(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140374
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】記憶装置
(51)【国際特許分類】
H10B 61/00 20230101AFI20230928BHJP
H10N 50/10 20230101ALI20230928BHJP
H10B 63/00 20230101ALI20230928BHJP
H10N 70/00 20230101ALI20230928BHJP
H10N 99/00 20230101ALI20230928BHJP
【FI】
H01L27/105 447
H01L43/08 Z
H01L27/105 448
H01L45/00 Z
H01L49/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046174
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】318010018
【氏名又は名称】キオクシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福田 健二
(72)【発明者】
【氏名】野本 梨菜
(72)【発明者】
【氏名】金谷 宏行
(72)【発明者】
【氏名】中山 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】杉山 英行
【テーマコード(参考)】
4M119
5F083
5F092
【Fターム(参考)】
4M119AA01
4M119BB01
4M119CC05
4M119DD02
4M119DD24
4M119DD37
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4M119GG01
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5F083FZ10
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5F092BB43
5F092BC03
5F092BC04
5F092CA02
5F092CA03
5F092CA08
5F092CA20
(57)【要約】
【課題】メモリセルの特性を維持し且つリーク電流の低減が可能な記憶装置を提供する。
【解決手段】記憶装置は、可変抵抗素子及びスイッチング素子を含むメモリセルを備える。スイッチング素子は、第1導電層と、第2導電層と、第1導電層と第2導電層との間に設けられたスイッチング層と、を含む。スイッチング層は、一つ又は複数のスイッチング部材及び第1絶縁層を含む。スイッチング素子は、スナップバック型の電流-電圧特性を有する。スイッチング層と第1導電層との接続面に沿う一つ又は複数のスイッチング部材の断面積の合計およびスイッチング層と第2導電層との接続面に沿う一つ又は複数のスイッチング部材の断面積の合計は、第1導電層または第2導電層と可変抵抗素子との接続面に沿う断面積よりも小さい。第1絶縁層の熱伝導率は、1.4W/m/Kよりも大きい。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変抵抗素子及びスイッチング素子を含むメモリセルを備える記憶装置であって、
前記スイッチング素子は、第1導電層と、第2導電層と、前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられたスイッチング層と、を含み、
前記スイッチング層は、一つ又は複数のスイッチング部材及び第1絶縁層を含み、
前記スイッチング素子は、スナップバック型の電流-電圧特性を有し、
前記スイッチング層と前記第1導電層との接続面に沿う前記一つ又は複数のスイッチング部材の断面積の合計および前記スイッチング層と前記第2導電層との接続面に沿う前記一つ又は複数のスイッチング部材の断面積の合計は、前記第1導電層または前記第2導電層と前記可変抵抗素子との接続面に沿う断面積よりも小さく、
前記第1絶縁層の熱伝導率は、1.4W/m/Kよりも大きい
記憶装置。
【請求項2】
可変抵抗素子及びスイッチング素子を含むメモリセルを備える記憶装置であって、
前記スイッチング素子は、第1導電層と、第2導電層と、前記第1導電層と前記第2導電層との間に設けられたスイッチング層と、を含み、
前記スイッチング層は、一つ又は複数のスイッチング部材及び第1絶縁層を含み、
前記スイッチング素子は、スナップバック型の電流-電圧特性を有し、
前記スイッチング層と前記第1導電層との接続面に沿う前記一つ又は複数のスイッチング部材の断面積の合計および前記スイッチング層と前記第2導電層との接続面に沿う前記一つ又は複数のスイッチング部材の断面積の合計は、前記第1導電層または前記第2導電層と前記可変抵抗素子との接続面に沿う断面積よりも小さく、
前記第1絶縁層は、酸化ベリリウム(BeO)、窒化アルミニウム(AlN)、酸化マグネシウム(MgO)、窒化シリコン(Si3N4)、又は、ダイヤモンドライクカーボンを含む
記憶装置。
【請求項3】
前記スイッチング素子は、フィラメント型のスイッチング素子である
請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項4】
前記スイッチング部材は、金属酸化物を含む
請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項5】
前記スイッチング部材は、MO2-X(Mは、セリウム(Ce)若しくは亜鉛(Zr))、又は、AXM2O4(Aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)又はランタン(La)であり、Mは、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)又はマンガン(Mn))を含む
請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項6】
前記スイッチング層は、一つのスイッチング部材を含み、
前記第1絶縁層は、前記スイッチング部材の外周面に接する
請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項7】
前記スイッチング層は、複数のスイッチング部材を含み、
前記第1絶縁層は、前記複数のスイッチング部材の外周面に接する
請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項8】
前記スイッチング層は、第2絶縁層を含み、
前記スイッチング部材は、前記第1絶縁層の外周面に接し、
前記第2絶縁層は、前記スイッチング部材の外周面に接する
請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項9】
前記スイッチング素子及び前記可変抵抗素子は直列に接続されており、
第1方向に延伸し、前記メモリセルの一端に接続された第1配線と、
前記第1方向と交差する第2方向に延伸し、前記メモリセルの他端に接続された第2配線と、
をさらに備える
請求項1又は2記載の記憶装置。
【請求項10】
前記可変抵抗素子は磁気抵抗効果素子であり、
可変の磁化方向を有する第1磁性層と、
固定された磁化方向を有する第2磁性層と
前記第1磁性層と前記第2磁性層との間に設けられた非磁性層と、
を備える
請求項1又は2記載の記憶装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体基板上に磁気抵抗効果素子等の可変抵抗素子及びセレクタ素子(スイッチング素子)を含むメモリセルが集積化された記憶装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
メモリセルの特性を維持し且つリーク電流の低減が可能な記憶装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一の実施形態に係る記憶装置は、可変抵抗素子及びスイッチング素子を含むメモリセルを備える。スイッチング素子は、第1導電層と、第2導電層と、第1導電層と第2導電層との間に設けられたスイッチング層と、を含む。スイッチング層は、一つ又は複数のスイッチング部材及び第1絶縁層を含む。スイッチング素子は、スナップバック型の電流-電圧特性を有する。スイッチング層と第1導電層との接続面に沿う一つ又は複数のスイッチング部材の断面積の合計およびスイッチング層と第2導電層との接続面に沿う一つ又は複数のスイッチング部材の断面積の合計は、第1導電層または第2導電層と可変抵抗素子との接続面に沿う断面積よりも小さい。第1絶縁層の熱伝導率は、1.4W/m/Kよりも大きい。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る記憶装置の一部の構成を示す模式的な回路図である。
【
図2】同記憶装置の一部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図3】メモリセルMCの構成を示す模式的な斜視図である。
【
図4】セレクタ素子SELに電流掃引した場合の電流-電圧特性を示す模式的なグラフである。
【
図5】セレクタ素子SELに電流掃引した場合の電流-電圧特性を示す模式的なグラフである。
【
図6】第1実施形態に係る記憶装置の読み出し動作の一例について説明するための模式的な回路図である。
【
図7】セレクタ層106の製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図8】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図9】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図10】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図11】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図12】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図13】第2実施形態に係る記憶装置の一部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図14】セレクタ層206の製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図15】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図16】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図17】第3実施形態に係る記憶装置の一部の構成を示す模式的な斜視図である。
【
図18】セレクタ層306の製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図19】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図20】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図21】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【
図22】同製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
次に、実施形態に係る記憶装置を、図面を参照して詳細に説明する。尚、以下の実施形態はあくまでも一例であり、本発明を限定する意図で示されるものではない。
【0008】
また、本明細書においては、基板の表面に対して平行な所定の方向をX方向、基板の表面に対して平行で、X方向と垂直な方向をY方向、基板の表面に対して垂直な方向をZ方向と呼ぶ。
【0009】
また、本明細書においては、所定の面に沿った方向を第1方向、この所定の面に沿って第1方向と交差する方向を第2方向、この所定の面と交差する方向を第3方向と呼ぶことがある。これら第1方向、第2方向及び第3方向は、X方向、Y方向及びZ方向のいずれかと対応しても良いし、対応しなくても良い。
【0010】
また、本明細書において、「上」や「下」等の表現は、基板を基準とする。例えば、上記第1方向が基板の表面と交差する場合、この第1方向に沿って基板から離れる向きを上と、第1方向に沿って基板に近付く向きを下と呼ぶ。また、ある構成について下面や下端と言う場合には、この構成の基板側の面や端部を意味する事とし、上面や上端と言う場合には、この構成の基板と反対側の面や端部を意味する事とする。また、第2方向又は第3方向と交差する面を側面等と呼ぶ。
【0011】
以下、図面を参照して、実施形態に係る記憶装置について説明する。尚、以下の図面は模式的なものであり、説明の都合上、一部の構成を省略することがある。また、複数の実施形態について共通の部分には共通の符号を付し、説明を省略することがある。
【0012】
[第1実施形態]
[構成]
図1は、第1実施形態に係る記憶装置の一部の構成を示す模式的な回路図である。
図2は、同記憶装置の一部の構成を示す模式的な斜視図である。
【0013】
本実施形態に係る記憶装置は、メモリセルアレイMCAと、メモリセルアレイMCAを制御する周辺回路PCと、を備える。
【0014】
メモリセルアレイMCAは、例えば、
図2に示す通り、基板100の上方に設けられる。メモリセルアレイMCAは、複数のビット線(配線)BLと、複数のワード線(配線)WLと、複数のメモリセルMCと、を備える。複数のビット線BL及び複数のワード線WLは、Z方向に離間する。複数のビット線BLは、X方向に並びY方向に延伸する。複数のワード線WLは、Y方向に並びX方向に延伸する。複数のメモリセルMCは、複数のビット線BL及び複数のワード線WLに対応して、X方向及びY方向に並ぶ。
図1の例において、メモリセルMCの一端はビット線BLに接続される。また、メモリセルMCの他端はワード線WLに接続される。メモリセルMCは、可変抵抗素子VR及びセレクタ素子(スイッチング素子)SELを備える。可変抵抗素子VR及びセレクタ素子SELは、ビット線BL及びワード線WLの間に直列に接続される。例えば、可変抵抗素子VRの一端が、ワード線WLに接続される。可変抵抗素子VRの他端が、セレクタ素子SELの一端に接続される。セレクタ素子SELの他端が、ビット線BLに接続される。なお、ビット線BL及びワード線WLの間における可変抵抗素子VRとセレクタ素子SELとの接続関係は、逆であってもよい。
【0015】
尚、
図1及び
図2を参照して説明した構成は、あくまでも例示である。例えば、メモリセルMCの一端はワード線WLに接続されていても良い。また、メモリセルMCの他端はビット線BLに接続されていても良い。また、ビット線BL及びワード線WLの間における可変抵抗素子VRとセレクタ素子SELとの接続関係は、逆であってもよい。また、ビット線BLは、ワード線WLより下方に設けられていても良いし、ワード線WLより上方に設けられていても良い。
【0016】
周辺回路PCは、例えば、
図2に示す基板100の上面に設けられる。周辺回路PCは、基板100の上面に形成された複数の図示しない電界効果トランジスタと、これらに接続された複数の図示しない配線と、を備える。
図1の例において、周辺回路PCは、ビット線コンタクトBLCを介してビット線BLに接続される。また、周辺回路PCは、ワード線コンタクトWLCを介してワード線WLに接続される。
【0017】
周辺回路PCは、例えば、メモリセルMCから読み出されたユーザデータ及びメモリセルMCに書き込むユーザデータを保持するデータレジスタと、読み出し動作又は書き込み動作の対象であるメモリセルMCのアドレスデータを保持するアドレスレジスタと、コマンドデータを保持するコマンドレジスタと、を備える。また、周辺回路PCは、例えば、供給された電源電圧等を降圧して電圧供給線に出力する降圧回路と、アドレスデータに対応するビット線BL及びワード線WLを対応する電圧供給線と導通させる電圧転送回路と、ビット線BLの電圧又は電流に応じて0又は1のデータを出力し、データレジスタに出力するセンスアンプ回路と、を備える。また、周辺回路PCは、例えば、これらを制御するシーケンサ等を備える。
【0018】
図3は、本実施形態に係るメモリセルMCの構成を示す模式的な斜視図である。
【0019】
図3に例示するメモリセルMCは、
図1及び
図2を参照して説明したワード線WL及びビット線BLの間に設けられた電極101と、電極101及びビット線BLの間に設けられた可変抵抗素子VRと、可変抵抗素子VR及びビット線BLの間に設けられたセレクタ素子SELと、を備える。
【0020】
可変抵抗素子VRは、例えば、TMR(tunneling magnetoresistance)効果を利用したMTJ(magnetic tunnel junction)素子である。以下の記述及び図面は、可変抵抗素子VRがMTJ素子である例に基づく。MTJ素子は、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)に用いられる素子である。MTJ素子は、磁気抵抗効果素子(Magnetoresistance effect element)とも呼ばれる。
図3に示すように、可変抵抗素子VRは、例えば、磁性層102、トンネル絶縁層(非磁性層)103、及び磁性層104を含む。例えば、磁性層102及び磁性層104の一方は、他方と比較して、保磁力が高い。また、一方は参照層として機能し、他方は記憶層として機能する。磁性層102及び磁性層104の磁化方向が平行である状態(P(parallel)状態)では、磁性層102及び磁性層104の間の抵抗値は、比較的小さくなる。以下、この状態を、低抵抗状態と呼ぶ。一方、磁性層102及び磁性層104の磁化方向が反平行である状態(AP(Antiparallel)状態)では、磁性層102及び磁性層104の間の抵抗値は、TMR効果により、比較的大きくなる。以下、この状態を、高抵抗状態と呼ぶ。本実施形態に係る記憶装置においては、低抵抗状態及び高抵抗状態の一方に“0”を割り当て、他方に“1”を割り当てることにより、1つのメモリセルMCに1ビットのデータを記憶させることが可能である。
【0021】
磁性層102及び磁性層104のうち、記憶層として機能するものは、可変の磁化方向を有する強磁性層を含む。可変の磁化方向とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わることを意味する。
【0022】
磁性層102及び磁性層104のうち、参照層として機能するものは、固定された磁化方向を有する強磁性層を含む。固定された磁化方向とは、所定の書き込み電流に対して磁化方向が変わらないことを意味する。
【0023】
磁性層102及び磁性層104は、例えば、コバルト(Co)、鉄(Fe)、及びニッケル(Ni)のうちの少なくとも1つの元素を含む強磁性層である。また、磁性層102及び磁性層104は、ボロン(B)を更に含んでいてもよい。より具体的には、例えば、磁性層102及び磁性層104は、コバルト鉄ボロン(CoFeB)又はホウ化鉄(FeB)を含む。
【0024】
トンネル絶縁層103は、マグネシウム(Mg)及び酸素(O)を含んでいても良い。
【0025】
図3に示すように、セレクタ素子SELは、例えば、電極105、セレクタ層(スイッチング層)106、及び電極107を含む。電極105は、可変抵抗素子VRとセレクタ層106とを電気的に接続する。電極105は、導電層であり、導電材料で形成されている。具体的には、電極105は、金属材料で形成されている。
【0026】
セレクタ層106は、セレクタ部材(スイッチング部材)111と、絶縁層112と、を備える。
【0027】
図示の例において、セレクタ部材111は、円柱状に形成されている。セレクタ素子SELがオン状態である場合、セレクタ部材111には、フィラメント113が形成される。フィラメント113は、電極105,107を導通させる。フィラメント113は、例えば、酸素欠陥等を含む。セレクタ素子SELがオフ状態である場合、フィラメント113の少なくとも一部が消失する。以下、この様なセレクタ素子SELを、フィラメント型のセレクタ素子と呼ぶ場合がある。
【0028】
セレクタ部材111は、例えば、金属酸化物等を含んでいても良い。例えば、セレクタ部材111は、MO2-X(Mは、セリウム(Ce)又は亜鉛(Zr)等)を含んでいても良いし、AXM2O4(Aは、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)又はランタン(La)等。Mは、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)又はマンガン(Mn)等。)を含んでいても良い。また、セレクタ部材は、これ以外の金属酸化物を含んでいても良いし、金属酸化物以外の材料を含んでいても良い。
【0029】
尚、例えば、セレクタ部材111と電極105との接触面積又は対向面積を、面積S111Uとする。また、セレクタ部材111と電極107との接触面積又は対向面積を、面積S111Lとする。また、磁性層102と電極101との接触面積又は対向面積を、面積S102Uとする。また、磁性層104と電極105との接触面積又は対向面積を、面積S104Lとする。この場合、面積S111U,S111Lは、面積S102U,S104Lよりも小さい。
【0030】
また、例えば、セレクタ層106と電極105との接触面積又は対向面積を、面積S106Uとする。また、セレクタ層106と電極107との接触面積又は対向面積を、面積S106Lとする。この場合、面積S106U,S106Lは、面積S102U,S104Lと等しくても良い。少なくとも、面積S111U,S111Lは、面積S106U,S106Lよりも小さい。
【0031】
絶縁層112は、セレクタ部材111の外周面に接する。絶縁層112は、例えば、熱伝導率が酸化シリコン(SiO2)よりも大きく、且つ、電気抵抗率が酸化シリコン(SiO2)と同程度の材料を含む。尚、酸化シリコン(SiO2)の熱伝導率は、約1.4W/m/Kである。また、酸化シリコン(SiO2)の電気抵抗率は、約1×1016Ω・cmである。
【0032】
絶縁層112の材料としては、例えば、酸化ベリリウム(BeO)(熱伝導率は約250W/m/K,電気抵抗率は約1×1016Ω・cm,結晶構造はウルツ鉱型)、窒化アルミニウム(AlN)(熱伝導率は約285W/m/K,電気抵抗率は約1×1014Ω・cm,結晶構造はウルツ鉱型)、酸化マグネシウム(MgO)(熱伝導率は約59W/m/K,電気抵抗率は約1×1014Ω・cm,結晶構造は岩塩型)、窒化シリコン(Si3N4)(熱伝導率は約25-54W/m/K,電気抵抗率は約1×1014Ω・cm,結晶構造は六方晶)、又は、ダイヤモンドライクカーボン(熱伝導率は約200W/m/K,電気抵抗率は約1×102~1×1012Ω・cm,非晶質)等が挙げられる。
【0033】
電極107は、導電層であり、導電材料で形成されている。具体的には、電極107は、金属材料で形成されている。
【0034】
電極101の上面は、ワード線WLの下面と接していても良い。磁性層102の上面は、電極101の下面と接していても良い。トンネル絶縁層103の上面は、磁性層102の下面と接していても良い。磁性層104の上面は、トンネル絶縁層103の下面と接していても良い。電極105の上面は、磁性層104の下面と接していても良い。セレクタ層106の上面は、電極105の下面と接していても良い。電極107の上面は、セレクタ層106の下面と接していても良い。電極107の下面は、ビット線BLの上面と接していても良い。
【0035】
[セレクタ素子SELの電気的特性]
図4及び
図5は、セレクタ素子SELに電流掃引した場合の電流-電圧特性を示す模式的なグラフである。
図4及び
図5において、縦軸はセレクタ素子SELに流れる電流Iを示している。尚、
図4においては、セレクタ素子SELに供給される電流Iを、対数として示している。また、横軸は、セレクタ素子SELの電極間の電圧Vを示している。
【0036】
本実施形態に係るセレクタ素子SELは、スナップバック型の電流-電圧特性を有する。以下、スナップバック型の電流-電圧特性について説明する。
【0037】
図4及び
図5の例では、電流Iが、0以上、電流I
TH未満である範囲を、オフ状態として記載している。また、電流Iが、電流I
TH以上、電流I
HOLD未満である範囲を、負性微分抵抗状態として記載している。また、電流Iが、電流I
HOLD以上である範囲を、オン状態として記載している。
【0038】
セレクタ素子SELの電極間の電圧Vを0Vからしきい値電圧VTHまで増大させた場合、電圧Vがしきい値電圧VTHに到達するまで、セレクタ素子SELはオフ状態である。電圧Vがしきい値電圧VTHに到達した場合、セレクタ素子SELは、オフ状態からオン状態に切り替わる。
【0039】
図4及び
図5には、セレクタ素子SELがオフ状態であり、且つ、電圧Vがしきい値電圧V
THである場合の電流Iを、電流I
THとして示している。また、しきい値電圧V
THの半分の電圧を、電圧V
HALFとして示している。また、セレクタ素子SELがオフ状態であり、且つ、電圧Vが電圧V
HALFである場合の電流Iを、電流I
HALFとして示している。
【0040】
セレクタ素子SELがオン状態である場合に、電圧Vをしきい値電圧VTHからホールド電圧VHOLDまで減少させた場合、電圧Vがホールド電圧VHOLDに到達するまで、セレクタ素子SELはオン状態である。電圧Vがホールド電圧VHOLDに到達した場合、セレクタ素子SELは、オン状態からオフ状態に切り替わる。
【0041】
図4及び
図5には、セレクタ素子SELがオン状態であり、且つ、電圧Vがしきい値電圧V
THである場合の電流Iを、電流I
ONとして示している。また、セレクタ素子SELがオン状態であり、且つ、電圧Vがホールド電圧V
HOLDである場合の電流Iを、電流I
HOLDとして示している。図示の例において、ホールド電圧V
HOLDは、電圧V
HALFよりも小さい。
【0042】
[読み出し動作]
図6は、本実施形態に係る記憶装置の読み出し動作の一例について説明するための模式的な回路図である。
図6の例では、読み出し動作の対象であるワード線WLを、選択ワード線WLsとして示している。また、読み出し動作の対象であるビット線BLを、選択ビット線BLsとして示している。また、読み出し動作の対象であるメモリセルMCを、選択メモリセルMCsとして示している。
【0043】
読み出し動作に際しては、例えば
図6に示す様に、選択ワード線WLsにしきい値電圧V
TH及び電圧αの合計を供給する。電圧αは、MTJ等における電圧降下分に相当する。また、選択ビット線BLsに0Vを供給する。また、その他のワード線WL及びビット線BLに、電圧V
HALF及び電圧α/2の合計を供給する。
【0044】
これにより、選択メモリセルMCsには、しきい値電圧VTH及び電圧αの合計が供給される。また、選択メモリセルMCsのセレクタ素子SELにはしきい値電圧VTH程度の電圧が供給され、このセレクタ素子SELはオン状態となる。
【0045】
その他のメモリセルMCのうち、選択ワード線WLs又は選択ビット線BLsに接続されたものには、電圧VHALF及び電圧α/2の合計が供給される。これらのメモリセルMCを、半選択メモリセルMCと呼ぶ。また、これらのメモリセルMCのセレクタ素子SELには電圧VHALF程度の電圧が供給され、このセレクタ素子SELはオフ状態に維持される。
【0046】
その他のメモリセルMCには、0Vが供給される。これらのメモリセルMCを、非選択メモリセルMCと呼ぶ。これらのメモリセルMCのセレクタ素子SELはオフ状態に維持される。
【0047】
また、
図6に例示する読み出し動作においては、例えば、選択ビット線BLsに流れる電流が所定のしきい値よりも大きい場合には、選択メモリセルMCsの状態を、低抵抗状態と判定する。また、選択ビット線BLsに流れる電流が所定のしきい値よりも小さい場合には、選択メモリセルMCsの状態を、高抵抗状態と判定する。
【0048】
[セレクタ素子SELの好ましい特性]
記憶装置の低消費電力化のためには、
図4及び
図5を参照して説明した、しきい値電圧V
THが小さいことが望ましい。また、しきい値電圧V
THが小さい場合、周辺回路PCに使用するトランジスタのサイズを小さくすることが可能である。従って、周辺回路PCの小面積化の観点からも、しきい値電圧V
THが小さいことが望ましい。
【0049】
また、
図6を参照して説明した様な読み出し動作を実行する場合、可変抵抗素子VRの状態を、選択ビット線BLsに流れる電流によって判定する。ここで、
図6を参照して説明した様な読み出し動作を実行する場合、選択ビット線BLsに接続された半選択メモリセルMCには、電圧V
HALF及び電圧α/2の合計が供給される。これにより、これらの半選択メモリセルMCには、
図4及び
図5を参照して説明した電流I
HALF程度の電流(リーク電流)が流れる場合がある。例えば、選択ビット線BLsに接続されたメモリセルMCの数が一定以上の数である場合、選択ビット線BLsにおけるノイズ電流が大きくなりすぎてしまい、選択メモリセルMCsに流れる電流と、半選択メモリセルMCに流れるリーク電流とを判別できなくなってしまうおそれがある。従って、
図4及び
図5を参照して説明した電流I
ONは大きい方が好ましく、電流I
HALFは小さい方が好ましい。
【0050】
しかしながら、一般的に、しきい値電圧VTHと電流IHALFとの関係は、トレードオフになっている。即ち、しきい値電圧VTHが小さいほど、電流IHALFは大きい。また、電流IHALFが小さいほど、しきい値電圧VTHは大きい。
【0051】
[電流I
HALFの削減]
図3を参照して説明した通り、本実施形態に係るセレクタ部材111は、フィラメント型のセレクタ素子である。セレクタ素子SELがオン状態である場合、電極105と電極107とは、フィラメント113を介して導通する。一方、セレクタ素子SELがオフ状態である場合、フィラメント113の少なくとも一部が消失している。
【0052】
この様な構成においては、セレクタ素子SELがオン状態である場合にセレクタ素子SELに流れる電流(以下、「ON電流」と呼ぶ。)は、主としてフィラメント113に流れる。従って、セレクタ素子SELのON電流は、セレクタ部材111のXY断面における断面積に依存しない。一方、セレクタ素子SELがオフ状態である場合にセレクタ素子SELに流れる電流(以下、「OFF電流」と呼ぶ。)は、セレクタ部材111全体に流れる。従って、セレクタ素子SELのOFF電流は、セレクタ部材111のXY断面における断面積に依存する。
【0053】
従って、
図3に例示した様に、セレクタ部材111のXY断面における断面積を削減することにより、ON電流を抑制することなく、OFF電流を抑制可能である。また、この様な方法により、しきい値電圧V
THを増大させることなく、電流I
HALFを抑制可能である。
【0054】
[セレクタ部材111のジュール熱]
図3に例示した構造では、セレクタ部材111の外周面が、絶縁層112によって覆われている。ここで、例えば、絶縁層112が酸化シリコン(SiO
2)等の、熱伝導率の低い材料から形成されていた場合、セレクタ部材111において発生したジュール熱を逃がしづらく、セレクタ部材111の温度が上昇しやすくなる場合がある。
【0055】
ここで、セレクタ部材111の温度が上昇しやすくなった場合、
図4及び
図5を参照して説明したホールド電圧V
HOLDが小さくなる場合がある。しきい値電圧V
THとホールド電圧V
HOLDとの差が大きくなった場合、セレクタ素子SELがオフ状態からオン状態に切り替わった際にメモリセルMCに流れる過渡的な電流(以下、「スパイク電流」と呼ぶ。)が、大きくなってしまう場合がある。メモリセルMCに大きいスパイク電流が流れると、MTJ素子(可変抵抗素子VR)の状態が変化してデータが書き変わってしまったり、メモリセルMC中の膜質の劣化を引き起こす場合がある。
【0056】
また、セレクタ部材111の温度が上昇しやすくなった場合、熱の影響によって、MTJ素子(可変抵抗素子VR)中の膜質の劣化を招く場合もある。この様な場合、MTJ素子(可変抵抗素子VR)中のデータ保持特性が悪化したり、トンネル絶縁層103の絶縁破壊等に繋がってしまったりする場合がある。
【0057】
そこで、本実施形態に係る絶縁層112は、上述の通り、比較的熱伝導率の高い材料を含んでいる。この様な構成によれば、セレクタ部材111の温度の上昇に伴う種々の現象の発生を抑制して、長寿命な記憶装置を提供することが可能となる。
【0058】
以上で説明された本実施形態に係る記憶装置によれば、メモリセルの特性を維持し且つリーク電流の低減が可能となる。
【0059】
[セレクタ層106の製造工程]
図7~
図12は、セレクタ層106の製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【0060】
セレクタ層106の製造に際しては、
図7に示す様に、電極107の上面に、絶縁層112を形成する。この工程は、例えば、スパッタ等のPVD(Physical Vapor Deposition)又はCVD(Chemical Vapor Deposition)等の方法によって行う。
【0061】
次に、
図8に示す様に、絶縁層112の上面に、マスク121を形成する。また、フォトリソグラフィー及びエッチング等の手段により、マスク121に、開口122を形成する。開口122は、Z方向から見て、セレクタ部材111と対応する位置に設けられる。開口122は、絶縁層112の上面を露出させる。
【0062】
次に、
図9に示す様に、絶縁層112の一部を除去して、開口111Aを形成する。開口111Aは、セレクタ部材111と対応する位置に設けられる。開口111Aは、電極107の上面を露出させる。この工程は、例えば、RIE(Reactive Ion Etching)等の異方性エッチングによって行われる。
【0063】
次に、
図10に示す様に、開口111Aの内部及びマスク121の上面に、セレクタ部材111Bを形成する。この工程は、例えば、スパッタ等のPVD又はCVD等の方法によって行う。
【0064】
次に、
図11に示す様に、マスク121を除去する。この工程では、マスク121の上面に形成されたセレクタ部材111Bも除去される。この工程において開口111Aの内部に残存したセレクタ部材111Bは、セレクタ部材111となる。
【0065】
次に、
図12に示す様に、絶縁層112の一部を除去して、絶縁層112の上面と、セレクタ部材111の上面と、の高さ位置を揃える。この工程は、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)等の平坦化処理、又はRIE等によるエッチング処理によって行われる。
【0066】
尚、この工程の後、
図3を参照して説明した電極105、磁性層104、トンネル絶縁層103、磁性層102及び電極101が形成される。この工程は、例えば、スパッタ等のPVD又はCVD等の方法によって行う。
【0067】
[第2実施形態]
図13は、第2実施形態に係る記憶装置の一部の構成を示す模式的な斜視図である。
【0068】
第2実施形態に係る記憶装置は、基本的には、第1実施形態に係る記憶装置と同様に構成されている。ただし、第2実施形態に係る記憶装置は、メモリセルMCのかわりに、メモリセルMC2を備えている。メモリセルMC2は、基本的には、メモリセルMCと同様に構成されている。ただし、メモリセルMC2は、セレクタ層106のかわりに、セレクタ層206を備える。
【0069】
メモリセルMC2において、セレクタ層206の上面は、電極105の下面と接していても良い。また、電極107の上面は、セレクタ層206の下面と接していても良い。
【0070】
セレクタ層206は、複数のセレクタ部材211と、絶縁層212と、を備える。
【0071】
第2実施形態に係るセレクタ素子SELも、フィラメント型のセレクタ素子である。例えば、セレクタ素子SELがオン状態である場合、複数のセレクタ部材211のうちの少なくとも一つに、
図3を参照して説明した様なフィラメント113が形成される。
【0072】
尚、例えば、これら複数のセレクタ部材211と電極105との接触面積又は対向面積の合計を、面積S211Uとする。また、これら複数のセレクタ部材211と電極107との接触面積又は対向面積の合計を、面積S211Lとする。この場合、面積S211U,S211Lは、面積S102U,S104Lよりも小さい。
【0073】
また、例えば、セレクタ層206と電極105との接触面積又は対向面積を、面積S206Uとする。また、セレクタ層206と電極107との接触面積又は対向面積を、面積S206Lとする。この場合、面積S206U,S206Lは、面積S102U,S104Lと等しくても良い。少なくとも、面積S211U,S211Lは、面積S206U,S206Lよりも小さい。
【0074】
絶縁層212は、1つのセレクタ層206に含まれる複数のセレクタ部材211の外周面に接する。絶縁層212は、例えば、熱伝導率が酸化シリコン(SiO2)よりも大きく、且つ、電気抵抗率が酸化シリコン(SiO2)と同程度の材料を含む。
【0075】
絶縁層212は、絶縁層112に使用可能な材料として例示した材料のいずれかを含んでいても良い。
【0076】
第2実施形態の構成によっても、第1実施形態の構成と同様に、メモリセルの特性を維持し且つリーク電流の低減が可能な記憶装置を提供することが可能となる。
【0077】
[セレクタ層206の製造工程]
図14~
図16は、セレクタ層206の製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【0078】
セレクタ層206の製造に際しては、
図14に示す様に、電極107の上面に、複数のセレクタ部材211を形成する。この工程は、例えば、スパッタ等のPVD等の方法によって行う。また、この工程は、例えば、電極107とセレクタ部材211との間の濡れ性が悪く、セレクタ部材211の表面張力が大きくなる様な条件で実行しても良い。
【0079】
次に、
図15に示す様に、電極107の上面及びセレクタ部材211の上面に、絶縁層212Aを形成する。この工程は、例えば、スパッタ等のPVD等の方法によって行う。
【0080】
次に、
図16に示す様に、絶縁層212Aの一部を除去して、絶縁層212Aの上面と、セレクタ部材211の上面と、の高さ位置を揃える。この工程は、例えば、CMP等の平坦化処理、又はRIE等によるエッチング処理によって行われる。この工程においてセレクタ部材211と同じ高さ位置に残存した絶縁層212Aは、絶縁層212となる。
【0081】
[第3実施形態]
図17は、第3実施形態に係る記憶装置の一部の構成を示す模式的な斜視図である。
【0082】
第3実施形態に係る記憶装置は、基本的には、第1実施形態に係る記憶装置と同様に構成されている。ただし、第3実施形態に係る記憶装置は、メモリセルMCのかわりに、メモリセルMC3を備えている。メモリセルMC3は、基本的には、メモリセルMCと同様に構成されている。ただし、メモリセルMC3は、セレクタ層106のかわりに、セレクタ層306を備える。
【0083】
メモリセルMC3において、セレクタ層306の上面は、電極105の下面と接していても良い。また、電極107の上面は、セレクタ層306の下面と接していても良い。
【0084】
セレクタ層306は、絶縁層311と、セレクタ部材312と、絶縁層313と、を備える。
【0085】
図示の例において、絶縁層311は、円柱状に形成されている。絶縁層311は、例えば、熱伝導率が酸化シリコン(SiO2)よりも大きく、且つ、電気抵抗率が酸化シリコン(SiO2)と同程度の材料を含む。
【0086】
絶縁層311は、絶縁層112に使用可能な材料として例示した材料のいずれかを含んでいても良い。
【0087】
図示の例において、セレクタ部材312は、絶縁層311の外周面に接する円筒状の形状を有する。第3実施形態に係るセレクタ素子SELも、フィラメント型のセレクタ素子である。例えば、セレクタ素子SELがオン状態である場合、セレクタ部材312には、
図3を参照して説明した様なフィラメント113が形成される。
【0088】
尚、例えば、セレクタ部材312と電極105との接触面積又は対向面積を、面積S312Uとする。また、セレクタ部材312と電極107との接触面積又は対向面積を、面積S312Lとする。この場合、面積S312U,S312Lは、面積S102U,S104Lよりも小さい。
【0089】
また、例えば、セレクタ層306と電極105との接触面積又は対向面積を、面積S306Uとする。また、セレクタ層306と電極107との接触面積又は対向面積を、面積S306Lとする。この場合、面積S306U,S306Lは、面積S102U,S104Lと等しくても良い。少なくとも、面積S312U,S312Lは、面積S306U,S306Lよりも小さい。
【0090】
絶縁層313は、セレクタ部材312の外周面に接する。絶縁層313は、例えば、熱伝導率が酸化シリコン(SiO2)よりも大きく、且つ、電気抵抗率が酸化シリコン(SiO2)と同程度の材料を含む。
【0091】
絶縁層313は、絶縁層112に使用可能な材料として例示した材料のいずれかを含んでいても良い。
【0092】
第3実施形態の構成によっても、第1実施形態の構成と同様に、メモリセルの特性を維持し且つリーク電流の低減が可能な記憶装置を提供することが可能となる。
【0093】
[セレクタ層306の製造工程]
図18~
図21は、セレクタ層306の製造工程について説明するための模式的な断面図である。
【0094】
セレクタ層306の製造に際しては、
図18に示す様に、電極107の上面に、絶縁層311Aを形成する。この工程は、例えば、
図7を参照して説明した工程と同様に行われる。
【0095】
次に、絶縁層311Aの上面に、マスク321を形成する。また、フォトリソグラフィー及びエッチング等の手段により、マスク321の一部を除去する。マスク321は、Z方向から見て、絶縁層311(
図17)と対応する位置に残存する。
【0096】
次に、
図19に示す様に、絶縁層311Aの一部を除去して、絶縁層311を形成する。この工程は、例えば、RIE等の異方性エッチングによって行われる。
【0097】
次に、
図20に示す様に、絶縁層311及びマスク321の外周面、並びに、マスク321の上面に、セレクタ部材312Aを形成する。この工程は、例えば、CVD又はALD(Atomic Layer Deposition)等の方法によって行う。この工程において、電極107上面にセレクタ部材312Aが同時に形成されてしまう場合がある。その様な場合は、電極107上面のセレクタ部材312AをRIE等により除去しても良い。
【0098】
次に、
図21に示す様に、電極107の上面、及び、セレクタ部材312Aの上面に、絶縁層313Aを形成する。この工程は、例えば、CVD又はALD(Atomic Layer Deposition)等の方法によって行う。
【0099】
次に、
図22に示す様に、絶縁層313A及びセレクタ部材312Aの一部、並びに、マスク321を除去して、絶縁層311の上面と、セレクタ部材312Aの上面と、絶縁層313Aの上面と、の高さ位置を揃える。この工程は、例えば、CMP等の平坦化処理、又はRIE等によるエッチング処理によって行われる。この工程において残存したセレクタ部材312Aの一部は、セレクタ部材312となる。また、この工程において残存した絶縁層313Aの一部は、絶縁層313となる。
【0100】
[その他]
以上、第1実施形態~第3実施形態に係る記憶装置について説明した。しかしながら、以上において説明した構成はあくまでも例示に過ぎず、具体的な構成等については、適宜調整可能である。例えば、第1実施形態~第3実施形態において、セレクタ素子SELは、フィラメント型でなくても良い。
【0101】
[その他]
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことが出来る。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
100…基板、101…電極、102…磁性層、103…トンネル絶縁層(非磁性層)、104…磁性層、105…電極(導電層)、106…セレクタ層、107…電極(導電層)、111…セレクタ部材(スイッチング部材)、112…絶縁層、113…フィラメント、BL…ビット線(配線)、WL…ワード線(配線)、MC…メモリセル、VR…可変抵抗素子(磁気抵抗効果素子)、SEL…セレクタ素子(スイッチング素子)。