(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140177
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】電極体、蓄電素子
(51)【国際特許分類】
H01M 50/54 20210101AFI20230927BHJP
H01M 10/04 20060101ALI20230927BHJP
H01M 10/0585 20100101ALI20230927BHJP
H01M 50/533 20210101ALI20230927BHJP
H01M 50/536 20210101ALN20230927BHJP
H01M 50/105 20210101ALN20230927BHJP
【FI】
H01M50/54
H01M10/04 Z
H01M10/0585
H01M50/533
H01M50/536
H01M50/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046080
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217836
【弁理士】
【氏名又は名称】合田 幸平
(72)【発明者】
【氏名】飯野 準也
【テーマコード(参考)】
5H011
5H028
5H029
5H043
【Fターム(参考)】
5H011AA04
5H011FF04
5H011GG05
5H011HH02
5H028AA05
5H028CC02
5H028CC15
5H029AJ11
5H029AK03
5H029AL06
5H029AL12
5H029AM01
5H029AM11
5H029BJ04
5H029BJ12
5H029DJ05
5H029EJ01
5H043AA01
5H043AA19
5H043BA19
5H043CA08
5H043EA02
5H043EA07
5H043EA33
5H043EA39
5H043HA12E
5H043HA16E
5H043HA17E
5H043JA21E
(57)【要約】
【課題】電極の数を増やしても、電極をタブに適切に接続可能とする。
【解決手段】電極体10は、第1方向d1に交互に重ねられた複数の正極20及び負極30を備える。複数の正極20は、複数の第1正極20Aと、複数の第2正極20Bと、を含む。第1正極20Aは、第1方向d1に非平行な第2方向d2に延びる第1正極延在部21Aを有する。第2正極20Bは、第2方向d2に延びる第2正極延在部21Bを有する。複数の第1正極延在部21Aは、第1方向d1において重なっている。複数の第2正極延在部21Bは、第1方向d1において重なっている。第2正極延在部21Bは、第2方向d2または第1方向d1及び第2方向d2に非平行な第3方向d3において、第1正極延在部21Aからずれている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1方向に交互に重ねられた複数の正極及び負極を備え、
前記複数の正極は、複数の第1正極と、複数の第2正極と、を含み、
前記第1正極は、前記第1方向に非平行な第2方向に延びる第1正極延在部を有し、
前記第2正極は、前記第2方向に延びる第2正極延在部を有し、
前記複数の第1正極延在部は、前記第1方向において重なっており、
前記複数の第2正極延在部は、前記第1方向において重なっており、
前記第2正極延在部は、前記第2方向または前記第1方向及び前記第2方向に非平行な第3方向において、前記第1正極延在部からずれている、電極体。
【請求項2】
前記正極の数は、100以上である、請求項1に記載の電極体。
【請求項3】
前記第1正極延在部の厚みは、10μm以上である、請求項1または2に記載の電極体。
【請求項4】
前記第1正極延在部の厚みと前記第1正極の数との積は、3000μm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電極体。
【請求項5】
前記第1方向において、前記第1正極と前記第2正極とは、交互に並んでいる、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電極体。
【請求項6】
前記第1方向において、前記第1正極と前記負極とが交互に並んだ第1積層体と、前記第2正極と前記負極とが交互に並んだ第2積層体と、が重なっている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電極体。
【請求項7】
前記複数の第1正極延在部及び前記複数の第2正極延在部が互いに異なる位置において接続する正極タブをさらに備える、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の電極体。
【請求項8】
前記複数の負極は、複数の第1負極と、複数の第2負極と、を含み、
前記第1負極は、前記第2方向に延びる第1負極延在部を有し、
前記第2負極は、前記第2方向に延びる第2負極延在部を有し、
前記複数の第1負極延在部は、前記第1方向において重なっており、
前記複数の第2負極延在部は、前記第1方向において重なっており、
前記第2負極延在部は、前記第2方向または前記第3方向において、前記第1負極延在部からずれている、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の電極体。
【請求項9】
前記複数の第1負極延在部及び前記複数の第2負極延在部が互いに異なる位置において接続する負極タブをさらに備える、請求項8に記載の電極体。
【請求項10】
前記正極と前記負極との間に配置された絶縁体層をさらに備える、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の電極体。
【請求項11】
第1外装材及び第2外装材を含む外装体と、
前記第1外装材と前記第2外装材との間に形成される収容空間に収容された請求項1乃至10のいずれか一項に記載の電極体と、を備える、蓄電素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極体及び電極体を有する蓄電素子に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1で提案されているように、正極と負極とを交互に積層してなる電極体を有する蓄電素子知られている。蓄電素子は、外装体の内部に電極体が収容されている。電極体から電力を取り出すために、電極体は、正極及び負極のそれぞれに接続されたタブを有している。より詳しくは、電極体の各電極の一部において電極が互いに接続しており、電極が接続した部分において、タブがそれぞれの電極と接続している。電極とタブとは、接続部において例えば溶着されることで電気的に接続される。また、タブは、外装体の外部まで延び出している。電力を要する外部の装置と各タブとを接続することで、当該装置に蓄電素子から電力を供給できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
蓄電素子が供給する電力を増やすために、電極の数を増やすことが考えられている。電極の数を増やすと、接続部において、電極の合計の厚みが厚くなる。電極の合計の厚みが厚くなりすぎると、接続部において、電極がタブに適切に接続できなくなり得る。本発明は、電極の数を増やしても、電極をタブに適切に接続可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の電極体は、
第1方向に交互に重ねられた複数の正極及び負極を備え、
前記複数の正極は、複数の第1正極と、複数の第2正極と、を含み、
前記第1正極は、前記第1方向に非平行な第2方向に延びる第1正極延在部を有し、
前記第2正極は、前記第2方向に延びる第2正極延在部を有し、
前記複数の第1正極延在部は、前記第1方向において重なっており、
前記複数の第2正極延在部は、前記第1方向において重なっており、
前記第2正極延在部は、前記第2方向または前記第1方向及び前記第2方向に非平行な第3方向において、前記第1正極延在部からずれている。
【0006】
本発明の電極体において、前記正極の数は、100以上であってもよい。
【0007】
本発明の電極体において、前記第1正極延在部の厚みは、10μm以上であってもよい。
【0008】
本発明の電極体において、前記第1正極延在部の厚みと前記第1正極の数との積は、3000μm以下であってもよい。
【0009】
本発明の電極体において、前記第1方向において、前記第1正極と前記第2正極とは、交互に並んでいてもよい。
【0010】
本発明の電極体において、前記第1方向において、前記第1正極と前記負極とが交互に並んだ第1積層体と、前記第2正極と前記負極とが交互に並んだ第2積層体と、が重なっていてもよい。
【0011】
本発明の電極体は、前記複数の第1正極延在部及び前記複数の第2正極延在部が互いに異なる位置において接続する正極タブをさらに備えてもよい。
【0012】
本発明の電極体において、
前記複数の負極は、複数の第1負極と、複数の第2負極と、を含み、
前記第1負極は、前記第2方向に延びる第1負極延在部を有し、
前記第2負極は、前記第2方向に延びる第2負極延在部を有し、
前記複数の第1負極延在部は、前記第1方向において重なっており、
前記複数の第2負極延在部は、前記第1方向において重なっており、
前記第2負極延在部は、前記第2方向または前記第3方向において、前記第1負極延在部からずれていてもよい。
【0013】
本発明の電極体は、前記複数の第1負極延在部及び前記複数の第2負極延在部が互いに異なる位置において接続する負極タブをさらに備えてもよい。
【0014】
本発明の電極体は、前記正極と前記負極との間に配置された絶縁体層をさらに備えてもよい。
【0015】
本発明の蓄電素子は、
第1外装材及び第2外装材を含む外装体と、
前記第1外装材と前記第2外装材との間に形成される収容空間に収容された上述したいずれかの電極体と、を備える。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電極の数を増やしても、電極をタブに適切に接続可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図4】
図4は、
図2のIV-IV線に沿った蓄電素子の断面図である。
【
図5】
図5は、タブの近傍を拡大して示す図である。
【
図6】
図6は、一変形例の蓄電素子の断面図である。
【
図7】
図7は、他の変形例の電極体の平面図である。
【
図8】
図8は、さらに他の変形例の電極体の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示された具体例を参照して本発明の一実施の形態について説明する。本件明細書に添付する図面においては、図示と理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0019】
本明細書において用いる、形状や幾何学的条件ならびにそれらの程度を特定する、例えば、「平行」、「直交」、「同一」等の用語や長さや角度の値等については、厳密な意味に縛られることなく、同様の機能を期待し得る程度の範囲を含めて解釈される。
【0020】
図1乃至
図5は、本発明による蓄電素子の一実施の形態を説明するための図である。
図1は、蓄電素子の一具体例を示す斜視図である。
図2は、平面視における蓄電素子1を示している。本明細書において、平面視とは、平板状や偏平状の部材をその部材のシート面の法線方向から観察することをいう。
図1及び
図2に示すように、蓄電素子1は、外装体7と、外装体7によって形成された収容空間7xに収容された電極体10と、を有している。
【0021】
蓄電素子1は、典型的には充放電が可能な二次電池である。蓄電素子1は、非常用電源、家庭用電源、車載電源等として用いられ得る。蓄電素子1は、例えばリチウムイオン二次電池である。ただし、以下に説明する作用効果の記載からも理解され得るように、ここで説明する一実施の形態は、リチウムイオン二次電池に限定されない。例えば、蓄電素子1は、リチウムイオンキャパシタであってもよい。
【0022】
図1及び
図2に示された例において、蓄電素子1は、全体的に厚さ方向である第1方向d1に薄い偏平形状を有しており、短手方向となる第2方向d2と長手方向となる第3方向d3に広がっている。第1方向d1、第2方向d2及び第3方向d3は、互いに非平行であり、好ましくは互いに直交している。本実施の形態では、蓄電素子1及び電極体10の平面視とは、第1方向d1に沿った方向からの観察を意味している。
【0023】
以下では、蓄電素子1をリチウムイオン二次電池とした具体例について、蓄電素子1の各構成要素を説明する。
【0024】
電極体10は、全体的に偏平形状を有し、第1方向d1への厚さが薄く、第2方向d2及び第3方向d3に広がっている。
【0025】
図3は、
図2の蓄電素子1から外装体7を除いた図である。
図3には、電極体10の平面図が示されている。
図4は、
図2のIV-IV線に沿った蓄電素子1の断面図である。
図3及び
図4に示されているように、電極体10は、複数の正極20及び複数の負極30と、正極タブ12及び負極タブ13と、絶縁体層15と、シーラント18と、を有している。
図4に示されているように、正極20及び負極30は、第1方向d1に交互に重ねられている。正極タブ12は、正極20と接続している。負極タブ13は、負極30と接続している。絶縁体層15は、正極20と負極30との間や、正極20及び負極30と外装体7との間に配置されている。シーラント18は、正極タブ12及び負極タブ13の一部を覆っている。正極20の数及び負極30の数は、例えばそれぞれ100以上である。
【0026】
図4に示されているように、複数の正極20は、複数の第1正極20Aと、複数の第2正極20Bと、を含んでいる。本実施の形態では、正極20は、第1正極20Aまたは第2正極20Bのいずれかである。
図4に示されている例では、第1方向d1において、第1正極20Aと第2正極20Bとは、交互に並んでいる。複数の負極30は、複数の第1負極30Aと、複数の第2負極30Bと、を含んでいる。本実施の形態では、負極30は、第1負極30Aまたは第2負極30Bのいずれかである。
図4に示されている例では、第1方向d1において、第1負極30Aと第2負極30Bとは、交互に並んでいる。第1方向d1において、第1正極20A、第1負極30A、第2正極20B、第2負極30Bが、順に繰り返し並んで重なっている。
【0027】
図示されている例に限らず、正極20は、第1正極20A及び第2正極20Bのいずれとも異なる第3正極をさらに含んでいてもよいし、負極30は、第1負極30A及び第2負極30Bのいずれとも異なる第3負極をさらに含んでいてもよい。
【0028】
正極20は、リチウムイオン二次電池において、放電時にリチウムイオンを吸蔵し、充電時にリチウムイオンを放出する。
図4に示されているように、正極20は、正極集電体20Xと、正極集電体20X上に設けられた正極活物質層20Yと、を有している。正極集電体20Xは、例えば、銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性を有する金属、とりわけアルミニウム箔によって形成され得る。正極活物質層20Yは、例えば、リン酸鉄リチウム等のリン酸金属リチウム化合物を含む。
【0029】
負極30は、リチウムイオン二次電池において、放電時にリチウムイオンを放出し、充電時にリチウムイオンを吸蔵する。
図4に示されているように、負極30は、負極集電体30Xと、負極集電体30X上に設けられた負極活物質層30Yと、を有している。負極集電体30Xは、例えば銅、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス鋼等の導電性を有する金属、とりわけ銅箔によって形成される。負極活物質層30Yは、例えば、炭素粉末や黒鉛粉末、スズ化合物とシリコンと炭素の複合体、リチウム等を含む。
【0030】
図3に示された非限定的な例において、正極20及び負極30は、略長方形形状の外輪郭を有している板状の電極である。第2方向d2が、正極20及び負極30の短手方向(幅方向)であり、第3方向d3が、正極20及び負極30の長手方向である。
図3に示されているように、正極20及び負極30は、第3方向d3にずらして配置されている。より具体的には、複数の正極20は、第3方向d3における一側に寄って配置され、複数の負極30は、第3方向d3における他側に寄って配置されている。正極20及び負極30は、第3方向d3における中央部において、第1方向d1に重なり合っている。
【0031】
正極20及び負極30が重なり合っている第3方向d3における中央部において、正極集電体20X上に正極活物質層20Yが設けられており、負極集電体30X上に負極活物質層30Yが設けられている。
【0032】
正極20の第3方向d3における端部において、正極集電体20X上に正極活物質層20Yが設けられておらず、正極集電体20Xが露出している。
図5には、正極20の第3方向d3における端部が拡大して示されている。
図5に示されているように、正極集電体20Xが露出した部分において、正極20の一部が第2方向d2に延び出している。言い換えると、正極20は、第2方向d2に延びる正極延在部を有している。特に、第1正極20Aは、第2方向d2に延びる第1正極延在部21Aを有しており、第2正極20Bは、第2方向d2に延びる第2正極延在部21Bを有している。第2正極延在部21Bは、平面視において、言い換えると第2方向d2または第3方向d3において、第1正極延在部21Aからずれている。第1正極延在部21Aと第2正極延在部21Bとは、平面視において互いに異なる位置に設けられている。
【0033】
複数の第1正極延在部21Aは、第1方向d1において重なっている。複数の第2正極延在部21Bは、第1方向d1において重なっている。複数の第1正極延在部21A及び複数の第2正極延在部21Bは、例えば抵抗溶接や超音波溶接、テープによる貼着、融着によって、それぞれ互いに接合され、互いに電気的に接続している。第1正極延在部21A及び第2正極延在部21Bは、それぞれ正極タブ12と電気的に接続している。
【0034】
第1正極延在部21Aの厚みは、例えば第1正極20Aの厚みと同一である。第1正極延在部21Aの厚みは、10μm以上である。第1正極延在部21Aの厚みと第1正極20Aの数との積、言い換えると接合された複数の第1正極延在部21Aの厚みの合計は、3000μm以下、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1300μm以下である。
【0035】
同様に、第2正極延在部21Bの厚みは、例えば第2正極20Bの厚みと同一である。第2正極延在部21Bの厚みは、10μm以上である。第2正極延在部21B厚みと第2正極20Bの数との積、言い換えると接合された複数の第2正極延在部21Bの厚みの合計は、3000μm以下、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1300μm以下である。
【0036】
負極30の第3方向d3における端部において、負極集電体30X上に負極活物質層30Yが設けられておらず、負極集電体30Xが露出している。
図5に示された正極20と同様に、負極集電体30Xが露出した部分において、負極30の一部が第2方向d2に延び出している。言い換えると、負極30は、第2方向d2に延びる負極延在部を有している。特に、第1負極30Aは、第2方向d2に延びる第1負極延在部31Aを有しており、第2負極30Bは、第2方向d2に延びる第2負極延在部31Bを有している。第2負極延在部31Bは、平面視において、言い換えると第2方向d2または第3方向d3において、第1負極30Aからずれている。第1負極延在部31Aと第2負極延在部31Bとは、平面視において互いに異なる位置に設けられている。
【0037】
第1負極延在部31Aの厚みは、例えば第1負極30Aの厚みと同一である。第1負極延在部31Aの厚みは、6μm以上である。第1負極延在部31Aの厚みと第1負極30Aの数との積、言い換えると接合された複数の第1負極延在部31Aの厚みの合計は、3000μm以下、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1300μm以下である。
【0038】
同様に、第2負極延在部31Bの厚みは、例えば第2負極30Bの厚みと同一である。第2負極延在部31Bの厚みは、6μm以上である。第2負極延在部31Bの厚みと第2負極30Bの数との積、言い換えると接合された複数の第2負極延在部31Bの厚みの合計は、3000μm以下、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1300μm以下である。
【0039】
絶縁体層15は、正極20と負極30との短絡や、正極20及び負極30と外装体7との短絡を防止しながら、正極20及び負極30に電解質を供給する。絶縁体層15において、イオンが移動可能である。絶縁体層15は、シート状の部材である。絶縁体層15は、平面視において正極活物質層20Y及び負極活物質層30Yを覆っている。
【0040】
絶縁体層15は、固体電解質であってもよいし、電解液が含浸された多孔質のセパレータであってもよい。固体電解質の材料は、例えばLi1.5Al0.5Ge1.6(PO4)3のようなポリマー系材料やLi2S-P2S5といった硫化物系材料、Li2O-B2O3・SiO2といった酸化物系材料である。セパレータの材料は、例えばポリプロピレン等の熱可塑性樹脂である。絶縁体層15がセパレータである場合、収容空間7xには、適切な量の電解液が収容される。
【0041】
正極タブ12は、正極20の端子として機能する。正極タブ12は、電極体10が有する全ての正極20と正極延在部において電気的に接続している。第1正極延在部21A及び第2正極延在部21Bは、互いに異なる位置において、正極タブ12に接続している。言い換えると、正極20は、正極タブ12において第1正極20Aと第2正極20Bとの2つに分かれて接続されている。正極タブ12は、第2方向d2及び/又は第3方向d3において外装体7の外部に延び出している。図示されている例では、正極タブ12は、第3方向d3において外装体7の外部に延び出している。
【0042】
負極タブ13は、負極30の端子として機能する。負極タブ13は、電極体10が有する全ての負極30と負極延在部において電気的に接続している。第1負極延在部31A及び第2負極延在部31Bは、互いに異なる位置において、負極タブ13に接続している。言い換えると、負極30は、負極タブ13において第1負極30Aと第2負極30Bとの2つに分かれて接続されている。負極タブ13は、第2方向d2及び/又は第3方向d3において外装体7の外部に延び出している。負極タブ13は、正極タブ12と同じ方向に同じ側から延び出していてもよいし、異なる方向に延び出していてもよい。図示されている例では、負極タブ13は、正極タブ12と同じ第3方向d3に正極タブ12とは異なる側から外装体7の外部に延び出している。
【0043】
正極タブ12及び負極タブ13は、板状の導電体である。正極タブ12及び負極タブ13の厚みは、例えば0.1mm以上1mm以下である。正極タブ12及び負極タブ13の材料は、例えばアルミニウム、ニッケル、ニッケルメッキ銅である。正極タブ12及び負極タブ13は、同一の材料及び構成であってもよいし、材料及び構成の少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0044】
シーラント18は、正極タブ12及び負極タブ13と外装体7との間を封止する。シーラント18は、正極タブ12の一部及び負極タブ13の一部をそれぞれ周状に取り囲んでいる。シーラント18は、接着性を有しており、正極タブ12及び負極タブ13と外装体7とを接合する。シーラント18は、正極タブ12及び負極タブ13と外装体7との電気的な接続を妨げる。シーラント18の材料は、例えばポリプロピレン、変性ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、アイオノマー、エチレン・酢酸ビニル共重合体である。
【0045】
外装体7は、電極体10の包装体である。
図4に示すように、外装体7は、電極体10を収容するための収容空間7xを形成している。外装体7は、正極タブ12の一部及び負極タブ13の一部を除いた電極体10を収容空間7xに収容して密閉する。
【0046】
図4に示されているように、外装体7は、第1外装材7aと、第2外装材7bと、を含んでいる。正極タブ12及び負極タブ13は、第1外装材7aと第2外装材7bとの間を通過して、外装体7の外部に延び出している。
【0047】
第1外装材7a及び第2外装材7bは、シート状の部材である。第1外装材7aと第2外装材7bとは、その周縁7cを例えば溶着されることで外装体7となる。第1外装材7aは、膨出部7dを含んでいる。第2外装材7bは、膨出部を含んでおらず、平坦になっている。図示されている例に限らず、第2外装材7bも、膨出部を含んでいてもよい。膨出部7dは、例えば絞り加工によって形成される。膨出部7dによって、外装体7の収容空間7xが形成される。
【0048】
上述した蓄電素子1及び電極体10の製造方法の一例を説明する。
【0049】
正極集電体20X上に正極活物質層20Yの材料を塗布して乾燥することによって、正極20が作製される。負極集電体30X上に負極活物質層30Yの材料を塗布して乾燥することによって、負極30が作製される。正極20のうち、第1正極20Aには、第1正極延在部21Aが設けられ、第2正極20Bには、第2正極延在部21Bが設けられる。負極30のうち、第1負極30Aには、第1負極延在部31Aが設けられ、第2負極30Bには、第2負極延在部31Bが設けられる。
【0050】
正極20、絶縁体層15、負極30、絶縁体層15をこの順で繰り返し積み重ねる。例えば
図4に示された例の電極体10を製造する場合、第1正極20A、絶縁体層15、第1負極30A、絶縁体層15、第2正極20B、絶縁体層15、第2負極30B、絶縁体層15をこの順で繰り返し積み重ねる。正極20及び負極30が交互に積み重なり、正極20と負極30との間に絶縁体層15が配置される。正極20の数及び負極30の数は、それぞれ100以上である。
【0051】
第1正極延在部21A、第2正極延在部21B、第1負極延在部31A及び第2負極延在部31Bは、それぞれ平面視において異なる位置において、第1方向d1に重なっている。
【0052】
第1正極延在部21A及び第2正極延在部21Bに正極タブ12を接続する。第1正極延在部21A及び第2正極延在部21Bは、それぞれ異なる位置において、例えば超音波接合によって、正極タブ12に溶着される。同様に、第1負極延在部31A及び第2負極延在部31Bに負極タブ13を接続する。第1負極延在部31A及び第2負極延在部31Bは、それぞれ異なる位置において、例えば超音波接合によって、負極タブ13に溶着される。
【0053】
以上の工程により、電極体10が製造される。
【0054】
第1外装材7a及び第2外装材7bを用意する。第1外装材7aには、例えばエンボス加工によって、膨出部7dが形成される。
【0055】
電極体10を第1外装材7aと第2外装材7bとの間に配置する。正極タブ12及び負極タブ13は、第1外装材7a及び第2外装材7bの間から外部に延び出している。第1外装材7aと第2外装材7bとをその周縁7cにおいて接合する。第1外装材7aと第2外装材7bとが接合されることで、外装体7となる。外装体7の収容空間7xに電極体10が収容される。
【0056】
以上の工程により、蓄電素子1が製造される。
【0057】
蓄電素子が供給可能な電力を増やすために、電極の数を増やすことが考えられている。電極の数を増やすと、電極の合計の厚みが厚くなる。電極は、例えば超音波接合によってタブに溶着されることでタブと接続する。電極の合計の厚みが厚くなると、溶着がうまくいかず、電極をタブに適切に接続できないことがある。この課題に対して、電極を薄くすることが検討された。しかしながら、薄い電極を製造し取り扱うことはコストがかかる。また、電極の数に対して溶着に効果的な薄さの電極を製造することは困難である。
【0058】
本実施の形態の電極体10では、正極20は、第1正極20Aと、第2正極20Bと、を含んでいる。第2正極20Bの第2正極延在部21Bは、第2方向d2または第3方向d3において、第1正極20Aの第1正極延在部21Aからずれている。第1正極20Aは、第1正極延在部21Aにおいて正極タブ12と接続可能であり、第2正極20Bは、第2正極延在部21Bにおいて正極タブ12と接続可能である。正極20は、正極タブ12において第1正極20Aと第2正極20Bとの2つに分かれて接続される。第1正極延在部21Aにおいて正極タブ12に接続される第1正極20Aの数は、正極20全体の数より少ない。典型的には、第1正極20Aの数は、正極20全体の数の半分である。正極20を正極タブ12に接続する部分の合計の厚みが薄くなる。正極20の数を増やしても、当該部分において、第1正極20Aを正極タブ12に適切に接続可能である。同様に、正極20の数を増やしても、第2正極20Bを正極タブ12に適切に接続可能である。正極20の数を増やしても、全ての正極20を正極タブ12に適切に接続可能である。
【0059】
負極30は、第1負極30Aと、第2負極30Bと、を含んでいる。第2負極30Bの第2負極延在部31Bは、第2方向d2または第3方向d3において、第1負極30Aの第1負極延在部31Aからずれている。第1負極30Aは、第1負極延在部31Aにおいて負極タブ13と接続可能であり、第2負極30Bは、第2負極延在部31Bにおいて負極タブ13と接続可能である。負極30は、負極タブ13において第1負極30Aと第2負極30Bとの2つに分かれて接続される。第1負極延在部31Aにおいて負極タブ13に接続される第1負極30Aの数は、負極30全体の数より少ない。典型的には、第1負極30Aの数は、負極30全体の数の半分である。負極30を負極タブ13に接続する部分の合計の厚みが薄くなる。負極30の数を増やしても、当該部分において、第1負極30Aを負極タブ13に適切に接続可能である。同様に、負極30の数を増やしても、第2負極30Bを負極タブ13に適切に接続可能である。負極30の数を増やしても、全ての負極30を負極タブ13に適切に接続可能である。
【0060】
正極20の数は、100以上である。第1正極延在部21Aの厚みは、10μm以上である。このような正極20は、2つに分けずに正極タブ12に溶着されることは困難である。このような正極20を有する電極体10は、全ての正極20を正極タブ12に適切に接続可能であるという効果を顕著に奏することができる。
【0061】
負極30の数は、100以上である。第1負極延在部31Aの厚みは、6μm以上である。このような負極30は、2つに分けずに負極タブ13に溶着されることは困難である。このような負極30を有する電極体10は、全ての負極30を負極タブ13に適切に接続可能であるという効果を顕著に奏することができる。
【0062】
第1正極延在部21Aの厚みと第1正極20Aの数との積は、3000μm以下、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1300μm以下である。正極タブ12に溶着される第1正極延在部21Aの合計の厚みが厚すぎないため、全ての第1正極20Aを正極タブ12に適切に接続可能である。
【0063】
同様に、第2正極延在部21Bの厚みと第2正極20Bの数との積は、3000μm以下、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1300μm以下である。正極タブ12に溶着される第2正極延在部21Bの合計の厚みが厚すぎないため、全ての第2正極20Bを正極タブ12に適切に接続可能である。
【0064】
第1負極延在部31Aの厚みと第1負極30Aの数との積は、3000μm以下、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1300μm以下である。負極タブ13に溶着される第1負極延在部31Aの合計の厚みが厚すぎないため、全ての第1負極30Aを負極タブ13に適切に接続可能である。
【0065】
同様に、第2負極延在部31Bの厚みと第2負極30Bの数との積は、3000μm以下、好ましくは1500μm以下、より好ましくは1300μm以下である。負極タブ13に溶着される第2負極延在部31Bの合計の厚みが厚すぎないため、全ての第2負極30Bを負極タブ13に適切に接続可能である。
【0066】
以上のように、本実施の形態の電極体10は、第1方向d1に交互に重ねられた複数の正極20及び負極30を備え、複数の正極20は、複数の第1正極20Aと、複数の第2正極20Bと、を含み、第1正極20Aは、第1方向d1に非平行な第2方向d2に延びる第1正極延在部21Aを有し、第2正極20Bは、第2方向d2に延びる第2正極延在部21Bを有し、複数の第1正極延在部21Aは、第1方向d1において重なっており、複数の第2正極延在部21Bは、第1方向d1において重なっており、第2正極延在部21Bは、第2方向d2または第1方向d1及び第2方向d2に非平行な第3方向d3において、第1正極延在部21Aからずれている。このような電極体10によれば、正極20を正極タブ12に接続する部分の合計の厚みが薄くなる。正極20の数を増やしても、当該部分において、第1正極20Aを正極タブ12に適切に接続可能である。同様に、正極20の数を増やしても、第2正極20Bを正極タブ12に適切に接続可能である。正極20の数を増やしても、全ての正極20を正極タブ12に適切に接続可能である。
【0067】
一実施の形態を複数の具体例により説明してきたが、これらの具体例が一実施の形態を限定することを意図していない。上述した一実施の形態は、その他の様々な具体例で実施されることが可能であり、その要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、追加等を行うことができる。
【0068】
以下、図面を参照しながら、上述した一実施の形態の変形例について説明する。以下の説明および以下の説明で用いる図面では、上述した具体例と同様に構成され得る部分について、上述の具体例における対応する部分に対して用いた符号と同一の符号を用いるとともに、重複する説明を省略する。
【0069】
図6は、
図4に対応する蓄電素子1の断面図であって、蓄電素子1が有する電極体10の一変形例を示している。
図6に示されている一変形例では、正極20及び負極30の配置が上述した実施の形態とは異なっている。本変形例では、電極体10は、第1積層体10Aと、第2積層体10Bと、を含んでいる。第1積層体10Aでは、第1方向d1において、第1正極20Aと負極30とが交互に並んでいる。第2積層体10Bでは、第1方向d1において、第2正極20Bと負極30とが交互に並んでいる。第1積層体10Aと第2積層体10Bとは、第1方向d1において重なっている。より詳しくは、第1方向d1において、第1積層体10Aでは、第1正極20Aと第1負極30Aとが交互に並んでおり、第2積層体10Bでは、第2正極20Bと第2負極30Bとが交互に並んでいる。
【0070】
図7及び
図8は、
図3に対応する電極体10の平面図であって、それぞれ別の電極体10の変形例を示している。
図7及び
図8に示されている変形例では、正極タブ12及び負極タブ13が延び出す方向が上述した実施の形態とは異なっている。
図7に示されている例では、正極タブ12は、第2方向d2に延び出している。負極タブ13は、第2方向d2に正極タブ12とは異なる側から延び出している。
図8に示されている例では、正極タブ12は、第2方向d2に延び出している。負極タブ13は、第2方向d2に正極タブ12と同じ側から延び出している。図示されている例に限らず、正極タブ12及び負極タブ13は、任意の態様で延び出していてもよい。
【符号の説明】
【0071】
1 蓄電素子
7 外装体
7a 第1外装材
7b 第2外装材
7x 収容空間
10 電極体
10A 第1積層体
10B 第2積層体
12 正極タブ
13 負極タブ
15 絶縁体層
18 シーラント
20 正極
20A 第1正極
20B 第2正極
21A 第1正極延在部
21B 第2正極延在部
30 負極
30A 第1負極
30B 第2負極
31A 第1負極延在部
31B 第2負極延在部