(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140312
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】積層造形を介するピエゾ抵抗複合体及びそれに関連する複合フィラメント
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20230927BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20230927BHJP
B33Y 80/00 20150101ALN20230927BHJP
【FI】
B29C64/314
B29C64/118
B33Y80/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038209
(22)【出願日】2023-03-13
(31)【優先権主張番号】17/701,364
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】596170170
【氏名又は名称】ゼロックス コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】ユイチエ、チュー
(72)【発明者】
【氏名】サラ、ジェイ.、ベラ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドロス、ヴァシレイオウ
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AA19
4F213AB16
4F213AC02
4F213AG20
4F213AR12
4F213AR15
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL02
4F213WL15
4F213WL23
4F213WL25
4F213WL27
4F213WL67
4F213WL96
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ピエゾ抵抗挙動を呈する印刷部品を形成することが可能である複合体及びその連続フィラメントを利用する積層造形プロセスを提供する。
【解決手段】積層造形に好適な複合フィラメントは、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーの連続ポリマー相と、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせなどの、連続ポリマー相中に分布している導電性粒子と、を含み得る。指定の条件下で、第1の熱可塑性ポリマーは、溶解性又は分解性であり、第2の熱可塑性ポリマーは、不溶性又は非分解性である。印刷部品から第1の熱可塑性ポリマーを除去することによって、印刷部品に多孔性が導入され、それによって印刷部品内のピエゾ抵抗性が誘導又は増強され得る。導電性粒子並びに第1及び第2の熱可塑性ポリマーを含む水性混合物から水を除去してもよく、得られた複合残留物を押出して複合フィラメントを形成してもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合フィラメントであって、
互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続ポリマー相であって、
前記第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、前記第2の熱可塑性ポリマーが、前記指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続ポリマー相と、
前記連続ポリマー相中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む、複合フィラメント。
【請求項2】
前記第1の熱可塑性ポリマーが、水溶性であり、前記第2の熱可塑性ポリマーが、非水溶性である、請求項1に記載の複合フィラメント。
【請求項3】
前記導電性粒子の少なくとも大部分が、前記連続ポリマー相中の前記第2の熱可塑性ポリマーに位置する、請求項2に記載の複合フィラメント。
【請求項4】
前記第1の熱可塑性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項2に記載の複合フィラメント。
【請求項5】
前記導電性粒子が、全複合体質量に基づいて約10:90~約95:5の範囲の粒子:ポリマー重量比で、前記連続ポリマー相中に存在する、請求項1に記載の複合フィラメント。
【請求項6】
前記導電性粒子が、約10ミクロン以下の平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の複合フィラメント。
【請求項7】
前記導電性粒子が、金属、炭素質導体、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項1に記載の複合フィラメント。
【請求項8】
前記第1の熱可塑性ポリマー及び前記第2の熱可塑性ポリマーが、共連続的に分布している、請求項1に記載の複合フィラメント。
【請求項9】
印刷部品であって、
互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続的に印刷されたポリマーマトリックスであって、
前記第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、前記第2の熱可塑性ポリマーが、前記指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続的に印刷されたポリマーマトリックスと、
前記連続的に印刷されたポリマーマトリックス中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む、印刷部品。
【請求項10】
前記第1の熱可塑性ポリマーが、水溶性であり、前記第2の熱可塑性ポリマーが、非水溶性である、請求項9に記載の印刷部品。
【請求項11】
前記導電性粒子の少なくとも大部分が、前記連続的に印刷されたポリマーマトリックス中の前記第2の熱可塑性ポリマーに位置する、請求項10に記載の印刷部品。
【請求項12】
前記第1の熱可塑性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項10に記載の印刷部品。
【請求項13】
方法であって、
複数の導電性粒子及び水溶性である第1の熱可塑性ポリマーを、非水溶性である第2の熱可塑性ポリマーの水性分散液と組み合わせて、組み合わされた水性混合物を提供することと、
前記組み合わされた水性混合物から水を除去して、前記第1の熱可塑性ポリマー及び前記第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマー相中に分布している前記導電性粒子の少なくとも一部分を含む複合残留物を提供することであって、前記第1の熱可塑性ポリマー及び前記第2の熱可塑性ポリマーが、前記連続ポリマー相中で互いに非混和性である、提供することと、
前記複合残留物を、前記連続ポリマー相中に分布している前記導電性粒子を含む複合フィラメントに押出することと、を含む、方法。
【請求項14】
前記第1の熱可塑性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの任意の組み合わせを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記組み合わされた水性混合物から水を除去することが、前記組み合わされた水性混合物を複合フィルムとして流延することと、前記水を蒸発させることと、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記複合フィルムから前記水を蒸発させた後に、前記複合フィルムを複数の複合片に破断することと、前記複合片を押出して前記複合フィラメントを形成することと、を更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
方法であって、
請求項1に記載の複合フィラメントを提供することと、
前記複合フィラメントをその軟化温度より上で一層ずつ堆積させて、印刷部品を形成することと、を含む、方法。
【請求項18】
前記第1の熱可塑性ポリマーが、水溶性であり、前記第2の熱可塑性ポリマーが、非水溶性である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記印刷部品から前記第1の熱可塑性ポリマーの少なくとも一部分を除去して、前記印刷部品に多孔性を導入すること、を更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記導電性粒子の少なくとも大部分が、前記連続ポリマー相中の前記第2の熱可塑性ポリマーに位置する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、積層造形、より具体的には、ピエゾ抵抗挙動を呈する印刷部品を形成することが可能である複合体及びその連続フィラメントを利用する積層造形プロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元(three-dimensional、3-D)印刷としても知られる積層造形は、急速に成長している技術分野である。積層造形は、伝統的にラピッドプロトタイピング活動に使用されてきたが、この技術は、いくつもの複雑な形状の商業部品及び工業部品の生産に用いられることが増えている。積層造形プロセスは、典型的には、例えば、1)連続フィラメントから得られる溶融印刷材料の流れの堆積、又は2)レーザーを使用した印刷材料の粉末微粒子の焼結によって、一層ずつ物体を構築することによって機能する。一層ずつの堆積は、通常、コンピュータの制御下で行われて、製造される部品のデジタル三次元「設計図」に基づいて、正確な位置に印刷材料を堆積させ、堆積と併せて行われる印刷材料の圧密化によって印刷部品を形成する。印刷部品の本体を形成する印刷材料は、本明細書において「構築材料」と称され得る。
【0003】
部品形成に溶融印刷材料の流れを用いる積層造形プロセスは、典型的には、溶融印刷材料の供給源として熱可塑性ポリマーフィラメントを利用する。そのような積層造形プロセスは、「熱溶解積層(fused deposition modeling、FDM(登録商標))」プロセス又は「融合フィラメント製作(fused filament fabrication、FFF)」プロセスと称されることがある。本明細書では、後者の用語を使用する。印刷材料源として熱可塑性ペレットを用いる積層造形プロセスも知られている。
【0004】
印刷材料の粉末微粒子を用いる積層造形プロセスは、多くの場合、印刷材料の堆積後に微粒子床の選択位置で直接加熱を実行して、圧密化された部品への粉末微粒子の癒合を促進する。粉末微粒子の圧密化を促進して圧密化された部品を形成するのに好適な技術としては、例えば、粉体床融合(powder bed fusion、PBF)、選択的レーザー焼結(selective laser sintering、SLS)、電子ビーム溶融(electron beam melting、EBM)、バインダージェッティング、及びマルチジェット融合(Multi-jet fusion、MJF)が挙げられる。
【0005】
様々な形状を有する広範囲の印刷部品は、両タイプの積層造形プロセスを使用して製作され得る。多くの事例では、両タイプの積層造形プロセスで用いられる構築材料は、大部分は本質的に構造的であり得、それ自体、生来の機能を有する構築材料ではない。また、印刷部品の堆積後に印刷部品に機能的特徴を導入することが困難な場合もある。印刷部品において潜在的に関心のある機能的特徴としては、導電性、圧電挙動、ピエゾ抵抗挙動、相変化挙動、色変化挙動などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0006】
ピエゾ抵抗材料は、印加された機械的歪みによって抵抗の変化を受ける。例えば、ピエゾ抵抗材料に基づく圧力センサは、自動車、医療、工業、消費者、及び建築デバイスを含む多くの用途に使用される。現在、印刷後に有意な導電性を呈することが可能である印刷材料が不足しているため、十分な程度のピエゾ抵抗挙動を有する印刷部品を生産するための選択肢が限られている。多少導電性である印刷材料(ポリマー)がいくつか存在するが、それらは、ピエゾ抵抗挙動を有する印刷部品を生産することがまだ実証されていない。炭素系添加剤を含有するフィラメントは、導電性を呈し得る現在利用可能な印刷材料の一例であるが、導電性は通常低く(1S/cm未満)、それから潜在的に得ることができるピエゾ抵抗挙動は、それに応じて限定され得る。発泡体などの多孔質ネットワークは、ピエゾ抵抗挙動を増加させ得るが、そのような多孔性は、現在利用可能な印刷材料を使用して、印刷部品に確実に組み込むことが困難である。
【発明の概要】
【0007】
本開示は、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続ポリマー相であって、第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、第2の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続ポリマー相と、連続ポリマー相中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む、複合フィラメントを提供する。
【0008】
本開示はまた、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続ポリマー相であって、第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、第2の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続ポリマー相と、連続ポリマー相中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む、複合体又は複合ペレットを提供する。
【0009】
本開示はまた、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続的に印刷されたポリマーマトリックスであって、第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、第2の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続的に印刷されたポリマーマトリックスと、連続的に印刷されたポリマーマトリックス中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む、印刷部品を提供する。
【0010】
本開示はまた、内部に多孔性が画定され、かつ熱可塑性ポリマー中に分布している複数の導電性粒子を含む、印刷されたポリマーマトリックスを含む、ピエゾ抵抗印刷部品を提供する。
【0011】
本開示は、導電性粒子を含有する複合フィラメントを形成するための方法をまた更に提供する。方法は、複数の導電性粒子及び水溶性である第1の熱可塑性ポリマーを、非水溶性である第2の熱可塑性ポリマーの水性分散液と組み合わせて、組み合わされた水性混合物を提供することと、組み合わされた水性混合物から水を除去して、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマー相中に分布している導電性粒子の少なくとも一部分を含む複合残留物を提供することであって、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーが、連続ポリマー相中で互いに非混和性である、提供することと、複合残留物を、連続ポリマー相中に分布している導電性粒子を含む複合フィラメントに押出することと、を含む。
【0012】
本開示はまた、本開示の複合フィラメントを提供することと、複合フィラメントをその軟化温度より上で一層ずつ堆積させて印刷部品を形成することと、を含む、印刷方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
以下の図は、本開示のある特定の態様を例示するために含まれ、排他的な実施形態としてみなされるべきではない。開示される主題は、形態及び機能において、当業者が想到し、かつ本開示の利益を有するような、相当な修正、変更、組み合わせ、及び同等物が可能である。
【0014】
【
図1】構築材料及び除去可能な支持体材料を使用して部品を生産するための例示的な融合フィラメント製作プロセスの概略図を示す。
【
図2】張り出し部を有する例示的な部品の図を示す。
【
図3】連続ポリマーマトリックスの多孔質ネットワークとして画定される例示的な部品の概略図を示す。
【
図4】実施例1~5の複合フィルムに適用された重量の関数としての抵抗のプロットを示す。
【
図5A】実施例6の複合フィラメントの写真を示す。
【
図5B】実施例7の複合フィラメントの写真を示す。
【
図6】実施例8の複合フィラメントに適用された重量の関数としての抵抗のプロットを示す。
【
図7A】2つの異なる倍率での銀マイクロフレーク/TPU複合フィルム(実施例1)のSEM画像を示す。
【
図7B】2つの異なる倍率での銀マイクロフレーク/TPU複合フィルム(実施例1)のSEM画像を示す。
【
図8A】2つの異なる倍率での銀マイクロフレーク/TPU複合フィラメント(実施例6)の断面SEM画像を示す。
【
図8B】2つの異なる倍率での銀マイクロフレーク/TPU複合フィラメント(実施例6)の断面SEM画像を示す。
【
図9A】それぞれ、2つの異なる倍率での実施例7及び8の複合フィラメントの断面SEM画像(PVA除去前及び除去後)を示す。
【
図9B】それぞれ、2つの異なる倍率での実施例7及び8の複合フィラメントの断面SEM画像(PVA除去前及び除去後)を示す。
【
図9C】それぞれ、2つの異なる倍率での実施例7及び8の複合フィラメントの断面SEM画像(PVA除去前及び除去後)を示す。
【
図9D】それぞれ、2つの異なる倍率での実施例7及び8の複合フィラメントの断面SEM画像(PVA除去前及び除去後)を示す。
【
図10】内部に多孔性が導入された印刷部品における抵抗対印加圧力のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、概して、積層造形、より具体的には、ピエゾ抵抗挙動を呈する印刷部品を形成することが可能である複合体及びその連続フィラメントを利用する積層造形プロセスに関する。より具体的には、本開示は、更なる加工の後にピエゾ抵抗特性を有する印刷部品を形成することが可能である、融合フィラメント製作積層造形プロセスに好適な複合フィラメントを提供する。ペレット形態の複合体も、本明細書に開示されるブレンドプロセスの利用によって形成され得る。
【0016】
上で考察したように、融合フィラメント製作などの積層造形プロセスは、広範囲の複雑な形状の印刷部品を生成するための強力なツールである。多くの事例では、融合フィラメント製作を実行するために使用されるポリマーは、大部分は本質的に構造的であり、単独で機能的特性を印刷部品に伝達しない。適度な導電性さえ呈する融合フィラメント製作に適合するポリマーフィラメントの例は限定されており、それから得られるピエゾ抵抗挙動は弱く、様々な意図された用途には不十分な大きさである場合がある。
【0017】
前述の欠点に応じて、本開示は、本明細書で更に考察されるように、積層造形(例えば、融合フィラメント製作)に好適であり、かつ多孔性を導入する加工後に有意なピエゾ抵抗性を有する印刷部品を形成することが可能である、ポリマー複合体及びそれから得られる複合フィラメントを提供する。融合フィラメント製作に好適である複合フィラメントは、約1.0mm~約10.0mm(一般的なフィラメント直径は、1.75mm及び2.85mmを含む)などの特定の印刷システムのための駆動ユニットに適切な直径を有し得る。複合フィラメントは、スプール可能な長さ、例えば、少なくとも約1フィート、又は少なくとも約5フィート、又は少なくとも約10フィート、又は少なくとも約25フィート、又は少なくとも約50フィート、又は少なくとも約100フィート、又は少なくとも約250フィート、又は少なくとも約500フィート、又は少なくとも約1000フィートであってもよい。複合フィラメントが融合フィラメント製作に好適であるかを決定し得る他の特性としては、フィラメントの押出に必要な温度が挙げられ、これは、不必要に高い温度であるべきではない。融合フィラメント製作に好適なフィラメントは、印刷ノズルからの滲出又は印刷ノズルの目詰まりなどの印刷問題を最小限に抑え得る。好適な複合フィラメントは更に、例えば、印刷床から容易に分離するか、又は代わりに永久基材への強い接着を呈し、一旦印刷されると十分な機械的強度を有し、かつ一旦印刷されると良好な層間接着を呈する印刷部品を形成してもよい。
【0018】
本開示の複合体は、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマー相中に分布している導電性粒子を含んでもよく、熱可塑性ポリマーのうちの一方は、溶解性又は分解性であり、指定の条件下で他方の熱可塑性ポリマーから除去されてもよく、それによって、制御方式で、複合体、又はそれから形成されるフィラメント若しくは印刷部品に多孔性が導入される。「連続ポリマー相」という用語は、導電性粒子が分散しているバルク相を指す。連続ポリマー相は、互いに共連続的又は非共連続的に分布した第1の熱可塑性物質及び第2の熱可塑性物質を含有してもよい。第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーの共連続分布では、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーは、互いに混ざり合っている別個の連続ポリマーマトリックスとして存在してもよい。第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーは、いくつかの事例では、2つの熱可塑性ポリマーの相互貫入ネットワークを画定してもよく、連続ポリマー相全体にわたって、第1の熱可塑性ポリマーの少なくとも大部分の間に連結性があり、第2の熱可塑性ポリマーの少なくとも大部分の間に連結性がある。対照的に、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーの非共連続分布では、熱可塑性ポリマーのうちの一方の単離ポケットが他方の連続マトリックス中に存在してもよい。したがって、共連続分布では、ポリマー複合体の任意の断面は、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーの両方の少なくとも一部を含有する。別々に共連続又は非共連続である領域を含有する複合体も、本開示の範囲内である。熱可塑性ポリマーは互いに非混和性であるため(第1の熱可塑性ポリマーと第2の熱可塑性ポリマーとの物理的ブレンドを含む)、ポリマーのうちの一方を除去することによって、制御された多孔性又はチャネルの印刷部品への導入が付与され得る。直接印刷によって達成可能であり得るものよりもはるかに小さい、非常に微細な多孔性特徴が実現され得る。非限定的な例では、熱可塑性ポリマーのうちの一方は、水溶性ポリマーであり、他方の熱可塑性ポリマーは、非水溶性ポリマーである。他の事例では、熱可塑性ポリマーのうちの一方は、有機溶媒中で溶解性であり、他方の熱可塑性ポリマーは、同じ有機溶媒中で可溶性ではない(しかし、異なる有機溶媒中で可溶性である場合がある)。更に他の事例では、熱可塑性ポリマーのうちの一方は、複合体から分離する副生成物に分解されてもよく、分解を促進する条件は、他方の熱可塑性ポリマーに影響を与えない。熱可塑性ポリマーのうちの一方を他方から除去する溶融による分解も、本開示の範囲内にある。複合体中の溶解性/分解性の熱可塑性ポリマーの他方の熱可塑性ポリマーに対する比率を変更することによって、多孔性の範囲を所望の程度に調節してもよく、それによって、実現され得るピエゾ抵抗性にも影響が与えられる。有利なことに、導電性粒子は、その形成後に複合フィラメント中に十分分布したままであり得る。
【0019】
第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーが、各タイプの単一のポリマーを必ずしも含む必要がないことも理解されたい。したがって、用途特有の必要性に応じて、第1の熱可塑性ポリマーは、指定の条件下で溶解性又は分解性である2つの熱可塑性ポリマーなどの1つ以上の熱可塑性ポリマーを含んでもよく、第2の熱可塑性ポリマーは、指定の条件下で非溶解性又は非分解性である2つの熱可塑性ポリマーなどの1つ以上の熱可塑性ポリマーを含んでもよい。
【0020】
驚くべきことに、かつ有利なことに、導電性粒子は、溶解しないか又は分解されないままである熱可塑性ポリマーと実質的に会合したままであるか、又は熱可塑性ポリマーに位置したままであってもよく、したがって、溶解性又は分解性ポリマーが除去されるときに被る損失を最小限にする(例えば、熱可塑性ポリマーのうちの一方の除去を、他方を優先して促進し得る適切な溶媒又は他の条件への曝露によって)。したがって、残りの熱可塑性ポリマー(例えば、不溶性又は非分解性熱可塑性ポリマー)中に分布している導電性粒子の多孔質ネットワークは、印刷及び更なる加工の後に実現され得る。導電性粒子は、多孔質ネットワークを画定する残りの熱可塑性ポリマー中に均一に分布していてもよい。
【0021】
有利なことに、ピエゾ抵抗挙動を有する印刷部品を形成することが可能である複合体は、水溶性ポリマーを用いる室温水性プロセスを使用して配合され得る。ポリビニルアルコール(polyvinyl alcohol、PVA)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG、ポリエチレンオキシドとしても知られる)、又はそれらの任意の組み合わせは、水相中に懸濁され、かつ水溶性ポリマーがそれとは非混和性である第2の熱可塑性ポリマーを含有する水相中の導電性粒子と組み合わされてもよい。組み合わされた水相から水を除去した後、2つの熱可塑性ポリマーは、連続ポリマー相を形成してもよく、ここで、2つの熱可塑性ポリマーは、相互に互いに非混和性のままであり、導電性粒子は、第2の熱可塑性ポリマー(すなわち、非水溶性ポリマー)に実質的に位置しながら連続ポリマー相全体に分布している。一例では、連続ポリマーネットワーク及びその中の導電性粒子は、連続フィラメントに加工される前に流延フィルムとして得られてもよい。上で考察したように、組み合わされた水相から水を除去した後、導電性粒子は、連続ポリマー相全体に分布していても、驚くべきことに、水溶性ではないポリマー内に優勢に位置している。したがって、印刷部品に形成されると、水溶性ポリマーを除去して、大量の導電性粒子を放出せずに、多孔質ポリマーネットワークが付与され得る。複合フィルムから得られた複合残留物(例えば、乾燥及び細断/微粉砕後に得られたもの)は、押出によって連続フィラメントに変換され得る。その後の水溶性ポリマーの除去によって、印刷前又は印刷後のいずれかに、残りの熱可塑性ポリマー及び分布している導電性粒子の多孔質ポリマーネットワークが生成され得る。したがって、連続フィラメント(複合フィラメント)又はそれから得られた印刷部品は、水溶性ポリマーの除去によって、内部に多孔性が画定され得る。いずれの場合も、多孔質ポリマーネットワークは、ピエゾ抵抗挙動を呈することが可能であり得る。
【0022】
複合フィラメントは、本明細書の開示に従って形成される場合に特に有利であり得るが、フィルム流延、破断、及び任意選択的な更なる加工から得られる複合残留物(例えば、断片)も、同様の印刷プロセスに、又は融合フィラメント製作に好適な複合フィラメントの前駆体として有用であり得ることを理解されたい。中間複合フィルムから得られる複合残留物は、直接利用してもよく、又は複合フィラメントよりも大きい繊維形態を提供するのに有効な条件下で押出されてもよい。次いで、より大きな繊維形態を切断、微粉砕などして、非混和性熱可塑性ポリマーの混合物を含む連続ポリマー相中に分布している導電性粒子を同様に含有する複合ペレットが付与され得る。複合フィラメントと同様に、複合ペレット又は同様の非フィラメント状複合材料は、その後、好適な積層造形条件下でピエゾ抵抗特性を有する印刷部品に加工されてもよい。多孔性は、ピエゾ抵抗挙動を誘発又は増加させるために、印刷部品に導入されてもよい。
【0023】
本開示の様々な態様を更に詳細に論じる前に、本開示の特徴がより良好に理解され得るように、積層造形プロセス、具体的には、融合フィラメント製作プロセスについての簡単な考察を最初に提供する。
図1は、構築材料及び除去可能な支持体材料を使用して部品を生産するための例示的な融合フィラメント製作プロセスの概略図を示す。
図1に示すように、印刷ヘッド100は、第1の押出機102a及び第2の押出機102bを含み、これらは各々、フィラメント状印刷材料を受容するように構成されている。第1の押出機102aは、第1の繰出リール106aから第1のフィラメント104aを受容し、第1の印刷材料の溶解流108aを提供するように構成されており、第2の押出機102bは、第2の繰出リール106bから第2のフィラメント104bを受容し、第2の印刷材料の溶解流108bを提供するように構成されている。いずれの溶解流も、最初に印刷床(
図1に示さず)上に堆積され、支持された部品120の一層ずつの成長を促進する。第1の押出機102aによって供給される第1の印刷材料(構築材料)は、部品110を製作するために使用される本開示の複合フィラメント(例えば、相互に非混和性の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマー相中に分布している導電性粒子を含有する連続フィラメント)を含んでもよく、第2の押出機102bによって供給される第2の印刷材料(除去可能な支持体材料)は、張り出し部114の下で除去可能な支持体112を製作するために使用される溶解性又は分解性ポリマーであってもよい。張り出し部114は、印刷床又は構築材料から形成された下部印刷層と直接接触していない。張り出し部114は自由空間に堆積され得ないため、除去可能な支持体112は、その上に部品110を堆積するための一時的な構造として提供される。
図1に示す部品配置では、除去可能な支持体112は、張り出し部114と印刷床との間に介在するが、代替的に構成された部品では、除去可能な支持体114は、部品110の2つ以上の部分の間に介在してもよいことを理解されたい。
図2は、例えば、例示的な部品200を示しており、除去可能な支持体202が、部品200と印刷床204との間に画定された張り出し部の間に介在し、除去可能な支持体206は、部品200の2つの部分の間に介在する。
【0024】
再び
図1を参照すると、部品110及び除去可能な支持体112の印刷が完了すると、支持部品120は、除去可能な支持体112の排除をもたらす支持体除去条件125(例えば、溶解又は崩壊条件など)に供され、張り出し部114がその上に支持されない状態で部品110を残し得る。支持体除去条件125は、溶媒と支持部品120との接触を含み得、溶媒中で、除去可能な支持体112は溶解性又は分解性であり、部品110はそうではない。支持体除去条件125はまた、連続ポリマー相中の熱可塑性ポリマーのうちの一方の分解又は溶解を促進し、それによって、多孔質ネットワークとして画定される残りの熱可塑性ポリマー中に分散された導電性粒子が残されてもよい。
【0025】
図3は、連続ポリマーマトリックス302から形成された多孔質ネットワークとして画定される例示的な部品300の概略図を示す。連続ポリマーマトリックス302が好適に分布した状態で導電性粒子を含有する場合、増強したピエゾ抵抗挙動が観察され得る。
【0026】
図1に示す積層造形プロセスは、原理的には、印刷部品(
図3の例示的な部品300など)内にピエゾ抵抗挙動を誘起又は増加させる目的で、多孔性を印刷部品に導入するように修正され得るが、そのようにすることは、様々な態様において問題となり得る。共押出された構築材料及び除去可能な支持体材料を用いて微細多孔性特徴を導入することは困難である場合があり、この方式での共押出は、印刷プロセスの完了に必要とされる時間が有意に増加する可能性がある。(
図3の部品300に存在するような)規則的な配列として内部に多孔性が画定された部品の印刷も、好適な構築材料を堆積させる単一の印刷ヘッドを使用して達成され得るが、印刷プロセスの解像度は、同様に、細孔又はチャネルを過度に大きいサイズに制限する場合があり、印刷プロセスは、複雑さを有意に増加させる可能性がある。
【0027】
張り出し部を有する印刷部品が本開示の複合フィラメントを使用して形成される場合、必要に応じて、
図1の除去可能な支持体114と同様の除去可能な支持体を導入して、印刷部品の製作を容易にしてもよいことを理解されたい。除去可能な支持体を画定する溶解性又は分解性の材料(犠牲材料)は、部品を画定する印刷されたままのポリマーマトリックスの一部分を含む同じ又は異なる溶解性又は分解性の熱可塑性ポリマーを含んでもよい。更に、部品を画定する印刷されたままのポリマーマトリックス中の溶解性又は分解性ポリマーは、除去可能な支持体を排除して張り出し部を画定するために使用される条件と同じ又は異なる条件下で、印刷部品における多孔性を画定するために除去されてもよい。印刷部品内の多孔性の画定及び除去可能な支持体の排除は、多孔性の画定及び除去可能な支持体の排除を実質的に同時に含む、任意の順序で行われてもよい。
【0028】
したがって、本開示の複合フィラメントは、融合フィラメント製作における使用に好適であってもよく、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマー相と、連続ポリマー相中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい、複数の導電性粒子と、を含んでもよい。第1の熱可塑性ポリマーは、指定の条件下で溶解性又は分解性であってもよく、第2の熱可塑性ポリマーは、指定の条件下で不溶性又は非分解性であってもよい。溶解性又は分解性の熱可塑性ポリマー、不溶性又は非分解性の熱可塑性ポリマー、及び導電性粒子の例を以下に提供する。
【0029】
連続ポリマー相又は導電性粒子は、本明細書に開示される複合フィラメントの大部分の成分又は少量の成分を構成してもよい。様々な実施形態では、導電性粒子は、両方の熱可塑性ポリマーが存在する全複合体重量に基づいて約10:90~約95:5の範囲又はその間の任意の部分範囲の粒子:ポリマー重量比で、連続ポリマー相中に存在してもよい。これらの重量百分率は、約1.2体積%~約68体積%の範囲の粒子体積百分率に対応する。前述の体積百分率は、同様に、熱可塑性ポリマーのうちの一方を除去する前の全複合体体積に基づいており、Ag粒子について10.49g/cm3の粒子密度を推定する。他のタイプの導電性粒子が、同様の体積百分率範囲で存在してもよい。より具体的な例では、複合フィラメント中の導電性粒子の連続ポリマー相に対する重量比は、両方の熱可塑性ポリマーが存在する全複合体重量に基づいて、約20:80(3体積%のAg粒子)~約80:20(62体積%のAg粒子)、又は約30:70(5体積%のAg粒子)~約70:30(21体積%のAg粒子)、又は約40:60(7体積%のAg粒子)~約60:40(15体積%のAg粒子)の範囲であってもよい。熱可塑性ポリマーのうちの一方を除去した後、導電性粒子の体積百分率範囲は、約2体積%~約80体積%の範囲であってもよい。導電性粒子の最大装填は、複合フィラメントが連続フィラメントとして構造的一体性を維持し、融合フィラメント製作によって印刷可能のままであるように選択され得る。加えて、導電性粒子の装填は、熱可塑性ポリマーのうちの一方を除去した後に、印刷部品が所望の機械的特性及び/又は所望の程度のピエゾ抵抗性を有するように選択され得る。導電性粒子は、複合フィラメント又はそれから得られる印刷部品の両方において、導電性粒子が個々として実質的に分散したままであるような方式で、連続ポリマー相内に分布していてもよい。連続ポリマー相中の導電性粒子の分布は、導電性粒子が存在する連続ポリマー相の部分において実質的に均一であってもよい(例えば、非分解性又は非溶解性の熱可塑性ポリマー内の導電性粒子の実質的に均一な分布)。
【0030】
第1の熱可塑性ポリマーの第2の熱可塑性ポリマーに対する比率は、同様に広範囲にわたって変動してもよい。非限定的な例では、第1の熱可塑性ポリマーの第2の熱可塑性ポリマーに対する比率は、重量で約1:99~約99:1の範囲であってもよい。より具体的な例では、第1の熱可塑性ポリマーの第2の熱可塑性ポリマーに対する比率は、約10:90~約90:10、又は約20:80~約80:20、又は約30:70~約70:30、又は約40:60~約60:40、又は約10:90~約20:80、又は約20:80~約30:70、又は約30:70~約40:60、又は約40:60~約50:50、又は約50:50~約60:40、又は約60:40~約70:30、又は約70:30~約80:20、又は約80:20~約90:10の範囲であってもよい。第1の熱可塑性ポリマーの第2の熱可塑性ポリマーに対する比率は、印刷部品が形成されて第1の熱可塑性ポリマーが除去された後に所望の程度の可撓性が実現されるように、又は印刷部品に形成される多孔性の程度を調整するように選択され得る。同様に、この比率は、熱可塑性ポリマーのうちの一方を除去する前に、複合フィラメントの形成及び/又はそれによる印刷を容易にするように調整してもよい。形成された多孔性の程度に基づいて、ピエゾ抵抗挙動は適宜変動してもよい。ピエゾ抵抗挙動は、より高い機械的負荷(重量)が連続ポリマー相又はそれから形成される印刷部品によって担持されるときの抵抗の減少によって観察され得る。印刷部品から第1の熱可塑性ポリマーの少なくとも一部分を除去した後に、ピエゾ抵抗性の増加又は出現が観察され得る。
【0031】
印刷部品から第1の熱可塑性ポリマーの少なくとも一部分を除去した後、印刷部品は、除去されている第1の熱可塑性ポリマーの量に比例する多孔性の程度を有してもよい。非限定的な実施形態では、印刷部品は、第1の熱可塑性ポリマーの除去前の印刷部品の総質量に対する除去された質量の量に基づいて、約5%~約80%、又は約10%~約50%、又は約30%~約70%の範囲の多孔性を有してもよい。相互連結された細孔の細孔サイズ又はチャネルサイズは、連続ポリマー相中の第1の熱可塑性ポリマーの分散の程度、並びに除去されている第1の熱可塑性ポリマーの量に依存してもよい。
【0032】
第1の熱可塑性ポリマーが印刷部品から少なくとも部分的に除去されると、導電性粒子は、第1の熱可塑性ポリマーを除去した後の部品の総質量に基づいて約20:80~約97:3の粒子:ポリマー質量比で、第2の熱可塑性ポリマー(残りの熱可塑性ポリマー)を含む印刷されたポリマーマトリックス中に存在してもよい。これらの値は、約2体積%~約80体積%の範囲の粒子:ポリマー体積百分率に対応する。
【0033】
本明細書の開示の任意の実施形態での使用に好適な導電性粒子は、マイクロメートル若しくはナノメートルサイズ範囲の平均粒子サイズを有してもよく、又はマイクロメートル及びナノメートルサイズの導電性粒子の組み合わせを使用してもよい。より特定の例では、好適な導電性粒子は、約25ミクロン以下、又は約10ミクロン以下、例えば、約1ミクロン~約10ミクロン、又は約2ミクロン~約8ミクロンの直径を有してもよい。より小さい導電性粒子、例えば、約100nm以下の平均粒子サイズ、又は約500nm以下の平均粒子サイズ、例えば、約10nm~約100nm、又は約20nm~約80nm、又は約100nm~約500nmの平均粒子サイズを有するものも、単独で、又はマイクロメートルサイズ範囲のより大きい導電性粒子と組み合わせて、本明細書の開示において利用してもよい。本明細書の開示における平均粒子サイズは、D50値を表し、これは、直径を指し、試料の50%(別途指定がない限り体積基準)が、当該直径未満の直径を有する粒子から構成される。D50はまた、「平均粒子サイズ」と称され得る。そのような平均粒子サイズの測定は、SEM分析を介することを含む光学画像の分析によって、又は粒子サイズ測定のための光散乱技術を使用するMalvern MASTERSIZER 3000 Aero S機器の搭載ソフトウェアを使用することによって行われ得る。
【0034】
本明細書の開示における使用に好適な導電性粒子は、金属、炭素質導体、又はそれらの任意の組み合わせを含んでもよい。導電性粒子を構成し得る金属としては、銀、銅、アルミニウム、金などの高伝導性金属が挙げられるが、これらに限定されない。金属を含む導電性粒子の例示的な形態としては、例えば、ナノ粒子、ナノフレーク、ナノワイヤ、ナノロッド、マイクロフレークなど、例えば、銀ナノ粒子、銀ナノフレーク、銀マイクロフレーク、銀ナノワイヤ、銀ナノロッド、アルミニウムマイクロフレーク、アルミニウムナノワイヤ、銅マイクロフレーク、銅ナノ粒子、銅ナノワイヤ、金ナノ粒子など、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。単独で、又は金属を含む1つ以上の導電性粒子と組み合わせて使用され得る炭素質導体としては、カーボンブラック、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブなど、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0035】
複合フィラメントに加工されると、かつ/又は印刷部品に形成された後、導電性粒子は、連続ポリマー相中に実質的に個々に分布していてもよい。様々な実施形態では、導電性粒子の少なくとも大部分は、連続ポリマー相中の第2の熱可塑性ポリマーに位置してもよく、又はそうでなければ第2の熱可塑性ポリマーと会合していてもよい。導電性粒子と第2の熱可塑性ポリマーとの局在化又はそれらの間の会合の程度は、本明細書の開示において多孔性を確立するとき、第1の熱可塑性ポリマーの溶解又は分解の際に失われる導電性粒子の量に基づいて決定され得る。非限定的な例では、元々連続ポリマー相とブレンドされていた導電性粒子の少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、又は少なくとも約95%は、第1の熱可塑性ポリマーが除去された後、第2の熱可塑性ポリマーと会合したままであってもよい。
【0036】
いくつかの例では、第1の熱可塑性ポリマーは、水溶性であってもよく、第2の熱可塑性ポリマーは、非水溶性であってもよい。本明細書の開示における使用に好適な水溶性熱可塑性ポリマーの例としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、それらの任意のコポリマー、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。好適な第1の熱可塑性ポリマーのいくつかの又は他の例としては、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリン(例えば、ポリ(2-エチル-2-オキサゾリン))、セルロースエステル、ポリ乳酸、ポリラクテート、ポリカプロラクトン、それらの任意のコポリマー、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられ得るが、これらに限定されない。酸水溶液中での可溶性又は分解性も、本明細書の開示における可溶性の範囲内に含まれる。ポリ乳酸は、水性酸との接触によって有効に分解され得る。ポリ乳酸はまた、本明細書の開示における構築材料として(すなわち、第2の熱可塑性ポリマーとして)有効に使用され得る。ポリ乳酸が第2の熱可塑性ポリマーとして使用される場合、第1の熱可塑性ポリマーを溶解又は分解するための指定の条件は、ポリ乳酸を分解しないように選択され得る(すなわち、非酸性条件)。同様の考察がポリカプロラクトンのようなポリエステルに当てはまり、これは同様に水性酸条件下で分解性であり得るが、第1の熱可塑性ポリマーがその分解を促進しない条件下で除去される場合、第2の熱可塑性ポリマーとして好適に使用してもよい。
【0037】
広範囲の熱可塑性ポリマーが、本明細書の開示において第2の熱可塑性ポリマーとして利用され得る。第1の熱可塑性ポリマーが溶解性又は分解性である指定の条件下で、第2の熱可塑性ポリマーが不溶性及び/又は非分解性であるならば、いずれの熱可塑性ポリマーも、好適な第2の熱可塑性ポリマーを構成してもよい。第2の熱可塑性ポリマーはまた、印刷実現可能性、及び第1の熱可塑性ポリマーの除去後に得られる印刷部品の物理的特性に基づいて選択され得る。第2の熱可塑性ポリマーとして使用可能な好適な熱可塑性ポリマーは、約50℃~約400℃、又は約70℃~約275℃、又は約100℃~約200℃、又は約175℃~約250℃の範囲の温度での堆積(印刷)を容易にするのに十分な軟化温度又は融点を呈してもよい。融点は、10℃の昇温速度及び冷却速度でASTM E794-06(2018)を使用して決定され得、軟化温度は、ASTM D6090-17を使用して決定され得る。
【0038】
本明細書の開示において第2の熱可塑性ポリマーとして使用可能な熱可塑性ポリマーの例示的な例としては、例えば、ポリアミド、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリ(スチレン-イソプレン-スチレン)(styrene-isoprene-styrene、SIS)、ポリ(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレン)(styrene-ethylene-butylene-styrene、SEBS)、ポリ(スチレン-ブチレン-スチレン)(styrene-butylene-styrene、SBS)、耐衝撃性ポリスチレン(high-impact polystyrene、HIPS)、ポリスチレン、熱可塑性ポリウレタン(thermoplastic polyurethane、TPU)、ポリ(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)(acrylonitrile-butadiene-styrene、ABS)、ポリメチルメタクリレート、ポリ(ビニルピロリジン-酢酸ビニル)、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリオキシメチレン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン))、ポリビニルピロリドン-co-ポリ酢酸ビニル(polyvinylpyrrolidone-co-polyvinyl acetate、PVP-co-PVA)、それらの任意のコポリマー、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられ得る。前述の第2の熱可塑性ポリマーのいくつかは水溶性であるが、それらは、第1の(可溶性及び/又は分解性ポリマー)が非水性条件下で除去される場合(例えば、有機溶媒による溶解によって)、第2の(不溶性及び/又は非分解性)熱可塑性ポリマーとして依然として利用してもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、第1の熱可塑性ポリマーを除去した後に導電性粒子と会合したままである第2の熱可塑性ポリマーは、それ自体が導電性ポリマーであってもよい。多孔質ネットワークを画定する導電性ポリマー中に導電性粒子を分布させることによって、更に増強したピエゾ抵抗挙動を実現することができる。好適な導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン(ポリ-(3,4-エチレンジオキシチオフェン、poly-(3,4-ethylenedioxythiophene、PEDOTを含む)、ポリフェニレン及び他のポリアリーレン、ポリフェニレンビニレンなどが挙げられ得るが、これらに限定されない。そのような導電性ポリマーは、非伝導性熱可塑性ポリマーともブレンドしてもよい。
【0040】
好ましくは、本開示のポリマー複合体及び複合フィラメントは、熱硬化性ポリマーを形成することが可能であるUV硬化性樹脂及び同様の樹脂を含む、熱硬化性ポリマーを実質的に含まなくてもよい。
【0041】
非限定的な例では、本開示の複合体は、水性加工条件下で得られて、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマーマトリックス中に分布している導電性粒子が付与され得る。いくつかの実施形態では、複合体は、後に複合フィラメントに加工される前にフィルムの形態で得られてもよい。複合体を得た後、複合体は、融合フィラメント製作を行うのに好適な複合フィラメントに加工され(例えば、押出によって)、より大きな複合繊維又はフィラメントに加工され、ペレットに変換され、かつ/又は細断若しくは微粉砕された複合フィルム(例えば、複合片)の形態で直接使用されてもよい。好適な押出条件は、連続ポリマーマトリックスの融点又は軟化温度より上で、例えば単軸又は二軸押出機を用いて行われてもよい。
【0042】
いくつかの実施形態では、導電性粒子は、第2の熱可塑性ポリマーの水性分散液と組み合わされてもよい。その後、第1の熱可塑性ポリマー(例えば、水溶性ポリマー)を水性分散液に添加してもよい。水を蒸発させて複合フィルムを形成し、次いでこれをフィラメントに押出してもよい。
【0043】
他の実施形態では、導電性粒子は、第2の熱可塑性ポリマーの水性分散液と組み合わされてもよい。その後、水を蒸発させてもよく、第1の熱可塑性ポリマー(例えば、水溶性ポリマー)を残留物と組み合わせてもよく、次いでこれを一緒にブレンドして複合体を形成してもよい。次いで、その後の押出によって複合フィラメントを得てもよい。
【0044】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書の開示による複合体を形成するための方法は、複数の導電性粒子及び水溶性(又は代わりに指定の条件下で分解性)である第1の熱可塑性ポリマーを、非水溶性(又は代わりに第1の熱可塑性ポリマーが溶解性又は分解性である指定の条件下で非分解性)である第2の熱可塑性ポリマーの水性分散液と組み合わせて、組み合わされた水性混合物を提供することと、組み合わされた水性混合物から水を除去して、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマー相中に分布している導電性粒子の少なくとも一部分を含む複合残留物を提供することであって、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーが、連続ポリマー相中で互いに非混和性のままであってもよい、提供することと、を含んでもよい。
【0045】
代替的な手順では、第1の熱可塑性ポリマーは、指定の条件下で第2の熱可塑性ポリマーから分離又は除去を受け得る溶解性又は分解性の粒子で少なくとも部分的に置き換えられてもよい。指定の条件下で除去される液体は、液体、第2の熱可塑性ポリマー、及び伝導性粒子のブレンドが、本明細書の開示による連続フィラメントに加工される能力を保持するという条件で、同様に第1の熱可塑性ポリマーを少なくとも部分的に置き換えてもよい。溶解性又は分解性の粒子又は液体は、第1の熱可塑性ポリマーの分解又は除去を促進するために使用される条件と同様の条件下で分解又は除去を受けてもよい。非限定的な例では、溶解性又は分解性の粒子又は液体は、水溶性であってもよく、第2の熱可塑性ポリマーは、指定の条件下で非水溶性であってもよい。
【0046】
更に別の実施形態では、ガス形成物質を利用して、第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマーマトリックスに多孔性を導入してもよい。具体的には、第1の熱可塑性ポリマーは、ガス形成物質(例えば、ガス又は指定の条件下でガスに分解する材料を含有する微小球)で少なくとも部分的に置き換えられ、第2の熱可塑性ポリマーと組み合わされてもよい。第2の熱可塑性ポリマー内でのガスの形成は、好適な条件下で加工が行われると、気泡の形成及びその中の多孔性の画定をもたらしてもよい。
【0047】
複合残留物は、断片又は微粉砕フィルムの形態で直接利用してもよい(例えば、組み合わされた水性混合物を複合フィルムとして流延し、そこから水を蒸発させる場合)。更なる実施形態では、複合残留物は、融合フィラメント製作に好適な複合フィラメント、又は導電性粒子が連続ポリマー相中に分布している更に大きな直径を有する複合繊維に押出されてもよい。所望であれば、より大きな複合繊維を切断するか、又は同様に加工して、連続ポリマー相中に同様に分布している導電性粒子を有する複合ペレットにしてもよい。いくつかの実施形態では、複合フィルムは、そこから水を蒸発させた後、複数の複合片に破断され(例えば、細断又は微粉砕によって)、複合片を押出して複合フィラメントを形成してもよい。
【0048】
任意選択的に、前述に従って得られた複合体又は複合フィラメントは、そこから第1の熱可塑性ポリマーの少なくとも一部分を除去するように加工されてもよく、それによって、連続ポリマー相において多孔性が画定される。そのような複合フィラメントは、導電性粒子がその中に分布している多孔質ポリマーネットワークとして画定される第2の熱可塑性ポリマーを含んでもよい。更に任意選択的に、多孔性が前述の方式で画定されると、多孔質ポリマーネットワーク内の細孔又はチャネルは、追加の導電性粒子、熱伝導性粒子、強化繊維、着色剤、安定剤、可塑剤などの1つ以上の添加剤で再充填されて、複合体特性をまた更に修正してもよい。そのような添加剤は、液体溶液又は分散液に導入されてもよく、その後、再充填が行われると蒸発される。
【0049】
複合フィラメントが本明細書の開示に従って形成されると、複合フィラメントをその軟化温度より上で一層ずつ堆積させて、指定の形状を有する印刷部品を形成してもよい。印刷後、印刷部品は、互いに非混和性のままである第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマーマトリックスと、連続的に印刷されたポリマーマトリックス中に分布している複数の導電性粒子と、を含んでもよい。
【0050】
導電性粒子の少なくとも大部分は、第2の熱可塑性ポリマーに実質的に位置するか、又は第2の熱可塑性ポリマーと会合していてもよく、第1の熱可塑性ポリマーが、溶解又は分解によって(例えば、水溶性によって)印刷部品から除去され、また、有意な画分の導電性粒子が除去されないようにする。連続的に印刷されたポリマーマトリックスから第1の熱可塑性ポリマーを除去した後、内部に多孔性が画定された印刷部品が得られ得る。具体的には、そのような印刷部品は、ピエゾ抵抗性を呈し、内部に多孔性が画定され、かつ熱可塑性ポリマー(例えば、第1の熱可塑性ポリマーの溶解又は分解後に残る第2の熱可塑性ポリマー)中に分布している複数の導電性粒子を含む、印刷されたポリマーマトリックスを含んでもよい。ピエゾ抵抗挙動を有する好適なタイプの印刷部品は、本開示において特に限定されないと考えられる。
【0051】
任意選択的に、印刷部品において得られる多孔性は、1つ以上の追加の添加剤で再充填されてもよい。そのような再充填は、多孔質複合フィラメントの再充填に関して上述したのと同様の方式で行ってもよい。
【0052】
本明細書に開示される実施形態は、以下を含む。
【0053】
A.積層造形に好適であり得る複合フィラメント。複合フィラメントは、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続ポリマー相であって、第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、第2の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続ポリマー相と、連続ポリマー相中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む。
【0054】
A1.複合体。複合体は、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続ポリマー相であって、第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、第2の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続ポリマー相と、連続ポリマー相中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む。任意選択的に、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーは、連続ポリマー相において共連続分布を有してもよい。
【0055】
A2.複合ペレット。複合ペレットは、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続ポリマー相であって、第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、第2の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続ポリマー相と、連続ポリマー相中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む。任意選択的に、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーは、連続ポリマー相において共連続分布を有してもよい。
【0056】
B.非混和性ポリマーを含む印刷部品。印刷部品は、互いに非混和性である第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む、連続的に印刷されたポリマーマトリックスであって、第1の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で溶解性又は分解性であり、第2の熱可塑性ポリマーが、指定の条件下で不溶性又は非分解性である、連続的に印刷されたポリマーマトリックスと、連続的に印刷されたポリマーマトリックス中に分布している複数の導電性粒子であって、マイクロ粒子、ナノ粒子、又はそれらの任意の組み合わせを含む、複数の導電性粒子と、を含む。任意選択的に、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーは、連続的に印刷されたポリマーマトリックスにおいて共連続分布を有してもよい。
【0057】
C.ピエゾ抵抗性を有する印刷部品。印刷部品は、内部に多孔性が画定され、かつ熱可塑性ポリマー中に分布している複数の導電性粒子を含む、印刷されたポリマーマトリックスを含む。
【0058】
D.複合フィラメントを形成するための方法。方法は、複数の導電性粒子及び水溶性である第1の熱可塑性ポリマーを、非水溶性である第2の熱可塑性ポリマーの水性分散液と組み合わせて、組み合わされた水性混合物を提供することと、組み合わされた水性混合物から水を除去して、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーを含む連続ポリマー相中に分布している導電性粒子の少なくとも一部分を含む複合残留物を提供することであって、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーが、連続ポリマー相中で互いに非混和性である、提供することと、複合残留物を、連続ポリマー相中に分布している導電性粒子を含む複合フィラメントに押出することと、を含む。任意選択的に、第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーは、連続ポリマー相において共連続分布を有してもよい。
【0059】
E.印刷方法。方法は、Aの複合フィラメントを提供することと、複合フィラメントをその軟化温度よりも上で一層ずつ堆積させて印刷部品を形成することと、を含む。
【0060】
実施形態A~Eの各々は、以下の追加要素のうちの1つ以上を任意の組み合わせで有してもよい。
【0061】
要素1:第1の熱可塑性ポリマーが、水溶性であり、第2の熱可塑性ポリマーが、非水溶性である。
【0062】
要素2:導電性粒子の少なくとも大部分が、連続ポリマー相中又は連続的に印刷されたポリマーマトリックス中の第2の熱可塑性ポリマーに位置する。
【0063】
要素2A:第1の熱可塑性ポリマー及び第2の熱可塑性ポリマーが、共連続分布を有する。
【0064】
要素3:第1の熱可塑性ポリマーが、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0065】
要素4:導電性粒子が、全複合体質量に基づいて約10:90~約95:5の範囲の粒子:ポリマー重量比で、連続ポリマー相中に存在する。
【0066】
要素5:第1の熱可塑性ポリマーの第2の熱可塑性ポリマーに対する比率は、重量で約30:70~約70:30の範囲である。
【0067】
要素6:導電性粒子が、約10ミクロン以下の平均粒子サイズを有する。
【0068】
要素7:導電性粒子の少なくとも一部分が、約100nm以下の平均粒子サイズを有する。
【0069】
要素8:導電性粒子が、金属、炭素質導体、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0070】
要素9:導電性粒子が、印刷されたポリマーマトリックスの総体積に基づいて約2体積%~約20体積%で、印刷されたポリマーマトリックス中に存在する。
【0071】
要素10:組み合わされた水性混合物から水を除去することが、組み合わされた水性混合物を複合フィルムとして流延することと、水を蒸発させることと、を含む。
【0072】
要素11:方法が、複合フィルムから水を蒸発させた後に複合フィルムを複数の複合片に破断することと、複合片を押出して複合フィラメントを形成することと、を更に含む。
【0073】
要素12:方法が、印刷部品から第1の熱可塑性ポリマーの少なくとも一部分を除去して、印刷部品に多孔性を導入することを更に含む。
【0074】
非限定的な実施例として、A~Eに適用可能な例示的な組み合わせとしては、1、及び2又は2A;1及び3;1及び4;1及び5;1及び6;1及び7;1及び8;2又は2A、及び3;2~4;2A、3、及び4;2又は2A、3、及び5;2又は2A、3、及び6;2又は2A、3、及び7;2又は2A、3、及び8;3及び4;3及び5;3及び6;3及び7;3及び8;4及び5;4及び6;4及び7;4及び8;5及び6;5及び7;5及び8;6又は7、及び8;1~8、及び9のうちのいずれか;1~9、及び10のうちのいずれか;1~10、及び11のうちのいずれか;10及び11;並びに1~11、及び12のうちのいずれか、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
本開示のより良好な理解を容易にするために、好ましい又は代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、決して、本発明の範囲を制限するか、又は定義するように読解されるべきではない。
【実施例0076】
複合フィルムの形成。以下の一般的な手順を利用して、複合フィラメントに更に加工され得る複合フィルムを調製した。銀マイクロフレークを水性ポリマー分散液と組み合わせ、水性ポリマー分散液を水溶性ポリマーの溶液と組み合わせた。得られた組み合わせられた水性混合物をフィルムとして流延し、水を蒸発させた。得られた複合残留物を分析し、任意選択的に粉砕し、複合フィラメントに押出した。
【0077】
銀マイクロフレーク(約2~4μm)をInframat Advanced Materials,LLCから購入した。熱可塑性ポリウレタン(TPU)エマルジョン(Alberdingk U 615)は、Alberdingk Boley Inc.から購入した。ポリビニルアルコール(PVA、SELVOL(商標)E 203S、低粘度部分加水分解ポリビニルアルコール)は、Sekisui Specialty Chemicalsから購入した。35,000の平均分子量(Mn)を有するポリ(エチレングリコール)(PEG)は、Sigma-Aldrich,Inc.から購入した。
【0078】
実施例1:水溶性ポリマーを含まない基本ピエゾ抵抗配合物。1グラムの銀マイクロフレークを1.25gのTPUエマルジョンと組み合わせて、得られた混合物をモビルロッド(movil rod)ローラ上で4時間圧延させて完全に混合した。混合物をトレイに注ぐことによってフィルムを流延した。混合物からの水を、ヒュームフード中周囲条件下、真空下で一晩、又は60℃のオーブン中で2時間、蒸発させた。乾燥後、銀マイクロフレーク対TPUの質量比は、2:1であった。
【0079】
実施例2:PVAを含むピエゾ抵抗配合物。PVAの25重量%溶液1.0gを銀マイクロフレーク及びTPUの混合物と組み合わせたことを除いて、実施例1を繰り返した。乾燥後、銀マイクロフレーク対TPU対PVAの質量比は、4:2:1であった。
【0080】
規模を拡大して、180gの銀マイクロフレークを225gのAlberdink U 615 TPUエマルジョン(90gのTPU固体)と混合し、混合物をモビルロッドローラ上で4時間圧延させることによって加工を行った。圧延された混合物をトレイ上に注ぎ、周囲条件下、減圧下、又は60℃のオーブン内で2時間水を除去することによってフィルムを流延した。乾燥材料を小片に粉砕し、更に減圧下40℃で一晩乾燥させた。90gの更なる乾燥材料(60gの銀マイクロフレーク及び30gのTPUに相当する)を15gのPVAと組み合わせ、Haakeミキサーにおいて180℃で調合した。規模拡大条件下で生産された材料からのフィラメントの押出に成功した。
【0081】
実施例3:超音波処理した実施例2のフィルム。実施例2の乾燥フィルムを水中で3時間超音波処理して、PVAを除去した。Branson 1510超音波浴を用いて超音波処理を行った。
【0082】
実施例4:PEGを含むピエゾ抵抗配合物。PEGの40重量%溶液0.25gを銀マイクロフレーク及びTPUの混合物と組み合わせたことを除いて、実施例1を繰り返した。乾燥後、銀マイクロフレーク対TPU対PEGの質量比は、4:2:1であった。
【0083】
PVAの代わりにPEGを用いたこと以外は、実施例2の規模拡大合成を行った。調合後、得られた混合物は、4:2:1の銀マイクロフレーク対TPU対PEGの質量比を有していた。規模拡大条件下で生産された材料からのフィラメントの押出に成功した。
【0084】
実施例5:超音波処理した実施例4のフィルム。実施例4の乾燥フィルムを3時間超音波処理して、PVAを除去した。Branson 1510超音波浴を用いて超音波処理を行った。
【0085】
複合フィルムのSEM特性評価。乾燥後、一部の容易に除去可能な銀マイクロフレークがフィルムの表面上に残っていたが、大部分の銀マイクロフレークは、連続ポリマー相中に分散したままであった。PVA又はPEGの添加は、分散安定性にほとんど影響を与えなかった。
【0086】
実施例1からの生成物を走査型電子顕微鏡(scanning electron microscopy、SEM)によって分析した。断面SEM画像は、複合マトリックス中の銀マイクロフレークの良好な分布を示した。SEM画像は、
図7A及び
図7Bに示され、それらから調製された複合フィラメントを参照して以下に考察する。
【0087】
複合フィルムの灰分分析。実施例1~5のフィルムの銀含有量を灰分分析によって決定し、これを以下の表1に要約する。
【表1】
実施例1、2、及び4のフィルムについての銀含有量間の不一致は、複合フィルム中の水の保持から生じると考えられる。実施例1のフィルムは、分析前に真空下で乾燥させなかったが、これは、このフィルムが水溶性ポリマーを含有していなかったにもかかわらず、その予想よりも高い含水量を説明することができる。実施例2及び4のフィルムから水溶性ポリマーを除去した後、実験銀含有量は、理論によって予測されたものに非常に近かった(実施例3及び5の試料)。理論との密接な相関関係は、PVA及びPEGが超音波処理によって有効に除去され、2つの非混和性ポリマーの水溶性相(PVA又はPEG)中に銀がほとんど分散しなかったことを示す。
【0088】
複合フィルムの可撓性。実施例1~5の複合フィルムを、フィルムを手によって手動曲げることによって、それらの可撓性及び脆性について定性的に評価した。実施例1の複合フィルムは、折り曲げた直後に亀裂が生じた。実施例2の複合フィルムは、非常に脆性であったが、PVAを除去した後(実施例3)、フィルムははるかにより可撓性であり、亀裂及び破断することなく半分に折り畳むことができた。実施例4及び5を比較すると、複合フィルムは、PEGを除去した後(実施例5)にかなりより可撓性であった。PEG系(実施例4)は、PVA系(実施例2)ほど剛性ではなかった。
【0089】
複合フィルムの電気的特性。実施例1~5の複合フィルムのピエゾ抵抗性能を、印加圧力を変動させて抵抗の変化を測定することによって評価した。60℃のオーブン内で2時間乾燥させて0.8mmのフィルム厚さを得ることによって、ピエゾ抵抗測定用の複合フィルムを調製した。複合体に接続されたマルチメータを使用して抵抗を測定した。複合フィルムに適用された72g、122g、272g、572g、及び1072gの5つの異なる重量で抵抗を測定した。アルミニウムプラーク(72g)を上部電極としてフィルム上に配置して、複合体に適用された力をより良好に分布させ、一貫した接触面積を提供した。指定の総重量に達するように、追加の重量をアルミニウムプラークに加えた。
図4は、実施例1~5のフィルムに適用された重量の関数としての抵抗のプロットを示す。全ての複合フィルムは、適用された重量(負荷)の増加とともに抵抗の減少を示した。PVA又はPEGを欠く複合フィルム(実施例1)は、特に低い印加圧力範囲において、他のフィルムよりも低い初期抵抗を示す傾向があった。最も低い印加圧力において、PVAを含有する複合フィルム(実施例2)は、PEGを含有する比較フィルム(実施例4)よりも統計的に有意に14.3%高い抵抗を有した。PVA又はPEGの除去後、抵抗値は、互いに非常に近かったが(実施例3及び5)、最も低い印加圧力ではTPU単独(実施例1)の抵抗値よりも依然としてはるかに高かった。PVA/PEGを含む複合フィルムは、含まないものよりも高い初期抵抗値を示し、より低い圧力範囲(すなわち、より低い重量)においてより高い感度を示した。圧力が増加するにつれて、抵抗値は互いに区別できなくなった。
【0090】
複合フィラメント。上記のように調製した複合フィルムを、Filabot EX6フィラメント押出機を使用して複合フィラメントに更に加工した。押出機は、押出機、空気経路、及びフィラメント巻取機からなる。押出機は、i)供給ポートノズル、ii)後部ゾーン、iii)中間ゾーン、及びiv)前部ゾーンの4つの加熱ゾーンを有する。押出機は、押出スクリューのモーター速度、ひいては押出速度を制御するためにデジタル電圧読み出しを用いて修正した。供給経路ノズルは、異なる直径のノズルと交換することができる。空気経路は、気流に関して調整することができる。空気経路の位置を、出口ノズルからの距離に対して、又はジャッキ上の空気経路を上昇させて、調整することができる。この実験では、空気経路の高さを一定に保った。出口ノズルからの空気経路の距離も、一定のフィラメント直径を維持するように変動させた。表2は、実施例6及び7(下記参照)の複合フィラメントを調製するために使用されたフィラメント押出条件を要約する。インライン厚さゲージを使用して、フィラメント直径を測定した。
【表2】
【0091】
実施例6:水溶性ポリマーを欠くピエゾ抵抗フィラメント。実施例1の複合フィルムを、前のスケールの100倍で調製し、小片に粉砕し、真空下で2時間乾燥させた。次いで、粉砕した材料を表2に指定したフィラメントに押出した。
図5Aは、実施例6の複合フィラメントの写真を示す。
【0092】
実施例7:PVAを含有するピエゾ抵抗フィラメント。実施例2の複合フィルムを、前のスケールの100倍で調製し、小片に粉砕し、真空下で2時間乾燥させた。次いで、粉砕した材料を表2に指定したフィラメントに押出した。
図5Bは、実施例7の複合フィラメントの写真を示す。生産されたままの複合フィラメントは、Micromeritics ACCYPYC 1330機器を使用してガスピクノメトリーによって測定した場合、2.63g/cm
3の平均密度を有していた。
【0093】
実施例8:超音波処理された実施例7のピエゾ抵抗フィラメント。実施例7の複合フィラメントを水中で3時間超音波処理し、水中に24時間浸漬し、次いで真空オーブン下で乾燥させてPVAを除去した。Branson 1510超音波浴を用いて超音波処理を行った。超音波処理された複合フィラメントは、ガスピクノメトリーで測定した場合に、2.97g/cm3の平均密度を有していた。ガスピクノメトリーで測定された密度の増加は、複合フィラメントからのPVAの少なくとも部分的な除去及び複合フィラメント中の多孔性の形成と一致する。
【0094】
複合フィラメントの可撓性。実施例6及び7の複合フィラメントは、両方とも非常に脆性であり、曲げによって容易に破断する可能性があった。超音波処理及びPVA除去の後(実施例8)、複合フィラメントは、著しくより可撓性であり、かつ脆性が低く、表面はより粗く、かつ光沢が少なかった。
【0095】
複合フィラメントの電気的特性。フィラメントの各端部に接続されたマルチメータを使用して、複合フィラメントの5cm切片の電気的特性を測定した。実施例6及び7の複合フィラメントは、両方とも無限大の抵抗を示した。対照的に、実施例8の複合フィラメントは、PVAの除去後に数百MΩの抵抗を示した。更なる超音波処理及び2日間にわたる水中への浸漬によって、4MΩへの更なる抵抗減少がもたらされた。
【0096】
フィラメントからPVAを除去した後、様々な重量負荷にわたる抵抗変化を研究した。複合フィルムに適用された72g、122g、272g、572g、及び1072gの5つの異なる重量で抵抗を測定した。これらの測定を行うために、マルチメータの1つの接点を複合フィラメントの端部に接続し、マルチメータの第2の接点をフィラメント上に配置された導電性フィルムに接続した。
図6は、実施例8の複合フィラメントに適用された重量の関数としての抵抗のプロットを示す。示されるように、抵抗は、適用重量が増加するにつれて、12.2MΩから2.4MΩに減少した。したがって、ピエゾ抵抗複合体は、PVAの除去後に複合フィラメントから得ることができる。
【0097】
複合フィラメントのSEM特性評価。
図7A及び
図7Bは、2つの異なる倍率での銀マイクロフレーク/TPU複合フィルム(実施例1)のSEM画像を示す。示されるように、銀マイクロフレークは、ポリマーマトリックス中に大部分が均一に分散され、不均一な分散及び多孔性のいくつかの領域が存在した。フィルムの多孔性は、そのピエゾ抵抗挙動を説明することができる。
【0098】
図8A及び
図8Bは、2つの異なる倍率での銀マイクロフレーク/TPU複合フィラメント(実施例6)の断面SEM画像を示す。対応するフィルム(
図7A及び
図7B)と比較して、銀マイクロフレークは、フィラメント中により均一に分散され、より高密度に充填された。多孔質フィルムとは対照的に、多孔性は、フィラメントにおいて明白ではなかった。多孔性の欠如及び高密度の銀マイクロフレーク充填は、導電性の欠如を説明することができる。
【0099】
図9A及び
図9B、並びに
図9C及び
図9Dは、それぞれ、実施例7及び8の複合フィラメント(PVA除去の前後)の2つの倍率での断面SEM画像を示す。実施例7の複合フィラメントは、均一な銀マイクロフレーク分布及び高密度充填を示し、PVAの添加が粒子分散を破壊しなかったことを示した。多孔性は、実施例8の複合フィラメントにおいて明白であり、これは、その導電性及びピエゾ抵抗効果を説明することができる。
【0100】
複合フィラメントの印刷。実施例7の複合フィラメントを、HT2-250押出機印刷ヘッドを用いるHyrel HYDRA 16A 3Dプリンタを使用して、単層及び多層2cm×2cm正方形クーポンとして印刷した。各印刷層の厚さは、約200ミクロンであった。5層クーポンを、以下に記載する更なる評価のための例示的な試料として選択した。押出は、45℃に保持されたガラスプレート上に170℃で10mm/sの押出速度で行われた。
【0101】
印刷されたままのクーポンは、非伝導性であった。印刷されたままのクーポンを超音波処理してPVAを除去した後、得られた多孔質クーポンは、その表面及びその断面厚さの両方において導電性であった。次いで、10、50、100、200、500、及び1000gの適用重量を使用して、断面厚さにわたって抵抗を測定した。
図10は、抵抗対印加圧力のプロットを示す。示されるように、抵抗は、圧力の増加とともに徐々に減少した。
【0102】
本明細書に記載の全ての文書は、そのような実施が許可される全ての法域の目的のために、参照により本明細書に組み込まれ、このテキストと矛盾しない範囲で、任意の優先文書及び/又は試験手順を含む。前述の一般的な説明及び具体的な実施形態から明らかなように、本開示の形態が例示及び説明されてきたが、本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく様々な修正を行うことができる。したがって、本開示がそれによって限定されることは意図されていない。例えば、本明細書に記載の組成物は、本明細書に明示的に列挙又は開示されていない任意の成分、又は組成物を含まなくてもよい。いずれの方法も、本明細書に列挙又は開示されていない任意の工程を欠いていてもよい。同様に、「備える、含む(comprising)」という用語は、「含む(including)」という用語と同義であると考えられる。方法、組成物、要素、又は要素の群が「備える、含む(comprising)」という移行句に先行されている場合はいつでも、本発明者らが、組成物、要素、又は複数の要素の列挙に先行する「から本質的になる」、「からなる」、「からなる群から選択される」、又は「である」という移行句を伴う同じ組成物又は要素の群も企図すること、及びその逆もまた同様であることが理解される。
【0103】
別途指示のない限り、本明細書及び関連する特許請求の範囲で使用される原料、分子量などの特性、反応条件などの量を表す全ての数は、全ての事例において、「約」という用語によって修飾されているものとして理解されるべきである。したがって、反対の指示がない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明の実施形態によって得ることが求められる所望の特性に応じて変動し得る近似値である。少なくとも、特許請求の範囲の範囲への均等論の適用を制限しようとするものではなく、各数値パラメータは、報告された有効数字の数に照らして、通常の四捨五入技法を適用することによって解釈されるべきである。
【0104】
下限及び上限を有する数値範囲が開示されるときはいつでも、その範囲内にある任意の数及び任意の含まれる範囲が具体的に開示される。具体的には、本明細書に開示される(「約a~約b(from about a to about b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a to b)」、又は等しく「約a~b(from approximately a-b)」という形態の)値の全ての範囲は、より広範な値の範囲内に包含される全ての数及び範囲を記載するものと理解されるべきである。また、特許請求の範囲における用語は、別途特許権所有者によって明示的かつ明確に定義されない限り、平易な通常の意味を有する。更に、特許請求の範囲で使用するとき、「a」又は「an」という不定冠詞は、本明細書において、それが導入する要素のうちの1つ又は1つ超を意味するように定義される。
【0105】
1つ以上の例示的な実施形態が本明細書に提示される。明確にするために、物理的実装形態の全ての特徴が本出願に説明又は図示されているわけではない。本開示の物理的な実施形態の開発では、システム関連、ビジネス関連、政府関連、及び他の制約によるコンプライアンスなど、実装によって及び随時に変動する開発者の目標を達成するために、数多くの実装固有の決定がなされなければならないことが理解される。開発者の努力に多くの時間が費やされる可能性があるが、それでも、そのような努力は、本開示の利益を有する当業者にとって日常的な仕事であろう。
【0106】
したがって、本開示は、言及された目標及び利点、並びにそれに固有の目標及び利点を達成するように十分に適合されている。上記に開示された特定の実施形態は例示的なものに過ぎず、本明細書に教示の利益を有する当業者にとって明らかである、異なるが同等の方式で本開示が修正及び実施され得る。更に、以下の特許請求の範囲に記載されるもの以外の、本明細書に示される構造又は設計の詳細に限定することを意図するものではない。したがって、上記に開示された特定の例示的実施形態を、変更、組み合わせ、又は修正してもよく、全てのそのような変形が、本開示の範囲及び趣旨内で考慮されることは明らかである。好適に本明細書に例示的に開示される実施形態は、本明細書に具体的に開示されない任意の要素、及び/又は本明細書に開示される任意の任意選択的な要素の不在下で実施され得る。