(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014017
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】部分放電検出装置および部分放電検出方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/12 20200101AFI20230119BHJP
【FI】
G01R31/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022110881
(22)【出願日】2022-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2021116373
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000682
【氏名又は名称】弁理士法人ワンディ-IPパ-トナ-ズ
(72)【発明者】
【氏名】森村 皓之
(72)【発明者】
【氏名】下口 剛史
(72)【発明者】
【氏名】上野 辰也
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 光昭
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕介
【テーマコード(参考)】
2G015
【Fターム(参考)】
2G015AA27
2G015BA04
2G015CA01
(57)【要約】
【課題】簡易な処理および構成でケーブルにおける部分放電を検知する。
【解決手段】部分放電検出装置は、商用交流電力を伝送する線状の導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁層と、前記絶縁層の周囲を覆う導体である遮蔽層とを有するケーブルにおける部分放電を検出する部分放電検出装置であって、前記遮蔽層を通して流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された前記電流の、前記商用交流電力の交流電圧に対する位相と、前記電流の電荷量との対応関係を示すデータを生成する生成部と、前記生成部により生成された前記データにおける前記電荷量の周期性を判定し、判定結果に基づいて前記部分放電を検出する放電検出部とを備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用交流電力を伝送する線状の導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁層と、前記絶縁層の周囲を覆う導体である遮蔽層とを有するケーブルにおける部分放電を検出する部分放電検出装置であって、
前記遮蔽層を通して流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された前記電流の、前記商用交流電力の交流電圧に対する位相と、前記電流の電荷量との対応関係を示すデータを生成する生成部と、
前記生成部により生成された前記データにおける前記電荷量の周期性を判定し、判定結果に基づいて前記部分放電を検出する放電検出部とを備える、部分放電検出装置。
【請求項2】
前記生成部は、前記交流電圧の複数周期の各々における前記位相と前記電荷量との対応関係を示す前記データである複数周期データを生成し、
前記放電検出部は、前記複数周期データにおける前記位相ごとの前記電荷量の統計値を用いて前記電荷量の周期性を判定する、請求項1に記載の部分放電検出装置。
【請求項3】
前記放電検出部は、前記統計値に基づいて設定されるしきい値を用いて、前記複数周期データの一部を抽出し、抽出した前記複数周期データにおける前記電荷量の周期性を判定する、請求項2に記載の部分放電検出装置。
【請求項4】
前記放電検出部は、前記統計値に基づいて前記電流の定常状態から逸脱したと判断した前記電流の前記電荷量の周期性を判定する、請求項3に記載の部分放電検出装置。
【請求項5】
前記部分放電検出装置は、さらに、
前記複数周期データに基づいて、前記交流電圧の1周期を所定間隔で区切った各位相区間における前記電荷量の最大値である最大電荷量を特定し、特定した前記各最大電荷量のうちの最小値をしきい値として決定する決定部を備え、
前記放電検出部は、前記決定部により決定された前記しきい値を用いて、前記複数周期データの一部を抽出し、抽出した前記複数周期データにおける前記電荷量の周期性を判定する、請求項2に記載の部分放電検出装置。
【請求項6】
前記生成部は、所定の生成周期に従う生成タイミングにおいて前記データを生成し、
前記放電検出部は、第1の前記生成タイミングにおいて生成された前記データから抽出した第1の前記データに含まれる前記位相と前記電荷量との組の数が所定値未満である場合、抽出した前記第1のデータと、前記第1の生成タイミングとは異なる第2の前記生成タイミングにおいて生成された前記データから抽出した第2の前記データとに基づいて、前記電荷量の周期性を判定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部分放電検出装置。
【請求項7】
前記放電検出部は、前記データを学習モデルに与えることにより、前記部分放電の検出結果を得る、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部分放電検出装置。
【請求項8】
前記放電検出部は、前記データと、前記位相をずらした前記データとの相関に基づいて、前記電荷量の周期性を判定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部分放電検出装置。
【請求項9】
前記放電検出部は、前記交流電圧の1周期を複数の位相範囲にそれぞれ分割した複数の区間の各々における前記電荷量の総和を算出し、前記電荷量の周期性として、前記複数の区間における前記総和の周期性を判定する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部分放電検出装置。
【請求項10】
前記区間ごとの前記総和の180°の位相差を判別可能となるように前記位相範囲が設定される、請求項9に記載の部分放電検出装置。
【請求項11】
前記生成部は、前記電荷量の極性を示す極性情報を生成し、
前記放電検出部は、前記生成部により生成された前記極性情報にさらに基づいて前記部分放電を検出する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部分放電検出装置。
【請求項12】
前記部分放電検出装置は、さらに、
前記電流検出部により検出された前記電流に基づく信号を受ける、通過帯域が互いに異なる複数のバンドパスフィルタを備え、
前記放電検出部は、前記生成部により生成された前記データに基づいて、複数の前記バンドパスフィルタの中からいずれか1つの前記バンドパスフィルタを選択し、
前記生成部は、前記放電検出部により選択された前記バンドパスフィルタの出力信号に基づいて前記データを生成する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の部分放電検出装置。
【請求項13】
商用交流電力を伝送する線状の導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁層と、前記絶縁層の周囲を覆う導体である遮蔽層とを有するケーブルにおける部分放電を検出する部分放電検出方法であって、
前記遮蔽層を通して流れる電流を検出するステップと、
検出した前記電流の、前記商用交流電力の交流電圧に対する位相と、前記電流の電荷量との対応関係を示すデータを生成するステップと、
生成した前記データにおける前記電荷量の周期性を判定し、判定結果に基づいて前記部分放電を検出するステップとを含む、部分放電検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、部分放電検出装置および部分放電検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、地中ケーブルにおける部分放電を検出し、部分放電の検出結果に基づいて絶縁層の劣化を早期に発見する技術が提案されている。
【0003】
たとえば、特許文献1(特開2008-45977号公報)には、以下のような絶縁診断装置が開示されている。すなわち、絶縁診断装置は、部分放電を検出するための部分放電検出センサと接続し、該部分放電検出センサからの検出信号を受信する受信部と、前記受信部の受信信号から、複数の診断対象周波数毎に信号レベルをサンプリングし、かつ、商用電圧ピーク時と判断した該信号レベルと、商用電圧非同期と判断した該信号レベルを該診断対象周波数毎に比較することで、部分放電を判断する絶縁診断部と、を有する。
【0004】
また、たとえば、特許文献2(特開2001-249156号公報)には、以下のような絶縁診断装置が開示されている。すなわち、絶縁診断装置は、部分放電センサと、ノイズセンサと、前記各センサと接続される絶縁診断部とを有し、前記絶縁診断部は、前記各センサによる検出信号を同時にサンプリングし、少なくとも商用電源の2サイクル分、前記サンプリングにより得た部分放電信号及びノイズ信号をそれぞれ1つの波形データとして取得し、この各波形データの取得を1秒ごとに所定回数繰り返し、前記所定回数取得した波形データを、前記部分放電信号及び前記ノイズ信号ごとに加算平均した加算平均波形を求め、前記部分放電信号の加算平均波形と前記ノイズ信号の加算平均波形とを差動演算し、この差動演算した差動波形から周期性のある突発点を抽出及び集団化させたデータを1サイクルごとに分割し、各サイクルごとのANDをとることにより、周期性のあるデータエリアと、そのデータエリアと1/4サイクルずれた点を決定し、前記差動波形における前記データエリア内のデータ値と前記1/4サイクルずれた点の周辺のデータ値とを比較することにより、部分放電が発生しているか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-45977号公報
【特許文献2】特開2001-249156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および2に記載の技術を超えて、簡易な処理および構成でケーブルにおける部分放電を検出することが可能な技術が望まれる。
【0007】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、簡易な処理および構成でケーブルにおける部分放電を検知することが可能な部分放電検出装置および部分放電検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の部分放電検出装置は、商用交流電力を伝送する線状の導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁層と、前記絶縁層の周囲を覆う導体である遮蔽層とを有するケーブルにおける部分放電を検出する部分放電検出装置であって、前記遮蔽層を通して流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された前記電流の、前記商用交流電力の交流電圧に対する位相と、前記電流の電荷量との対応関係を示すデータを生成する生成部と、前記生成部により生成された前記データにおける前記電荷量の周期性を判定し、判定結果に基づいて前記部分放電を検出する放電検出部とを備える。
【0009】
本開示の一態様は、このような特徴的な処理部を備える部分放電検出装置として実現され得るだけでなく、部分放電検出装置の一部または全部を実現する半導体集積回路として実現され得たり、部分放電検出装置を含む検知システムとして実現され得る。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、簡易な処理および構成でケーブルにおける部分放電を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態に係る送電システムの構成を示す図である。
【
図2】
図2は、本開示の実施の形態に係る送電システムに用いられる地中ケーブルの構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の実施の形態に係る送電システムに用いられる普通接続部における地中ケーブルの接続方法の一例を示す図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施の形態に係る送電システムに用いられる絶縁接続部における地中ケーブルの接続方法の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本開示の実施の形態に係る送電システムに用いられる絶縁接続部における地中ケーブルの接続方法の他の例を示す図である。
【
図6】
図6は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出システムの構成を示す図である。
【
図7】
図7は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置の構成を示す図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置におけるCTの構成を示す図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置の構成を示す図である。
【
図10】
図10は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における金属箔電極の取り付け例を示す図である。
【
図11】
図11は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における処理部の構成を示す図である。
【
図12】
図12は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるデータDtの一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるデータDtの一例を示す図である。
【
図14】
図14は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるデータDtの一例を示す図である。
【
図15】
図15は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部による抽出処理の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部による抽出処理の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
【
図18】
図18は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
【
図19】
図19は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
【
図20】
図20は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
【
図21】
図21は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部による相関係数の算出の一例を示す図である。
【
図22】
図22は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成される相関データの一例を示す図である。
【
図23】
図23は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成される相関データの一例を示す図である。
【
図24】
図24は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるデータDtの一例を示す図である。
【
図25】
図25は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における放電検出部により特定される最大電荷量Qmaxの一例を示す図である。
【
図26】
図26は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
【
図27】
図27は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるデータDtの一例を示す図である。
【
図28】
図28は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
【
図29】
図29は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるヒストグラムHqの一例を示す図である。
【
図30】
図30は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置が部分放電の検出を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
最初に、本開示の実施形態の内容を列記して説明する。
【0013】
(1)本開示の実施の形態に係る部分放電装置は、商用交流電力を伝送する線状の導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁層と、前記絶縁層の周囲を覆う導体である遮蔽層とを有するケーブルにおける部分放電を検出する部分放電検出装置であって、前記遮蔽層を通して流れる電流を検出する電流検出部と、前記電流検出部により検出された前記電流の、前記商用交流電力の交流電圧に対する位相と、前記電流の電荷量との対応関係を示すデータを生成する生成部と、前記生成部により生成された前記データにおける前記電荷量の周期性を判定し、判定結果に基づいて前記部分放電を検出する放電検出部とを備える。
【0014】
遮蔽層を通して流れる電流の電荷量は部分放電の電荷量に対応するところ、このように、商用交流電力の交流電圧に対する、遮蔽層を通して流れる電流の電荷量の周期性に着目し、電荷量の周期性の判定結果に基づいて部分放電を検出する構成により、たとえばAI(Artificial Intelligence)を用いて部分放電を検出する構成と比べて、簡易な処理および構成でケーブルにおける部分放電を検出することができる。
【0015】
(2)上記(1)において、前記生成部は、前記交流電圧の複数周期の各々における前記位相と前記電荷量との対応関係を示す前記データである複数周期データを生成してもよく、前記放電検出部は、前記複数周期データにおける前記位相ごとの前記電荷量の統計値を用いて前記電荷量の周期性を判定してもよい。
【0016】
このような構成により、電流の検出結果のばらつきの影響を低減し、ケーブルにおける部分放電をより正確に検出することができる。
【0017】
(3)上記(2)において、前記放電検出部は、前記統計値に基づいて設定されるしきい値を用いて、前記複数周期データの一部を抽出し、抽出した前記複数周期データにおける前記電荷量の周期性を判定してもよい。
【0018】
このような構成により、検出した電流に定常的に含まれるノイズの影響を低減することができるので、ケーブルにおける部分放電をより正確に検出することができる。
【0019】
(4)上記(3)において、前記統計値に基づいて前記電流の定常状態から逸脱したと判断した前記電流の前記電荷量の周期性を判定してもよい。
【0020】
このような構成により、たとえば定期的に前記定常状態を判断することにより、季節ごとのノイズの大きさの変動、1日のうちの時間帯ごとのノイズの大きさの変動、および地中ケーブルの周囲環境の変化に伴うノイズの大きさの変動を考慮して、位相と電荷量との対応関係を示すデータから定常的なノイズを除去することができる。
【0021】
(5)上記(2)から(4)のいずれかにおいて、前記部分放電検出装置は、さらに、前記複数周期データに基づいて、前記交流電圧の1周期を所定間隔で区切った各位相区間における前記電荷量の最大値である最大電荷量を特定し、特定した前記各最大電荷量のうちの最小値をしきい値として決定する決定部を備えてもよく、前記放電検出部は、前記決定部により決定された前記しきい値を用いて、前記複数周期データの一部を抽出し、抽出した前記複数周期データにおける前記電荷量の周期性を判定してもよい。
【0022】
このような構成により、部分放電とノイズを見分けるユーザの知識および技量を必要とすることなく、ノイズの電荷量をしきい値として決定し、決定したしきい値を用いてより正確にデータからノイズを除去することができる。
【0023】
(6)上記(1)から(5)のいずれかにおいて、前記生成部は、所定の生成周期に従う生成タイミングにおいて前記データを生成してもよく、前記放電検出部は、第1の前記生成タイミングにおいて生成された前記データから抽出した第1の前記データに含まれる前記位相と前記電荷量との組の数が所定値未満である場合、抽出した前記第1のデータと、前記第1の生成タイミングとは異なる第2の前記生成タイミングにおいて生成された前記データから抽出した第2の前記データとに基づいて、前記電荷量の周期性を判定してもよい。
【0024】
このような構成により、抽出した複数のデータに基づいて、電荷量の周期性を判定することができるので、微弱な部分放電をより正確に検出することができる。
【0025】
(7)上記(1)から(6)のいずれかにおいて、前記放電検出部は、前記データを学習モデルに与えることにより、前記部分放電の検出結果を得てもよい。
【0026】
このような構成により、機械学習法を用いてより正確に部分放電を検出することができる。
【0027】
(8)上記(1)から(7)のいずれかにおいて、前記放電検出部は、前記データと、前記位相をずらした前記データとの相関に基づいて、前記電荷量の周期性を判定してもよい。
【0028】
このような構成により、位相と電荷量との対応関係を示すデータにおける電荷量のピーク位置に基づいて、電荷量の周期性をより正確に判定することができる。また、たとえば3相3線式のケーブルにおいて、生成したデータに、検出対象のケーブル以外のケーブルにおける部分放電に由来するピークが含まれている場合であっても、電荷量の周期性を正確に判定することができる。
【0029】
(9)上記(1)から(8)のいずれかにおいて、前記放電検出部は、前記交流電圧の1周期を複数の位相範囲にそれぞれ分割した複数の区間の各々における前記電荷量の総和を算出し、前記電荷量の周期性として、前記複数の区間における前記総和の周期性を判定してもよい。
【0030】
このような構成により、位相と電荷量との対応関係を示すデータにおける、部分放電に基づく電荷量のピークを強調することができるので、電荷量の周期性をより正確に判定することができる。
【0031】
(10)上記(9)において、前記区間ごとの前記総和の180°の位相差を判別可能となるように前記位相範囲が設定されてもよい。
【0032】
ケーブルにおける部分放電が発生している場合、遮蔽層を通して流れる電流の電荷量は180°の位相差の2つのピークを有するところ、このような構成により、部分放電に起因して生じる電荷量の180°の周期性をより正確に判定することができる。
【0033】
(11)上記(1)から(10)のいずれかにおいて、前記生成部は、前記電荷量の極性を示す極性情報を生成し、前記放電検出部は、前記生成部により生成された前記極性情報にさらに基づいて前記部分放電を検出してもよい。
【0034】
部分放電は交流電圧の極性に応じた周期性を有するところ、このような構成により、部分放電に起因しない非周期的な電荷量に基づく誤検出を抑制することができる。
【0035】
(12)上記(1)から(11)のいずれかにおいて、前記部分放電検出装置は、さらに、前記電流検出部により検出された前記電流に基づく信号を受ける、通過帯域が互いに異なる複数のバンドパスフィルタを備えてもよく、前記放電検出部は、前記生成部により生成された前記データに基づいて、複数の前記バンドパスフィルタの中からいずれか1つの前記バンドパスフィルタを選択してもよく、前記生成部は、前記放電検出部により選択された前記バンドパスフィルタの出力信号に基づいて前記データを生成してもよい。
【0036】
このような構成により、たとえばインバータに由来する低周波ノイズなどの、定常的なノイズ以外のノイズを低減することができる。
【0037】
(13)本開示の実施の形態に係る部分放電検出方法は、商用交流電力を伝送する線状の導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁層と、前記絶縁層の周囲を覆う導体である遮蔽層とを有するケーブルにおける部分放電を検出する部分放電検出方法であって、前記遮蔽層を通して流れる電流を検出するステップと、検出した前記電流の、前記商用交流電力の交流電圧に対する位相と、前記電流の電荷量との対応関係を示すデータを生成するステップと、生成した前記データにおける前記電荷量の周期性を判定し、判定結果に基づいて前記部分放電を検出するステップとを含む。
【0038】
遮蔽層を通して流れる電流の電荷量は部分放電の電荷量に対応するところ、このように、商用交流電力の交流電圧に対する、遮蔽層を通して流れる電流の電荷量の周期性に着目し、電荷量の周期性の判定結果に基づいて部分放電を検出する方法により、たとえばAIを用いて部分放電を検出する方法と比べて、簡易な処理および構成でケーブルにおける部分放電を検出することができる。
【0039】
以下、本開示の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。また、以下に記載する実施の形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0040】
[構成および基本動作]
図1は、本開示の実施の形態に係る送電システムの構成を示す図である。
図1を参照して、送電システム502は、地中ケーブル10A,10B,10Cと、普通接続部41A,41Bと、絶縁接続部42A,42Bと、地上接続部43A,43Bとを備える。各接続部において、実際には、3相の地中ケーブル10A,10B,10Cの各々に対応する3つの接続部が設けられているが、
図1では簡略化して1つの接続部を記載している。以下、地中ケーブル10A,10B,10Cの各々を地中ケーブル10とも称し、普通接続部41A,41Bの各々を普通接続部41とも称し、絶縁接続部42A,42Bの各々を絶縁接続部42とも称し、地上接続部43A,43Bの各々を地上接続部43とも称する。送電システム502の少なくとも一部分は、たとえば電力系統における地中部分に設けられる。
【0041】
地上接続部43は、ケーブル端末11A,11B,11Cを含む。地中ケーブル10は、地上接続部43において、ケーブル端末11A,11B,11Cに接続されている。より詳細には、地中ケーブル10Aはケーブル端末11Aに接続され、地中ケーブル10Bはケーブル端末11Bに接続され、地中ケーブル10Cはケーブル端末11Cに接続されている。
【0042】
地上接続部43は、たとえば、変電所内において、地中ケーブル10が地上に現れる部分に設けられる。普通接続部41および絶縁接続部42は、マンホール31の内部に設けられる。
【0043】
図2は、本開示の実施の形態に係る送電システムに用いられる地中ケーブルの構成の一例を示す図である。
図2は、地中ケーブル10の断面図を示している。
図2を参照して、地中ケーブル10は、中心部から順に、商用交流電力を伝送する線状の導体71と、内部半導電層72と、絶縁層である架橋ポリエチレン製の絶縁体73と、半導電テープである外部半導電層74と、導電性の遮蔽層75と、ビニル製のシース76とから構成される。すなわち、内部半導電層72が導体71の周囲を覆い、絶縁体73が内部半導電層72の周囲を覆い、外部半導電層74が絶縁体73の周囲を覆い、導体である遮蔽層75が外部半導電層74の周囲を覆い、シース76が遮蔽層75の周囲を覆っている。
【0044】
地中ケーブル10における導体71は、送電に用いられ、高圧電圧が印加されている。遮蔽層75は、導電性である一方、地中ケーブル10の途中で接地されている。このため、遮蔽層75の電圧は、導体71と比べて低い。
【0045】
送電システム502では、一例として、配電方式として3相3線式が用いられる。送電システム502では、3相の地中ケーブル10として、地中ケーブル10A,10B,10Cが設けられる。以下では、地中ケーブル10の各接続部での接続方法の実態は複雑であるため、説明を簡単にするため、各部の構成を簡略化して説明を行う。
【0046】
再び
図1を参照して、ケーブル端末11A,11B,11Cにおいて、地中ケーブル10A,10B,10Cの各々の遮蔽層75が露出している。これらの遮蔽層75と接地用ケーブル14等との接続部分に、それぞれ端子が設けられる。
【0047】
地中ケーブル10A,10B,10Cは、それぞれ、ケーブル端末11A,11B,11Cにおいて接地ノード15に接続されている。より詳細には、地中ケーブル10A,10B,10Cの各々に設けられた端子が接地ノード15に接地用ケーブル14等を介して接続されることにより、各地中ケーブル10の遮蔽層75が接地される。
【0048】
たとえば、地中ケーブル10は、普通接続部41および絶縁接続部42において端部同士が接続された複数のケーブルにより構成される。
【0049】
図3は、本開示の実施の形態に係る送電システムに用いられる普通接続部における地中ケーブルの接続方法の一例を示す図である。
図3では、説明を容易にするために、地中ケーブル10Aのうちの導体71および遮蔽層75を主に示している。以下で説明する内容は、地中ケーブル10Bおよび地中ケーブル10Cについても同様である。
【0050】
図3を参照して、普通接続部41において、地中ケーブル10A1,10A2が接続されている。普通接続部41において、たとえば、地中ケーブル10A1,10A2の導体71同士の接続部分において地中ケーブル10A1,10A2の遮蔽層75が露出する。普通接続部41では、地中ケーブル10A1の遮蔽層75および地中ケーブル10A2の遮蔽層75をたとえば接続用のケーブル12を用いて結線する。
【0051】
そして、地中ケーブル10A1の遮蔽層75および地中ケーブル10A2の遮蔽層75が接続される場合、たとえば地中ケーブル10A2の遮蔽層75における露出部分に端子81が設けられる。なお、端子81は、地中ケーブル10A1の遮蔽層75における露出部分に設けられてもよい。そして、端子81が接地ノード13に接地用ケーブル14を介して接続されることにより、地中ケーブル10Aの遮蔽層75が接地される。
【0052】
図4は、本開示の実施の形態に係る送電システムに用いられる絶縁接続部における地中ケーブルの接続方法の一例を示す図である。
図4では、説明を容易にするために、地中ケーブル10Aの構成のうちの導体71および遮蔽層75を主に示している。以下で説明する内容は、地中ケーブル10Bおよび地中ケーブル10Cについても同様である。
【0053】
図4を参照して、絶縁接続部42において、地中ケーブル10A1,10A2が接続されている。絶縁接続部42において、たとえば、地中ケーブル10A1,10A2の導体71同士の接続部分において地中ケーブル10A1,10A2の遮蔽層75が露出し、露出部分に端子81等がそれぞれ設けられる。
【0054】
絶縁接続部42では、地中ケーブル10A1の導体71および地中ケーブル10A2の導体71が接続される場合、たとえば地中ケーブル10A1における端子81と地中ケーブル10A2における端子81とをケーブル12を用いて結線することにより、地中ケーブル10A1の遮蔽層75および地中ケーブル10A2の遮蔽層75が接続されることで、普通接続部41と同等の機能を有する。
【0055】
図5は、本開示の実施の形態に係る送電システムに用いられる絶縁接続部における地中ケーブルの接続方法の他の例を示す図である。
図5を参照して、絶縁接続部42において、地中ケーブル10A1,10A2が接続され、地中ケーブル10B1,10B2が接続され、地中ケーブル10C1,10C2が接続されている。絶縁接続部42において、たとえば、地中ケーブル10A1,10A2の導体71同士の接続部分において地中ケーブル10A1,10A2の遮蔽層75が露出し、地中ケーブル10B1,10B2の導体71同士の接続部分において地中ケーブル10B1,10B2の遮蔽層75が露出し、地中ケーブル10C1,10C2の導体71同士の接続部分において地中ケーブル10C1,10C2の遮蔽層75が露出し、露出部分に端子81等がそれぞれ設けられる。
【0056】
絶縁接続部42では、たとえば、地中ケーブル10A1における端子81と地中ケーブル10B2における端子81とをケーブル12を用いて結線することにより、地中ケーブル10A1の遮蔽層75および地中ケーブル10B2の遮蔽層75が接続され、地中ケーブル10B1における端子81と地中ケーブル10C2における端子81とをケーブル12を用いて結線することにより、地中ケーブル10B1の遮蔽層75および地中ケーブル10C2の遮蔽層75が接続され、上記地中ケーブル10C1における端子81と地中ケーブル10A2における端子81とをケーブル12を用いて結線することにより、地中ケーブル10C1の遮蔽層75および地中ケーブル10A2の遮蔽層75が接続される。
【0057】
このように、送電システム502では、絶縁接続部42において、地中ケーブル10がクロスボンド接続されてもよい。
【0058】
[部分放電検出装置]
図6は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出システムの構成を示す図である。
図6では、説明を容易にするために、地中ケーブル10のうち地中ケーブル10Aを主に示している。以下で説明する内容は、地中ケーブル10Bおよび地中ケーブル10Cについても同様である。
【0059】
図6を参照して、部分放電検出システム501は、部分放電検出装置500A,500B,500Cを備える。以下、部分放電検出装置500A,500B,500Cの各々を、部分放電検出装置500とも称する。部分放電検出システム501は、送電システム502において用いられる。
【0060】
部分放電検出装置500は、たとえば普通接続部41、絶縁接続部42および地上接続部43に対応して設けられる。
図6に示す例では、部分放電検出装置500Aは、普通接続部41Aに対応して設けられており、部分放電検出装置500Bは、絶縁接続部42Bに対応して設けられており、部分放電検出装置500Cは、地上接続部43Aに対応して設けられている。
【0061】
たとえば、地中ケーブル10Aには電源コイルが取り付けられる。電源コイルには、地中ケーブル10の導体71を通して流れる電流による誘導電流が流れる。これにより、電源コイルは、電流を取り出すことができる。部分放電検出装置500は、たとえば電源コイルによって得られた電力により動作する。
【0062】
部分放電検出装置500は、地中ケーブル10Aにおける部分放電を検出する。なお、部分放電検出装置500は、たとえば橋梁に敷設されたケーブルなどの、地中ケーブル以外のケーブルにおける部分放電を検出する構成であってもよい。
【0063】
[部分放電検出装置の構成]
図7は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置の構成を示す図である。
図7を参照して、部分放電検出装置500は、信号検出部100と、処理部200とを備える。信号検出部100は、電流検出部の一例である。信号検出部100は、カレントトランス110と、信号出力部120とを含む。以下、カレントトランス110をCT110とも称する。
【0064】
信号検出部100は、地中ケーブル10Aの遮蔽層75を通して流れる電流を検出する。より詳細には、信号検出部100は、たとえば、地中ケーブル10Aの普通接続部41、絶縁接続部42または地上接続部43において遮蔽層75と電磁結合する。信号検出部100は、地中ケーブル10Aの遮蔽層75を通して流れる電流の誘導電流に応じたアナログ信号である検出信号を処理部200へ出力する。
【0065】
処理部200は、信号検出部100から受けた検出信号に基づいて、地中ケーブル10Aにおける部分放電を検出する。なお、処理部200は、絶縁接続部42において地中ケーブル10がクロスボンド接続されている場合、地中ケーブル10Aの遮蔽層75を通して流れる電流の誘導電流に応じた検出信号に基づいて、地中ケーブル10Bおよび地中ケーブル10Cの少なくともいずれか一方における部分放電を検出する構成であってもよい。
【0066】
[信号検出部]
図8は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置におけるCTの構成を示す図である。
図8を参照して、CT110は、リングコア101と、巻線102とを含む。リングコア101には、巻線102が巻かれている。巻線102は、信号出力部120に接続されている。リングコア101における巻線102の巻き数は、たとえば1ターン~7ターンである。
【0067】
CT110は、たとえば、導電ケーブル53がリングコア101を貫通するように取り付けられる。導電ケーブル53は、たとえばケーブル12または接地用ケーブル14である。より詳細には、再び
図4および
図6を参照して、普通接続部41Aにおける部分放電検出装置500AのCT110は、接地用ケーブル14がリングコア101を貫通するように取り付けられる。また、絶縁接続部42Bにおける部分放電検出装置500BのCT110は、地中ケーブル10A1の遮蔽層75および地中ケーブル10A2の遮蔽層75を接続するケーブル12がリングコア101を貫通するように取り付けられる。また、地上接続部43Aにおける部分放電検出装置500CのCT110は、接地用ケーブル14がリングコア101を貫通するように取り付けられる。遮蔽層75および導電ケーブル53を通して電流が流れると、誘導結合により、巻線102を通して誘導電流が流れる。信号出力部120は、巻線102を通して流れる当該誘導電流に応じた検出信号を処理部200へ出力する。信号出力部120は、増幅器を備え、検出信号を当該増幅器により増幅して処理部200へ出力する構成であってもよい。
【0068】
なお、信号検出部100は、CT110の代わりに、遮蔽層75を通して電流が流れることにより発生する電磁波を検出する電磁波センサを備える構成であってもよい。この場合、信号出力部120は、当該電磁波センサにより検出された電磁波に応じた検出信号を処理部200へ出力する。
【0069】
また、信号検出部100は、CT110の代わりに、遮蔽層75を通して電流が流れることにより発生する音波を検出する音波センサを備える構成であってもよい。この場合、信号出力部120は、当該音波センサにより検出された音波に応じた検出信号を処理部200へ出力する。
【0070】
図9は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置の構成を示す図である。
図9を参照して、部分放電検出装置510は、信号検出部100Aと、処理部200とを備える。信号検出部100Aは、金属箔電極105,106と、信号出力部120Aとを含む。部分放電検出システム501は、部分放電検出装置500の代わりに部分放電検出装置510を備える構成であってもよい。
【0071】
信号検出部100Aは、地中ケーブル10の遮蔽層75の電位の変化を検出する。より詳細には、信号検出部100Aは、たとえば、地中ケーブル10の接続部である絶縁接続部42において遮蔽層75と静電結合する。
【0072】
図10は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における金属箔電極の取り付け例を示す図である。
図9および
図10を参照して、金属箔電極105,106は、信号出力部120Aに接続されている。
【0073】
金属箔電極105,106は、たとえば、絶縁接続部42における絶縁筒77を介して互いに反対側において、地中ケーブル10のシース76の表面に貼り付けられる。より詳細には、たとえば地中ケーブル10A1,10A2が接続される絶縁接続部42において、金属箔電極105は、地中ケーブル10A1のシース76の表面に貼り付けられ、金属箔電極106は、地中ケーブル10A2のシース76の表面に貼り付けられる。なお、金属箔電極105,106は、地中ケーブル10A2のシース76の外周を覆うように貼り付けられてもよい。また、各金属箔電極が貼り付けられる位置および金属箔電極の個数は限定されず、3つ以上の金属箔電極が貼り付けられてもよい。
【0074】
遮蔽層75および導電ケーブル53の電位が変化すると、電界結合により、金属箔電極105,106において電位の変化が生じる。信号出力部120Aは、当該電位の変化に基づく、遮蔽層75の電位の変化に応じた検出信号を処理部200へ出力する。
【0075】
[処理部]
図11は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における処理部の構成を示す図である。
図11を参照して、処理部200は、フィルタ処理部210と、増幅部220と、ADC(Analog Digital Converer)230と、生成部250と、放電検出部260と、記憶部280とを含む。記憶部280は、たとえば、不揮発性メモリである。
【0076】
記憶部280は、ADC230から出力されるデジタル信号のサンプル値と、遮蔽層75を通して流れる電流の電荷量Qとの対応関係を示す対応テーブルTb1を記憶している。
【0077】
フィルタ処理部210は、アナログスイッチ211と、バンドパスフィルタ(BPF)212A,212B,212Cとを有する。以下、BPF212A,212B,212Cの各々をBPF212とも称する。3つのBPF212は、通過帯域が互いに異なる。たとえば、BPF212Aの通過帯域は5MHz以上10MHz未満であり、BPF212Bの通過帯域は10MHz以上20MHz未満であり、BPF212Cの通過帯域は20MHz以上30MHz未満である。なお、フィルタ処理部210は、通過帯域が互いに異なる4つ以上のBPF212を有する構成であってもよい。
【0078】
BPF212は、信号検出部100により検出された、遮蔽層75を通して流れる電流に基づく信号すなわち検出信号を受ける。
【0079】
より詳細には、アナログスイッチ211は、信号出力部120または120Aから受けた検出信号を3つのBPF212のうちのいずれか1つのBPF212へ出力する。後述するように、アナログスイッチ211は、放電検出部260からスイッチ制御信号を受けて、受けたスイッチ制御信号に応じて検出信号の出力先のBPF212を切り替える。
【0080】
アナログスイッチ211から検出信号を受けたBPF212は、受けた検出信号の周波数成分のうち、自己の通過帯域外の成分を減衰させた検出信号を増幅部220へ出力する。
【0081】
増幅部220は、BPF212から受けた検出信号を増幅してADC230へ出力する。
【0082】
ADC230は、増幅部220から受けた検出信号をデジタル信号に変換して生成部250へ出力する。
【0083】
<生成部>
生成部250は、信号検出部100または100Aにより検出された電流の、商用交流電力の交流電圧に対する位相Φと、当該電流の電荷量Qとの対応関係を示すデータを生成する。
【0084】
より詳細には、生成部250は、信号出力部120または120Aから検出信号を受けて、受けた検出信号から商用交流電力の周波数成分を抽出し、抽出した検出信号に基づいて、商用交流電力の交流電圧がゼロボルトとなるタイミングであるゼロクロス点を検出する。
【0085】
生成部250は、検出したゼロクロス点を基準とする、ADC230から受けたデジタル信号の各サンプル値のサンプリングタイミングを位相Φとして算出する。また、生成部250は、各サンプル値と、所定のしきい値であるトリガレベルとを比較し、受けたデジタル信号のサンプル値のうちのトリガレベルを超えるサンプル値を抽出する。たとえば、トリガレベルは、商用交流電力の1周期あたりにトリガレベルを超えるサンプル値の数が所定範囲となるように予め設定される。なお、生成部250は、商用交流電力の1周期を、十分な位相精度を確保可能な所定長さの複数の時間に分割し、分割した各時間において最大値を取るサンプル値を抽出する構成であってもよい。
【0086】
生成部250は、トリガレベルを超えないサンプル値に対応する電荷量Qをゼロとするとともに、記憶部280における対応テーブルTb1から、抽出したサンプル値に対応する電荷量Qを取得することにより、位相Φと電荷量Qの絶対値との対応関係を示すデータを生成する。なお、生成部250は、記憶部280における対応テーブルTb1から当該サンプル値に対応する電荷量Qを取得する代わりに、上記トリガレベルを超えるサンプル値の絶対値を電荷量Qとして用いて、上記データを生成する構成であってもよい。以下、「電荷量Q」というときは、特に断らない限り、遮蔽層75を通して流れる電流の電荷量の絶対値を意味するものとする。
【0087】
たとえば、生成部250は、商用交流電力の交流電圧の複数周期の各々における位相Φと電荷量Qとの対応関係を示すデータDtを生成する。データDtは、複数周期データの一例である。
【0088】
より詳細には、商用交流電力の交流電圧の周期の2倍以上である生成周期T1ごとに、生成周期T1における位相Φと電荷量Qとの対応関係を示すデータDtを生成する。生成周期T1は、たとえば1秒である。
【0089】
図12から
図14は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるデータDtの一例を示す図である。
図12から
図14において、横軸は位相Φ[degree]を示しており、縦軸は電荷量Q[pC]の絶対値を示している。
図12は、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生していない状態において生成部250により生成されるデータDtを示している。
図13は、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生した状態において生成部250により生成されるデータDtを示している。
図14は、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生していない状態であって、かつ定常的なノイズとは異なる突発的なノイズが発生している状態において生成部250により生成されるデータDtを示している。突発的なノイズは、たとえばインバータに由来する低周波ノイズである。
【0090】
生成部250は、生成周期T1に従う生成タイミングにおいてデータDtを生成し、生成したデータDtを放電検出部260へ出力する。
【0091】
たとえば、生成部250は、単位時間あたりにADC230から受けたデジタル信号のサンプル値のうちのトリガレベルを超えるサンプル値の数が所定数未満となるように、トリガレベルまたは増幅部220の増幅率を調整する。具体的には、生成部250は、単位時間あたりにADC230から受けたデジタル信号のサンプル値のうちのトリガレベルを超えるサンプル値の数が所定値以上となる場合、トリガレベルを引き上げるかまたは増幅部220へ調整信号を出力することにより増幅部220の増幅率を低下させる。生成部250は、増幅部220の増幅率を調整した場合、増幅率の調整量に応じて記憶部280における対応テーブルTb1を更新する。なお、生成部250は、増幅部220の増幅率を調整した場合、対応テーブルTb1を更新する代わりに、増幅率の調整量に応じた係数を電荷量Qに乗じる構成であってもよい。
【0092】
たとえば、生成部250は、電荷量Qの極性を示す極性情報を生成する。より詳細には、生成部250は、データDtにおける電荷量Qの極性を認識可能な極性情報を生成し、生成した極性情報をデータDtとともに放電検出部260へ出力する。なお、生成部250は、電荷量Qの極性を保持したデータDtを生成して放電検出部260へ出力する構成であってもよい。
【0093】
<放電検出部>
放電検出部260は、生成部250により生成されたデータDtに基づいて、3つのBPF212の中からいずれか1つのBPF212を選択する。より詳細には、放電検出部260は、生成部250からデータDtを受けて、受けたデータDtにおいて、たとえば
図14に示すように突発的なノイズが発生していると判断した場合、突発的なノイズの周波数を通過帯域に含まないBPF212を選択する。そして、放電検出部260は、スイッチ制御信号をアナログスイッチ211へ出力することにより、アナログスイッチ211によるアナログ信号の出力先を、選択したBPF212に切り替える。
【0094】
たとえば、生成部250は、放電検出部260により選択されたBPF212の出力信号に基づいてデータDtを生成する。より詳細には、生成部250は、放電検出部260により選択されたBPF212から出力された検出信号に基づくデジタル信号をADC230から受けて、受けたデジタル信号に基づいてデータDtを生成し、生成したデータDtを放電検出部260へ出力する。たとえば、生成部250は、放電検出部260により選択されたBPF212に応じた係数を電荷量Qに乗じて、データDtを生成する。
【0095】
放電検出部260は、生成部250により生成されたデータDtにおける電荷量Qの周期性を判定し、判定結果に基づいて地中ケーブル10Aにおける部分放電を検出する。
【0096】
たとえば、放電検出部260は、生成部250からデータDtを受けて、受けたデータDtにおける位相Φごとの電荷量Qの統計値を用いて電荷量Qの周期性を判定する。より詳細には、放電検出部260は、生成部250から受けたデータDtを用いて、生成周期T1における位相Φごとの電荷量Qの頻度Nを用いて電荷量Qの周期性を判定する。頻度Nは、統計値の一例である。
【0097】
(抽出処理)
放電検出部260は、算出した電荷量Qの頻度Nに基づいて設定される、電荷量Qの上限値Th1を用いて、データDtの一部を抽出する抽出処理を行う。
【0098】
たとえば、放電検出部260は、算出した電荷量Qの頻度Nに基づいて、定常状態における電荷量Qの上限値Th1を決定する。より詳細には、放電検出部260は、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生していない状態での所定期間における電荷量Qの分布に基づいて、定常状態における電荷量Qの上限値Th1を決定する。定常状態における電荷量Qは、特定の位相Φで発生することなく幅広く分布しており、その頻度Nも全体的に多く現れる。放電検出部260は、所定期間における電荷量Qの分布に基づいて、統計的手法を用いて上限値Th1を決定する。
【0099】
図15および
図16は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部による抽出処理の一例を示す図である。
図15および
図16において、横軸は位相Φ[degree]を示しており、縦軸は電荷量Q[pC]の絶対値を示している。
図15は、放電検出部260による抽出処理前のデータDtを示している。
図16は、放電検出部260により抽出されたデータDtrを示している。
【0100】
図15および
図16を参照して、放電検出部260は、生成部250から受けたデータDtの一部を定常状態におけるデータDtに基づいて抽出する抽出処理を行うことにより、データDtrを生成する。より詳細には、放電検出部260は、生成部250から受けたデータDtにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th1より大きい組を抽出したデータDtrを生成する。すなわち、放電検出部260は、データDtにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th1以下である組を除外することにより、ノイズが除去されたデータDtrを生成する。
【0101】
たとえば、放電検出部260は、定期的または不定期に、定常状態における電荷量Qの上限値Th1を更新する。電荷量Qに含まれるノイズの大きさは、季節、1日のうちの時間帯および地中ケーブルの周囲環境の変化等に応じて変動する場合があるところ、このように定期的または不定期に上限値Th1を更新する構成により、たとえば季節ごとのノイズの大きさの変動を考慮してデータDtからノイズを除去することができるので、ノイズ除去後のデータDtrに基づいて部分放電をより正確に検出することができる。
【0102】
(周期性の判定)
放電検出部260は、頻度Nに基づいて定常状態から逸脱したと判断した電流の電荷量Qの周期性を判定する。より詳細には、放電検出部260は、生成したデータDtrにおける電荷量Qの周期性を判定する。
【0103】
図17から
図20は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
図17から
図20において、横軸は位相Φ[degree]を示しており、縦軸は電荷量Q[pC]の絶対値を示している。
図17から
図20は、地中ケーブル10Aに部分放電が発生している状態におけるデータDtrであって、異なる時期におけるデータDtrを示している。
【0104】
図17から
図20を参照して、部分放電が発生している場合においても、データDtrにおける位相Φおよび電荷量Qとの関係を示すパターンは、発生時期ごとに異なる。このような時期に応じたパターンの変化も考慮して、部分放電を正確に検出する技術が求められる。
【0105】
たとえば、放電検出部260は、商用交流電力の交流電圧の1周期を複数の位相範囲にそれぞれ分割した複数の位相区間Φsの各々における電荷量Qの総和Qsumを算出し、電荷量Qの周期性として、複数の位相区間Φsにおける総和Qsumの周期性を判定する。たとえば、位相区間Φsごとの総和Qsumの180°の位相差を判別可能となるように位相範囲が設定される。隣接する2つの位相区間Φsは、一部が互いに重複していてもよい。一例として、位相範囲は30°に設定される。
【0106】
より詳細には、放電検出部260は、生成したデータDtrにおいて、位相区間Φsの下端の位相Φ1をゼロ°から5°ずつ増加させながら、位相Φ1から位相(Φ1+30°)までの位相区間Φsにおける電荷量Qの総和Qsumを算出することにより、72個の位相区間Φsと、総和Qsumとの対応関係を示す区間データDtsを生成する。具体的には、放電検出部260は、位相区間Φs1はゼロ°から30°、位相区間Φs2は5°から35°というように、位相区間Φs3以後も同様に5°ずつシフトさせた位相区間Φsにおける総和Qsumを算出する。なお、位相区間Φs67において330°から360°における総和Qsumを計算し、位相区間Φs68以降は、再びゼロ°から5°ずつ増加させた電荷量Qの値を用いる。
【0107】
放電検出部260は、生成部250からデータDtを受けて、受けたデータDtの一部を抽出してデータDtrを生成するたびに、区間データDtsを生成する。
【0108】
放電検出部260は、区間データDtsを生成すると、生成した区間データDtsと参照区間データDrefとを比較し、比較結果に基づいて、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生したと仮判断する。参照区間データDrefは、直前に生成した区間データDtsであってもよいし、過去の一定期間において生成した複数の区間データDtsを平均化することにより生成した平均区間データであってもよい。
【0109】
より詳細には、放電検出部260は、生成した区間データDtsと参照区間データDrefとの、対応する位相区間Φsごとの総和Qsumの差分の2乗の和を算出し、算出した和が所定のしきい値以上である場合、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生したと仮判断する。
【0110】
放電検出部260は、区間データDtsと参照区間データDrefとの比較結果に基づいて部分放電が発生したと仮判断した場合、当該区間データDtsを用いて総和Qsumの周期性を判定する。
【0111】
たとえば、放電検出部260は、区間データDtsの自己相関に基づいて、総和Qsumの周期性を判定する。
【0112】
図21は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部による相関係数の算出の一例を示す図である。
【0113】
図21を参照して、放電検出部260は、区間データDtsと、位相Φをずらした区間データDtsとの相関に基づいて、区間データDtsの相関データRを生成する。より詳細には、放電検出部260は、区間データDtsの位相区間Φsをシフトさせた区間データDtsであるシフト区間データDtsを生成し、位相区間Φsのシフト量nと、区間データDtsとシフト区間データDtsとの相関係数r(n)との対応関係を示す相関データRを生成する。放電検出部260は、生成した相関データRに基づいて、総和Qsumの周期性を判定する。
【0114】
図22および
図23は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成される相関データの一例を示す図である。
図22および
図23において、横軸はシフト量nを示しており、縦軸は相関係数r(n)を示している。
図22は、
図12に示すデータDtについての抽出処理を行い、生成したデータDtrに基づいて生成した区間データDtsの相関データR1を示している。
図23は、
図13に示すデータDtについての抽出処理を行い、生成したデータDtrに基づいて生成した区間データDtsの相関データR2を示している。
【0115】
図22を参照して、相関データR1は、シフト量nがゼロ、1および71のときは相関係数r(n)が高い一方で、シフト量nが3から70のときは相関係数r(n)が約ゼロである。
【0116】
図23を参照して、相関データR2は、2つの極小値と、シフト量がゼロおよび71のときを除く1つの極大値とを有する。より詳細には、相関データR1は、シフト量nのゼロから約18への増大に伴って相関係数r(n)が低下し、シフト量nの約19から約36への増大に伴って相関係数r(n)が増大し、シフト量nの約37から約55への増大に伴って相関係数r(n)が低下し、シフト量nの約56から71への増大に伴って相関係数r(n)が増大する。
【0117】
相関データR2における2つの極小値および1つの極大値は、
図13に示す電荷量Qの2つのピークに対応している。
【0118】
たとえば、放電検出部260は、相関データRが1つの極大値を有し、かつ極大値のシフト量nに対応する位相が所定範囲内である場合に、総和Qsumに180°の周期性があると判定する。
【0119】
一例として、放電検出部260は、相関データRと、しきい値ThAを用いて、総和Qsumに180°の周期性があるか否かを判定する。
【0120】
すなわち、放電検出部260は、相関データRの極大値がしきい値ThAよりも大きく、かつ極大値のシフト量nに対応する位相がたとえば170°から190°の範囲内である場合、総和Qsumに180°の周期性があると判定する。
【0121】
一方、放電検出部260は、相関データRの極大値がしきい値ThA以下であるか、または極大値のシフト量nに対応する位相がたとえば170°から190°の範囲外である場合、総和Qsumに180°の周期性はないと判定する。
【0122】
たとえば、放電検出部260は、生成部250により生成された極性情報にさらに基づいて部分放電を検出する。より詳細には、放電検出部260は、生成部250から受けた極性情報に基づいて、データDtrにおける電荷量Qの極性が正極性と負極性とで交互に遷移しているか否かを判断する。
【0123】
そして、放電検出部260は、総和Qsumに180°の周期性があり、かつ総和Qsumに対応する電荷量Qの極性が正極性と負極性とで交互に遷移していると判断した場合、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生していると判断する。
【0124】
一方、放電検出部260は、総和Qsumに180°の周期性がないと判定した場合、または総和Qsumに対応する電荷量Qが正極性と負極性とで交互に遷移していないと判断した場合、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生していないと判断する。
【0125】
たとえば、放電検出部260は、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生したと判断した場合、判断結果をPLC(Power Line Communication)を用いて、図示しないサーバへ通知する。
【0126】
<変形例>
(周期性の判定の他の例)
たとえば、放電検出部260は、相関データRが2つの極小値および1つの極大値を有し、2つの極小値の間のシフト量nの差分に対応する位相差が所定範囲内であり、かつ極大値のシフト量nに対応する位相が所定範囲内である場合に、総和Qsumに180°の周期性があると判定する。
【0127】
一例として、放電検出部260は、相関データRと、しきい値ThA,ThBとを用いて、総和Qsumに180°の周期性があるか否かを判定する。ここで、しきい値ThAはしきい値ThBよりも大きいものとする。
【0128】
すなわち、放電検出部260は、相関データRの極大値がしきい値ThAよりも大きく、相関データRの2つの極小値がしきい値ThBよりも小さく、2つの極小値の間のシフト量nの差分に対応する位相差がたとえば170°から190°の範囲内であり、かつ極大値のシフト量nに対応する位相がたとえば170°から190°の範囲内である場合、総和Qsumに180°の周期性があると判定する。
【0129】
一方、放電検出部260は、相関データRの極大値がしきい値ThA以下であるか、相関データRの2つの極小値がしきい値ThB以上であるか、2つの極小値の間のシフト量nの差分に対応する位相差がたとえば170°から190°の範囲外であるか、または極大値のシフト量nに対応する位相がたとえば170°から190°の範囲外である場合、総和Qsumに180°の周期性はないと判定する。
【0130】
(抽出処理の他の例1)
放電検出部260は、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生していない状態での所定期間における電荷量Qの分布に基づいて上限値Th1を決定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。生成部250により生成されるデータDtに含まれるノイズの大きさはデータDtごとに変動し得るため、定常状態における電荷量Qの上限値Th1を用いてデータDtの一部を抽出する構成では、ノイズをデータDtから正確に除去することができない場合がある。これに対して、放電検出部260は、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生している状態での所定期間における電荷量Qの分布に基づいて、電荷量Qの上限値Th2を決定する構成であってもよい。
【0131】
再び
図15を参照して、たとえば、放電検出部260は、データDtにおける、位相Φがゼロ°から30°のときの電荷量Qの分布、位相Φが135°から195°のときの電荷量Qの分布、および位相Φが330°から360°のときの電荷量Qの分布等の、ピーク値以外の電荷量Qの分布に基づいて、統計的手法を用いて上限値Th2を決定する。
【0132】
そして、放電検出部260は、生成部250から受けたデータDtにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th2より大きい組を抽出したデータDtrを生成する。
【0133】
たとえば、放電検出部260は、生成部250からデータDtを受けるたびに、受けたデータDtに基づいて上限値Th2を決定し、当該データDtにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th2より大きい組を抽出したデータDtrを生成する。このように、データDtに基づいて上限値Th2を決定し、決定した上限値Th2を用いて当該データDtの一部を抽出する構成により、抽出処理と、抽出処理に用いる上限値Th2の決定とを同期させることができるので、より正確にデータDtからノイズを除去することができるとともに、生成したデータDtrに基づいて微弱な部分放電を検出することができるので、部分放電をより早期に検出することができる。
【0134】
(抽出処理の他の例2)
図24は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるデータDtの一例を示す図である。
図24において、横軸は位相Φ[degree]を示しており、縦軸は電荷量Qのレベルを示している。
図24では、位相Φの分解能が5°であるデータDtを示している。
【0135】
放電検出部260は、データDtに基づいて、交流電圧の1周期を所定間隔で区切った各位相区間Φrにおける電荷量Qの最大値である最大電荷量Qmaxを特定する。放電検出部260は、特定した各最大電荷量Qmaxのうちの最小値を上限値Th3として決定する。上限値Th3は、しきい値の一例である。
【0136】
一例として、放電検出部260は、生成部250から受けたデータDtに基づいて、交流電圧の1周期である360°を10°間隔で区切った位相区間Φr1から位相区間Φr36の各々における最大電荷量Qmaxを特定する。
【0137】
図25は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における放電検出部により特定される最大電荷量Qmaxの一例を示す図である。
図25において、横軸は位相区間Φrを示しており、縦軸は最大電荷量Qmaxのレベルを示している。
【0138】
図25を参照して、放電検出部260は、特定した各最大電荷量Qmaxのうちの、ゼロを除いて最も小さい値である最大電荷量Qmax36を、上限値Th3として決定する。上述したように、生成部250は、ADC230から受けたデジタル信号の各サンプル値のうちの、トリガレベルを超えないサンプル値に対応する電荷量Qをゼロとするとともに、記憶部280における対応テーブルTb1からトリガレベルを超えるサンプル値に対応する電荷量Qを取得することにより、データDtを生成する。すなわち、データDtには、電荷量Qの値としてゼロが含まれる場合がある。これに対して、放電検出部260は、特定した各最大電荷量Qmaxのうちの、ゼロを除いて最も小さい値である最大電荷量Qmax36を、上限値Th3として決定する構成により、ノイズを除去するための適切な上限値Th3を決定することができる。
【0139】
図26は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
図26において、横軸は位相Φ[degree]を示しており、縦軸は電荷量Qのレベルを示している。
【0140】
図26を参照して、放電検出部260は、決定した上限値Th3を用いて、データDtの一部を抽出し、抽出したデータDtrにおける電荷量Qの周期性を判定する。より詳細には、放電検出部260は、データDtにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th3より大きい組を抽出したデータDtrを生成し、データDtrにおける電荷量Qの周期性を判定する。放電検出部260は、周期性の判定結果に基づいて、地中ケーブル10Aにおける部分放電を検出する。
【0141】
たとえば、放電検出部260は、生成部250からデータDtを受けるたびに、受けたデータDtに基づいて上限値Th3を決定し、当該データDtにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th3より大きい組を抽出したデータDtrを生成する。このように、データDtに基づいて上限値Th3を決定し、決定した上限値Th3を用いて当該データDtの一部を抽出する構成により、抽出処理と、抽出処理に用いる上限値Th3の決定とを同期させることができるので、より正確にデータDtからノイズを除去することができるとともに、生成したデータDtrに基づいて微弱な部分放電を検出することができるので、部分放電をより早期に検出することができる。
【0142】
図27は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるデータDtの一例を示す図である。
図27は、
図24に示すデータDtにおける位相Φと頻度Nとの対応関係を極座標系に示したものである。
図27において、偏角は位相Φ[degree]を示しており、動径は電荷量Qのレベルを示している。
【0143】
図28は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における放電検出部により生成されるデータDtrの一例を示す図である。
図28は、
図26に示すデータDtrにおける位相Φと頻度Nとの対応関係を極座標系に示したものである。
図28において、偏角は位相Φ[degree]を示しており、動径は電荷量Qのレベルを示している。
【0144】
図27および
図28を参照して、データDtrは、データDtにおけるノイズが除去されているので、データDtと比べて、電荷量Qの180°の周期性を認識し易い。
【0145】
なお、放電検出部260は、交流電圧の1周期を10°間隔で区切った位相区間Φr1から位相区間Φr36の各々における最大電荷量Qmaxを特定する構成に限定されず、交流電圧の1周期を、10°以外の間隔で区切った複数の位相区間Φrの各々における最大電荷量Qmaxを特定する構成であってよい。ここで、当該間隔が小さすぎる場合、ノイズを多く含むデータDtrが生成される可能性がある一方で、当該間隔が大きすぎる場合、部分放電による電荷量Qの成分が除去されたデータDtrが生成されてしまう可能性がある。当該間隔の最適値は、データDtにおける位相Φの分解能等に応じて異なる。たとえば、放電検出部260は、データDtにおける位相Φの分解能等に応じ間隔を決定し、交流電圧の1周期を、決定した間隔で区切った複数の位相区間Φrの各々における最大電荷量Qmaxを特定する。
【0146】
(抽出処理の他の例3)
図29は、本開示の実施の形態の変形例に係る部分放電検出装置における生成部により生成されるヒストグラムHqの一例を示す図である。
図29において、横軸は頻度Nの総和を示しており、縦軸は電荷量Qのレベルを示している。
図29は、
図24に示すデータDtにおける電荷量Qのレベルごとの、すべての位相Φにおける頻度Nの総和Snを示すヒストグラムHqである。
【0147】
図29を参照して、放電検出部260は、生成部250から受けたデータDtにおいて、電荷量Qのレベルごとの、すべての位相Φにおける頻度Nの総和Snを集計することによりヒストグラムHqを生成する。ここで、ヒストグラムHqは、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生している場合、部分放電の電荷量Qに由来するピークP1を含む度数分布Hq1と、ノイズの電荷量Qに由来するピークP2を含む度数分布Hq2とを有すると考えられる。ここで、ピークP1における電荷量Q1のレベルは、ピークP2における電荷量Q1のレベルよりも大きい。そこで、放電検出部260は、ヒストグラムHqにおけるピークP1とピークP2との間における総和Snの変化点に対応する電荷量Qのレベルを、抽出処理に用いるしきい値として決定する。一例として、放電検出部260は、度数分布Hq2における、電荷量Qのレベルの平均値と、電荷量Qのレベルの分散σとの和を、上限値Th4として決定する。
【0148】
放電検出部260は、当該データDtにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th4より大きい組を抽出したデータDtrを生成する。放電検出部260は、生成したデータDtrにおける電荷量Qの周期性を判定し、判定結果に基づいて地中ケーブル10Aにおける部分放電を検出する。
【0149】
(抽出処理の他の例4)
生成部250は、商用交流電力の交流電圧の複数周期の各々における位相Φと電荷量Qとの対応関係を示すデータDtを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。生成部250は、商用交流電力の交流電圧の1周期における位相Φと電荷量Qとの対応関係を示すデータDtxを生成する構成であってもよい。生成部250は、データDtxを生成すると、生成したデータDtxを放電検出部260へ出力する。
【0150】
たとえば、放電検出部260は、生成部250から受けたデータDtxにおける、電荷量Qの最小値に所定値を加えた値を上限値Th5として決定する。放電検出部260は、当該データDtxにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th5より大きい組を抽出したデータDtxrを生成する。放電検出部260は、データDtrの代わりに、生成したデータDtxrにおける電荷量Qの周期性を判定する構成であってもよい。
【0151】
あるいは、放電検出部260は、生成部250から受けたデータDtxにおける電荷量Qの最大値の包絡線を生成し、生成した包絡線の最小値を上限値Th6として決定する。放電検出部260は、当該データDtxにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th6より大きい組を抽出したデータDtxrを生成する。
【0152】
あるいは、放電検出部260は、部分放電により生じる電荷量QはデータDtxにおいて正規分布関数の形状を有しているので、生成部250から受けたデータDtxにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、部分放電により生じる電荷量Qの形状に対応する組を除外し、残りの組のうちの電荷量Qの最大値を上限値Th7として決定する。放電検出部260は、当該データDtxにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th7より大きい組を抽出したデータDtxrを生成する。
【0153】
(周期性の判定の他の例1)
たとえば、放電検出部260は、第1の生成タイミングにおいて生成されたデータDtから抽出したデータDtrに含まれる位相Φと電荷量Qとの組の数が所定値未満である場合、当該データDtrと、第2の生成タイミングにおいて生成されたデータDtから抽出したデータDtrとに基づいて、電荷量Qの周期性を判定する。
【0154】
より詳細には、放電検出部260は、生成したデータDtrに含まれる位相Φと電荷量Qとの組の数が所定値以上である場合、当該データDtrにおける電荷量Qの周期性を判定する。
【0155】
一方、放電検出部260は、生成したデータDtrであるデータDtr1に含まれる位相Φと電荷量Qとの組の数が所定値未満である場合、電荷量Qの周期性の判定を保留し、生成部250からの新たなデータDtを待ち受ける。放電検出部260は、生成部250から新たなデータDtを受けて、受けたデータDtについての抽出処理を行うことにより、データDtrであるデータDtr2を生成する。そして、放電検出部260は、データDtr1に含まれる位相Φと電荷量Qとの組と、データDtr2に含まれる位相Φと電荷量Qとの組とを含むデータDtr12を生成し、生成したデータDtr12における電荷量Qの周期性を判定する。
【0156】
(周期性の判定の他の例2)
放電検出部260は、区間データDtsの自己相関に基づいて、総和Qsumの周期性を判定し、判定結果に基づいて部分放電を検出する構成であるとしたが、これに限定するものではない。
【0157】
たとえば、放電検出部260は、データDtrを学習モデルに与えることにより、部分放電の検出結果を得る。
【0158】
より詳細には、記憶部280は、データDtrを受けて、受けたデータDtrにおける電荷量Qの周期性の判定結果を出力する学習モデル、を記憶している。当該学習モデルは、ニューラルネットワークに対して、データDtrを学習データとして用いて、地中ケーブル10Aにおける部分放電の発生の有無を判定できるように機械学習させることにより生成される。
【0159】
放電検出部260は、データDtrを生成すると、生成したデータDtrを記憶部280における学習モデルに与えることにより、地中ケーブル10Aにおける部分放電の発生の有無の判定結果を得る。
【0160】
[動作の流れ]
図30は、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置が部分放電の検出を行う際の動作手順の一例を定めたフローチャートである。
【0161】
図30を参照して、まず、部分放電検出装置500は、地中ケーブル10Aの遮蔽層75を通して流れる電流の検出を開始する。より詳細には、部分放電検出装置500は、遮蔽層75を通して流れる電流に基づく検出信号の生成を開始する(ステップS102)。
【0162】
次に、部分放電検出装置500は、生成周期T1に従うタイミングを待ち受け(ステップS104でNO)、生成周期T1に従うタイミングにおいて(ステップS104でYES)、生成した検出信号に基づいて、生成周期T1における位相Φと電荷量Qの絶対値との対応関係を示すデータDtを生成する(ステップS106)。
【0163】
次に、部分放電検出装置500は、生成したデータDtについての抽出処理を行う。より詳細には、部分放電検出装置500は、データDtにおける位相Φおよび電荷量Qの組のうちの、電荷量Qが上限値Th1より大きい組を抽出したデータDtrを生成する(ステップS108)。
【0164】
次に、部分放電検出装置500は、生成したデータDtrに基づいて、72個の位相区間Φsと、総和Qsumとの対応関係を示す区間データDtsを生成する(ステップS110)。
【0165】
次に、部分放電検出装置500は、生成した区間データDtsと参照区間データDrefとを比較する。より詳細には、部分放電検出装置500は、区間データDtsと参照区間データDrefとの、対応する位相区間Φsごとの総和Qsumの差分の2乗の和を算出し、算出した和と所定のしきい値とを比較する(ステップS112)。
【0166】
次に、部分放電検出装置500は、算出した和が当該しきい値未満である場合(ステップS114でNO)、地中ケーブル10Aにおいて部分放電は発生していないと判断し、生成周期T1に従う新たなタイミングを待ち受ける(ステップS104でNO)。
【0167】
一方、部分放電検出装置500は、算出した和が当該しきい値以上である場合(ステップS114でYES)、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生していると仮判断し、区間データDtsの相関データRを生成する(ステップS116)。
【0168】
次に、部分放電検出装置500は、生成した相関データRに基づいて、総和Qsumに180°の周期性があるか否かを判定する(ステップS118)。
【0169】
次に、部分放電検出装置500は、総和Qsumに180°の周期性がないと判定した場合(ステップS120でNO)、地中ケーブル10Aにおいて部分放電は発生していないと判断し、生成周期T1に従う新たなタイミングを待ち受ける(ステップS104でNO)。
【0170】
一方、部分放電検出装置500は、総和Qsumに180°の周期性があると判定した場合(ステップS120でYES)、地中ケーブル10Aにおいて部分放電が発生していると判断し、判断結果をサーバへ通知する(ステップS122)。
【0171】
次に、部分放電検出装置500は、生成周期T1に従う新たなタイミングを待ち受ける(ステップS104でNO)。
【0172】
なお、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置500では、処理部200における生成部250は、商用交流電力の交流電圧の周期の2倍以上である生成周期T1ごとに、生成周期T1における位相Φと電荷量Qとの対応関係を示すデータDtを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。生成部250は、商用交流電力の交流電圧の周期ごとに、当該周期における位相Φと電荷量Qとの対応関係を示すデータDtを生成する構成であってもよい。
【0173】
また、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置500では、処理部200における放電検出部260は、データDtの抽出処理を行う構成であるとしたが、これに限定するものではない。放電検出部260は、データDtの抽出処理を行わない構成であってもよい。
【0174】
また、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置500では、処理部200における放電検出部260は、区間データDtsを生成し、生成した区間データDtsの自己相関に基づいて、電荷量Qの周期性として、総和Qsumの周期性を判定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。放電検出部260は、区間データDtsを生成することなく、データDtrの自己相関に基づいて電荷量Qの周期性を判定する構成であってもよい。
【0175】
また、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置500では、処理部200における放電検出部260は、位相区間Φsごとの総和Qsumの180°の位相差を判別可能となるように30°の位相範囲が設定された区間データDtsを生成する構成であるとしたが、これに限定するものではない。放電検出部260は、30°以外の任意の位相範囲が設定された区間データDtsを生成する構成であってもよい。
【0176】
また、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置500では、処理部200における放電検出部260は、区間データDtsとシフト区間データDtsとの相関係数r(n)との対応関係を示す相関データRを生成し、生成した相関データRに基づいて、総和Qsumの周期性を判定する構成であるとしたが、これに限定するものではない。放電検出部260は、シフト区間データDtsおよび相関データRを用いることなく、たとえば、機械学習法を用いて、区間データDtsの解析を行うことにより、総和Qsumの周期性を判定する構成であってもよい。
【0177】
また、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置500では、処理部200におけるフィルタ処理部210は3つのBPF212を有する構成であるとしたが、これに限定するものではない。フィルタ処理部210は、2つ以下のBPF212を有する構成であってもよいし、4つ以上のBPF212を有する構成であってもよい。また、フィルタ処理部210は、アナログスイッチ211およびBPF212の代わりに、ハイパスフィルタを有する構成であってもよい。
【0178】
また、本開示の実施の形態に係る部分放電検出装置500における処理部200は、放電検出部260を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。処理部200は、放電検出部260を備えない構成であってもよい。この場合、処理部200は、放電検出部260の代わりに表示処理部を備える。当該表示処理部は、放電検出部260と同様にして、データDtrを生成し、生成したデータDtrを図示しない表示装置に表示する処理を行う。
【0179】
たとえば、当該表示処理部は、
図28に示すように、生成したデータDtにおける位相Φと頻度Nとの対応関係を示す極座標系を表示する処理を行う。なお、当該表示処理部は、データDtにおける位相Φと電荷量Qとの対応関係を示す極座標系を表示する処理を行う構成であってもよいし、データDtにおける位相Φと電荷量Qおよび頻度Nの積との対応関係を示す極座標系を表示する処理を行う構成であってもよい。また、当該表示処理部は、
図26に示すように、データDtrを含む2次元直交座標系を表示する処理を行う構成であってもよいし、また、当該2次元直交座標系において、頻度Nをスケール化してプロットの濃淡または色彩により表現する構成であってもよい。また、当該表示処理部は、X軸を位相Φとし、Y軸を電荷量Qとし、Z軸を頻度Nとする3次元直交座標系であって、データDtrを含む3次元直交座標系を表示する処理を行う構成であってもよい。
【0180】
部分放電検出装置500のユーザは、表示装置に表示されたデータDtrを参照することにより、データDtrにおける電荷量Qの周期性を判定し、判定結果に基づいて、地中ケーブル10Aにおける部分放電が発生しているか否かを判断する。
【0181】
ところで、簡易な処理および構成でケーブルにおける部分放電を検出することが可能な技術が望まれる。より詳細には、従来、AIを用いてケーブルにおける部分放電を検出する技術が知られている。しかしながら、AIを用いて部分放電を検出する場合、正確に部分放電を検出するために、機械学習のための膨大な量の教師データが必要となる。また、季節など時期に応じた位相Φと電荷量Qとの関係を示すパターンの変化も考慮して部分放電を正確に検知しようとすると、さらに膨大な量の教師データが必要となる。
【0182】
これに対して、本開示の部分放電検出装置500では、信号検出部100または100Aは、遮蔽層75を通して流れる電流を検出する。生成部250は、信号検出部100または100Aにより検出された電流の、商用交流電力の交流電圧に対する位相Φと、当該電流の電荷量Qとの対応関係を示すデータDtを生成する。放電検出部260は、生成部250により生成されたデータDtにおける電荷量Qの周期性を判定し、判定結果に基づいて部分放電を検出する。
【0183】
遮蔽層75を通して流れる電流の電荷量Qは部分放電の電荷量に対応するところ、このように、商用交流電力の交流電圧に対する、遮蔽層75を通して流れる電流の電荷量Qの周期性に着目し、電荷量Qの周期性の判定結果に基づいて部分放電を検出する構成により、たとえばAIを用いて部分放電を検出する構成と比べて、簡易な処理および構成でケーブルにおける部分放電を検出することができる。
【0184】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0185】
上述の実施形態の各処理(各機能)は、1または複数のプロセッサを含む処理回路(Circuitry)により実現される。上記処理回路は、上記1または複数のプロセッサに加え、1または複数のメモリ、各種アナログ回路、各種デジタル回路が組み合わされた集積回路等で構成されてもよい。上記1または複数のメモリは、上記各処理を上記1または複数のプロセッサに実行させるプログラム(命令)を格納する。上記1または複数のプロセッサは、上記1または複数のメモリから読み出した上記プログラムに従い上記各処理を実行してもよいし、予め上記各処理を実行するように設計された論理回路に従って上記各処理を実行してもよい。上記プロセッサは、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、およびASIC(Application Specific Integrated Circuit)等、コンピュータの制御に適合する種々のプロセッサであってよい。なお、物理的に分離した上記複数のプロセッサが互いに協働して上記各処理を実行してもよい。たとえば、物理的に分離した複数のコンピュータのそれぞれに搭載された上記プロセッサがLAN(Local Area Network)、WAN (Wide Area Network)、およびインターネット等のネットワークを介して互いに協働して上記各処理を実行してもよい。上記プログラムは、外部のサーバ装置等から上記ネットワークを介して上記メモリにインストールされても構わないし、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disk Read Only Memory)、および半導体必須メモリ等の記録媒体に格納された状態で流通し、上記記録媒体から上記メモリにインストールされても構わない。
【0186】
以上の説明は、以下に付記する特徴を含む。
[付記1]
商用交流電力を伝送する線状の導体と、前記導体の周囲を覆う絶縁層と、前記絶縁層の周囲を覆う導体である遮蔽層とを有するケーブルにおける部分放電を検出する部分放電検出装置であって、
前記遮蔽層を通して流れる電流を検出する電流検出部と、
前記電流検出部により検出された前記電流の、前記商用交流電力の交流電圧に対する位相と、前記電流の電荷量との対応関係を示すデータを生成する生成部と、
前記生成部により生成された前記データにおける前記電荷量の周期性を判定し、判定結果に基づいて前記部分放電を検出する放電検出部とを備え、
前記放電検出部は、前記データと、前記生成部により過去に生成された前記データに基づく参照データとを比較し、比較結果に基づいて、前記部分放電が発生しているか否かを仮判断し、
前記放電検出部は、前記仮判断の結果および前記判定結果に基づいて、前記部分放電が発生しているか否かを判断する、部分放電検出装置。
【符号の説明】
【0187】
10,10A,10A1,10A2,10B,10B1,10B2,10C,10C1,10C2 地中ケーブル
11,11A,11B,11C ケーブル端末
12 ケーブル
13,15 接地ノード
14 接地用ケーブル
31 マンホール
41,41A,41B 普通接続部
42,42A,42B 絶縁接続部
43,43A,43B 地上接続部
53 導電ケーブル
71 導体
72 内部半導電層
73 絶縁体
74 外部半導電層
75 遮蔽層
76 シース
77 絶縁筒
81 端子
100,100A 信号検出部
110 CT
120,120A 信号出力部
101 リングコア
102 巻線
105,106 金属箔電極
200 処理部
210 フィルタ処理部
211 アナログスイッチ
212,212A,212B,212C BPF
220 増幅部
230 ADC
250 生成部
260 放電検出部
280 記憶部
500,500A,500B,500C,510 部分放電検出装置
501 部分放電検出システム
502 送電システム