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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140209
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】ホールシール材の取付構造
(51)【国際特許分類】
   B60J 5/00 20060101AFI20230927BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
B60J5/00 501E
F16B19/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046126
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】高山 克海
(72)【発明者】
【氏名】神宮 直樹
【テーマコード(参考)】
3J036
【Fターム(参考)】
3J036CA06
(57)【要約】
【課題】車両用パネル材の開口部を閉塞するホールシール材をクリップを用いて取り付ける際に、取付作業の作業性と効率性を大幅に向上することができる。
【解決手段】車両用パネル材の開口部41を閉塞するように配置されるホールシール材5の取付構造であり、ホールシール材5が本体部51と外周リップ部52とから構成され、外周リップ部52の先端部523が車両用パネル材の開口部41の外周部42に弾性付勢で押し当てられるように設けられ、先端部523が押し当てられる方向に本体部51から突出して略コ字状の係合ブラケット53が形成され、係合ブラケット53に係入されたクリップ6の先端押当面617が、先端部523が押し当てられる方向と逆方向に、車両用パネル材の開口部41の外周部42に押し当てられる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用パネル材の開口部を閉塞するように配置されるホールシール材の取付構造であって、
前記ホールシール材が本体部と外周リップ部とから構成され、
前記外周リップ部の先端部が前記車両用パネル材の前記開口部の外周部に弾性付勢で押し当てられるように設けられ、
前記外周リップ部の先端部が押し当てられる方向に前記本体部から突出して略コ字状の係合ブラケットが形成され、
前記係合ブラケットに係入されたクリップの先端押当面が、前記外周リップ部の先端部が押し当てられる方向と逆方向に、前記車両用パネル材の前記開口部の外周部に押し当てられることを特徴とするホールシール材の取付構造。
【請求項2】
前記クリップの幅方向両側の側壁が弾性変形可能に形成され、
前記側壁のそれぞれに外側に突出して係止爪が形成され、
弾性復元した両側の前記側壁の係止爪が前記係合ブラケットに係止されることを特徴とする請求項1記載のホールシール材の取付構造。
【請求項3】
前記クリップの中央柱部と前記側壁の下端部とが湾曲する補強バネ材で連結されていることを特徴とする請求項2記載のホールシール材の取付構造。
【請求項4】
前記クリップの先端が押し当て方向に傾くようにして前記係合ブラケットに係入されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のホールシール材の取付構造。
【請求項5】
前記クリップの先端押当面が、押し当て方向に凸の湾曲面で形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のホールシール材の取付構造。
【請求項6】
前記車両用パネル材が自動車用ドアのインナーパネルであり、
前記ホールシール材の前記本体部が発泡樹脂、前記外周リップ部が未発泡樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載のホールシール材の取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用パネル材にホールシール材をクリップを用いて取り付けるホールシール材の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用パネル材にクリップを用いて別部材を取り付ける構造として特許文献1の取付構造がある。この取付構造は、エンジンフードのフードパネルに別部材のフードモールをクリップを用いて取り付けるものであり、フードモールの裏面にクリップ貫通孔を有する板状突起を形成し、フードパネルの取付部に板状突起を挿入可能な挿通孔を形成し、フードパネルの挿通孔に板状突起を挿通した状態で、車体の内方向に係合爪部が突出している差込部を有するクリップの差込部を、フードパネルの先端縁部側から板状突起のクリップ貫通孔に差し込んで係合し、クリップをフードパネルの内側に配置してフードパネルとフードモールを閂固定する構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4669976号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、自動車用部品には、例えば自動車用ドアのインナーパネルの開口部を閉塞するように配置されるホールシール材のように、車両用パネル材の開口部を閉塞するように配置されるホールシール材がある。このような車両用パネル材の開口部を閉塞するホールシール材は、通常、ホールシール材に合成樹脂フィルムを積層して接着し、合成樹脂フィルムの周縁をインナーパネル等の開口部の周縁部に接着して取り付けが行われている。
【0005】
そして、この接着による取付構造に代えて、車両用パネル材の開口部を閉塞するホールシール材をクリップを用いて取り付ける場合、特許文献1の閂固定の取付構造を用いると、車両用パネル材の開口部の周縁部に板状突起を挿入可能な挿通孔を形成する工程と、ホールシール材に形成した板状突起を挿通孔に位置合わせして挿通する工程と、クリップを板状突起のクリップ貫通孔に差し込んで係合する工程という三段階の作業工程を行う必要が生ずる。即ち、接着による取付構造と比べて、ホールシール材の取付作業の作業性、効率性が格段に低下してしまう。そのため、ホールシール材の取付作業の作業性、効率性に優れるクリップを用いた取付構造が望まれる。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、車両用パネル材の開口部を閉塞するホールシール材をクリップを用いて取り付ける際に、取付作業の作業性と効率性を大幅に向上することができるホールシール材の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のホールシール材の取付構造は、車両用パネル材の開口部を閉塞するように配置されるホールシール材の取付構造であって、前記ホールシール材が本体部と外周リップ部とから構成され、前記外周リップ部の先端部が前記車両用パネル材の前記開口部の外周部に弾性付勢で押し当てられるように設けられ、前記外周リップ部の先端部が押し当てられる方向に前記本体部から突出して略コ字状の係合ブラケットが形成され、前記係合ブラケットに係入されたクリップの先端押当面が、前記外周リップ部の先端部が押し当てられる方向と逆方向に、前記車両用パネル材の前記開口部の外周部に押し当てられることを特徴とする。
これによれば、ホールシール材の係合ブラケットにクリップを係入して先端押当面を車両用パネル材の開口部の外周部に押し当てるだけで、ホールシール材の外周リップ部の先端部が車両用パネル材の開口部の外周部に押し当てられ、クリップの先端押当面が車両用パネル材の開口部の外周部に逆方向から押し当てられる固定状態、換言すればホールシール材の外周リップ部の先端部とクリップの先端押当面とで車両用パネル材の開口部の外周部が挟持される固定状態として、車両用パネルにホールシール材を取り付けることができ、車両用パネル材の開口部を閉塞するホールシール材をクリップを用いて取り付ける際の取付作業の作業性と効率性を大幅に向上することができる。また、外周リップ部の先端部が車両用パネル材の開口部の外周部に押し当てられることにより、ホールシール材の外周部と車両用パネル材の開口部の外周部とのシール性、防水性を確保することができる。
【0008】
本発明のホールシール材の取付構造は、前記クリップの幅方向両側の側壁が弾性変形可能に形成され、前記側壁のそれぞれに外側に突出して係止爪が形成され、弾性復元した両側の前記側壁の係止爪が前記係合ブラケットに係止されることを特徴とする。
これによれば、クリップの両側の側壁を内方に押し込んで弾性変形させた状態で係合ブラケットに挿入し、係合ブラケットから係止爪が抜け出した状態で両側の側壁を弾性復元させ、両側の側壁の係止爪を係合ブラケットに係止することができ、クリップによるホールシール材の取付作業を一層容易化することができると共に、ホールシール材の取付状態、固定状態を安定化することができる。また、係止爪を有するクリップの両側の側壁が弾性変形、弾性復元する構成により、係合ブラケットにクリップを容易に着脱することができ、クリップ、ホールシール材、車両用パネル材の開口部の外周部のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0009】
本発明のホールシール材の取付構造は、前記クリップの中央柱部と前記側壁の下端部とが湾曲する補強バネ材で連結されていることを特徴とする。
これによれば、湾曲する補強バネ材により、係合ブラケットへのクリップの繰り返し着脱に対する、両側の側壁の強度の向上と、弾性変形と弾性復元の性能の持続性の維持を図ることができる。
【0010】
本発明のホールシール材の取付構造は、前記クリップの先端が押し当て方向に傾くようにして前記係合ブラケットに係入されていることを特徴とする。
これによれば、先端が傾いたクリップの先端押当面を車両用パネル材の開口部の外周部に押し当て、ホールシール材の外周リップ部の先端部とクリップの先端押当面とで車両用パネル材の開口部の外周部が挟持される固定状態の固定強度を高めることができる。
【0011】
本発明のホールシール材の取付構造は、前記クリップの先端押当面が、押し当て方向に凸の湾曲面で形成されていることを特徴とする。
これによれば、クリップの先端押当面が平面の場合、車両用パネル材の開口部の外周部の形状のバラツキや設計誤差によって押し当てた状態が安定しなかったり、がたつきが生じやすいが、クリップの湾曲面の先端押当面を車両用パネル材の開口部の外周部に押し当てることにより、ホールシール材の外周リップ部の先端部とクリップの先端押当面とで車両用パネル材の開口部の外周部が挟持される固定状態の安定性を高めることができる。
【0012】
本発明のホールシール材の取付構造は、前記車両用パネル材が自動車用ドアのインナーパネルであり、前記ホールシール材の前記本体部が発泡樹脂、前記外周リップ部が未発泡樹脂で形成されていることを特徴とする。
これによれば、自動車用ドアにおいて、インナーパネルの開口部の外周部にホールシール材の外周リップ部の先端部を弾性付勢で押し当て、隙間を生ずることなく常に面圧がかかる状態とし、外部からの振動の加振力を超える圧力で外周リップ部の先端部をインナーパネルの外周部に押し付けて振動を抑え込み、外力に起因する異音(ビビリ音)或いはがたつきの発生を防止することができる。更に、インナーパネルの開口部の周辺において接着された合成樹脂フィルムが振動して異音が発生するようなことが無く、合成樹脂フィルムに起因する異音の発生を無くすことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のホールシール材の取付構造によれば、車両用パネル材の開口部を閉塞するホールシール材をクリップを用いて取り付ける際に、取付作業の作業性と効率性を大幅に向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による実施形態のホールシール材の取付構造を有する自動車用ドアの正面図。
図2】本発明による実施形態のホールシール材の取付構造の断面図。
図3】(a)は図2のA部拡大図、(b)は図2のB部拡大図。
図4】実施形態のホールシール材の取付構造におけるクリップの斜視図。
図5】(a)はクリップを係合ブラケットに挿入する前の状態の部分斜視説明図、(b)は同図(a)の状態の断面説明図。
図6】(a)はクリップの係合ブラケットへの挿入途中の状態の部分斜視説明図、(b)は同図(a)の状態の断面説明図。
図7】(a)はクリップを係合ブラケットに係入した状態の部分斜視説明図、(b)は同図(a)の状態の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔実施形態のホールシール材の取付構造〕
本発明による実施形態のホールシール材の取付構造は、車両用パネル材の開口部を閉塞するように配置されるホールシール材5をクリップ6を用いて車両用パネル材に取り付ける取付構造であり、図1図3に示すように、例えば自動車用ドア1でアウターパネル2とドアトリム3との間に配置される車両用パネル材に相当するインナーパネル4にホールシール材5を取り付けに用いられる。
【0016】
図示例のホールシール材5は、発泡樹脂で形成されている本体部51と、未発泡樹脂で形成されている外周リップ部52とから構成され、本体部51と外周リップ部52は同一成形材になっている。本体部51は、発泡樹脂のコア層511の外側を未発泡樹脂のスキン層512で覆うようにして形成され、本体部51の外周には、未発泡樹脂で形成されている立壁部513が設けられている。
【0017】
外周リップ部52は、本体部51の厚み方向に延びる起立壁521と、起立壁521から車両用パネル材に相当するインナーパネル4側に向かって略弧状に湾曲するように傾斜して形成されたリップ縁522と、ホールシール材5の周縁となる位置に配設され、玉縁状に形成されているリップ縁522の先端部523と、立壁部513と起立壁521とを断面視略H形状となるように連結する未発泡樹脂で形成された架橋部524とから構成されている。リップ縁522の先端部523は外周リップ部52の先端部に相当する。
【0018】
ホールシール材5は、車両用パネル材に相当するインナーパネル4の開口部41を閉塞するように配置されて取り付けられ、取付状態において、外周リップ部52の先端部523がインナーパネル4の開口部41の外周部42に弾性付勢で押し当てられるように設けられる。
【0019】
ホールシール材5の本体部51には、外周リップ部52の先端部523が車両用パネル材の開口部41の外周部42に押し当てられる方向に突出するようにして略コ字状の係合ブラケット53が形成されている。図示例では、本体部51のインナーパネル4側の面に未発泡樹脂で構成される略コ字状の係合ブラケット53が突出形成されている。また、本体部51には、係合ブラケット53と同じ方向に突出するようにして、外側に爪を向けて形成されている掛止フック54が設けられ、図示例では本体部51のインナーパネル4側の面に未発泡樹脂で構成される掛止フック54が突出形成されている。略コ字状の係合ブラケット53と掛止フック54は、本体部51の所定の複数箇所にそれぞれ設けられている。
【0020】
クリップ6は、図4に示すように、略碇形状の係入部61と、係入部61よりも幅広で形成されている摘部62とから構成される。係入部61は、中央柱部611と、中央柱部611の先端に幅方向に広がるように設けられた前板部612と、前板部612の両方の側端部から後方に延びて形成されている側壁613・613を有する。クリップ6の幅方向の両側の側壁613・613はそれぞれ弾性変形可能に形成されている。
【0021】
それぞれの側壁613には、係合ブラケット53に係止される係止爪614が外側に突出して形成されていると共に、係止爪614よりも先端側に係止爪614と離間して補助係止爪615が形成されている。補助係止爪615は係止爪614よりも低い突出高さで設けられており、ホールシール材5を車両用パネル材に取り付ける前段階で、クリップ6の補助係止爪615を係合ブラケット53に係止してクリップ6をホールシール材5に係入し仮固定して、クリップ6とホールシール材5を搬送等で一体的に取り扱えるようになっている(図6参照)。
【0022】
クリップ6の中央柱部611と両側の側壁613の下端部とは湾曲する補強バネ材616で連結されている。図示例では平面視略S字状に湾曲しているバネ板が補強バネ材616として用いられるが、補強バネ材616には本発明の趣旨の範囲内で適宜のものを用いることが可能であり、例えば平面視略弧状に湾曲しているバネ板を補強バネ材616として用いてもよい。
【0023】
クリップ6の前板部612は、中央柱部611よりも厚みが小さくなるように形成されており、前板部612のホールシール材5側の面は、車両用パネル材に相当するインナーパネル4の開口部41の外周部42に押し当てられる先端押当面617になっている。クリップ6の先端押当面617は、略平坦な平坦面で形成してもよいが、押し当て方向に凸の湾曲面で形成すると、ホールシール材5の取付状態をより安定化することができて好適である。クリップ6の先端押当面617を押し当て方向に凸の湾曲面で形成する場合、湾曲面の曲率半径はR20mm~R200mmとすると好適である。
【0024】
クリップ6の摘部62の幅方向の両端部には、それぞれ非貫通孔で構成される係合穴621・621が形成されている。また、ホールシール材5の本体部51には、係合ブラケット53に対してクリップ6が挿入される側で係合ブラケット53と離間した位置に、一対の係合突起55・55が相互に離間して形成されており、係合突起55の高さは係合穴621の深さよりも大きくなっている。
【0025】
そして、クリップ6を係合ブラケット53に係入して係止爪614を係合ブラケット53に係止した状態で、係合突起55がクリップ6の係合穴621に係合され、クリップ6の係合ブラケット53への係止状態がより安定化されるようになっている。また、係合突起55の高さが係合穴621の深さより大きいことにより、クリップ6の係合ブラケット53への係止状態において、クリップ6が前方に向かってホールシール材5側に傾斜し、クリップ6の先端押当面617がインナーパネル4の開口部41の外周部42により強く付勢されて押し当てられるようになっている。
【0026】
係合ブラケット53にクリップ6が挿入される側で係合突起55と離間した位置、換言すれば係合突起55・55の後方位置には、一対の補助係合突起56・56が本体部51に相互に離間して形成されており、補助係合突起56の高さは係合突起55の高さよりも高く形成されている。ホールシール材5を車両用パネル材に取り付ける前段階で、クリップ6の補助係止爪615を係合ブラケット53に係止してクリップ6をホールシール材5に係入し仮固定した際に、補助係合突起56がクリップ6の係合穴621に係合され、仮固定の状態がより安定化するようになっている(図6参照)。
【0027】
更に、係合ブラケット53にクリップ6が挿入される側で補助係合突起56と離間した位置、換言すれば補助係合突起56・56の後方位置には、補助係合突起56よりも高い高さで突出する一対の突起状のストッパー57・57が相互に離間して本体部51に形成されている。ストッパー57・57は、クリップ6の補助係止爪615を係合ブラケット53に係止してクリップ6をホールシール材5に係入し仮固定した際に、クリップ6の摘部62の後端部を支持するようになっており、ストッパー57の支持でクリップ6の係合ブラケット53からの脱落がより確実に防止されている。
【0028】
本実施形態で、クリップ6を用いてホールシール材5を取り付ける際には、図5図6に示すように、車両用パネル材に相当するインナーパネル4の開口部41を閉塞するようにホールシール材5を配置し、掛止フック54をインナーパネル4の開口部41の外周部42の周縁の内側に引っ掛けた状態にして(図3(b)参照)、係合ブラケット53にクリップ6の係入部61を係入する。
【0029】
この係入時には、クリップ6は弾性変形して略コ字状の係合ブラケット53に挿入され、係止爪614が係合ブラケット53からインナーパネル4側に抜け出ることにより、クリップ6の両側の側壁613・613が幅方向に弾性復元し、側壁613・613の係止爪614・614がクリップ6の幅方向において係合ブラケット53に係止されると共に、係合突起55がクリップ6の係合穴621に入り込んで係合される。この際、係合突起55の高さが係合穴621の深さより大きいことにより、クリップ6の後部はホールシール材5の本体部51から浮いた状態となり、クリップ6の先端が押し当て方向に傾くようにしてクリップ6が係合ブラケット53に係入される。
【0030】
そして、クリップ6が係合ブラケット53に係入された状態では、本体部51をインナーパネル4の開口部41側に引き寄せる力が加わり、ホールシール材5の外周リップ部52の先端部523がインナーパネル4の開口部41の外周部42に弾性付勢で押し当てられると共に、クリップ6の先端押当面617が、外周リップ部52の先端部523が押し当てられる方向と逆方向に、インナーパネル4の開口部41の外周部42に押し当てられて、ホールシール材5が車両用パネル材に相当するインナーパネル4に取り付けられる。
【0031】
本実施形態のホールシール材の取付構造によれば、ホールシール材5の係合ブラケット53にクリップ6を係入して先端押当面617を車両用パネル材の開口部41の外周部42に押し当てるだけで、ホールシール材5の外周リップ部52の先端部523が外周部42に押し当てられ、クリップ6の先端押当面617が外周部42に逆方向から押し当てられる固定状態、換言すればホールシール材5の外周リップ部52の先端部523とクリップ6の先端押当面617とで車両用パネル材の開口部41の外周部42が挟持される固定状態として、車両用パネルにホールシール材5を取り付けることができ、車両用パネル材の開口部41を閉塞するホールシール材5をクリップ6を用いて取り付ける際の取付作業の作業性と効率性を大幅に向上することができる。また、外周リップ部52の先端部523がインナーパネル4の開口部41の外周部42に押し当てられることにより、ホールシール材5の外周部と車両用パネル材の開口部41の外周部42とのシール性、防水性を確保することができる。
【0032】
また、クリップ6の両側の側壁613を内方に押し込んで弾性変形させた状態で係合ブラケット53に挿入し、係合ブラケット53から係止爪614が抜け出した状態で両側の側壁613・613を弾性復元させ、両側の側壁613・613の係止爪614・614を係合ブラケット53に係止することができ、クリップ6によるホールシール材5の取付作業を一層容易化することができると共に、ホールシール材5の取付状態、固定状態を安定化することができる。また、係止爪614を有するクリップ6の両側の側壁613・613が弾性変形、弾性復元する構成により、係合ブラケット53にクリップ6を容易に着脱することができ、クリップ6、ホールシール材5、車両用パネル材に相当するインナーパネル4の開口部41の外周部42のメンテナンス作業を容易に行うことができる。
【0033】
また、湾曲する補強バネ材616により、係合ブラケット53へのクリップ6の繰り返し着脱に対する、両側の側壁613・613の強度の向上と、弾性変形と弾性復元の性能の持続性の維持を図ることができる。
【0034】
また、クリップ6の先端が押し当て方向に傾くようにして係合ブラケット53に係入することにより、先端が傾いたクリップ6の先端押当面617を車両用パネル材の開口部41の外周部42に押し当て、ホールシール材5の外周リップ部52の先端部523とクリップ6の先端押当面617とで車両用パネル材の開口部41の外周部42が挟持される固定状態の固定強度を高めることができる。
【0035】
また、クリップ6の先端押当面617が平面の場合、車両用パネル材の開口部41の外周部42の形状のバラツキや設計誤差によって押し当てた状態が安定しなかったり、がたつきが生じやすいが、クリップ6の押し当て方向に凸の湾曲面の先端押当面617を車両用パネル材の開口部41の外周部42に押し当てる構成とする場合には、ホールシール材5の外周リップ部52の先端部523とクリップ6の先端押当面617とで車両用パネル材の開口部41の外周部42が挟持される固定状態の安定性を高めることができる。
【0036】
また、車両用パネル材を自動車用ドアのインナーパネル4とし、ホールシール材5の本体部51を発泡樹脂、外周リップ部52を未発泡樹脂で形成し、インナーパネル4の開口部41を閉塞するようにホールシール材5をクリップ6で取り付ける場合には、インナーパネル4の開口部41の外周部42にホールシール材5の外周リップ部52の先端部523を弾性付勢で押し当て、隙間を生ずることなく常に面圧がかかる状態とし、外部からの振動の加振力を超える圧力で外周リップ部52の先端部523をインナーパネル4の外周部42に押し付けて振動を抑え込み、外力に起因する異音(ビビリ音)或いはがたつきの発生を防止することができる。更に、インナーパネル4の開口部41の周辺において接着された合成樹脂フィルムが振動して異音が発生するようなことが無く、合成樹脂フィルムに起因する異音の発生を無くすことができる。
【0037】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0038】
例えば本発明でクリップを用いて取り付けられるホールシール材を構成する材料、或いは本体部51と外周リップ部52を構成する材料は、上記実施形態のホールシール材5のように発泡樹脂と未発泡樹脂の組み合わせに限定されず、本発明を適用可能な範囲で適宜である。また、本発明でクリップを用いてホールシール材が取り付けられる車両用パネル材は、上記実施形態における自動車用ドアのインナーパネルに限定されず、適用可能な適宜の車両用パネル材とすることが可能である。例えば各種のメンテナンスホールを囲む車両用パネル材に蓋(ホールシール材)を取り付ける場合等に本発明のホールシール材の取付構造を用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、例えば自動車用ドアのインナーパネルの開口部を閉塞するホールシール材をインナーパネルに取り付ける際に利用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1…自動車用ドア 2…アウターパネル 3…ドアトリム 4…インナーパネル 41…開口部 42…外周部 5…ホールシール材 51…本体部 511…コア層 512…スキン層 513…立壁部 52…外周リップ部 521…起立壁 522…リップ縁 523…先端部 524…架橋部 53…係合ブラケット 54…掛止フック 55…係合突起 56…補助係合突起 57…ストッパー 6…クリップ 61…係入部 611…中央柱部 612…前板部 613…側壁 614…係止爪 615…補助係止爪 616…補強バネ材 617…先端押当面 62…摘部 621…係合穴
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7