(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140170
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】部品の取り出し方法とその装置、電子部品の製造方法とその装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/06 20060101AFI20230927BHJP
B25J 15/08 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B25J15/06 A
B25J15/08 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046070
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】後藤 真史
(72)【発明者】
【氏名】小池 信太朗
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS01
3C707AS14
3C707DS03
3C707ES03
3C707ET08
3C707EV07
3C707FS01
3C707FT11
3C707FU02
3C707GU00
3C707KS03
3C707KS07
3C707KS30
3C707KT02
3C707NS17
(57)【要約】
【課題】部品を損傷等させずに製造装置等から取り出す方法および装置を提供する。
【解決手段】巻線機等により芯棒710に巻回された空芯コイル810を吸着ノズル210により吸着し、ハンド部100の柱状部101a,101bの凸部140,140接触面142,142を芯棒710の基端側から空芯コイル810に接触させ、ハンド部100を芯棒710の先端側に移動させることにより、空芯コイル810を芯棒710から離脱させる。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端側が開放された棒状部材の周囲に配置された部品を取り出す方法であって、
前記棒状部材の周囲に配置された前記部品を吸着部により吸着する工程と、
前記棒状部材の他端側から接触部材を前記部品に接触させ、前記接触部材を前記棒状部材の前記一端側に移動させることにより、前記部品を前記棒状部材から離脱させる工程と、
を有する部品の取り出し方法。
【請求項2】
前記棒状部材の軸方向に垂直な方向に開閉可能で前記棒状部材の前記軸方向に移動可能な一対の柱状部であって、前記一対の柱状部が開閉する方向に突出する凸部がそれぞれに形成されている前記一対の柱状部を前記接触部材として用いて、前記棒状部材の前記一端側を指向する前記凸部の端面を接触面として前記電子部品に接触させ、前記一対の柱状部を前記棒状部材の前記一端側に移動させることにより、前記部品を離脱させることを特徴とする請求項1に記載の部品の取り出し方法。
【請求項3】
前記一対の柱状部の前記接触面を、前記部品の前記他端側の周縁に接触させることを特徴とする請求項2に記載の部品の取り出し方法。
【請求項4】
前記一対の柱状部の一部をなす部品対向面が、前記周面と所定隙間で対向して配置されることを特徴とする請求項2または3に記載の部品の取り出し方法。
【請求項5】
前記部品の周面であって、前記棒状部材の前記軸方向に垂直で前記一対の柱状部が前記開閉する方向に垂直な方向を指向する面を、前記吸着部により吸着することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の部品の取り出し方法。
【請求項6】
前記部品の周面であって、前記棒状部材の前記軸方向を指向する面を、前記吸着部により吸着することを特徴とする請求項2~4のいずれかに記載の部品の取り出し方法。
【請求項7】
前記棒状部材から離脱された前記部品を、所定の目的場所に搬送して配置する工程をさらに有する請求項1~6のいずれかに記載の部品の取り出し方法。
【請求項8】
前記棒状部材から離脱され前記吸着部により吸着されている前記部品を、仮置き部に搬送して配置し、前記吸着部による吸着を解除する工程と、
前記仮置き部に配置された前記部品の位置および姿勢の少なくとも一方を調整する工程と、
前記調整された前記部品を、第2の吸着部により吸着し、所定の載置部に搬送して配置する工程と、
をさらに有することを特徴とする請求項7に記載の部品の取り出し方法。
【請求項9】
前記棒状部材から離脱された後で前記搬送される前、前記搬送の途中、または、前記搬送された後で前記配置される前の前記部品に対して、当該部品の姿勢を変更する工程をさらに有することを特徴とする請求項7または8に記載の部品の取り出し方法。
【請求項10】
前記棒状部材から離脱された後で前記搬送される前、前記搬送の途中、または、前記搬送された後で前記配置される前の前記部品の単体を検査する工程、および、前記配置された前記部品の姿勢および位置を検査する工程の少なくともいずれかを一方をさらに有する請求項7~9のいずれかに記載の部品の取り出し方法。
【請求項11】
前記部品は空芯コイルであり、巻線機により前記棒状部材に巻回された前記空芯コイルを取り出す請求項1~10のいずれかに記載の部品の取り出し方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の部品の取り出し方法により電子部品を取り出す工程を有する電子部品の製造方法。
【請求項13】
一端側が開放された棒状部材の周囲に配置された部品を取り出す部品の取り出し装置であって、
前記棒状部材の周囲に配置された前記部品を吸着する吸着部と、
前記棒状部材の他端側から前記部品に接触して前記棒状部材の前記一端側に移動することにより、前記部品を前記棒状部材から離脱させる離脱部と、を有し、
前記吸着部は、前記離脱部の前記移動に応じて、前記部品を吸着した状態で前記棒状部材の前記一端側に移動する部品の取り出し装置。
【請求項14】
前記離脱部は、前記棒状部材の軸方向に垂直な方向に開閉可能に配置され、前記棒状部材の軸方向に沿って移動可能な一対の柱状部を有し、
前記一対の柱状部は、それぞれ、当該一対の柱状部が開閉する方向に突出し、前記棒状部材の前記一端側を指向する端面が前記部品に接触する接触面に形成された凸部を有することを特徴とする請求項13に記載の部品の取り出し装置。
【請求項15】
前記離脱部は、前記一対の柱状部の前記接触面を、前記部品の前記他端側の周縁に接触させることを特徴とする請求項14に記載の部品の取り出し装置。
【請求項16】
前記一対の柱状部は、それぞれ、前記部品の周面に所定隙間で対向して配置される部品対向面を有する請求項14または15に記載の部品の取り出し装置。
【請求項17】
前記一対の柱状部は、当該一対の柱状部が前記開閉する方向における前記部品の幅(W)に対して、前記一対の柱状部の前記部品対向面の間隔(La)および前記一対の柱状部の前記凸部の間隔(Lb)が、La>W>Lbの関係となるように形成されていることを特徴とする請求項15に記載の部品の取り出し装置。
【請求項18】
前記吸着部は、前記部品の周面であって、前記棒状部材の前記軸方向に垂直で前記一対の柱状部が前記開閉する方向に垂直な方向を指向する面を前記吸着することを特徴とする請求項14~17のいずれかに記載の部品の取り出し装置。
【請求項19】
前記吸着部は、前記部品の周面であって、前記棒状部材の前記軸方向を指向する面を吸着することを特徴とする請求項13~17のいずれかに記載の部品の取り出し装置。
【請求項20】
前記棒状部材から離脱された前記部品を、所定の目的場所に搬送して配置する搬送手段を有する請求項13~19のいずれかに記載の部品の取り出し装置。
【請求項21】
前記搬送手段は、
前記離脱された前記部品を仮置き部に搬送して配置し、前記吸着を解除する前記吸着部と、
前記仮置き部に配置された前記部品の位置および姿勢の少なくとも一方を調整する調整部と、
前記調整された前記部品を吸着し、所定の載置部に搬送して配置する第2の吸着部と、
を有することを特徴とする請求項20に記載の部品の取り出し装置。
【請求項22】
前記吸着部は、前記一対の柱状部の前記開閉の方向に垂直な面内で回転可能に構成されていることを特徴とする請求項13~18のいずれかに記載の部品の取り出し装置。
【請求項23】
前記棒状部材から離脱された後で前記搬送される前、前記搬送の途中、または、前記搬送された後で前記配置される前の前記部品の単体の検査、および、前記配置された前記部品の姿勢および位置の検査の少なくともいずれかの検査を行う検査手段をさらに有する請求項20~22のいずれかに記載の部品の取り出し装置。
【請求項24】
前記部品は空芯コイルであり、巻線機により前記棒状部材に巻回された前記空芯コイルを取り出す請求項13~23のいずれかに記載の部品の取り出し装置。
【請求項25】
請求項13~24のいずれかに記載の部品の取り出し装置を有する電子部品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造装置等からの部品の取り出しに適用して好適な部品の取り出し方法とその装置、および、電子部品の製造方法とその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品を、製造装置や搬入装置等の供給元から次工程の製造装置やパッケージ装置等の供給先に搬送する装置としては、たとえば特許文献1に記載の装置がある。特許文献1の装置では、軸部材に巻回された空芯コイルを、2つのホルダにより挟持して軸部材から引き抜き基板上に搬送するとともに、搬送先ではプッシャにより空芯コイルを押し出して基板の所定位置に挿入している。
【0003】
しかしながら、このような機械的に部品を保持したり加圧したりする方法は、必要以上の力が部品にかかったり、位置決め精度が低下した場合に、部品を破損させる危険性がある。特に、部品が小さくなると(例えば、0.6mm×0.6mm×0.3mm以下となる外形寸法の略直方体形状の表面実装型電子部品)、強度が低くなり、僅かな過負荷により部品が損傷する場合がある。また、部品が小さくなると、保持部材の作動位置の僅かな誤差により、部品を保持できなかったり、部品の不適当な箇所に接触して部品を落下させ損傷させてしまう等の可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、部品の損傷や落下等を生じさせることなく、適切に、供給元の装置や部材から取り出すことのできる部品の取り出し方法とその装置、および、そのような部品の取り出し方法および装置を用いた電子部品の製造方法とその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の部品の取り出し方法は、
一端側が開放された棒状部材の周囲に配置された部品を取り出す方法であって、
前記棒状部材の周囲に配置された前記部品を吸着部により吸着する工程と、
前記棒状部材の他端側から接触部材を前記部品に接触させ、前記接触部材を前記棒状部材の前記一端側に移動させることにより、前記部品を前記棒状部材から離脱させる工程と、を有する。
【0007】
本願発明の部品の取り出し方法においては、部品を吸着部により吸着するとともに部品に接触部材を接触させて棒状部材から離脱させているため、ホルダ等で把持して取り出す場合に比べて部品に対する機械的な負荷を軽減でき、部品の損傷を防止できる。また、吸着部だけで吸着する場合に比べて、吸着力が弱くても部品の落下等を防止できる。その結果、本願発明の部品の取り出し方法によれば、たとえば製造装置や搬入装置等の供給元において棒状部材の周囲に配置された部品を、損傷や落下等させることなく適切に取り出すことができる。特に、本発明は小型化された電子部品において好ましく、0.6mm×0.6mm×0.3mm以下となる外形寸法の略直方体形状の表面実装型電子部品に対して好適である、
【0008】
前記接触部材として、前記棒状部材の軸方向に垂直な方向に開閉可能で前記棒状部材の前記軸方向に移動可能な一対の柱状部であって、前記一対の柱状部が開閉する方向に突出する凸部がそれぞれに形成されている前記一対の柱状部を用いて、前記棒状部材の前記一端側を指向する前記凸部の端面を接触面として前記電子部品に接触させ、前記一対の柱状部を前記棒状部材の前記一端側に移動させることにより、前記部品を離脱させるようにしてもよい。
【0009】
前記一対の柱状部の前記接触面を、前記部品の前記他端側の周縁に接触させるようにしてもよい。また、前記一対の柱状部の一部をなす部品対向面が、前記周面と所定隙間で対向して配置されるようにしてもよい。
【0010】
この方法では、接触部材としての一対の柱状部は、接触面を部品の他端側の周縁に接触させているのみで、部品を、移動可能に係合あるいは支持している。したがって、柱状部が部品に過度な負荷(力)をかけて損傷させることが防止される。また、一対の柱状部の部品対向面は、部品に接触はしないが部品の周面と所定の隙間に近接して配置されているため、仮に、吸着部による吸着が弱まり部品を保持できなくなったとしても、部品が落下して破損することは防止される。また、部品対向面に部品が接触した場合は再吸着する方法としておけば、部品を損傷させることなく取り出しを完了することも可能である。
【0011】
前記部品の周面であって、前記棒状部材の前記軸方向に垂直で前記一対の柱状部が前記開閉する方向に垂直な方向を指向する面を、前記吸着部により吸着してもよい。あるいは、前記部品の周面であって、前記棒状部材の前記軸方向を指向する面を、前記吸着部により吸着してもよい。
【0012】
すなわち、取り出し対象の部品の形状等に応じて、部品の任意の場所を吸着部で吸着してもよい。部品は一対の柱状部によっても係合あるいは支持されているので、部品の表面に段差や凹凸があり吸着力が弱められる状況でも、部品を保持し続けて取り出すことができる。換言すれば、部品は一対の柱状部によっても係合あるいは支持されているので、多少吸着作用が弱くなる部分であっても、部品を損傷させない部分を吸着して取り出すことができる。
【0013】
前記棒状部材から離脱された前記部品を、所定の目的場所に搬送して配置する工程をさらに有してもよい。また、前記棒状部材から離脱され前記吸着部により吸着されている前記部品を、仮置き部に搬送して配置し、前記吸着部による吸着を解除する工程と、前記仮置き部に配置された前記部品の位置および姿勢の少なくとも一方を調整する工程と、前記調整された前記部品を、第2の吸着部により吸着し、所定の載置部に搬送して配置する工程と、をさらに有してもよい。また、前記棒状部材から離脱された後で前記搬送される前、前記搬送の途中、または、前記搬送された後で前記配置される前の前記部品に対して、当該部品の姿勢を変更する工程をさらに有してもよい。さらに、前記棒状部材から離脱された後で前記搬送される前、前記搬送の途中、または、前記搬送された後で前記配置される前の前記部品の単体を検査する工程、および、前記配置された前記部品の姿勢および位置を検査する工程の少なくともいずれかを一方をさらに有するようにしてもよい。
【0014】
このような方法によれば、取り出した部品を所望の目的場所に適切に搬送できる。また、取り出した部品を仮置き部に載置し、第2の吸着部で吸着しなおす方法によれば、部品の取り出しと搬送とをそれぞれ適切な吸着力で実行でき、部品をより安全かつ効率よく取り出し、搬送できる。さらに、搬送に際して部品の姿勢を変更する方法とすれば、次工程等に適した態様で部品を目的場所に配置できる。さらに、搬送に際して検査手段により部品の検査を行うようにすれば、正常な良品を適切な配置で次工程等に提供できる。
【0015】
また、前記部品は空芯コイルであってよい。
【0016】
空芯コイルは過剰な力をかければ容易に変形し、また、ワイヤが巻回された形状の部品を確実に保持することは難しいところ、本発明の部品の取り出し方法を適用すれば、変形を適切に防ぐとともに落下等を防止して、確実に巻線機等から取り出し、搬送できる。特に、微細な空芯コイルは取り扱いが一段と困難になるところ、接触部材で端部周縁のみに接触することと吸着部で吸着することを組み合わせた本発明の部品の取り出し方法であれば、損傷や紛失(落下)を防止し、取り出しおよび搬送を適切に効率よく行うことができる。
【0017】
また、本発明の電子部品の製造方法は、前述した部品の取り出し方法により電子部品を取り出す工程を有することを特徴とする。
【0018】
このような電子部品の製造方法によれば、電子部品を、製造装置や搬入装置等から、損傷や落下等させることなく適切に取り出すことができ、製造ライン全体の効率を向上できる。
【0019】
また、本発明の部品の取り出し装置は、
一端側が開放された棒状部材の周囲に配置された部品を取り出す部品の取り出し装置であって、
前記棒状部材の周囲に配置された前記部品を吸着する吸着部と、
前記棒状部材の他端側から前記部品に接触して前記棒状部材の前記一端側に移動することにより、前記部品を前記棒状部材から離脱させる離脱部と、を有し、
前記吸着部は、前記離脱部の前記移動に応じて、前記部品を吸着した状態で前記棒状部材の前記一端側に移動する。
【0020】
本願発明の部品の取り出し装置においては、吸着部により部品を吸着するとともに、離脱部が部品に接触して部品を棒状部材から離脱させているため、ホルダ等で把持して取り出す場合に比べて部品に対する機械的な負荷を軽減でき、部品の損傷を防止できる。また、吸着部だけで吸着する場合に比べて吸着力が弱くても部品の落下等を防止できる。その結果、本願発明の部品の取り出し装置によれば、たとえば製造装置や搬入装置等の供給元において棒状部材の周囲に配置された部品を、損傷や落下等させることなく適切に取り出すことができる。
【0021】
前記離脱部は、前記棒状部材の軸方向に垂直な方向に開閉可能に配置され、前記棒状部材の軸方向に沿って移動可能な一対の柱状部を有し、
前記一対の柱状部は、それぞれ、当該一対の柱状部が開閉する方向に突出し、前記棒状部材の前記一端側を指向する端面が前記部品に接触する接触面に形成された凸部を有する構成としてもよい。
【0022】
前記離脱部は、前記一対の柱状部の前記接触面を、前記部品の前記他端側の周縁に接触させるようにしてもよい。また、前記一対の柱状部は、それぞれ、前記部品の周面に所定隙間で対向して配置される部品対向面を有してもよい。前記一対の柱状部は、当該一対の柱状部が前記開閉する方向における前記部品の幅(W)に対して、前記一対の柱状部の前記部品対向面の間隔(La)および前記一対の柱状部の前記凸部の間隔(Lb)が、La>W>Lbの関係となるように形成されてよい。
【0023】
このような構成によれば、一対の柱状部は、接触面を部品の他端側の周縁に接触させるのみの構成で、部品が移動可能に、部品に係合あるいは部品を支持している。したがって、柱状部が部品に過度な負荷(力)をかけて損傷させることが防止される。また、一対の柱状部の部品対向面は、部品に接触はしないが部品の周面と所定の隙間で部品の周面に近接して配置されているため、仮に、吸着部による部品の吸着が弱まり部品を保持できなくなったとしても、部品が落下して破損することは防止される。また、部品対向面に部品が接触した場合は再吸着するような構成としておけば、部品を損傷させることなく取り出しを完了することも可能である。
【0024】
前記吸着部は、前記部品の周面であって、前記棒状部材の前記軸方向に垂直で前記一対の柱状部が前記開閉する方向に垂直な方向を指向する面を前記吸着してもよい。あるいは、前記吸着部は、前記部品の周面であって、前記棒状部材の前記軸方向を指向する面を吸着してもよい。
【0025】
すなわち、吸着部は、取り出し対象の部品の形状等に応じて、部品の任意の場所を吸着してもよい。部品は一対の柱状部によっても係合あるいは支持されているので、部品の表面に段差や凹凸があり吸着力が弱められる状況でも、部品を保持し続けて取り出すことができる。換言すれば、部品は一対の柱状部によっても係合あるいは支持されているので、多少吸着作用が弱くなる部分であっても、部品を損傷させないという点で適切な部分を吸着して、一対の柱状部と協働して部品を保持して取り出すことができる。
【0026】
前記棒状部材から離脱された前記部品を、所定の目的場所に搬送して配置する搬送手段を有してもよい。また、前記搬送手段は、前記離脱された前記部品を仮置き部に搬送して配置し、前記吸着を解除する前記吸着部と、前記仮置き部に配置された前記部品の位置および姿勢の少なくとも一方を調整する調整部と、前記調整された前記部品を吸着し、所定の載置部に搬送して配置する第2の吸着部と、を有する構成でもよい。また、前記吸着部は、前記一対の柱状部の前記開閉の方向に垂直な面内で回転可能に構成されてよい。さらに、前記棒状部材から離脱された後で前記搬送される前、前記搬送の途中、または、前記搬送された後で前記配置される前の前記部品の単体の検査、および、前記配置された前記部品の姿勢および位置の検査の少なくともいずれかの検査を行う検査手段をさらに有してもよい。
【0027】
このような構成によれば、搬送手段により、取り出した部品を所望の目的場所に適切に搬送できる。また、吸着部により取り出した部品を仮置き部に載置し、調整部により位置等を調整し、第2の吸着部で吸着しなおす構成によれば、部品の取り出しと搬送とをそれぞれ適切な吸着力で実行でき、部品をより安全かつ効率よく取り出し、搬送できる。さらに、搬送に際して部品の姿勢を変更する構成とすれば、次工程等に適した態様で部品を目的場所に配置できる。さらに、搬送に際して部品の検査を行うようにすれば、正常な良品の部品を、正常な適切な配置で次工程等に提供できる。
【0028】
また、前記部品は空芯コイルであってよい。
【0029】
空芯コイルは過剰な力をかければ容易に変形し、また、ワイヤが巻回された形状の部品を確実に保持することは難しいところ、本発明の部品の取り出し装置を用いれば、変形を適切に防ぐとともに落下等を防止して、確実に巻線機等から取り出し、搬送できる。特に、微細な空芯コイルは取り扱いが一段と困難になるところ、離脱部が端部周縁のみに接触する構成と吸着部で吸着する構成を組み合わせた本発明の部品の取り出し装置であれば、損傷や紛失(落下)を防止し、取り出しおよび搬送を適切に行うことができる。
【0030】
また、本発明の電子部品の製造装置は、前述した部品の取り出し装置により電子部品を取り出すことを特講とする。
【0031】
このような電子部品の製造装置によれば、電子部品を、製造装置や搬入装置等から、損傷や落下等させることなく適切に取り出すことができ、製造ライン全体の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、部品を損傷や落下等させることなく適切に供給元の装置や部材から取り出すことのできる部品の取り出し方法とその装置、および、そのような部品の取り出し方法および装置を用いた電子部品の製造方法とその装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るコイル搬送装置のハンド部の構成を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示すハンド部の柱状部の構成を示す図であり、
図2(A)は柱状部を
図2(B)のA-Aから見た断面図であり、
図2(B)は柱状部の側面図である。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態に係るコイル搬送装置の吸着ノズルの構成を示す図であり、
図3(A)は吸着ノズルの側面図であり、
図3(B)は吸着ノズルを長手方向先端側から見た正面図である。
【
図4】
図4は、搬送対象の空芯コイルと吸着ノズルとの関係を説明するための図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す柱状部、
図3に示す吸着ノズルおよび搬送対象の空芯コイルの配置を説明するための図である。
【
図6】
図6は、本発明の一実施形態に係るコイル搬送装置における処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、ワイヤが巻回されて製造された搬送対象の空芯コイルを模式的に示す図であり、
図7(A)は水平方向から見た図であり、
図7(B)は斜視図である。
【
図8】
図8は、ハンド部および吸着ノズルが空芯コイルの近傍に下降した状態を模式的に示す図であり、
図8(A)は水平方向から見た図であり、
図8(B)は斜視図である。
【
図9】
図9は、ハンド部および吸着ノズルが空芯コイル側に前進した状態を模式的に示す図であり、
図9(A)は水平方向から見た図であり、
図9(B)は斜視図である。
【
図10】
図10は、ハンド部が閉じる状態を模式的に示す図であり、
図10(A)は水平方向から見た図であり、
図10(B)は斜視図である。
【
図11】
図11は、ハンド部および吸着ノズルが空芯コイルを保持して上昇する状態を模式的に示す図であり、
図11(A)は水平方向から見た図であり、
図11(B)は斜視図である。
【
図12】
図12は、ハンド部および吸着ノズルが回転し、ハンド部が開く状態を模式的に示す図であり、
図12(A)は水平方向から見た図であり、
図12(B)は斜視図である。
【
図13】
図13は、仮置き部における空芯コイルの位置決めを説明するための図であり、
図13(A)は仮置き台に空芯コイルを載置する状態を示す図であり、
図13(B)は空芯コイルの位置決めする状態を示す図であり、
図13(C)は位置決めされた空芯コイルを再吸着する状態を示す図である。
【
図14】
図14は、空芯コイルを載置部に載置する状態を示す図であり、
図14(A)は空芯コイルが載置部に載置される状態を示す図であり、
図14(B)は載置部に順次整列された空芯コイルの配置を説明するための図である。
【
図15】
図15は、空芯コイルの単体検査を説明するための図であり、
図15(A)は空芯コイルの一側面方向からの寸法検査内容を説明するための図であり、
図15(B)は空芯コイルの他の側面方向からの寸法検査内容を説明するための図である。
【
図16】
図16は、空芯コイルの配置の検査を説明するための図であり、
図16(A)は空芯コイルの水平面内における配置姿勢の検査を説明するための図であり、
図16(B)は空芯コイルの高さ方向における配置姿勢を説明するための図である。
【
図17】
図17は、空芯コイルの提供形態の第1および第2の変形例を示す図であり、
図17(A)は複数の柱状部材の上面に形成された突起に空芯コイルが配置された提供形態を示す図であり、
図17(B)はベース板上にマトリクス状に形成された複数の突起に空芯コイルが配置された提供形態を示す図である。
【
図18】
図18は、空芯コイルの提供形態の第3の変形例を示す図であり、
図18(A)は水平方向に突出した柱の端面に水平方向に形成された突起に空芯コイルが配置された提供形態を示す図であり、
図18(B)は
図18(A)に示す空芯コイルを取り出す方法を説明するためのハンド部の動作を説明するための図である。
【
図21】
図21は、エッジワイズコイルを取り出すときのハンド部および吸着ノズルの配置を模式的に示す図であり、
図21(A)は上方向から見た図であり、
図21(B)は水平方向から見た図である。
【
図22】
図22は、他のエッジワイズコイルを取り出すときのハンド部および吸着ノズルの配置を模式的に示す図であり、
図22(A)は上方向から見た図であり、
図22(B)は水平方向から見た図である。
【
図23】
図23は、クロスワイズコイルを取り出すときのハンド部および吸着ノズルの配置を模式的に示す図であり、
図23(A)は上方向から見た図であり、
図23(B)は水平方向から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一実施形態のコイル搬送装置について、
図1~
図16を参照して説明する。
本実施形態においては、
図7に示すように、たとえば自動巻線機によりワイヤが巻回されて芯棒710の周囲に形成された空芯コイル810を、
図14に示すように、搬送の目的場所としての載置部500に所定の配置で載置するコイル搬送装置10(
図8~
図12参照)について説明する。
【0035】
より具体的には、コイル搬送装置10は、芯棒710に巻回された空芯コイル810を芯棒710から取り出し(抜き取り)、載置部500の場所まで搬送し、載置部500上に載置する。載置部500は、たとえばコイル部品を製造するための外装封止工程に空芯コイル810を供給するための接着シートであり、空芯コイル810が二次元配列で配置される部材である。
【0036】
コイル搬送装置10は、
図1および
図2に示すハンド部100、
図3および
図4に示す吸着ノズル210、
図13および
図14に示す搬送ノズル220、および、
図13に示す仮置き部300を有する。また、コイル搬送装置10は、各構成部分や搬送対象部品の位置、姿勢、動作状態を検出するセンサおよびカメラ、ハンド部100および吸着ノズル210を含む各構成部分を駆動する駆動部、吸着ノズル210を介して空気を吸引する吸引装置、および、これらの各構成部を制御するとともに、搬送対象部品の検査に係る処理を実行する演算処理装置を有する。
【0037】
以下、各部の構成を説明する。
【0038】
ハンド部100は、
図10に示すように、柱状部101a,101bの間に取り出し対象の空芯コイル810を係合させ(引っ掛け)、芯棒710から抜き取るための部材である。
【0039】
ハンド部100は、
図1に示すように、対向配置された一対の柱状部101a,101bを有する。柱状部101a,101bのそれぞれは、角柱形状の本体103を有する。柱状部本体103は、一方の端部である先端部104が自由端に構成され、他方の端部である基端部は図示せぬ駆動装置に接続されている。
【0040】
なお、
図1を参照する際は、図示されているように、一対の柱状部101a,101bの延伸方向をZ軸方向とし、基端部側(Z軸正方向)を上側(上方向)、先端部104側(Z軸負方向)を下側(下方向)とする。また、一対の柱状部101a,101bが対向する方向をX軸方向とし、Z軸方向とX軸方向にそれぞれ垂直な方向をY軸方向とする。
【0041】
一対の柱状部101a,101bの各先端部104には、対向する他方の柱状部101b,101aに向かって所定の微小高さW1で突出する凸部140が形成されている。そのため、柱状部本体103の対向面(柱状部内側面)151には、段差面141が形成される。段差面141は、凸部140の基端側の側面である。
【0042】
段差面141は、Y軸方向の一方側を占める接触面142と、Y軸方向の他方側を占める拡幅部143とを有する。接触面142は、X軸方向の長さが一定の部分であり、拡幅部143は、接触面142から離れるにつれてX軸方向の長さが徐々に広がる部分である。拡幅部143は、その上側に隣接する柱状部内側面151が、対向する一対の柱状部101a,101bの間でその距離が徐々に広がる傾斜面153に形成されているため、これに対応して徐々に幅が広がる形状となっている。柱状部内側面151のうち接触面142の上側に隣接する部分152は、対向する一対の柱状部101a,101bの間で距離が変わらない平行な面に形成されている。
【0043】
柱状部101a,101bのそれぞれにおいて、凸部140の段差面141に隣接する面は、Z軸方向に平行な内側端面145であり、一対の柱状部101a,101bにおいて最も近接した(距離が最も短い)部分である。内側端面145からさらに先端側の部分は、対向する柱状部101a,101bの間で徐々に距離が広がる傾斜面146に形成されている。
【0044】
このような形状の一対の柱状部101a,101bは、基端側が図示せぬ駆動部に接続されており、X方向にそれぞれ移動可能に構成されている。すなわち、一対の柱状部101a,101bは、その間隔(距離)を任意に変更可能に構成されている。本実施形態において、一対の柱状部101a,101bが特定の空芯コイル810を取り扱う(取り出す)とき、一対の柱状部101a,101bは、少なくとも、空芯コイル810のサイズに応じた所定の開いた状態と、空芯コイル810のサイズに応じた所定の閉じた状態とに開閉(移動)される。
【0045】
また、このように開閉自在な一対の柱状部101a,101bを有するハンド部100は、さらに全体として図示せぬ駆動部に接続されており、ハンド部100全体として、すなわち一対の柱状部101a,101bを一体的に、任意の方向に平行移動あるいは回転移動可能に構成されている。ハンド部100は、一対の柱状部101a,101bが閉じた状態で、あるいは開いた状態で、一体的に、鉛直方向に上昇したり、下降したり、水平方向に移動したり、任意の方向を回転軸として回転移動したりすることが可能に構成されている。
【0046】
このような形状の構成のハンド部100、すなわち一対の柱状部101a,101bにおいては、
図5に示すように、柱状部101a,101bの接触面142,142が、取り出し(抜き取り)対象の空芯コイル810に接触し、これを係合あるいは支持する。ハンド部100においては、接触面142,142が、空芯コイル810に接触する唯一の面(部分)である。
【0047】
柱状部内側面151,151の接触面142,142に隣接する部分152,152は、ハンド部100で空芯コイル810を係合したときに、空芯コイル810の周面に対向する部品対向面である。部品対向面152,152は、空芯コイル810の周面に近接して配置されるものの、空芯コイル810の周面とは所定の微小間隔を空けて配置され、空芯コイル810の周面に接しない。
【0048】
図5は、芯棒710の周囲に巻回された空芯コイル810を芯棒710から取り出すために、一対の柱状部101a,101bが閉じた状態を示している。
図5に示すように、柱状部101a,101bは、接触面142,142を、空芯コイル810の底面の周縁部に接触させており、部品対向面152,152は空芯コイル810に接触をしていない。
【0049】
このような状態で空芯コイル810に係合するために、一対の柱状部101a,101bは、これが閉じたとき、関係式:La>W>Lb(W:柱状部101a,101bの開閉方向における空芯コイル810の幅、La:柱状部101a,101bの部品対向面152,152の間隔、Lb:柱状部101a,101bの内側端面145,145の間隔)を満たすように設計され、開閉が制御される。
【0050】
また、ハンド部100の一対の柱状部101a,101bの内側端面145,145は、柱状部101a,101bが閉じた場合も芯棒710に接触しないように設計され、あるいは柱状部101a,101bの開閉が制御される。
【0051】
ハンド部100の凸部140の高さW1、すなわち、接触面142の幅W1や、接触面142のY方向の長さW2は、取り出し対象の空芯コイル810のサイズやワイヤ径に応じて適宜設定してよい。たとえば、接触面142の幅W1は、空芯コイル810を形成するワイヤの径よりも小さくてもよい。
【0052】
なお、
図5に示すように、鉛直方向に設置された芯棒710から空芯コイル810を引き抜く場合、ハンド部100は、接触面142を空芯コイル810に係合させて移動させるのみならず、空芯コイル810を鉛直方向下方から支持する機能も発揮する。一方、水平方向に設置された棒状部材に配置された空芯コイル810を水平方向に引き抜く場合は、ハンド部100は、単に接触面142を空芯コイル810に係合させて空芯コイル810を移動させるのみで、空芯コイル810の支持はしない。ハンド部100の機能は、取り出し対象部品の供給形態に応じてこのような相違があるが、本実施形態のコイル搬送装置10では、ハンド部100は、後述する吸着ノズル210とともに空芯コイル810を保持し搬送するので、少なくとも、部品に係合して移動させる機能を発揮できればよい。
【0053】
ハンド部100において、内側面拡幅部153および段差面141の拡幅部143、および、内側端面145の先端部104側の傾斜面146は、前述した空芯コイル810の取り出しの動作中等に、空芯コイル810や他の機械、器具、装置に干渉することがないように、いわゆる逃げ空間、空間マージンとして形成されている。このような構成とすることにより、ハンド部100を安全に動作させることが可能となる。
【0054】
また、ハンド部100において、一対の柱状部101a,101bの各部品対向面152,152は、鏡面加工されている。ハンド部100により正常に空芯コイル810が係合されている場合には、前述したように、部品対向面152、152は空芯コイル810に接触しないが、何らかの理由により空芯コイル810の姿勢が崩れた場合等は、空芯コイル810が部品対向面152に接触する場合がある。このような場合にも空芯コイル810を損傷させないため、あるいは損傷を軽減するため、部品対向面152,152は、鏡面加工されている。
【0055】
吸着ノズル210は、
図3に示すように、空芯コイル810を吸着保持するための部材である。
吸着ノズル210は、内部に連通路202が形成された筒状部材であり、一方の端部である先端部204に、連通路202の端部開口である先端吸着孔205が形成されている。吸着ノズル210の他方の端部は、図示せぬチューブを介して吸引装置に連通されており、吸引装置が作動して吸着ノズル210の先端部204の先端吸着孔205から空気を吸引することにより、先端吸着孔205に負圧が発生し、先端吸着孔205が当接する空芯コイル810が吸着される。
【0056】
図4に示すように、吸着ノズル210の外径S1は、取り出し対象の空芯コイル810の磁路長(コイルとして機能する空芯コイル810の高さに相当する)L1より大きくてもよく、図示のごとく吸着ノズル210の端部が空芯コイル810の周面から突出した形態であってもよい。一方、先端吸着孔205の孔径S2は、空芯コイル810の磁路長L1よりも小さいことが好ましい。より好ましくは、先端吸着孔205の孔径S2は、空芯コイル810の磁路長L1の(40)%~(90)%であることが好ましい。なお、吸着ノズルの孔の形状としては丸型、長丸型、角型のものを用いることができる。この場合、外径S1は孔における最長部の長さにあたる。(例えば、円型の場合は直径、角孔の場合は対角線長さにあたる。)
【0057】
なお、吸着ノズル210の先端部204は、1つの先端吸着孔205を有する構成ではなく、微細孔が多数形成された多孔質体で構成してもよい。吸着ノズル210の連通路202を介した吸引装置からの吸引力が、多孔質体の微細孔を介して空芯コイル810へ付与されることとなり、微細な空芯コイル810や、周面に凹凸の多い空芯コイル810等を吸着するのに有効である。
【0058】
吸着ノズル210の材質は特に限定されないが、たとえばステンレスのような金属鋼材を用いるのが好ましい。
吸着ノズル210の先端部204が接触する空芯コイル810を損傷させないように、先端部204は、適切な材質で表面コーティングされている。
【0059】
このような形状の吸着ノズル210は、図示せぬ駆動部に接続されており、任意の方向に平行移動あるいは回転移動可能に構成されている。吸着ノズル210は、前述したハンド部100と一体的に、あるいはハンド部100とは別個に独立して、鉛直方向に上昇したり、下降したり、水平方向に移動したり、任意の方向を回転軸として回転移動したりすることが可能に構成されている。
【0060】
なお、前述したハンド部100と吸着ノズル210とは、同一の駆動装置および制御装置により一体的に駆動され、制御される構成でもよい。後述するように、ハンド部100と吸着ノズル210とは、同じ支点を軸として回転してよい動作も多く、共通化可能な部分は同一の駆動装置により一体的に駆動する構成としてもよい。そのように構成すれば、装置構成を簡略化できて好適である。
【0061】
仮置き部300は、ハンド部100および吸着ノズル210により芯棒710から取り出された空芯コイル810を一時的に載置し、再吸着しなおすための構成である。
仮置き部300は、
図13に示すように、仮置き台310、位置決め部材320および図示せぬ気流発生装置を有する。
【0062】
仮置き台310は、ハンド部100および吸着ノズル210により芯棒710から取り出された空芯コイル810が一時的に載置される基台である。仮置き台310の表面は滑りやすく加工されており、載置された空芯コイル810が容易に移動可能になっている。
【0063】
位置決め部材320は、
図13(A)に示すようにL字状の部材であり、仮置き台310の上面に固定設置されている。
図13(B)に示すように、仮置き台310の上面に載置された空芯コイル810を、気流f1,f2により位置決め部材320の内側角部に向けて移動させることにより、空芯コイル810の位置や姿勢は位置決め部材320の内側角部に沿った位置と姿勢に正確に規定される。
【0064】
このように正確に位置決めおよび姿勢の調整がされた空芯コイル810を、
図13(C)に示すように、今度は搬送ノズル220により再吸着し、最終的な搬送目的場所である載置部500に搬送する。
【0065】
本実施形態のコイル搬送装置10においては、吸着ノズル210から搬送ノズル220への空芯コイル810の受け渡しと、空芯コイル810を適切な位置および姿勢で吸着するために、このような仮置き部300が使用されている。
【0066】
搬送ノズル220は、前述したように、仮置き部300から載置部500までエッジワイズコイル820を搬送するための吸着部材である。本実施形態において、搬送ノズル220は、吸着ノズル210と同じ構成である。、
【0067】
図示省略しているが、コイル搬送装置10は、複数のカメラを有する。
カメラは、コイル搬送装置10の全体にわたって複数設置されているが、大きく分けて、コイル搬送装置10の制御のためのセンサ手段としての第1系統のカメラと、取り出し搬送対象の部品たる空芯コイル810を検査するための第2系統のカメラと、搬送目的場所である載置部500における空芯コイル810の整列状態を検査するための第3系統のカメラを有する。
【0068】
第1系統のカメラは、たとえば、芯棒710への空芯コイル810の形成状態、柱状部101a,101bや吸着ノズル210の移動状態や位置、柱状部101a,101bおよび吸着ノズル210による空芯コイル810の支持状態、吸着状態、保持状態、仮置き部300に載置された空芯コイル810の位置や姿勢、その他、コイル搬送装置10を構成する各部の相対的位置関係や稼働状況等を把握するために対象物を撮像し、得られた画像データを制御部に送信する。これに基づいて、制御部では、コイル搬送装置10の稼働状況を検知し、コイル搬送装置10が所望の動作をするよう、いわゆるフィードバック制御を含めた制御方式により各部を制御する。
【0069】
第2系統のカメラは、たとえば吸着ノズル210あるいは搬送ノズル220により吸着されて搬送されているときの空芯コイル810を撮像し、得られた画像データを制御部に送信する。これに基づいて、制御部では、空芯コイル810の部品単体としての状態、すなわち、外観、端子の位置や形状、リード端子の接着状態等を把握し、良品/不良品の判定や、不良品のマーキングや排除等の処理を行う。
【0070】
第3系統のカメラは、主に載置部500に配置された空芯コイル810を撮像し、得られた画像データを制御部に送信する。これに基づいて、制御部では、空芯コイル810の配置状態、すなわち、空芯コイル810の間のピッチや基準方向に対する傾き、あるいは、高さ方向の傾き等を検出し、たとえば次工程において使用可能か等の条件に基づいて部品の良否判断を行い、不良品のマーキング等の処理を行う。
【0071】
なお、これらのカメラによる処理のうち、可能なものは、カメラ(撮像手段)以外のセンサを用いてもよい。
【0072】
載置部500は、空芯コイル810を搬送する目的場所であって、搬送した空芯コイル810を所定の配置で載置するための部材である。通常、載置部500は、空芯コイル810を次工程に供給するための部品受け渡し場所(位置)である。本実施形態において、載置部500は、次の工程としての外装封止工程に空芯コイル810を供給するための接着シートである。
図14および
図16に示すように、順次搬送される空芯コイル810は、接着シート500上に、所定の二次元配列で配置される。
【0073】
ただし、具体的な載置部500の構成はこれに限られず、個々の空芯コイル810を収容する凹部が設けられたパレット、個々の空芯コイル810を収容するポケットが設けられたテープ部材等であってもよい。また、搬送部材ではなく、次工程の処理機械における部品投入口(供給口)のような箇所であってもよい。
【0074】
このようなコイル搬送装置10の各部の動作は、図示せぬ制御部により制御されて実行される。コイル搬送装置10は、そのための制御部を有する。制御部は、コイル搬送装置10に設置されたプロセッサ―のような形態あってもよいし、通信I/Fを介して接続される汎用のコンピュータであってもよい。
【0075】
次に、このような構成コイル搬送装置10により、空芯コイル810を取り出し、搬送目的場所搬送する処理について、
図6~
図16を参照して説明する。
【0076】
なお、
図7~
図12を参照する以下の説明においては、鉛直方向をZ軸方向とし、芯棒710に形成された空芯コイル810を取り出すときのハンド部100の柱状部101a,101bの開閉方向をX軸方向とし、Z軸方向とX軸方向に垂直な方向をY軸方向とする。また、Z軸正方向を上、Z軸負方向側を下、Y軸負方向を前、Y軸正方向を後ろと称する場合もある。
【0077】
【0078】
まず、
図7に示すように、取り出し・搬送対象の空芯コイル810が芯棒710に形成される(工程S1)。本実施形態において、芯棒710は、図示せぬ自動巻線機によりワイヤが巻回される巻芯軸である。芯棒710は、基台700の上に設置されている。基台700は、自動巻線機に付随した構成であってもよいし、自動巻線機とは別部材であってもよい。また、芯棒710は、基台700に複数構成されてもよい。
【0079】
芯棒710は、基台700から鉛直方向(Z軸方向)上側に延伸する棒状部材であり、上端部は開放された自由端に構成されている。芯棒710には、図示せぬ自動巻線機により、順次ワイヤが巻回され、コイル810が形成される。本実施形態では、芯棒710に巻回されるワイヤは丸線811(
図4参照)である。
【0080】
空芯コイル810の準備ができたら、すなわち芯棒710に対する空芯コイル810の製造が終了したら、コイル搬送装置10のハンド部100を空芯コイル810の近傍に移動させるとともに、吸着ノズル210により空芯コイル810を吸着する(工程S2)。
【0081】
そのために、まず、
図8に示すように、一対の柱状部101a,101bおよび吸着ノズル210を下降させる(Z軸方向下向きに移動させる)。このとき、一対の柱状部101a,101bは開いた状態である。下降させる位置は、吸着ノズル210については、先端部204の先端吸着孔205が空芯コイル810の周面と同じ高さとなる位置であり、一対の柱状部101a,101bについては、柱状部101a,101bの接触面142,142が空芯コイル810の底面よりさらに下側となる位置である。
【0082】
次に、
図9に示すように、一対の柱状部101a,101bおよび吸着ノズル210を前進させる。すなわち、Y軸方向で空芯コイル810に近くなる方向に柱状部101a,101bおよび吸着ノズル210を移動させる。柱状部101a,101bは、接触面142,142のY軸方向の位置が、空芯コイル810の底面周縁部の接触面142,142が接触する位置のY軸方向の位置と同じになるまで移動させる。吸着ノズル210は、先端部204が空芯コイル810の周面に当接する位置まで移動させる。
【0083】
吸着ノズル210の先端部204が空芯コイル810に接触したら、図示せぬ吸引装置を介して吸着ノズル210の連通路202を介して空気を吸引する。これにより、吸着ノズル210の先端吸着孔205に負圧が発生し、吸着ノズル210の先端部204に空芯コイル810の周面が真空吸着され、空芯コイル810は、吸着ノズル210に吸着保持された状態となる。
【0084】
このとき、吸着ノズル210による空芯コイル810の周面の吸着は、空芯コイル810の周面のうち、柱状部101a,101bが開閉する方向(x方向)に垂直な方向(y方向)を指向する面(y方向で吸着ノズル210向きを面方向とする面)を吸着することとなる。吸着ノズル210による吸着箇所は、ハンド部100や芯棒710と干渉することなく吸着できる場所であれば任意の場所を吸着してよい。
【0085】
なお、空芯コイル810の周面は曲面であり、巻回された丸線811の間には凹部があるので、吸着ノズル210により吸引をしても漏れが生じて密着状態にはなり難い。しかし、ある程度の吸引力で吸引すれば、多少の漏れが生じても吸着ノズル210の吸着は可能である。また、コイル搬送装置10においては、ハンド部100も同時的に空芯コイル810を係合支持するので、吸引力が多少弱くとも、ハンド部100と協働して空芯コイル810を適切に保持できる。
【0086】
次に、
図10に示すように、ハンド部100を閉じる(工程S3)。すなわち、一対の柱状部101a,101bを、それぞれ内側に移動させる。一対の柱状部101a,101bは、
図5を参照して前述した位置関係になるまで移動させる。すなわち、接触面142,142は、空芯コイル810の底面の下方(係合可能位置、引き抜き位置)に配置され、内側端面145,145は、芯棒710の側面715に接触しない位置に配置される。また、部品対向面152,152は、空芯コイル810の周面に接触はしないが、空芯コイル810の周面と所定間隔離れた近接した位置に配置される。このとき、
図10に示すように、柱状部101a,101bの接触面142,142は、空芯コイル810の底面に接触しておらず、所定の隙間g離れた位置に配置される。
【0087】
このように、吸着ノズル210が空芯コイル810を吸着し、柱状部101a,101bの接触面142,142が引き抜き位置に配置されたら、
図11に示すように、ハンド部100および吸着ノズル210を上昇させ、空芯コイル810を芯棒710から引き抜く(工程S4)。
【0088】
柱状部101a,101bの接触面142,142は空芯コイル810のZ軸方向下側に配置されているため、柱状部101a,101bが上昇すると、接触面142,142が空芯コイル810に接触し、空芯コイル810は柱状部101a,101bと一緒に上向きに移動する。
【0089】
このとき、吸着ノズル210は、空芯コイル810の吸着を継続し、空芯コイル810と一体に上向きに移動する。そのためには、吸着ノズル210は、一対の柱状部101a,101bの上向き移動の開始から遅れて、柱状部101a,101bの接触面142,142が空芯コイル810の下面に当接したときから、上向き移動を開始する。これにより、吸着ノズル210による吸着を維持しながら、ハンド部100の接触面142,142の係合により空芯コイル810は上側に移動され、芯棒710から離脱される。
【0090】
空芯コイル810が芯棒710から離脱したら、空芯コイル810を仮置き部300に搬送する(工程S5)。
【0091】
本実施形態においては、ハンド部100および吸着ノズル210は、空芯コイル810を芯棒710から引き抜いたときの状態で、空芯コイル810を仮置き部300の上部まで搬送する。このようにして空芯コイル810を搬送すれば、空芯コイル810は、柱状部101a,101bの接触面142,142により底面端部を支持されているので、仮に吸着ノズル210の吸着力が解除されても、落下することはない。なお、吸着ノズル210の吸着が予定外に解除された場合には、これを検知して再吸着する機構および制御部を備えておいてもよい。
【0092】
空芯コイル810を仮置き部300の上部に搬送したら、空芯コイル810を仮置き台310の上に仮置きする(工程S6)。
ハンド部100および吸着ノズル210は、
図12に示すように、X軸周りに略90°回転し、空芯コイル810の脚部が鉛直方向下側となり、吸着ノズル210が上側から空芯コイル810を吸着している姿勢とする。これにより、空芯コイル810は仮置き部300に載置可能な姿勢となる。また、この回転により、ハンド部100による空芯コイル810の支持は解除されるので、一対の柱状部101a,101bは、外側に開いて、空芯コイル810等と干渉することが無いように、離れた位置に退避する。
【0093】
空芯コイル810が仮置き部300に載置可能な姿勢となったら、吸着ノズル210は下降し、仮置き台310の上に空芯コイル810を載置する。載置が完了したら、吸着ノズル210は空芯コイル810の吸着を解除し、仮置き部300の上部へ復帰する。この時点で、ハンド部100および吸着ノズル210の役割は終了したので、ハンド部100および空芯コイル810は、次の空芯コイル810の取り出し処理に移る。
【0094】
一方、たとえば
図13(A)に示すような状態で仮置き台310に載置された空芯コイル810には、
図13(B)に示すように気流f1,f2があてられ、空芯コイル810は、位置決め部材320の内側角部に移動される。なお、気流f1,f2は例えば位置決め部材320に形成する負圧発生孔を介して発生させることが可能である。また、気流f1,f2は例えば
図13(B)に示す方向の上流に正圧生成ノズルを配置することによっても発生可能である。そして、このように位置および姿勢が修正された空芯コイル810に対しては、
図13(C)に示すように、吸着ノズル210と実質的に同じ構成の搬送ノズル220が下降し、これを吸着し、コイル搬送装置10としての最終的な搬送目的場所である載置部500への搬送(工程S7)に供される。
【0095】
搬送ノズル220による載置部500への搬送に際しては、前述した第2系統のカメラにより、空芯コイル810単体としての検査(検査1)が行われる(工程S8)。
この検査工程においては、図示せぬカメラにより空芯コイル810を複数方向から撮像し、たとえば、空芯コイル810の寸法が規定の範囲内か、空芯コイル810に傷や変形が無いかを調べる。
【0096】
ここでは、たとえば、
図15に示すように、一方向のコイルの幅D1,コイル高さD2,リード幅D3a,D3b,他方向のコイルの幅D4,リード端子の高さD5等の外観寸法が、カメラ撮像画像に基づいて検査される。
【0097】
このような検査を経て載置部500の上部まで搬送されたら、空芯コイル810は、載置部500の所定の位置に配置される(工程S9)。
図14に示すように、搬送ノズル220が下降し、載置部500の載置面510の所定の位置に空芯コイル810を配置する。本実施形態において、載置部500は、空芯コイル810が二次元配列で配置される接着シートであり、新たに載置される空芯コイル810は、
図14(B)に示すように、載置面510上において、周囲の空芯コイル810との距離が厳密に制御され、また、空芯コイル810が姿勢も適切に制御され、所望の位置に配置される。
【0098】
空芯コイル810が載置部500上に配置されたら、載置部500上における空芯コイル810の配置(整列状態)等の検査(検査2)が行われる(工程S10)。
【0099】
この検査工程においては、
図18(A)に示すように、基準線511を含む載置面510の状態が撮像され、その配置が検査される。
具体的には、各空芯コイル810a~810dについて、基準線511との距離D6,D7が適切か、隣接する空芯コイル810との距離D8,D9が適切か、あるいは、所定の領域P1~P4に適切に配置されているか(正しい姿勢で配置されているか)等が検査される。たとえば、
図18(A)における空芯コイル810dは、基準線511に対する平行度の異常、あるいは、領域P4に適合していない異常等が検出され、不良と判断される。
【0100】
また、この検査工程においては、
図18(B)に示すように、載置面510と略同じ高さ(視点)から撮像された画像情報に基づいて、各空芯コイル810e,810fについて、載置面510からの高さD10が適切か、空芯コイル810が高さ方向に傾いていないか、両端子が載置面510に接着されているか、等が検査される。たとえば、
図18(B)における空芯コイル810fは、高さD10が規定範囲外であるとして、不良と判断される。
【0101】
検査の結果不良と判定された空芯コイル810については、不良品のマーキング等の処理を行い、次工程で良品に混入しない処理が行われる。
なお、不良と判断された空芯コイル810を、再吸着して再配置する機構および制御部を備えておいてもよい。
【0102】
本願発明のコイル搬送装置10は、以上のような処理を実行し、空芯コイル810の取り出し、搬送を行う。
【0103】
このように、コイル搬送装置10によれば、たとえば製造装置や搬入装置等の供給元において芯棒710の周囲に配置された空芯コイル810を、損傷や落下等させることなく適切に取り出し搬送できる。
【0104】
ハンド部100による接触だけで空芯コイル810を引き抜くと、空芯コイル810を落下させる可能性がある。また、吸着ノズルによる吸着だけで空芯コイル810を保持しようとすると、空芯コイル810の周面の段差や凹凸からエアーが漏れて吸着が十分に行えず、空芯コイル810が落下する可能性がある。しかし、本願発明のコイル搬送装置10においては、吸着ノズル210により空芯コイル810を吸着するとともに、ハンド部100の接触面142,142を空芯コイル810に接触させて、引き抜き・保持を行っているため、落下を防ぐことが可能となる。
【0105】
また、コイル搬送装置10によれば、ハンド部100により空芯コイル810を把持することはせず、空芯コイル810を芯棒710の開放端側に移動させ抜き取っている。すなわち、吸着ノズル210とハンド部100とを組み合わせることにより、ハンド部100で空芯コイル810を支持しつつ、吸着ノズル210により空芯コイル810を吸着して、空芯コイル810を取り出している。その結果、コイル搬送装置10によれば、空芯コイル810を損傷させることなく、適切かつ安定的に空芯コイル810を取り出し搬送できる。
【0106】
本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような任意好適な種々の改変が可能である。
【0107】
前述した実施形態において芯棒710に設置された空芯コイル810を取り出す際は、まず、吸着ノズル210を空芯コイル810に吸着させ、その後、ハンド部100の柱状部101a,101bの接触面142,142を空芯コイル810に接触させ、空芯コイル810を芯棒710から抜き取っている。しかし、吸着ノズル210による吸着とハンド部100による接触とはこの順序に限られない。
【0108】
吸着と接触とを略同時に行ってもよいし、先に、ハンド部100の接触面142,142を空芯コイル810に接触させておき、その後、吸着ノズル210による吸着を行う順序でもよい。あるいは、吸着ノズル210の先端部204を空芯コイル810の周面に当接させる動作はハンド部100の空芯コイル810への接触に先行して行いつつ、吸着ノズル210による吸着は、ハンド部100の空芯コイル810への接触と略同時に、あるいは、ハンド部100により空芯コイル810が上方に移動されている間に行う構成でもよい。上述した実施形態と同様の作用・効果により空芯コイル810の取り出しや搬送を行うためには、空芯コイル810が芯棒710から引き抜かれるまでに(引き抜かれるときに)、ハンド部100による接触と吸着ノズル210による吸着の両方が完了していればよい。
【0109】
柱状部101a,101bの移動、吸着ノズル210の移動、および、吸着ノズル210による吸引(吸着)は、図示せぬ制御部、駆動部、吸引部により任意に制御可能である。したがって、各構成部の詳細な動作タイミング等は、部品(空芯コイル810)の取り出し効率、あるいは取り出す際の安全性の観点から、任意好適に設定し制御してよい。
【0110】
また前述した実施形態では、吸着ノズル210で吸着した状態で芯棒710から抜き取った空芯コイル810は、一旦仮置き部300に載置し、搬送ノズル220により再吸着して載置部500に搬送している。しかし、仮置き部300に載置することなく、芯棒710から抜き取ったら、そのまま、搬送目的場所である載置部500に搬送する構成でもよい。すなわち、搬送ノズル220を使用せず吸着ノズル210により、換言すれば搬送ノズル220の機能を兼ね備える吸着ノズル210により、直接、空芯コイル810を載置部500に搬送し、載置部500に載置する構成でもよい。
【0111】
吸着ノズル210による吸着力が十分で搬送ノズル220により吸着しなおす必要が無い場合、あるいは、吸着ノズル210により吸着した空芯コイル810の位置精度が十分であるか、高精度な位置決めを要求されない場合には、このような構成にできる。このような構成とすれば、仮置き・再吸着工程が不要となり、部品の搬送効率を向上させ、搬送工程を簡略化できる。また、搬送ノズル220を備える必要がないため、コイル搬送装置10の構成を簡単化できる。
【0112】
また、吸着ノズル210により、直接、空芯コイル810を搬送目的地まで搬送する構成において、ハンド部100の接触面142,142による空芯コイル810の支持をどの地点まで行うかという点、および、吸着ノズル210をどの地点で回転させて空芯コイル810を載置部500に載置可能な姿勢にするかという点は、任意に構成してよい。
【0113】
ハンド部100および吸着ノズル210により空芯コイル810を芯棒710から引き抜いた時点では、ハンド部100は接触面142,142により空芯コイル810を鉛直方向に支持している。したがって、空芯コイル810を、ハンド部100による支持と吸着ノズル210による吸着との両方が作用している状態および姿勢で載置部500の上部まで搬送し、載置部500の上部で少なくとも吸着ノズル210が回転し空芯コイル810を載置部500に載置可能な姿勢とすることが、空芯コイル810を安全に搬送するという点からは好ましい。
【0114】
しかし、吸着ノズル210による吸着力が十分な場合には、空芯コイル810を芯棒710から引き抜いた時点で、直ちに、一対の柱状部101a,101bを開いてハンド部100による空芯コイル810の支持を解除してもよい。このような構成とすれば、ハンド部100を次の工程に使用できる。
【0115】
また、ハンド部100による空芯コイル810の支持を早期に解除した場合に、その後のどの時点(地点)で、吸着ノズル210を回転させるかは、重力あるいは搬送方向から受ける抵抗に抗して安定して空芯コイル810を吸着し続けるという点、あるいは、載置部500に空芯コイル810を短時間で載置するという効率の点から、任意に決定してよい。ハンド部100の支持が解除された時点で回転してもよいし、空芯コイル810を載置する直前に載置部500の上部で回転してもよいし、空芯コイル810を引き抜いた地点から載置部500までの移動している間に、移動しながら回転する構成でもよい。
【0116】
また、前述した実施形態においては、カメラを用いた2段階の検査工程を含むものであったが、良品/不良品の判定は別工程あるいは別装置で行うものとして、コイル搬送装置10では、単に空芯コイル810を芯棒710から取り出し、搬送する構成としてもよい。すなわち、検査工程を実行しない形態も可能であり、そのような形態も本願発明の範囲内である。
【0117】
また、前述した実施形態では、単一の芯棒710に巻回された空芯コイル810の取り出しおよび搬送について説明したが、空芯コイル810の供給形態としては種々の形態がある。
【0118】
たとえば、
図17(A)に示すように、複数のベース柱722の上面にそれぞれ突起723が設けられており、これに空芯コイル810が順次巻回されて供給される場合もある。また、
図17(B)に示すように、ベースとなるベース板731の表面に複数の突起733が設けられており、このそれぞれに空芯コイル810が順次巻回されて供給される場合もある。これらどちらの場合も、前述したコイル搬送装置10により、前述した方法と同じ手順により、空芯コイル810の取り出し、搬送が可能である。
【0119】
また、たとえば
図18(A)に示すように、垂直壁部741から水平方向に複数の柱741が突出し、この垂直壁部741の端面に突起743が形成され、これに空芯コイル810が順次巻回されて供給される場合もある。このような形態に対しては、
図18(B)に示すように、一対の柱状部101a,101bの対向面方向が鉛直方向となるようにハンド部100を配置し、ハンド部100を水平方向に引いて空芯コイル810を抜き出すようにすればよい。
【0120】
この場合、一対の柱状部101a,101bの接触面142,142が空芯コイル810を重力方向に支持する状況にはならないので、吸着ノズル210の吸着力により空芯コイル810を保持する必要があるが、対向面152,152の一方は空芯コイル810の下側の近接した位置にあるので、仮に、吸着ノズル210の吸着力が弱まっても、部品対向面152にあたって留まり、下まで落下することは防止できる。したがって、このような形態でも、損傷を防止可能である。
【0121】
また、
図18(B)において、ハンド部100の一対の柱状部101a,101bはZ方向において対となるように配置しているが、柱状部101a,101bはY方向において対となるように配置されていてもよい。この場合、吸着ノズルはZ方向の上側から、または下側から空芯コイル810に向かって配置される。
【0122】
また、前述した実施形態では、ハンド部100の一対の柱状部101a,101bとして、
図1に示すように、段差面141に接触面142と拡幅部143が形成されており、また、柱状部内側面151には部品対向面152と内側面拡幅部153とが形成されている一対の柱状部101a,101bを例示した。しかし、ハンド部100の柱状部の構成はこのような構成に限られず、たとえば、
図19、
図20に示すような構成でもよい。
【0123】
図19、
図20に示す一対の柱状部171a,171bにおいても、先端部174に時W凸部180が形成され、柱状部本体173の内側面192に段差面182が形成されている点は
図1に示す形態と同じである。しかし、
図19に示す柱状部171a,171bにおいては、段差面182の全域が接触面に形成されており、拡幅部143のような部分はない。また、内側面192の全域が、対向面192に形成されており、拡幅部153のような構成はない。ハンド部の一対の柱状部は、このような形状で構成してもよい。このような構成であれば、加工が容易であり、ハンド部100を安価に製造できる。
【0124】
また、前述した実施形態では、丸線を巻回した空芯コイル810を取り出し搬送する形態について説明をしたが、本願発明のコイル搬送装置10は、その他のコイルに適用することもできる。
【0125】
たとえば、
図21に示すように、平角線821をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイル820の取り出しおよび搬送に本願発明のコイル搬送装置10を適用することもできる。また、この形態においては、たとえば
図21に示すように、吸着ノズル210をエッジワイズコイル820の上面に当接させ、エッジワイズコイル820の上面を吸着する構成としてもよい。平角線821をエッジワイズ巻きすると、上面に平坦面ができるため、これを吸着ノズル210で吸着すれば、十分な吸着力で吸着が可能である。また、平角線821を用いたコイルで、特に微細なコイルの場合は、
図21に示すように、空芯部824の面積が平角線821の面積より小さくなる場合があり、このような場合は特に、エッジワイズコイル820の上面を吸着することが有効である。
【0126】
また、たとえば
図22に示すように、2本の吸着ノズル230により、エッジワイズコイル830を上面から吸着するようにしてもよい。
図22に示すエッジワイズコイル830は、平角線831の幅が、
図21に示したエッジワイズコイル820よりもさらに広い。このようなエッジワイズコイル830に対しては、平角線831の幅よりも先端吸着孔205が小さい吸着ノズル210が存在する可能性があり、
図22に示すように2本の吸着ノズル210で、あるいは、さらに多数の吸着ノズル210で吸着ノズル230を吸着する構成としても良い。
【0127】
また、たとえば
図23に示すように、平角線841を2重にスピンドル巻きしたクロスワイズコイル840の取り出しおよび搬送についても、本願発明のコイル搬送装置10を適用できる。このクロスワイズコイル840においては、主面に平坦な面が形成されるため、前述した実施形態のように、水平方向からクロスワイズコイル840の周面に吸着ノズル210を密着させるのが有効である。
【0128】
このように、本願発明のコイル搬送装置10は、種々のコイルに適用可能である。
【符号の説明】
【0129】
10…コイル搬送装置
100,170…ハンド部
101a,171a…第1柱状部
101b,171b…第2柱状部
103,173…柱状部本体
104,174…先端部
105…基端側柱状部
140,180…凸部
141…段差面
142,182…接触面
143…拡幅部
145、185…内側端面
146,186…傾斜面
151…柱状部内側面
152,192…部品対向面
153…内側面拡幅部(傾斜面)
210,230…吸着ノズル(吸着部)
220…搬送ノズル(吸着部)
202…内管
204…先端部
205…先端吸着孔
300…仮置き部
310…仮置き台
320…位置決め部材
500…載置部(搬送目的場所)
510…載置面
511…基準線
700…芯棒基台
710…芯棒(棒状部材)
715…芯棒側面
722…ベース柱
723…突起(棒状部材)
731…ベース板
733…突起(棒状部材)
741…垂直壁部
742…水平柱
743…突起(棒状部材)
810…空芯コイル
811…丸線
820、830…エッジワイズコイル
840…クロスワイズコイル
821,831、841…平角線
824…空芯部