(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140287
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】制御方法、プログラム及び記憶媒体
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/30 20120101AFI20230927BHJP
【FI】
G06Q50/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007031
(22)【出願日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2022045964
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢羽田 洋
(72)【発明者】
【氏名】廣田 智之
(72)【発明者】
【氏名】西 孝啓
(72)【発明者】
【氏名】遠間 正真
(72)【発明者】
【氏名】杉尾 敏康
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC42
(57)【要約】 (修正有)
【課題】車両または車両の利用情報を適切に管理する制御方法、プログラム及び記憶媒体を提供する。
【解決手段】鍵管理システムにおいて、制御方法を実行する鍵管理クラウドの演算部は、電子鍵が会社電子鍵かもしくは個人電子鍵かを判定する。電子鍵が会社電子鍵と判定すると、車両から取得した車両利用情報を会社保険クラウドへ送信する。そして、電子鍵が個人電子鍵と判定すると、車両から取得した車両利用情報を個人保険クラウドへ送信し、車両利用情報を会社保険クラウドへは送信しない。
【選択図】
図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の車両に関する車両情報と、前記複数の車両にそれぞれ対応する複数の電子鍵と、を管理する少なくとも1つのデータベースにアクセス可能な第1コンピュータにおける制御方法であって、
第1ユーザの第1端末から、ネットワークを介して、前記第1ユーザが利用可能な第1電子鍵と、前記第1ユーザが利用を要求している第1車両を特定するための第1車両IDと、を含む第1認証情報を受け取り、
前記第1電子鍵及び前記第1車両IDと、前記少なくとも1つのデータベースと、に基づいて、前記第1認証情報が有効であると判断した後、前記第1ユーザが前記第1車両を利用することを許可することを示す第1許可信号を、前記ネットワークを介して前記第1車両に送信し、
前記第1ユーザが前記第1車両の利用を開始した後、前記第1車両の利用状況を示す第1利用情報を、前記ネットワークを介して前記第1車両から取得し、
前記第1電子鍵が、前記第1ユーザの所属する第1事業体に紐づけられている第1会社鍵である場合に、前記第1利用情報の少なくとも一部を、前記第1事業体に関連する第2コンピュータに、前記ネットワークを介して送信し、
前記第1電子鍵が、前記第1ユーザの第1個人鍵である場合に、前記第1利用情報の前記少なくとも一部を、前記第2コンピュータに送信しない、
制御方法。
【請求項2】
前記第1端末において、前記第1会社鍵と、前記第1個人鍵と、を含む複数の第1電子鍵が記憶されており、
前記第1電子鍵は、前記第1端末において、前記複数の第1電子鍵の中から選択された1つであり、
前記第1許可信号は、前記第1車両のドアを開錠するための開錠指示を含む、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項3】
前記第2コンピュータは、前記第1事業体が第1自動車保険を契約している第1保険会社が利用するコンピュータである、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項4】
前記第1電子鍵が前記第1個人鍵である場合に、前記第1利用情報の少なくとも一部を、第3コンピュータに送信し、
前記第3コンピュータは、前記第1ユーザ個人が第2自動車保険を契約している第2保険会社が利用するコンピュータである、
請求項3に記載の制御方法。
【請求項5】
さらに、前記第1電子鍵が前記第1会社鍵である場合、
前記第1認証情報が有効であると判断した後に、前記第1事業体が前記第1保険会社と契約している保険についての確認を要求する第1確認要求を、前記ネットワークを介して前記第2コンピュータに送信し、
前記第2コンピュータにおいて、前記第1確認要求に基づいて、前記第1自動車保険の契約内容が確認されたことを示す第1確認結果を、前記ネットワークを介して前記第2コンピュータから受け取り、
前記第1確認結果を受け取った後に、前記第1許可信号を前記第1車両に送信する、
請求項4に記載の制御方法。
【請求項6】
さらに、前記第1電子鍵が前記第1個人鍵である場合、
前記第1認証情報が有効であると判断した後に、前記第1ユーザが前記第2保険会社と契約している保険についての確認を要求する第2確認要求を、前記ネットワークを介して前記第3コンピュータに送信し、
前記第3コンピュータにおいて、前記第2確認要求に基づいて、前記第2自動車保険の契約内容が確認されたことを示す第2確認結果を、前記ネットワークを介して前記第3コンピュータから受け取り、
前記第2確認結果を受け取った後に、前記第1許可信号を前記第1車両に送信する、
請求項5に記載の制御方法。
【請求項7】
前記第1電子鍵が前記第1会社鍵である場合、前記第1許可信号は、前記第1自動車保険の契約内容の少なくとも一部を示す第1保険情報を、前記第1車両の車室内に設けられたディスプレイに表示させる第1表示指示を含み、
前記第1電子鍵が前記第1個人鍵である場合、前記第1許可信号は、前記第2自動車保険の契約内容の少なくとも一部を示す第2保険情報を、前記ディスプレイに表示させる第2表示指示を含む、
請求項6に記載の制御方法。
【請求項8】
さらに、前記第1電子鍵が前記第1個人鍵であって、かつ、前記第1ユーザ個人が契約している自動車保険を特定できない場合、前記第1ユーザに推奨される自動車保険を示す推奨保険情報を、前記第1車両の車室内に設けられたディスプレイに表示させる表示指示信号を、前記ネットワークを介して前記第1車両に送信し、
前記第1ユーザが前記推奨される自動車保険に加入したことを示す第3の確認結果を、前記ネットワークを介して前記第1車両から受け取り、
前記第3の確認結果を受け取った後に、前記第1ユーザが前記第1車両を利用することを許可する、
請求項6に記載の制御方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つのデータベースは、さらに、
複数のユーザ、または、前記複数のユーザのそれぞれ所属する複数の事業体がそれぞれ契約している複数の保険会社に関する保険会社情報と、前記複数の保険会社がそれぞれ利用している複数のコンピュータのネットワーク上のアドレスを示すアドレス情報と、を管理しており、
前記第1電子鍵が前記第1会社鍵である場合、前記第1保険会社が利用する前記第2コンピュータの前記ネットワーク上のアドレスを示す第1アドレス情報は、前記第1会社鍵を前記少なくとも1つのデータベースに照合することによって特定され、
前記第1電子鍵が前記第1個人鍵である場合、前記第2保険会社が利用する前記第3コンピュータの前記ネットワーク上のアドレスを示す第2アドレス情報は、前記第1個人鍵を前記少なくとも1つのデータベースに照合することによって特定される、
請求項4に記載の制御方法。
【請求項10】
前記第1電子鍵が前記第1会社鍵である場合、前記第1認証情報は、前記第1保険会社が利用する前記第2コンピュータのネットワーク上のアドレスを示す第1アドレス情報をさらに含み、
前記第1電子鍵が前記第1個人鍵である場合、前記第1認証情報は、前記第2保険会社が利用する前記第3コンピュータの前記ネットワーク上のアドレスを示す第2アドレス情報をさらに含む、
請求項4に記載の制御方法。
【請求項11】
前記第2コンピュータは、前記第1事業体が利用する事業用コンピュータであり、
前記第1電子鍵が前記第1会社鍵である場合に前記第2コンピュータに送信される前記第1利用情報の前記少なくとも一部は、前記第1車両IDと、前記第1車両の位置情報を時刻情報に対応づけた第1移動履歴とを含む、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項12】
さらに、前記第1電子鍵が前記第1会社鍵である場合に、前記第1車両の制御モードを社用車モードに設定するための第1設定指示を、前記ネットワークを介して前記第1車両に送信し、
前記第1電子鍵が前記第1個人鍵である場合に、前記第1車両の前記制御モードを私用車モードに設定するための第2設定指示を、前記ネットワークを介して前記第1車両に送信する、
請求項11に記載の制御方法。
【請求項13】
前記社用車モードにおける第1出発地から第1目的地までの第1経路の第1走行距離が、前記私用車モードにおける前記第1出発地から前記第1目的地までの第2経路の第2走行距離に比べて長い、または、
前記第1出発地から前記第1目的地までを前記社用車モードで走行した場合にかかる第1走行時間が、前記第1出発地から前記第1目的地までを前記私用車モードで走行した場合にかかる第2走行時間よりも長い、
請求項12に記載の制御方法。
【請求項14】
前記社用車モードにおいて、前記第1車両の車室内に設けられたディスプレイ上に、前記第1ユーザに向けた第1広告情報が表示され、
前記私用車モードにおいて、前記ディスプレイ上に、前記第1ユーザに向けた第2広告情報が表示され、
前記第1広告情報の表示頻度、表示位置及び表示内容の少なくとも1つが、前記第2広告情報とは異なる、
請求項12に記載の制御方法。
【請求項15】
さらに、前記第1会社鍵を用いた前記第1車両の利用開始時において、前記第1車両に搭載されているバッテリーに蓄電されている第1蓄電量を示す第1バッテリー情報を、前記ネットワークを介して前記第1車両から取得し、
前記第1会社鍵を用いた前記第1車両の利用終了時において、前記バッテリーに蓄電されている第2蓄電量を示す第2バッテリー情報を、前記ネットワークを介して前記第1車両から取得し、
前記第1事業体が利用する前記事業用コンピュータ、または、前記第1事業体の決済手段を管理する金融機関が利用する金融用コンピュータに対して、前記第1蓄電量から前記第2蓄電量への変化量が反映された金額で、決済処理を実行する、
請求項11に記載の制御方法。
【請求項16】
さらに、前記第1会社鍵を用いた前記第1車両の利用開始時において、前記第1車両に搭載されているバッテリーに蓄電されている第1蓄電量を示す第1バッテリー情報を、前記ネットワークを介して前記第1車両から取得し、
前記第1会社鍵を用いた前記第1車両の利用終了時において、前記バッテリーに蓄電されている第2蓄電量を示す第2バッテリー情報を、前記ネットワークを介して前記第1車両から取得し、
前記第1事業体が利用する前記事業用コンピュータ、または、前記第1事業体の決済手段を管理する金融機関が利用する金融用コンピュータに対して、前記第1蓄電量及び前記第2蓄電量の少なくとも一方に反映された金額で、決済処理を実行し、
前記決済処理において、前記第1蓄電量が第1基準量以下の場合、または、前記第2蓄電量が第2基準量以上の場合において、前記金額を所定の金額から減額処理する、
請求項11に記載の制御方法。
【請求項17】
さらに、前記第1会社鍵を用いた前記第1車両の利用期間において前記第1車両に搭載されているバッテリーに対して第1充電器による充電操作が行われた後、前記第1充電器と、前記第1事業体が利用する前記事業用コンピュータ、または、前記第1事業体の決済手段を管理する金融機関が利用する金融用コンピュータとの間で決済処理が行われたことを示す第1決済報告を、前記第1充電器、前記事業用コンピュータ、または前記金融用コンピュータから前記ネットワークを介して受け取り、
前記第1決済報告を前記第1会社鍵と紐付けて、前記第1コンピュータのメモリに記録する、
請求項11に記載の制御方法。
【請求項18】
さらに、前記第1認証情報が有効であると判断した後に、前記第1車両に搭載されているバッテリーの充電履歴の情報に基づいて、前記バッテリーの蓄電量を示すインディケータを前記第1車両の車室内のディスプレイ上に表示させるための表示設定情報を、前記ネットワークを介して前記第1車両に送信し、
前記充電履歴は前記第1コンピュータのメモリ上に記憶されており、
前記第1電子鍵が前記第1会社鍵である場合、前記ディスプレイに表示される前記インディケータは、前記第1事業体が所有する第1蓄電量を示す第1オブジェクトと、前記第1事業体が所有しない他の蓄電量を示す第2オブジェクトとを含み、
前記第1電子鍵が前記第1個人鍵である場合、前記ディスプレイに表示される前記インディケータは、前記第1ユーザ個人が所有する第2蓄電量を示す第3オブジェクトと、前記第1ユーザが所有しない他の蓄電量を示す第4オブジェクトとを含む、
請求項1に記載の制御方法。
【請求項19】
請求項1から18のいずれか1項に記載の制御方法を前記第1コンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項20】
請求項1から18のいずれか1項に記載の制御方法を前記第1コンピュータに実行させるためのプログラムを記録した非一時的な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両と通信可能なコンピュータを制御するための制御方法、プログラム及び記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、車両の動作モードを通常モードからバレットモードに切り替える際に電子キーシステムの暗号鍵をバレットモード用暗号鍵に変更する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術ではさらなる改善が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様に係る制御方法は、複数の車両に関する車両情報と、複数の車両にそれぞれ対応する複数の電子鍵と、を管理する少なくとも1つのデータベースにアクセス可能な第1コンピュータにおける制御方法であって、第1ユーザの第1端末から、ネットワークを介して、第1ユーザが利用可能な第1電子鍵と、第1ユーザが利用を要求している第1車両を特定するための第1車両IDと、を含む第1認証情報を受け取り、第1電子鍵及び第1車両IDと、少なくとも1つのデータベースと、に基づいて、第1認証情報が有効であると判断した後、第1ユーザが第1車両を利用することを許可することを示す第1許可信号を、ネットワークを介して第1車両に送信し、第1ユーザが第1車両の利用を開始した後、第1車両の利用状況を示す第1利用情報を、ネットワークを介して第1車両から取得し、第1電子鍵が、第1ユーザの所属する第1事業体に紐づけられている第1会社鍵である場合に、第1利用情報の少なくとも一部を、第1事業体に関連する第2コンピュータに、ネットワークを介して送信し、第1電子鍵が、第1ユーザの第1個人鍵である場合に、第1利用情報の少なくとも一部を、第2コンピュータに送信しない。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、さらなる改善ができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の形態に係る鍵管理システムの全体構成の一例を示すブロック図。
【
図2】第1の形態に係る鍵管理システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図3】第1の形態に係る、所有者用の鍵発行の一例を示すフローチャート図。
【
図4】第1の形態に係る、一時利用者用の鍵発行の一例を示すフローチャート図。
【
図5】第1の形態に係る、開錠から施錠までの一例を示すフローチャート図。
【
図6】第1の形態に係る、鍵データの一例を説明する図。
【
図7】第1の形態に係る、鍵種別に応じて車両機能を設定する一例を示すフローチャート図。
【
図8】第1の形態に係る、鍵IDに応じて車両機能を設定する一例を示すフローチャート図。
【
図9】第1の形態に係る、所有者に対するカーナビゲーションシステムの画面表示の一例を示す図。
【
図10】第1の形態に係る、一時/共同利用者に対するカーナビゲーションシステムの画面表示の一例を示す図。
【
図11】第1の形態に係る、所有者に対するカーナビゲーションシステムの画面表示の一例を示す図。
【
図12】第1の形態に係る、一時/共同利用者に対するカーナビゲーションシステムの画面表示の一例を示す図。
【
図13】第1の形態に係る、所有者に対するコックピットの画面表示の一例を示す図。
【
図14】第1の形態に係る、一時/共同利用者に対するコックピットの画面表示の一例を示す図。
【
図15】第1の形態に係る、一時/共同利用者が利用中の車両での通知処理の一例を示すフローチャート図。
【
図16】第1の形態に係る、家族/一時/共同利用者が利用中の車両での通知処理の一例を示すフローチャート図。
【
図17】第1の形態に係る、共同利用者に対する利用通知の一例を示すフローチャート図。
【
図18】第2の形態に係る鍵管理システムの全体構成の一例を示すブロック図。
【
図19】第2の形態に係る鍵管理システムの構成の一例を示すブロック図。
【
図20】第2の形態に係る鍵管理システムの処理の一例を示すフローチャート図。
【
図21】第2の形態に係る、ユーザが会社電子鍵を用いて汎用のシェアリングカーである車両を社用目的で利用する際の利用開始から終了までのシーケンス図。
【
図22】第2の形態に係る、ユーザが個人電子鍵を用いて汎用のシェアリングカーである車両を私用目的で利用する際の利用開始から終了までのシーケンス図。
【
図23】第2の形態に係る、個人保険クラウドにより保険契約の有効性が確認できなかった場合のシーケンス図。
【
図24】第2の形態に係る、会社保険クラウドにおける保険料金の計算を説明するフローチャート図。
【
図25】第2の形態に係る、車両が利用される電子鍵の種別に応じて制御を自動変更することを示すフローチャート図。
【
図26】第2の形態に係る、個人電子鍵を用いて私用目的で利用した際の車両状況とその際のバッテリー蓄電量とを示した図。
【
図27】第2の形態に係る、会社電子鍵を用いて車両を利用する際のシーケンス図。
【
図28】第2の形態に係る、会社電子鍵を用いて車両を利用する際のシーケンス図。
【
図30】第2の形態に係る車両のバッテリー蓄電量を表示する一例を示す図。
【
図31】第2の形態に係る、利用開始時の情報端末の画面遷移を示した図。
【
図32】第2の形態に係る、利用終了時の情報端末の画面遷移を示した図。
【
図33】第2の形態に係る、車両利用中にコックピットを例示する図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(本開示に至る経緯)
我々の日常生活を取り巻く環境はますますデジタル化されてきている。例えば、多くの人が個人専用の情報端末であるスマートフォンを保有し、そのスマートフォンにユーザの健康管理を行うアプリケーション(以下、アプリケーションをアプリと呼ぶ)、他人とのコミュニケーションを行うソーシャルコミュニケーションアプリ、など様々なアプリをインストールして利用するようになった。
【0009】
本開示は、多様な情報処理能力がある情報端末であるスマートフォンと、スマートフォンで動作するアプリと、多様な情報を管理、提供する情報処理サーバ(以下、情報処理サーバをクラウドと呼ぶ)とを連携動作させることによって、健康な、幸福な、快適な、便利な、安心な、安全な、愉しい、経済的な、合理的な、生活ができるようにユーザを支援するための技術を開示していく。
【0010】
なお、本開示は、ここで用いられる制御方法に含まれる特徴的な各構成をコンピュータに実行させるプログラム、あるいはこのプログラムによって動作するシステムとして実現することもできる。また、このようなコンピュータプログラムを、SDカード等のコンピュータ読取可能な非一時的な記録媒体あるいはインターネット等の通信ネットワークを介して流通させることができるのは、言うまでもない。
【0011】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態で示される数値、形状、構成要素、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定するものではない。また、以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。また全ての実施の形態において、各々の内容を組み合わせることもできる。
【0012】
(第1の形態)
我々の社会は、今後もさらにインターネットが普及し、各種センサーが身近になることが予想される。これにより、我々の社会は、個人の内部状態及び活動等に関する情報から建造物及び交通網等を含む街全体の情報までもが、デジタル化されてコンピューターシステムで利用できる状態になっていくと予想される。デジタル化された個人に関するデータ(個人情報)は、通信ネットワークを介してビッグデータとして情報銀行などのクラウドサーバに安全に管理され、個人や社会のために様々な用途に利用されていく。
【0013】
このような高度情報化社会は、日本ではSociety5.0と呼ばれる。高度情報化社会は、個人を取り囲む物質世界である現実空間(フィジカル空間)とコンピュータ同士が連携してフィジカル空間に関する各種処理がなされる仮想空間(サイバー空間)とを高度に融合させた情報基盤(サイバーフィジカルシステム)により、経済発展と社会的課題の解決とが期待される社会である。
【0014】
そうした高度情報化社会では、個人が行う日常の様々なシーンでのコミュニケーション(情報の取得、提供及びその表現方法を含む)や行動を分析し、蓄積した個人情報を含むビッグデータを分析することで、そのシーンに応じた、その個人にとって最適と思われるコミュニケーションの方法にて、その個人に必要な情報やサービスを提供することが可能になる。
【0015】
以降では、そのようなサイバーフィジカルシステムが稼働する高度情報化社会において、様々なユーザが夫々の形態で車両を共有して利用する具体的な様態について説明していく。
【0016】
図1は、本開示の一形態に係る鍵管理システム100の全体構成の一例を示すブロック図である。ここではユーザAが所有する車両1を所有者であるユーザAと、利用者であるユーザBとが、別々に利用するとして説明する。車両1は4G、5Gと呼ばれるセルラー通信2などの無線通信規格を用いて広域通信網3であるインターネットに接続し各種情報にアクセスすることができる。また、Bluetooth(登録商標)や超広帯域無線通信規格であるUWB(Ultra Wide Band)などを用いて近距離のデバイスと近距離無線通信4をすることができる。さらに、車両1は車両1を利用することができる電子鍵を車両管理クラウド5からインターネットを経由して取得、更新することができる。
【0017】
ユーザAは情報端末6を所有しており、ユーザBは情報端末7を所有している。夫々の情報端末6、7には、車両1を利用するための電子鍵8、電子鍵9が保管されている。車両1を利用するために必要となる電子鍵8、9は、鍵管理クラウド10と情報端末6、7とがインターネットを経由して双方向に通信して生成、取得される。
【0018】
なお、本開示では、車両1の所有者であるユーザAが、他人であるユーザBに対して車両1を利用許可する場合には、ユーザAが鍵管理クラウド10で一時利用者用の電子鍵9を発行し、ユーザAがその電子鍵9をユーザBの情報端末7へ送信するとして説明するが、これに限られることはない。所有者であるユーザAの許諾のもとに、車両1を利用可能な電子鍵9をユーザBの情報端末7へ送信できる方法であれば、どのような方法であっても構わない。
【0019】
図2は、鍵管理システム100の構成の一例を示すブロック図である。情報端末6は、映像情報、音声情報、かつ/または周辺環境の物理量を取得するためのセンサー部601と、映像や音声を出力する映像音声出力部602、ユーザからのボタン押下やタッチ操作などを受け付ける操作部603、情報端末の中で行われる各種演算や情報描画などの情報処理を行う演算部604、演算部604が使うデータやファイルを保持するメモリ605及び通信ネットワーク上の他のコンピュータと通信を行うための通信部606を備える。
【0020】
鍵管理を行うアプリが情報端末6にインストールされると、情報端末6のメモリ605にプログラムと必要なデータが記録され、演算部604によってそのプログラムが実行される。なお、情報端末7のハードウェア構成も、この情報端末6のハードウェア構成と同様である。このため、情報端末7のハードウェア構成は、上記の情報端末6のハードウェア構成の説明を参照されたい。
【0021】
なお、情報端末6、7はスマートフォンとして説明するが、それに限られない。腕時計型のスマートウォッチ、眼鏡型のスマートグラス、指輪型のスマートリング、音声操作するスマートスピーカー、もしくは可動部も備えるロボットのような形態であっても良い。
【0022】
車両管理クラウド5は、通信ネットワーク上の他のコンピュータと通信を行うための通信部501、車両やユーザに関する情報やその管理プログラムを記録しているメモリ502、各種のデータ処理を行う演算部503とを備える。
【0023】
鍵管理クラウド10は、通信ネットワーク上の他のコンピュータと通信を行うための通信部1001、車両やユーザに関する情報やその管理プログラムを記録しているメモリ1002、各種のデータ処理を行う演算部1003とを備える。
【0024】
車両1は、車両1の移動や車室空間内の装置(座席など)を動かすための可動部101、車両周囲を照らす照明部102、車両周囲の人や車、さらに車室内の人や物の位置や状態を検知するためのセンサー部103、乗客に様々な映像音声情報を提供すると共に、乗客からタッチ操作や音声操作などの入力を受け付ける情報入出力部104、開錠する鍵を認証し、車両1のドアの施錠/開錠を制御する鍵制御部105、車両基幹システムや車両機能に関する各種処理を実行する演算部106、車両基幹システムのプログラムや鍵管理のデータベースを含む各種データを記録しているメモリ107、外部機器との無線通信を行う通信部108、運転席向けの空調、かつ/または車室全体向けの空調を設定する、また、車両に具備されたUSBポートへの給電の有無、最大電流量、サポートするUSB(Universal Serial Bus)規格のバージョンを設定する車室空間制御部109、とから成る。
【0025】
なお、車両管理クラウド5、鍵管理クラウド10、車両1、情報端末6、7は、広域通信網3のインターネットではない通信手段により、通信がなされても良い。例えば、車両1と情報端末6、7との間で行われる開錠処理については、近距離無線通信4が用いられても良い。
【0026】
(第一の実施形態)
ここからは、複数人で共有利用される車両1を複数の電子鍵を用いて利用する形態について説明する。
【0027】
図3は、所有者用の鍵発行の一例を示すフローチャート図である。ここでは、ユーザAの情報端末6には予め鍵管理を行うアプリがインストールされて、利用可能な状態になっているとして説明を行う。また、車両管理クラウド5は車両に対して暗号化された鍵データを送信、設定することを主目的としている。
【0028】
一方で、鍵管理クラウド10は電子鍵の管理機能サービスを車両1の所有者、利用者に対して提供することを主目的としている。これらのクラウドは別々のクラウドに実装されていても良いし、1つのクラウドに実装されていても良い。また、別々の事業者によって運営されていても良いし、1つの事業者が両方のクラウドを運営する形態であっても良い。
【0029】
まず、ユーザAは情報端末6(または、情報端末6にインストールされている鍵管理を行うアプリであっても良い、以下同様)を介して、所有者であるユーザA向けに鍵の生成を鍵管理クラウド10に対して依頼する(ステップS101)。この要求には、発行する鍵を利用するユーザ(ユーザA)を識別する情報であるユーザID、発行する鍵を利用する情報端末6を識別する情報である情報端末ID、発行する鍵の利用対象となる車両1を識別する情報である車両ID、発行する鍵の種別を指定する情報である鍵種別、発行する鍵の有効期間を示す有効期間とが含まれる。鍵種別については後段で説明する。
【0030】
この要求を受信した鍵管理クラウド10(または、鍵管理クラウド10で鍵管理を行うプログラムであっても良い、以下同様)は、受信した要求に従って新たな電子鍵の生成を車両管理クラウド5に対して要求する(ステップS102)。
【0031】
車両管理クラウド5は要求を受信すると、受信したユーザID、情報端末ID、車両ID、鍵ID、鍵種別、有効期間に対応する新たな鍵ID(該当の電子鍵を識別するための情報)、かつ/または、鍵認証関数(車両と情報端末との間での鍵認証に利用するハッシュ関数などを含む所定の計算を規定する情報)を生成し、1つの鍵に関連するデータセットとして扱う。
【0032】
さらに、それを車両管理クラウド5のメモリ502に記録されている鍵管理のデータベースに登録し、鍵管理のデータベースを更新する(ステップS103)。続けて、車両管理クラウド5は生成した鍵ID、かつ/または鍵認証関数を含む鍵データ(ユーザID、情報端末ID、車両ID、鍵ID、鍵種別、鍵認証関数、有効期間を含むデータセット、またはその一部)を鍵管理クラウド10へ送信する(ステップS104)。
【0033】
この鍵データを受信した鍵管理クラウド10は、鍵管理クラウド10のメモリ1002に記録されている鍵管理のデータベースを更新する(ステップS105)。続けて、鍵管理クラウド10は、鍵の生成を要求した情報端末6に対して鍵データを送信する(ステップS106)。情報端末6は、受信した鍵データを情報端末6のメモリ605に記録する(ステップS107)。
【0034】
車両管理クラウド5は鍵管理のデータベースが更新した後に、車両IDに対応する車両1(または、車両1で鍵管理を行うプログラム、または鍵管理のデータベースであっても良い、以下同様)に対して、追加された鍵データを送信する(ステップS108)。車両1はこれを車両1の通信部108にて受信し、車両1のメモリ107に記録されている鍵管理のデータベースを更新して保管する(ステップS109)。
【0035】
なお、車両管理クラウド5から車両1に対する鍵データの送信は、ここでは新たな電子鍵の追加であるが、本開示はこれに限らない。例えば、車両管理クラウド5は不適切な利用者が車両1を利用できなくなるように、車両1が現在保管している鍵管理のデータベースの内、不適切な利用者のユーザIDに関連する鍵データを全て破棄または利用不可にするコマンドを含むようにしても良い。
【0036】
このコマンドを受信した車両1は、車両1のメモリ107にある鍵管理のデータベースからユーザIDに関連する鍵データを全て破棄、または利用不可に設定する。利用不可に設定する処理とは、例えば、該当する鍵に対応する有効期間を、過去を示す値か、利用不可を示す値に設定することでなされても良い。これによって上記の不適切な利用者が、この車両をこれから利用できなくすることができる。
【0037】
図4は、一時利用者用の鍵発行の一例を示すフローチャート図である。この図において情報端末6、車両1、車両管理クラウド5、鍵管理クラウド10のデータ処理フローは
図3と類似しているため、異なる部分についてのみ説明する。またこの例は、ユーザAが所有する車両1を、ユーザBが一時利用するための鍵を発行する例として説明する。
【0038】
一時利用者であるユーザBが所有する情報端末7(または、情報端末7にインストールされている鍵管理を行うアプリであっても良い、以下同様)から、所有者であるユーザAの情報端末6に対して、ユーザBの鍵を生成するために必要な情報が送信される(ステップS201)。ここでは、新しい鍵を利用するユーザ(ユーザB)を識別する情報であるユーザIDと、発行する鍵を利用する情報端末(情報端末7)を識別する情報である情報端末IDが送信される。
【0039】
次に、情報端末6は、一時利用者であるユーザB向けに鍵の生成を鍵管理クラウド10に対して依頼する(ステップS202)。この要求には、受信したユーザBを識別する情報であるユーザIDと、情報端末7を識別する情報である情報端末IDに加えて、車両ID、鍵種別、有効期間とが含まれる。
【0040】
以下は、
図3と同様に鍵生成の処理(ステップS203、ステップS204、ステップS205、ステップS206、ステップS207、ステップS209及びステップS210)が進められ、情報端末6は、一時利用者であるユーザBのための鍵データを通信部606より受信し、メモリ605に記録されている鍵管理のデータベースを更新する(ステップS208)。
【0041】
情報端末6は、情報端末7に対してユーザB用に新規作成された鍵の鍵データ(ユーザBを示すユーザID、情報端末7を示す情報端末ID、車両1を示す車両ID、ユーザBのために新規発行された鍵を示す鍵ID、その鍵の鍵種別、その鍵の鍵認証関数、その鍵の有効期間を含むデータセット、またはその一部)を送信する(ステップS211)。情報端末7はこれを受信すると、情報端末7のメモリ605に鍵管理のデータベースとして保存、またはその内容を更新する(ステップS212)。
【0042】
なお、この例では一時利用者のユーザBを識別するユーザIDだけでなく、情報端末7を識別する情報端末IDも含めて鍵データとして関連付けて運用されている。これは、このユーザBを名乗る第三者が車両1を利用しようとしても、情報端末7でなければ車両1との認証が成功しないようにするためである。言い換えれば、鍵データが第三者に漏洩したとしても、情報端末7でしか利用できない鍵データであるため、車両1の不正利用を防ぐことができ、安全性を高めることが期待できる。
【0043】
図5は、開錠から施錠までの一例を示すフローチャート図である。この図では説明の都合上、所有者であるユーザAが情報端末6を用いて車両1を利用する場合をもとに説明するが、所有者以外を含むユーザ、所有者以外が所有する情報端末であっても開錠、施錠の処理は同じである。
【0044】
また、車両1の開錠操作は、ユーザAが情報端末6を携帯したまま運転席のドアノブを握ることとする。また、車両1の施錠操作は、車両が停車状態にある時に、ユーザAが情報端末6を携帯したまま降車し、車両1から一定距離以上離れることとする。これらの開錠/施錠操作は一例であって、これ以外の操作や状態で代替されても良い。
【0045】
ユーザAが情報端末6を携帯したまま車両1の運転席のドアノブを握ることで、車両1はユーザAが開錠操作を行ったと判定する(ステップS301)。ユーザAが運転席のすぐ近くにいることは、車両1の通信部108が、情報端末6から発信されたBluetooth(登録商標)電波の受信強度によって距離を推定したり、車両1の通信部108として複数個所に具備されたUWBアンテナにより人または情報端末6との距離を推定したり、車両1のセンサー部103として具備されたカメラによって運転席のドアの前にいる人を画像認識して個人識別したり、しても良い。また、車両1は、運転席のドアノブを人が握ったことを検知するためのセンサーを具備するようにしても良い。
【0046】
車両1は運転席のドアノブを握られたことを判定すると、運転席から所定距離内の通信デバイスに対して近距離無線通信4を用いて、鍵認証の要求を送信する(ステップS302)。この要求には車両IDと鍵認証関数への入力値(乱数など)が含まれていても良い。
【0047】
(鍵認証要求)
この要求を情報端末6が受信した場合には、情報端末6は要求に含まれる鍵認証関数への入力値を取得し、鍵認証関数に基づき演算(ステップS303)し、その結果を応答値としてユーザIDかつ/または情報端末IDと共に車両1に応答する(ステップS304)。
【0048】
(鍵認証応答)
車両1は送信した入力値と、返信された応答値と、返信されたユーザIDかつ/または情報端末IDとを、車両1のメモリ107に記録されている鍵管理のデータベースに基づいて照合し、正当な鍵データを持つ通信デバイスなのか、かつ/または、開錠操作を行ったのがどのユーザで、どの情報端末なのか、を判定する(ステップS305)。
【0049】
(鍵認証)
ここでは、車両1が運転席から所定距離内の通信デバイスに対して鍵認証関数への入力値を送信し、これを受信した情報端末6が鍵認証関数に基づいて演算した結果を車両1に返すことで、通信デバイスが正当な鍵データを持つかを検証し、開錠の可否判定を行うチャレンジ&レスポンス認証方式で説明したが、本開示はこれに限らない。
【0050】
例えば、車両1が鍵認証要求として鍵データ(ユーザID、情報端末ID、鍵ID、鍵種別、鍵認証関数、有効期間の全て、または一部)を要求し、それを受信した情報端末6が鍵データを返信し、車両1がその鍵データを車両1のメモリ107にて管理されている鍵管理のデータベースと照合することで、鍵認証を行うようにしても良い。
【0051】
鍵認証が成功した場合は、車両1は車両基幹システムを起動するプログラムをメモリ107から読み込み、演算部106にて実行させる(ステップS306)。これによって車両1が具備する各種装置の状態や各種計器の値が確認される。また車両1はドアを開錠する。鍵認証が失敗した場合は、車両1はドアを開錠せず、車両1を起動することもせず、ここで処理を終了して、
図5にある以降の処理は行わない。
【0052】
車両1は基幹システムを起動すると、開錠した鍵ID、または鍵種別、に応じて各種車両機能を自動で設定する(ステップS307)。ここではカーナビゲーションシステムの画面や、シートの位置/角度などが開錠した鍵IDに対する車両機能の設定情報に基づき設定される。この詳細は後に説明する。
【0053】
各種車両機能が利用可能な状態となって、運転手または乗客が行った各種車両機能への設定変更や、操作履歴は、上記の開錠した鍵IDと紐づけて車両1のメモリ107に記録、管理される(ステップS308)。これは次回の開錠時または車両起動時に自動的に設定を反映するためである。例えば、シートの位置をずらすと、車両1はその位置を鍵IDと関連付けてメモリ107に記録する。そして、次回その鍵IDで開錠、または車両起動された時には、車両1の演算部106は可動部101を介して、自動的にシートの位置を前回と同じ位置へ移動させる。
【0054】
このような個々の乗客の肉体的特徴や、思考や好みの傾向に合わせた設定項目は数多くあり、同じ車両を複数人で共有する場合には面倒だった。車両の鍵が物理的に同一であり、複数人で共有する場合にはこのような課題が解決できなかった。しかし、車両がシェアリングされる時代となった時には、電子鍵で他人の車両を利用できるようになると想像され、その際にその電子鍵が内包する情報を適切に設定、制御することで、車両の利用者を車両側が特定することも可能になってくる。そうなれば、その特定した利用者に応じて車室内の環境を、その利用者に応じて自動調整する機能を実現することができると考えられ、ユーザにとって認知されやすい利便性、快適性をもたらすと期待される。
【0055】
ここまでの処理は開錠時の車両動作であった。続けて、施錠時の車両動作を引き続き
図5を用いて説明する。車両1が停車状態にある時に、ユーザAが情報端末6を携帯したまま車両1から降車し、車両1から一定距離以上離れることで、車両1はユーザAが施錠操作を行ったと判定する(ステップS311)。ユーザAと車両1との距離は、先程のように無線通信を用いた受信電波強度や、複数アンテナでToF(Time of Flight)を利用した測距や、カメラの撮影映像を画像認識して推定する方法、さらにはこれらの組み合わせなどが考えられる。
【0056】
車両1は施錠操作であると判定すると、上記の開錠操作時と同様に、運転席から所定距離内の通信デバイスに対して近距離無線通信4を用いて、鍵認証の要求を送信する(ステップS312)。この要求には車両IDと鍵認証関数への入力値(乱数など)が含まれていても良い。
【0057】
(鍵認証要求)
この要求を情報端末6が受信した場合には、情報端末6は要求に含まれる鍵認証関数への入力値を取得し、鍵認証関数に基づき演算(ステップS312)し、その結果を応答値として車両1に応答する(ステップS313)。
【0058】
(鍵認証応答)
車両1は送信した入力値に対して返信された応答値と、返信されたユーザIDかつ/または情報端末IDとを、車両1のメモリ107に記録されている鍵管理のデータベースに基づいて照合し、正当な鍵データを持つ通信デバイスなのか、かつ/または、施錠操作を行ったのがどのユーザで、どの情報端末なのか、を判定する(ステップS314)。
【0059】
(鍵認証)
鍵認証が成功した場合は、車両1は停車状態から駐車状態へと各種車両機能を変更し、全てのドアを施錠して処理を終了する(ステップS315)。一方、鍵認証が失敗した場合は、車両1はドアを施錠せず、車両を停車状態から駐車状態へと変更させることもせず、処理を終了する。
【0060】
図6は、鍵データの一例を説明する図である。ここでは各端末にて管理される鍵管理のデータベースの内部データの種類とその内容について説明する。表の一行が1つの鍵データに対応し、これが複数集められたものをここでは鍵管理のデータベースと呼ぶ。この鍵管理のデータベースは上記の通り車両管理クラウド5、鍵管理クラウド10、各ユーザの情報端末、車両1のそれぞれのメモリ107にそれぞれの形式で必要な情報を含んで記録、管理されている。
【0061】
1つの鍵データは、ユーザID、情報端末ID、車両ID、鍵ID、鍵種別、鍵認証関数、有効期間、に関する情報から構成される。
【0062】
1つ目の鍵を例にとると、「ユーザID」の値によりこの鍵の所有者を示す。ここでは「A」の値を取り、所有者がユーザAであることを示す。「情報端末ID」の値によりこの鍵を保管している情報端末6を示す。ここでは「0001」の値を取り、情報端末6が「0001」の情報端末IDを持つ情報端末(情報端末6)であることを示す。「車両ID」の値によりこの鍵の対象となる車両を示す。ここでは「0010」の値を取り、対応する車両が「0010」の車両IDを持つ車両(車両1)であることを示す。「鍵ID」の値によりこの鍵を識別する。ここでは「0011」の値を取り、この鍵が「0011」の鍵IDを持つ鍵(ユーザAの電子鍵8)であることを示す。
【0063】
「鍵種別」の値によりこの鍵の種別を示す。ここでは「所有者」の値を取り、この鍵が車両IDの車両の所有者のものであることを示す。「鍵種別」は、該当する車両の所有者の鍵種別を示す「所有者」の値だけでなく、該当する車両の所有者の家族の鍵種別を示す「家族」の値、該当する車両の一時的な利用者の鍵種別を示す「一時利用者」の値、該当する車両を複数人、または複数組織で共同して利用する人の鍵種別を示す「共同利用者」の値、であっても良い。
【0064】
共同利用者の場合は、車両管理クラウド5は共同して利用するグループごとに異なる鍵IDを発行するようにしても良い。この
図6では、車両IDが「1100」の車両をD社社員とE社社員とで共同で利用している。これらの鍵の鍵種別は「共同利用者」で同じであるが、鍵IDの値がD社社員には「1001」、E社社員には「2001」と異なることで、利用するグループを識別することができる。
【0065】
「鍵認証関数」の値によりこの鍵が鍵認証要求時の入力値に対して、どのような鍵認証応答時の応答値を返すかが決定される。ここでは「f0011」の値を取り、この鍵に付与された鍵認証関数が「f0011」で特定される演算を行うものであることを示す。
【0066】
「有効期間」の値によりこの鍵が有効である期限を示す。ここでは「00000000-00000000」の値を取り、この鍵が無期限に利用できること、または、有効期間が設定されていないことを示す。鍵種別が「一時利用者」や、「共同利用者」である場合には、ここに有意な値が設定されることがある。この
図6の例では、鍵種別が「一時利用者」である鍵に対しては、有効期間の値が「20220209-20220210」と設定されている。これは年月日を示し、2022年2月9日から2022年2月10日までが有効期間であることを意味している。
【0067】
なお、ここでは年月日にて有効期間を表現しているが、本開示はこれに限らず、より詳細に時分秒の情報まで規定しても良いし、タイムゾーン情報を加えても良いし、他の表現形式が用いられても良い。
【0068】
「車両機能の設定」には、該当する鍵で車両が開錠、または起動された際に自動的に設定される項目と、設置する値が含まれる。この情報は鍵データの一部として含まれても、含まれなくても良いし、車両1のメモリ107に記録される鍵管理のデータベースだけに記録されるようにしても良い。この情報には、該当するユーザIDのユーザが運転席に座る時の運転席のシート位置や、カーナビゲーションシステムの履歴表示を許可するか否かといった多様な車両機能に関する設定情報が含まれている。この詳細については後述する。
【0069】
本開示の鍵管理システム100により車両を開錠するユーザの情報端末は、上記鍵データの全てまたは一部を用いて車両と鍵認証を行う。これらの鍵データがユーザごとに、またはユーザのグループ(家族や、D社社員など)ごとに異なることによって、車両を開錠、施錠したユーザを特定することができ、それによって、車両は設定された個別の挙動を実行することができるようになる。
【0070】
図7は、鍵種別に応じて車両機能を設定する一例を示すフローチャート図である。この処理は
図5の「鍵種別に応じた車両機能を設定」にあたる1ステップの処理の詳細である。この処理は車両1の演算部106にて実行され、演算部106からの指示に従って車両機能(鍵制御部105、可動部101、照明部102、情報入出力部104などを含む車両が具備する各種機能)が制御される。
【0071】
処理が開始されると、演算部106は車両を開錠した鍵の鍵種別から開錠者の種別を特定する(ステップS401)。そして開錠者の種別に応じて夫々の処理へ分岐する(ステップS402)。
【0072】
開錠者の種別が「所有者」または「家族」である場合には、車両1の演算部106は開錠に用いられた鍵の鍵IDに対応する設定情報を、車両1のメモリ107に記録された鍵管理のデータベースから読み込み、該当の設定情報に基づき車両機能を設定する(ステップS403)。ここの処理の詳細は
図8で説明する。
【0073】
次に、開錠者が車両機能に対して行った設定の変更や、操作の履歴を開錠に用いられた鍵の鍵IDと紐づけて、車両1のメモリ107に記録された鍵管理のデータベースに記録し、管理する(ステップS404)。さらに、家族が開錠した車両の現在位置が許可エリアの外である場合には、情報入出力部104に許可エリア外にいることを表示し、所有者の情報端末に対しても通知する(ステップS405)。この処理は
図16で説明する。以上で車両機能の設定処理を終了する。
【0074】
このように鍵IDと関連付けて車両機能の設定、操作履歴を記録しておくことで、この鍵IDの鍵の所有者(例えばユーザA)が次回乗車する際に体形や好みにあったシートや情報表示などのこれまで使っていた設定を自動的に反映させることが可能になる。
【0075】
また、異なる鍵IDを持つ他人(例えばユーザB)がこの車両を開錠して車両機能の設定を変更したとしても、その他人(ユーザB)の鍵IDの設定情報として記録、管理されるため、この鍵IDの鍵の所有者(ユーザA)が次回乗車した時に、再び設定し直すといった手間が無くなる。
【0076】
開錠者の種別が「一時利用者」である場合にも同様に、車両1の演算部106は、一時利用者の鍵IDに対する設定情報を、車両1のメモリ107にある鍵管理のデータベースから読み込み、該当の設定情報に基づき車両機能を設定する(ステップS406)。また、一時利用者の車両機能に対して行った設定の変更や、操作の履歴を開錠に用いられた鍵の鍵IDと紐づけて、鍵管理のデータベースに記録し、管理する(ステップS407)。
【0077】
加えて、一時利用者の鍵データの有効期間及び車両の現在位置に基づいて、一時利用者に車両返却を促したり、所有者に車両位置を通知する(ステップS408)。この処理は
図15、
図16で説明する。以上で車両機能の設定処理を終了する。
【0078】
開錠者の種別が「共同利用者」である場合にも同様に、車両1の演算部106は、共同利用者の鍵IDに対する設定情報を、車両1のメモリ107にある鍵管理のデータベースから読み込み、該当の設定情報に基づき車両機能を設定する(ステップS409)。また、共同利用者の車両機能に対して行った設定の変更や、操作の履歴を開錠に用いられた鍵の鍵IDと紐づけて、鍵管理のデータベースに記録し、管理する(ステップS410)。
【0079】
加えて、車両1の演算部106は、共同利用者のユーザID、かつ/または情報端末IDに基づいて、この共同利用者のスケジュールへのアクセス情報(例えば、接続先のURLとアカウント情報)を取得し、通信部108を介して共同利用者のスケジュールから目的地情報を取得する。演算部106はこの目的地情報を、車両1に具備されたカーナビゲーションシステムに目的地として登録し(ステップS411)、誘導を始める要求を行う。この要求を受けたカーナビゲーションシステムは車両1の現在位置から目的地までの誘導を開始する。以上で車両機能の設定処理を終了する。
【0080】
なお、ここでは共同利用者のユーザID、かつ/または情報端末IDに基づいてスケジュールへのアクセス情報を取得するとして説明したが、本開示はこれに限らない。所有者、家族、一時利用者、共同利用者のいずれにおいても、車両1の演算部106は通信部108を介して、各自の情報端末から目的地情報、さらにルート選択の条件(移動にかかる時間や費用、炭素排出換算量などの地球環境負荷の指標に対する要件)を取得し、カーナビゲーションシステムに目的地として設定させるようにしても良い。
【0081】
なお、この説明では鍵種別に基づいて処理を分岐させたが、本開示はこれに限らず、開錠者の種別が識別できるのであれば鍵種別以外の情報(例えば、鍵ID)に基づいて処理を分岐させるようにしても良い。
【0082】
なお、この説明では、開錠者が座る座席を運転席であると想定して説明した。しかし、開錠者が運転席でない席に座る場合でも同様に車両機能を設定しても良い。または、開錠者ではなく、運転者をドライバーモニタリングシステムなどが取得する顔画像や体格情報から特定し、その運転者の種別(所有者、家族、一時利用者、共同利用者)に応じて処理を分岐するようにしても良い。
【0083】
図8は、鍵IDに応じて車両機能を設定する一例を示すフローチャート図である。これは、
図5の「鍵種別に応じた車両機能を設定」ステップ(ステップS307)、
図7の分岐直後の処理である所有者または家族、一時利用者、共同利用者のそれぞれに対して行われる「鍵IDに対する設定情報を読み車両機能を設定」ステップ(ステップS403、ステップS406及びステップS409)の詳細である。
図7と同様に、この処理は車両1の演算部106にて実行され、演算部106からの指示に従って各種車両機能が制御される。
【0084】
まず、車両1の運転席のドアに近づいて開錠した開錠者、または車両1を開錠した開錠者、の鍵IDに対する設定情報を車両1のメモリ107に記録された鍵管理のデータベースから読み出す(ステップS501)。なお、これ以降では開錠者は運転者であるとして説明を行う。開錠者が運転者ではない場合、つまり後部座席に座ったり、自動運転車両で誰も運転しない場合には、運転席に座ったユーザをドライバーモニタリングシステムなどが個人特定した上で、このユーザが所有する鍵データを用いて、下記の処理を行うように変更しても良い。
【0085】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、運転席の座面シートの位置、座面部と背もたれ部、背もたれ部とヘッドレスト部の接続角度をそれぞれ設定するよう、可動部101に要求する(ステップS502)。これによって開錠者の体格に応じたシート設定が自動でなされる。
【0086】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、バックミラー、サイドミラーの角度、曲率を設定するよう可動部101に指示する(ステップS503)。また、車両後方、周囲を視認するためのモニター映像に映す対象範囲、ズーム倍率、を設定するよう情報入出力部104に要求する。これによって開錠者にとって見やすいミラーの設定が自動でなされる。
【0087】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、運転席向けの空調(温度、湿度、風量、風向、空気清浄機能の有無)、かつ/または車室全体向けの空調を設定するよう車室空間制御部109に要求する(ステップS504)。これによって開錠者の好みの空調設定が自動でなされる。
【0088】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、アクセルの踏み込み量に対する駆動出力の相関を含む走行モードを設定するよう可動部101に要求する(ステップS505)。これによって開錠者の好みの走行モード設定が自動でなされる。
【0089】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、車両の最高速度を設定するよう可動部101に要求する(ステップS506)。これによって開錠者に応じて車両がだせる最高速度を自動で制限することができる。鍵種別が一時利用者であって、車両の移動を伴わずに駐停車状態に限定して車室空間を貸し出すような場合には、最高速度を0Km/hに設定した上で一時利用者に鍵データを渡すようにしても良い。
【0090】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、車両の最大加速度を設定するよう可動部101に要求する(ステップS507)。これによって開錠者に応じて車両がだせる最大加速度を自動で制限することができる。
【0091】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、車両前方を照らす照明の天候に応じた点灯モード(濃霧時、降雪時にフォグランプを併用するか否か、など)、車両周辺照度に応じた点灯条件(どの照度まで下がると照明をONにするか、など)、点灯時の光量、照明角度(照明が照らす地面までの距離)を設定するよう照明部102に要求する(ステップS508及びステップS509)。これによって開錠者の好みの照明設定が自動でなされる。
【0092】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、車両に具備されたUSBポートへの給電の有無、最大電流量、サポートするUSB規格のバージョンを設定するよう車室空間制御部109に要求する(ステップS510)。これによって開錠者に応じたUSB給電設定が自動でなされる。鍵種別が一時利用者であって、車両1の移動を伴わずに駐停車状態に限定して車室空間を貸し出すような場合に、USBポートへの給電が許可された鍵であればUSB給電に対応したデバイスがその車室内で利用しやすくなるメリットがある。
【0093】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、コックピットを含む車室内モニターに表示される運転計器類を含む画面デザイン(計器類のデザインやレイアウト、表示される情報の内容やその表示形態)、ユーザーインターフェース(タッチ操作、音声操作、ジェスチャー操作の有効/無効など)を設定するよう情報入出力部104に要求する(ステップS511)。これによって開錠者の好みの情報表示設定が自動でなされる。
【0094】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、カーナビゲーションシステムを含む車室内モニターに表示されるルート関連情報の表示設定、目的地設定の履歴表示の有無を設定するよう情報入出力部104に要求する(ステップS512)。これによって開錠者の好みの表示形態でルート情報が自動で表示される。
【0095】
また、これによって一時利用者などに対して当該車両の所有者が過去に設定した目的地や、自宅の位置情報を表示させないなどのプライバシーに配慮した設定を自動で行うことができる。これは特にシェアリングされる車両利用に対して所有者や利用者の懸念となり易く、開錠した鍵に応じた自動制御がなされることが望ましい。
【0096】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、開錠者(運転者)から前方方向の空間、またはフロントガラスやヘッドアップディスプレイのような透明な板状表示部上に表示される運転支援情報の表示有無、表示モードを設定するよう情報入出力部104に要求する(ステップS513)。これによって開錠者の好みの運転支援情報設定が自動でなされる。
【0097】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、運転中の車両周囲及び車室内の映像音声を記録するドライブレコーダなどの記録データへのアクセス可否または再生可否を設定するよう情報入出力部104に要求する(ステップS514)。これによって開錠者が異なるドライブレコーダの映像を自動で視聴不可にすることができる。例えば、鍵種別が一時利用者の開錠者に、所有者が運転時のドライブレコーダの映像音声を視聴されるといったプライバシー問題を防ぐことができる。
【0098】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、運転中の車室内の映像音声、またはその解析から得られる分析データを記録するドライバーモニタリングシステムなどの記録データへのアクセス可否または再生可否を設定するよう情報入出力部104に要求する(ステップS515)。これによって開錠者が異なるドライバーモニタリングシステムの映像またはその分析データを自動で視聴または読み込み不可にすることができる。例えば、鍵種別が一時利用者の開錠者に、所有者が運転時のドライバーモニタリングシステムの記録データが視聴されるといったプライバシー問題を防ぐことができる。
【0099】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、運転中の車室内の映像音声、またはその解析から得られる分析データを記録する乗客モニタリングシステムなどの記録データへのアクセス可否または再生可否を設定するよう情報入出力部104に要求する(ステップS516)。これによって開錠者が異なる乗客モニタリングシステムの映像またはその分析データを自動で視聴または読み込み不可にすることができる。例えば、鍵種別が一時利用者の開錠者に、所有者が運転時の乗客モニタリングシステムの記録データが視聴されるといったプライバシー問題を防ぐことができる。
【0100】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、運転関連情報だけでなく、運転に関係のない娯楽コンテンツも楽しむようなインフォテインメントシステムに自動でログインできる設定を情報入出力部104に要求する(ステップS517)。これによって開錠者が好みの情報表示設定が自動でなされる。例えば、これによって、開錠者が乗車するとすぐにインフォテインメントシステムに開錠者が契約している動画配信サービスのトップメニュー画面が表示されるといったことが実現できる。
【0101】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、車両に走行が困難となるような重大な異常があると判断された場合、または車両が事故に巻き込まるなどの緊急事態が発生したと判断される場合に備えて、緊急連絡を行う連絡先を設定するよう情報入出力部104に要求する(ステップS518)。これによって異常時または緊急時と判断された時に自動で緊急連絡がなされる。緊急連絡を行う連絡先は、車両保険会社、車両販売会社、警察署、消防署、開錠者が指定する連絡先の内、少なくとも1つを含む。
【0102】
なお、車両1の演算部106は、これらの異常時または緊急時と判断した際に、ドライブレコーダ、ドライバーモニタリングシステム、乗客モニタリングシステムなどの車室内状態をセンシングするデバイスに対して、乗客の安否確認や状態確認を行わせるようにしても良い。また、このセンシングデータや分析データを上記の緊急連絡に含めるようにしても良い。例えば、事故を起こしたと判断した際に、その事故直前から直後の車両内外の映像や、運転手や乗客の生命活動情報をセンシングした結果(心拍数、呼吸数、体温、血圧など)を車両位置情報と共に消防署に通知することで、消防署や関連機関が迅速な対応をとることが可能となる。
【0103】
車両1の演算部106は、開錠者が用いた鍵の鍵IDに対する設定情報に基づいて、自動運転時に適用する運転ポリシーを設定するように可動部101に要求する(ステップS519)。これによって開錠者が好みの自動運転制御を自動で設定することができる。自動運転時の運転ポリシーには、道路区間ごとの速度制限に対する運転速度の基準、加速制御、減速制御、左折/右折時の車両制御、車間距離、車線変更の条件、車両周辺の移動体(人、自転車など)の通行優先度合い、の少なくとも1つが含まれる。
【0104】
図9及び
図11は、所有者に対するカーナビゲーションシステムの画面表示の一例を示す図である。
図10及び
図12は、一時利用者または共同利用者に対するカーナビゲーションシステムの画面表示の一例を示す図である。これは、
図5の「鍵種別に応じた車両機能を設定」ステップ(ステップS307)、
図7の分岐直後の処理である所有者または家族、一時利用者、共同利用者のそれぞれに対して行われる「鍵IDに対する設定情報を読み車両機能を設定」ステップ(ステップS403、ステップS406及びステップS409)が実行され、車両1の演算部106から情報入出力部104(のカーナビゲーションシステム)の設定が鍵種別かつ/または鍵IDに応じて変更された後の画面表示の一例を示している。
【0105】
図9は、所有者のカーナビゲーションシステムに車両周辺のマップを表示している画面である。ここで、画面左端にある13.2Km、15:21着という表示は、目的地まで13.2Kmあり、目的への到着予定時刻が15:21であることを示している。ここで距離の単位はmが用いられている。また、車両周辺のマップの縮尺が画面左端に800mとして表示されており、マップの拡大/縮小のユーザーインターフェースは、「広域」または「詳細」を指でタッチする方式が使われている。
【0106】
一方、
図10のシーンは
図9と同じであるが、一時利用者、または共同利用者の鍵種別(または鍵ID)にて車両を開錠した(または車両基幹システムを起動した)場合の画面表示の一例である。
図9と
図10との相違点は、目的までの距離が13.2Kmではなく8.2Mileと単位が異なること、15:21着ではなく15:21ETAと言語が異なること、マップの拡大/縮小のボタンが「広域」と「詳細」ではなく、「-」と「+」とマークを用いることで言語依存性が異なること、マップの縮尺が800mではなく100mと縮尺が異なること、である。マップの縮尺が変わったため、
図10ではズームアップされて車両周辺の詳細地図が表示されている。
【0107】
図9と
図10とのカーナビゲーションシステムの画面表示の設定の違いは、開錠した鍵の鍵種別(または鍵ID)の違いである。このように開錠した鍵の鍵種別(または鍵ID)に応じて、所有者であれば日頃から使っている設定に応じてマップが表示され、一時利用者や共同利用者であればデフォルトの設定に応じてマップが表示される。
【0108】
また、マップ表示の設定が変更された場合であっても、その変更は、設定を変更した開錠者自身の鍵の鍵IDと関連付けて鍵管理のデータベースに記録される仕組みであるため、他の鍵IDが異なる利用者には影響を及ぼさない利点がある。
【0109】
図11は、所有者に対するカーナビゲーションシステムの画面表示の一例を示す図である。この画面はカーナビゲーションシステムの利用履歴である目的地設定の履歴を表示している。この履歴画面は画面下部の「MENU」ボタンを選択し、「目的地の履歴」ボタン(図示なし)を選択することで表示することができる。
【0110】
この
図11の例では、目的地の履歴として、所有者が何時、どこを目的地または経由地として設定したかがリスト表示される。そのため所有者は過去の自分の利用履歴にある同一の目的地を容易に選択することができる。
【0111】
図12は、一時/共同利用者に対するカーナビゲーションシステムの画面表示の一例を示す図である。この画面は
図11と同様の操作で表示することができる。
【0112】
この
図12の例では、目的地の履歴として、開錠をした一時利用者または共同利用者が何時、どこを目的地または経由地として設定したかがリスト表示される。自分の履歴でない部分は表示されない、または「*****」とアスタリスクで内容が分からないように表示される。そのため一時利用者または共同利用者は過去の自分の利用履歴にある同一の目的地を容易に選択することができる。
【0113】
図11と
図12とのカーナビゲーションシステムの画面表示の設定の違いは、開錠した鍵の鍵種別(または鍵ID)の違いである。このように開錠した鍵の鍵種別(または鍵ID)に応じて、所有者であれば日頃から使っている所有者の履歴が表示され、一時利用者や共同利用者であれば全ての履歴が表示されないようにしたり、自分の履歴だけが表示される。このようにして開錠した鍵の鍵種別(または鍵ID)に応じて、カーナビゲーションシステムの利用履歴に関する情報の表示を切り替えることで、自分の利用履歴を他人に知られることをなくし、プライバシーを守ることができる。この機能は車両1を他人と共有する場合に特に有用となると思われる。
【0114】
図13は、所有者に対するコックピットの画面表示の一例を示す図である。
図14は、一時/共同利用者に対するコックピットの画面表示の一例を示す図である。これは、
図5の「鍵種別に応じた車両機能を設定」ステップ(ステップS307)、
図7の分岐直後の処理である所有者または家族、一時利用者、共同利用者のそれぞれに対して行われる「鍵IDに対する設定情報を読み車両機能を設定」ステップ(ステップS403、ステップS406及びステップS409)が実行され、車両1の演算部106から情報入出力部104(のコックピットシステム)の設定が鍵種別かつ/または鍵IDに応じて変更された後の画面表示の一例を示している。
【0115】
図13は、所有者のコックピット画面である。上側にはセンサー部103(の1台以上のリアカメラ)からの映像を視認し易いように加工した車両後方の高視野角映像、左下側にはガソリンまたはバッテリー残量と現在の車速、さらに右下側には車両周辺のマップとルートが表示されている。これらは所有者が個別に設定した表示デザインである。
【0116】
図14は、一時利用者または共同利用者のコックピット画面である。左下側にガソリンまたはバッテリー残量と、左側中央にスピードメーター、右側中央にタコメーターが表示されている。これらは一時利用者または共同利用者向けにデフォルトで設定されている表示デザインである。
【0117】
図13と
図14とのコックピットシステムの画面表示の設定の違いは、開錠した鍵の鍵種別(または鍵ID)の違いである。このように開錠した鍵の鍵種別(または鍵ID)に応じて、所有者であれば日頃から使っている所有者が設定したコックピットの表示デザインで運転計器などが表示され、一時利用者や共同利用者であればデフォルトの表示デザインで運転計器などが表示される。このようにして開錠した鍵の鍵種別(または鍵ID)に応じて、コックピットシステムに表示する情報、その表示形態を切り替えることで、自分の好みに合わせつつも、他人が運転する際には影響させないようにすることができる。
【0118】
図15は、一時利用者または共同利用者が利用中の車両1に関する通知処理の一例を示すフローチャート図である。この例では、車両1の所有者(ユーザA)が所有する情報端末を情報端末6し、車両1を一時利用または共同利用するユーザ(ユーザB)が所有する情報端末を情報端末7として説明する。この処理は、
図7の一時利用者に対して行われる「一時利用者の鍵の有効期間、車両現在位置に基づき一時利用者、所有者に通知」のステップの具体的処理の一例を示している。
【0119】
なお、
図7において、共同利用者に対する処理においてこのステップは図示されていないが、共同利用者に対しても一時利用者と同様に適用することが可能である。
【0120】
また、ここでは一時利用者が車両を借用開始する予定日時を借用予定日時、返却する予定日時を返却予定日時とする。借用予定日時及び返却予定日時は、一時利用者または共同利用者の鍵データの1つとして扱われる(
図6で図示せず)。一時利用者または共同利用者の所有する鍵の有効期間は、この借用予定日時と返却予定日時が示す時間を含むように設定されている。例えば、有効期間の開始日時は借用予定日時と同じであり、有効期間の終了日時は返却予定日時に所定時間(例えば、3時間や、24時間)を加えた時間に設定されるようにしても良い。
【0121】
車両1の演算部106は、現在日時と開錠に用いられた鍵に設定された返却予定日時に基づき、残利用時間を取得する(ステップS601)。さらに、車両1の現在位置、車両1を返却すべき位置を示す返却位置に基づいて現在位置から返却位置までの移動にかかる移動推定時間を計算、または外部サービスと通信部108を介して連携することによって取得する(ステップS602)。残利用時間が移動推定時間よりも大きい場合は、車両1の返却が返却予定日時までになされるとして再び、上記ステップS601の処理に戻る(ステップS603:Yes)。残利用時間が移動推定時間よりも大きくない場合は、車両1の返却が遅くなる可能性があるとして次の処理に進む(ステップS603:No)。
【0122】
車両1の返却が返却予定日時よりも遅くなる可能性があることを検知した車両1の演算部106は、車両1を利用している一時利用者、または共同利用者(ユーザB)に対して、車両の返却を促すメッセージを車両1の情報入出力部104を介して利用者に通知する(ステップS604)。例えば、情報入出力部104の1つであるコックピットシステムにその旨を表示させることが考えられる。
【0123】
さらに、車両1の演算部106は、現在利用しているユーザBの所有する情報端末7(現在利用中の鍵の情報端末IDにより特定される)に対して、車両1の通信部108を介して車両1の返却を促すメッセージを送信する。これにより、情報端末7はこのメッセージを受信し、情報端末7の映像音声出力部602を介してその所有者であるユーザBに返却を促すことができる(ステップS605)。
【0124】
車両1の演算部106は、返却予定日時に返却されないリスクがあるために、所有者(ユーザA)の情報端末(情報端末6)に対して、車両1の現在位置を通信部108を介して通知する(ステップS606)。この通知を受信した情報端末6は、映像音声出力部602を介してその所有者であるユーザAに、現在の車両位置情報を通知する(ステップS607)。この車両位置情報は
図16で説明するようにプライバシーに配慮されるように加工されてから通知されるようにしても良い。車両1が返却されるまで、現在の車両1の利用者(ユーザB)に対する返却を促すメッセージと、車両1の所有者(ユーザA)に対する車両1の現在位置情報とがそれぞれ通知され続ける(車両1が返却されたかの分岐処理でステップS608:No)。
【0125】
なお、本開示はこれに限らず、所有者(ユーザA)への車両現在位置の通知は、返却予定日時を超過しても車両1が返却されてない場合にのみ、車両1の演算部106から通信部108を介してなされるようにしても良い。
【0126】
車両1が返却されると(車両1が返却されたかの分岐処理でステップS608:Yes)、車両1の演算部106は、この利用者の鍵において移動した総距離とルート情報、さらに実際の利用開始から終了までの総利用時間とを集計し、通信部108を介して、鍵管理クラウド10へ送信する(ステップS609)。鍵管理クラウド10は、これを受信し、利用料金体系に準じて利用料金を計算する(ステップS610)。そして、車両1の所有者(ユーザA)に車両1を貸し出した対価を別途計算し、支払う(ステップS612)。
【0127】
さらに、この支払いに関する詳細を情報端末6に対して送信する。情報端末6はこの支払いに関する詳細を映像音声出力部602に表示する(ステップS613)。これによって所有者(ユーザA)が車両1の貸し出しに対する対価を確認する。
【0128】
さらに、鍵管理クラウド10は、車両1を利用した利用者(ユーザB)から利用料金を徴収する(ステップS614)。さらに、利用者(ユーザB)の情報端末(情報端末7)に対して、利用料金の通知を送信する。情報端末7はこの利用料金に関する通知を映像音声出力部602に表示する。これによって利用者(ユーザB)が車両1の利用に対する利用料金を確認する。
【0129】
なお、鍵管理クラウド10のメモリ1002には、車両の所有者、利用者の決済情報(例えば、電子決済サービスでのユーザ識別情報、クレジットカード情報など)がそれぞれ記録、管理されているとする。
【0130】
図16は、家族/一時/共同利用者が利用中の車両1での通知処理の一例を示すフローチャート図である。この処理は、
図7の「所有者が乗車していない場合に車両現在位置が許可エリア外であれば、家族、所有者に通知」のステップ(ステップS405)の具体的処理の一例を示している。
【0131】
なお、
図7において、一時利用者または、共同利用者に対する処理においてこのステップは図示されていないが、一時利用者、共同利用者に対しても家族と同様に適用することが可能である。また、許可エリアは移動が許可されたエリア情報を示し、鍵種別が、家族、一時利用者、または共同利用者の鍵データの1つとして扱われる(
図6で図示せず)。
【0132】
ここでは、車両1の所有者であるユーザAの情報端末を情報端末6とし、車両1の利用者の情報端末を情報端末7として説明する。
【0133】
車両1の演算部106は、開錠に用いられた鍵の鍵種別が「家族」か、「一時利用者」か、「共同利用者」か、または、開錠に用いられた鍵のユーザIDまたは鍵IDが子供や高齢者の鍵を示す場合に以下の処理を行う。
【0134】
まず、車両1の演算部106は、車両1の現在位置を取得する(ステップS701)。そして、その現在位置が該当する利用者に対する許可エリア内であるかを判定する。許可エリア内であれば上記ステップS701の処理へ戻る(ステップS702:Yes)。一方で、許可エリア内でない場合は次の処理に進む(ステップS702:No)。
【0135】
車両1の演算部106は、車両1の利用者に対して許可エリア内での利用を促すメッセージを情報入出力部104に表示する(ステップS703)。例えば、情報入出力部104の1つであるコックピットシステムにその旨を表示させることが考えられる。さらに、車両1の演算部106は、現在利用しているユーザBの所有する情報端末7(現在利用中の鍵の情報端末IDにより特定される)に対して、車両1の通信部108を介して許可エリア内での利用を促すメッセージを送信する。
【0136】
これにより、情報端末7はこのメッセージを受信し、情報端末7の映像音声出力部602を介して(ステップS704)、その所有者であるユーザBに許可エリア内での利用をを促すことができる。
【0137】
さらに、車両1の演算部106は、車両1の所有者であるユーザAの情報端末6に対して、現在使われている鍵の鍵IDと、車両1の現在位置情報とを通信部108を介して送信する(ステップS705)。情報端末6は、これを受信し、映像音声出力部602に車両1の利用者(鍵IDから、または鍵IDに対応するユーザID、情報端末IDから特定)と現在位置情報を表示する(ステップS706)。これによりユーザAが利用者と車両1の現在位置を知る。
【0138】
なお、ここで、車両1は現在位置情報を通知するとしたが、特にシェアリングカーである場合などでは、不特定な利用者(一例として、ユーザB等)のプライバシー保護が問題となる場合がある。そのため、車両1は現在位置情報の解像度を下げて、情報端末6へ送信するようにしても良い。
【0139】
例えば、車両1の現在位置である都道府県や市町村といった一定の大きさを持つエリア単位で大まかに表現しても良いし、位置情報ではなく返却予定場所までの予想移動時間(単位は1時間単位、10分単位、1分単位などでも良い)によって表現しても良いし、返却予定場所までの予想移動距離(単位は10Km単位、1Km単位などでも良い)によって表現するようにしても良いし、または、定量的に示さなくても良い。
【0140】
例えば、まだまだ時間がかかる、まだまだ遠い、1時間以上かかる、1時間以上かかる距離、およそ2時間以内、およそ2時間以内で移動できる距離、などの現在位置が特定できないように解像度を落とした表現で代替しても良い。
【0141】
車両1の演算部106は、車両1が移動中か、または利用者が車内にいることをセンサー部103で検知している間は、上記処理を繰り返し行う(ステップS707:Yes)。車両が移動中でない場合、または駐車状態となり施錠された場合(ステップS707:No)には、この処理を終了する。
【0142】
この
図16の処理は、上記説明の通り、家族、一時利用者、共同利用者、子供、または高齢者が利用する車両1が許可エリアを超えて移動する場合に、所有者に通知がいくための処理である。例えば、この車両が自動運転車両である場合に、子供や高齢者が所有者の想定外の遠くまで、または危険な地域に、移動していることを知ることができるようになる。または、一時利用者や共同利用者が、予め定められた移動エリアを超えて移動していることを知ることができるようになる。
【0143】
図17は、共同利用者に対する利用通知の一例を示すフローチャート図である。共同利用者の場合、
図6で示したように、同一の車両(車両IDが「1100」)をD社社員とE社社員のように複数のグループが利用することが考えられる。このような共同利用は、複数のグループが車両の維持費用を分け合うことができて経済合理性が高いが、利用度合いに応じて課金する体系を運用しようとするとその管理が面倒となる。
【0144】
この例では、鍵データの鍵ID(または、ユーザID、情報端末ID、鍵種別など)を用いて、共同利用される車両の維持費をそのグループごとの利用度合いに応じて分割する方法を考える。共有車両11(車両IDが「1100」)を情報端末12(情報端末IDが「1001」)を用いてユーザD(ユーザIDが「D」)が利用する処理を説明する。
【0145】
ここでのユーザD、情報端末12、共有車両11の間でなされる処理は、
図5で説明したユーザA、情報端末6、車両1の間でなされる処理と同一であるので、異なる部分を中心に説明する。なお、共有車両11のハードウェア構成は、上述した車両1のハードウェア構成と同様である。このため、共有車両11のハードウェア構成は、上記の車両1のハードウェア構成の説明を参照されたい。
【0146】
共有車両11の演算部106は、ユーザDによる開錠が成功した直後に、ユーザD(情報端末12)により開錠され利用が開始されたことを示す利用通知(開錠)を、通信部108を介して鍵管理クラウド10へ送信する(ステップS809)。これがユーザD、またはD社、による共有車両11の利用開始として扱われる。
【0147】
共有車両11の演算部106は、ユーザDによる施錠が成功した直後に、ユーザD(情報端末12)により施錠され利用が終了したことを示す利用通知(施錠)を、通信部108を介して鍵管理クラウド10へ送信する(ステップS817)。これがユーザD、またはD社、による共有車両11の利用終了として扱われる。
【0148】
鍵管理クラウド10は、鍵IDに対するこの利用履歴情報を記録する(ステップS818)。さらに、鍵管理クラウド10は所定の時間単位(例えば、1ヵ月に1回)で契約しているグループ(この例ではD社)ごとに利用履歴を累計し、その利用料金を計算し、そのグループに対して利用料金を請求する(ステップS819)。
【0149】
このように、1台以上の車両1を1以上のグループで共同利用する際に、それぞれのグループごとの利用履歴に応じて利用料金を計算することが、鍵管理クラウド10で鍵ごとの利用状況を取得することにより簡易化され、正確になる。
【0150】
なお、鍵IDに応じて車両機能を設定する例を示したが、鍵IDの代わりに顔認証を用いてもよい。所有者、家族、一時利用者、共同利用者の顔データを予めサーバ、または、車両に搭載されているメモリに保存する。運転席付近に設置されたドライバーモニタリングセンサーにより、開錠者の顔情報を取得し、サーバ、または、車両1に搭載されているメモリ107に保存されている顔データとの照合を行うことで、開錠者が所有者、家族、一時利用者、共同利用者のいずれなのか判断し、開錠者の好みに合った車両機能を設定する構成としてもよい。顔認証にて車両機能を設定する場合には、情報端末に代えて、物理的な鍵を用いて開錠を行ってもよい。
【0151】
また、車内の乗員を識別するための車内モニタリングセンサーにより、開錠者以外の乗員の顔情報を取得し、サーバ、または、車両1に搭載されているメモリ107に保存されている顔データの照合を行うことで、それぞれの座席の乗員を特定し、それぞれの乗員に応じて車両機能を設定する構成としてもよい。
【0152】
車内モニタリングセンサーは、ルームミラー付近に設置されてもよいし、天井の中心付近に設置してもよい。また、例えば、後部座席の場合は、前部座席の背もたれの後ろ側またはヘッドレストの後ろ側に設置するなど、各座席から見た場合の正面付近に車内モニタリングセンサーを設置してもよい。
【0153】
また、顔認証による照合が取れない場合には、所有者、家族、一時利用者、共同利用者のいずれでもないと判断し、車両機能を所定のデフォルト設定としてもよいし、所有者の情報端末に顔データの登録がない利用者が乗車している旨のアラート通知を行ってもよい。
【0154】
鍵管理システム100は、車両1の鍵を物理鍵から電子鍵に移行するだけでなく、ユーザごとに車両機能の設定ができることで、自分の好みの車両機能の設定を複数人が共有する車両に対して記録し、復元することができる。また、一時的な車両利用者に対して、貸出期間や移動許可エリアを守るための仕組みが導入されることで、第三者との車両共有トラブルを未然に防ぐ効果も期待できる。車両が所有から共有へと新たな利用形態へと広がる中で、本開示の鍵管理システム100がその利用促進、発展のために貢献できると期待する。
【0155】
(第2の実施形態)
ここからは、同一ユーザが複数の電子鍵を用いてシェアリングカーを利用する形態についてさらに詳細に説明する。前述と同様の実施形態については説明を割愛する。
【0156】
第2の実施形態に係る制御方法は、複数の車両に関する車両情報と、複数の車両にそれぞれ対応する複数の電子鍵と、を管理する少なくとも1つのデータベースにアクセス可能な第1コンピュータにおける制御方法であって、第1ユーザの第1端末から、ネットワークを介して、第1ユーザが利用可能な第1電子鍵と、第1ユーザが利用を要求している第1車両を特定するための第1車両IDと、を含む第1認証情報を受け取り、第1電子鍵及び第1車両IDと、少なくとも1つのデータベースと、に基づいて、第1認証情報が有効であると判断した後、第1ユーザが第1車両を利用することを許可することを示す第1許可信号を、ネットワークを介して第1車両に送信し、第1ユーザが第1車両の利用を開始した後、第1車両の利用状況を示す第1利用情報を、ネットワークを介して第1車両から取得し、第1電子鍵が、第1ユーザの所属する第1事業体に紐づけられている第1会社鍵である場合に、第1利用情報の少なくとも一部を、第1事業体に関連する第2コンピュータに、ネットワークを介して送信し、第1電子鍵が、第1ユーザの第1個人鍵である場合に、第1利用情報の少なくとも一部を、第2コンピュータに送信しない。
【0157】
図18は、本開示の一形態に係る鍵管理システム200の全体構成の一例を示すブロック図である。ここでは、ユーザCは自らが利用する情報端末61(一例として、スマートフォン等)にインストールしたシェアリングカーのアプリを用いて、複数の電子鍵を管理(記憶)する。1つはユーザCが所属する法人または組織の目的に沿った活動において利用する会社電子鍵81であり、もう1つはユーザCが個人の私的な目的に沿った活動において利用する個人電子鍵91である。
【0158】
ユーザCは、利用用途に応じて、情報端末61に管理される複数の電子鍵の中から1つの電子鍵を選択する。つまり、電子鍵は、情報端末61において、複数の電子鍵の中から選択された1つである。
【0159】
ユーザCは、第1ユーザの一例である。情報端末61は、第1端末の一例である。ユーザCが所属する法人または組織は、事業体の一例である。なお、事業体は会社と読み替えても良い。会社電子鍵81は、第1会社鍵の一例である。個人電子鍵91は、第1個人鍵の一例である。電子鍵は、第1電子鍵の一例である。
【0160】
車両111は電気自動車のシェアリングカーであり、その車両111を識別するためのIDである車両IDと、車載電池であるバッテリーと、を具備する。車両111は、第1車両の一例である。車両111のバッテリーの充電、放電を行う充電器には、ユーザCが所有する個人充電器21と、ユーザCが所属する法人が所有する会社充電器22と、不特定多数に充放電サービスを提供するための一般充電器23と、がある。
【0161】
これらの充放電器は夫々が固有のコンピュータである個人クラウド24、会社クラウド25、一般クラウド26とネットワークを介して接続されており、充放電や決済に関する情報を相互通信する。
【0162】
車両管理クラウド5は、車両製造会社が車両111を管理するクラウドである。鍵管理クラウド10は、車両111を不特定多数の利用者間で利用するための電子鍵を管理するクラウドである。第1コンピュータは、鍵管理クラウド10の一例であり、複数の車両に関する車両情報と、複数の車両にそれぞれ対応する複数の電子鍵と、を管理する少なくとも1つのデータベースにアクセス可能なコンピュータである。
【0163】
上述した少なくとも1つのデータベースは、さらに、複数のユーザ、または、複数のユーザのそれぞれ所属する複数の事業体がそれぞれ契約している複数の保険会社に関する保険会社情報と、複数の保険会社がそれぞれ利用している複数のコンピュータのネットワーク上のアドレスを示すアドレス情報と、を管理しており、第1電子鍵が第1会社鍵である場合、第1保険会社が利用する第2コンピュータのネットワーク上のアドレスを示す第1アドレス情報は、第1会社鍵を少なくとも1つのデータベースに照合することによって特定され、第1電子鍵が第1個人鍵である場合、第2保険会社が利用する第3コンピュータのネットワーク上のアドレスを示す第2アドレス情報は、第1個人鍵を少なくとも1つのデータベースに照合することによって特定される。
【0164】
また、個人保険クラウド27、会社保険クラウド28は、夫々ユーザCが車両111を個人電子鍵91、会社電子鍵81で利用する際に適用される保険契約を締結している保険会社が利用するクラウドである。第2コンピュータは、会社保険クラウド28の一例であり、第1事業体が第1自動車保険を契約している第1保険会社が利用するコンピュータである。また、第2コンピュータは、第1事業体が利用する事業用コンピュータであっても良い。第3コンピュータは、個人保険クラウド27の一例であり、第1ユーザ個人が第2自動車保険を契約している第2保険会社が利用するコンピュータである。
【0165】
図19は、鍵管理システム200の構成の一例を示すブロック図である。
図2に加えて、車両111は、バッテリーの充放電を管理するバッテリー管理部121と、車室内の照明や空調などを調整する車室環境調整部122と、を備えている。
【0166】
充電器(個人充電器21、会社充電器22及び一般充電器23)は、ユーザCに対して情報を提示するための映像音声出力部211と、ユーザCが操作を行うための操作部212と、車両111に対する充放電を管理する電力部213と、外部コンピュータと通信するための通信部214と、全体制御をプログラムに従い行う演算部215と、そのプログラムの実行に用いられるメモリ216と、から構成される。
【0167】
図18でクラウドと表記したものはネットワークに接続されたコンピュータ、または複数のコンピュータから構成されるコンピューターシステムであって、前述の通り、通信部501と、メモリ502と、演算部503と、から構成される。なお、これら情報端末61、車両111、充電器、クラウドの通信部はインターネットを経由して外部のコンピュータと通信するだけに留まらず、直接、近距離無線通信技術を介して通信するようにしても良い。
【0168】
図20は、鍵管理システム200の構成の一例を示すフローチャートである。第1電子鍵が第1会社鍵である場合、第1認証情報が有効であると判断した後に、第1事業体が第1保険会社と契約している保険についての確認を要求する第1確認要求を、ネットワークを介して第2コンピュータに送信し、第2コンピュータにおいて、第1確認要求に基づいて、第1自動車保険の契約内容が確認されたことを示す第1確認結果を、ネットワークを介して第2コンピュータから受け取り、第1確認結果を受け取った後に、第1許可信号を第1車両に送信する。
【0169】
また、第1電子鍵が第1会社鍵である場合、第1認証情報は、第1保険会社が利用する第2コンピュータのネットワーク上のアドレスを示す第1アドレス情報をさらに含み、第1電子鍵が第1個人鍵である場合、第1認証情報は、第2保険会社が利用する第3コンピュータのネットワーク上のアドレスを示す第2アドレス情報をさらに含む。
【0170】
具体的には、まず、鍵管理クラウド10の演算部503は、電子鍵が会社電子鍵81か、もしくは、個人電子鍵91かを判定する(ステップS901)。鍵管理クラウド10の演算部503は、電子鍵が会社電子鍵81と判定すると、車両111から取得した車両利用情報を会社保険クラウド28へ送信する(ステップS902)。
【0171】
また、鍵管理クラウド10の演算部503は、電子鍵が個人電子鍵91と判定すると、車両111から取得した車両利用情報を個人保険クラウド27へ送信する(ステップS903)。つまり、鍵管理クラウド10の演算部503は、電子鍵が個人電子鍵91と判定すると、車両111から取得した車両利用情報を会社保険クラウド28へ送信しない。なお、ステップS902において、鍵管理クラウド10の演算部503は、車両111から取得した車両利用情報を会社クラウド25へ送信しても良い。
【0172】
続いて、
図21は、ユーザCが会社電子鍵81を用いて汎用のシェアリングカーである車両111を社用目的で利用する際の利用開始から終了までのシーケンス図である。
【0173】
具体的には、まず、ユーザCは情報端末61にインストールしたシェアリングカーのアプリを起動し、駐車されている車両111の車両IDを読み取り、その車両111の開錠操作(つまり利用開始)を指示する(ステップS1001)。この時、ユーザCはアプリが管理する複数の電子鍵から、今回の利用目的に応じて会社電子鍵81を選択する。車両IDの読み込みはNFC(登録商標)などの近距離無線通信で車両111から情報端末61が取得しても良いし、車両111に付与された2次元コード(一例として、QRコード(登録商標)等)を情報端末61のセンサー(CMOSなど)により読み取っても良い。
【0174】
情報端末61(またはその情報端末上で動作するアプリケーションを指す、以下同様)は、この開錠操作に応じて通信部606により、会社電子鍵81による鍵認証を鍵管理クラウド10へ要求する(ステップS1002)。この要求には、このユーザCを特定するユーザID、このユーザCが利用している情報端末61を特定するスマホID、利用する車両111を特定する車両ID、さらにユーザCによって選択された会社電子鍵81を特定する電子鍵ID、この会社電子鍵81による車両利用時に適用される保険情報を管理する会社保険クラウド28への接続情報が含まれている。
【0175】
鍵管理クラウド10はこれらを受信すると、これらのIDと接続情報のペアリング情報をメモリ502に記録すると共に、演算部503により、利用可否を判定し(鍵認証)(ステップS1003)、NGの場合は処理を終了する(ステップS1004)。IDのペアリング情報には、少なくとも車両IDと、電子鍵IDとが含まれれば良い。利用が許可された場合は、利用許可(第1許可信号)応答を情報端末61に返信する(ステップS1005)と同時に、車両111に対して、車両111のドアを開錠するための開錠指示を含む利用許可を送信し、これを受信した車両111は鍵制御部105によりドアを開錠する(ステップS1006)。
【0176】
また、鍵管理クラウド10は、通信部501により車両111の制御モードを社用車モードに設定するための第1設定指示を、ネットワークを介して車両111に送信する(ステップS1007)。さらに、鍵管理クラウド10は、通信部501により車両111に搭載されているバッテリーの充電履歴の情報に基づいて、バッテリーの蓄電量を示すインディケータを車両111の車室内のディスプレイ上に表示させるための表示設定情報を、ネットワークを介して車両111に送信する(ステップS1008)。
【0177】
鍵管理クラウド10は、通信部501により車両IDから特定された車種情報(原動機付自転車、普通自動二輪車、軽自動車、普通自動車、大型自動車など車両形状に関する情報、かつ/または、車両モデルを特定する情報)と、電子鍵IDと、を指定された接続情報に基づき会社保険クラウド28へ通知し、保険適用の可否を確認要求する(ステップS1009)。利用する車両111の車種情報と利用する法人情報(電子鍵IDにより特定可能)を取得することにより、会社保険クラウド28は適当な保険条件を算出することができる。
【0178】
会社保険クラウド28は、演算部503によりこれらの情報に基づき保険適用の可否、その条件を確認し(ステップS1010)、通信部501によりその保険確認結果を鍵管理クラウド10へ返信する(ステップS1011)。鍵管理クラウド10は、通信部501により保険確認結果を車両111に送信する(ステップS1012)。ユーザCが車両111を起動すると、情報入出力部104にて、開錠した会社電子鍵81に基づく車両111の利用条件及び保険確認結果(保険の利用条件)をユーザCに提示する(ステップS1013)。
【0179】
つまり、第1電子鍵が第1会社鍵である場合、第1許可信号は、第1自動車保険の契約内容の少なくとも一部を示す第1保険情報を、第1車両の車室内に設けられたディスプレイに表示させる第1表示指示(車両111の利用条件及び保険確認結果(保険の利用条件))を含む。これによってユーザCは車両111の利用条件を容易に確認することができる。
【0180】
車両111は利用開始に伴い、通信部108により、車両ID、利用開始時刻、利用者情報(会社電子鍵81の電子鍵ID、ユーザID、スマホID)を車両利用開始情報として、鍵管理クラウド10へ送信する(ステップS1014)。また、第1電子鍵が第1会社鍵である場合に、第2コンピュータに送信される第1利用情報の少なくとも一部は、第1車両IDと、第1車両の位置情報を時刻情報に対応づけた第1移動履歴と、を含んでも良い。
【0181】
これを受けた鍵管理クラウド10は、通信部501により保険料算出のために会社保険クラウド28へこれらの情報を送信する(ステップS1015)。また、車両111は、演算部106により、ユーザCが会社電子鍵81にて利用している間、車両111の利用情報を定期的、かつ/または、駐停車や充放電などの所定イベント発生の度に取得し(ステップS1016)、通信部108により鍵管理クラウド10へ送信する(ステップS1017)。
【0182】
鍵管理クラウド10は、通信部501により、その度に会社保険クラウド28へ全てまたは一部の情報を保険料算出のために送信する(ステップS1018)。なお、この車両利用情報は車両111から会社保険クラウド28へ鍵管理クラウド10を経由せず、直接的に送信されるようにしても良い。その場合は、前段の保険確認結果に、会社保険クラウド28への送信アドレス情報を付与しておけばよい。
【0183】
ユーザCが車両111に対して車両利用を終了する操作を行う(例えば、車両111の情報入出力部104や情報端末61の映像音声出力部602に表示されるメニューから利用終了を選択する)(ステップS1019)と、これを受けた車両111は、通信部108により、車両利用が終了されたことを示す車両利用終了情報を鍵管理クラウド10へ送信する(ステップS1020)。また、これを受信した鍵管理クラウド10は同様の車両利用終了情報を通信部501により会社保険クラウド28へ送信する(ステップS1021)。
【0184】
会社保険クラウド28は、車両利用開始情報、車両利用終了情報、(必要であれば車両利用情報も含む)に基づき、演算部503により保険料金を計算し(ステップS1022)、通信部501により、保険料金情報として鍵管理クラウド10(かまたは、車両111、情報端末61であっても良い)へ送信する(ステップS1023)。
【0185】
鍵管理クラウド10は、演算部503により、車両利用開始情報、車両利用終了情報、(必要であれば車両利用情報も含む)に基づき車両利用料金(利用料金)を計算し(ステップS1024)、演算部503により、受信した保険料金を加えて利用サマリー情報を生成し、それを通信部501により情報端末61に送信する(ステップS1205)。これを受信した情報端末61は、映像音声出力部602にてこの利用サマリー情報を提示する(ステップS1026)。なお、利用サマリー情報は、車両111に送信するようにしても良い、この場合は車両111の情報入出力部104にて利用サマリー情報を提示する。
【0186】
さらに、鍵管理クラウド10は、演算部503により、開錠操作に用いられた会社電子鍵81に紐づけられた請求先情報(当該法人の口座情報やクレジットカード情報)に基づき車両111の利用料金を請求する(ステップS1027)。同様に、会社保険クラウド28は、演算部503により、その会社電子鍵81に紐づけられた請求先情報に基づき保険料金を請求する(ステップS1028)。この請求先情報は、会社電子鍵81に紐づく形で予め鍵管理クラウド10、会社保険クラウド28の夫々にて管理されていても良いし、必要な時に鍵管理クラウド10や情報端末61からネットワークを介して取得するようにしても良い。また、これらの請求は纏めて鍵管理クラウド10にて一括請求されても良い。
【0187】
最後に、鍵管理クラウド10は(前述の利用許可応答にて、IDペアリング情報を車両111にも送信していた場合は車両111も含めて)、演算部503により、IDのペアリング情報を廃棄する(ステップS1029)。その後、車両111は、演算部106により、車両状態をリセットする(ステップS1030)。なお、ここでは車両111は、車両利用開始情報、車両利用情報、車両利用終了情報を夫々が発生したタイミングにて送信するとしたがこれに限らない。車両111のメモリ107にてこれらの情報を記録しておき、ユーザCが利用終了操作を行った際に、これらを纏めて鍵管理クラウド10、かつ/または、会社保険クラウド28へ送信するようにしても良い。
【0188】
図22は、ユーザCが個人電子鍵91を用いて汎用のシェアリングカーである車両111を私用目的で利用する際の利用開始から終了までのシーケンス図である。さらに
図22では、ユーザCが契約している保険があり、個人保険クラウド27にてその利用が許可されるケースである。処理自体には
図21と同じ流れのため、会社電子鍵81を個人電子鍵91として、会社保険クラウド28を個人保険クラウド27に置き換えれば良い。
【0189】
図22に記載のステップS1002~S1005において、第1電子鍵が第1個人鍵である場合、第1認証情報が有効であると判断した後に、第1ユーザが第2保険会社と契約している保険についての確認を要求する第2確認要求を、ネットワークを介して第3コンピュータに送信し、第3コンピュータにおいて、第2確認要求に基づいて、第2自動車保険の契約内容が確認されたことを示す第2確認結果を、ネットワークを介して第3コンピュータから受け取り、第2確認結果を受け取った後に、第1許可信号を第1車両に送信する。
【0190】
なお、
図22に記載のステップS1007において、鍵管理クラウド10は、通信部501により車両111の制御モードを個人目的での利用である私用車モードに設定するための第2設定指示を、ネットワークを介して車両111に送信する(ステップS1007)。
【0191】
また、
図22に記載のステップS1013においては、ユーザCが車両111を起動すると、情報入出力部104にて、開錠した個人電子鍵91に基づく車両111の利用条件及び保険確認結果(保険の利用条件)をユーザCに提示する(ステップS1013)。つまり、第1電子鍵が第1個人鍵である場合、第1許可信号は、第2自動車保険の契約内容の少なくとも一部を示す第2保険情報(車両111の利用条件及び保険確認結果(保険の利用条件))を、第1車両の車室内に設けられたディスプレイに表示させる第2表示指示を含む。
【0192】
また、個人保険クラウド27では、鍵管理クラウド10から受信した利用する車両111の車種情報と利用する個人情報(電子鍵ID、ユーザID、スマホIDの1つ以上)を取得することにより、適当な保険条件を算出することができる。
【0193】
図23は、
図22と同じシナリオであり、個人保険クラウド27により保険契約の有効性が確認できなかった場合のシーケンス図である。
【0194】
この場合、鍵管理クラウド10は、通信部501により、車両IDから特定された車種情報、個人電子鍵91の電子鍵ID、とを指定された接続情報に基づき個人保険クラウド27へ通知し、保険適用の可否を確認要求する(ステップS1039)。個人保険クラウド27は、演算部503により、利用する車両111の車種情報と利用する個人情報(電子鍵ID、ユーザID、スマホIDの1つ以上)を取得することにより、個人保険クラウド27はこれらの情報に基づき保険適用の可否、その条件を確認し(ステップS1040)、通信部501により、保険契約の有効性が確認できなかった旨の保険確認結果(NG)を鍵管理クラウド10へ返信する(ステップS1041)。なお、鍵管理クラウド10は個人保険クラウド27が特定できない場合、ステップS1039で確認要求せずに保険確認結果(NG)として、ステップS1042へ進むようにしても良い。
【0195】
鍵管理クラウド10は、これを受けて、通信部501により、ユーザCに推奨する推奨保険情報を車両111(または情報端末61)に送信する(ステップS1042)。この推奨保険情報は予めシェアリングカーの運営会社と保険会社とが締結した契約に基づくものであっても良い。ユーザCが車両111を起動すると、車両111の情報入出力部104は、取得した推奨保険情報をユーザCに提示する(ステップS1043)。
【0196】
ユーザCは推奨保険情報の中から1つの保険契約を情報入出力部104にて選択し、ユーザCを認証する情報(ユーザCの生体情報、運転免許証、パスワード、秘密鍵、情報端末61など)を用いて電子署名を行う(ステップS1044)。車両111は、通信部108により、電子署名された保険契約情報を鍵管理クラウド10に送信し(ステップS1045)、鍵管理クラウド10はこれをメモリ502に保管する。
【0197】
つまり、第1電子鍵が第1個人鍵であって、かつ、第1ユーザ個人が契約している自動車保険を特定できない場合、鍵管理クラウド10は、第1ユーザに推奨される自動車保険を示す推奨保険情報を、第1車両の車室内に設けられたディスプレイに表示させる表示指示信号を、ネットワークを介して第1車両に送信し、第1ユーザが推奨される自動車保険に加入したことを示す第3の確認結果(電子署名)を、ネットワークを介して第1車両から受け取り、第3の確認結果を受け取った後に、第1ユーザが第1車両を利用することを許可する。
【0198】
以降、保険料金の計算は、鍵管理クラウド10にて行うとしているが、本開示はこれに限らず、
図22と同様にシェアリングカーの運営会社が契約した保険会社のクラウドに対して、鍵管理クラウド10(または車両111)が車両利用開始情報、車両利用情報、車両利用終了情報をネットワークを介して送信する(ステップS1046)ことで、その保険会社のクラウドにて計算するようにしても良い。
【0199】
図24は、
図21で出て来た処理の一部である、会社保険クラウド28における保険料金の計算を説明するフローチャート図である。ここで示すように、会社保険クラウド28は、演算部503により、鍵管理クラウド10(または車両111、情報端末61であっても良い)から取得した車種情報に対する保険適用条件1を自身のメモリ502から取得する(ステップS1051)。メモリ上には、車種情報に応じて適用されるべき保険適用条件が予め規定されたテーブルが記録されており、これに基づき会社保険クラウド28は対応する車種情報の保険適用条件を読み出し、それを保険適用条件1として取得する。
【0200】
会社保険クラウド28は、演算部503により、鍵管理クラウド10(または車両111、情報端末61であっても良い)から取得した電子鍵IDに紐づく会社に対する保険適用条件2を自身のメモリ502から取得する(ステップS1052)。メモリ上には、法人や組織に応じて適用されるべき保険適用条件が予め規定されたテーブルが記録されており、これに基づき会社保険クラウド28は電子鍵IDに紐づく会社に対する保険適用条件を読み出し、それを保険適用条件2として取得する。
【0201】
会社保険クラウド28は、演算部503により、保険適用条件1と、保険適用条件2と、に基づき、今回適用すべき保険条件を設定する(ステップS1053)。メモリ上には、保険適用条件1と保険適用条件2の組み合わせに応じて予め規定されたテーブルが記録されており、これに基づき会社保険クラウド28は保険条件を決定する。そして、会社保険クラウド28は、通信部501により、保険条件を問い合わせた鍵管理クラウド10(または車両111、情報端末61であっても良い)に対して、保険条件を返信して(ステップS1054)処理を終える。
【0202】
勿論、会社保険クラウド28は、電子鍵IDに紐づく会社に対して車種情報ごとの保険条件を記載した1つのテーブルを用いて、適用すべき保険条件を取得し、通信部501により、鍵管理クラウド10へ返信するようにしても良い。なお、この
図24のフローチャートは、
図22、
図23の個人保険クラウド27における保険条件の決定処理においても保険適用条件2を除いて同じである。保険適用条件2は、個人保険クラウド27が受信した電子鍵IDに紐づくユーザ個人に対して設定された保険適用条件である。
【0203】
図25は、車両111が利用される電子鍵の種別に応じて制御を自動変更することを示すフローチャート図である。
【0204】
車両111の演算部106は、受信した電子鍵IDにより利用される電子鍵の種別(会社電子鍵81か、個人電子鍵91か)を特定する(ステップS1061)。車両111は、演算部106により、電子鍵の種別が会社電子鍵81に属すると判定された場合(ステップS1062:会社電子鍵)は、演算部106により、外部コンピュータ(鍵管理クラウド10、会社クラウド25、情報端末61のうち、少なくともいずれか一つ)から、その会社電子鍵81に設定された移動空間制御モード情報を取得する(ステップS1063)。
【0205】
車両111の演算部106は、その移動空間制御モード情報に基づき、環境負荷の少ない可動部101の制御方法を設定する(ステップS1064)。さらに言えば、個人電子鍵91に設定された移動空間制御モードよりも環境負荷が少ない、会社電子鍵81に設定された移動空間制御モードを適用するよう演算部106が可動部101に指示する。例えば、センサー(アクセルポジションセンサー)が同一のアクセル開放度合いを検出しても、個人電子鍵91の時と比べて、会社電子鍵81の場合は、より少ない出力しか発生しないように可動部(とバッテリー管理部121)を動作させるように制御する。
【0206】
また、急激なアクセル操作に対して、これを時間的に緩やかな出力変化となるように、アクセル開放度合いの時間的変化の最大量を設けるようにしても良い。このようにすることで、滑らかな加減速が実現され、移動距離当たりの電力消費量が効率化され、より経済的で環境に良い移動を実現することができる。
【0207】
車両111の演算部106は、その移動空間制御モード情報に基づき、乗客の覚醒度を高めたり、集中力を高め易い車室環境となるよう車室環境調整部122の制御方法を設定する(ステップS1065)。例えば、車室環境調整部122の空気清浄機能により、車室内のアレルギー物質、花粉、PM2.5といった粉塵の濃度を、個人電子鍵91の時と比べて、より低く設定してスッキリした空気質を提供することができる。
【0208】
また、ナノイー(登録商標)のような、菌、ウィルス、ニオイなどの空気中の有害物質を抑制する働きのあるイオンの濃度を、個人電子鍵91の時と比べて、より高く設定することで同様の効果を提供することも可能である。さらに、車室環境調整部122の車内向けの照明機能の色温度を、個人電子鍵91の時と比べて、より高く設定することで、活動的で知的作業などの集中力を高め易い車室環境を提供することができる。
【0209】
車両111の演算部106は、その移動空間制御モード情報に基づき、環境負荷の少ない移動ルートを探索、提示するように情報入出力部104を制御する(ステップS1066)。例えば、目的地までのルート選択が情報入出力部にて選択された場合に、複数のルート候補から、個人電子鍵91の時と比べて、より電費(燃費)の良いルートを表示/推奨したり、移動に伴う炭素排出量を試算した結果に基づき、より炭素排出量の少ないルートを表示/推奨する設定がなされる。これにより、このユーザCの炭素排出量や、この会社電子鍵81に紐づく会社のScope3の炭素排出量を抑制することが可能となる。
【0210】
車両111の演算部106は、その移動空間制御モード情報に基づき、ビジネス関連情報またはその会社電子鍵81と相関の高いコンテンツを提示するように情報入出力部104を制御する(ステップS1067)。
【0211】
例えば、会社電子鍵81の場合は業務中であるために、関連ビジネスのニュースであったり、その会社電子鍵81に紐づく会社の社員向けコンテンツや他社員の現在地情報を提示する。これによって、業務移動時に業務に関する情報が取得でき、効率化が期待できる。
【0212】
車両111の演算部106は、電子鍵の種別により、会社電子鍵81と特定された場合は、以上の設定、処理を行いこのフローを終了する。一方で、車両111の演算部106は、個人電子鍵91と特定された場合(ステップS1062:個人電子鍵)は、その車両111に予め設定されたデフォルト、または個人電子鍵91と紐づけて設定していた移動空間制御モード情報による制御方法が各種装置に対して設定される(ステップS1068)。
【0213】
車両111の演算部106は、車両111の可動部101に対しては、会社電子鍵81の時と比べて加減速制限が緩和されたり、ユーザCの嗜好に合わせた出力制御がなされても良い(ステップS1069)。例えば、ユーザCが自分の個人電子鍵91にスポーツモードを設定していた場合には、その車両111においてデフォルトよりも加速が得られやすい可動部101の制御がなされる設定が適用される。
【0214】
車両111の演算部106は、車室環境調整部122の空気温度調整機能により、車室内の空気温度を、会社電子鍵81の時と比べて、より外気温との差が大きい温度まで指定することが許可されるように設定されても良い(ステップS1070)。また、照明機能の色温度をより低く設定して(または設定できるようにして)、車室内でリラックスしやすいようにしても良い。
【0215】
車両111の演算部106は、情報入出力部104での目的までのルート選択において、複数のルート候補から、会社電子鍵81の時と比べて、より移動時間が少ないルートを表示/推奨したり、電費が悪いルートや、炭素排出量が多いと予想されるルートを表示/推奨するように情報入出力部104を制御しても良い(ステップS1071)。
【0216】
つまり、社用車モードにおける第1出発地から第1目的地までの第1経路の第1走行距離が、私用車モードにおける第1出発地から第1目的地までの第2経路の第2走行距離に比べて長い、または、第1出発地から第1目的地までを社用車モードで走行した場合にかかる第1走行時間が、第1出発地から第1目的地までを私用車モードで走行した場合にかかる第2走行時間よりも長くなるようにしても良い。
【0217】
または、第1経路を走行した際に予想される車両の移動に伴う電気消費量(またはガソリンや水素の燃料消費量)が、第2経路を走行した際に予想される電気消費量よりも少なくなるようにしても良い。または、第1経路を走行した際に予想される車両の移動に伴う温室効果ガス排出量が、第2経路を走行した際に予想される温室効果ガス排出量よりも少なくなるようにしても良い。
【0218】
また、車両111の演算部106は、ビジネス関連情報だけに限らず、個人電子鍵91に紐づく興味情報に相関の高い情報や、車両111の現在位置付近の広告宣伝情報を含めて、情報入出力部104で提示するよう設定する(ステップS1072)。
【0219】
つまり、社用車モードにおいて、第1車両の車室内に設けられたディスプレイ上に、第1ユーザに向けた第1広告情報が表示され、私用車モードにおいて、ディスプレイ上に、第1ユーザに向けた第2広告情報が表示され、第1広告情報の表示頻度、表示位置及び表示内容の少なくとも1つが、第2広告情報とは異なる。
【0220】
また、第1広告情報には含まれない飲食や娯楽に関する広告情報が第2広告情報には含まれるようにしても良い。または、第1広告情報より第2広告情報の方が、それら飲食や娯楽に関する広告情報の表示頻度やその表示内容の種類が拡大されるようにしても良い。
【0221】
このように、車両利用者の開錠した電子鍵の種別に基づいて、車両111の可動部101、車室環境調整部122、情報入出力部104の制御方法を夫々切り替えるようにすることが考えられる。なお、この移動空間制御モードは、ユーザCが情報端末61にて予め設定して、車両利用開始時に情報端末61から車両111に送信されるようにしても良い。
【0222】
なお、ここでの処理は車両111が実施するとして説明したが、車両111とネットワークを介して通信する外部コンピュータ(鍵管理クラウド10、車両管理クラウド5など)により実施するようにしても良い。この場合は、外部コンピュータの演算部503は、該当の会社電子鍵81または個人電子鍵91に対して設定された移動空間制御モード情報を取得し、それを車両111に対して設定する要求を通信部501を介して送信する。
【0223】
図26は、ユーザCがシェアリングカーを会社電子鍵81を用いて、業務目的で利用した後と、個人電子鍵91を用いて、私用目的で利用した後と、の車両状況及びその際のバッテリー蓄電量を示した図である。
【0224】
まず、最上段261は、車両111が利用開始前で駐車場に駐車されている状態を示している。バッテリー蓄電量はバッテリー管理部121にて計測され、車両111と鍵管理クラウド10で逐次管理されている。車両利用前にバッテリーに蓄電された全ての電気は、その全てをシェアリングカーのサービス運営会社が充電した電気、かつ/または、支払いをした電気であるとして、ここでは「一般」として区分され表示されている。
【0225】
ここでいう区分とは、その区分が対応するバッテリー蓄電量に対して、その充電時に利用されていた鍵の所有者、その充電に対する対価を支払った個人または法人、その充電の操作を行った個人または法人、その充電を行った充電器を所有または運用する個人または法人、の少なくとも1つ以上を識別する情報である。
【0226】
次段262は、ユーザCがその車両111を会社電子鍵81により利用開始時の状態を示している。ここでのバッテリー蓄電量は先程と変わらない。電子鍵の列の「会社電子鍵」は該当する行が会社電子鍵81で利用されている状態であることを示している。次段263はユーザCが車両111で走行して充電量が減ったことを示している。この状態が充電する直前の状態である。
【0227】
次段264は車両111が充電した直後の状態を示し、バッテリー蓄電量が回復している。ここでは会社電子鍵81を利用して充電されたことを意味するように充電量を「会社」として区分され示している。図に記載の充電量が会社電子鍵81を利用中に充電された電気量である。
【0228】
次段265は、ユーザCが車両111の利用を終了する時の状態を示している。先程から走行して利用開始時よりも少し少ないところまでバッテリー蓄電量が減っている。ユーザCは、ここで、利用開始時と利用終了時におけるバッテリー蓄電量の変化量(利用前後変化量<0)も含めてシェアリングカーの運営会社に対して利用料金を支払う。利用前後変化量が負の値を持つことで、利用料金が高くなる。
【0229】
つまり、第1会社鍵を用いた第1車両の利用開始時において、第1車両に搭載されているバッテリーに蓄電されている第1蓄電量を示す第1バッテリー情報を、ネットワークを介して第1車両から取得し、第1会社鍵を用いた第1車両の利用終了時において、バッテリーに蓄電されている第2蓄電量を示す第2バッテリー情報を、ネットワークを介して第1車両から取得し、第1事業体が利用する事業用コンピュータ、または、第1事業体の決済手段を管理する金融機関が利用する金融用コンピュータに対して、第1蓄電量から第2蓄電量への変化量が反映された金額で、決済処理を実行する。
【0230】
次段266は、再び車両111が最初の時と同じ利用開始前で駐車場に駐車されている状態を示している。ここの時に、バッテリー蓄電量は再び「一般」と「会社」の区分がなくなり、次の利用者向けに、全てシェアリングカーの運営会社が充電した電気であるとして「一般」として表現される。
【0231】
次段267はさきほどと同じまたは異なるユーザCが個人電子鍵91にて利用開始したことを示している。直前段の「一般」のバッテリー蓄電量がそのまま利用開始時にユーザCに提示される。次段268は、ユーザCが車両111で走行して「一般」の蓄電量が減り、個人電子鍵91を利用して「個人」で示す充電量を充電した直後である。
【0232】
次段269は、さらにユーザCが車両111で走行して「個人」に区分される蓄電量が減り、放電する直前の状態である。次段270は車両111のバッテリーから放電された直後の状態である。放電量は図に示した分量であり、「個人」に区分される蓄電量がさらに放電により減っている。
【0233】
次段271は、ユーザCが車両111の利用を終了する時の状態を示している。先程と同様にユーザCはここで、利用開始時と利用終了時におけるバッテリー蓄電量の変化量(利用前後変化量>0)も含めてシェアリングカーの運営会社に対して精算をして、利用料金を支払う。利用前後変化量が正の値を持つことで、利用料金が安くなる。
【0234】
つまり、第1事業体が利用する事業用コンピュータ、または、第1事業体の決済手段を管理する金融機関が利用する金融用コンピュータに対して、第1蓄電量及び第2蓄電量の少なくとも一方に反映された金額で、決済処理を実行し、決済処理において、第1蓄電量が第1基準量以下の場合、または、第2蓄電量が第2基準量以上の場合において、金額を所定の金額から減額処理する。以下、次段272は、再び利用開始待ち(駐車中)となり、バッテリー蓄電量が「一般」の区分に統合される。
【0235】
なお、ここではバッテリー蓄電量の区分を、「一般」「会社」「個人」と区分して表記したがこれは夫々が示すバッテリー蓄電量の所有者を示している。「一般」であればシェアリングカーの運営会社が、「会社」であれば利用された会社電子鍵81が示す法人が、「個人」であれば利用された個人電子鍵91が示す個人が所有しているとしている。
【0236】
これによってシェアリングカーを返却時に、シェアリングカーの運営会社と、法人またはシェアリングカーの運営会社と、個人と、が、利用前後変化量に基づく電気の売買取引を行っているとみなすこともできる。このようにすることで、バッテリー蓄電量の残量表示や、決済処理を利用者にとって分かり易くすることができる。
【0237】
図27は、会社電子鍵81を用いて車両111を利用する際のシーケンス図である。この図では、車両111と充電器とが通信することにより充電の認証、制御、決済がなされる。また、車両利用情報を車両111から鍵管理クラウド10、会社保険クラウド28(図示なし)に送信する以前、及び、利用終了操作により車両111が鍵管理クラウド10へ車両利用終了情報を送信した以降の処理については、
図21と同一であるため割愛してある。
【0238】
ユーザCが会社電子鍵81にて利用している間、車両111の利用情報を定期的、かつ/または、駐停車や充放電などの所定イベント発生の度に、鍵管理クラウド10へ送信し、鍵管理クラウド10はその度に会社保険クラウド28へ全てまたは一部の情報を保険料算出のために送信する。
【0239】
ユーザCが充電開始操作として、車両111と充電器を有線電力線で接続するか、または車両111と充電器の位置関係を無線給電できるよう調整する(ステップS1083、ステップS1084)。そうすると、車両111から充電要求が充電器に送信される(ステップS1085)。この充電要求には、車両ID、ユーザID、会社電子鍵81(電子鍵ID、及び会社電子鍵81に対応した銀行口座やクレジットカードの支払い手段情報)の情報が含まれるようにしても良い。これを受信した充電器の通信部214は、その充電器に対応するクラウドに対して、この充電要求の情報に基づき決済手段の認証要求を行う(ステップS1086)。
【0240】
ここで、充電器とはユーザCが所有する個人充電器21、ユーザCが所属する法人が所有する会社充電器22、不特定多数に充放電サービスを提供するための一般充電器23のいずれかである。また、対応するクラウドとは、個人充電器21に対応する個人クラウド24、会社充電器22に対応する会社クラウド25、一般充電器23に対応する一般クラウド26である。
【0241】
クラウドの演算部503により、認証要求が許可されない場合は、決済可能な決済手段が確認できるまで、決済手段の設定を促すメッセージを充電器に表示させる(図示せず)。クラウドの演算部503により、認証要求が許可された場合は、クラウドの通信部501により、認証OKの返答が充電器に返信される(ステップS1088)。そして、充電器の通信部214により、車両111へも認証OKの返答が返信される(ステップS1089)。
【0242】
これにより、車両111の通信部108が充電開始時の車両状態(車両ID、バッテリー蓄電量、電子鍵ID)を鍵管理クラウド10へ送信し(ステップS1090)、これを鍵管理クラウド10がメモリ502に記録する(ステップS1091)。そして、充電器で充電制御をしながら、車両111はバッテリーに充電する(ステップS1093)。
【0243】
ユーザCは充電終了操作として、車両111と充電器を有線電力線の接続を解除するか、充電器の映像音声出力部211、操作部212を用いて充電を終了する旨の指示を行う(ステップS1094、ステップS1095)。
【0244】
充電器の通信部214は、充電時間、充電量、充電器ID(充電器を特定するための情報)、車両ID、会社電子鍵81(電子鍵ID)を含む充電情報と、充電料金と決済手段情報を含む決済情報とを対応するクラウドへ送信する(ステップS1096)。これを受信した対応するクラウドの演算部503は、会社電子鍵81に紐づく決済手段により決済を行う(ステップS1097)。
【0245】
充電情報と決済情報は充電器の通信部214から車両111と鍵管理クラウド10へと送信され(ステップS1098、ステップS1099)、車両111のメモリ107に充電情報が記録され(ステップS1100)、鍵管理クラウド10のメモリ502に充電情報と決済情報とが記録される(ステップS1101)。
【0246】
つまり、第1会社鍵を用いた第1車両の利用期間において、第1車両に搭載されているバッテリーに対して第1充電器による充電操作が行われた後、第1充電器と、第1事業体が利用する事業用コンピュータ、または、第1事業体の決済手段を管理する金融機関が利用する金融用コンピュータ(クラウド)と、の間で決済処理が行われたことを示す第1決済報告(決済情報)を、第1充電器、事業用コンピュータ、または金融用コンピュータからネットワークを介して受け取り、第1決済報告を第1会社鍵と紐付けて、第1コンピュータのメモリに記録する。
【0247】
充電終了のイベント発生に応じて車両111の通信部108から鍵管理クラウド10へ車両状態が送信され(ステップS1102)、鍵管理クラウド10で車両状態がメモリ502に記録される(ステップS1103)。
【0248】
ユーザCが利用終了操作を行う(ステップS1104)と、車両111の通信部108から鍵管理クラウド10へ車両利用終了情報が送信される(ステップS1105)。これ以降は
図21の説明と同じであり割愛する。また、バッテリー蓄電量の利用前後変化量に伴う利用料金の計算の詳細については後述する。
【0249】
このように、会社電子鍵81で利用しているシェアリングカーの利用料金は、会社電子鍵81に紐づけられた支払い手段情報に基づき決済される。そのため、ユーザCは支払い時に決済手段を都度設定するようなことがなく、また、シェアリングカーの運営会社も利用終了時に決済不能といった状態や手間を無くすことができる。
【0250】
また、
図21で説明したように利用が終了したと同時に、ユーザCの個人情報や会社情報を示すIDのペアリング情報が鍵管理クラウド10(及び車両111)から自動的に削除される。これによって、不特定多数で利用するシェアリングカーでの個人情報保護の取り扱いに関する懸念が解消される。
【0251】
なお、上記説明では充電器での充電として説明したが、放電の場合でも同様に適用できる。放電の場合は、車両111から充電器に対して放電された放電量に基づき、充電器または対応するクラウドが放電料金を算出し、それを会社電子鍵81に紐づく決済手段に対して支払うようにすれば良い。
【0252】
なお、上記説明は会社電子鍵81での利用として説明したが、個人電子鍵91での利用時にも同様に適用できる。個人電子鍵91の場合は、個人電子鍵91に紐づく決済手段に対して、充電器での充電料金(放電料金)及びシェアリングカーの利用料金を決済すれば良い。ここに記載した利点や応用は、
図28のケースにおいても同様に適用可能である。
【0253】
図28は、会社電子鍵81を用いて車両111を利用する際のシーケンス図である。この図では、情報端末61と、充電器と、が連携することにより、充電の認証、制御、決済がなされる。また、車両利用情報を車両111から鍵管理クラウド10、会社保険クラウド28(図示なし)に送信する以前、及び、利用終了操作により車両111が鍵管理クラウド10へ車両利用終了情報を送信した以降の処理については、
図27と同様に割愛してある。以下、
図27との相違点のみ説明する。
【0254】
ユーザCは充電準備操作として、情報端末61を操作し(ステップS1111)、シェアリングカーの運営会社、または一般充電器23の運営会社が提供するアプリを起動し、利用する充電器に対応するクラウドに対して認証コードを要求する(ステップS1112)。これを受信した利用する充電器に対応するクラウドは、演算部503により認証コードを生成し(ステップS1113)、生成した認証コードを情報端末61へ応答する(ステップS1114)。
【0255】
この認証コード要求には、充電情報や決済情報を円滑に生成し、ユーザCの手間を減らすために、予め必要となる情報(車両ID、ユーザID、スマホID、会社電子鍵81の電子鍵ID、会社電子鍵81に紐づく決済手段情報)を含めるようにしても良い。
【0256】
認証コードを受信した情報端末61は、認証コードを映像音声出力部602にて表示する。ユーザCは、その表示された認証コードが充電器の光学センサー(図示なし)で読み取れるように、情報端末61を用いて提示(送信)する(ステップS1115)。充電器は認証コードを読み取り(ステップS1116)、通信部214により、対応するクラウドに対して認証要求を行う(ステップS1117)。
【0257】
受信したクラウドの演算部503は、その認証コードの有効性を認証し(ステップS1118)、認証できなければ処理を終了し(ステップS1119)、認証できた場合には、通信部501により、認証OKの応答を充電器に対して返信する(ステップS1120)。認証OKの応答を受けた充電器は、ユーザCに対して充電を始めるよう映像音声出力部211を介してメッセージを提示する(ステップS1121)。
【0258】
ユーザCが充電開始操作として、車両111と充電器を有線電力線で接続するか、または車両111と充電器の位置関係を無線給電できるよう調整する(ステップS1083、ステップS1084)。そうすると、車両111の通信部108から充電要求が充電器に送信する(ステップS1085)。この充電要求には、車両ID、ユーザID、会社電子鍵81(電子鍵ID)の情報が含まれるようにしても良い。
【0259】
ユーザCは充電終了操作として、有線電力線の接続を解除するか、充電器の映像音声出力部211、操作部212を用いて充電を終了する旨の指示を行う(ステップS1095)。充電器の通信部214は、充電時間、充電量、充電器ID(充電器を特定するための情報)、車両ID、会社電子鍵81(電子鍵ID)を含む充電情報と、充電料金と、決済手段情報と、を含む決済情報とを対応するクラウドへ送信する(ステップS1096)。
【0260】
これを受信した対応するクラウドの演算部503は、会社電子鍵81に紐づく決済手段により決済を行う(ステップS1097)。さらに、クラウドの通信部501は、これらの充電情報と決済情報をユーザCに提示するために情報端末61へ送信する(ステップS1131)。
【0261】
図29は、
図21、
図22、
図23におけるシェアリングカーの運営会社への利用料金の計算方法を説明するフローチャート図である。
【0262】
車両111(鍵管理クラウド10、情報端末61が実施しても良い)の演算部106は、車両111のバッテリー容量(C)を取得する(ステップS1141)。また、車両111のバッテリー管理部121は、ユーザCが利用開始時にその瞬間のバッテリー蓄電量(Cs)を取得する(ステップS1142)。ここで、Csの値(またはCs/Cの値)が所定量以下であれば、Yes(ステップS1143:Yes)に進み、少なくともCsの値に基づき利用インセンティブ(I1)を計算する(ステップS1144)。その後、ユーザCにより車両111が利用される(ステップS1145)。
【0263】
以降は車両111の利用終了がYes(ステップS1146:Yes)になるまで、車両111の利用が継続される。ここでは、車両111のバッテリーに対して、充電、放電、走行などによる電力消費があり、車両111の利用中はバッテリー蓄電量が変化する。
【0264】
利用終了すると、Yes(ステップS1146:Yes)に進み、バッテリー管理部121は、利用終了時のバッテリー蓄電量(Ce)を取得する(ステップS1147)。鍵管理クラウド10の演算部503は、バッテリー容量(C)、利用開始時のバッテリー蓄電量(Cs)、利用終了時のバッテリー蓄電量(Ce)のいずれか2つ以上に基づき、充電インセンティブ(I2)を計算する(ステップS1148)。
【0265】
鍵管理クラウド10の演算部503は、利用インセンティブ(I1)かつ/または利用インセンティブ(I2)を含めて、利用料金を計算し、利用料金の計算処理を終了する(ステップS1149)。利用インセンティブ(I1)は、CsまたはCs/Cの値が大きくなるにつれ段階的にユーザメリット(割引額や割引率)が下がるように設計されても良い。逆に言えば、利用インセンティブ(I1)は、CsまたはCs/Cの値が小さいほどユーザメリット(割引額や割引率)が上がるように設計されても良い。
【0266】
利用インセンティブ(I2)は、Ce、Ce/C、(Ce-Cs)、または(Ce-Cs)/Cの値が大きくなるにつれ段階的にユーザメリットが上がるように設計されても良い。逆に言えば、利用インセンティブ(I2)は、Ce、Ce/C、(Ce-Cs)、または(Ce-Cs)/Cの値が小さいほどユーザメリットが減少したり、割り増し料金のようにデメリットが増えるように設計されても良い。
【0267】
このようにすることで、利用開始時にバッテリー蓄電量が所定量より低かった場合、利用終了時のバッテリー蓄電量が所定量より高かった場合などに利用料金を割引することができる。また、利用終了時と利用開始時とのバッテリー蓄電量の変化量(利用前後変化量)が正の値であればその値に応じた割引、負の値であればその値に応じた割り増しをすることなどが可能となる。
【0268】
利用開始時のバッテリー蓄電量が一定量以上あることは、次の利用者の利用体験上とても有用である。そのため、このような利用インセンティブを車両111のバッテリー蓄電量の値や変化量から設定して、シェアリングカーの運営会社が利用料金に組み込むことで、返却時にバッテリー蓄電量を高めようとする動機付けを全利用者に対して与えることができる。これは、シェアリングカーの運営会社が個別の車両111の充電量を一定量以上に管理するメンテナンスコストを削減することにも役立つと思われる。
【0269】
なお、ここで利用インセンティブのレートとなる、1Wh当たりの価値(例えば、円/Wh)はシェアリングカーの運営会社が個別のレートを設定するようにしても良い。自宅の太陽光発電で得た余剰電力をシェアリングカーに充電して、その車両111を返却することで余剰電力の売却ができたり、停電時にシェアリングカーを借りて、そこから自宅へ給電することで自宅の住宅設備や家電を動かす代わりに、利用した電力量に応じたシェアリングカーの利用料金を支払うことなども可能となる。
【0270】
なお、利用料金へのインセンティブは、バッテリー蓄電量だけに依らず、シェアリングカーを返却した駐車場に充電設備があり、返却時に充電プラグを接続したり、充電スタンドが近い駐車場で返却する、といったことを含めて算出するようにしても良い。
【0271】
図30は、車両111のバッテリー蓄電量を車両111の情報入出力部104にて表示する一例を示す図である。
図26ではバッテリー蓄電量を「一般」「会社」「個人」と電気の所有者に応じて区分して表現したが、これをバッテリー蓄電量を示すインディケータの中でユーザCに提示するようにしても良い。
【0272】
図30(a)は、電気の所有者に応じて区分してバッテリー蓄電量が表示されている。「一般」とされたシェアリングカーの運営会社の所有分は15KWhであり、この電気を利用した場合の炭素排出のCO2換算量は25Kg-CO2eqである。これにより、「一般」の電気が利用されることで、どれぐらいの炭素排出量になるかを示している。「会社」については会社電子鍵81が示す法人/組織の所有分とその炭素排出量、「個人」についてはユーザ個人の所有分とその炭素排出量である。ここでは、「会社」と「個人」については太陽光発電などの再生エネルギーを100%用いた電力であったため、炭素排出量が0Kg-CO2eqと表示されている。
【0273】
つまり、第1電子鍵が第1会社鍵である場合、ディスプレイに表示されるインディケータは、第1事業体が所有する第1蓄電量を示す第1オブジェクト(一例として、
図30(a)に示す会社のバッテリー蓄電量)と、第1事業体が所有しない他の蓄電量を示す第2オブジェクト(一例として、
図30(a)に示す個人及び一般のバッテリー蓄電量)と、を含む。
【0274】
このように表示されることで、同じ電気であっても、その発電時の炭素排出量、地球環境負荷の違いを認識することができる。
図30(c)、
図30(d)はバッテリー蓄電量の別の表示モードであり、ユーザCが切り替えることができる。
図30(c)では非炭素由来、炭素由来の電力の蓄電量を示している。
図30(d)ではバッテリーに蓄電された電気全体の発電時の炭素排出量を示している。
【0275】
図30(b)では、
図26で利用開始時にシェアリングカーの運営会社の所有分としての「一般」の蓄電量と、ユーザ個人の所有分としての「個人」の蓄電量と、が区別されて表示される。つまり、第1電子鍵が第1個人鍵である場合、ディスプレイに表示されるインディケータは、第1ユーザ個人が所有する第2蓄電量を示す第3オブジェクト(一例として、
図30(b)に示す個人のバッテリー蓄電量)と、第1ユーザが所有しない他の蓄電量を示す第4オブジェクト(一例として、
図30(b)に示す一般のバッテリー蓄電量)とを含む。
【0276】
これにより、シェアリングカーを利用するユーザCは、
図29のような利用インセンティブが適用される場合において、利用料金に組み込まれる利用インセンティブを見積もり易くすることができる。上記の説明においては、バッテリーへの蓄電量をKWhの単位で示しているが、本開示はこれに限らず、バッテリー全体の蓄電量を100%とする%単位で表現しても良いし、予想走行距離を示すKm単位やマイル単位で表現しても良い。
【0277】
同様に、上記の説明では炭素排出量のCO2換算量の単位としてKg-CO2eqを用いたが、これに限らず1Wh当たりの炭素排出量換算値を示すKg-CO2eq/Whでも、1Km当たりの炭素排出量換算値を示すKg-CO2eq/Kmでも、バッテリー1%の消費量当たりの炭素排出量換算値を示すKg-CO2eq/%でも良い。
【0278】
なお、上記の説明では電気の所有者(または購入者)の区分に応じて表現したが、これに限らずその電気を充電した充電器の所有者の区分に応じて表現しても良い。充放電時にやり取りされる充電器ID情報に基づき、充電された電気や、充電に用いた充電器の所有者を特定することが可能である。
【0279】
図31及び
図32は、利用開始または終了時の情報端末61の画面遷移を示した図である。
図31は利用開始時の画面遷移を示している。まず、最初にユーザCは情報端末61にインストールされているシェアリングカーを利用するためのアプリ「シェアリングカーアプリ」を起動する。起動した画面が最初の画面であり、画面にはすぐに利用開始するための「今すぐ利用」ボタン、シェアリングカーの予約を行うための「予約」ボタン、過去の利用履歴を確認するための「履歴」ボタン、ユーザCの個人情報や電子鍵の設定情報を確認及び設定するための「設定」ボタンとが表示されている。
【0280】
ユーザCが「今すぐ利用」ボタンをタッチ操作等で操作部603を介して選択すると、利用する車両111を特定するために、車両111に貼付された2次元コードを読み取る画面に遷移する。画面の破線四角の中に車両111の2次元コードを収めることでシェアリングカーアプリが車両111(車両ID)を特定することができる。
【0281】
車両111が特定されると、車両111を利用する鍵を選択する画面へ遷移する。ここでは3つの鍵が例示されている。○○会社〇〇部の業務目的で車両111を利用する場合に選択する一番目の鍵と、このユーザCが兼務している同じ〇〇会社内の□□部の業務目的で車両111を利用する場合に選択する二番目の鍵と、このユーザCが私用目的で車両111を利用する場合に選択する三番目の鍵と、が表示されている。ユーザCは、
図31において、車両利用の目的に応じて二番目の鍵を選択している。つまり、兼務先である□□部の業務目的でこの車両111を利用しようとしている。
【0282】
鍵が選択されると、車両111を利用可能かが鍵管理クラウド10の演算部503で判定され、利用許可された場合は、乗車可能である旨のメッセージが表示される。この例では、乗車後は車両111に具備された情報入出力部104(例えば、コクピットに配置されたモニター)に、車両111の起動方法や、利用終了の操作方法などのガイダンスが提示されることを通知している。
【0283】
また、所定時間以内に乗車行為が検出されなかった場合(例えば、その車両111のいずれのドア、トランクも開錠されなかった場合)には、自動的に利用終了されるようにしても良い。この自動キャンセルの機能及びその提示は、とりわけ予約されていた車両111の利用開始時刻を所定時間過ぎても利用開始が検出されない場合などに、その予約者に対して利用料金が所定額以上に増加することを抑制し、別の利用希望者へその車両111を融通するためでもある。
【0284】
図32は利用終了時の画面遷移を示している。ユーザCが情報端末61から利用終了を操作する場合は、シェアリングカーアプリを起動し、「今すぐ返却」ボタンを選択することで利用を終了することができる。画面には分かり易くなるように、利用終了する鍵を示す情報が示されるようにしても良い。「今すぐ返却」ボタンが選択されると、利用終了の確認画面へ遷移する。確認画面では、利用終了する車両情報(車両111の外観映像、車両111のナンバーなど)と、鍵情報(鍵所有者の情報等)と、が情報端末61に表示される。
【0285】
確認画面で利用終了の意思が確認されると、利用したユーザ、利用した鍵、利用した車両、利用開始/終了日時、利用開始/終了場所、利用料金などを含む利用履歴情報(
図21、
図22、
図23での利用サマリー情報)が表示される。
【0286】
図33は車両利用中にコックピットを例示する図である。この図のように自車両に対する他車両や通行人等との相対的位置関係を示す俯瞰図情報331、目的地までのルートと自車両周辺のマップを示すナビゲーション情報332、現在利用している鍵と保険を示す鍵情報333、現在のバッテリー蓄電量を示すバッテリー情報334、現在の走行速度情報335が表示されている。
【0287】
鍵情報がコックピット(車両内)に表示されることで、この車両111を利用するユーザCは利用中である鍵を認識し易くなる。言い換えれば、その鍵に紐づく車両111の利用目的(図では会社電子鍵81であるため、兼務先の□□部の業務中であること)を想起し易くし、業務目的外の利用を阻み、業務に集中する心理的効果が期待できる。
【0288】
また、バッテリー情報では三角形のマークが示しているところが、目的地に到着した際の予想バッテリー残量を示している。ユーザCはこれを確認しながら、目的地まで充電せずに到達可能か否かを知ることができる。また、こういう表示を行うことで、適当なタイミングで充電を促すことも可能であるし、充電がきれて途中で移動できなくなる不安を軽減することができる。
【0289】
(その他の実施の形態)
鍵管理システム100及び鍵管理システム200で実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供されてもよい。
【0290】
鍵管理システム100及び鍵管理システム200で実行されるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0291】
さらに、鍵管理システム100及び鍵管理システム200で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、鍵管理システム100及び鍵管理システム200で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
【0292】
本開示のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0293】
本開示における制御方法、プログラム及び記憶媒体は、車両を管理するコンピュータにおいて利用されうる。
【符号の説明】
【0294】
1 車両
2 セルラー通信
3 広域通信網
4 近距離無線通信
5 車両管理クラウド
6 情報端末
7 情報端末
8 電子鍵
9 電子鍵
10 鍵管理クラウド
11 共有車両
12 情報端末
21 個人充電器
22 会社充電器
23 一般充電器
24 個人クラウド
25 会社クラウド
26 一般クラウド
27 個人保険クラウド
28 会社保険クラウド
61 情報端末
81 会社電子鍵
91 個人電子鍵
100 鍵管理システム
101 可動部
102 照明部
103 センサー部
104 情報入出力部
105 鍵制御部
106 演算部
107 メモリ
108 通信部
109 車室空間制御部
111 車両
121 バッテリー管理部
122 車室環境調整部
200 鍵管理システム
211 映像音声出力部
212 操作部
213 電力部
215 演算部
216 メモリ
501 通信部
502 メモリ
503 演算部
601 センサー部
602 映像音声出力部
603 操作部
604 演算部
605 メモリ
606 通信部
1001 通信部
1002 メモリ
1003 演算部