(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140222
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】エアバッグ係留部材の解除機構
(51)【国際特許分類】
B60R 21/2338 20110101AFI20230927BHJP
【FI】
B60R21/2338
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046142
(22)【出願日】2022-03-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127203
【弁理士】
【氏名又は名称】奈良 泰宏
(72)【発明者】
【氏名】中出 一樹
【テーマコード(参考)】
3D054
【Fターム(参考)】
3D054CC11
3D054DD02
3D054DD28
3D054FF13
(57)【要約】
【課題】従来よりも小型化または部品点数の削減が可能なエアバッグ係留部材の解除機構を提供する。
【解決手段】エアバッグ係留部材の解除機構100は、ハウジング10と、ハウジング10内に嵌入される部分を有した筒状部材20と、筒状部材20内に嵌入される部分を有した点火器30と、ハウジング10と筒状部材20と点火器30とを保持するホルダ40と、エアバッグの膨張の調整に用いられるエアバッグ係留部材70と、を備えている。筒状部材20は、一端部に設けられた開口部を有した有底筒状部材であり、底部21と、筒状部22と、フランジ部23と、を備えている。底部21は、筒状部材20の他端部に設けられており、略中央部に形成された規制穴部21aを有している。規制穴部21aは、点火器30から発せられる火炎の広がりを規制することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアバッグの膨張の調整に用いられるエアバッグ係留部材の解除機構であり、
前記エアバッグ係留部材を通す一対の穴部が形成された第1筒状部と、前記第1筒状部の一端部に設けられた開口部と、前記第1筒状部の他端部に設けられた底部と、を有したハウジングと、
前記ハウジングの開口部から前記一対の穴部を閉塞しない状態で設けられ、前記ハウジングの内壁面と同形状の外壁面を有した第2筒状部と、前記第2筒状部の一端部に設けられた開口部と、前記第2筒状部の他端部に設けられた底部と、を有した筒状部材と、
前記筒状部材の内壁面と同形状の外壁面を有したカップ状部材を有し、前記カップ状部材の少なくとも先端部が前記筒状部材の一端部側に嵌入される点火器と、
前記ハウジングと、前記筒状部材と、前記点火器と、を保持するホルダと、
を備え、
前記筒状部材の底部に、前記点火器が作動時に発生する火炎の広がりを規制する規制穴部が形成されていることを特徴とするエアバッグ係留部材の解除機構。
【請求項2】
前記ハウジングの底部のうち前記規制穴部と対向する位置に、前記ハウジングの内部側に向けて窪んだ凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のエアバッグ係留部材の解除機構。
【請求項3】
エアバッグの膨張の調整に用いられるエアバッグ係留部材の解除機構であり、
前記エアバッグ係留部材を通す一対の穴部が形成された第1筒状部と、前記第1筒状部の一端部に設けられた開口部と、前記第1筒状部の他端部に設けられた底部と、を有したハウジングと、
前記第1筒状部の内壁面と同形状の外壁面を有した第2筒状部と、前記第2筒状部の一端部に設けられた開口部と、前記第2筒状部の他端部に設けられた底部と、を有した筒状部材と、
前記筒状部材の内壁面と同形状の外壁面を有したカップ状部材を有し、前記カップ状部材の少なくとも先端部が前記筒状部材の一端部側に挿入される点火器と、
前記ハウジングと、前記筒状部材と、前記点火器と、を保持するホルダと、
を備え、
前記筒状部材には、前記筒状部材の底部側に所定の厚みを有したヘッド部が形成されているとともに、前記ヘッド部より前記点火器側の外周または内周に脆弱部が形成され、
前記ヘッド部には、初期状態で前記一対の穴部の位置に対応して前記エアバッグ係留部材を通す貫通穴が形成され、
前記ヘッド部の先端部と前記ハウジングの底部との間には、前記点火器の作動時に前記脆弱部が破断した際に前記ヘッド部が移動する空間が形成されていることを特徴とするエアバッグ係留部材の解除機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の安全装置に用いられ、エアバッグの膨張の調整に用いられるエアバッグ係留部材の解除機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の乗員の保護の観点から、エアバッグ装置が普及している。このようなエアバッグ装置は、ハウジング内に配置され、展開時の火工残留物の外部放出を防止するために固有のシールを与えるように構成された開始装置と、当該開始装置の展開がカッターを作動するように開始装置と動作可能に接続されるカッターと、エアバッグ係留部材がカッターの作動によって解除されるまで係留部材を固定するように構成されるエアバッグ係留部材の解除機構と、を備えていることがある。ここで、エアバッグ係留部材の解除機構としては、例えば、下記特許文献1に挙げられるものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1においては、エアバッグ係留部材の解除機構の作動によって容易に係留部材を切断することができる。しかしながら、近年では、このような係留部材の解除機構について、さらなる小型化または部品点数の削減が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は、従来よりも小型化または部品点数の削減が可能なエアバッグ係留部材の解除機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1) 本発明は、エアバッグの膨張の調整に用いられるエアバッグ係留部材の解除機構であり、前記エアバッグ係留部材を通す一対の穴部が形成された第1筒状部と、前記第1筒状部の一端部に設けられた開口部と、前記第1筒状部の他端部に設けられた底部と、を有したハウジングと、前記ハウジングの開口部から前記一対の穴部を閉塞しない状態で設けられ、前記ハウジングの内壁面と同形状の外壁面を有した第2筒状部と、前記第2筒状部の一端部に設けられた開口部と、前記第2筒状部の他端部に設けられた底部と、を有した筒状部材と、前記筒状部材の内壁面と同形状の外壁面を有したカップ状部材を有し、前記カップ状部材の少なくとも先端部が前記筒状部材の一端部側に嵌入される点火器と、前記ハウジングと、前記筒状部材と、前記点火器と、を保持するホルダと、を備え、前記筒状部材の底部に、前記点火器が作動時に発生する火炎の広がりを規制する規制穴部が形成されていることを特徴とする。
【0007】
(2) 上記(1)のエアバッグ係留部材の解除機構は、前記ハウジングの底部のうち前記規制穴部と対向する位置に、前記ハウジングの内部側に向けて窪んだ凹部が形成されていることが好ましい。
【0008】
(3) 別の観点として、本発明は、エアバッグの膨張の調整に用いられるエアバッグ係留部材の解除機構であり、前記エアバッグ係留部材を通す一対の穴部が形成された第1筒状部と、前記第1筒状部の一端部に設けられた開口部と、前記第1筒状部の他端部に設けられた底部と、を有したハウジングと、前記第1筒状部の内壁面と同形状の外壁面を有した第2筒状部と、前記第2筒状部の一端部に設けられた開口部と、前記第2筒状部の他端部に設けられた底部と、を有した筒状部材と、前記筒状部材の内壁面と同形状の外壁面を有したカップ状部材を有し、前記カップ状部材の少なくとも先端部が前記筒状部材の一端部側に挿入される点火器と、前記ハウジングと、前記筒状部材と、前記点火器と、を保持するホルダと、を備え、前記筒状部材には、前記筒状部材の底部側に所定の厚みを有したヘッド部が形成されているとともに、前記ヘッド部より前記点火器側の外周または内周に脆弱部が形成され、前記ヘッド部には、初期状態で前記一対の穴部の位置に対応して前記エアバッグ係留部材を通す貫通穴が形成され、前記ヘッド部の先端部と前記ハウジングの底部との間には、前記点火器の作動時に前記脆弱部が破断した際に前記ヘッド部が移動する空間が形成されていることを特徴とするものであってもよい。
【0009】
上記(1)~(3)の構成によれば、従来よりも小型化または部品点数の削減が可能なエアバッグ係留部材の解除機構とすることができる。なお、部品点数の削減により、従来よりもコスト削減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るエアバッグ係留部材の解除機構を示す断面図である。
【
図2】
図1のエアバッグ係留部材の解除機構の動作後を示す断面図である。
【
図3】本発明の第2実施形態に係るエアバッグ係留部材の解除機構を示す断面図である。
【
図4】
図2のエアバッグ係留部材の解除機構の動作後を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係るエアバッグ係留部材の解除機構について図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1に示すように、本実施形態のエアバッグ係留部材の解除機構100は、ハウジング10と、ハウジング10内に嵌入される部分を有した筒状部材20と、筒状部材20内に嵌入される部分を有した点火器30と、ハウジング10と筒状部材20と点火器30とを保持(係止)するホルダ40と、エアバッグの膨張の調整に用いられるエアバッグ係留部材70と、を備えている。
【0013】
ハウジング10は、一端部に開口部を有した有底筒状部材であり、底部11と、筒状部12と、一対の穴部13と、フランジ部14と、を備えている。底部11は、ハウジング10の他端部に設けられており、後述の規制穴部21aと軸方向に対向する位置に、ハウジング10の内部側に向けて窪むように形成された凹部11aを有している。なお、凹部11aは必要に応じて形成するものである。また、一対の穴部13は、筒状部12に、エアバッグ係留部材70(たとえば、テザーなど)が貫通して設置可能なように設けられた部位である。フランジ部14は、後述する外側端部44によってホルダ40にかしめ固定されている。
【0014】
筒状部材20は、一端部に設けられた開口部を有した有底筒状部材であり、底部21と、筒状部22と、フランジ部23と、を備えている。底部21は、筒状部材20の他端部に設けられており、略中央部に形成された規制穴部21aを有している。規制穴部21aは、点火器30から発せられる火炎の広がりを規制することができる。筒状部22は、ハウジング10の筒状部12の内壁面と同形状の外壁面を有しており、ハウジング10の開口部側から一対の穴部13を閉塞しない位置まで筒状部12に嵌入されている。フランジ部23は、端部42によってホルダ40にかしめ固定されている。また、ハウジング10の底部11と、筒状部材20の底部21との間には、空間50が形成されている。
【0015】
点火器30は、点火部(図示せず)を覆うキャップ部材31と、前記点火部に接続され、所定量の電流が供給される一対の端子ピン32と、を備えている。この点火器30は、車両が衝突した際に当該車両に設けられた衝突検知手段(図示略)によって衝突が検知され、これに基づいて車両に設けられたコントロールユニットから端子ピン32を介して点火部に通電されることによって、作動する。
【0016】
また、点火器30は、ホルダ40の略中心部に形成された一対の穴部45に一対の端子ピン32が挿通された状態で、点火器30自身の中心軸とホルダ40の中心軸とが略合致した状態で、固定されている。また、キャップ部材31の先端部と、筒状部材20の底部21との間には、空間60が形成されている。
【0017】
ホルダ40は、略筒状であり、雌型コネクタ部41と、端部42と、穴部43と、外側端部44と、を備えた金属製の一体成型物である。なお、端部42は、フランジ部23をかしめ固定する前は略筒形状をしており、かしめ固定する際に押圧されて変形する。同様に、外側端部44は、フランジ部14をかしめ固定する前は略筒形状をしており、かしめ固定する際に押圧されて変形する。また、穴部43は、ホルダ40略中央部において、点火器30を嵌挿可能に形成されている。
【0018】
上述のような構成のエアバッグ係留部材の解除機構100において、点火器30の作動により生じた火炎は、規制穴部21aによって広がらないように規制され、集約される。そして、空間50内において、規制穴部21aによって集約された当該火炎を受けたエアバッグ係留部材70は溶断される(
図2参照)。このとき、エアバッグ係留部材70は、当該火炎とともに圧力波を受けて底部11側に押しやられるが、凹部11aによって底部11側への移動を制限される。これにより、エアバッグ係留部材70は、より集中的に当該火炎を受け、溶断されやすくなっている。そして、図示しないエアバッグは、エアバッグ係留部材70による膨張の調整(係留)から開放される。
【0019】
本実施形態によれば、エアバッグ係留部材70を通すための一対の穴部13の穴径以上の空間が必要なく、また、従来のようなハウジング10の軸方向に沿って加速度を与えるための距離が必要な移動部材(カッターなど)が設けられていないので、ハウジング10の軸方向長さを従来よりも短くできる。すなわち、本実施形態によれば、従来よりも小型化および部品点数の削減ができるエアバッグ係留部材70の解除機構を提供できる。なお、部品点数の削減により、従来よりもコスト削減が可能となる。
【0020】
また、本実施形態によれば、エアバッグ係留部材70が凹部11aによって移動を制限されるので、作動時の点火器30から、規制穴部21aを介して、より集中的に火炎を受け、溶断されやすくすることができる。
【0021】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態に係るエアバッグ係留部材の解除機構について説明する。なお、特に説明しない限り、上記第1実施形態と同様の部位には、下二桁が同じ符号を用いて、説明を省略することがある。
【0022】
図3に示すように、本実施形態のエアバッグ係留部材の解除機構200は、第1実施形態のハウジング10および筒状部材20の代わりに、ハウジング110および筒状部材120を用いている点で、第1実施形態と異なっている。
【0023】
ハウジング110は、一端部に開口部を有した有底筒状部材であり、底部111と、筒状部112と、一対の穴部113と、フランジ部114と、かしめ部115と、を備えている。底部111は、ハウジング110の他端部に設けられている。また、一対の穴部113は、初期状態において、後述する貫通穴124aと筒状部112との両方に、エアバッグ係留部材170(たとえば、テザーなど)が貫通可能なように設けられた部位である。かしめ部115は、ホルダ140の端部142をかしめ固定している部位である。
【0024】
筒状部材120は、ハウジング110の内壁面と同形状の外壁面と、一端部に設けられた開口部と、を有した有底筒状部材であり、底部121と、筒状部122と、フランジ部123と、ヘッド部124と、を備えている。
【0025】
筒状部122には、外周に環状の脆弱部122aが設けられている。脆弱部122aは、点火器130の作動時に受ける圧力波によって、破断するものである。なお、脆弱部122aは、筒状部122の内周に設けられていてもよい。
【0026】
ヘッド部124は、底部121のハウジング110の底部111側に設けられ、初期状態において、一対の穴部113に対応する位置に、エアバッグ係留部材170を通す貫通穴124aが形成されている。すなわち、
図3に示したように、初期状態において、一対の穴部113および貫通穴124aには、エアバッグ係留部材170が通された状態となっている。なお、貫通穴124aは、水平方向に対して斜めに形成されており、たとえば、
図3においては、エアバッグ係留部材170に対する剪断力を、右側の穴部113および貫通穴124aの右側部分に集中させることができるようになっている。
【0027】
ホルダ140は、第1実施形態のホルダ40と同様のものであるが、端部142がかしめ部115によってかしめ固定され、端部142によるフランジ部123のかしめ固定をより強固なものにしている。
【0028】
上述のような構成のエアバッグ係留部材の解除機構200において、点火器130が作動した場合、点火器130から発生した圧力波を底部121が受けることによって、脆弱部122aが破断し、底部121およびヘッド部124が空間150に移動し、ハウジング110の底部111によって受け止められる(
図4参照)。このとき、一対の穴部113と貫通穴124aとの協働により、エアバッグ係留部材170は剪断される(
図4参照)。そして、図示しないエアバッグは、エアバッグ係留部材170による膨張の調整(係留)から開放される。
【0029】
本実施形態によれば、作動時に移動する部材(ヘッド部124および底部121)が初期状態において筒状部122と分離されていない。すなわち、ヘッド部124および底部121は、点火器130の作動時に、脆弱部122aが破断し筒状部122から分離してから移動するものであるので、従来よりも部品点数の削減が可能であるとともに、組み立てやすいものとなる。これらにより、従来よりもコスト削減が可能となる。
【0030】
また、本実施形態によれば、点火器130の発生内圧を底部121に直接伝えるため、点火器130の出力または脆弱部122aの脆弱さ(径方向の厚み、材質など)を調整することで、上記のエアバッグ係留部材170を剪断するための力の調整が可能であるため、エアバッグ係留部材170の材質または形状自由度が高くなる。
【0031】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0032】
たとえば、第1実施形態において、底部21はフラットな平面部を有したものであったが、変形例として、先端が尖った山形などの形状であってもよい。
【符号の説明】
【0033】
10、110 ハウジング
11、111、21、121 底部
11a 凹部
12、22、112、122 筒状部
13、45、113、145 一対の穴部
14、23、114、123 フランジ部
20、120 筒状部材
21a 規制穴部
30、130 点火器
31、131 キャップ部材
32、132 端子ピン
40、140 ホルダ
41、141 雌型コネクタ部
42、142 端部
43、143 穴部
44、144 外側端部
50、60、150、160 空間
70、170 エアバッグ係留部材
100、200 解除機構
115 かしめ部
122a 脆弱部
124 ヘッド部
124a 貫通穴