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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140107
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
H01L21/318 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022045980
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(72)【発明者】
【氏名】神谷 優太
(72)【発明者】
【氏名】虎谷 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】松尾 和展
(72)【発明者】
【氏名】本田 彰司
(72)【発明者】
【氏名】広橋 拓也
(72)【発明者】
【氏名】陳 柏蓉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 恒太
【テーマコード(参考)】
5F058
【Fターム(参考)】
5F058BC08
5F058BE03
5F058BE04
5F058BF23
5F058BF24
5F058BF30
5F058BF37
5F058BH11
5F058BH12
5F058BJ05
(57)【要約】
【課題】窒化膜を選択的に形成可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【解決手段】一の実施形態によれば、半導体装置の製造方法は、酸素を含む第1膜を形成することを含む。前記方法はさらに、窒素を含む第2膜を形成することを含む。前記方法はさらに、ハロゲンを含む物質を用いて前記第1膜および前記第2膜の表面をエッチングすることを含む。前記方法はさらに、前記第1膜および前記第2膜の表面に、窒素を含む第3膜を形成することを含む。前記第3膜は、前記第3膜の一部を形成する第1処理と、ハロゲンを含む物質を用いて前記第3膜の一部をエッチングする第2処理と、を交互に行うことで形成される。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を含む第1膜を形成し、
窒素を含む第2膜を形成し、
ハロゲンを含む物質を用いて前記第1膜および前記第2膜の表面をエッチングし、
前記第1膜および前記第2膜の表面に、窒素を含む第3膜を形成する、
ことを含み、
前記第3膜は、前記第3膜の一部を形成する第1処理と、ハロゲンを含む物質を用いて前記第3膜の一部をエッチングする第2処理と、を交互に行うことで形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第3膜は、前記第1処理と前記第2処理とを交互に行うことで、前記第1膜および前記第2膜の表面のうちの前記第2膜の表面に選択的に形成される、請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1膜は、シリコンと酸素とを含み、前記第2膜および前記第3膜は、シリコンと窒素とを含む、請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1処理は、シリコンを含む第1ガスと、窒素を含む第2ガスとを用いて行われる、請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1ガスは、無機化合物を含む、請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1ガスは、SiH、SiHCl、SiHCl、またはSiHCl(Siはシリコン、Hは水素、Clは塩素を表す)を含む、請求項4または5に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記第2ガスは、窒化剤を含む、請求項4から6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2ガスは、NHまたはN(Nは窒素、Hは水素を表す)を含む、請求項4から7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記第1処理は、50Pa以下で行われる、請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記2処理は、前記第3膜にハロゲンが添加されるように行われる、請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記2処理は、ハロゲンを含む液体を用いて行われる、請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2処理は、F(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、またはI(ヨウ素)を含む前記物質を用いて行われる、請求項1から11のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2処理は、F、HF、NF、SiF、またはClF(Fはフッ素、Hは水素、Nは窒素、Siはシリコン、Clは塩素を表す)を用いて行われる、請求項1から12のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項14】
前記第3膜は、前記第3膜内における第1方向に沿ったハロゲン濃度分布が、複数の濃度ピークを有するように形成される、請求項1から13のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項15】
前記第1方向は、前記第3膜の膜厚方向である、請求項14に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項16】
複数の絶縁膜と複数の第4膜とを交互に含む積層膜を形成し、
前記積層膜内にホールを形成し、
前記ホール内に、電荷蓄積膜の第1部分と半導体層とを形成し、
前記複数の第4膜を除去して、前記積層膜内に複数の凹部を形成し、
ハロゲンを含む物質を用いて前記複数の凹部から前記複数の絶縁膜および前記第1部分の表面をエッチングし、
前記複数の凹部内に、前記電荷蓄積膜の複数の第2部分と複数の電極層とを形成する、
ことを含み、
前記絶縁膜は酸素を含み、前記第1部分および前記第2部分は窒素を含み、
前記第2部分は、前記第2部分の一部を形成する第1処理と、ハロゲンを含む物質を用いて前記第2部分の一部をエッチングする第2処理と、を交互に行うことで形成される、半導体装置の製造方法。
【請求項17】
前記第2部分は、前記第1処理と前記第2処理とを交互に行うことで、前記絶縁膜および前記第1部分の表面のうちの前記第1部分の表面に選択的に形成される、請求項16に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項18】
複数の絶縁膜と複数の電極層とを交互に含む積層膜と、
前記積層膜内に設けられた、電荷蓄積膜の第1部分と、
前記積層膜内に前記第1部分を介して設けられた半導体層と、
前記電極層と前記第1部分との間に設けられ、かつ前記複数の絶縁膜と交互に設けられた、前記電荷蓄積膜の複数の第2部分とを備え、
前記複数の絶縁膜は、酸素を含み、前記第1部分は、窒素を含み、少なくともいずれかの前記第2部分は、窒素を含み、
前記少なくともいずれかの前記第2部分内における第1方向に沿ったハロゲン濃度分布は、複数の濃度ピークを有する、半導体装置。
【請求項19】
前記第1方向は、前記少なくともいずれかの前記第2部分の膜厚方向である、請求項18に記載の半導体装置。
【請求項20】
前記第1方向は、前記積層膜の積層方向と交差する方向である、請求項18または19に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化膜および第1窒化膜の表面に第2窒化膜を形成する場合、第2窒化膜を第1窒化膜の表面に選択的に形成したい場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許出願公開公報US2021/0305043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
窒化膜を選択的に形成可能な半導体装置およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態によれば、半導体装置の製造方法は、酸素を含む第1膜を形成することを含む。前記方法はさらに、窒素を含む第2膜を形成することを含む。前記方法はさらに、ハロゲンを含む物質を用いて前記第1膜および前記第2膜の表面をエッチングすることを含む。前記方法はさらに、前記第1膜および前記第2膜の表面に、窒素を含む第3膜を形成することを含む。前記第3膜は、前記第3膜の一部を形成する第1処理と、ハロゲンを含む物質を用いて前記第3膜の一部をエッチングする第2処理と、を交互に行うことで形成される。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図(1/2)である。
図2】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図(2/2)である。
図3】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するためのグラフである。
図4】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための拡大断面図である。
図5】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(1/2)である。
図6】第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(2/2)である。
図7】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するためのグラフである。
図8】第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するためのグラフおよび断面図である。
図9】第2実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。
図10】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(1/4)である。
図11】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(2/4)である。
図12】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(3/4)である。
図13】第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図(4/4)である。
図14】第2実施形態の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図(1/2)である。
図15】第2実施形態の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図(2/2)である。
図16】第2実施形態の半導体装置の製造方法を説明するためのグラフおよび断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。図1図16において、同一の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0008】
(第1実施形態)
図1および図2は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための断面図である。
【0009】
まず、基板1上に、酸化膜2および窒化膜3を形成する(図1(a))。基板1は例えば、Si(シリコン)基板などの半導体基板である。図1(a)は、基板1の表面に平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、基板1の表面に垂直なZ方向とを示している。X方向、Y方向、およびZ方向は、互いに交差している。本明細書では、+Z方向を上方向として取り扱い、-Z方向を下方向として取り扱う。なお、-Z方向は、重力方向と一致していても一致していなくてもよい。
【0010】
酸化膜2は例えば、SiO膜(シリコン酸化膜)である。酸化膜2はさらに、SiおよびO以外の原子を含んでいてもよい。また、酸化膜2内のSiとOとの組成比は、1:2とは限らず、その他の比でもよい。酸化膜2は例えば、基板1上にCVD(Chemical Vapor Deposition)により形成される。酸化膜2は、第1膜の例である。
【0011】
窒化膜3は例えば、SiN膜(シリコン窒化膜)である。窒化膜3はさらに、SiおよびN以外の原子を含んでいてもよい。また、窒化膜3内のSiとNとの組成比は、1:1とは限らず、その他の比でもよい。窒化膜3内の窒素濃度は、酸化膜2内の窒素濃度より高くなっている。窒化膜3は例えば、基板1上にCVDにより形成される。窒化膜3は、第2膜の例である。
【0012】
なお、酸化膜2および窒化膜3は、基板1上に直接形成されてもよいし、基板1上に他の膜を介して形成されてもよい。また、酸化膜2は、窒化膜3の形成前に形成されてもよいし、窒化膜3の形成後に形成されてもよい。また、酸化膜2および窒化膜3は、図1(a)ではX方向に互いに隣接しているが、他の方向(例えばZ方向)に互いに隣接していてもよい。
【0013】
その後、窒化膜3の表面には自然酸化膜4が形成される(図1(b))。自然酸化膜4は例えば、SiO膜である。図1(b)では、窒化膜3の一部が、自然酸化により自然酸化膜4に変化している。自然酸化膜4は例えば、基板1を半導体製造装置(例えばCVD装置)のチャンバの内部から外部に搬出することで形成される。
【0014】
次に、ウェットエッチングにより自然酸化膜4を除去する(図1(c))。このウェットエッチングは例えば、dHF(希フッ酸)水溶液を用いて行われる。このdHF水溶液は、ハロゲンを含む物質の例である。図1(c)の工程は、ハロゲンを含む物質を用いたドライエッチングにより行われてもよい。
【0015】
図1(c)の工程では、酸化膜2や窒化膜3の表面もエッチングされ、酸化膜2や窒化膜3の一部も除去される(図2(a))。さらには、dHF水溶液に由来するF原子が、酸化膜2や窒化膜3の表面に添加される。この際、窒化膜3の表面におけるF原子の濃度は、酸化膜2の表面におけるF原子の濃度よりも高くなる。このような現象の詳細については、後述する。酸化膜2や窒化膜3の表面はさらに、IPA(イソプロピルアルコール)により処理されてもよい。
【0016】
次に、基板1の全面に窒化膜5を形成する(図2(b))。その結果、窒化膜3の表面に窒化膜5が形成され(図2(b))、さらには、酸化膜2の表面にも窒化膜5が形成される(図2(c))。図2(b)および図2(c)は、窒化膜3上に形成された窒化膜5の膜厚W1と、酸化膜2上に形成された窒化膜5の膜厚W2と、膜厚W1と膜厚W2との差ΔWとを示している(ΔW=W1-W2)。この差ΔWは、インキュベーション差とも呼ばれる。
【0017】
窒化膜5は例えば、SiN膜である。窒化膜5はさらに、SiおよびN以外の原子を含んでいてもよい。また、窒化膜5内のSiとNとの組成比は、1:1とは限らず、その他の比でもよい。窒化膜5は例えば、酸化膜2および窒化膜3上にCVDにより形成される。このCVDは例えば、ALD(Atomic Layer Deposition)である。本実施形態の窒化膜5は例えば、SiソースガスであるSiHCl(ジクロロシラン)ガスと、NソースガスであるNH(アンモニア)ガスとを用いて形成される。窒化膜5や、後述する窒化膜6は、第3膜の例である。
【0018】
本実施形態では、酸化膜2や窒化膜3の表面に添加されたF原子が、窒化膜5の形成を促進する。上述のように、窒化膜3の表面におけるF原子の濃度は、酸化膜2の表面におけるF原子の濃度よりも高くなっている。そのため、窒化膜5は、窒化膜3の表面から形成され始め(図2(b))、その後に酸化膜2の表面からも形成され始める(図2(c))。その結果、窒化膜3上の窒化膜5の膜厚W1は、酸化膜2上の窒化膜5の膜厚W2よりも厚くなる(図2(c))。このような現象の詳細については、後述する。
【0019】
図3は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するためのグラフである。
【0020】
図3の横軸は、図2(b)および図2(c)の工程における経過時間を表す。図3の縦軸は、図2(b)および図2(c)の工程における窒化膜5の膜厚W1、W2を示している。本実施形態では、膜厚W1、W2が、図3に示すように同じレートで増加していく。ただし、本実施形態の窒化膜5は、窒化膜3の表面から形成され始め(図2(b))、その後に酸化膜2の表面からも形成され始める(図2(c))。そのため、図3において、膜厚W2を表す直線は、膜厚W1を表す直線の下方に位置している。膜厚W1、W2は同じレートで増加していくため、膜厚W1、W2の差ΔWは、時間によらず一定となっている。
【0021】
図4は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するための拡大断面図である。
【0022】
図4は、酸化膜2や窒化膜3に添加されたF原子を示している。図1(c)の工程でウェットエッチングを行うと、dHF水溶液に由来するF原子が、酸化膜2や窒化膜3の表面や内部に添加される。酸化膜2や窒化膜3の表面に添加されたF原子は、窒化膜5を形成する際に反応基となる。F原子は、酸化膜2よりも窒化膜3に添加されやすいため、図4に示すように、窒化膜3の表面におけるF原子の濃度は、酸化膜2の表面におけるF原子の濃度よりも高くなる。
【0023】
図4はさらに、SiHCl分子を示している。本実施形態では、SiHCl分子が、図2(b)および図2(c)の工程で、酸化膜2や窒化膜3の表面のF原子と反応することにより、窒化膜5が形成される。この際、SiHCl分子内のH原子が、酸化膜2や窒化膜3の表面からF原子を脱離させると考えられる。
【0024】
図4はさらに、窒化膜3の表面に向かうSiHCl分子「M1」と、窒化膜3の表面に向かうSiHCl分子「M2」とを示している。本実施形態では、窒化膜3の表面におけるF原子の濃度が、酸化膜2の表面におけるF原子の濃度よりも高くなっている。そのため、SiHCl分子「M1」は、窒化膜3の表面でF原子と接近しやすいが、SiHCl分子「M2」は、酸化膜2の表面でF原子と接近しにくい。その結果、窒化膜5は、窒化膜3の表面から形成され始め(図2(b))、その後に酸化膜2の表面からも形成され始めると考えられる(図2(c))。
【0025】
窒化膜5が酸化膜2の表面にも形成され始めると、窒化膜3の表面も酸化膜2の表面も窒化膜5で覆われる。そのため、酸化膜2上への窒化膜5の形成されやすさが、窒化膜3上への窒化膜5の形成されやすさと同じになると考えられる。その結果、膜厚W1、W2は同じレートで増加していくと考えられる(図3)。
【0026】
なお、窒化膜5を形成する際の圧力が低くなると、膜厚W1と膜厚W2との差ΔWが大きくなる。理由は、この圧力が低くなると、SiHCl分子が酸化膜2や窒化膜3の表面に衝突しにくくなり、これが酸化膜2の表面よりも窒化膜3の表面において窒化膜5の形成をより促進するためと考えられる。この圧力は例えば、50Pa以下とすることが望ましい。この圧力は例えば、窒化膜5を形成する際に基板1が収容される半導体製造装置(例えばALD装置)のチャンバ内の圧力である。
【0027】
図2(b)および図2(c)の工程では、窒化膜5が、窒化膜3の表面だけでなく、酸化膜2の表面にも形成される。そのため、窒化膜5を窒化膜3の表面に選択的に形成したい場合には、窒化膜5が酸化膜2の表面に形成される前に、窒化膜5の形成を終了する必要がある。しかしながら、このように窒化膜5の形成を終了すると、膜厚の厚い窒化膜5を形成することが難しい。
【0028】
そこで、本実施形態の窒化膜5(および窒化膜6)は、図5および図6に示す方法で形成することが望ましい。具体的には、窒化膜5(および窒化膜6)が、図2(b)および図2(c)の工程の代わりに、図5(a)~図6(c)の工程で形成される。
【0029】
図5および図6は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0030】
まず、図1(a)~図2(a)の工程を行った後に、基板1の全面に窒化膜5を形成する(図5(a))。その結果、窒化膜3の表面に窒化膜5が形成され、さらには、酸化膜2の表面にも窒化膜5が形成され始める。図5(a)に示す窒化膜5は、窒化膜3上に形成された部分5aと、酸化膜2上に形成された部分5bとを含んでいる。図5(a)の工程は、部分5bが形成され始めた段階で終了する。以下、図5(a)の工程を「形成処理」とも呼ぶ。この形成処理は、第1処理の例である。
【0031】
前述したように、窒化膜5は例えば、SiN膜である。窒化膜5はさらに、SiおよびN以外の原子を含んでいてもよい。また、窒化膜5内のSiとNとの組成比は、1:1とは限らず、その他の比でもよい。窒化膜5は例えば、酸化膜2および窒化膜3上にCVDにより形成される。このCVDは例えば、ALDである。本実施形態の窒化膜5は例えば、SiソースガスであるSiHClガスと、NソースガスであるNHガスとを用いて形成される。窒化膜5や、後述する窒化膜6は、第3膜の例である。
【0032】
次に、ウェットエッチングにより窒化膜5の一部を除去する(図5(b))。このウェットエッチングは例えば、dHF水溶液を用いて行われる。このdHF水溶液は、ハロゲンを含む物質の例である。図5(b)の工程は、ハロゲンを含む物質を用いたドライエッチングにより行われてもよい。以下、図5(b)の工程を「エッチング処理」とも呼ぶ。このエッチング処理は、第2処理の例である。
【0033】
図5(b)の工程では、窒化膜5の部分5bが除去され、かつ、窒化膜5の部分5aも部分的に除去される(図5(c))。その結果、酸化膜2や部分5aの表面もエッチングされ、酸化膜2や部分5aの一部も除去される。さらには、dHF水溶液に由来するF原子が、酸化膜2や部分5aの表面に添加される。この際、部分5aの表面におけるF原子の濃度は、上述の理由で、酸化膜2の表面におけるF原子の濃度よりも高くなる。
【0034】
本実施形態によれば、上記の形成処理およびエッチング処理を行うことで、窒化膜3の表面に窒化膜5(部分5a)を選択的に形成することが可能となる。しかしながら、上記の形成処理およびエッチング処理により形成される窒化膜5の膜厚は、図2(b)および図2(c)の工程で形成される窒化膜5の膜厚と同程度である。そこで、本実施形態では、上記の形成処理およびエッチング処理を交互に繰り返し行う。これにより、窒化膜3の表面に、膜厚の厚い窒化膜を選択的に形成することが可能となる。つまり、窒化膜3の表面に形成される窒化膜の膜厚と、酸化膜2の表面に形成される窒化膜の膜厚の差を大きくすることが可能となる。図5(c)に示す窒化膜5の膜厚は、例えば4nm未満である。
【0035】
次に、基板1の全面に窒化膜6を形成する(図6(a))。その結果、窒化膜5の表面に窒化膜6が形成され、さらには、酸化膜2の表面にも窒化膜6が形成され始める。図6(a)に示す窒化膜6は、窒化膜5上に形成された部分6aと、酸化膜2上に形成された部分6bとを含んでいる。図6(a)の工程は、部分6bが形成され始めた段階で終了する。図5(a)の工程が「1回目の形成処理」であるのに対し、図6(a)の工程は「2回目の形成処理」である。
【0036】
窒化膜6の詳細は、窒化膜5と同様である。窒化膜6は例えば、SiN膜である。窒化膜6はさらに、SiおよびN以外の原子を含んでいてもよい。また、窒化膜6内のSiとNとの組成比は、1:1とは限らず、その他の比でもよい。窒化膜6は例えば、酸化膜2および窒化膜5上にCVDにより形成される。このCVDは例えば、ALDである。本実施形態の窒化膜6は例えば、SiソースガスであるSiHClガスと、NソースガスであるNHガスとを用いて形成される。窒化膜6や、前述した窒化膜5は、第3膜の例である。
【0037】
次に、ウェットエッチングにより窒化膜5の一部を除去する(図6(b))。このウェットエッチングは例えば、dHF水溶液を用いて行われる。このdHF水溶液は、ハロゲンを含む物質の例である。図6(b)の工程は、ハロゲンを含む物質を用いたドライエッチングにより行われてもよい。図5(b)の工程が「1回目のエッチング処理」であるのに対し、図6(b)の工程は「2回目のエッチング処理」である。
【0038】
図6(b)の工程では、窒化膜6の部分6bが除去され、かつ、窒化膜6の部分6aも部分的に除去される(図6(c))。その結果、酸化膜2や部分6aの表面もエッチングされ、酸化膜2や部分6aの一部も除去される。さらには、dHF水溶液に由来するF原子が、酸化膜2や部分6aの表面に添加される。この際、部分6aの表面におけるF原子の濃度は、上述の理由で、酸化膜2の表面におけるF原子の濃度よりも高くなる。
【0039】
本実施形態によれば、上記の形成処理およびエッチング処理を交互に繰り返し行うことで、窒化膜3の表面に、膜厚の厚い窒化膜5、6(部分5a、6a)を選択的に形成することが可能となる。本実施形態では、2回の形成処理と2回のエッチング処理とを交互に行ったが、3回以上の形成処理と3回以上のエッチング処理とを交互に行ってもよい。これにより、窒化膜3の表面に、さらに膜厚の厚い窒化膜を選択的に形成することが可能となる。図6(c)に示す窒化膜5、6の合計膜厚は、例えば4nm以上である。
【0040】
その後、基板1上に種々のデバイス、配線層、プラグ、パッド、層間絶縁膜などを形成する。このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される。
【0041】
図7は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するためのグラフである。
【0042】
図7の横軸は、図5(a)~図6(c)の工程における経過時間を表す。第1サイクルは、1回目の形成処理と1回目のエッチング処理とを表す(図5(a)~図5(c))。第2サイクルは、2回目の形成処理と2回目のエッチング処理とを表す(図6(a)~図6(c))。第3サイクルは、3回目の形成処理と3回目のエッチング処理とを表す。図7の縦軸は、図5(a)~図6(c)の工程における膜厚W1、W2を示している。膜厚W1は、窒化膜3上の窒化膜(窒化膜5、6の部分5a、6a)の膜厚を表す。膜厚W2は、酸化膜2上の窒化膜(窒化膜5、6の部分5b、6b)の膜厚を表す。
【0043】
第1サイクルの最後には、膜厚W2がゼロからわずかに増加している。これは、図5(a)に示す部分5bの膜厚を表す。部分5bは、1回目のエッチング処理により除去されるため、第1サイクルの膜厚W2は、その後にゼロに戻っている。第1サイクルにおける膜厚W1と膜厚W2との差は、1回目の形成処理の終了時に、上述のΔWとなる。
【0044】
第2サイクルの最後にも、膜厚W2がゼロからわずかに増加している。これは、図6(a)に示す部分6bの膜厚を表す。部分6bは、2回目のエッチング処理により除去されるため、第2サイクルの膜厚W2は、その後にゼロに戻っている。第2サイクルにおける膜厚W1と膜厚W2との差は、2回目の形成処理の終了時に、上述のΔWよりも大きいΔW’となる。これは、部分5a、6aの合計膜厚が、部分5aの膜厚よりも大きいことに相当する。
【0045】
第3サイクルの最後にも、膜厚W2がゼロからわずかに増加している。第3サイクルやその後のサイクルの詳細は、第2サイクルと同様である。よって、第3サイクルの膜厚W2は、その後にゼロに戻っている。第3サイクルにおける膜厚W1と膜厚W2との差は、3回目の形成処理の終了時に、上述のΔW’よりも大きいΔW”となる。
【0046】
図8は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するためのグラフおよび断面図である。
【0047】
図8の断面図は、図6(c)に示す断面と同じ断面を示している。図8のグラフは、窒化膜3、5、6内におけるZ方向に沿ったF濃度分布を示している。Z方向は、窒化膜3、5、6の膜厚方向に相当する。本実施形態のZ方向は、第1方向の例である。
【0048】
前述したように、図1(c)の工程、図5(b)の工程、および図6(b)の工程は、dHF水溶液を用いて行われる。これらの工程では、dHF水溶液に由来するF原子がそれぞれ、窒化膜3、5、6の表面や内部に添加される。その結果、窒化膜3、5、6内におけるZ方向に沿ったF濃度分布は、図8に示すように、複数の濃度ピークを有することとなる。これらの濃度ピークはそれぞれ、窒化膜3の表面付近、窒化膜5の表面付近、および窒化膜6の表面付近に形成される。上記の形成処理とエッチング処理とをN回(Nは2以上の整数)繰り返し行う場合には、このような濃度ピークがN+1個出現することとなる。
【0049】
次に、図5(a)~図6(c)を再び参照して、上記の形成処理およびエッチング処理のさらなる詳細を説明する。なお、エッチング処理に関する以下の説明は、図1(c)の工程でのエッチングにも適用可能である。
【0050】
形成処理では、SiHClガス以外のSiソースガスを使用してもよいし、NHガス以外のNソースガスを使用してもよい。Siソースガスは例えば、SiHガス、SiHClガス、SiHClガスなどの無機化合物ガスを含んでいてもよい(Siはシリコン、Hは水素、Clは塩素を表す)。Nソースガスは例えば、Nなどの窒化剤ガスを含んでいてもよい(Nは窒素、Hは水素を表す)。Siソースガスは第1ガスの例であり、Nソースガスは第2ガスの例である。本実施形態の形成処理は、50Pa以下で行われることが望ましい。これにより、窒化膜5、6の形成を促進することが可能となる。
【0051】
エッチング処理では、dHF水溶液以外のエッチング液を使用してもよいし、エッチング液の代わりにエッチングガスを使用してもよい。本実施形態のエッチング処理は、上述のようなハロゲンの添加が可能であれば、ウェットエッチングでもドライエッチングでもよい。このエッチング液やエッチングガスは、F(フッ素)以外のハロゲンを含んでいてもよく、例えばCl(塩素)、Br(臭素)、またはI(ヨウ素)を含んでいてもよい。このエッチング液やエッチングガスは例えば、F、HF、NF、SiF、またはClFを含んでいてもよい(Fはフッ素、Hは水素、Nは窒素、Siはシリコン、Clは塩素を表す)。本実施形態によれば、窒化膜3などの表面にハロゲンを添加することで、窒化膜3の表面に窒化膜5を選択的に形成することが可能となる。これは、窒化膜5、6の表面にハロゲンを添加する場合にも同様である。
【0052】
エッチング処理をエッチングガスを用いて行う場合、本実施形態の形成処理およびエッチング処理は、基板1にSiソースガスおよびNソースガスを供給する工程と、基板1にエッチングガスを供給する工程と、を交互に繰り返し行うことで行われる。これにより、形成処理およびエッチング処理を交互に繰り返し行うことが可能となる。この場合、形成処理とエッチング処理との間に、基板1を収容するチャンバのパージ処理を行うことが望ましい。
【0053】
以上のように、本実施形態では、酸化膜2および窒化膜3の表面に、窒化膜5、6を含む窒化膜を形成する際に、この窒化膜(5、6)が、この窒化膜(5、6)の一部を形成する形成処理と、ハロゲンを含む物質を用いてこの窒化膜(5、6)の一部をエッチングするエッチング処理と、を交互に行うことで形成される。よって、本実施形態によれば、この窒化膜(5、6)を選択的に形成することが可能となる。具体的には、酸化膜2および窒化膜3の表面のうちの窒化膜3の表面に、この窒化膜(5、6)を選択的に形成することが可能となる。
【0054】
(第2実施形態)
図9は、第2実施形態の半導体装置の構造を示す断面図である。本実施形態の半導体装置は、例えば3次元半導体メモリを備えている。本実施形態の半導体装置およびその製造方法は、第1実施形態の半導体装置およびその製造方法の一例に相当する。
【0055】
本実施形態の半導体装置は、基板11と、複数の絶縁膜12と、複数の電極層13と、複数のブロック絶縁膜14と、電荷蓄積膜15と、トンネル絶縁膜16と、チャネル半導体層17と、コア絶縁膜18と、複数の絶縁膜19とを備えている。各電極層13は、バリアメタル層13aと、電極材層13bとを含んでいる。電荷蓄積膜15は、複数の外周膜15aと、内周膜15bとを含んでいる。各絶縁膜12は、第1膜の例である。内周膜15bは、第2膜および第1部分の例である。各外周膜15aは、第3膜および第2部分の例である。
【0056】
基板11は例えば、Si基板などの半導体基板である。図9は、基板11の表面に平行で互いに垂直なX方向およびY方向と、基板11の表面に垂直なZ方向とを示している。本実施形態の基板11は、第1実施形態の基板1に対応している。
【0057】
上記の複数の絶縁膜12および複数の電極層13は、基板11上に交互に積層されており、積層膜Pを形成している。積層膜Pはさらに、各電極層13の側面に順に設けられたブロック絶縁膜14および外周膜15aを含んでいる。
【0058】
各絶縁膜12は例えば、SiO膜である。各絶縁膜12はさらに、SiおよびO以外の原子を含んでいてもよい。本実施形態の各絶縁膜12は、第1実施形態の酸化膜2に対応している。
【0059】
各電極層13は、互いに隣接する絶縁膜12間に順に形成されたバリアメタル層13aおよび電極材層13bを含んでいる。バリアメタル層13aは例えば、TiN(窒化チタン)層である。電極材層13bは例えば、W(タングステン)層である。各電極層13は例えば、3次元半導体メモリのワード線として機能する。
【0060】
各ブロック絶縁膜14は、積層膜P内で電極層13の側面に設けられている。よって、積層膜P内では、複数の絶縁膜12と複数のブロック絶縁膜14が、Z方向に沿って交互に積層されている。各ブロック絶縁膜14は例えば、SiO膜である。各ブロック絶縁膜14は、SiO膜の代わりかSiO膜と共に、金属絶縁膜を含んでいてもよい。
【0061】
電荷蓄積膜15の各外周膜15aは、積層膜P内でブロック絶縁膜14の側面に設けられている。よって、積層膜P内では、複数の絶縁膜12と複数の外周膜15aが、Z方向に沿って交互に積層されている。これらの外周膜15aは、電荷蓄積膜15の内周膜15bの側面に形成されており、内周膜15bに接している。各外周膜15aは例えば、SiN膜である。各外周膜15aはさらに、SiおよびN以外の原子を含んでいてもよい。本実施形態の各外周膜15aは、第1実施形態の窒化膜5、6に対応している。
【0062】
各絶縁膜19は、絶縁膜12の側面に形成されている。図9では、複数の外周膜15aと複数の絶縁膜19が、Z方向に沿って交互に積層されている。当該絶縁膜19は、後述するリプレイス工程を行う際にエッチングストッパとして使用される。各絶縁膜19は例えば、SiO膜である。
【0063】
電荷蓄積膜15の内周膜15b、トンネル絶縁膜16、チャネル半導体層17、およびコア絶縁膜18は、積層膜P内に順に形成されており、Z方向に延びる柱状の形状を有する柱状部Cを形成している。各ブロック絶縁膜14、電荷蓄積膜15の各外周膜15a、および絶縁膜19は、柱状部Cを包囲する環状の形状を有している。
【0064】
電荷蓄積膜15の内周膜15bは、複数の外周膜15aおよび複数の絶縁膜19の側面に設けられている。内周膜15bは、これらの外周膜15aと共に、電荷蓄積膜15を形成している。電荷蓄積膜15は、3次元半導体メモリ用の信号電荷を蓄積することが可能である。内周膜15bは例えば、SiN膜である。内周膜15bはさらに、SiおよびN以外の原子を含んでいてもよい。本実施形態の内周膜15bは、第1実施形態の窒化膜3に対応している。
【0065】
トンネル絶縁膜16は、電荷蓄積膜15の内周膜15bの側面に形成されている。トンネル絶縁膜16は例えば、SiO膜である。
【0066】
チャネル半導体層17は、トンネル絶縁膜16の側面に形成されている。チャネル半導体層17は例えば、ポリシリコン層である。
【0067】
コア絶縁膜18は、チャネル半導体層17の側面に形成されている。コア絶縁膜18は例えば、SiO膜である。
【0068】
図10図13は、第2実施形態の半導体装置の製造方法を示す断面図である。
【0069】
まず、基板11上に、複数の絶縁膜12と複数の犠牲膜21とを交互に形成する(図10(a))。その結果、これらの絶縁膜12および犠牲膜21を含む積層膜Pが、基板11上に形成される。これらの絶縁膜12および犠牲膜21は例えば、ALDなどのCVDにより形成される。各犠牲膜21は例えば、SiN膜である。各犠牲膜21は、第4膜の例である。
【0070】
次に、リソグラフィおよびRIE(Reactive Ion Etching)により、積層膜P内にメモリホールH1を形成する(図10(b))。メモリホールH1は例えば、平面視において円形の形状を有する。メモリホールH1は、ホールの例である。
【0071】
次に、メモリホールH1内に、絶縁膜19、内周膜15b、トンネル絶縁膜16、チャネル半導体層17、およびコア絶縁膜18を順に形成する(図11(a))。その結果、絶縁膜19が、メモリホールH1内で積層膜Pの側面に形成され、内周膜15b、トンネル絶縁膜16、チャネル半導体層17、およびコア絶縁膜18を含む柱状部Cが、メモリホールH1内で絶縁膜19の側面に形成される。絶縁膜19、内周膜15b、トンネル絶縁膜16、チャネル半導体層17、およびコア絶縁膜18は例えば、ALDなどのCVDにより形成される。
【0072】
次に、積層膜P内に不図示のスリットを形成し、スリットからのウェットエッチングにより各犠牲膜21を除去する(図11(b))。その結果、積層膜P内に複数の凹部H2が形成される。このウェットエッチングでは、絶縁膜19がエッチングストッパとして用いられる。よって、これらの凹部H2の側面には、絶縁膜19の側面が露出している。
【0073】
次に、これらの凹部H2からのウェットエッチングにより、これらの凹部H2に露出した絶縁膜19をエッチングする(図12(a))。その結果、各凹部H2付近の絶縁膜19が除去され、各凹部H2内に内周膜15bの側面が露出する。さらには、絶縁膜19が、図9に示す複数の絶縁膜19と同様に、複数の部分に分断される。このウェットエッチングは例えば、dHF水溶液を用いて行われる。このdHF水溶液は、ハロゲンを含む物質の例である。絶縁膜19をエッチングする図12(a)の工程は、自然酸化膜4を除去する図1(b)の工程と同様に行われる。
【0074】
図12(a)の工程では、凹部H2に露出した絶縁膜12や内周膜15bの表面もエッチングされ、絶縁膜12や内周膜15bの一部も除去される。さらには、dHF水溶液に由来するF原子が、絶縁膜12や内周膜15bの表面に添加される。この際、内周膜15b(SiN膜)の表面におけるF原子の濃度は、上述の理由で、絶縁膜12(SiO膜)の表面におけるF原子の濃度よりも高くなる。
【0075】
次に、各凹部H2に露出した内周膜15bの側面に、外周膜15aを形成する(図12(b))。その結果、内周膜15bと複数の外周膜15aとを含む電荷蓄積膜15が、基板11上に形成される。本実施形態によれば、第1実施形態の窒化膜5、6と同様の理由で、これらの外周膜15aを内周膜15bの表面(側面)に選択的に形成することが可能となる。図12(b)では、これらの外周膜15aが、絶縁膜12および内周膜15bの表面のうちの内周膜15bの表面に選択的に形成されている。図12(b)の工程のさらなる詳細については、後述する。
【0076】
次に、各凹部H2から各外周膜15aの側面を酸化する(図13(a))。その結果、各外周膜15aの側面にブロック絶縁膜14が形成される。図13(a)では、複数の外周膜15aと、複数のブロック絶縁膜14が、内周膜15bの側面に順に形成されている。
【0077】
次に、各凹部H2内に、バリアメタル層13aと電極材層13bとを順に形成する(図13(b))。その結果、各凹部H2内に電極層13が形成される。図13(b)では、複数の外周膜15aと、複数のブロック絶縁膜14と、複数の電極層13が、内周膜15bの側面に順に形成されている。このようにして、複数の犠牲膜21が複数の電極層13などに置き換えられる(リプレイス工程)。
【0078】
その後、基板11上に種々のデバイス、配線層、プラグ、パッド、層間絶縁膜などを形成する。このようにして、本実施形態の半導体装置が製造される。
【0079】
図14および図15は、第2実施形態の半導体装置の製造方法の詳細を示す断面図である。図14(a)~図15(b)は、図12(b)の工程の詳細を示している。図14(a)~図15(b)にて外周膜15aを形成する処理は、図5(a)~図6(c)にて窒化膜5、6を形成する処理と対応している。
【0080】
まず、基板11の全面に、外周膜15a用の窒化膜31を形成する(図14(a))。その結果、内周膜15bの表面に窒化膜31が形成され、さらには、絶縁膜12の表面にも窒化膜31が形成され始める。図14(a)に示す窒化膜31は、内周膜15bの表面に形成された部分31aと、絶縁膜12の表面に形成された部分31bとを含んでいる。図14(a)の工程は、部分31bが形成され始めた段階で終了する。以下、図14(a)の工程を「形成処理」とも呼ぶ。この形成処理は、第1処理の例である。
【0081】
窒化膜31は例えば、SiN膜である。窒化膜31はさらに、SiおよびN以外の原子を含んでいてもよい。窒化膜31は例えば、ALDなどのCVDにより形成される。本実施形態の窒化膜31は例えば、SiソースガスであるSiHClガスと、NソースガスであるNHガスとを用いて形成される。窒化膜31や、後述する窒化膜32は、第3膜や第2部分の例である。
【0082】
次に、ウェットエッチングにより窒化膜31の一部を除去する(図14(b))。このウェットエッチングは例えば、dHF水溶液を用いて行われる。このdHF水溶液は、ハロゲンを含む物質の例である。以下、図14(b)の工程を「エッチング処理」とも呼ぶ。このエッチング処理は、第2処理の例である。
【0083】
図14(b)の工程では、窒化膜31の部分31bが除去され、かつ、窒化膜31の部分31aも部分的に除去される。その結果、絶縁膜12や部分31aの表面もエッチングされ、絶縁膜12や部分31aの一部も除去される。さらには、dHF水溶液に由来するF原子が、絶縁膜12や部分31aの表面に添加される。この際、部分31aの表面におけるF原子の濃度は、上述の理由で、絶縁膜12の表面におけるF原子の濃度よりも高くなる。
【0084】
本実施形態によれば、上記の形成処理およびエッチング処理を行うことで、内周膜15bの表面に窒化膜31(部分31a)を選択的に形成することが可能となる。しかしながら、上記の形成処理およびエッチング処理により形成される窒化膜31の膜厚は、図2(b)および図2(c)の工程で形成される窒化膜5の膜厚と同程度である。そこで、本実施形態では、上記の形成処理およびエッチング処理を交互に繰り返し行う。これにより、内周膜15bの表面に、膜厚の厚い窒化膜を選択的に形成することが可能となる。図14(c)に示す窒化膜31の膜厚は、例えば4nm未満である。
【0085】
次に、基板1の全面に、外周膜15a用の窒化膜32を形成する(図15(a))。その結果、窒化膜31の表面に窒化膜32が形成され、さらには、絶縁膜12の表面にも窒化膜32が形成され始める。図15(a)に示す窒化膜32は、窒化膜31の表面に形成された部分32aと、絶縁膜12の表面に形成された部分32bとを含んでいる。図15(a)の工程は、部分32bが形成され始めた段階で終了する。図14(a)の工程が「1回目の形成処理」であるのに対し、図15(a)の工程は「2回目の形成処理」である。
【0086】
窒化膜32の詳細は、窒化膜31と同様である。窒化膜32は例えば、SiN膜である。窒化膜32はさらに、SiおよびN以外の原子を含んでいてもよい。窒化膜32は例えば、ALDなどのCVDにより形成される。本実施形態の窒化膜32は例えば、SiソースガスであるSiHClガスと、NソースガスであるNHガスとを用いて形成される。窒化膜32や、前述した窒化膜31は、第3膜や第2部分の例である。
【0087】
次に、ウェットエッチングにより窒化膜32の一部を除去する(図15(b))。このウェットエッチングは例えば、dHF水溶液を用いて行われる。このdHF水溶液は、ハロゲンを含む物質の例である。図14(b)の工程が「1回目のエッチング処理」であるのに対し、図15(b)の工程は「2回目のエッチング処理」である。
【0088】
図15(b)の工程では、窒化膜32の部分32bが除去され、かつ、窒化膜32の部分32aも部分的に除去される。その結果、絶縁膜12や部分32aの表面もエッチングされ、酸化膜2や部分6aの一部も除去される。さらには、dHF水溶液に由来するF原子が、絶縁膜12や部分32aの表面に添加される。この際、部分32aの表面におけるF原子の濃度は、上述の理由で、絶縁膜12の表面におけるF原子の濃度よりも高くなる。
【0089】
本実施形態によれば、上記の形成処理およびエッチング処理を交互に繰り返し行うことで、内周膜15bの表面に、膜厚の厚い窒化膜31、32(部分31a、32a)を選択的に形成することが可能となる。本実施形態では、2回の形成処理と2回のエッチング処理とを交互に行ったが、3回以上の形成処理と3回以上のエッチング処理とを交互に行ってもよい。これにより、内周膜15bの表面に、さらに膜厚の厚い窒化膜を選択的に形成することが可能となる。図15(b)に示す窒化膜31、32の合計膜厚、すなわち、外周膜15aの膜厚は、例えば4nm以上である。
【0090】
なお、第1実施形態の形成処理およびエッチング処理について説明した内容は、本実施形態の形成処理およびエッチング処理にも適用可能である。また、第1実施形態のエッチング処理について説明した内容は、第1実施形態の図1(c)の工程でのエッチングと同様に、本実施形態の図12(a)の工程でのエッチングにも適用可能である。
【0091】
図16は、第1実施形態の半導体装置の製造方法を説明するためのグラフおよび断面図である。
【0092】
図16の断面図は、図9図13(b)に示す断面と同じ断面を示している。図16のグラフは、電荷蓄積膜15内におけるX方向に沿ったF濃度分布を示している。図16に示すX方向は、電荷蓄積膜15の膜厚方向、すなわち、柱状部Cの放射方向に相当する。図16に示すX方向は、第1方向の例である。一方、図16に示すZ方向は、積層膜Pの積層方向に相当する。
【0093】
前述したように、図12(a)の工程、図14(b)の工程、および図15(b)の工程は、dHF水溶液を用いて行われる。これらの工程では、dHF水溶液に由来するF原子がそれぞれ、内周膜15b、窒化膜31、および窒化膜32の表面や内部に添加される。その結果、内周膜15b、窒化膜31、および窒化膜32内におけるX方向に沿ったF濃度分布は、図16に示すように、複数の濃度ピークを有することとなる。これらの濃度ピークはそれぞれ、内周膜15bの表面付近、窒化膜31の表面付近、および窒化膜32の表面付近に形成される。上記の形成処理とエッチング処理とをM回(Mは2以上の整数)繰り返し行う場合には、このような濃度ピークがM+1個出現することとなる。
【0094】
以上のように、本実施形態によれば、第1実施形態の窒化膜5、6と同様に、外周膜15aを選択的に形成することが可能となる。具体的には、絶縁膜12および内周膜15bの表面のうちの内周膜15bの表面に、外周膜15aを選択的に形成することが可能となる。
【0095】
以上、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例としてのみ提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではない。本明細書で説明した新規な装置および方法は、その他の様々な形態で実施することができる。また、本明細書で説明した装置および方法の形態に対し、発明の要旨を逸脱しない範囲内で、種々の省略、置換、変更を行うことができる。添付の特許請求の範囲およびこれに均等な範囲は、発明の範囲や要旨に含まれるこのような形態や変形例を含むように意図されている。
【符号の説明】
【0096】
1:基板、2:酸化膜、3:窒化膜、4:自然酸化膜、
5:窒化膜、5a:部分、5b:部分、
6:窒化膜、6a:部分、6b:部分、
11:基板、12:絶縁膜、13:電極層、
13a:バリアメタル層、13b:電極材層、14:ブロック絶縁膜、
15:電荷蓄積膜、15a:外周膜、15b:内周膜、16:トンネル絶縁膜、
17:チャネル半導体層、18:コア絶縁膜、19:絶縁膜、21:犠牲膜、
31:窒化膜、31a:部分、31b:部分、
32:窒化膜、32a:部分、32b:部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16