(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140321
(43)【公開日】2023-10-04
(54)【発明の名称】線量マッピング不確実性に対するロバストな放射線治療計画のための方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 5/10 20060101AFI20230927BHJP
【FI】
A61N5/10 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023042690
(22)【出願日】2023-03-17
(31)【優先権主張番号】22163558
(32)【優先日】2022-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】522454806
【氏名又は名称】レイサーチ ラボラトリーズ エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベングトソン,イーヴァル
(72)【発明者】
【氏名】フレドリクソン,アルビン
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082AJ08
4C082AJ14
4C082AN02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】被験者の治療体積に対するロバストな放射線治療の計画を生成する方法を提供する。
【解決手段】被験者の治療体積に対するロバストな放射線治療の計画を生成する方法は、治療体積は複数のボクセルを使用して定義され、治療体積の第1の画像を受信するステップと、第2の画像を受信することと、第1の画像におけるマッピングされた線量の分布を生成することと、放射線治療に関連する総線量に対する少なくとも1つの最適化関数を使用して最適化問題を定義することであって、総線量は、第1の画像において定義される線量と、第2の画像において定義される線量との関数であり、第1の画像におけるマッピングされた線量の分布に基づいて、最適化関数値を計算するステップと、2つのマッピングされた線量を考慮することにより評価された最適化関数値を最適化することにより、放射線治療の計画を生成することと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者の治療体積に対するロバストな放射線治療の計画を生成する方法であって、前記治療体積は複数のボクセルを使用して定義され、前記方法は、
前記治療体積の第1の画像を受信することと、
前記治療体積の少なくとも1つの第2の画像を受信することと、
画像レジストレーションを用いて、前記少なくとも1つの第2の画像において定義された線量を前記第1の画像にマッピングすることにより、前記第1の画像におけるマッピングされた線量の分布を生成すること、
前記放射線治療に関連する総線量に対する少なくとも1つの最適化関数を使用して最適化問題を定義することであって、前記総線量は、前記第1の画像において定義される線量と、前記少なくとも1つの第2の画像において定義される前記線量との関数である、前記最適化問題を定義することと、
前記第1の画像における前記マッピングされた線量の分布における少なくとも2つのマッピングされた線量に基づいて、少なくとも1つの最適化関数値を計算することと、
前記マッピングされた線量の分布における前記少なくとも2つのマッピングされた線量を考慮することにより評価された前記少なくとも1つの最適化関数値を最適化することにより、前記放射線治療の計画を生成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの第2の画像における前記線量を前記第1の画像にマッピングすることは、非剛体画像レジストレーションを使用して実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2の画像における前記線量を前記第1の画像にマッピングすることは、少なくとも2つの異なる画像レジストレーションを使用して実施され、前記マッピングされた線量の分布は、前記少なくとも2つのマッピングされた線量の間の変化量である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の画像における前記線量を前記第1の画像にマッピングすることは、前記画像レジストレーションから生じた変形ベクトル場における各ベクトルの誤差推定を行うことにより実施され、
前記マッピングされた線量の分布は、少なくとも2つの異なる摂動を使用して前記誤差推定に従って摂動された前記変形ベクトル場から生じる少なくとも2つのマッピングされた線量に基づく、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第2の画像における前記線量は、以前の治療、治療の一部、又は部分的な治療の一部からの線量であり、前記放射線治療の計画を生成することは、放射線再治療の計画を生成すること、又は既存の放射線治療の計画を適応させること、を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第2の画像の前記線量は、4次元放射線治療の計画の部分的なビーム線量である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記最適化問題は、前記最適化の間に維持されるパラメータを定義する制約条件を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記最適化問題は、生物学的目標又は物理的目標を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記物理的目標は、前記治療体積における標的及びリスク臓器への線量限界、線量体積ヒストグラム限界、線エネルギー付与限界、粒子が停止する場所、並びに/又は均質性及び整合性インデックス、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記最適化は、
前記マッピングされた線量の分布における前記少なくとも2つのマッピングされた線量に対する前記最適化関数の期待値が最小化される、確率論的プログラミング手法;前記マッピングされた線量の分布における前記少なくとも2つのマッピングされた線量に対する前記最適化関数の最大値が最小化される、ミニマックス手法;又は、2つの一般にミニマックス確率論的プログラミングと称されるものの任意の組合せ;又は、別個に考慮された各ボクセルへのワーストケース線量が最適化される、ボクセル的ワーストケース手法、を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記マッピングされた線量の分布における前記少なくとも2つのマッピングされた線量は、追加の誤差シナリオに更に組み合わされ、
前記追加の誤差シナリオは、治療計画に関連する1つ以上のパラメータの不確実性の具体的な認識を表し、前記パラメータは、粒子範囲、前記治療体積の空間位置、放射線治療装置設定、照射された組織の密度、相互作用効果、器官運動、及び/又は生物学的モデルパラメータ値を含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータにおいて実行されると前記コンピュータに請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行させるコンピュータ可読命令、を含むコンピュータプログラム製品(130)。
【請求項13】
コンピュータ可読命令を記憶するメモリ(110)に結合されたプロセッサ(120)を備えるコンピュータシステム(100)であって、前記コンピュータ可読命令は、前記プロセッサにおいて実行されると、前記プロセッサに請求項1~11のいずれか1項に記載の方法を実行させる、コンピュータシステム(100)。
【請求項14】
請求項13に記載のコンピュータシステム(100)を含む、放射線治療計画システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には放射線治療に関し、具体的には、放射線治療計画の生成、最適化、及び評価の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
患者における標的(腫瘍)及びリスク臓器(Organ At Risk:OAR)を特定し輪郭を描写するために、放射線治療計画において医学画像法が広く使用されている。腫瘍に照射される最小線量又は標的線量、及びOARへの最大線量などの、他の放射線治療計画パラメータと共に、取得された画像からの、輪郭が描写された標的及びOARは、放射線が標的に集中される一方で、OARの曝露を限定するように、計画された線量分布を最適化するための入力として役立つ。
【0003】
多くの治療状況において、患者の複数の画像が異なる時間及び/又は空間にて取得される。例としては、最初の計画が放射線治療の過程にわたって適応される適応計画、患者が追加の放射線治療を受ける再治療、及び、例えば一呼吸サイクルにわたって、複数の画像が取得される、4次元ロバスト最適化、が挙げられるが、これらに限定されない。
【0004】
異なる時間に及び/又は異なる観点から取得された、同じ患者の医用画像を比較し、照射された線量の情報を得るために、データの異なるセットを、1つの座標系、例えば1つの第1の画像に変換するために、画像は画像レジストレーション(Image Registration:IR)を受ける。しかしながら、放射線治療中に、線量照射の精度及び実効線量の空間分布に影響を及ぼす変化が生じる場合がある。このような変化は、腫瘍の移動、収縮若しくは拡張、又は、例えば体重減少/増加に起因する患者における腫瘍及び周辺の解剖学的構造の形状変化、を含み得る。
【0005】
解剖学的変化の影響を軽減するため、非剛体画像レジストレーション(Deformable Image Registration:DIR)が使用され、非剛体移動及び/又は回転を使用して、個々の体積要素が1つの画像から別の画像にマッピングされ、その結果、変形マップ又は変形ベクトル場(Deformable Vector Field:DVF)が得られる。それでもやはり、全ての解剖学的領域を完全に変形させる模範的な変形は存在しないので、DIRの現行方法は曖昧であり、したがって、DIRに基づくいかなる線量マッピングも本質的に不確実である。
【0006】
従来技術は、この不確実性を正確に考慮することがない。むしろ、ある領域における変形ベクトル場(DVF)を信頼すること、又はそれを完全に拒絶して、マッピングされた線量として、潜在的に過度に保守的な推定を適用すること、の間の選択である。
【0007】
国際公開第2012/069965 A1号明細書は、2つの計画画像セットのレジストレーションから生じる変形マップを手動で又は自動的に修正するためのシステム及び方法について開示している。しかしながら、修正プロセスは、時間を要し、ユーザの専門知識を必要とし、線量マッピングの不確実性を十分に解消することがない。
【発明の概要】
【0008】
本開示の目的は、画像レジストレーションにおける線量マッピング不確実性を取り扱うために、ロバストな最適化手法が提供される改善された解決策を提供することである。この目的は、被験者の治療体積に対するロバストな放射線治療の計画を生成する方法が提供される本開示の第1の態様において達成され、この治療体積は複数のボクセルを使用して定義され、本方法は、
治療体積の第1の画像を受信するステップと、
治療体積の少なくとも1つの第2の画像を受信するステップと、
画像レジストレーションを用いて、少なくとも1つの第2の画像において定義された線量を第1の画像にマッピングすることにより、第1の画像におけるマッピングされた線量の分布を生成するステップと、
放射線治療に関連する総線量に対する少なくとも1つの最適化関数を使用して最適化問題を定義するステップであって、総線量は、第1の画像において定義される線量と、少なくとも1つの第2の画像において定義される線量との関数である、ステップと、
第1の画像におけるマッピングされた線量の分布における少なくとも2つのマッピングされた線量に基づいて、少なくとも1つの最適化関数値を計算するステップと、
マッピングされた線量の分布における少なくとも2つのマッピングされた線量を考慮することにより評価された少なくとも1つの最適化関数値を最適化することにより、放射線治療の計画を生成するステップと、を含む。
【0009】
DVFは合理的な限度の範囲内で不確実であると考えること、又は複数の妥当と思われるDVFを考えることにより、本開示は、モデル化された線量マッピング不確実性に対してロバストな総線量を得ることを可能にする。主な利点は、名目上のマッピングされた線量だけではなく、マッピングされた線量の分布を考慮することにより、線量勾配が急峻な領域及びIRが不確実な領域においてさえ、適切な総線量を確実にする解決策にオプティマイザを導くことが可能である。
【0010】
従来の方法が、将来に照射されることになるものだけを考慮するのに対して、本開示は、既に照射されたものに関する不確実性に関するロバストさを提供する。更には、第1の画像におけるマッピングされた線量の分布の生成は、いくつかの方法で行うことができ、治療体積におけるボクセル間の、いかなる特定の依存構造にも限定されない。これに関連して、分布は、マッピングされた線量のセットとして、及び任意選択で、セットにおける各メンバーに対する、対応する確率として定義できる。代わりに、分布は、名目値及び誤差推定として定義できる。これらは、例えば、ボクセル当たりの平均値、及びボクセル当たりの標準偏差、又は代わりに、ボクセル当たりの最大偏差であり得る。
【0011】
一実施形態では、少なくとも1つの第2の画像における線量を第1の画像にマッピングすることが、非剛体画像レジストレーション(DIR)を使用して実施される。DIRは、解剖学における非剛体移動、回転、及び/又は他の変化を考慮することができる。
【0012】
一実施形態では、少なくとも1つの第2の画像における線量を第1の画像にマッピングすることは、少なくとも2つの異なる画像レジストレーションを使用して実施され、マッピングされた線量の分布は、少なくとも2つのマッピングされた線量を含むセットである。例えば、いくつかの異なるアルゴリズム又はアルゴリズムパラメータの選択を使用して、画像レジストレーションの数を増加させることにより、線量マッピング不確実性のより信頼性の高い推定がもたらされる。
【0013】
一実施形態では、少なくとも1つの第2の画像における線量を第1の画像にマッピングすることは、画像レジストレーションから生じた、変形ベクトル場における各ベクトルの誤差推定を行うことにより実施され、マッピングされた線量の分布は、少なくとも2つの異なる摂動を使用して誤差推定に従って摂動された変形ベクトル場から生じる少なくとも2つのマッピングされた線量に基づく。摂動のうちの1つは、ゼロ摂動であり得る。
【0014】
一実施形態では、少なくとも1つの第2の画像における線量は、以前の治療、治療の一部、又は部分的な治療の一部からの線量であり、放射線治療計画を生成するステップは、放射線再治療計画を生成すること、又は既存の放射線治療計画を適応させること、を含む。
【0015】
一実施形態では、少なくとも1つの第2の画像における線量は、4次元放射線治療計画における部分的なビーム線量である。
【0016】
一実施形態では、最適化問題は、最適化の間に維持されるパラメータを定義する制約条件を含む。制約条件は、例えば、最適化の間に変化しない、定義済みサブ体積(例えば、標的)における所定の線量の形であってもよい。このように、特定の線量分布を確実にするために標的線量は維持されるが、放射線治療計画の残留部分はロバストに最適化される。
【0017】
一実施形態では、最適化問題は、生物学的目標又は物理的目標を含む。好ましくは、物理的目標は、治療体積における標的及びリスク臓器(OAR)への線量限界、線量体積ヒストグラム(Dose Volume Histogram:DVH)限界、LET限界、粒子が停止する場所、並びに/又は均質性及び整合性インデックス、を含む。このように、生物学的不確実性を、他の(物理的)目的と組み合わせることもできる。計画最適化及び評価は、異なる生物学的モデルを組み合わせて使用することが可能でなければならず、並びに、物理的最適化関数及び目標と組み合わせて使用することが可能でなければならない。最適化問題は、物理的目標、例えば、標的及びリスク臓器へのそれぞれ最小及び最大線量、DVH限界と、生物学的目標、例えばBED、EQD2、EUD、TCP、及びNTCP、との組合せであり得る。
【0018】
一実施形態では、物理的目標は、治療体積における標的及びリスク臓器(OAR)への線量限界、線量体積ヒストグラム(DVH)限界、線エネルギー付与(Linear Energy Transfer:LET)限界、粒子が停止する場所、並びに/又は均質性及び整合性インデックス、を含む。
【0019】
一実施形態では、最適化は、マッピングされた線量の分布における少なくとも2つのマッピングされた線量に対して最適化関数の期待値が最小化される、確率論的プログラミング手法;マッピングされた線量の分布における少なくとも2つのマッピングされた線量に対して最適化関数の最大値が最小化される、ミニマックス手法;又は、2つの一般にミニマックス確率論的プログラミングと称されるものの任意の組合せ;又は、別個に考慮された各ボクセルへのワーストケース線量が最適化される、ボクセル的ワーストケース手法、を含む。
【0020】
一実施形態では、マッピングされた線量の分布における少なくとも2つのマッピングされた線量は、誤差シナリオの追加のセットに更に組み合わされ、誤差シナリオの追加のセットは、治療計画に関連する1つ以上のパラメータの不確実性の具体的な実現を表し、パラメータは、粒子範囲、治療体積の空間位置、放射線治療装置設定、照射された組織の密度、相互作用効果、器官運動、及び/又は生物学的モデルパラメータ値を含む。
【0021】
第2の態様によれば、コンピュータで動作するときに、第1の態様に従う方法をコンピュータに実施させることになるコンピュータ可読コード手段、を備えるコンピュータプログラム製品が提供される。
【0022】
第3の態様によれば、プロセッサにより実行されたときに第1の態様に従う方法をプロセッサに実施させるコンピュータ可読命令を記憶するメモリに結合されたプロセッサを備えるコンピュータシステムが提供される。
【0023】
第4の態様によれば、上述したようなコンピュータシステムを備える治療計画システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示の、これら特徴及び他の特徴、態様、並びに利点が、添付の図面を参照して以下の記載において更に説明される。
【
図1】古い画像上に照射された線量の、新しい画像上への3つのマッピングを示す。
【
図2】本開示の一実施形態による、ロバストな放射線治療計画を生成するためのコンピュータベースの方法のステップを表すフローチャートを示す。
【
図3a】本開示の一実施形態による、マッピングされた線量の分布の生成を示す。
【
図3b】本開示の一実施形態による、マッピングされた線量の分布の生成を示す。
【
図4a】本開示の他の実施形態による、マッピングされた線量の分布の生成を示す。
【
図4b】本開示の他の実施形態による、マッピングされた線量の分布の生成を示す。
【
図5】本開示の一実施形態による、放射線治療計画の評価、視覚化、生成、及び改善のためのコンピュータベースのシステムを概略的に示す。
【0025】
本明細書では、図面に共通する同一の要素を示す際に、可能な場合は同一の参照番号を使用している。更に、図面における画像は、例示を目的として簡略化されており、必ずしも縮尺通りに示されているわけではない。
【発明を実施するための形態】
【0026】
ここで
図1を参照すると、線量マッピング不確実性の基礎をなす問題が示されている。
図1の左側には患者の画像が示され、そこには、照射された線量が示されている。陰影の異なる色は、治療体積の特定領域に照射された線量の量を示す。
図1の右側には、同じ治療体積の、異なる時点における3つの異なる画像を示す。例えば、古い画像上に照射された線量を新しい画像にマッピングするために、これらの異なる画像から得られるデータを比較するか又は一体化するために、古い画像は、画像レジストレーションにより、新しい画像に位置合わせされる。3つの画像の各々は、異なるアルゴリズムを使用する異なる画像レジストレーションを表し、新しい画像上に3つの異なるマッピングされた線量が得られている。したがって、線量マッピングには固有の不確実性が存在し、これが放射線治療計画に影響を及ぼす。
【0027】
図2は、本開示による方法の一実施形態のフローチャートであり、これは、放射線治療計画の生成に関連して使用することができる。一実施形態では、出発点は、初期の治療計画及び考慮すべきシナリオの数であり、本方法は、初期の治療計画に基づいて改善された治療計画を得ること、初期の計画をいくつかの制約を伴って修正すること、又は初期の治療計画が全ての機械的制限を満足しない場合に提供可能な治療計画を得ること、を意図している。計画に含まれるデータのタイプに応じて、線量計算のために、他の入力データ、例えば患者に関連したデータ、が必要な場合がある。初期の治療計画は、シナリオベース及び非シナリオベースの方法を含む、当該技術分野において既知のいずれかの形で得ることができる。
【0028】
治療計画は、被験者(患者)の治療体積の放射線治療を提供する目的で生成され、治療体積は、臓器であってもよく、腫瘍、又は腫瘍細胞のクラスタであってもよい標的を含む。治療体積は、当技術分野において既知の通り、複数のボクセルを使用して定義される。
【0029】
ステップS100において、治療体積の第1の画像が受信される。第1の画像は、放射線治療計画において使用されることになる、患者の現在の状態を表す基準画像であってもよい。ステップS102において、治療体積の少なくとも1つの第2の画像が受信される。第2の画像は、以前の時点における、例えば、以前の治療又は治療の一部の間の、患者の状態を表す標的画像であってもよい。代わりに、第2の画像は、異なるフェーズにおける、例えば、患者の呼吸サイクルの異なるフェーズにおける、患者の状態を表すフェーズ画像であってもよい。
【0030】
第1の画像及び第2の画像の両方を、X線コンピュータ断層撮影(CT)、磁気共鳴画像法(MRI)、陽電子放出断層撮影(PET)、超音波及び単光子放射断層撮影(SPECT)を含むがこれらに限定されない、医学画像法の任意の好適な技術を使用して得ることができる。
【0031】
ステップS104において、少なくとも1つの第2の画像において定義された線量が、画像レジストレーションを使用して第1の画像にマッピングされ、したがって、第1の画像において、マッピングされた線量の分布が生成される。一実施形態では、解剖学における非剛体移動、回転、及び/又は他の変化を考慮して、非剛体画像レジストレーションが使用される。画像レジストレーションは、第1の画像と第2の画像の間の変形を表すベクトルが治療体積の各ボクセルに割り当てられる変形ベクトル場を生成する。
【0032】
ステップS106において、放射線治療に関連する総線量に対する少なくとも1つの最適化関数を使用して、最適化問題が定義される。総線量は、第1の画像において定義される線量と、少なくとも1つの第2の画像において定義される線量との関数である。
【0033】
ステップS108において、第1の画像におけるマッピングされた線量の分布における少なくとも2つのマッピングされた線量に基づいて最適化関数値が計算される。マッピングされた線量及び第1の画像において定義された線量を入力変数として使用して、最適化関数値の計算を実施して、1つの最適化関数値を得ることができる。代わりに、マッピングされた線量の各々を入力変数として使用することができ、第1の関数値は第1のマッピングされた線量に基づき、第2の関数値は第2のマッピングされた線量に基づく。
【0034】
ステップS110において、マッピングされた線量における分布の少なくとも2つのマッピングされた線量を考慮することにより評価されて、最適化関数値が最適化されて、放射線治療計画が生成される。
【0035】
マッピングされた線量の分布は、いくつかの方法で生成させることができ、ボクセル間のいずれかの特定の依存構造に限定されることはない。ここで、
図3a及び
図3bを参照すると、一実施形態の例示が示され、少なくとも1つの第2の画像における線量を第1の画像にマッピングするために、少なくとも2つの異なる画像レジストレーションが使用される。
図3aは、点Aと、
図3bに示す第2の画像における4つの点A’、A’’、A’’’、及びA’’’’の、点Aへの、マッピングを表す4つの矢印と、を含む第1の画像を示す。4つの矢印の各々が、4つの異なる画像レジストレーションから生じた、対応する変形ベクトル場におけるベクトルである。
【0036】
マッピングされた線量のセットは、マッピングされた線量の分布と考えることができる。画像レジストレーションの数を増加させること、すなわち、いくつかの異なる画像レジストレーションアルゴリズムを用いることにより、又は同じアルゴリズムを、異なる設定で、若しくは異なる摂動を追加して使用することにより、線量マッピング不確実性のより信頼性の高い推定が実現される。
【0037】
ここで
図4a及び
図4bを参照すると、マッピングされた線量の分布を生成する方法の他の実施形態が示され、ここでは、変形ベクトル場における各ベクトルが誤差を有すると考えられる。
図4aは、2つの点A及びBと、
図4bに示す第2の画像における点A’及びB’の、点A及びBへの、マッピングを表す、それぞれ各点に割り当てられたベクトルと、を含む第1の画像を表す。
図4aにおける2つのベクトルに対する誤差の推定は、それぞれ半径ε
A及びε
Bを有する、それぞれ点A’及びB’を中心とする円により表される。次いで、この誤差推定を使用して、各ベクトルに対する複数の妥当と思われる認識を生成して、マッピングされた線量の分布を生成する。より具体的には、マッピングされた線量の分布は、少なくとも2つの異なる摂動を使用して誤差推定に従って摂動された変形ベクトル場から生じる少なくとも2つのマッピングされた線量に基づくことができる。摂動のうちの1つは、ゼロ摂動であり得る。すなわち、画像レジストレーションから得られる変形ベクトル場は、ベクトルを摂動させることなく考慮されている。
【0038】
本開示による方法が、異なる計画状況において使用されてもよい。一実施形態では、本方法を使用して、放射線再治療計画を生成する、又は既存の放射線治療計画を適応させる。そのような場合、少なくとも1つの第2の画像において定義される線量は、以前の治療、治療の一部、又は部分的な治療の一部からの線量であり、これは本明細書ではバックグラウンド線量とも呼ばれる。そのとき、総線量は、バックグラウンド線量と、再治療計画又は適応された計画において照射されることになる新しい線量との合計である。
【0039】
一実施形態では、本方法を使用して、例えば患者の呼吸周期の、異なるフェーズ中に、治療体積が周期的空間変形を受ける、4次元放射線治療計画を生成する。そのような場合、少なくとも1つの第2の画像において定義される線量は、特定のフェーズ中に照射される部分的なビーム線量である。そのとき、総線量は、4次元放射線治療計画において照射されることになる部分的なビーム線量の合計である。
【0040】
最適化関数は、最適化の制約条件として含まれてもよい。代わりに、最適化関数は、最適化における目的関数の構成要素として含まれてもよい。典型的には、治療のために目標が設定され、これらの目標を使用して、目的関数の構成要素、制約条件、又はこれらの組合せが定義される。目的関数の構成要素は、最適化が目指すべき、又は最適化が可能な限り果たすべき、所望の目標であり、制約条件は、正確に満たさなければならない厳密な目標又は状態、例えば、腫瘍への最小線量、又はOARへの最大線量、又は目的関数を制御する変数の境界、である。
【0041】
ロバストさを実現するための様々なタイプの最適化方法が、本開示に従う方法と連係して使用できる。例えば、ワーストケースのシナリオが複合目的関数に対して最適化されるミニマックス(又は「複合ワーストケース」)最適化を使用することができる。そのとき、最適化問題は、次のように定式化され、
【数1】
式中、Xは、実現可能な最適化変数のセット(例えば、許容されるスポット重量のセット、MLCリーフ位置、など)であり、Sは、異なるマッピングされた線量を列挙するシナリオのセットであり、f(x;s)は、シナリオsにおける最適化変数xの関数としての複合目的である。例えば、f(x;s)は、g(d(x)+db(s))により与えることができ、式中、d(x)は最適化変数xから生じる新しい線量であり、db(s)はシナリオsにおけるバックグラウンド線量(すなわち、マッピングされた線量)であり、gは総線量d(x)+db(s)に関する関数である。
【0042】
ロバストさを実現する別のタイプの最適化方法は、不確実性に対して期待値が最適化される期待値最適化である。最適化問題は、次のように定式化され、
【数2】
式中、Eは期待演算子であり、YはシナリオのセットSからの値をとる確率変数である。
【0043】
第3の代替形態は、ボクセル的ワーストケース最適化方法である。この方法では、2つの人工的なワーストケース線量分布、d
high及びd
lowが、マッピングされた線量に基づいて計算される。ここで、d
highは、シナリオに関して個別に考慮された各ボクセルに対する最大のマッピングされた線量として計算され、d
lowは、シナリオに関して個別に考慮された各ボクセルに対する最小のマッピングされた線量として計算され、すなわち、以下の通りであり、
【数3】
【数4】
式中、db,i(s)はシナリオsにおいてボクセルiにマッピングされる線量を示し、Nはボクセルの数である。
【0044】
そのとき、最適化問題は、次のように定式化され、
【数5】
式中、f
highは、過剰投与を回避するために用いる構成成分を有する複合目的関数(例えば、リスク臓器(OAR:organs at risk)に対する目的)であり、f
lowは、過少投与を回避するために用いる構成成分を有する複合目的関数(例えば、標的に対する最小線量要件)である。
【0045】
別の代替形態は、シナリオのフルセットSに必ずしも関連しない(しかし、関連する可能性がある)目的関数h(x)を最小化すること、及びSにおける全てのsに対して、以下の関数f(x;s)の制約条件を含むことである。
【数6】
【数7】
目的関数h(x)は、上記方法のいずれかに従って定式化できるが、無誤差に対応する名目シナリオだけを考慮して定式化することもできる。
【0046】
他の方法、例えば、複合ワーストケース最適化と期待値最適化との組合せである確率的ミニマックス手法を使用することもでき、これは当該技術分野において既知である。
【0047】
ここで
図5を参照すると、本開示による、放射線治療計画114を生成するためのコンピュータベースシステム100の簡略化された概略図が示される。コンピュータベースシステム100は、メモリ又はデータベース110を含み、これには、放射線治療計画114、及び改善された放射線治療計画118を生成するためのコンピュータプログラム116が記憶されている。メモリ110は、任意の揮発性又は非揮発性メモリデバイスであって、例えば、フラッシュドライブ、ハードドライブ、光学ドライブ、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)、並びに、情報を記憶するための、及びその後のデータ処理のための情報検索と使用のための、任意の他の好適な装置であり得る。更に、システム100は、データ処理を実施するための1つ以上のハードウェアプロセッサ120を含み、これらはメモリ110にアクセスすることが可能である。ハードウェアプロセッサ120は、中央演算処理装置(CPU)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、縮小命令セットコンピュータ(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、コンプレックスプログラマブルロジックデバイス(CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、並列プロセッサシステム、又はこれらの異なるハードウェアプロセッサタイプの組合せ、のうちの1つ以上で作製され得る。
【0048】
コンピュータプログラム116はコンピュータ可読命令で作成され、この命令は、ハードウェアプロセッサ120に移動させることができ、ハードウェアプロセッサ120により実行されることができる。コンピュータ可読命令は、ハードウェアプロセッサ120において実行されると、改善された放射線治療計画118を生成する方法を実施することになる。コンピュータプログラム116を実行するときに、ハードウェアプロセッサ120により実施される処理の結果が、例えば、改善された放射線治療計画118及び関連データが、メモリ110に記憶され得る。ハードウェアプロセッサ120は、直接メモリアクセス(DMA)を介してメモリ110にアクセスすることもでき、一時的な処理結果を記憶するためのキャッシュメモリを使用することもできる。コンピュータプログラム116は、非一時的コンピュータ可読媒体130にも、例えば、汎用シリアルバス(USB)フラッシュドライブ、CD-ROM、DVD-ROM及びブルーレイディスクなどの光学データ媒体、フロッピーディスク、スワップ可能ハードウェアドライブ、USB外部ハードドライブ(HDD)、又は任意の他の携帯型情報記憶装置、にも記憶させることができ、その結果、コンピュータプログラム116は、異なるコンピューティングシステムに移動させることができ、更にシステム100のメモリ110に読み込むこともできる。これは、コンピュータ可読媒体130、例えば、光学ドライブ、USBインタフェースなどを、データリーダ/ライタ140を介してシステム100に接続することにより行うことができる。
【0049】
更には、システム100はまた、データ処理の結果の視覚化を可能にするディスプレイドライバを有するディスプレイユニット150を含む。このユニットは、例えば、腫瘍又は癌細胞と、線量の照射が防止されなければならない健康なリスク臓器と、を例えば含む、患者の標的体積の3次元(3D)表現、3D等高線データ、又は、標的体積及びリスク臓器の両方の生物学的効果(例えば、損傷/細胞死/副作用の確率)における、様々な交差方向に関する及びLET分布に関する2次元(2D)スライス表現など、を視覚化するものである。例えば、CTスキャンの3Dコンピュータ再現が表示され得る。また、ディスプレイユニット150は、グラフィック2Dフォーマットを用いて3D線量分布を要約する線量体積ヒストグラム(DVH)を表示できる。例えば、ディスプレイユニット150は、放射線治療計画114の線量寄与を示す、患者の体積についての、及び最適化された又は改善された放射線治療計画118の同じ体積についての、比較DVHダイアグラムを示すように構成されており、その結果、LET分布を視覚的に比較することもできる。
【0050】
ディスプレイユニット150は、治療の前に、治療の間に、又は、治療の後に作成される患者の3Dスキャンを表示するために使用される。例えば、CTスキャンの3Dコンピュータ再現が表示され得る。また、ディスプレイユニット150は、グラフィック2Dフォーマットを使用することにより、又は数値的フォーマットを使用することにより、3D線量分布を要約するLET、線量及び/又はDVHを表示できる。例えば、ディスプレイユニット150は、放射線治療計画114の癌細胞崩壊又は線量寄与を示す、患者の体積に対する比較LETダイアグラムを示すように構成されている。これは、改善が視覚的に比較できるように、最適化されたか又は改善された放射線治療計画の同じ体積について示され比較される。また、ディスプレイユニット150が、タッチスクリーン機能を備えて、システム100を操作するためのグラフィカルユーザインタフェースを表示できることも可能である。
【0051】
加えて、コンピュータシステム100はシステムバス160を有し、これが、ハードウェアプロセッサ120、メモリ110、データリーダ140、タッチスクリーン、及び様々な他のデータ入出-出力インタフェース、及び図示されない周辺装置を接続する。例えば、コンピュータシステム100は、ユーザによるデータ入力のためにキーボード170に接続されることができ、放射線治療計画を構築した外部の放射線治療計画装置180、例えば強力な専用コンピュータ、に接続されていてもよい。また、システム100は、図示されないCTスキャナに接続されていてもよい。例えば、放射線治療計画114を構築した外部装置180が線量を開発することができ、ソフトウェア中にコーディングされたLET分布計算アルゴリズムが、線量分布に関する放射線データ、機械較正データ、並びに患者の標的体積及びリスク臓器に関する患者固有の情報へのアクセスを有する。次いで、この外部装置180は、LET分布を考慮して、評価、視覚化、新しい計画の作成、既存の計画の改善のために、放射線治療計画114をコンピュータシステム100に提供できる。しかしながら、コンピュータプログラム116が、外部装置自体で動作し、それにより、放射線治療計画114を生成するだけでなく、改善された放射線治療計画118も生成することも可能でもある。
【0052】
更には、パラメータ最適化を実施するために、コンピュータプログラム製品が導入される。コンピュータプログラム製品130は、コンピュータ可読コード手段を含み、それは、コンピュータにおいて動作されると、上述した方法を実施する。
【0053】
実施例1:バックグラウンド線量不確実性に対するロバストさを有する再治療計画。
放射線治療を受けた特定の患者は、以前に治療された体積の近傍で腫瘍再発を被る場合がある。これらの場合、再治療又は再照射と呼ばれる、放射線治療の第2の過程が考慮される場合がある。そのとき、再治療が計画される対象である計画画像の形の第1の画像が取得される。以前の治療の古い計画画像の形の第2の画像も考慮される。健康な組織が特定の総部分修正線量を超えることを避けるために、再治療計画は、第2の画像中に存在する既に照射された線量を考慮しなければならない。照射された線量が、画像レジストレーションに続いて第2の画像から第1の画像にマッピングされることができ、バックグラウンド線量として使用されることになる。しかしながら、画像レジストレーションが、したがってバックグラウンド線量も、不確実又は不明瞭な場合がある。異なる画像レジストレーションが、異なるバックグラウンド線量をもたらす場合がある。
【0054】
問題:総線量に基づく再治療計画にとって、バックグラウンド線量として使用するには、どのマッピングされた線量が信頼できるか?
【0055】
提案される解決策:線量マッピング不確実性を考慮するために、少なくとも2つのバックグラウンド線量の分布を生成し、総線量をOARに対してロバストに最適化する。
-受信された第1の画像に対して新しい治療計画を定義する。
-少なくとも1つのOARへの総線量に対する少なくとも1つの目的を定義する。この目的は、線量マッピングにおける不確実性に抗してロバストに最適化する可能性がある。このような目的の実施例は、以下の通りである:
・OARに対する最大総物理線量
・OARに対する最大総生物学的等価線量(BED)、例えばEQD2
-標的への再治療線量のための少なくとも1つの目的を定義する。
-任意選択で、放射線治療計画のための1つ以上の追加の関連するパラメータ、例えば設定誤差又は範囲誤差の、特定の認識を表す、追加の誤差シナリオを定義する。
-最初の治療計画から第2の画像を受信し、第1の画像及び第2の画像間に画像レジストレーションを実施して、第2の画像における照射された線量を第1の画像にマッピングする。
-マッピングされた線量の分布を生成し、マッピングされた線量の分布に基づいて、例えば以下の2つの方法のうちの1つにおいて、シナリオを定義する:
・代替アルゴリズムにより、又は代替アルゴリズムパラメータを用いて、少なくとも1つの追加の画像レジストレーションを実施する。結果として生じるマッピングされた線量ごとにシナリオを定義する。
・画像レジストレーションに対する誤差推定を計算し、これを使用して、マッピングされた線量の分布を特徴付ける。人工的なワーストケース線量分布、例えば上述したような確率的ミニマックス手法に基づいて、シナリオを定義する。
-好ましいロバストな最適化フレームワークを使用して再治療計画を最適化する。
【0056】
実施例2:バックグラウンド線量不確実性に対するロバストさを有する適応治療計画。
放射線治療の過程の間に、患者の解剖学的構造における変化、又は治療照射における以前の誤差を考慮するために、元の治療計画を適応させることが望ましい場合がある。この場合、再計画画像の形の第1の画像が取得される。照射された部分の部分的画像の形の少なくとも1つの第2の画像も考慮される。バックグラウンド線量として使用するために、照射された線量は、画像レジストレーションに続いて少なくとも1つの第2の画像から第1の画像にマッピングされ得る。しかしながら、画像レジストレーションが、したがってバックグラウンド線量も、不確実又は不明瞭な場合がある。異なる画像レジストレーション技術が、異なるバックグラウンド線量をもたらす場合がある。
【0057】
問題:総線量に基づく適応治療計画にとって、バックグラウンド線量として使用するには、どのマッピングされた線量が信頼できるか?
【0058】
提案される解決策:線量マッピング不確実性を考慮するために、少なくとも2つのバックグラウンド線量の分布を生成し、総線量をOARに対してロバストに最適化する。
-受信された第1の画像に対して新しい適応された治療計画を定義する。
-総線量に対する少なくとも1つの目的を定義する。この目的は、線量マッピングにおける不確実性に抗してロバストに最適化する可能性がある。このような目的の実施例は、以下の通りであり得る:
・OARに対する最大総物理線量
・OARに対する最大総BED
・標的体積に対する最小総物理線量
-任意選択で、放射線治療計画のための1つ以上の追加の関連するパラメータ、例えば設定誤差又は範囲誤差の、特定の認識を表す、追加の誤差シナリオを定義する。
-以前に照射された部分から少なくとも1つの第2の画像を受信し、第1の画像と少なくとも1つの第2の画像との間に画像レジストレーションを実施して、少なくとも1つの第2の画像において照射された線量を第1の画像にマッピングする。
-第2の画像の各々に対して、例えば以下の2つ方法のうちのいずれかで、マッピングされた線量の分布を第1の画像に生成させる:
・代替アルゴリズムにより、又は代替アルゴリズムパラメータを用いて、少なくとも1つの追加の画像レジストレーションを実施する。
・画像レジストレーションに対する誤差推定を計算し、これを使用して、マッピングされた線量の分布を特徴付ける。
-少なくとも1つの第2の画像からのマッピングされた線量の分布の各々における不確実性の認識に基づいて、シナリオを定義する。
-好ましいロバストな最適化フレームワークを使用して再治療計画を最適化する。
【0059】
実施例3:線量マッピング不確実性に対するロバストさを有する4D治療計画。
周期運動する身体の部分における腫瘍を治療する場合、運動サイクルの、どのフェーズにおいて、線量が照射されるかについてロバストであることが望ましい場合がある。この目的のため、運動サイクルの様々なフェーズからの複数の画像が取得されることがある。そのとき、最適化される線量は、DIRにより共通の基準画像にマッピングされるフェーズ画像の各々における線量の関数である。
【0060】
問題:4D最適化治療計画におけるフェーズ線量として使用するには、どの線量マッピングが信頼できるか?
【0061】
示唆される解決策:少なくとも1つのフェーズ画像から基準画像への、少なくとも2つのマッピングされた線量を生成し、マッピングされた線量を、線量マッピング不確実性に対してロバストとなるように最適化する。
-動きのある患者体積における4D治療計画を定義する。
-基準フェーズ画像における線量に対する少なくとも1つの目的を定義する。この目的は、線量マッピングにおける不確実性に抗してロバストに最適化する可能性がある。このような目的の実施例は、以下の通りである:
・OARに対する最大総物理線量
・標的体積に対する最小総物理線量
-任意選択で、放射線治療計画のための1つ以上の追加の関連するパラメータ、例えば設定誤差又は範囲誤差の、特定の認識を表す、追加の誤差シナリオを定義する。
-動きのサイクルにおける異なるフェーズからのフェーズ画像である少なくとも1つの第2の画像を受信し、使用される第1の画像と少なくとも1つの第2の画像との間に画像レジストレーションを実施して、少なくとも1つの第2の画像における線量を第1の画像にマッピングする。
-第2の画像の各々に対して、マッピングされた線量の分布を第1の画像に生成させる。この場合、マッピングされた線量は、最適化変数と、最適化の各イタレーションにおける変化との関数になるであろう。マッピングされた線量の分布は、例えば、以下の方法のうちの1つで生成され得る:
・代替アルゴリズムにより、又は代替アルゴリズムパラメータを用いて、少なくとも1つの追加の画像レジストレーションを実施する。
・画像レジストレーションに対する誤差推定を計算し、これを使用して、マッピングされた線量の分布を特徴付ける。
-少なくとも1つの第2の画像からのマッピングされた線量の分布の各々における不確実性の認識に基づいて、シナリオを定義する。
-好ましいロバストな最適化フレームワークを使用して再治療計画を最適化する。
【0062】
放射線治療計画を生成するための方法及びシステムの好ましい実施形態が上記にて開示された。しかしながら、これを、本発明の着想から逸脱することなく、添付の「特許請求の範囲」の範囲内で変更できることを、当業者は理解する。
【0063】
全ての、上述した代替の実施形態、又は一実施形態の一部が、本発明の着想を逸脱することなく、自由に組み合わせること又は互いに別々に用いることが、その組合せが矛盾しない限り、可能である。以下の省略形が使用される:
BED 生物学的等価線量
CT コンピュータ断層撮影
CTV 臨床腫瘍/標的体積
DICOM 医学におけるデジタル画像処理及び通信
DVH 線量体積ヒストグラム
EHR 電子健康記録システム
EQD 等価標準部分線量
EQD2 2Gy部分における等価線量
EUD 等価均一分布
eMIX 電子医療情報交換システム
GUI グラフィカルユーザインタフェース
GTV 肉眼的腫瘍/標的体積
HIS 病院情報システム
HIM 健康情報管理システム
IGRT 画像誘導放射線治療
IMRT 強度変調放射線治療
LET 線エネルギー付与
MLC マルチリーフコリメータ
MRI 磁気共鳴画像法システム
MU モニタユニット
NTCP 正常組織障害確率
OAR リスク臓器
PBS ペンシルビームスキャン
PET 陽電子放出断層撮影
PTV 計画腫瘍/標的体積
QA 品質保証
QC 品質管理
US 超音波検査法
RBE 相対生物学的効果
ROI 関心領域
RVS 記録及び検証システム
SPECT 単一光子陽電子放出断層撮影
TCP 腫瘍制御確率
【外国語明細書】