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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140130
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】トンネル天井部の撤去方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/00 20060101AFI20230927BHJP
   E21F 17/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
E21D11/00 Z
E21F17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046005
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 勝也
(72)【発明者】
【氏名】中岡 経
(72)【発明者】
【氏名】木下 知樹
(72)【発明者】
【氏名】杉本 拓哉
【テーマコード(参考)】
2D155
【Fターム(参考)】
2D155CA04
2D155CA06
2D155GB01
2D155GB13
(57)【要約】
【課題】トンネルの軸方向に連設すると共に幅方向に並べた状態で一体として固定されている多数の既存天井板を、所定の時間内に確実に撤去できるようにするトンネル天井部の撤去方法を提供する。
【解決手段】所定の施工領域Rにおいて、一部の既存天井板11を撤去してこれよりも軽量の置換ピース14と置き換える作業を、トンネル10の供用を制限した所定の時間内での作業として、所定の施工領域Rにおける全ての既存天井板11が置換ピース14と置き換えられるまで繰り返し実施する天井板置換え工程と、置き換えられた全ての置換ピース14を撤去する作業を、トンネル10の供用を中断した所定の時間内での作業として実施する置換ピース撤去工程とを含んで構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル覆工体の上部に支持されてトンネルの軸方向に平行に延設して間隔をおいて複数列に設置されている線状支持鋼材に、端部が接合されていることで、トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に並べて配設固定されていることにより、一体となってトンネルの天井部を形成している複数の矩形状の既存天井板を、所定の時間内での作業によって撤去できるようにするトンネル天井部の撤去方法であって、
トンネルの軸方向における所定の施工領域において、一部の前記既存天井板を撤去し、撤去した前記既存天井板と置き換えて当該既存天井板よりも軽量の置換ピースを設置する作業を、トンネルの供用を制限した所定の時間内での作業として、前記所定の施工領域における全ての前記既存天井板が前記置換ピースと置き換えられるまで繰り返し実施する天井板置換え工程と、該天井板置換え工程で置き換えられた全ての前記置換ピースを撤去する作業を、トンネルの供用を中断した所定の時間内での作業として実施する置換ピース撤去工程とを含んで構成されるトンネル天井部の撤去方法。
【請求項2】
前記天井板置換え工程では、複数列における1又は2以上の列毎に、前記既存天井板と置き換えて前記置換ピースを設置する作業を繰り返して実施することで、前記所定の施工領域における全ての前記既存天井板を前記置換ピースと置き換えるようになっている請求項1記載のトンネル天井部の撤去方法。
【請求項3】
前記置換ピース撤去工程では、前記所定の施工領域をトンネルの軸方向に複数の施工スパンに区画して、各々の施工スパン毎に、前記置換ピースを撤去する作業を繰り返して実施することで、全ての前記置換ピースを撤去するようになっている請求項1又は2記載のトンネル天井部の撤去方法。
【請求項4】
前記線状支持鋼材は、前記トンネル覆工体の上部から吊り下げられた状態で支持されたものを含んでいる請求項1~3のいずれか1項記載のトンネル天井部の撤去方法。
【請求項5】
前記置換ピースは、複数列に設置されている前記線状支持鋼材の間隔幅と対応する長さの長辺部を有する、矩形平面形状を備える金属プレートによるものとなっており、前記線状支持鋼材に長辺方向の端部がボルト接合によって着脱可能に接合されることで、短辺方向に連設して配設固定されるようになっている請求項1~4のいずれか1項記載のトンネル天井部の撤去方法。
【請求項6】
前記置換ピースは、前記金属プレートの両側の長辺部に沿って、補強リブが立設していることにより、上面側が開口面となったコの字状の断面形状を有している請求項5記載のトンネル天井部の撤去方法。
【請求項7】
短辺方向に連設する複数の前記置換ピースは、前記金属プレートの短辺部の長さの整数倍が、前記施工スパンに相当する長さとなるように形成されていると共に、同様の大きさの平面形状を備えるように形成されている請求項4又は5記載のトンネル天井部の撤去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル天井部の撤去方法に関し、特に、トンネルの天井部を形成している複数の矩形状の既存天井板を、所定の時間内での作業によって撤去できるようにするトンネル天井部の撤去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
予め工場等において製造された、好ましくはプレキャストコンリート製の天井板を、連設方向に多数連設することによって形成された天井部が、例えば道路トンネル等のトンネルの天端部分を下方から覆うようにして、多くのトンネルに設けられているが、このようなプレキャストコンリート製の既存の天井板による天井部は、老朽化や、トンネルの改築等に伴って、撤去する必要を生じる場合がある。このため、このような既存の天井板(既存天井板)による天井部を撤去する方法が、種々開発されている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-142098号公報
【特許文献2】特開2018-123606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、例えば幹線道路を構成する複数車線の道路トンネル等の、相当のトンネル幅を有するトンネルの場合、トンネルの内壁面を形成するトンネル覆工体の上部に支持されて、トンネルの軸方向に平行に延設する線状の支持鋼材(線状支持鋼材)が、間隔をおいて複数列に設置されている。天井部は、例えば矩形状の平面形状を有するプレキャストコンリート製の多数の天井板の好ましくは両側の端部を、トンネルの軸方向に延設しているこれらの線状支持鋼材に各々載置して接合することで、多数の天井板を、トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に並べた状態で、一体として固定することによって、形成されたものとなっている。
【0005】
このような、複数列に間隔をおいて設置されている線状支持鋼材に端部を接合することで、トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に並べた状態で一体として固定されている、多数の天井板による既存の天井部を撤去するための方法として、例えば1機又は複数機のバックホー50に取り付けたアイアンフォーク51によって、各々の既存天井板52を一枚ずつ挟んで撤去する方法が考えられる(図8(a)、(b)参照)。
【0006】
しかしながら、バックホー50に取り付けたアイアンフォーク51によって、各々の既存天井板52を一枚ずつ挟んで撤去する方法では、撤去する作業に多くの時間を要すると共に、時間の短縮を図るために複数機のバックホー50を用いると、アイアンフォーク51による作業範囲が干渉し合うことになるため、効率良く作業を行うことが困難になる。またプレキャストコンリート製の多数の既存天井板52が、好ましくはALC(軽量気泡コンクリート建材)パネルによるものであると、アイアンフォーク51によって把持する際に割れてしまったり、線状支持鋼材が曲がってしまったりする可能性があるため、手間をかけた慎重な作業を要することになる。
【0007】
また、上述の多数の既存天井板52による天井部を撤去する作業は、トンネルを通行止めにして行う必要がある。特にトンネルが幹線道路を構成する複数車線の道路トンネル等である場合、繰り返し通行止めとなる時間を好ましくは数時間程度の短時間として、所定の時間内の作業の終了後には、確実に通行止めを解除できるようにする必要があるが、バックホー50に取り付けたアイアンフォーク51によって各々の既存天井板52を手間をかけて撤去する方法では、作業が遅延し易く、短時間での通行止めの解除に不確実性を伴うことになるため、採用することは困難である。
【0008】
このようなことから、複数列に間隔をおいて設置されている線状支持鋼材に端部を接合することで、トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に並べた状態で一体として固定されている、多数の既存天井板による天井部を、所定の時間内での作業によって、容易に且つ確実に撤去できるようにする技術の開発が要望されている。
【0009】
本発明は、複数列に間隔をおいて設置されている線状支持鋼材に端部を接合することで、トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に並べた状態で一体として固定されている、多数の既存天井板による天井部を、所定の時間内での作業によって、容易に且つ確実に撤去することを可能にするトンネル天井部の撤去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、トンネル覆工体の上部に支持されてトンネルの軸方向に平行に延設して間隔をおいて複数列に設置されている線状支持鋼材に、端部が接合されていることで、トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に並べて配設固定されていることにより、一体となってトンネルの天井部を形成している複数の矩形状の既存天井板を、所定の時間内での作業によって撤去できるようにするトンネル天井部の撤去方法であって、トンネルの軸方向における所定の施工領域において、一部の前記既存天井板を撤去し、撤去した前記既存天井板と置き換えて当該既存天井板よりも軽量の置換ピースを設置する作業を、トンネルの供用を制限した所定の時間内での作業として、前記所定の施工領域における全ての前記既存天井板が前記置換ピースと置き換えられるまで繰り返し実施する天井板置換え工程と、該天井板置換え工程で置き換えられた全ての前記置換ピースを撤去する作業を、トンネルの供用を中断した所定の時間内での作業として実施する置換ピース撤去工程とを含んで構成されるトンネル天井部の撤去方法を提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0011】
そして、本発明のトンネル天井部の撤去方法は、前記天井板置換え工程では、複数列における1又は2以上の列毎に、前記既存天井板と置き換えて前記置換ピースを設置する作業を繰り返して実施することで、前記所定の施工領域における全ての前記既存天井板を前記置換ピースと置き換えるようになっていることが好ましい。
【0012】
また、本発明のトンネル天井部の撤去方法は、前記置換ピース撤去工程では、前記所定の施工領域をトンネルの軸方向に複数の施工スパンに区画して、各々の施工スパン毎に、前記置換ピースを撤去する作業を繰り返して実施することで、全ての前記置換ピースを撤去するようになっていることが好ましい。
【0013】
さらに、本発明のトンネル天井部の撤去方法は、前記線状支持鋼材が、前記トンネル覆工体の上部から吊り下げられた状態で支持されたものを含んでいることが好ましい。
【0014】
さらにまた、本発明のトンネル天井部の撤去方法は、前記置換ピースが、複数列に設置されている前記線状支持鋼材の間隔幅と対応する長さの長辺部を有する、矩形平面形状を備える金属プレートによるものとなっており、前記線状支持鋼材に長辺方向の端部がボルト接合によって着脱可能に接合されることで、短辺方向に連設して配設固定されるようになっていることが好ましい。
【0015】
また、本発明のトンネル天井部の撤去方法は、前記置換ピースが、前記金属プレートの両側の長辺部に沿って、補強リブが立設していることにより、上面側が開口面となったコの字状の断面形状を有していることが好ましい。
【0016】
さらに、本発明のトンネル天井部の撤去方法は、短辺方向に連設する複数の前記置換ピースが、前記金属プレートの短辺部の長さの整数倍が、前記施工スパンに相当する長さとなるように形成されていると共に、同様の大きさの平面形状を備えるように形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のトンネル天井部の撤去方法によれば、複数列に間隔をおいて設置されている線状支持鋼材に端部を接合することで、トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に並べた状態で一体として固定されている、多数の既存天井板による天井部を、所定の時間内での作業によって、容易に且つ確実に撤去することを可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井部の撤去方法によって既存の天井部が撤去されるトンネルを例示する、(a)は略示横断面図、(b)は(a)のA-Aに沿った略示平面図面図、である。
図2】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井部の撤去方法の天井板置換え工程を説明する、(a)は略示横断面図、(b)は(a)のB-Bに沿った略示平面図である。
図3】本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井部の撤去方法の天井板置換え工程を説明する、(a)は略示横断面図、(b)は(a)のC-Cに沿った略示平面図である。
図4】(a)~(c)は、本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井部の撤去方法の置換ピース撤去工程を説明する略示平面図である。
図5】既存天井板の取付け状態を説明する略示断面図である。
図6】置換ピースを例示する略示斜視図である。
図7】置換ピースの取付け状態を説明する略示断面図である。
図8】トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に並べて設置された多数の既存天井板による天井部の、撤去方法として提案された方法を説明する(a)は略示平面図、(b)は略示縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の好ましい一実施形態に係るトンネル天井部の撤去方法は、図1(a)、(b)に示すような、例えば3車線の幹線道路を形成する道路トンネル10の上部に設置された、多数のプレキャストコンリート製の既存天井板11による天井部12を、好ましくは夜間に車線を規制した所定の時間帯や、全車線を通行止めにした数時間程度の限られた所定の時間内での作業によって、効率良く且つ確実に撤去できるようにするための撤去方法として採用されたものである。すなわち、トンネルとして例えば道路トンネル10の既存の天井部12は、老朽化や、トンネルの改築等に伴って、撤去する必要を生じる場合があり、本実施形態のトンネル天井部の撤去方法は、このような多数の既存天井板11による天井部12を、道路トンネル10を走行する車両への影響をできる限り少なくして、撤去できるようにするための方法として開発されたものである。
【0020】
また、本実施形態では、道路トンネル10は、円形の断面形状を有するトンネルとなっており、内壁面が、好ましくは現場打ちコンクリートや吹付けコンクリートによるトンネル覆工体20によって覆われていると共に、下部から側部にかけて道路構造物23が構築されていることによって、例えば3車線の道路を形成している。
【0021】
さらに、本実施形態では、道路トンネル10の上部に、トンネルの天端部分のトンネル覆工体20を下方から覆うようにして、多数のプレキャストコンリート製の既存天井板11による、既存の天井部12が設けられている。天井部12は、トンネル覆工体20の上部において、吊下げ部材21である吊下げ鋼棒等を介して天端部分から吊り下げられた状態で支持されていたり、ブラケット22を介して側壁部から支持されていたりする線状支持鋼材13に、両側の端部が接合されていることで(図5参照)、トンネルの軸方向Xに連設すると共にトンネルの幅方向Yに複数列に並べて配設固定された状態で一体化された、多数の既存天井板11によって形成されている(図2(a)、(b)参照)。
【0022】
本実施形態のトンネル天井部の撤去方法は、このような、複数列に間隔をおいて設置されている線状支持鋼材13に端部を接合することで、トンネルの軸方向Xに連設すると共にトンネルの幅方向Yに複数列に並べた状態で一体として固定されている、多数の既存天井板11による天井部12を、限られた所定の時間内での作業によって、容易に且つ確実に撤去できるようにするための方法として採用されたものである。
【0023】
そして、本実施形態のトンネル天井部の撤去方法は、トンネル覆工体20の上部に支持されてトンネル20の軸方向Xに平行に延設して間隔をおいて複数列に設置されている線状支持鋼材13に、端部が接合されていることで、トンネル10の軸方向Xに連設すると共にトンネルの幅方向Yに複数列に並べて配設固定されていることにより、一体となってトンネルの天井部12を形成している複数の矩形状の既存天井板11(図1(a)、(b)参照)を、所定の時間内での作業によって撤去できるようにするトンネル天井部の撤去方法であって、トンネル10の軸方向Xにおける所定の施工領域Rにおいて、図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)に示すように、一部の既存天井板11を撤去し、撤去した既存天井板11と置き換えて当該既存天井板11よりも軽量の置換ピース14を設置する作業を、トンネル10の供用を制限した所定の時間内での作業として、所定の施工領域Rにおける全ての既存天井板11が置換ピース14と置き換えられるまで繰り返し実施する天井板置換え工程と、図4(a)、(b)に示すように、天井板置換え工程で置き換えられた全ての置換ピース14を撤去する作業を、トンネル10の供用を中断した所定の時間内での作業として実施する置換ピース撤去工程とを含んで構成されている。置換ピース撤去工程は、例えば夜間に全車線を通行止めにした数時間程度の限られた所定の時間内に実施して、所定の施工領域Rにおける、既存天井板11から置換ピース14に置き換えられた天井部12を撤去するようになっている。
【0024】
また、本実施形態のトンネル天井部の撤去方法は、好ましくは天井板置換え工程では、複数列における1又は2以上の列毎に、既存天井板11と置き換えて置換ピース14を設置する作業を繰り返して実施することで(図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)参照)、所定の施工領域Rにおける全ての既存天井板11を置換ピース14と置き換えるようになっている。
【0025】
さらに、本実施形態のトンネル天井部の撤去方法は、好ましくは置換ピース撤去工程では、所定の施工領域Rをトンネルの軸方向Xに複数の施工スパンSに区画して、各々の施工スパンS毎に、置換ピースを撤去する作業を繰り返して実施することで、全ての置換ピースを撤去するようになっている(図4(a)~(c)参照)。
【0026】
さらにまた、本実施形態では、線状支持鋼材13(図5参照)は、トンネル10の幅方向Yの両端部に配置されたものを除く4列の支持鋼材13が、吊下げ部材21を介してトンネル覆工体20の上部の天端部分から吊り下げられて支持された状態で配設されており、幅方向Yの両端部に配置された支持鋼材13は、トンネル10の軸方向Xに所定のピッチで取り付けられたブラケット22を介して、トンネル覆工体20の上部の側壁部から支持された状態で配設されている(図1(a)参照)。
【0027】
本実施形態では、トンネル10の既存の天井部12を形成している複数の既存天井板11は、好ましくは軽量気泡コンクリート(ALC)製のプレキャストコンクリート板となっており、各々、例えば短辺部の長さが600mm程度、長辺部の長さが2000mm程度の大きさの、矩形状の平面形状を備えるように形成されていると共に、100mm程度の厚さを有しており、且つ60kg程度の重さを有している。各々の既存天井板11は、上述のように、トンネル10の軸方向Xに平行に延設して複数列に設置された隣接する各一対の線状の支持鋼材13に、長辺方向の両側の端部を各々載置して接合されていることによって(図5参照)、トンネル10の軸方向Xに短辺部を沿わせた状態で、トンネル10の軸方向Xに複数連設して配置されると共に、トンネルの幅方向Yに、例えば5列に並べて配置されている(図1(b)参照)。
【0028】
また、本実施形態では、トンネルの幅方向Yの各列において、トンネル10の軸方向Xに連設する複数の既存天井板11の、隣接する各一対の既存天井板11の間の継ぎ目部分には、目地部11aが形成されている。これらの目地部11aには、図5に示すように、好ましくは補強用の丸鋼11bが適宜埋め込まれた状態で、目地モルタル11cが充填されて固化している。これによって、トンネル10の軸方向Xに連設する複数の既存天井板11は、一体として互いに強固に接合された状態となっている。本実施形態では、補強用の丸鋼11bは、例えばトンネル10の軸方向Xに連設する隣接する各一対の既存天井板11の間の目地部11aにおける、2箇所置きの目地部11aに埋め込まれている。
【0029】
また、複数の既存天井板11は、各々、これらの長辺方向の両側の端部が、両側の隣接する一対の線状支持鋼材13に、例えば端部モルタル11dを用いて、強固に接合されている。これによって、隣接する列の複数の既存天井板11は、線状支持鋼材13を介して、トンネル10の幅方向Yにも一体として強固に接合された状態となっている。これらによって、複数の既存天井板11は、トンネル10の軸方向Xに接合されて連設していると共に、トンネルの幅方向Yにも接合されて連設していることによって、一体となってトンネル10の既存の天井部12を形成している。
【0030】
本実施形態では、複数の既存天井板11の長辺方向の端部が各々接合される線状支持鋼材13は、例えば5~6mm程度の厚さの鋼製プレートを用いて形成された、好ましくはT字形の断面形状を有すると共に、トンネル10の軸方向Xに線状に延設する鋼材となっている。線状支持鋼材13は、好ましくは2400mm程度の長さを有する単位鋼材13aを、継手金物を介して延設方向に接合することによって、トンネル10の軸方向Xに所望の長さで線状に延設する当該線状支持鋼材13を形成している。本実施形態では、線状支持鋼材13は、トンネル10の幅方向Xに例えば2000mm程度の中心間の間隔幅をおいて6箇所に配設されている。上述のように、トンネル10の幅方向Yの両端部に配置された2箇所の線状支持鋼材13は、トンネル覆工体20の上部側壁部に取り付けられたブラケット22に載置されて、トンネル覆工体20の上部側壁部に支持された状態で設けられており、これらの間の中間部分の4箇所の線状支持鋼材13は、吊り下げ部材21を介して吊り下げられて、トンネル覆工体20の上部の天端部分から支持された状態で設けられている(図1(a)参照)。
【0031】
中間部分の4箇所の線状支持鋼材13をトンネル覆工体20の上部の天端部分から吊り下げるための吊下げ部材21は、例えば吊下げワイヤーや吊下げ鋼棒(本実施形態では、吊下げ鋼棒)からなる。吊下げ部材21は、上端部がトンネル覆工体20の天端部分に固定された公知のアンカー部材24(図1(a)参照)に連結されると共に、下端部が、線状支持鋼材13の上端部に連結金物25(図5参照)を介して連結されることによって、線状支持鋼材13を、トンネル覆工体20の天端部分から吊り下げた状態で支持できるようになっている。また吊下げ部材21は、トンネル10の幅方向Yの各々の取り付け位置において、トンネル10の軸方向Xに所定のピッチで複数本取り付けられていることで、中間部分の4箇所の線状支持鋼材13を、両側の端部に載置された2箇所の線状支持鋼材13と共に、トンネル20の軸方向Xに互いに平行に延設させ、且つトンネル20の上下方向における同様の高さ位置に配設した状態で、設置できるようにしている。
【0032】
そして、本実施形態では、上述のようにしてトンネル10の軸方向Xにおける所定の施工領域Rに設けられている既存の天井部12は、当該天井部12を構成している複数の矩形状の既存天井板11の全てが、後述する天井板置換え工程において、当該既存天井板11よりも軽量の置換ピース14によって置き換えられるようになっている(図2(a)、(b)~図4(a)、(b)参照)。
【0033】
ここで、既存天井板11と置き換えられる置換ピース14は、本実施形態では、図6及び図7に示すように、複数列に設置されている線状支持鋼材13の中心間の間隔幅として例えば2000mm程度の幅と対応する、これよりも若干短い長さの長辺部を有する、矩形平面形状を備える厚さが4mm程度の金属プレート14aによるものとなっている。また置換ピース14は、短辺部の長さが、好ましくは既存天井板11の短辺部の長さの1/2の、300mm程度となっている。本実施形態では、好ましくは置換ピース14は、金属プレート14aの両側の長辺部に沿って、補強リブ14bが立設していることにより、上面側が開口面となったコの字状の断面形状を有している。置換ピース14がコの字状の断面形状を有していることにより、当該置換ピース14の剛性を高めて、既存天井板11と置き換えて天井部12に取り付けられた際に、トンネル10の天井部12を、置き換えた後もより安定した構造のままで保持させることが可能になる。
【0034】
また、置換ピース14は、例えば60kg程度の重さの既存天井板11よりも軽量の、好ましくはこれの1/2以下の重さとして、例えば25kg程度の重さを有している。これによって、作業員の手作業により容易に取り扱うことができるようになっている。金属プレート14aの長辺方向の両端部には、ボルト締着孔14cが形成されている(図6参照)。図7に示すように、これらのボルト締着孔14cを、線状支持鋼材13のフランジ部13bに形成されたボルト挿通孔に合致させて、ボルト部材14dを締着することで、置換ピース14の長辺方向の端部を、ボルト接合によって、線状支持鋼材13に着脱可能に接合することが可能になる。またこれによって、各々の置換ピース14を、既存天井板11と置き換える所定の位置に、取り外し可能な状態でスムーズに固定することが可能になると共に、これらの置換ピース14を、短辺方向に連設させて隙間なく配置してゆくことが可能になる。固定されたこれらの置換ピース14は、ボルト部材14dの締着を解除することによって、線状支持鋼材13から容易に且つスムーズに取り外すことができる。
【0035】
さらに、置換ピース14は、金属プレート14aが、既存天井板11の短辺部の1/2の長さの短辺部を備えていることにより、1枚の既存天井板11に対して、各々2枚の置換ピース14が置き換えられるようになっている(図2(b)、図3(b)参照)。またトンネル10の軸方向Xに沿って短辺方向に連設する複数の置換ピース14は、本実施形態では、好ましくは金属プレート14aの短辺部の長さの整数倍(本実施形態では24倍)が、所定の施工スパンSに相当する長さとなるように形成されていると共に(図3(b)参照)、同様の大きさの平面形状を備えるように形成されている。
【0036】
そして、本実施形態のトンネル天井部の撤去方法は、トンネル10の軸方向Xに連設すると共にトンネルの幅方向Yに複数列に並べて配設固定されて、一体となってトンネル10の既存の天井部12を形成している複数の矩形状の既存天井板11を、所定の時間内での作業によって撤去できるようにする方法となっており、上述のように、天井板置換え工程と、置換ピース撤去工程とを含んで構成されている。天井板置換え工程は、トンネルの供用を制限した所定の時間内での作業として、例えば夜間に車線を規制した所定の時間帯における作業を、好ましくは複数列における1又は2以上の列毎に、異なる複数の日に繰り返し行って(図2(a)、(b)及び図3(a)、(b)参照)、所定の施工領域Rにおける全ての既存天井板11を置換ピース14と置き換えるようになっている。置換ピース撤去工程では、トンネル10の供用を中断した所定の時間内での作業として、例えば夜間に全車線を通行止めにすることが可能な、好ましくは深夜の4時間程度の限られた所定の時間内の作業を、所定の施工スパンS毎に、異なる複数の日に繰り返し行って、所定の施工領域Rにおける既存の天井部12を、全て撤去するようになっている(図4(a)~(c)参照)。
【0037】
本実施形態では、天井板置換え工程は、例えば第1工程として、図2(a)、(b)に示すように、トンネル10の軸方向Xにおける所定の施工領域Rにおいて、トンネル10の幅方向Yの一方の領域10aにおける2列の既存天井板11を撤去して、これらの2列の撤去した既存天井板11を、軽量の置換ピース14と置き換えて配設固定する。このような作業は、好ましくは車両の通行量の少ない夜から朝の時間帯において、例えば3車線のうちの片側の2車線を作業領域として規制して、残りの1車線に車両を通行可能としたまま状態で、実施することができる。
【0038】
すなわち、天井板置換え工程の第1工程では、例えば片側の二車線の作業領域において、既存の天井部12の上方部分を作業空間として、この作業空間に立ち入った作業員の手作業によって、端部モルタル11dや目地モルタル11cを斫り取りながら、一体として連設している2列の既存天井板11を、個々の既存天井板11として分解すると共に、分解した個々の既存天井板11を、例えば作業員の手作業や簡易な機器を用いた作業によって、作業空間から搬出して撤去することができる。また、撤去した全ての既存天井板11の各々と置き換えるようにして、各2枚の置換ピース14を、撤去された各々の既存天井板11の位置に、例えば作業員の手作業によって、着脱可能なボルト接合により容易に固定して、取り外し可能にスムーズに設置することができる。
【0039】
このような天井板置換え工程の第1工程は、所定の施工領域Rにおけるこれらの2列の既存天井板11の全てが、置換ピース14と置き換えられるまで、片側の二車線を作業領域として規制し、残りの1車線を走行可能とした、夜から朝の時間帯での作業を、一日又は複数の日に亘って繰り返すことによって行うことができる。所定の施工領域Rにおける2列の既存天井板11の全てと置き換えて、置換ピース14を設置したら、次に、天井板置換え工程の第2工程を実施することができる。
【0040】
天井板置換え工程の第2工程では、図3(a)、(b)に示すように、トンネル10の軸方向Xにおける所定の施工領域Rにおいて、トンネル10の幅方向Yの他方の領域10bにおける3列の既存天井板11を撤去して、これらの3列の撤去した既存天井板11を、軽量の置換ピース14と置き換えて配設固定する。このような作業は、第1工程と同様に、好ましくは車両の通行量の少ない夜から朝の時間帯において、例えば3車線のうちの他方の片側の二車線を作業領域として規制して、残りの1車線に車両を通行可能としたままの状態で、実施することができる。
【0041】
すなわち、天井板置換え工程の第2工程では、例えば他方の片側の二車線の作業領域において、第1工程と同様に、既存の天井部12の上方部分を作業空間として、この作業空間に立ち入った作業員の手作業によって、端部モルタル11dや目地モルタル11cを斫り取りながら、一体として連設している1列の既存天井板11を、個々の既存天井板11として分解すると共に、分解した個々の既存天井板11を、例えば作業員の手作業や簡易な機器を用いた作業によって、作業空間から搬出して撤去することができる。また、撤去した全ての既存天井板11の各々と置き換えるようにして、各2枚の置換ピース14を、撤去された各々の既存天井板11の位置に、例えば作業員の手作業によって、着脱可能なボルト接合により容易に固定して、取り外し可能にスムーズに設置することができる。
【0042】
このような天井板置換え工程の第2工程は、第1工程と同様に、所定の施工領域Rにおけるこれらの3列の既存天井板11の全てが置換ピース14と置き換えられるまで、他方の片側の二車線を作業領域として規制し、残りの1車線を走行可能とした、夜から朝の時間帯での作業を、一日又は複数の日に亘って繰り返すことによって行うことができる。所定の施工領域Rにおける3列の既存天井板11の全てと置き換えて、置換ピース14を設置したら、次に、置換ピース撤去工程が実施される。
【0043】
置換ピース撤去工程は、図4(a)~(c)に示すように、上述の天井板置換え工程の第1工程及び第2工程で既存天井板11と置き換えられた、5列の置換ピース14の全てを撤去する工程である。置換ピース撤去工程は、道路トンネル10の全車線を通行止めにして実施する必要があることから、好ましくは車両の通行量が僅かとなる深夜の時間帯において、全車線を通行止めにした4時間程度の限られた所定の時間内に、例えば7.2m程度の所定の施工スパンS毎に、複数の異なる日(本実施形態では、3日の異なる日)に繰り返し作業を行って、所定の施工領域Rにおける、置換ピース14に置き換えられた天井部12の全体を撤去するようになっている。
【0044】
置換ピース撤去工程では、各々の日の全車線を通行止めにした4時間程度の限られた時間内の作業において、各々の所定の施工スパンS毎に、好ましくは作業デッキや昇降設備を備える公知のトンネル点検車(図示せず。)を用いると共に、例えば作業員や簡易な機器を用いた作業によって、既存天井板11と置き換えられた、5列の全ての置換ピース14を、効率良くスピーディーに撤去するようになっている。
【0045】
すなわち、本実施形態の置換ピース撤去工程では、置き換えられた各々の置換ピース14が、重さが25kg程度と軽量で、作業員の手作業によって容易に取扱い可能となっていると共に、これらの端部が載置される線状支持鋼材13に対して、ボルト部材14dを用いた着脱可能なボルト接合によって、容易に取り外し可能に固定されているので、ボルト部材14dの締着状態を解除することで、これらの置換ピース14の各々を、一枚ずつスムーズに取り外して、迅速に撤去することができる。また、残った線状支持鋼材13や吊下げ部材21もまた、作業空間やトンネル点検車の作業デッキにおける、作業員や簡易な機器による作業によって、適宜切断したりしながら、容易に且つスムーズに取り外して撤去することができる。また、各々の所定の施工スパンSで撤去された既存天井板11は、例えばユニック車に積み込んで搬出することができる。
【0046】
このように、本実施形態の置換ピース撤去工程では、各々の所定の施工スパンSにおいて、、既存天井板11と置き換えて天井部12に配置された軽量の置換ピース14は、作業員や簡易な機器による作業によって、好ましくは1枚毎に容易に且つスムーズに撤去することが可能になるので、好ましくは車両の通行量が僅かとなる深夜の時間帯において、全車線を通行止めにした4時間程度の限られた所定の時間内に、撤去作業をスピーディーに実施して、確実に終了させることが可能になる。
【0047】
したがって、本実施形態のトンネル天井部の撤去方法によれば、天井板置換え工程と置換ピース撤去工程とによって、複数列に間隔をおいて設置されている線状支持鋼材13に端部を接合することで、トンネル10の軸方向Xに連設すると共にトンネル10の幅方向Yに複数列に並べた状態で一体として固定されている、多数の既存天井板11による既存の天井部12を、所定の時間内での作業によって、容易に且つ確実に撤去することが可能になる。
【0048】
また、本実施形態のトンネル天井部の撤去方法によれば、天井板置換え工程において、既存天井板11が撤去された天井部12に、これらの撤去された既存天井板11と置き換えて、置換ピース14が設置された状態としてから、車線の規制を解除して、作業を終了するようになっている。これによって、各々の施工スパンSにおいて、置換ピース撤去工程で全域の置換ピース14が撤去されるまでの間、トンネル10の天井部12を、安定した構造のままで保持させることが可能になり、例えば車両の走行時の振動や風圧などによって、一部の既存天井板11が撤去されたままの天井部12にブレ等が生じて、天井部12が不安定な状態になるのを、効果的に回避することが可能になる。
【0049】
さらに、本実施形態では、トンネル10の軸方向Xに沿って短辺方向に連設する複数の置換ピース14は、金属プレート14aの短辺部の長さの整数倍が、所定の施工スパンSに相当する長さとなるように形成されていると共に、同様の大きさの平面形状を備えるように形成されているので、施工が数日にわたる場合に、天井部12に残置される既存天井板11の端部と、置き換えられた置換ピース14の端部とを揃えることができ、これによって天井部12を安定した構造のまま保持することが可能になる。
【0050】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、天井部撤去工程において、置き換えられた置換ピースを1枚毎に撤去する必要は必ずしもなく、複数枚を同時に撤去しても良い。置換ピースは、金属プレートの両側の長辺部に沿って補強リブが立設しているものである必要は必ずしもなく、金属プレートのみによるものであっても良い。本発明のトンネル天井部の撤去方法によって撤去される、複数のプレキャストコンリート製の既存天井板による天井部は、道路トンネルの上部に設置された天井部である必要は必ずしも無い。複数列に設置された線状支持鋼材に端部が接合されて、トンネルの軸方向に連設すると共にトンネルの幅方向に複数列に配設固定されている複数の既存天井板による、本発明のトンネル天井部の撤去方法によって撤去される天井部は、例えば鉄道トンネルの駅舎部分の天井部等であっても良い。
【0051】
10 トンネル(道路トンネル)
10a 一方の領域
10b 他方の領域
11 既存天井板
11a 目地部
11b 目地モルタル
11c 補強用の丸鋼
11d 端部モルタル
12 天井部
13 線状支持鋼材
13a 単位鋼材
14 置換ピース
14a 金属プレート
14b 補強リブ
14c ボルト締着孔
14d ボルト部材
20 トンネル覆工体
21 吊下げ部材
22 ブラケット
23 道路構造物
24 アンカー部材
25 連結金物
X トンネルの軸方向
Y トンネルの幅方向
R 所定の施工領域
S 所定の施工スパン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8