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特開2023-140289金属比率検査方法、電気加熱式触媒の製造方法、及びハニカム構造体の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140289
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】金属比率検査方法、電気加熱式触媒の製造方法、及びハニカム構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/952 20060101AFI20230927BHJP
   F01N 3/24 20060101ALI20230927BHJP
【FI】
G01N21/952
F01N3/24 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023008297
(22)【出願日】2023-01-23
(31)【優先権主張番号】P 2022046047
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】横井 里奈
(72)【発明者】
【氏名】野呂 貴志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆道
【テーマコード(参考)】
2G051
3G091
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AB20
2G051BA20
2G051BB01
2G051BB03
2G051BB11
2G051CA04
2G051CB01
3G091AB01
3G091BA39
3G091CA04
(57)【要約】
【課題】より容易に溶射複合材の金属比率を検査することができる金属比率検査方法、電気加熱式触媒の製造方法、及びハニカム構造体の製造方法を提供する。
【解決手段】金属比率検査方法は、金属及びセラミックスを含む溶射複合材の金属比率を検査するための金属比率検査方法であって、溶射複合材に撮像光を照射しながら溶射複合材を撮像する撮像工程(ステップS11)と、撮像工程で得た溶射複合材の画像の輝度分布に基づき、溶射複合材の金属比率を推定する推定工程(ステップS12)と、を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属及びセラミックスを含む溶射複合材の金属比率を検査するための金属比率検査方法であって、
前記溶射複合材に撮像光を照射しながら前記溶射複合材を撮像する撮像工程と、
前記撮像工程で得た前記溶射複合材の画像の輝度分布に基づき、前記溶射複合材の金属比率を推定する推定工程と、
を含む、
金属比率検査方法。
【請求項2】
前記撮像工程では、前記溶射複合材への前記撮像光の照射角度を30°~90°とする、
請求項1に記載の金属比率検査方法。
【請求項3】
前記撮像工程では、前記撮像光の照度を75万lux~150万luxとする、
請求項1に記載の金属比率検査方法。
【請求項4】
前記溶射複合材は、ハニカム構造体に金属電極を固定する溶射固定層を含む、
請求項1に記載の金属比率検査方法。
【請求項5】
前記溶射複合材は、ハニカム構造体の外周面に形成された溶射下地層を含む、
請求項1に記載の金属比率検査方法。
【請求項6】
前記金属比率検査方法が、前記推定工程で推定された金属比率が所定範囲に含まれているかを判定する判定工程を更に含む、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法。
【請求項7】
金属及びセラミックスを含む溶射固定層により金属電極が固定された電気加熱式触媒を準備する準備工程と、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法により、前記溶射固定層の金属比率を検査する検査工程と、
前記検査工程の検査結果に基づき、前記溶射固定層の金属比率が所定範囲に含まれている前記電気加熱式触媒を選別する電気加熱式触媒選別工程と、
を含む、
電気加熱式触媒の製造方法。
【請求項8】
金属及びセラミックスを含む溶射下地層が外周面に形成されたハニカム構造体を準備する準備工程と、
請求項1から5までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法により、前記溶射下地層の金属比率を検査する第1検査工程と、
前記第1検査工程の検査結果に基づき、前記溶射下地層の金属比率が所定範囲に含まれている前記ハニカム構造体を選別するハニカム構造体選別工程と、
を含む、
ハニカム構造体の製造方法。
【請求項9】
前記ハニカム構造体選別工程では、前記溶射下地層の金属比率が20~80%の範囲に含まれている前記ハニカム構造体を選別する、
請求項8に記載のハニカム構造体の製造方法。
【請求項10】
金属及びセラミックスを含む溶射下地層が外周面に形成されたハニカム構造体を準備する準備工程と、前記溶射下地層の金属比率を検査する第1検査工程と、前記第1検査工程の検査結果に基づき、前記溶射下地層の金属比率が所定範囲に含まれている前記ハニカム構造体を選別するハニカム構造体選別工程と、を含む、ハニカム構造体の製造方法により得られたハニカム構造体に金属電極を固定した電気加熱式触媒を製造する方法であって、
前記ハニカム構造体選別工程の後に、選別された前記ハニカム構造体において、金属及びセラミックスを含む溶射固定層により前記溶射下地層に前記金属電極を固定する固定工程と、
前記溶射固定層の金属比率を検査する第2検査工程と、
前記第2検査工程の検査結果に基づき、前記溶射固定層の金属比率が所定範囲に含まれている前記電気加熱式触媒を選別する電気加熱式触媒選別工程と、
を含み、
前記第1及び第2検査工程は、請求項1から5までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法により行われる、
電気加熱式触媒の製造方法。
【請求項11】
前記電気加熱式触媒選別工程では、前記溶射固定層の金属比率が20~80%の範囲に含まれている前記電気加熱式触媒を選別する、
請求項7に記載の電気加熱式触媒の製造方法。
【請求項12】
前記電気加熱式触媒選別工程では、前記溶射固定層の金属比率が20~80%の範囲に含まれている前記電気加熱式触媒を選別する、
請求項10に記載の電気加熱式触媒の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属及びセラミックスを含む溶射複合材の金属比率を検査するための金属比率検査方法、並びにその方法を用いた電気加熱式触媒の製造方法及びハニカム構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属及びセラミックスを含む複合材を溶射することが行われている。下記の特許文献1では、ハニカム構造体に設けられた電極層と金属電極とを溶射複合材により接合することが開示されている。
【0003】
例えば体積抵抗率等の溶射複合材の特性は、溶射複合材の金属比率に依存する。溶射複合材の金属比率を検査する従来方法としては、溶射複合材の切断端面のSEM(走査電子顕微鏡)画像を得た後に、そのSEM画像中のコントラストの違いから、溶射複合材の金属比率を算出することが挙げられる。
【0004】
溶射複合材の金属比率の検査ではないが、下記の特許文献2では、セラミック部品の外観を撮像し、撮像された画像の輝度差からセラミック部品の内部クラックを検出することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-106164号公報
【特許文献2】特開2002-318195号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような従来の金属比率検査方法では、SEM画像から溶射複合材の金属比率を算出している。SEM画像を得るためには、複雑な操作、すなわち、溶射複合材を切断し、その切断片を樹脂に埋めることで試験片を作成し、その試験片をSEMで観察することが必要となる。また、SEM画像を得るためには、検査対象である溶射複合材を破壊する必要がある。また、SEMの観察視野限界により、複数の溶射複合材の検査を同時に行うことが難しい。
【0007】
本発明は、上記のような課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであり、その目的の一つは、より容易に溶射複合材の金属比率を検査することができる金属比率検査方法、電気加熱式触媒の製造方法、及びハニカム構造体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
項目1.本発明は、一実施の形態において、金属及びセラミックスを含む溶射複合材の金属比率を検査するための金属比率検査方法であって、溶射複合材に撮像光を照射しながら溶射複合材を撮像する撮像工程と、撮像工程で得た溶射複合材の画像の輝度分布に基づき、溶射複合材の金属比率を推定する推定工程と、を含む金属比率検査方法に関する。
【0009】
項目2.本発明は、撮像工程では、溶射複合材への撮像光の照射角度を30°~90°とする、項目1に記載の金属比率検査方法に関していてよい。
【0010】
項目3.本発明は、撮像工程では、撮像光の照度を75万lux~150万luxとする、項目1又は2に記載の金属比率検査方法に関していてよい。
【0011】
項目4.本発明は、溶射複合材は、ハニカム構造体に金属電極を固定する溶射固定層を含む、項目1から3までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法に関していてよい。
【0012】
項目5.本発明は、溶射複合材は、ハニカム構造体の外周面に形成された溶射下地層を含む、項目1から4までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法に関していてよい。
【0013】
項目6.本発明は、金属比率検査方法が、推定工程で推定された金属比率が所定範囲に含まれているかを判定する判定工程を更に含む、項目1から5までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法に関していてよい。
【0014】
項目7.本発明は、金属及びセラミックスを含む溶射固定層により金属電極が固定された電気加熱式触媒を準備する準備工程と、項目1から5までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法により、溶射固定層の金属比率を検査する検査工程と、検査工程の検査結果に基づき、溶射固定層の金属比率が所定範囲に含まれている電気加熱式触媒を選別する電気加熱式触媒選別工程と、を含む、電気加熱式触媒の製造方法に関する。
【0015】
項目8.本発明は、金属及びセラミックスを含む溶射下地層が外周面に形成されたハニカム構造体を準備する準備工程と、項目1から5までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法により、溶射下地層の金属比率を検査する第1検査工程と、第1検査工程の検査結果に基づき、溶射下地層の金属比率が所定範囲に含まれているハニカム構造体を選別するハニカム構造体選別工程と、を含む、ハニカム構造体の製造方法に関する。
【0016】
項目9.本発明は、ハニカム構造体選別工程では、溶射下地層の金属比率が20~80%の範囲に含まれているハニカム構造体を選別する、項目8に記載のハニカム構造体の製造方法に関していてよい。
【0017】
項目10.本発明は、金属及びセラミックスを含む溶射下地層が外周面に形成されたハニカム構造体を準備する準備工程と、溶射下地層の金属比率を検査する第1検査工程と、第1検査工程の検査結果に基づき、溶射下地層の金属比率が所定範囲に含まれているハニカム構造体を選別するハニカム構造体選別工程と、を含む、ハニカム構造体の製造方法により得られたハニカム構造体に金属電極を固定した電気加熱式触媒を製造する方法であって、ハニカム構造体選別工程の後に、選別されたハニカム構造体において、金属及びセラミックスを含む溶射固定層により溶射下地層に金属電極を固定する固定工程と、溶射固定層の金属比率を検査する第2検査工程と、第2検査工程の検査結果に基づき、溶射固定層の金属比率が所定範囲に含まれている電気加熱式触媒を選別する電気加熱式触媒選別工程と、を含み、第1及び第2検査工程は、項目1から5までのいずれか1項に記載の金属比率検査方法により行われる、電気加熱式触媒の製造方法に関する。
【0018】
項目11.本発明は、電気加熱式触媒選別工程では、溶射固定層の金属比率が20~80%の範囲に含まれている電気加熱式触媒を選別する、項目7又は10に記載の電気加熱式触媒の製造方法に関していてよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の金属比率検査方法、電気加熱式触媒の製造方法、及びハニカム構造体の製造方法の一実施の形態によれば、より容易に溶射複合材の金属比率を検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施の形態による金属比率検査方法を示すフローチャートである。
図2図1の方法の検査対象の一例であるハニカム構造体を示す斜視図である。
図3図2のハニカム構造体に固定される金属電極を示す平面図である。
図4図3の溶射固定層及びその周辺を示す斜視図である。
図5図1の方法を実施することができる検査装置の一例を示す平面図である。
図6図5の検査装置を示す側面図である。
図7図1の方法を実施することができる検査装置の第1変形例を示す平面図である。
図8図7の検査装置を示す側面図である。
図9図1の方法を実施することができる検査装置の第2変形例を示す平面図である。
図10図9の検査装置を示す側面図である。
図11図1の方法を実施することができる検査装置の第3変形例を示す平面図である。
図12図11の検査装置を示す側面図である。
図13】本発明の一実施の形態による電気加熱式触媒の製造方法を示すフローチャートである。
図14】本発明の一実施の形態によるハニカム構造体の製造方法を示すフローチャートである。
図15】本発明の一実施の形態による電気加熱式触媒の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0022】
図1は、本発明の一実施の形態による金属比率検査方法を示すフローチャートである。本実施の形態による金属比率検査方法は、金属及びセラミックスを含む溶射複合材の金属比率を検査するためのものである。
【0023】
溶射複合材は、溶融された材料が所定の対象に吹き付けられることで形成されたものである。後に図を用いて説明するように、溶射複合材は、ハニカム構造体に金属電極を固定する溶射固定層、及びハニカム構造体の外周面に形成された溶射下地層を含んでいてよい。しかしながら、溶射複合材は、これらに限定されず、金属及びセラミックスを含む任意のものであってよい。
【0024】
溶射複合材の金属比率とは、溶射複合材に含まれる金属成分の割合である。より具体的には、溶射複合材の金属比率は、溶射複合材の観察部分全体の面積に占める金属成分の面積の比率であり得る。また、溶射複合材の金属比率は、溶射複合材に占める金属成分の重量%又は体積%の場合もある。重量%又は体積%は、金属成分の面積の比率等の他の数値から換算されてもよい。
【0025】
図1に示すように、本実施の形態の金属比率検査方法は、撮像工程(ステップS11)及び推定工程(ステップS12)を含んでいる。
【0026】
撮像工程(ステップS11)は、溶射複合材に撮像光を照射しながら溶射複合材を撮像する工程である。撮像工程では、溶射複合材の画像(溶射複合材の外観の画像)が得られる。画像には、1つの溶射複合材のみが写っていてもよいが、複数の溶射複合材が写っていてもよい。画像には、例えば溶射複合材が載っているハニカム構造体の表面等の他の部材(背景)が写っていてよい。しかしながら、1つの溶射複合材の一部が画像全体を占めていてもよい。特定の溶射複合材に関して、その溶射複合材を1つの角度から撮像した1つの画像が得られてもよいし、その溶射複合材を複数の角度から撮像された複数の画像が得られてもよい。特定の溶射複合材の特定の面を複数の角度から撮像した画像が得られてもよい。例えば、溶射複合材が後述の溶射固定層であるとき、特定の溶射固定層を異なる方向から撮像した複数の画像を得てよい。また、溶射複合材が後述の溶射下地層であるとき、その溶射下地層の外面を異なる方向から撮像した複数の画像を得てよい。特定の溶射複合材に関して複数の画像が得られるとき、それらの画像が統合されてその溶射複合材の立体形状が得られてもよい。画像は、静止画であってもよいし、動画(連続的に撮像された複数の静止画)であってもよい。必要に応じて、撮像範囲及び/又は画像種別(静止画若しくは動画)を切り替えてよい。
【0027】
溶射複合材への撮像光の照射は、様々な条件で実施できる。撮像光は、発光手段から溶射複合材に直接的に照射された直接光であってよい。撮像光が直接光であるとき、溶射複合材への撮像光の照射角度は、限定はされないが、30°~90°とすることができる。照射角度を30°以上かつ90°以下とすることで、溶射複合材で反射された撮像光を撮像手段又はカメラでより検出しやすくなり、金属比率の違いを判別しやすくなる。照射角度は、撮像光とサンプル正面とがなす角度と理解できる。撮像光の位置は、発光手段の位置と理解してよい。サンプルは、溶射複合材そのものと理解してもよいが、溶射複合材が設けられた部材(例えばハニカム構造体)と理解してもよい。サンプル正面は、溶射複合材の撮像される面と理解してもよい。一方、サンプルを溶射複合材が設けられた部材とするとき、サンプル正面を、溶射複合材が設けられた位置におけるその部材の接平面と理解してもよい。一方、撮像光は、発光手段から反射部材又は拡散部材を介して溶射複合材に間接的に照射された間接光又は拡散光であってもよい。撮像光の照度は、限定はされないが、75万lux~150万luxとすることができる。照度が75万lux以上であることで、十分な光量の下で溶射複合材を撮像でき、金属比率の違いを判別しやすくなる。照度が150万lux以下であることで、過剰な光量により画像が白飛びすることを回避でき、金属比率の違いを判別しやすくなる。撮像光の照度は、溶射複合材の位置において例えば照度計等を用いて測定することができる。
【0028】
推定工程(ステップS12)は、撮像工程で得た溶射複合材の画像の輝度分布に基づき、溶射複合材の金属比率を推定する工程である。
【0029】
上述のように溶射複合材は、金属及びセラミックスを含んでいる。金属は、セラミックスと比較してより多くの撮像光を反射する。このため、溶射複合材の金属比率に応じて画像の輝度分布に違いが表れる。溶射複合材の金属比率が高いほど、高輝度の部分が多くなる。金属比率が既知の複数の溶射複合材の画像を得て、それらの画像の輝度分布を基準分布として予め求めることができる。そして、撮像工程で得た溶射複合材の画像の輝度分布と基準分布とを比較することで、その画像における溶射複合材の金属比率を推定することができる。
【0030】
撮像工程で得た画像に溶射複合材以外のもの(背景)が含まれているとき、例えばエッジ検出等の画像処理により、画像から溶射複合材部分を切り出した上で、その溶射複合材部分の輝度分布を求めることができる。撮像工程で得た画像に複数の溶射複合材が含まれているとき、それぞれの溶射複合材部分における輝度分布を求めることができる。輝度分布は、反射光のヒストグラムと理解できる。輝度分布は、画像の画素毎の輝度値の分布であってもよいし、互いに隣接する複数の画素を含む領域毎の輝度値の分布であってもよい。領域の輝度値は、その領域に含まれる複数の画素の輝度値の平均値であり得る。特定の溶射複合材に関して複数の画像が得られるとき、各画像の金属比率を個々に推定した結果を得てもよいし、各画像の金属比率の平均値を最終的な金属比率の結果として得てもよい。
【0031】
図1に示すように、本実施の形態の金属比率検査方法は、推定工程で推定された金属比率が所定範囲に含まれているかを判定する判定工程(ステップS13)を更に含んでいる。判定に用いる金属比率の範囲は、検査対象毎に適宜設定することができる。例えば、溶射複合材が、ハニカム構造体に金属電極を固定する溶射固定層であるか、又はハニカム構造体の外周面に形成された溶射下地層であるとき、判定に用いる金属比率の範囲を20~80%の範囲と設定してよい。
【0032】
次に、図2は、図1の方法の検査対象の一例であるハニカム構造体1を示す斜視図である。図2に示すハニカム構造体1は、電気加熱式担体の一部を構成するものである。電気加熱式担体は、通電によりハニカム構造体1を発熱させることで、ハニカム構造体1に担持された触媒をエンジン始動前に活性温度まで昇温させることができるものである。電気加熱式担体は、例えば自動車等の排気経路上に設けられ、エンジンから排出される排気ガスを浄化するために用いることができる。
【0033】
ハニカム構造体1は、ハニカム構造部10と、一対の電極層11と、一対の溶射下地層12とを有している。
【0034】
ハニカム構造部10は、セラミックス製の柱状の部材であり、外周壁100と、外周壁100の内側に配設され、一方の端面から他方の端面まで延びる流路を形成する複数のセル101aを区画形成する隔壁101とを有している。柱状とは、セル101aの流路方向(ハニカム構造部10の軸方向)に厚みを有する立体形状と理解できる。ハニカム構造部10の軸方向長さとハニカム構造部10の端面の直径又は幅との比(アスペクト比)は任意である。柱状には、ハニカム構造部10の軸方向長さが端面の直径又は幅よりも短い形状(偏平形状)が含まれていてよい。
【0035】
一対の電極層11は、外周壁100の表面に設けられている。一対の電極層11は、ハニカム構造部10の周方向に互いに離間して設けられている。より具体的には、一対の電極層11は、ハニカム構造部10の中心軸を挟んで設けられている。図2では、一対の電極層11の一方のみが示されている。
【0036】
電極層11は、電気を流しやすくするために設けられた層である。電極層11の体積抵抗率は、ハニカム構造部10の体積抵抗率の1/200以上、1/10以下であることが好ましい。電極層11の材質は、導電性セラミックス、金属、又は金属及び導電性セラミックスとの複合材(サーメット)を使用することができる。金属としては、例えばCr、Fe、Co、Ni、Si又はTiの単体金属又はこれらの金属よりなる群から選択される少なくとも一種の金属を含有する合金が挙げられる。導電性セラミックスとしては、限定的ではないが、炭化珪素(SiC)が挙げられ、珪化タンタル(TaSi2)及び珪化クロム(CrSi2)等の金属珪化物等の金属化合物が挙げられる。
【0037】
後述のように、本実施の形態の電気加熱式担体では、電極層11上に金属電極2(図3参照)が固定される。図示はしないが、金属電極2には、パワーケーブルを介して例えばバッテリ等の外部電源が接続され得る。金属電極2及び電極層11を通してハニカム構造部10に電圧を印加することにより、ハニカム構造部10を発熱させることができる。
【0038】
本実施の形態の一対の電極層11は、分離帯110と、この分離帯110によって分離された第1及び第2部分電極層111,112とをそれぞれ有している。分離帯110は、第1及び第2部分電極層111,112の間に設けられたスリットであり得る。スリットには、第1及び第2部分電極層111,112よりも体積抵抗率が高い材料が充填されていてもよい。
【0039】
一対の溶射下地層12は、電極層11に金属電極2を固定する溶射固定層3(図3参照)の密着性を向上させるため設けられた層であり、各電極層11の上に形成されている。図2では一対の溶射下地層12の一方のみが示されている。溶射下地層12は、金属及びセラミックスを含む溶射複合材を構成する。溶射下地層12の材料としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素、ベントナイト及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。また、金属としては、上記の金属以外として、耐熱性を有する金属、例えばAl若しくはCrを含有する金属、SUS、又はNi-Cr合金等を用いることができる。溶射下地層12が省略されてもよい。
【0040】
次に、図3図2のハニカム構造体1に固定される金属電極2を示す平面図であり、図4図3の溶射固定層3及びその周辺を示す斜視図である。本実施の形態の電気加熱式担体は、上述のハニカム構造体1と、ハニカム構造体1に電圧を印加するための一対の金属電極2と、一対の金属電極2をハニカム構造体1に固定するための複数の溶射固定層3とを備えている。図3は、本発明の実施の形態による電気加熱式担体の要部を示しており、一方の電極層11に1つの金属電極2が固定された様子を示している。他方の電極層11にも別の金属電極2が同様に固定される。一対の金属電極2のうち、一方は陽極として扱われ、他方は陰極として扱われる。すなわち、一方の金属電極2からハニカム構造体1を通って他方の金属電極2に電流が流れる。
【0041】
一対の金属電極2のそれぞれには、基部20、接続部21及び引出部22が設けられている。これら基部20、接続部21及び引出部22は、板体によって構成され得る。少なくとも基部20及び接続部21は、ハニカム構造体1の外周面に沿うように円弧状であるか、又は円弧状とすることができる。
【0042】
基部20は、接続部21及び引出部22と一体に設けられている。基部20は、接続部21と引出部22との間に配置されている。基部20は、長手状の板体であり得る。金属電極2は、基部20の延在方向20E(長手方向)がセル101aの流路方向に沿うようにハニカム構造体1の外周面上に配置され得る。このとき、延在方向20Eに直交する基部20の幅方向20Wは、ハニカム構造体1の周方向に延在され得る。また、各金属電極2は、ハニカム構造体1の周方向に関して電極層11の外側(第1及び第2部分電極層111,112のいずれか一方の外側)に基部20が位置するようにハニカム構造体1の外周面上に配置され得る。
【0043】
接続部21は、ハニカム構造体1に固定されて、ハニカム構造体1に電気的に接続される部分である。本実施の形態の接続部21は、ハニカム構造体1の電極層11上の溶射下地層12に接続されている。より具体的には、接続部21は第1及び第2部分電極層111,112上の溶射下地層12に接続されている。
【0044】
本実施の形態の接続部21は、基部20から延出された複数の歯部23を有する櫛歯状とされている。各歯部23は、基部20の延在方向20Eに互いに離間して、基部20の幅方向20Wに係る一方の端部から延出されている。基部20からの歯部23の延在方向23Eは、基部20の幅方向20Wと同じ方向であってよい。基部20からの各歯部23の延出長さは、ハニカム構造体1の周方向に係る電極層11の延在幅以上とすることができる。
【0045】
引出部22は、基部20から引き出された部分である。引出部22は、基部20の幅方向20Wに係る他方の端部から延出されている。引出部22は、図示のように舌片状とすることができる。引出部22は基部20及び接続部21を介してハニカム構造体1に固定されており、引出部22自体は屈曲可能に設けられていてよい。引出部22には、図示しないパワーケーブルを介して外部電源が接続され得る。
【0046】
上述のように、溶射固定層3は金属電極2をハニカム構造体1に固定している。溶射固定層3は、ハニカム構造体1の外周面の上に接続部21が載置された状態で、溶射された材料がハニカム構造体1の外周面(溶射下地層12又は電極層11)及び各歯部23の上に吹き付けられることで形成され得る。溶射固定層3は、歯部23の幅方向23Wに各歯部23を跨ぐようにハニカム構造体1の外周面(溶射下地層12又は電極層11)及び歯部23の上に設けられている。歯部23の幅方向23Wは、歯部23の延在方向23Eに直交する方向であり、基部20の延在方向20Eと同じ方向であってよい。図4に特に表れているように、溶射固定層3は、所定の厚み3T、幅3W及び奥行3Dを有する立体形状の形態をとることがある。溶射固定層3は、複数の面3aを有することがある。溶射固定層3は、ドーム型形状であってよい。
【0047】
溶射固定層3は、金属及びセラミックスを含む溶射複合材を構成する。溶射固定層3の材料は、溶射下地層12の材料と同種ものであってよい。すなわち、溶射固定層3の材料としては、金属珪素と炭化珪素の複合材、珪化タンタルや珪化クロム等の金属珪化物と金属珪素と炭化珪素の複合材、更には上記の一種又は二種以上の金属に熱膨張低減の観点から、アルミナ、ムライト、ジルコニア、コージェライト、窒化珪素、ベントナイト及び窒化アルミ等の絶縁性セラミックスを一種又は二種以上添加した複合材が挙げられる。また、金属としては、上記の金属以外として、耐熱性を有する金属、例えばAl若しくはCrを含有する金属、SUS、又はNi-Cr合金等を用いることができる。
【0048】
次に、図5図1の方法を実施することができる検査装置4の一例を示す平面図であり、図6図5の検査装置4を示す側面図である。上述の金属比率検査方法は、図5及び図6に示す検査装置4を用いて実施することができる。
【0049】
図5及び図6に示すように、検査装置4は、支持台40、撮像手段41、発光手段42及び処理装置43を含んでいる。
【0050】
支持台40は、検査対象である溶射複合材5aを有する試験体5を支持するための台である。試験体5は、限定はされないが、上述のようなハニカム構造体1(図2参照)であってもよいし、そのハニカム構造体1に金属電極2(図3参照)が固定された電気加熱式担体であってもよい。すなわち、検査対象である溶射複合材5aは、限定はされないが、溶射下地層12であってもよいし、溶射固定層3であってもよい。
【0051】
撮像手段41は、支持台40に支持された試験体5の溶射複合材5aを撮像するための機器であり、例えばカメラ等の機器により構成することができる。例えば撮像レンズの交換等により、撮像手段41の撮像範囲が変更可能とされてよい。また、撮像手段41によって得られる画像の種別(静止画又は動画)が変更可能とされていてよい。撮像手段41の光軸41aは、溶射複合材5aに向けられている。撮像手段41は、溶射複合材5aの外面に光軸41aが直交するように配置されてもよいし、溶射複合材5aの外面に光軸41aが90°以下の角度で交わるように配置されてもよい。
【0052】
支持台40及び撮像手段41は、試験体5の配置位置を変えずに、撮像手段41が撮像する試験体5の溶射複合材5a及び/又は溶射複合材5aの部分を変更できるように構成されてよい。本実施形態では、支持台40が試験体5を回転可能に支持する回転台により構成されており、支持台40の回転軸40aに直交する面に溶射複合材5aが交わるように支持台40上に試験体5が載置されている。支持台40の回転軸40aは、試験体5の軸方向と同軸とされている。支持台40が試験体5を回転させることにより、撮像手段41に対向する溶射複合材5a及び/又は溶射複合材5aの部分が変えられる。撮像手段41が試験体5の周囲を移動可能に設けられていてもよい。
【0053】
支持台40及び撮像手段41は、互いの相対的な移動により、撮像手段41が撮像する溶射複合材5a及び/又は撮像手段41が撮像する溶射複合材5aの向きが変更できるように構成されてよい。支持台40及び/又は撮像手段41は、高さ位置を調整することができるように構成されてよい。支持台40及び/又は撮像手段41は、支持台40の回転軸40aに直交する面内で移動可能とされていてよい。撮像手段41は、光軸41aの向きを調整できるように構成されていてよい。
【0054】
発光手段42は、撮像手段41が溶射複合材5aを撮像する際に、溶射複合材5aに撮像光420を照射するための機器である。限定はされないが、発光手段42は、溶射複合材5aの周囲を少なくとも部分的に囲むように配置されることができる。発光手段42は、円環状に配置された発光体421を有している。発光体421は、チューブ照明又はLED発光素子等により構成できる。図5及び図6に示す態様では、撮像手段41と溶射複合材5aとの間に円環状の発光手段42又は発光体421が配置されており、発光手段42の開口部422を通して撮像手段41が溶射複合材5aに対向している。図示の態様では、発光手段42は、溶射複合材5aの周囲360°の位置から溶射複合材5aに発光体421から撮像光420を直接的に照射することができる。
【0055】
処理装置43は、例えばコンピュータ又は専用回路等により構成される機器である。処理装置43は、有線又は無線により上述の支持台40、撮像手段41及び発光手段42に接続されており、これら支持台40、撮像手段41及び発光手段42の動作を制御することができる。より具体的には、処理装置43は、支持台40及び撮像手段41の位置制御、支持台40の回転動作、発光手段42の発光動作、及び撮像手段41の撮像動作等を制御することができる。処理装置43は、撮像手段41によって撮像された溶射複合材5aの画像を入手し、その画像の処理を行うことができる。処理装置43による画像処理には、溶射複合材5aの画像の輝度分布に基づき溶射複合材5aの金属比率を推定する推定処理、及び推定処理で推定された金属比率が所定範囲に含まれているかを判定する判定処理が含まれていてよい。
【0056】
換言すると、処理装置43は、発光手段42から溶射複合材5aに撮像光420を照射しながら、撮像手段41に溶射複合材5aを撮像させる撮像部430と、撮像手段41によって撮像された溶射複合材5aの画像の輝度分布に基づき、溶射複合材5aの金属比率を推定する推定部431と、推定部431によって推定された金属比率が所定範囲に含まれているかを判定する判定部432とを含んでいてよい。
【0057】
次に、図7図1の方法を実施することができる検査装置4の第1変形例を示す平面図であり、図8図7の検査装置4を示す側面図である。上述の金属比率検査方法は、図7及び図8に示す検査装置4を用いて実施することもできる。図7及び図8に示す検査装置4では、発光体421からの撮像光420がドーム423を介して間接的に溶射複合材5aに照射される。ドーム423は、撮像光420を反射又は拡散する反射部材又は拡散部材を構成する。ドーム423は曲面状、半球状又は放物曲面状の内面423aを有している。発光体421は、ドーム423の内面423aよりも溶射複合材5aに近い位置に配置されている。その他の構成は、図5及び図6に示す検査装置4と同様である。
【0058】
次に、図9図1の方法を実施することができる検査装置4の第2変形例を示す平面図であり、図10図9の検査装置4を示す側面図である。図5図8に示す態様は、円環状に配置された発光体421を発光手段42が有していたが、発光体421の形状及び/又は配置を適宜変更できる。これは、発光体421から溶射複合材5aに撮像光420を直接的に照射するか又は間接的に照射するかに拘わらない。図9及び図10に示す態様では、試験体5の両側に配置された一対の長手状の発光体421が用いられている。発光体421は、その長さ方向が溶射複合材5aの延在方向に延びるように配置されている。試験体5がハニカム構造体1であり、セル101aの流路方向が高さ方向に沿うようにハニカム構造体1が支持台40に載せられているとき、発光体421はセル101aの流路方向(高さ方向)に延びるように配置され得る。
【0059】
発光体421の形状及び/又は配置に応じて、ドーム423等の発光体421に付随する構成の形状及び/又は配置も適宜変更できる。図9及び図10に示す態様では、図7及び図8に示す態様と同様に、発光体421からの撮像光420がドーム423を介して間接的に溶射複合材5aに照射される。図9及び図10に示す態様では、ドーム423は、円筒を長さ方向に沿う面で半分に切断したかのような形状を有している。
【0060】
次に、図11図1の方法を実施することができる検査装置4の第3変形例を示す平面図であり、図12図11の検査装置4を示す側面図である。図11及び図12に示すように、発光手段42は、同軸落射照明であってもよい。発光手段42は、撮像手段41の光軸41a上に配置されたハーフミラー424を有していてよい。ハーフミラー424は、ハーフミラー424の側方に配置された発光体421からの撮像光420を反射して、光軸41aに沿って溶射複合材5aに照射することができる。また、ハーフミラー424は、溶射複合材5aからの反射光420aを撮像手段41に向けて透過させることができる。なお、発光体421の位置は、ハーフミラー424の側方に限定されず、ハーフミラー424の上方又は下方等の他の位置であってよい。
【0061】
次に、図13は、本発明の一実施の形態による電気加熱式触媒の製造方法を示すフローチャートである。本実施の形態の電気加熱式触媒の製造方法は、準備工程(ステップS21)、検査工程(ステップS22)及び電気加熱式触媒選別工程(ステップS23)を含んでいる。
【0062】
準備工程(ステップS21)は、金属及びセラミックスを含む溶射固定層3により金属電極2が固定された電気加熱式触媒を準備する工程である。この工程を電気加熱式触媒準備工程と称してもよい。金属電極2は、溶射固定層3によりハニカム構造体1の外周面に固定されていてよい。より具体的には、金属電極2は、ハニカム構造体1の電極層11に固定されていてよい。電極層11は、溶射下地層12を有しているか又は有していない。ハニカム構造体1が溶射下地層12を有しているとき、金属電極2は溶射下地層12に固定されている。一方、ハニカム構造体1が溶射下地層12を有していないとき、金属電極2は電極層11に固定されている。
【0063】
検査工程(ステップS22)は、準備工程(ステップS21)の後に、上述の金属比率検査方法(図1参照)により、溶射固定層3の金属比率を検査する検査工程である。この検査工程では、溶射固定層3の金属比率が推定され得る。検査工程では、金属比率が所定範囲に含まれているかの判定が行われなくてよい。すなわち、検査工程には、図1の撮像工程(ステップS11)及び推定工程(ステップS12)が含まれている。
【0064】
電気加熱式触媒選別工程(ステップS23)は、検査工程の検査結果に基づき、溶射固定層3の金属比率が所定範囲に含まれている電気加熱式触媒を選別する工程である。この電気加熱式触媒選別工程では、溶射固定層3の金属比率が20~80%の範囲に含まれている電気加熱式触媒を選別することができる。溶射固定層3の金属比率が20%以上であることで、金属電極2を接合する強度及び導電性をより確実に担保できる。金属比率が80%以下であることで、溶射固定層3の熱膨張を抑え、溶射固定層3の耐熱衝撃性をより確実に担保できる。溶射固定層3の金属比率が所定範囲に含まれていると選別された電気加熱式触媒が次工程に送られる。次工程には出荷が含まれていてよい。一方、溶射固定層3の金属比率が所定範囲に含まれていないと判定された電気加熱式触媒は、リペアを受けるか又は廃棄され得る。限定はされないが、複数の溶射固定層3のすべてについて金属比率が所定範囲に含まれているかを個々に判定し、すべての溶射固定層3の金属比率が所定範囲に含まれている電気加熱式触媒を選別することができる。代替的に、複数の溶射固定層3のうちの幾つかについて金属比率が所定範囲に含まれているかを判定してもよい。
【0065】
次に、図14は、本発明の一実施の形態によるハニカム構造体の製造方法を示すフローチャートである。本実施の形態のハニカム構造体の製造方法は、準備工程(ステップS31)、第1検査工程(ステップS32)及びハニカム構造体選別工程(ステップS33)を含んでいる。
【0066】
準備工程(ステップS31)は、金属及びセラミックスを含む溶射下地層12が外周面に形成されたハニカム構造体1を準備する工程である。この工程をハニカム構造体準備工程と称してもよい。すなわち、本実施の形態のハニカム構造体の製造方法における準備工程では、ハニカム構造体1の電極層11は溶射下地層12を有している。
【0067】
第1検査工程(ステップS32)は、準備工程(ステップS31)の後に、上述の金属比率検査方法(図1参照)により、溶射下地層12の金属比率を検査する検査工程である。この検査工程では、溶射下地層12の金属比率が推定され得る。第1検査工程では、金属比率が所定範囲に含まれているかの判定が行われなくてよい。すなわち、第1検査工程には、図1の撮像工程(ステップS11)及び推定工程(ステップS12)が含まれている。
【0068】
ハニカム構造体選別工程(ステップS33)は、第1検査工程の検査結果に基づき、溶射下地層12の金属比率が所定範囲に含まれているハニカム構造体1を選別する工程である。このハニカム構造体選別工程では、溶射下地層12の金属比率が20~80%の範囲に含まれているハニカム構造体1を選別することができる。溶射下地層12の金属比率が20%以上であることで、導電性をより確実に担保できる。金属比率が80%以下であることで、溶射下地層12の熱膨張を抑えることができ、溶射下地層12の耐熱衝撃性をより確実に担保できる。溶射下地層12の金属比率が所定範囲に含まれていると選別されたハニカム構造体1が次工程に送られる。次工程には金属電極2をハニカム構造体1に固定する工程又は出荷が含まれていてよい。一方、溶射下地層12の金属比率が所定範囲に含まれていないと判定されたハニカム構造体1は、リペアを受けるか又は廃棄され得る。限定はされないが、一対の溶射下地層12のすべてについて金属比率が所定範囲に含まれているかを個々に判定し、すべての溶射下地層12の金属比率が所定範囲に含まれているハニカム構造体1を選別することができる。代替的に、一対の溶射下地層12の一方について金属比率が所定範囲に含まれているかを判定してもよい。
【0069】
次に、図15は、本発明の一実施の形態による電気加熱式触媒の製造方法を示すフローチャートである。本実施の形態の電気加熱式触媒の製造方法は、上述のハニカム構造体の製造方法により得られたハニカム構造体1に金属電極2を固定した電気加熱式触媒を製造する方法である。本実施の形態による電気加熱式触媒の製造方法は、上述の準備工程(ステップS31)、第1検査工程(ステップS32)及びハニカム構造体選別工程(ステップS33)に続いて、固定工程(ステップS34)、第2検査工程(ステップS35)及び電気加熱式触媒選別工程(ステップS36)を含んでいる。
【0070】
固定工程(ステップS34)は、ハニカム構造体選別工程の後に、選別されたハニカム構造体1において、金属及びセラミックスを含む溶射固定層3により溶射下地層12に金属電極2を固定する工程である。選別されたハニカム構造体1とは、溶射下地層12の金属比率が20~80%の範囲に含まれているハニカム構造体1であり得る。
【0071】
第2検査工程(ステップS35)は、固定工程(ステップS34)の後に、上述の金属比率検査方法(図1参照)により、溶射固定層3の金属比率を検査する工程である。この第2検査工程では、溶射固定層3の金属比率が推定され得る。第2検査工程では、金属比率が所定範囲に含まれているかの判定が行われなくてよい。すなわち、第2検査工程には、図1の撮像工程(ステップS11)及び推定工程(ステップS12)が含まれている。
【0072】
電気加熱式触媒選別工程(ステップS36)は、第2検査工程の検査結果に基づき、溶射固定層3の金属比率が所定範囲に含まれている電気加熱式触媒を選別する工程である。この電気加熱式触媒選別工程では、溶射固定層3の金属比率が20~80%の範囲に含まれている電気加熱式触媒を選別することができる。溶射固定層3の金属比率が所定範囲に含まれていると選別された電気加熱式触媒が次工程に送られる。次工程には出荷が含まれていてよい。一方、溶射固定層3の金属比率が所定範囲に含まれていないと判定された電気加熱式触媒は、リペアを受けるか又は廃棄され得る。
【0073】
以上説明した金属比率検査方法、電気加熱式触媒の製造方法、及びハニカム構造体の製造方法の一実施の形態によれば、SEMを用いる場合と比較して、より容易に溶射複合材の金属比率を検査することができる。SEMを用いる場合と比較して、簡単な原理で特徴をつかめる。また、非破壊で溶射複合材5a(溶射下地層12及び/又は溶射固定層3)の金属比率を推定できる。また、SEMを用いる場合と比較して、検査時間(前後作業も含む)を短縮できる。また、検査を行う観察範囲の選択性を向上できる(1つの溶射複合材5aを検査対象とするか若しくは複数の溶射複合材5aを同時に検査対象とするか、又は一部の溶射複合材5aを検査対象とするか若しくは溶射複合材5aの全体を検査対象とするか任意に切り替えることができる)。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと理解される。
【符号の説明】
【0075】
1 :ハニカム構造体
2 :金属電極
3 :溶射固定層
5a :溶射複合材
12 :溶射下地層
420 :撮像光
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15