(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140210
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】クリップ設置構造
(51)【国際特許分類】
F16B 19/00 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
F16B19/00 F
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046127
(22)【出願日】2022-03-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-05-24
(71)【出願人】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【弁理士】
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】高山 克海
(72)【発明者】
【氏名】神宮 直樹
【テーマコード(参考)】
3J036
【Fターム(参考)】
3J036CA06
(57)【要約】
【課題】取付部材に被取付部材を取り付けるクリップの紛失を防止できると共に、クリップを用いた取付作業の作業性、効率性を高めることができる。
【解決手段】クリップ6を被取付部材の略コ字状の係合ブラケット53に係入して被取付部材を取付部材に取り付けるクリップ6の被取付部材への設置構造であり、クリップ6に係合穴621が形成され、被取付部材に、係合ブラケット53と、被取付部材の取付状態で係合穴621に係合される係合突起55と、補助係合突起56が設けられ、係合突起55は、係合ブラケット53の後方で離間した位置に形成され、補助係合突起56は、係合突起55の後方で離間した位置に形成され且つ係合突起55よりも突出高さが高く形成され、クリップ6の係合穴621に補助係合突起56が係合されると共に、係合ブラケット53にクリップ6が傾斜するように係入されてクリップが仮固定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被取付部材に設置されたクリップの先端押当面の方に向かって取付部材の取付部を押し付け、この押し付けの方向と逆向きに前記クリップの先端押当面を前記取付部に押し当てて、前記被取付部材を前記取付部材に取り付ける前記クリップを前記被取付部材に仮固定して設置するクリップ設置構造であって、
前記クリップの前記被取付部材側の面に係合穴が形成され、
前記被取付部材の前記クリップが設置される側の面に、前記クリップが係入される略コ字状の係合ブラケットと、前記取付部材への前記被取付部材の取付状態で前記係合穴に係合される係合突起と、補助係合突起とが設けられ、
前記係合突起は、前記クリップの係入方向と逆向きで前記係合ブラケットと離間した位置に形成され、
前記補助係合突起は、前記クリップの係入方向と逆向きで前記係合突起と離間した位置で前記係合突起よりも突出高さが高くなるように形成され、
前記クリップの前記係合穴に前記補助係合突起が係合されると共に、前記係合ブラケットに前記クリップが傾斜するように係入されて、前記クリップが前記被取付部材に仮固定されていることを特徴とするクリップ設置構造。
【請求項2】
前記係合穴と、前記係合突起と、前記補助係合突起のそれぞれが、前記クリップの幅方向に離間して対になるように設けられていることを特徴とする請求項1記載のクリップ設置構造。
【請求項3】
前記クリップの係入方向と逆向きで前記補助係合突起と離間した位置に、仮固定された前記クリップの後端部を支持するストッパーが形成されていることを特徴とする請求項1又は2記載のクリップ設置構造。
【請求項4】
前記クリップに、前記取付部材への前記被取付部材の取付状態で前記係合ブラケットに係止される係止爪と、前記被取付部材への仮固定状態で前記係合ブラケットに係止される補助係止爪とが形成されていることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載のクリップ設置構造。
【請求項5】
前記係合ブラケットの内周上面が、前記クリップの係入方向に向かって前記被取付部材に近づくように傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載のクリップ設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップを用いて取付部材に取り付けられる被取付部材にクリップを設置するクリップ設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クリップを用いて取付部材に被取付部材を取り付ける構造が知られており、特許文献1には取付部材のフードパネルに被取付部材のフードモールをクリップを用いて取り付ける取付構造が開示されている。この取付構造は、フードモールの裏面にクリップ貫通孔を有する板状突起が形成され、フードパネルの取付部に板状突起を挿入可能な挿通孔が形成され、フードパネルの挿通孔に板状突起を挿通した状態で、車体の内方向に係合爪部が突出している差込部を有するクリップの差込部を、フードパネルの先端縁部側から板状突起のクリップ貫通孔に差し込んで係合することにより、クリップをフードパネルの内側に配置して取付部材のフードパネルに被取付部材のフードモールを閂固定で取り付ける構造になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の取付構造は、取付部材のフードパネルに被取付部材のフードモールを取り付ける際に、初めて別部材のクリップを取付部材と被取付部材に差し込んで係合するものであるため、クリップを紛失し易いという問題がある。このようなクリップの紛失を防止するためには、クリップを被取付部材に仮固定する構造とすることが考えられるが、この構造はクリップを用いた取付部材への被取付部材の取付作業の作業性を高められる構造とすることが望ましい。
【0005】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、取付部材に被取付部材を取り付けるクリップを被取付部材に仮固定してクリップの紛失を防止することができると共に、クリップを用いた取付作業の作業性、効率性を高めることができるクリップ設置構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のクリップ設置構造は、被取付部材に設置されたクリップの先端押当面の方に向かって取付部材の取付部を押し付け、この押し付けの方向と逆向きに前記クリップの先端押当面を前記取付部に押し当てて、前記被取付部材を前記取付部材に取り付ける前記クリップを前記被取付部材に仮固定して設置するクリップ設置構造であって、前記クリップの前記被取付部材側の面に係合穴が形成され、前記被取付部材の前記クリップが設置される側の面に、前記クリップが係入される略コ字状の係合ブラケットと、前記取付部材への前記被取付部材の取付状態で前記係合穴に係合される係合突起と、補助係合突起とが設けられ、前記係合突起は、前記クリップの係入方向と逆向きで前記係合ブラケットと離間した位置に形成され、前記補助係合突起は、前記クリップの係入方向と逆向きで前記係合突起と離間した位置で前記係合突起よりも突出高さが高くなるように形成され、前記クリップの前記係合穴に前記補助係合突起が係合されると共に、前記係合ブラケットに前記クリップが傾斜するように係入されて、前記クリップが前記被取付部材に仮固定されていることを特徴とする。
これによれば、クリップの係合穴に被取付部材の補助係合突起を係合し、クリップを係合ブラケットに傾斜するように係入した状態でクリップを被取付部材に仮固定することができ、取付部材に被取付部材を取り付けるクリップを被取付部材に仮固定してクリップの紛失を防止することができる。換言すれば、例えば搬送時など被取付部材を取付部材に取り付ける前段階で被取付部材とクリップを一体的に取り扱うことができる。また、被取付部材を取付部材に取り付ける際には、係合ブラケットに予め係入されているクリップの係合ブラケットへの係入、挿入を進行させ、クリップの係合穴に被取付部材の係合突起を係合した状態でクリップの先端押当面を取付部材の取付部に押し当てて、被取付部材を取付部材に取り付けることができる。従って、クリップを用いた被取付部材の取付部材への取付作業の作業性、効率性を高めることができる。
【0007】
本発明のクリップ設置構造は、前記係合穴と、前記係合突起と、前記補助係合突起のそれぞれが、前記クリップの幅方向に離間して対になるように設けられていることを特徴とする。
これによれば、係合ブラケットに係入したクリップの幅方向の姿勢を安定させることができ、係合ブラケットに係入したクリップの仮固定の状態や、被取付部材を取付部材に取り付けた際のクリップの本固定の状態をより安定させることができる。
【0008】
本発明のクリップ設置構造は、前記クリップの係入方向と逆向きで前記補助係合突起と離間した位置に、仮固定された前記クリップの後端部を支持するストッパーが形成されていることを特徴とする。
これによれば、係合ブラケットに係入して被取付部材に仮固定されているクリップが、被取付部材から脱落することをより確実に防止することができる。
【0009】
本発明のクリップ設置構造は、前記クリップに、前記取付部材への前記被取付部材の取付状態で前記係合ブラケットに係止される係止爪と、前記被取付部材への仮固定状態で前記係合ブラケットに係止される補助係止爪とが形成されていることを特徴とする。
これによれば、係合ブラケットに係入したクリップの仮固定の状態を補助係止爪の係合ブラケットへの係止でより安定させることができる。更に、被取付部材を取付部材に取り付けた際のクリップの本固定の状態、被取付部材の取付部材の取付状態を係止爪の係合ブラケットへの係止でより安定させることができる。
【0010】
本発明のクリップ設置構造は、前記係合ブラケットの内周上面が、前記クリップの係入方向に向かって前記被取付部材に近づくように傾斜して形成されていることを特徴とする。
これによれば、係合ブラケットにクリップを係入して仮固定の状態にする際や、仮固定の状態から係合ブラケットにクリップを係入して本固定の状態にする際に、係合ブラケットへのクリップの係入動作、挿入動作をよりスムーズに行うことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のクリップ設置構造によれば、取付部材に被取付部材を取り付けるクリップを被取付部材に仮固定してクリップの紛失を防止することができると共に、クリップを用いた被取付部材の取付部材への取付作業の作業性、効率性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明による実施形態のクリップ設置構造が設けられたホールシール材を取り付けた状態の自動車用ドアの正面図。
【
図2】本発明による実施形態のクリップ設置構造が設けられたホールシール材を取り付けた状態の自動車用ドアの断面図。
【
図3】(a)は
図2のA部拡大図、(b)は
図2のB部拡大図。
【
図4】実施形態のクリップ設置構造におけるクリップの斜視図。
【
図6】(a)は実施形態のクリップ設置構造が設けられたホールシール材をインナーパネルの開口部を閉塞するように配置した状態の部分斜視説明図、(b)は同図(a)の状態の断面説明図。
【
図7】(a)はクリップを係合ブラケットに係入してホールシール材をインナーパネルに取り付けた状態の部分斜視説明図、(b)は同図(a)の状態の断面説明図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔実施形態のクリップ設置構造〕
本発明による実施形態のクリップ設置構造は、
図1~
図5に示すように、自動車用ドア1でアウターパネル2とドアトリム3との間に配置される車両用パネル材に相当するインナーパネル4を取付部材とし、インナーパネル4の開口部41を閉塞するように配置される略板状のホールシール材5を被取付部材とし、被取付部材のホールシール材5を取付部材のインナーパネル4に取り付けるクリップ6を係合ブラケット53に係入するようにしてホールシール材5に仮固定して設置する構造になっており、ホールシール材5をインナーパネル4に取り付ける際には、クリップ6の係合ブラケット53への係入、挿入を進行させ、クリップ6をホールシール材5に本固定するようにして用いられる。
【0014】
被取付部材に相当する図示例のホールシール材5は、発泡樹脂で形成されている本体部51と、未発泡樹脂で形成されている外周リップ部52とから構成され、本体部51と外周リップ部52は同一成形材になっている。本体部51は、発泡樹脂のコア層511の外側を未発泡樹脂のスキン層512で覆うようにして形成され、本体部51の外周には、未発泡樹脂で形成されている立壁部513が設けられている。
【0015】
外周リップ部52は、本体部51の厚み方向に延びる起立壁521と、起立壁521から車両用パネル材に相当するインナーパネル4側に向かって略弧状に湾曲するように傾斜して形成されたリップ縁522と、ホールシール材5の周縁となる位置に配設され、玉縁状に形成されているリップ縁522の先端部523と、立壁部513と起立壁521とを断面視略H形状となるように連結する未発泡樹脂で形成された架橋部524とから構成されている。リップ縁522の先端部523は外周リップ部52の先端部に相当する。
【0016】
ホールシール材5は、取付部材に相当するインナーパネル4の開口部41を閉塞するように配置されて取り付けられ、取付状態において、外周リップ部52の先端部523がインナーパネル4の開口部41の外周部42に弾性付勢で押し当てられるように設けられる。即ち、被取付部材に相当するホールシール材5に設置されたクリップ6の先端押当面617の方に向かって、取付部材の取付部に相当するインナーパネル4の外周部42が押し付けられる状態となる。
【0017】
ホールシール材5の本体部51には、外周リップ部52の先端部523が車両用パネル材の開口部41の外周部42に押し当てられる方向に突出するようにして、クリップ6が設置される側の面に略コ字状の係合ブラケット53が形成されている。図示例では、本体部51のインナーパネル4側の面に未発泡樹脂で構成される略コ字状の係合ブラケット53が突出形成されている。係合ブラケット53の内周上面531は、クリップ6の係入方向に向かってホールシール材5に近づくように傾斜して形成されている。また、本体部51には、係合ブラケット53と同じ方向に突出するようにして、外側に爪を向けて形成されている掛止フック54が設けられ、図示例では本体部51のインナーパネル4側の面に未発泡樹脂で構成される掛止フック54が突出形成されている。略コ字状の係合ブラケット53と掛止フック54は、本体部51の所定の複数箇所にそれぞれ設けられている。
【0018】
クリップ6は、
図4に示すように、略碇形状の係入部61と、係入部61よりも幅広で形成されている摘部62とから構成される。係入部61は、中央柱部611と、中央柱部611の先端に幅方向に広がるように設けられた前板部612と、前板部612の両方の側端部から後方に延びて形成されている側壁613・613を有する。クリップ6の幅方向の両側の側壁613・613はそれぞれ弾性変形可能に形成されている。
【0019】
それぞれの側壁613には、インナーパネル4へのホールシール材5の取付状態で係合ブラケット53に係止される係止爪614が外側に突出して形成されていると共に、係止爪614よりも先端側に係止爪614と離間して補助係止爪615が形成されている。補助係止爪615は係止爪614よりも低い突出高さで設けられており、クリップ6のホールシール材5への仮固定状態において係合ブラケット53に係止されるようになっている。ホールシール材5をインナーパネル4に取り付ける前段階では、クリップ6の補助係止爪615を係合ブラケット53に係止してクリップ6をホールシール材5に係入し仮固定することにより、クリップ6とホールシール材5を搬送等で一体的に取り扱えるようになっている。
【0020】
クリップ6の中央柱部611と両側の側壁613の下端部とは湾曲する補強バネ材616で連結されている。図示例では平面視略S字状に湾曲しているバネ板が補強バネ材616として用いられるが、補強バネ材616には本発明の趣旨の範囲内で適宜のものを用いることが可能であり、例えば平面視略弧状に湾曲しているバネ板を補強バネ材616として用いてもよい。
【0021】
クリップ6の前板部612は、中央柱部611よりも厚みが小さくなるように形成されており、前板部612のホールシール材5側の面は、車両用パネル材に相当するインナーパネル4の開口部41の外周部42に押し当てられる先端押当面617になっている。クリップ6の先端押当面617は、略平坦な平坦面で形成してもよいが、押し当て方向に凸の湾曲面で形成すると、ホールシール材5の取付状態をより安定化することができて好適である。クリップ6の先端押当面617を押し当て方向に凸の湾曲面で形成する場合、湾曲面の曲率半径はR20mm~R200mmとすると好適である。
【0022】
クリップ6の摘部62の幅方向の両端部には、それぞれ非貫通孔で構成される係合穴621・621が形成されている。係合穴621・621はクリップ6のホールシール材5側の面に形成され、クリップ6の幅方向に離間して対になるように設けられている。
【0023】
また、ホールシール材5の本体部51には、係合ブラケット53に対してクリップ6が係入される方向と逆向きで係合ブラケット53と離間した位置に、一対の係合突起55・55が相互に離間して形成されており、係合突起55の高さは係合穴621の深さよりも大きくなっている。係合突起55・55は、係合ブラケット53と同様に、ホールシール材5のクリップ6が設置される側の面に設けられ、インナーパネル4へのホールシール材5の取付状態で係合穴621・621に係合されるようになっている。係合突起55・55も係合穴621・621と同様にクリップ6の幅方向に離間して対になるように設けられている。
【0024】
クリップ6を係合ブラケット53に係入して係止爪614を係合ブラケット53に係止し、インナーパネル4にホールシール材5を取り付けた状態では、係合突起55がクリップ6の係合穴621に係合され、クリップ6の係合ブラケット53への係止状態が安定化される。また、係合突起55の高さが係合穴621の深さより大きいことにより、クリップ6の係合ブラケット53への係止状態において、クリップ6が前方に向かってホールシール材5側に傾斜し、クリップ6の先端押当面617が、外周リップ部52の先端部523による押し付け方向と逆向きに、インナーパネル4の開口部41の外周部42により強く付勢されて押し当てられるようになっている。
【0025】
クリップ6の係入方向と逆向きで係合突起55・55と離間した位置、換言すれば係合突起55・55の後方位置には、一対の補助係合突起56・56が本体部51に相互に離間して形成されており、補助係合突起56の高さは係合突起55の高さよりも高く形成されている。補助係合突起56・56は、係合突起55・55と同様に、ホールシール材5のクリップ6が設置される側の面に設けられ、係合突起55・55、係合穴621・621と同様にクリップ6の幅方向に離間して対になるように設けられている。
【0026】
ホールシール材5をインナーパネル4に取り付ける前段階で、クリップ6の補助係止爪615を係合ブラケット53に係止してクリップ6を被取付部材に相当するホールシール材5に係入し仮固定した状態、換言すれば本実施形態のクリップ設置構造の状態では、補助係合突起56・56がクリップ6の係合穴621・621に係合され、仮固定の状態が安定化される。また、補助係合突起56の高さは係合穴621の深さよりも大きく、係合突起55がクリップ6の底面に当接することから、クリップ6がホールシール材5に仮固定されたクリップ設置構造では、クリップ6は係合ブラケット53に傾斜して係入される。
【0027】
更に、クリップ6の係入方向と逆向きで補助係合突起56と離間した位置に、換言すれば補助係合突起56・56の後方位置には、補助係合突起56と同じ突出方向に補助係合突起56よりも高い高さで突出する一対の突起状のストッパー57・57が相互に離間して本体部51に形成されている。ストッパー57・57は、クリップ6の補助係止爪615を係合ブラケット53に係止してクリップ6をホールシール材5に係入し仮固定したクリップ設置構造において、クリップ6の摘部62の後端部を支持するようになっており、ストッパー57の支持でクリップ6の係合ブラケット53からの脱落がより確実に防止される。
【0028】
本実施形態のクリップ設置構造が設けられたホールシール材5をインナーパネル4に取り付ける際には、
図5及び
図6に示すように、クリップ6の係合穴621に補助係合突起56が係合され、係合ブラケット53にクリップ6が傾斜するように係入され、補助係止爪615が係合ブラケット53に係止されているクリップ6が仮固定されているホールシール材5を用い、このホールシール材5を取付部材に相当するインナーパネル4の開口部41を閉塞するように配置し、掛止フック54をインナーパネル4の開口部41の外周部42の周縁の内側に引っ掛けた状態にする(
図3(b)参照)。
【0029】
そして、クリップ6の略コ字状の係合ブラケット53への係入、挿入を進行させると、クリップ6の両側の側壁613・613が弾性変形し、係止爪614が係合ブラケット53からインナーパネル4側に抜け出ることにより、クリップ6の両側の側壁613・613が幅方向に弾性復元し、側壁613・613の係止爪614・614がクリップ6の幅方向において係合ブラケット53に係止されると共に、係合突起55がクリップ6の係合穴621に入り込んで係合される。この際、係合突起55の高さが係合穴621の深さより大きいことにより、クリップ6の後部はホールシール材5の本体部51から浮いた状態となり、クリップ6の先端が押し当て方向に傾くようにしてクリップ6が係合ブラケット53に係入される。
【0030】
この状態では、ホールシール材5の本体部51をインナーパネル4の開口部41側に引き寄せる力が加わり、ホールシール材5の外周リップ部52の先端部523がインナーパネル4の開口部41の外周部42に弾性付勢で押し付けられると共に、クリップ6の先端押当面617が、外周リップ部52の先端部523が押し付けられる方向と逆方向に、インナーパネル4の開口部41の外周部42に押し当てられて、被取付部材に相当するホールシール材5が取付部材に相当するインナーパネル4に取り付けられる。
【0031】
本実施形態のクリップ設置構造によれば、クリップ6の係合穴621に被取付部材の補助係合突起56を係合し、クリップ6を係合ブラケット53に傾斜するように係入した状態でクリップ6を被取付部材に仮固定することができ、取付部材に被取付部材を取り付けるクリップ6を被取付部材に仮固定してクリップ6の紛失を防止することができる。換言すれば、例えば搬送時など被取付部材を取付部材に取り付ける前段階でホールシール材5のような被取付部材とクリップ6を一体的に取り扱うことができる。また、被取付部材を取付部材に取り付ける際には、係合ブラケット53に予め係入されているクリップ6の係合ブラケット53への係入、挿入を進行させ、クリップ6の係合穴621に被取付部材の係合突起55を係合した状態でクリップ6の先端押当面617を取付部材の取付部に押し当てて、被取付部材を取付部材に取り付けることができる。従って、クリップ6を用いた被取付部材の取付部材への取付作業の作業性、効率性を高めることができる。
【0032】
また、係合穴621と、係合突起55と、補助係合突起56のそれぞれをクリップ6の幅方向に離間して対になるように設けることにより、係合ブラケット53に係入したクリップ6の幅方向の姿勢を安定させることができ、係合ブラケット53に係入したクリップ6の仮固定の状態や、被取付部材を取付部材に取り付けた際のクリップ6の本固定の状態をより安定させることができる。
【0033】
また、仮固定されたクリップ6の後端部を支持するストッパー57を形成することにより、係合ブラケット53に係入して被取付部材に仮固定されているクリップ6が、被取付部材から脱落することをより確実に防止することができる。
【0034】
また、係合ブラケット53に係入したクリップ6の仮固定の状態を補助係止爪615の係合ブラケット53への係止でより安定させることができる。更に、被取付部材を取付部材に取り付けた際のクリップ6の本固定の状態、被取付部材の取付部材の取付状態を係止爪614の係合ブラケット53への係止でより安定させることができる。
【0035】
また、係合ブラケット53の内周上面531をクリップ6の係入方向に向かって被取付部材に近づくように傾斜して形成することにより、係合ブラケット53にクリップ6を係入して仮固定の状態にする際や、仮固定の状態から係合ブラケット53にクリップ6を係入して本固定の状態にする際に、係合ブラケット53へのクリップ6の係入動作、挿入動作をよりスムーズに行うことができる。
【0036】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0037】
例えば本発明でクリップを用いて取り付けられる被取付部材と、被取付部材が取り付けられる取付部材は、上記実施形態におけるホールシール材5とインナーパネル4に限定されず、本発明を適用可能な範囲で適宜である。例えば各種のメンテナンスホールを囲む壁(取付部材)に蓋(被取付部材)を取り付ける場合や、グリルベース(取付部材)にグリルモール(被取付部材)を取り付ける場合や、車両の天井板、壁、床(被取付部材)等を車体(取付部材)に取り付ける場合等に本発明のクリップ設置構造を用いることができる。更に、車両用部品において、被取付部材をホールシール材とする場合に、ホールシール材が取り付けられる車両用パネル材は適用可能な範囲で適宜である。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、例えば自動車用ドアのインナーパネルの開口部を閉塞するホールシール材にクリップを設置し、クリップが設置されたホールシール材をインナーパネルに取り付ける際に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1…自動車用ドア 2…アウターパネル 3…ドアトリム 4…インナーパネル 41…開口部 42…外周部 5…ホールシール材 51…本体部 511…コア層 512…スキン層 513…立壁部 52…外周リップ部 521…起立壁 522…リップ縁 523…先端部 524…架橋部 53…係合ブラケット 531…内周上面 54…掛止フック 55…係合突起 56…補助係合突起 57…ストッパー 6…クリップ 61…係入部 611…中央柱部 612…前板部 613…側壁 614…係止爪 615…補助係止爪 616…補強バネ材 617…先端押当面 62…摘部 621…係合穴