IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本自動ドア株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-自動ドア装置 図1
  • 特開-自動ドア装置 図2
  • 特開-自動ドア装置 図3
  • 特開-自動ドア装置 図4
  • 特開-自動ドア装置 図5
  • 特開-自動ドア装置 図6
  • 特開-自動ドア装置 図7
  • 特開-自動ドア装置 図8
  • 特開-自動ドア装置 図9
  • 特開-自動ドア装置 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140200
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】自動ドア装置
(51)【国際特許分類】
   E05F 15/643 20150101AFI20230927BHJP
【FI】
E05F15/643
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046110
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】592131560
【氏名又は名称】日本自動ドア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】南園 直人
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA02
2E052CA06
2E052DA04
2E052DB04
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052KA17
(57)【要約】
【課題】現行の枠各種に利用できるコンパクトな構造で塩害による影響を低減できるとともに、メンテナンスが容易な構造の自動ドア装置を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するために、レール部に案内されて開閉移動自在なドアと、前記レール部に沿って前記ドアを移動させる電動モータと、前記電動モータを制御する制御部と、前記電動モータの動力を前記ドアへ伝達して前記ドアを開閉させる動力伝達機構と、前記制御部を保護する第1保護部材と、前記第1保護部材を前記設置場所に固定するための固定部材と、前記固定部材を保護する第2保護部材と、を備え、前記第1保護部材及び前記第2保護部材は、前記固定部材によって前記設置場所に固定される、ことを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レール部に案内されて開閉移動自在なドアと、
前記レール部に沿って前記ドアを移動させる電動モータと、
前記電動モータを制御する制御部と、
前記電動モータの動力を前記ドアへ伝達して前記ドアを開閉させる動力伝達機構と、
前記制御部を保護する第1保護部材と、
前記第1保護部材を設置場所に固定するための固定部材と、
前記固定部材を保護する第2保護部材と、を備え、
前記第1保護部材及び前記第2保護部材は、前記固定部材によって前記設置場所に固定される、
自動ドア装置。
【請求項2】
前記第2保護部材は、
前記固定部材を囲む枠部材と、
前記枠部材の開口を閉塞する蓋部材と、を備える、
請求項1に記載の自動ドア装置。
【請求項3】
前記第1保護部材と前記固定部材との間に防水部材を配置する、
請求項1または2に記載の自動ドア装置。
【請求項4】
前記動力伝達機構は、
前記レール部に対して前記ドアを開閉移動自在に支持するための吊り戸車と、
前記吊り戸車のベアリングを保護する蓋部材と、を備える、
請求項1から3のいずれか一項に記載の自動ドア装置。
【請求項5】
スイッチ本体と、
前記スイッチ本体と当該スイッチ本体に接続される配線との接続箇所を覆う接続箇所保護部材と、
前記接続箇所保護部材の内側に充填される絶縁性シール材と、
前記スイッチ本体を覆うスイッチカバーと、を有する電源スイッチを備える、
請求項1から4のいずれか一項に記載の自動ドア装置。
【請求項6】
前記第1保護部材、前記第2保護部材及び前記固定部材には、複合表面処理が施されている、
請求項1から5のいずれか一項に記載の自動ドア装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、 自動ドア装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動ドア装置の故障や劣化の速度は、設置環境に起因する。海沿いや離島などの店舗や建物に設置される自動ドア装置は、塩害によって生じる錆やそれに起因する故障が他の設置場所に比べて生じやすい。また、受注後に設置場所が塩害地域にあることが分かることもあり、この場合は通常品を設置後に塩害対策が必要になることがある。
塩害対策として、例えば、特許文献1には空調機における構造が提案されているが、自動ドア装置に関する塩害対策についても要望が高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-181951号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のように、通常品の自動ドア装置に対して後から塩害対策を行う場合、既定サイズのドア枠よりも装置構造が大きくなることがある。設置スペースに余裕があれば様々な塩害対策が取れるが、設置スペースに余裕がない場合は塩害対策が施しにくいこともあった。一般的に、ドア枠の大きさは各メーカーで共通することが多く、店舗や建物で決められた仕様の枠が選定される。このため、通常の枠サイズで使用される 自動ドア装置の大きさと変わらない大きさで塩害対策を実施できる構造が求められている。
また、塩害対策のための構造が複雑になると、経年劣化による部品の交換作業が困難になる場合がある。
【0005】
これらの問題を解決するために、本発明者らは、現行の枠各種に利用できるコンパクトな構造で塩害による影響を低減できるとともに、メンテナンスが容易な構造の自動ドア装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一形態の自動ドア装置は、レール部に案内されて開閉移動自在なドアと、前記レール部に沿って前記ドアを移動させる電動モータと、前記電動モータを制御する制御部と、前記電動モータの動力を前記ドアへ伝達して前記ドアを開閉させる動力伝達機構と、前記制御部を保護する第1保護部材と、前記第1保護部材を設置場所に固定するための固定部材と、前記固定部材を保護する第2保護部材と、を備え、前記第1保護部材及び前記第2保護部材は、前記固定部材によって前記設置場所に固定される。
【0007】
本発明の一形態の自動ドア装置において、前記第2保護部材は、前記固定部材を囲む枠部材と、前記枠部材の開口を閉塞する蓋部材と、を備える構成としてもよい。
【0008】
本発明の一形態の自動ドア装置において、前記第1保護部材と前記固定部材との間に防水部材を配置する構成としてもよい。
【0009】
本発明の一形態の自動ドア装置において、前記動力伝達機構は、前記レール部に対して前記ドアを開閉移動自在に支持するための吊り戸車と、前記吊り戸車のベアリングを保護する蓋部材と、を備える構成としてもよい。
【0010】
本発明の一形態の自動ドア装置において、スイッチ本体と、前記スイッチ本体と当該スイッチ本体に接続される配線との接続箇所を覆う接続箇所保護部材と、前記接続箇所保護部材の内側に充填される絶縁性シール材と、前記スイッチ本体を覆うスイッチカバーと、を有する電源スイッチを備える構成としてもよい。
【0011】
本発明の一形態の自動ドア装置において、前記第1保護部材、前記第2保護部材及び前記固定部材には、複合表面処理が施されている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の上記観点によれば、自動ドア装置の塩害による影響を抑えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は全閉状態の自動ドア装置を示す図である。
図2図2は全開状態の自動ドア装置を示す図である。
図3図3は、第1保護部材とその周囲の構造を示す平面図である。
図4図4は、第1保護部材と第2保護部材とを示す平面図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿う断面図である。
図6図6は、図5の要部を拡大して示す側断面図である。
図7図7は、図5の要部を拡大して示す平面図である。
図8図8は、吊り戸車の回転部の構成を示す図である。
図9図9は、電源スイッチの構成を示す図である。
図10図10は、従来の一括保護部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
<実施形態>
(自動ドア装置の全体構成)
まず、図1及び図2に基づいて、本発明の一実施形態に係る自動ドア装置1の全体構成について説明する。図1は、全閉状態の自動ドア装置1を示す図である。図2は全開状態の自動ドア装置1を示す図である。図3は、第1保護部材23とその周囲の構造を示す平面図である。図4は、第1保護部材23と第2保護部材25とを示す平面図である。図5は、図4のV-V線に沿う断面図である。図6は、図5の要部を拡大して示す側断面図である。図7は、図5の要部を拡大して示す平面図である。図8は、吊り戸車34A,34Bの回転部36の構成を示す図である。図9は、電源スイッチ40の構成を示す図である。図10は、従来の一括保護部材90を示す図である。
【0016】
本実施形態の自動ドア装置1は、図1及び図2に示すように、店舗や建物の出入り口の外壁に設置されるもので、ドア10と、アクチュエータユニット20と、動力伝達機構30と、電源スイッチ40と、を備えている。
【0017】
ドア10は、後述するレール部33に案内されて開閉移動自在なドアであって、ガラスなどからなるドアパネル11と、ドアパネル11の周囲を保持するパネル枠部材12と、を備える。
ドアパネル11は、開方向(矢印100方向)または閉方向(矢印100と逆方向)に移動することで、店舗や建屋の出入り口を開閉するパネルである。ドアパネル11の開閉動作は、電動モータ21の動力によってなされる。
【0018】
アクチュエータユニット20は、電動モータ21と、電動モータ21を制御する制御部22と、を備えており、制御部22により電動モータ21の回転方向を変えることによってドア10を開閉できる。
【0019】
本実施形態のアクチュエータユニット20は、図3図4、及び図5に示すように、図1及び図2に示す制御部22を保護するための第1保護部材23と、第1保護部材23を上記外壁に固定するための一対の固定部材24と、これら固定部材24をそれぞれ保護する第2保護部材25と、を備えている。本実施形態では、制御部22や一対の固定部材24に対する塩害及び防水対策として、第1保護部材23及び第2保護部材25が設けられている。
【0020】
第1保護部材23は、制御部22の全体を覆う保護部材であって、例えば断面視コ字形状をなす。第1保護部材23は、開口側から制御部22を覆って取り付けられる。第1保護部材23は、例えばアルミニウム製である。
【0021】
一対の固定部材24は、第1保護部材23の長手方向の両側にそれぞれ配置される。各固定部材24は、L字形状をなす固定板24aと、複数のねじ24bと、複数組のボルト24acおよびナット24adと、をそれぞれ備えている。固定板24aは、第1保護部材23の側端面23bに固定される第1面24aaと、外壁に固定される第2面24abと、を有する。第1面24aaには、不図示の貫通孔が形成されており、第1保護部材23内の制御部22に接続される配線等が挿通される。固定部材24は、例えばスチール製である。
【0022】
複数のねじ24bは、第1保護部材23の長手方向両側の各側端面23bに固定板24aの第1面24aa側を固定するためのものである。3組のボルト24ac及びナット24adは、店舗や建物等の外壁に固定板24aの第2面24ab側を固定するためのものであって、固定板24aの第2面24abに形成された3つの溝24ae内に取り付けられる。
なお、溝24aeの数やボルト24ac及びナット24adの数は適宜設定が可能である。
【0023】
一対の第2保護部材25は、店舗や建屋に対して着脱可能に取り付けられる。図6及び図7に示すように、第2保護部材25は、各固定部材24の周囲を取り囲む枠部材25aと、枠部材25aに対して着脱可能に取り付けられる蓋部材25bと、をそれぞれ有する。枠部材25aは、互いに垂直な方向を向く2つの開口25aa、25abを有し、一方の開口25aaが上記蓋部材25bによって閉塞され、他方の開口25abが第1保護部材23の側端面23bによって閉塞される。枠部材25aの底板25eには、上記ボルト24acを挿通させるための貫通孔25fが複数形成されている。
【0024】
なお、底板25eの平面視における大きさは、固定部材24の第2面24abの平面視における大きさよりも一回り程度大きい。
【0025】
蓋部材25bは、枠部材25aの一方の開口25aaを閉塞可能な大きさを有し、一対の螺子25cによって枠部材25aにねじ止めされている。蓋部材25bと枠部材25aとの間には塩害及び防水対策が施されている。具体的に蓋部材25bは、ゴム板25dを介して枠部材25aに取り付けられている。このゴム板25dが螺子25cの締め付けによって弾性変形することにより、枠部材25aとの間に隙間を生じさせることなく蓋部材25bを取り付けることが可能である。
【0026】
蓋部材25bは、平面視矩形状を呈し、その長手方向の長さは第1保護部材23の短手方向(幅方向)の長さに略一致する。
本実施形態の枠部材25a及び蓋部材25bは、例えばアルミニウム製である。
【0027】
本実施形態では、第2保護部材25の他方の開口25ab側と第1保護部材23との間にも塩害及び防水対策が施されている。具体的には、枠部材25aの一部が第1保護部材23の外周壁の一部に重なり合うようにして取り付けられており、これらの間の隙間を埋めるようにしてシール剤27が塗布されている。あるいは両面テープを配置してもよい。
【0028】
第2保護部材25の側面(短手方向で他方の開口とは反対側)にはゴムブッシュ26が設けられており、制御部22に接続される配線等が挿通される。ゴムブッシュ26は、塩害及び防水対策の必要な配線に好適に用いられる。
【0029】
本実施形態における第2保護部材25は、店舗や建屋に対して着脱可能に取り付けられる。あるいは、少なくとも蓋部材25bが枠部材25aに対して着脱可能であることが好ましい。これにより、メンテナンス時に作業が行いやすい。
【0030】
動力伝達機構30は、電動モータ21の動力をドア10へ伝達してドア10を開閉させる。動力伝達機構30は、駆動ローラ31Aと、従動ローラ31Bと、これら一対のローラ31A,31Bに掛け渡された搬送ベルト32と、開閉方向へドア10を案内するレール部33と、レール部33に沿って移動可能な一対の吊り戸車34A,34Bと、を備えている。
【0031】
図1及び図2に示すように、ドア10は、一対の吊り戸車34A,34Bによってレール部33に対して吊下げられている。一対の吊り戸車34A,34Bのうちの少なくとも一方は、電動モータ21の動力によって回転する搬送ベルト32に接続されている。本実施形態では、吊り戸車34Aが接続部材34aを介し搬送ベルト32に接続されている。この構成により、搬送ベルト32の回転に応じて、ドア10がレール部33に沿って開閉される。
【0032】
図8に示すように、吊り戸車34A,34Bは、上記ドア10の上端に固定された接続部材35と、接続部材35の幅方向両側に設けられた2つの回転部36と、をそれぞれ有する。
回転部36は、ドア10の開閉方向及び上下方向に直交する奥行方向に延びる回転軸部36aと、レール部33に係合する回転係合部36bと、回転軸部36aと回転係合部36bとの間に配置されたベアリング36cと、ベアリング36cの回転軸Oが延びる方向において、ベアリング36cの上記第1接続部材35とは反対側を覆うことで当該ベアリング36cを保護するキャップ36dと、を備えており、回転係合部36bが回転軸Oの軸回りに回転可能な構成をなす。
【0033】
キャップ36dは、回転係合部36bに形成された凹部36e内に挿入される。凹部36e内に挿入されたキャップ36dの表面36daは、回転係合部36bの表面36daに一致する。これにより、キャップ36dの表面36daと、回転係合部36bの表面36daとの間に段差がなくフラットになり、納まりの影響を受けない。
【0034】
キャップ36dは、回転係合部36bの中央を貫通する貫通孔36fの直径よりも大きい外径で形成されている。樹脂製のキャップ36dを回転係合部36bの上記凹部36e内に嵌合させるように設けることで、回転係合部36bとキャップ36dとの間に隙間が形成されにくい。また、キャップ36dの外周壁に接着剤やシール材を塗布してもよい。
【0035】
図9に示すように、電源スイッチ40は、スイッチ本体41と、スイッチ本体41に接続される複数の配線42a,42bと、これら複数の配線42a、42bとスイッチ本体41との接続箇所(接続端子46a,46b)を覆うことで保護する接続箇所保護部材43と、を有する。
【0036】
接続箇所保護部材43は、熱収縮性を有するチューブであって、接続端子46a,46bごと覆った後に加熱され、スイッチ本体41や接続端子46a,46bの外形に沿って変形されたものである。
【0037】
本実施形態では、接続箇所保護部材43の内側に、塩害及び防水対策として絶縁性シール材44が充填されている。絶縁性シール材44は、上記複数の配線42a,42bと、スイッチ本体41との接続箇所の周囲を囲むようにして接続箇所保護部材43の内側に隙間なく充填される。
【0038】
また、スイッチ本体41のうち、人が切り換え操作を行うスイッチ部41aは外部に露出する。そのため、スイッチ部41aに対する塩害及び防水対策として、スイッチ部41aを覆うスイッチカバー45が設けられている。スイッチカバー45は、透明あるいは半透明とされ、人によるON/OFF切り換え操作によって変形可能な樹脂製である。
【0039】
(自動ドア装置の開閉動作)
本実施形態の自動ドア装置1は、制御部22からの開動作指令により電動モータ21が正転されると、駆動ローラ31Aが例えば時計回りに回転し、搬送ベルト32を時計回りに回転させる。すると、搬送ベルト32に接続されたドア10が開方向(矢印100方向)に移動することで、店舗や建屋の出入り口が開放される。
【0040】
一方、自動ドア装置1は、制御部22からの閉動作指令により電動モータ21が逆転¥させられると、駆動ローラ31Aが例えば反時計回りに回転し、搬送ベルト32を反時計回りに回転させる。すると、搬送ベルト32に接続されたドア10が閉方向(矢印100と逆方向)へ移動することで、店舗や建屋の出入り口が閉ざされる。
【0041】
本実施形態の自動ドア装置1では、制御部22を保護する第1保護部材23の長手方向両側に、第1保護部材23を建屋等に固定している固定部材24を保護する第2保護部材25を設けることで、制御部22だけでなく、固定部材24に対する塩害及び防水対策効果が得られる構成となっている。第1保護部材23と、一対の第2保護部材25とを合わせた長手方向の長さL1(図4)は、図10に示す従来の塩害及び防水対策で用いられていた一括保護部材90の長さL2よりも短くコンパクトなサイズであるため、自動ドア装置1の設置スペースに余裕がない場合であっても容易に取り付けられる。一方、従来の一括保護部材90は、第1保護部材23及び一対の固定部材24を一度に覆うことのできる大きさで形成された保護部91と、その長手方向両側にさらに張り出した一対の固定板部92とによって構成されており、その全長L2は、本実施形態の第1保護部材23及び一対の第2保護部材25を合わせた長さL1よりも長く、大きい。そのため、自動ドア装置1の設置スペースに余裕のない場合は取付作業が難しい。
【0042】
自動ドア装置1の設置場所に予め取り付けられているドア枠は、各メーカー共通の大きさがあるが、本実施形態の構成であれば、通常のドア枠で使用される自動ドア装置と大きなサイズ変更することなく塩害及び防水対策を施すことが可能である。これにより、受注後に海沿い設置であることが判明した場合であっても、設置スペースを心配することなく、通常品に対して塩害対策を施すことが可能である。
【0043】
本実施形態の自動ドア装置1では、第1保護部材23とは別に、一対の第2保護部材25を設けた構成のため、蓋部材25bあるいは枠部材25aを着脱させることによって容易に固定部材24を露出させることができるので、部品の交換や制御部22への配線のやり直しなどがやり易く作業性が良好である。
【0044】
本実施形態の自動ドア装置1では、制御部22に対する塩害及び防水対策として、第1保護部材23と第2保護部材25との間にシール剤(防水部材)27や両面テープ(防水部材)を用いることで、簡易的に対策を施すことが可能である。
また、本実施形態では、第2保護部材25において、枠部材25aと蓋部材25bとの間に、厚さ1mm程度のゴム板25dを介在させて隙間を埋めることによって、塩害及び防水対策が施されている。
【0045】
本実施形態の自動ドア装置1では、吊り戸車34A,34Bに関して、ドア10の荷重を受けてドア10を開閉移動させるためにベアリング36cが使用されている。通常の自動ドア装置の吊り戸車では、シールド付きのベアリングが使用されているが、鋼製のため延在によってベアリングの表面や、回転軸部に腐食が発生することがあった。そこで、ステンレス鋼製のベアリングもあるが、通常のベアリングと特性が異なる点があるため、鋼製の吊り戸車と耐荷重が異なる数値となる可能性がある。
【0046】
そこで、本実施形態では、吊り戸車34A,34Bにおいて、各回転部36の回転係合部36bと同一素材の樹脂材料からなるキャップ36dを用いている。
【0047】
このように、キャップ36dによって、ベアリング36cの表面および回転軸部36aの先端側を覆うことでこれらを保護し、既存の塩害対策品との性能値(耐荷重等)の違いが発生しないような構造とすることができる。
【0048】
ベアリング36cに関しては、シールドがゴム製の物もあるが、回転係合部36bと回転軸部36aとが鋼製のため、キャップ36dで蓋をする構造としている。
また、回転軸部36aは、組み立て上、かしめを用いている場合があるが、この場合もキャップ36dを用いた方が塩害からの保護に効果がある。
【0049】
本実施形態の自動ドア装置1では、電源スイッチ40として、一般的に多く使用されるロッカースイッチを用いている。このような電源スイッチ40に関しては、スイッチ本体41と接続端子46a,46bとの接続箇所の腐食や、スイッチ本体41に水が侵入することに起因した故障が問題であった。既存の防水スイッチはサイズが大きく専用の取付金具等が必要であるとともに、市場に出回る数量の少ないため、部品単価が高くなってしまうという問題があった。
【0050】
そこで、本実施形態では、通常の自動ドア装置で使用される一般的なロッカースイッチに対して塩害及び防水対策を施した。具体的には、上述したように、電源スイッチ40におけるスイッチ本体41と接続端子46a,46bとの接続箇所を接続箇所保護部材43で覆うとともに、その内側に絶縁性シール材44を隙間なく充填させた。これによって、安価且つ腐食に強い電源スイッチ40とした。
【0051】
本実施形態の自動ドア装置1に用いられる金具(例えば固定板24a)、ボルト等(例えばボルト24ac、ナット24ad)には、複合表面処理が施されている。複合表面処理としては、例えば、ディスゴ(登録商標)、ラスパート(登録商標)などの企業独自の塩害対策用表面処理や市販の表面処理剤を用いて金属表面に防錆用の被膜を形成してもよい。金属製の金具やボルト等に複合表面処理を施すことによって、高耐食性を付与することができる。
【0052】
一般的に、自動ドア装置1に用いられる金具やボルト等をステンレス鋼(SUS)製にすることも可能ではあるが、自動ドア装置1にてアルミニウム材が多く用いられていることから、異種金属間での腐食が発生する可能性がある。また、金物製作に関して、金型での製作品が多々ある場合も多く、その場合、ステンレス鋼製の部材用として、別途金型の製作が必要になる場合もある。
【0053】
そのため、現行の部品等に対して複合表面処理を施すことによって、SUS化による異なる形状の部品が発生しない。これにより、自動ドア設置後のメンテナンス時の部品交換を用意に実施することができる。
【0054】
また、塗装処理などと比較すると、表面処理を薄膜で実施することが可能であるため、部品間の嵌め合いに関する精度に影響を及ぼさないという利点もある。
このように、通常の自動ドア装置と同じ品質管理を実施することが可能である。
【0055】
以上述べたように、本実施形態によれば、現行の枠各種に利用できるコンパクトな構造で、塩害による影響を低減できるとともに、メンテナンスが容易な構造の自動ドア装置1を提供することが可能である。
【0056】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、上記実施形態の自動ドア装置1は、店舗や建屋の外壁に設置することに限られず、店舗や建屋の内壁に設置してもよい。
また、吊り戸車34A,34B及びその周辺の構造は、図示した構成に限られず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1…自動ドア装置、10…ドア、21…電動モータ、22…制御部、23…第1保護部材、24…固定部材、25…第2保護部材、25a…枠部材、25aa,25ab…開口、25b…蓋部材、27…シール剤(防水部材)、30…動力伝達機構、33…レール部、34A…吊り戸車、36da…表面、36c…ベアリング、40…電源スイッチ、41…スイッチ本体、42a…配線、43…接続箇所保護部材、44…絶縁性シール材、45…スイッチカバー、91…保護部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10