906:NO)、速度指令があるか否かを判定する(ステップS910)。速度指令があると判定した場合は(ステップS910:YES)、ステップS903に戻り、速度指令の変更に応じてステップS903でPWM出力のデューティを変更してもよい。速度指令がないと判定した場合は(ステップS910:NO)、第2系統のPWM出力をオフ、第1系統ゲート遮断信号(制御信号St_1)をオフして(ステップS911)、
図21のステップS2に戻る。このとき、モータはフリーになる。
【0335】
このように、実施の形態に係るモータ駆動制御装置1によれば、単相2系統駆動のモータ3の駆動が停止した状態から駆動開始する際に、ロータロック、FG故障などの異常状態を正しく判定することによって、迅速に、かつ、安定した起動をすることができる。
【0336】
また、起動前に、空転状態であることを判定して、最低回転数以上で回転していれば、起動モードを経ずに、2系統駆動モードで駆動制御を行うので、不要な判定をすることなく、モータ3の駆動制御を行うことができる。
【0337】
≪実施の形態の拡張≫
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0338】
例えば、モータ駆動制御システム,検出電圧出力回路,駆動制御回路,および信号遮断回路の構成は、図示した構成に限定されない。例えば、ホール信号で制御される側のゲート信号が遮断可能であれば、信号遮断回路13_1,13_2は必須の構成でなく、省略することもできる。
【0339】
上記実施の形態において、
図14から
図20に示したタイミングチャートや、
図8,
図21から
図31に示したフローチャートは、一つの具体例であって、これに限定されない。
【0340】
起動時は速度指令デューティの代わりに、起動時に用いられる予め決められたデューティ比である起動デューティを一時的に利用してもよい。
【0341】
上記実施の形態では、信号遮断回路13_1,13_2において、インバータ回路12_1,12_2のハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2への信号を遮断する態様を例に挙げて説明した。しかしながら、この態様に限定されず、信号遮断回路13_1,13_2において、信号が遮断される側は、位置検出信号で制御される側であれば、ハイサイドのスイッチ素子Q1,Q2、ローサイドのスイッチ素子Q3,Q4のどちらでもよい。また、インバータ制御回路11において、位置検出信号で制御される側のゲート遮断が可能であれば、信号遮断回路13が存在しなくてもよい。
【0342】
上記実施の形態では、FG信号Fg_1,Fg_2を監視することにより、上述した判定を行っていたが、故障の検出は、これに限定されない。例えば、検出電圧出力回路24を利用して、駆動中に巻線中点電圧から故障や電圧異常を判定してもよい。但し、この場合、起動時に1系統の回転待ちで停止側のFG信号が復活したときに、後から駆動した側により上昇する巻線中点電圧に対して、巻線中点電圧待機時間を利用して、巻線中点電圧差を解消する必要がある。
【0343】
報知回路25は、駆動制御回路20によってモータ3の異常が検出された場合に、その旨を外部に報知するが、この際、図示しないアラーム出力回路を利用して、モータ3の回転状態の代わりに、モータ3の異常状態をモータ駆動情報信号Soとして上位装置2に通知してもよい。
【符号の説明】
【0344】
1…モータ駆動制御装置、2…上位装置、3…モータ、4…インペラ(羽根車)、5…ファン(ファンモータ)、6,6_1,6_2…コイル(巻線)、7,7_1,7_2…位置検出器、10_1,10_2…モータ駆動回路、11,11_1,11_2…インバータ制御回路、12,12_1,12_2…インバータ回路、13,13_1,13_2…信号遮断回路、16_1,16_2,17_1,17_2…負荷駆動端子、20…駆動制御回路、21…状態制御部、211…速度指令デューティ比算出部、212…動作態様制御部、213…駆動指令デューティ比出力部、214…第1系統駆動指令信号生成部、215…第2系統駆動指令信号生成部、22…監視部、221…第1系統FG信号測定部、222…第2系統FG信号測定部、223…回転数測定部、224…異常判定部、225…FG信号生成部、226…測定選択部、227…電圧測定部、23…電源回路、24,24_1,24_2…検出電圧出力回路、25…報知回路、100…モータ駆動制御システム、101…ファンユニット、240…分圧回路、C21…キャパシタ、F1,F2…ヒューズ、Fg…合成FG信号、Fg_1,Fg_2…FG信号、Lp…電源ライン、Pv…電源端子、Pm1_1、Pm1_2…入力端子、Pm2_1、Pm2_2…出力端子、P1…入力端子,P2…出力端子、P3,P4,P5,P6,P7…信号出力端子,P8,P9,P10,P11…信号入力端子、Pd1~Pd4…出力端子、Ps1~Ps5…端子、Q1~Q4,Qc…スイッチ素子、Q11,Q12…遮断用スイッチ素子、Q13,Q14…切替用スイッチ素子、Ra1,Rb1,R21…抵抗,D21…整流素子、Rs…電流検出用抵抗、Sc…速度指令信号、Sca,Sca_1,Sca_2…駆動指令信号、Sda,Sda_1,Sda_2…第1駆動制御信号、Sdb,Sdb_1,Sdb_2…第2駆動制御信号、So…モータ駆動情報信号、St_1,St_2…制御信号、VDD、VCC…電源端子、Vdc…電源電圧、Vhn,Vhp…ホール信号(位置検出信号の一例)、Vm,Vm_1,Vm_2…巻線中点電圧、Vs,Vs_1,Vs_2…巻線中点検出電圧(検出電圧)。