(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140383
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】災害対応便器
(51)【国際特許分類】
E03D 3/12 20060101AFI20230928BHJP
E03D 5/01 20060101ALI20230928BHJP
E03D 11/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
E03D3/12
E03D5/01
E03D11/02 A
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046186
(22)【出願日】2022-03-23
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-18
(71)【出願人】
【識別番号】519300301
【氏名又は名称】株式会社アルソナ技研
(74)【代理人】
【識別番号】100074251
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 寛
(74)【代理人】
【識別番号】100066223
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 政美
(72)【発明者】
【氏名】飯高 友之
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC08
2D039DA04
(57)【要約】
【課題】平時は通常の水量の洗浄流体で洗浄し、非常時にわずかな水量の洗浄流体で洗浄できるようにした災害対応便器を提供する。
【解決手段】トラップを介して洗浄流体と共に汚物を排出する便器10を設ける。汚物の落下する真下方向のボウル11底部に非常排出口12を設ける。平時は非常排出口12を閉塞し非常時は開放する栓部材20を設ける。非常時に洗浄流体を供給する非常用送水管13を設ける。非常時の洗浄流体の洗浄量を平時の洗浄流体の洗浄量よりも少ない量に設定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄流体を供給することによりトラップを介して汚物を排出する水洗式の便器において、汚物が落下するボウル底部に設けられている非常排出口と、この非常排出口を平時は閉塞し非常時は開放する栓部材と、非常時に洗浄流体を供給する非常用送水管とを備え、非常用送水管は、ボウルを洗浄する洗浄流体の洗浄量を平時の洗浄流体の洗浄量よりも少ない量に設定したことを特徴とする災害対応便器。
【請求項2】
前記非常用送水管は、水又は洗浄剤からなる洗浄流体を加圧して供給するように構成され、加圧された洗浄流体が前記ボウル内部を回転しながら洗浄する請求項1記載の災害対応便器。
【請求項3】
前記非常用送水管は、泡洗浄剤からなる洗浄流体を発泡して供給するように構成された請求項1記載の災害対応便器。
【請求項4】
前記非常排出口の鉛直下方にフラッパー弁を設置し、前記非常用送水管から前記ボウルに供給される洗浄流体と共に汚物を排出する請求項1記載の災害対応便器。
【請求項5】
前記非常用送水口は、平時に使用する給水タンクから洗浄流体を供給するように構成した請求項1又は2記載の災害対応便器。
【請求項6】
前記非常用送水口は、非常時に使用する非常用給水タンクから洗浄流体を供給するように構成した請求項1又は2記載の災害対応便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平時に通常の水量の洗浄流体で洗浄し、非常時にわずかな水量の洗浄流体で洗浄できるようにした災害対応便器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住居などの建造物において、地震などの災害時に上下水道などのライフラインが機能不全に陥ることが予想される。このような非常時の場合、水洗式便器は全く使用できなくなってしまうといった問題がある。
【0003】
そこで当出願人は、平時および非常時に兼用可能な便器を提案している。例えば、特許文献1に記載の便器は、水洗便器の汚物が落下する位置の真下方向に開口する非常排出口を形成し、非常時に非常排出口から汚物を外部へ排出する便器である。
【0004】
この非常排出口は、平時に栓部材で密封されており、非常時にこの栓部材を取り外すことで非常排出口を使用するように構成されている。すなわち、非常排出口の垂直方向下位の床板に、非常排出口と同等またはそれ以上の径の床開口部を設けてあり、平時の水洗式から非常時の自重落下式へと切り換えることができる。
【0005】
一方、非常時に少量の溜水と共に汚物を排出する大便器装置が特許文献2に記載されている。この装置は、平時は排水トラップ流路を通じて汚水を排出し、非常時はバイパス流路に溜水を溜めておき、この溜水と共に汚物を排出するように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4653232号公報
【特許文献2】特開2020-117954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、特許文献1に記載の便器は、非常時に自重落下式へと切り換わるので、便器本体内のボウル部分の汚れが次第に増加する。また、常に開口している非常排出口から臭気が逆流する不都合も生じる。
【0008】
一方、特許文献2の大便器装置では、非常時にバイパス流路を介して溜水と共に汚物を排出するように構成したものなので、この溜水で便器内部を洗浄することは困難である。
【0009】
すなわち、溜水はフラッパー弁の上に予め溜められるものであり、使用者の操作でフラッパー弁が開放することで溜水と共に便がバイパス流路を通じて下水配管へ排出される。そして、フラッパー弁が閉じられると、溜水の水面が再びバイパス流路の所定の高さに到達するまで、洗浄水タンクから洗浄水が供給される。
【0010】
このとき、フラッパー弁の上に溜水を溜めた状態で使用するため、非常時の溜水の水量や勢いは平時の洗浄水よりも少なくする必要がある。したがって、この溜水で便器内部を洗浄することは考慮されていない。
【0011】
しかも、この大便器装置は、バイパス通路を切り替える切替装置と共に、切替装置に連動する上流切替弁や下流切替弁など多くの構成を要するものである。そのため、一般の便器と比べて装置自体が極めて複雑な構成にならざるを得ない。この結果、製造コストの上昇のみならず、装置を設置する際の作業工程の増加など、多くの課題を有するものである。
【0012】
そこで本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、平時は通常の水量の洗浄流体で洗浄し、非常時にわずかな水量の洗浄流体でもボウルの洗浄が可能になり、しかも、簡単な構成で提供することができる災害対応便器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、洗浄流体を供給することによりトラップを介して汚物を排出する水洗式の便器10において、汚物が落下するボウル11底部に設けられている非常排出口12と、非常排出口12を平時は閉塞し非常時は開放する栓部材20と、非常時に洗浄流体を供給する非常用送水管13とを備え、前記非常用送水管13は、前記ボウル11を洗浄する洗浄流体の洗浄量を平時の洗浄流体の洗浄量よりも少ない量に設定したことにある。
【0014】
第2の手段の前記非常用送水管13は、水又は洗浄剤からなる洗浄流体を加圧して供給するように構成され、加圧された洗浄流体が前記ボウル11内部を回転しながら洗浄するものである。
【0015】
第3の手段の前記非常用送水管13は、泡洗浄剤からなる洗浄流体を発泡して供給するように構成し、発泡した泡洗浄剤が前記ボウル11内部を洗浄する。
【0016】
第4の手段は、前記非常排出口12の鉛直下方にフラッパー弁30を設置するように構成する。
【0017】
第5の手段の前記非常用送水口12は、平時に使用する給水タンク40から洗浄流体を供給するように構成している。
【0018】
第6の手段の前記非常用送水口12は、非常時に使用する非常用給水タンク50から洗浄流体を供給するように構成したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、平時は通常の水量の洗浄流体で洗浄し、非常時にわずかな水量の洗浄流体で洗浄できるようになった。この結果、非常時でも清潔な便器を使用することができる。
【0020】
しかも、従来の災害対応便器と比べて簡単な構成で提供することができ、製造コストの上昇を抑え、設置する際の作業工程も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例を示す要部側断面図である。
【
図3】本発明の他の実施例を示す要部側断面図である。
【
図4】本発明の他の実施例を示す要部側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明災害対応便器は、平時および非常時に兼用可能な便器である。すなわち、トラップを介して汚物を排出する水栓式の便器10において、汚物が落下する位置に非常排出口12を形成したものである。そして、災害時等の断水が生じた非常時に、この非常排出口12を施蓋している栓部材20を除去して非常排出口12から汚物を外部へ排出する(
図2参照)。
【0023】
更に、平時において洗浄流体を供給する水栓用送水管14の近傍に、非常時に使用する非常用送水管13を設けている(
図1参照)。そして、非常時は水栓用送水管14を閉じ、非常用送水管13を開放するように構成している。この非常用送水管13は、供給する洗浄流体の洗浄量を平時の洗浄流体の洗浄量よりも少ない量に設定している。例えば平時に供給する洗浄流体の洗浄量が数リットル単位とすると、非常用送水管13で供給する洗浄流体の洗浄量は300cc~500cc程度に設定する。
【0024】
このように、少ない量で供給される洗浄流体は、非常用送水管13から加圧された状態で、ボウル11内部を回転しながら洗浄するように供給する。洗浄流体の加圧手段は任意の手段が選択可能である。
【0025】
例えば、
図1に示す如く、平時に使用する給水タンク40が便器10より高い位置にある場合、この給水タンク40に非常用送水口12を接続することで、非常用給水タンク50として使用可能になる。この場合、非常排出口12の開口径を水栓用送水管14より細くすることで供給時の洗浄流体の圧力を高めることができる。しかも、供給する洗浄量が少なくなるので、給水タンク40に残っている洗浄流体を何度にも分けて使用することが可能になる。
【0026】
また、
図3に示すように、非常時に使用する非常用給水タンク50を別途設け、この非常用給水タンク50の中に水中ポンプ51を設置しても良い。そして、スイッチ52の操作により、水中ポンプ51で加圧した洗浄流体を非常排出口12から供給することが可能になる。図中符号53はコンセントである。
【0027】
更に、
図4に示す如く、給水タンク40と別途形成した非常用給水タンク50を非常排出口12の位置より高い位置に設置することで、非常用給水タンク50内の水圧により、より大量の洗浄流体を加圧した状態で供給することができる。
【0028】
非常排出口12から供給される加圧された洗浄流体は、ボウル11内に供給される勢いでボウル11内部を回転しながらボウル11底部に流れるので、僅かな量の洗浄流体でもボウル11の汚れを洗浄することが可能になる。
【0029】
洗浄流体は、一般に水道水が使用される。また非常時に使用する洗浄流体として、この他、雨水や使用済みの排水などを非常用給水タンク50に貯めて使用することも可能である。このように、平時に使用する給水タンク40以外に非常用給水タンク50を設置する場合は、設置状況に合わせて任意の量の非常用給水タンク50を設置することができる。
【0030】
更に、トイレを泡洗浄する際に使用される泡洗浄剤や発泡機を使用することも可能である(図示せず)。この場合、非常排出口12から供給される泡状の洗浄流体がボウル11内を洗浄する。
【0031】
一方、非常排出口12の鉛直下方にフラッパー弁30を設置し、非常用送水管13からボウル11に供給される洗浄流体と共に汚物を排出するように構成している(
図1参照)。このフラッパー弁30は、非常時にのみ使用されるもので、例えば一般の簡易トイレに使用されているフラッパー弁30を使用するなど、フラッパー弁30の選択は自由である。
【0032】
このフラッパー弁30は、栓部材20を取り外した非常排出口12の下に配置されているので非常時に開口した非常排出口12から臭気が逆流するのを防止する(
図1参照)。さらに排水配管内の衛生害虫がトイレ内に侵入するのを防ぐことができる。
【0033】
図示例では、フラッパー弁30の鉛直下方に排出管60を設け、下水管Pに直接排出するように構成している(
図1参照)。また、この排出管60を非常時用に使用される便槽等に接続することも可能である(図示せず)。
【0034】
尚、本発明の各部の構成は、図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲であれば他の形状に変更することも可能である。
【符号の説明】
【0035】
P 下水管
10 便器
11 ボウル
12 非常排出口
13 非常用送水管
14 水栓用送水管
20 栓部材
30 フラッパー弁
40 給水タンク
50 非常用給水タンク
51 水中ポンプ
52 スイッチ
53 コンセント
60 排出管
【手続補正書】
【提出日】2022-06-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平時に通常の流量の洗浄流体を供給することによりトラップを介して汚物を排出する水洗式の便器において、
ボウル底部の汚物が落下する位置に非常排出口を形成すると共に、非常排出口の鉛直下方にフラッパー弁が配置され、
平時は非常排出口を閉塞し非常時は開放する栓部材と、
非常時に供給するわずかな水量の洗浄流体を加圧してボウル内部を回転しながら洗浄する非常用送水管とを備え、
非常時において洗浄流体はフラッパー弁下方の排出管を通過するように構成したことを特徴とする災害対応便器。
【請求項2】
前記非常用送水口は、平時に使用する給水タンクから洗浄流体を供給するように構成した請求項1記載の災害対応便器。
【請求項3】
前記非常用送水口は、非常時に使用する非常用給水タンクから洗浄流体を供給するように構成した請求項1記載の災害対応便器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、平時に通常の流量の洗浄流体を供給することによりトラップを介して汚物を排出する水洗式の便器10において、ボウル11底部の汚物が落下する位置に非常排出口12を形成すると共に、非常排出口12の鉛直下方にフラッパー弁30が配置され、
平時は非常排出口12を閉塞し非常時は開放する栓部材20と、
非常時に供給するわずかな水量の洗浄流体を加圧してボウル11内部を回転しながら洗浄する非常用送水管13とを備え、
非常時において洗浄流体はフラッパー弁30下方の排出管60を通過するように構成した災害対応便器である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
第2の手段の前記非常用送水口12は、平時に使用する給水タンク40から洗浄流体を供給するように構成している。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
第3の手段の前記非常用送水口12は、非常時に使用する非常用給水タンク50から洗浄流体を供給するように構成したものである。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
平時に通常の流量の洗浄流体を水栓用送水管から供給することによりトラップを介して下水管に汚物を排出する水洗式の便器において、
ボウル底部の汚物が落下する位置に非常排出口を形成すると共に、非常排出口の鉛直下方にフラッパー弁が配置され、
平時に非常排出口を閉塞し非常時に開放する栓部材を備え、非常時に非常排出口からフラッパー弁の鉛直下方に設けられた排出管を通して下水管に汚物を直接排出するように構成し、
非常時にボウルを洗浄する洗浄流体を供給する非常用送水管を備え、この非常用送水管からの水量は、平時の水栓用送水管から供給する洗浄量よりも少ない水量に設定し、この非常用送水管からの洗浄流体を加圧してボウル内部を回転しながら洗浄後、非常排出口から排出管を通して下水管に排出するように構成したことを特徴とする災害対応便器。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、平時に通常の流量の洗浄流体を水栓用送水管から供給することによりトラップを介して下水管Pに汚物を排出する水洗式の便器10において、ボウル11底部の汚物が落下する位置に非常排出口12を形成すると共に、非常排出口12の鉛直下方にフラッパー弁30が配置され、平時に非常排出口12を閉塞し非常時に開放する栓部材20を備え、非常時に非常排出口12からフラッパー弁30の鉛直下方に設けられた排出管60を通して下水管Pに汚物を直接排出するように構成し、非常時にボウル11を洗浄する洗浄流体を供給する非常用送水管13を備え、この非常用送水管13からの水量は、平時の水栓用送水管14から供給する洗浄量よりも少ない水量に設定し、この非常用送水管13からの洗浄流体を加圧してボウル11内部を回転しながら洗浄後、非常排出口12から排出管60を通して下水管Pに排出するように構成した災害対応便器である。