(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140403
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 41/03 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046219
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391002487
【氏名又は名称】学校法人大同学園
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】加納 善明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB14
5H641BB18
5H641GG03
5H641GG08
5H641GG10
5H641GG24
5H641HH02
(57)【要約】
【課題】小型な筒型リニアモータの提供する。
【解決手段】本発明の筒型リニアモータ1は、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、筒状であって軸方向に間隔を開けて配置される複数のコア2A,2Bと、各コア2A,2Bのスロット2cに装着される複数相の巻線3とを有する電機子Eと、巻線3のそれぞれに通電可能な1つのインバータ20とを備え、コア2A,2B間の間隔はスロットピッチPの2分の1であって、巻線3は、コア2A,2Bのスロット2cにコア2A,2Bの一方から1相ずつずらして装着され、隣り合うコア2A,2B同士では、一方のコア2Aの巻線3と他方のコア2Bの1相ずらした巻線3とが互いに逆向きに結線されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、
筒状であって軸方向に間隔を開けて配置される複数のコアと、各コアのスロットに装着される複数相の巻線とを有する電機子と、
前記巻線のそれぞれに通電可能な1つのインバータとを備え、
前記間隔は、スロットピッチの2分の1であって、
前記巻線は、前記コアの前記スロットに前記コアの一方から1相ずつずらして装着され、
隣り合うコア同士では、一方のコアの巻線と他方のコアの1相ずらした巻線とが互いに逆向きに結線される
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、
筒状であって軸方向に間隔を開けて配置される複数のコアと、各コアのスロットに装着されるU相、V相およびW相の三相の巻線とを有する電機子と、
前記巻線のそれぞれに通電可能な1つのインバータとを備え、
前記間隔は、スロットピッチの2分の1であって、
隣り合うコア同士では、一方のコアのU相の巻線と他方のコアのV相の巻線とが互いに逆向きに結線され、一方のコアのV相の巻線と他方のコアのW相の巻線とが互いに逆向きに結線されるとともに、一方のコアのW相の巻線と他方のコアのU相の巻線とが互いに逆向きに結線される
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
筒型リニアモータは、たとえば、N極とS極とが軸方向に交互に現れるように積層した永久磁石を有する筒状の界磁と、界磁内に軸方向へ移動可能に挿入される電機子とを備えて構成されている。
【0003】
電機子は、筒状であって外周に軸方向に並べて配置される環状のティースとティース間の空隙で形成される複数のスロットを有する複数のコアと、コアにおける各スロットに装着される巻線とを備えている。また、巻線は、U、VおよびW相の三相の巻線でなり、各コアにおけるスロットに対して界磁の磁極配置に適する相配置となるように装着される。
【0004】
このように構成された筒型リニアモータでは、各相の巻線に120度の位相差で通電することによって、永久磁石と電機子との間に生じる軸方向の吸引および反発する力を発揮して、電機子を可動子として駆動している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように構成された筒型リニアモータでは、複数のコアを備えているが、コギング推力の低減を目的としたり、コア間にスライダを設けて電機子の界磁に対する軸ぶれを低減したり等というように何らかの目的でコア間に隙間を設ける場合がある。
【0007】
このようにコア間に隙間を設けたい場合、筒型リニアモータの軸方向における全長が長くなるので、なるべく隙間の間隔を短くする方が有利であるが、前記間隔をスロットピッチに無関係に自由に設定したのでは各コアの巻線に通電するインバータがコア毎に必要となって不経済であるばかりでなく駆動回路まで含めた筒型リニアモータの全体が大型化してしまう。
【0008】
また、従来の筒型リニアモータにて、複数のコアの巻線に1つのインバータで通電を可能とするには、コア間に設ける隙間の間隔をスロットピッチ未満にすることができず、それ以上の筒型リニアモータの全長を短くすることが難しい。
【0009】
そこで、本発明は、小型な筒型リニアモータの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、筒状であって軸方向に間隔を開けて配置される複数のコアと、各コアのスロットに装着される複数相の巻線とを有する電機子と、巻線のそれぞれに通電可能な1つのインバータとを備え、コア間の間隔はスロットピッチの2分の1であって、巻線は、コアのスロットにコアの一方から1相ずつずらして装着され、隣り合うコア同士では、一方のコアの巻線と他方のコアの1相ずらした巻線とが互いに逆向きに結線されている。
【0011】
また、本発明の他の筒型リニアモータは、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁と、筒状であって軸方向に間隔を開けて配置される複数のコアと、各コアのスロットに装着されるU相、V相およびW相の三相の巻線とを有する電機子と、巻線のそれぞれに通電可能な1つのインバータとを備え、間隔は、スロットピッチの2分の1であって、隣り合うコア同士では、一方のコアのU相の巻線と他方のコアのV相の巻線とが互いに逆向きに結線され、一方のコアのV相の巻線と他方のコアのW相の巻線とが互いに逆向きに結線されるとともに、一方のコアのW相の巻線と他方のコアのU相の巻線とが互いに逆向きに結線されている。
【0012】
このように構成された筒型リニアモータでは、全てのコアの巻線に対して1つのインバータで通電できるので、コア毎にインバータを設ける必要が無く、単一のインバータで駆動できることを条件としてコア間の間隔を最小となるスロットピッチの2分の1にできるので軸方向の全長も短くすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の筒型リニアモータによれば、小型化できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
【
図2】一実施の形態の筒型リニアモータのインバータと巻線との回路図の一例である。
【
図3】一実施の形態の筒型リニアモータのインバータと巻線との回路図の他の例である。
【
図4】一実施の形態の第1変形例における筒型リニアモータのコアを示した図である。
【
図5】一実施の形態の第1変形例における筒型リニアモータのインバータと巻線と回路図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、
図1に示すように、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、筒状であって軸方向に間隔を開けて配置される複数のコア2A,2Bと各コア2A,2Bのスロットに装着される複数相の巻線3とを有する電機子Eと、巻線3のそれぞれに通電可能な1つのインバータ20とを備えて構成されている。
【0016】
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。本実施の形態では、界磁6は、軸方向に交互に積層されて挿入される環状の主磁極の永久磁石6aと環状の副磁極の永久磁石6bとを備えて構成されて筒状とされている。また、界磁6の外周には筒状のバックヨーク8が装着されている。界磁6とバックヨーク8は、円筒状の非磁性体のバレル7と、バレル7内に挿入される円筒状の非磁性体のガイドチューブ9との間に形成される環状隙間に収容されている。
【0017】
なお、
図1中で主磁極の永久磁石6aと副磁極の永久磁石6bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石6aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石6bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石6aと副磁極の永久磁石6bは、ハルバッハ配列で配置されており、界磁6の内周側では、軸方向にS極とN極が交互に現れるように配置されている。
【0018】
また、主磁極の永久磁石6aの軸方向長さは、副磁極の永久磁石6bの軸方向長さよりも長くなっている。主磁極の永久磁石6aの軸方向長さを長くすればコア2A,2Bとの間の主磁極の永久磁石6aとの間の磁気抵抗を小さくできコア2A,2Bへ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータ1の質量推力密度を向上できる。ここで、質量推力密度とは、筒型リニアモータ1の最大推力を質量で割った数値であり、質量推力密度の値が大きくなれば、筒型リニアモータ1の質量当たりの推力が大きくなる。
【0019】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、永久磁石6a,6bの外周にバックヨーク8を設けている。バックヨーク8を設けない場合、副磁極の永久磁石6bの軸方向長さが短くなると主磁極の永久磁石6aの軸方向中央部分における磁石外部の磁気抵抗が増大し、界磁磁束が小さくなるため、主磁極の永久磁石6aの軸方向長さを長くする際の筒型リニアモータ1の推力向上度合が小さくなる。これに対して、永久磁石6a,6bの外周にバックヨーク8を設けると、磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極の永久磁石6bの軸方向長さの短縮に起因する磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極の永久磁石6aの軸方向長さを副磁極の永久磁石6bの軸方向長さよりも長くするとともに永久磁石6a,6bの外周に筒状のバックヨーク8を設けると筒型リニアモータ1の質量推力密度を大きく向上させ得る。バックヨーク8の肉厚は、主磁極の永久磁石6aの外部磁気抵抗の増大の抑制に適する肉厚に設定されればよい。
【0020】
また、固定子の内周側には、コア2A,2Bが挿入されており、界磁6は、コア2A,2Bに磁界を作用させている。なお、界磁6は、コア2A,2Bの可動範囲に対して磁界を作用させればよいので、コア2A,2Bの可動範囲に応じて永久磁石6a,6bの設置範囲を決定すればよい。したがって、バレル7とガイドチューブ9との環状隙間のうち、コア2A,2Bに対向し得ない範囲には、永久磁石6a,6bを設置しなくともよい。なお、界磁6は、本実施の形態ではハルバッハ配列で積層される永久磁石6a,6bで構成されているが、内周にN極とS極とが交互に現れればよいので、ハルバッハ配列以外の配列で積層される永久磁石で構成されてもよい。
【0021】
また、バレル7、バックヨーク8およびガイドチューブ9の
図1中左端はキャップ16によって閉塞されており、バレル7、バックヨーク8およびガイドチューブ9の
図1中右端は環状のヘッドキャップ15によって閉塞されている。
【0022】
電機子Eは、筒状のコア2A,2Bと、コア2A,2Bに装着される巻線3とを備えて構成されて、ガイドチューブ9内に軸方向移動自在に挿入されている。つまり、本実施の形態では、電機子Eは、界磁6の内周側に配置されており、界磁6に対して軸方向に相対移動できる。
【0023】
コア2A,2Bは、本実施の形態では、それぞれ、円筒状のヨーク2aと、環状であってヨーク2aの界磁側となる外周に周方向に沿ってかつ軸方向に間隔を空けて設けられる軸方向の断面が矩形の4つのティース2bと、ティース2b,2b間の空隙で形成されて巻線3が装着される3つのスロット2cとを備えて構成されている。また、コア2A,2Bは、軸方向にスロットピッチPの2分の1の距離だけ離間して並べて配置されている。なお、スロットピッチPは、スロット2cの軸方向の中央から隣のスロット2cの軸方向の中央までの距離に等しい。
【0024】
ヨーク2aは、前述の通り円筒状であって、その横断面積はコア2の軸線を中心とした円筒でティース2bの内周から外周までのどこを切っても、ティース2bを前記筒で切断した際にできる断面の面積以上となるように肉厚が確保されている。
【0025】
本実施の形態では、
図1および
図2に示すように、コア2A,2Bにおけるヨーク2aの外周に4個のティース2bが、軸方向に等間隔に並べて設けられており、コア2の界磁6側となる外周側であって、ティース2b,2b間に巻線3が装着される空隙でなるスロット2cが形成されている。なお、本実施の形態では、ティース2bは、断面形状を矩形にしているが、これに限らず、断面形状を台形にして外周となる先端側の幅よりも内周となる基端側の幅を大きくして、基端側の磁路断面積を大きく確保するようにしてもよい。ティース2bの形状は、前記したところに限定されるものではなく、任意に設計変更可能である。
【0026】
本実施の形態では、各コア2A,2Bにおける
図1中で隣り合うティース2b,2b同士の間には、空隙でなるスロット2cが合計で3個設けられている。スロット2cは、コア2の周方向に沿って設けられており、コア2の外周に軸方向に等ピッチで並べて設けられている。
【0027】
そして、各コア2A,2Bにおけるこのスロット2cには、巻線3が巻き回されて装着されている。巻線3は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。各コア2A,2Bにおけるスロット2cには、
図1中左から順に、1相ずつずらして、U相、V相およびW相の順に同じ向き(巻方向が同じ)に巻線3が装着されている。このように、巻線3は、各コア2A,2Bの一方から順番に1相ずつずらして同じ向きに装着されている。
【0028】
また、隣り合うコア2A,2B同士では、一方のコア2Aの巻線3と他方のコア2Bの1相ずらした巻線3とが互いに逆向きに結線されている。また、コア2A,2Bにおける3つの巻線3は、中性点でY結線されている。ここで、巻線3の相を区別するために、コア2AのU相の巻線3を巻線3U1とし、コア2AのV相の巻線3を3V1とし、コア2AのW相の巻線3を3W1とし、コア2BのU相の巻線3を3U2とし、コア2BのV相の巻線3を3U2とし、コア2BのW相の巻線3を3W2とする。なお、巻線3の符号の添え字のU,V,Wは、相の区別を、数字は、コアの番号を示している。以下、巻線3の符号につき、巻線3の相の区別が必要な場合には、添え字付きの符号を用い、相の区別を要しない場合には添え字の無い符号を用いる。
図2に示すように、一方のコア2Aの左方から1番目の巻線3U1と他方のコア2Bの左方から2番目の巻線3V2とが互いに逆向きに結線され、一方のコア2Aの左方から2番目のV相の巻線3V1と他方のコア2Bの左方から3番目の巻線3W2とが互いに逆向きに結線され、一方のコア2Aの左方から3番目の巻線3W1と他方のコア2Bの左方から1番目の巻線3U2とが互いに逆向きに結線されている。コア2Aの各相の巻線3U1,3V1,3W1がY結線されるとともに、コア2Bの各相の巻線3U2,3V2,3W2もY結線されている。
【0029】
そして、インバータ20は、U、V、W相に対応する3つの端子20u,20v,20wを備えており、コア2Aの巻線3の相を基準として、U相に対応する端子20uは、コア2Aの巻線3U1に接続され、V相に対応する出力端子20vは、コア2Aの巻線3V1に接続され、W相に対応する端子20wは、コア2Aの巻線3W1に接続されている。よって、インバータ20が端子20uを介してコア2Aの巻線3U1に電圧を印加すると、巻線3U1に逆向きに接続されるコア2Bの巻線3V2は逆向きに印加される。同様に、インバータ20が端子20vを介してコア2Aの巻線3V1に電圧を印加すると、巻線3V1に逆向きに接続されるコア2Bの巻線3W2は逆向きに印加され、インバータ20が端子20wを介してコア2Aの巻線3W1に電圧を印加すると、巻線3W1に逆向きに接続されるコア2Bの巻線3U2は逆向きに印加される。
【0030】
このように、コア2A,2Bが軸方向でスロットピッチPの2分の1だけ離間して配置されるのでコア2Aと界磁6との電気角の位相とコア2Bと界磁6との電気角の位相とが180度ずれる。そして、各コア2A,2Bのスロット2cに各相の巻線3が一方から順に1相ずつずらして装着され、隣り合うコア2A,2B同士では、一方のコア2Aの巻線3と他方のコア2Bの1相ずらした巻線3とが互いに逆向きに結線されているので、単一のインバータ20から120度位相切換で通電すると、コア2A,2Bを備えた電機子Eを同期して同一方向に駆動できる。
【0031】
また、隣り合うコア2A,2B同士では、一方のコア2Aの巻線3と他方のコア2Bの1相ずらした巻線3とが互いに逆向きに結線さればよいので、
図3に示すように、コア2Aの左方から1番目の巻線3U1とコア2Bの左方から3番目の巻線3W2とが互いに逆向きに結線され、コア2Aの左方から2番目の相の巻線3V1とコア2Cの左方から1番目の巻線3U2とが互いに逆向きに結線され、コア2Aの左方から3番目の巻線3W1とコア2Cの左方から2番目の巻線3V2とが互いに逆向きに結線されてもよい。
【0032】
なお、各コア2A,2Bにおけるスロット数は、三相の巻線を利用する場合、3の整数倍に設定して、各相の巻線3をコア2A,2Bのスロット2cにコア2A,2Bの一方から順番に1相ずつずらして同じ方向に向けて装着すればよい。さらに、コア2A,2Bに対してスロット2cが6つ以上設けられる場合、各コア2A,2Bのスロット2cに対して順番にU相、U相、V相、V相、W相、W相と言うように、コア2A,2Bに対して複数の同相の巻線3を隣接するスロット2cに連続して装着しつつ、コア2A,2Bにおいて各相の巻線が相毎に順番に配置される場合がある。このような場合でも、コア2A,2Bの軸方向の間隔をスロットピッチPの2分の1に設定しつつ、隣り合うコア2A,2B同士で、一方のコア2AのU相の巻線3と他方のコア2BのV相の巻線3とを互いに逆向きに結線し、一方のコア2AのV相の巻線3と他方のコア2BのW相の巻線3とを互いに逆向きに結線するとともに、一方のコア2AのW相の巻線3と他方のコア2AのU相の巻線とを互いに逆向きに結線してもよい。
【0033】
また、
図4および
図5に示すように、3つ以上のコア2A,2B,2Cを軸方向でスロットピッチPの2分の1ずつ離間させて設ける場合でも、隣り合うコア同士では、一方のコアの巻線と他方のコアの1相ずらした巻線とが互いに逆向きに結線さればよい。よって、たとえば、3番目のコア2CのU相の巻線3を3U3とし、コア2CのV相の巻線3を3V3とし、コア2CのW相の巻線3を3W3とすると、2番目のコア2Bの左方から1番目の巻線3U2とコア2Cの左方から2番目の巻線3V3とが互いに逆向きに結線され、コア2Bの左方から2番目の相の巻線3V2とコア2Cの左方から3番目の巻線3W3とが互いに逆向きに結線され、コア2Bの左方から3番目の巻線3W2とコア2Cの左方から1番目の巻線3U3とが互いに逆向きに結線されればよい。また、隣り合うコア2B,2C同士では、一方のコア2Bの巻線3と他方のコア2Cの1相ずらした巻線3とが互いに逆向きに結線されればよいので、2番目のコア2Bの左方から1番目の巻線3U2とコア2Cの左方から3番目の巻線3W3とが互いに逆向きに結線され、コア2Bの左方から2番目の相の巻線3V2とコア2Cの左方から1番目の巻線3U3とが互いに逆向きに結線され、コア2Bの左方から3番目の巻線3W2とコア2Cの左方から2番目の巻線3V3とが互いに逆向きに結線されてもよい。
【0034】
また、本実施の形態では、巻線3がU、VおよびWの3相の巻線で構成されているが、複数のコアが軸方向でスロットピッチPの2分の1だけ離間して配置され、各コアのスロットに各相の巻線が一方から順に1相ずつずらして装着され、隣り合うコア同士では、一方のコアの巻線と他方のコアの1相ずらした巻線とが互いに逆向きに結線されていれば、2相、5相というように、3相以外の巻線で構成されてもよい。
【0035】
このように構成された電機子Eは、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の先端の外周に装着され、ガイドチューブ9の内周に外周を摺接させる環状のスライダ12,13,14がロッド11とともに界磁6内に移動自在に挿入される。なお、極数とスロット数の組み合わせは、適宜変更可能である。スライダ13の軸方向の長さは、スロットピッチPの2分の1の長さに設定されており、コア2A,2B間にスライダ13を挿入してコア2A,2Bおよびスライダ13をロッド11の外周に嵌合して、ロッド11の外周に固定されるスライダ12とスライダ14とでコア2A,2Bおよびスライダ13を挟持すると、コア2A,2Bを軸方向にスロットピッチPの2分の1の距離だけ離間してロッド11に固定できる。
【0036】
ロッド11は、バレル7の
図1中右端に取り付けられたヘッドキャップ15内を通して筒型リニアモータ1外へ突出している。また、ロッド11の電機子Eの
図1中左右にはガイドチューブ9の内周に摺接するスライダ12,13が装着されている。なお、スライダ13をガイドチューブ9に摺接させると、コア2A,2Bを径方向に移動させる力が作用してもコア2A,2Bは、界磁6に対して軸ぶれせずに円滑に軸方向へ移動できる。また、スライダ12,14もコア2A,2Bの軸方向の両側にてガイドチューブ9の内周に摺接するので、ガイドチューブ9に干渉することなく軸方向に移動できる。
【0037】
このように、ガイドチューブ9は、コア2の外周と界磁6の内周との間の磁気抵抗の高いギャップを形成するとともに、スライダ12,13と協働して電機子Eの軸方向移動を案内する役割を果たしている。コア2の外径は、ガイドチューブ9の内径よりも小さく、ガイドチューブ9に干渉することはなく、筒型リニアモータ1は円滑に伸縮できるが、ガイドチューブ9の内周に摺接してもよい。なお、ガイドチューブ9は、非磁性体で形成されればよいが、金属以外にも合成樹脂等で形成されてもよい。
【0038】
なお、ロッド11は、図示はしないが、筒状とされており、ロッド11内に通される図外の電線を通じて筒型リニアモータ1の外方に設置されるインバータ20から巻線3へ電力供給できる。具体的には、キャップ16には、巻線3に接続されるケーブル17を外部のインバータ20に接続するコネクタ16aを備えており、インバータ20から巻線3へ通電できるようになっている。
【0039】
そして、たとえば、巻線3の界磁6に対する電気角をセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線3の電流量を制御すれば、筒型リニアモータ1における推力と電機子Eの移動方向とを制御できる。なお、前述の制御方法は、一例でありこれに限られない。また、電機子Eと界磁6とを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線3への通電、あるいは、巻線3に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
【0040】
以上、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、筒状であって軸方向に間隔を開けて配置される複数のコア2A,2Bと、各コア2A,2Bのスロット2cに装着される複数相の巻線3とを有する電機子Eと、巻線3のそれぞれに通電可能な1つのインバータ20とを備え、コア2A,2B間の間隔はスロットピッチPの2分の1であって、巻線3は、コア2A,2Bのスロット2cにコア2A,2Bの一方から1相ずつずらして装着され、隣り合うコア2A,2B同士では、一方のコア2Aの巻線3と他方のコア2Bの1相ずらした巻線3とが互いに逆向きに結線されている。
【0041】
巻線3がU相、V相およびW相の三相の巻線で構成される場合、筒型リニアモータ1は、軸方向にN極とS極とが交互に配置される界磁6と、筒状であって軸方向に間隔を開けて配置される複数のコア2A,2Bと、各コア2A,2Bのスロット2cに装着されるU相、V相およびW相の三相の巻線3とを有する電機子Eと、巻線3のそれぞれに通電可能な1つのインバータ20とを備え、コア2A,2B間の間隔はスロットピッチPの2分の1であって、隣り合うコア同士では、一方のコア2AのU相の巻線3U1と他方のコア2BのV相の巻線3V2とが互いに逆向きに結線され、一方のコア2AのV相の巻線3V1と他方のコア2BのW相の巻線3W2とが互いに逆向きに結線されるとともに、一方のコア2AのW相の巻線3W1と他方のコア2BのU相の巻線3U2とが互いに逆向きに結線されていればよい。
【0042】
このように構成された筒型リニアモータ1では、コア2A,2Bが軸方向でスロットピッチPの2分の1だけ離間して配置されるのでコア2Aと界磁6との電気角の位相とコア2Bと界磁6との電気角の位相とが180度ずれる。そして、各コア2A,2Bのスロット2cに各相の巻線3が一方から順に1相ずつずらして装着され、隣り合うコア2A,2B同士では、一方のコア2Aの巻線3と他方のコア2Bの1相ずらした巻線3とが互いに逆向きに結線されているので、単一のインバータ20から120度位相切換で通電すると、コア2A,2Bを備えた電機子Eを同期して同一方向に駆動できる。以上のように、筒型リニアモータ1によれば、単一のインバータ20で各コア2A,2Bの巻線3に通電して駆動できる。
【0043】
このように、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、全てのコア2A,2Bの巻線3に対して1つのインバータ20で通電できるので、コア2A,2B毎にインバータを設ける必要が無く、単一のインバータ20で駆動できることを条件としてコア2A,2B間の間隔を最小となるスロットピッチPの2分の1にできるので軸方向の全長も短くすることができる。以上より、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、1つのインバータ20のみを備えて軸方向の全長を最小にできるから、小型化できる。
【0044】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、界磁6の内周に設けられる非磁性体のガイドチューブ9と、コア2A,2B間に配置されてガイドチューブ9に摺接して電機子Eの移動を案内するスライダ13とを備えている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、電機子Eの界磁6に対する軸ぶれを抑制しつつ、電機子Eの軸方向への円滑な移動を保証し得る。なお、スライダ13の軸方向長さがスロットピッチPの2分の1となっている場合、コア2A,2B間にスライダ13を介装するとコア2A,2Bを互いに軸方向でスロットピッチPの2分の1だけ離間する位置に位置決めでき、電機子Eの組立が容易となる。
【0045】
なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、界磁6の内周に電機子Eを設ける構造となっているが、界磁6の外周に電機子Eを設ける構造を採用することも可能である。その場合、コア2A,2Bの界磁側となる内周側にティースを設けて、ティース間に形成されるスロットに巻線3を装着すればよい。
【0046】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1・・・筒型リニアモータ、2A,2B・・・コア、2c・・・スロット、3・・・巻線、6・・・界磁、20・・・インバータ、E・・・電機子