(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140415
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ダイナミックダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
F16F15/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046238
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000158840
【氏名又は名称】鬼怒川ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100205682
【弁理士】
【氏名又は名称】高嶋 一彰
(72)【発明者】
【氏名】高橋 勇輝
【テーマコード(参考)】
3J048
【Fターム(参考)】
3J048AA06
3J048AD07
3J048BF02
3J048EA36
(57)【要約】
【課題】構成部材の生産性の低下を抑制すると共に、組立作業能率の向上やコストの低減化が図り得るダイナミックダンパーを提供する。
【解決手段】ダイナミックダンパー1は、両側壁9を有するコ字形状の外側金具3と、外側金具の内側に配置されて、前記両側壁に対向する両側片11を有するコ字形状の内側金具4と、外側金具の両側壁と内側金具の両側片との間に加硫接着された4つの弾性体5と、内側金具の内側に配置された長方体のマス部材6と、内側金具にマス部材を固定させる一対の締結ボルト7と、を備え、両側壁にそれぞれ貫通形成されたボルト挿通孔9bと、両側片にそれぞれ貫通形成され挿入孔11aと、マス部材の両側部に形成されて、締結ボルトの雄ねじ部13bが螺着固定される雌ねじ孔6aと、を有し、マス部材を、外側金具の挿通孔を介して挿通された締結ボルトによって内側金具に連結固定した。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源に取り付けられ、左右一対の側壁を有する外側部材と、該外側部材の内側に配置されて、前記両側壁に対向する両側片を有する内側部材と、前記外側部材の両側壁の各内面と内側部材の両側片の各外面との間に加硫接着された複数の弾性体と、前記内側部材の内側に配置されたマス部材と、前記内側部材に前記マス部材を固定させる一対の連結部材と、を備え、
前記外側部材の両側壁にそれぞれ貫通形成され、前記各連結部材が挿通される挿通孔と、前記内側部材の両側片にそれぞれ貫通形成され、前記各連結部材の軸部が挿入される挿入孔と、前記マス部材の両側部に形成され、前記各挿入孔を介して挿入された前記各連結部材の軸部の先端部が固定される一対の固定用孔と、を有し、
前記マス部材を、前記外側部材の各挿通孔を介して挿通された前記各連結部材によって前記内側部材に連結固定したことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項2】
請求項1に記載のダイナミックダンパーであって、
前記弾性体を、前記外側部材の両側壁と前記内側部材の両側片の四隅に配置し、
前記外側部材の両側壁の各挿通孔は、前記弾性体を避けた位置に形成されていると共に、該各挿通孔の周囲に前記内側部材の方向へ凹んだ凹部を形成し、
前記連結部材の先端部が前記マス部材の固定用穴に固定された状態において、連結部材の頭部を、前記凹部の内部に配置したことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項3】
請求項1に記載のダイナミックダンパーであって、
前記ダイナミックダンパーを車体の振動源に適用した場合に、
前記弾性体の前記振動源からのダイナミックダンパーに対する車体上下方向と車体幅方向及び車体前後方向の各振動方向に対する弾性中心を、前記マス部材の重心位置と一致あるいはほぼ一致させたことを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項4】
請求項1に記載のダイナミックダンパーであって、
前記マス部材の両側部に形成された固定用穴は雌ねじ孔であり、
前記連結部材は、頭部と、該頭部に一体に設けられた軸部と、を有し、
前記軸部の先端部に前記マス部材の両側部の各雌ねじ孔にそれぞれ螺着する雄ねじ部が形成され、
前記軸部は、前記頭部側に前記内側部材の各挿入孔の内径より大きな外径の大径部を有し、前記雄ねじ部を雌ねじ孔にねじ込んだ際に、前記大径部の前記雄ねじ部側の端面が前記各挿入孔の孔縁部に当接して最大ねじ込み量を規制することを特徴とするダイナミックダンパー。
【請求項5】
請求項2に記載のダイナミックダンパーであって、
前記連結部材の頭部は、平坦な円盤板状に形成されていると共に、外面の中央位置にねじ込み工具の六角溝が形成されていることを特徴とするダイナミックダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車の車体などの振動源に取り付けられて、特定周波数の振動を減衰するダイナミックダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダイナミックダンパーとしては、以下の特許文献1に記載されたものが知られている。
【0003】
このダイナミックダンパー30は、
図5(a)(b)に示すように、車両の振動源に取り付けられる断面コ字形状のアウター金具31と、該アウター金具31の内側に配置されたほぼ直方体の金属材からなるウエイト32と、前記ウエイト32の前記アウター金具31の上下面にそれぞれ対向する上下対向面に一体に設けられた上下各一対の4本のゴム製の第1弾性体33及び第2弾性体34と、を有している。
【0004】
前記アウター金具31は、底壁部31aと、該底壁部31aの上下側縁に一体に設けられた第1側壁部31b及び第2側壁部31cと、該第1、第2側壁部31b、31cの外端縁に一体に設けられて、上方に延びる第1取り付け片31d及び下方に延びる第2取り付け片31eと、を有している。この第1、第2取り付け片31d、31eには、複数のボルト孔35が形成され、この各ボルト孔35に挿入される図外の複数のボルトによってダイナミックダンパー30がシートバックに取り付けられるようになっている。
【0005】
前記アウター金具31の第1側壁部31bと第2側壁部31cには、第1長孔36と第2長孔37が前後方向にオフセットした位置にそれぞれ貫通形成されている。
【0006】
一方、前記ウエイト32は、表面全体にゴム膜が被覆されていると共に、上側対向面と下側対向面には、前記第1長孔36と第2長孔37に対応した位置に第1差込孔32aと第2差込孔32bがそれぞれ形成されている。
【0007】
前記第1差込孔32aと第2差込孔32bには、前記第1長孔36と第2長孔37に挿通されたゴム製の第1ピン部材38と第2ピン部材39が隙間なく差し込まれて接着固定されている。前記第1ピン部材38と第2ピン部材39は、前記第1長孔36と第2長孔37に対しては、常態時には非接触状態に配置され、振動に伴ってウエイト32を第1、第2長孔36,37に沿って車体前後方向(X方向)にのみ移動可能として、アウター金具31に対するウエイト32の脱落を防止するようになっている。
【0008】
前記第1、第2弾性体33,34は、横断面ほぼ正方形の柱状に形成されて、各一端部がアウター金具31の第1、第2側壁部31b、31cの内面に、各他端部がウエイト32の上下面にそれぞれ加硫接着によって固定されている。
【0009】
これらの構成によって、ウエイト32がX方向に移動しても、ウエイト32が第1、第2弾性体33,34を支点としてX方向に対して垂直方向のY方向に揺動するのを抑制できる。したがって、各第1、第2弾性体33,34に歪みが発生するのを抑制することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第4857216号公報(
図1、
図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に記載のダイナミックダンパーにあっては、ウエイト32の表面全体にゴム膜が一体に被膜されていることから、ウエイト32の質量を大きくするために、ウエイト32の外形を大きくすると、ゴム膜との加硫成形時の成形品が大きくなって、一度に成形できる取り数が制限されると共に、加硫時間が長くなって生産性が低下するおそれがある。
【0012】
また、前記第1ピン部材38と第2ピン部材39を別途設けて、アウター金具31にウエイト32を組み付ける際に、最終的な工程で第1、第2ピン部材38、39をアウター金具31の各長孔36,37を介してウエイト32の各差込孔32a、32bに固定するようになっていることから、組立工数や部品点数が増加して組立作業能率の低下やコストの高騰を招くおそれがある。
【0013】
本発明は、前記従来のダイナミックダンパーの技術的課題に鑑みて案出されたもので、構成部材の生産性の低下を抑制すると共に、組立工数や部品点数の削減により、組立作業能率の向上やコストの低減化を図り得るダイナミックダンパーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願請求項1に係る発明は、振動源に取り付けられ、左右一対の側壁を有する外側部材と、該外側部材の内側に配置されて、前記両側壁に対向する両側片を有する内側部材と、前記外側部材の両側壁の各内面と内側部材の両側片の各外面との間に加硫接着された複数の弾性体と、前記内側部材の内側に配置されたマス部材と、前記内側部材に前記マス部材を固定させる一対の連結部材と、を備え、
前記外側部材の両側壁にそれぞれ貫通形成され、前記各連結部材が挿通される挿通孔と、前記内側部材の両側片にそれぞれ貫通形成され、前記各連結部材の軸部が挿入される挿入孔と、前記マス部材の両側部に形成され、前記各挿入孔を介して挿入された前記各連結部材の軸部の先端部が固定される一対の固定用孔と、を有し、前記マス部材を、前記外側部材の各挿通孔を介して挿通された前記各連結部材によって前記内側部材に連結固定したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ダイナミックダンパーの構成部材の生産性の低下を抑制すると共に、組立工数や部品点数の削減により、組立作業能率の向上やコストの低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係るダイナミックダンパーが取り付けられる自動車のフロントサスペンションメンバーを示す俯瞰図である。
【
図2】本実施形態のダイナミックダンパーの平面図である。
【
図5】従来のダイナミックダンパーを車両のシートバックに取り付けた状態を示し、(a)は車両の前方から視た図、(b)は下方から視た図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るダイナミックダンパーの実施形態を図面に基づいて説明する。本実施形態では、ダイナミックダンパーを、自動車のフロントサスペンションメンバーに適用したものを示している。
【0018】
図1は本発明に係るダイナミックダンパーが取り付けられる自動車のフロントサスペンションメンバーを示す俯瞰図である。
【0019】
自動車の振動源であるフロントサスペンションメンバー01は、周知のように、走行時の車体の捩れを抑え、路面からの衝撃を緩和し、乗り心地、操縦安定性を向上させるもので、
図1に示すように、剛性の高い溶接構造用熱間圧延鋼板などによって成形された四角形のフレーム02によって構成されている。このフロントサスペンションメンバー01は、フロントサスペンションの他に、エンジンやステアリングなどを支持するようになっている。
【0020】
そして、振動抑制装置である前記ダイナミックダンパー1は、フロントサスペンションメンバー01の
図1の矢印で示す位置に取り付けられている。
【0021】
図2は本実施形態のダイナミックダンパーの平面図、
図3は
図2のA-A線断面図、
図4は同ダイナミックダンパーの右側面図である。
【0022】
前記ダイナミックダンパー1は、
図2に示すように、振動源である前記フロントサスペンションメンバー01のフレーム02に直接固定される取付ブラケット2と、該取付ブラケット2を介して前記フレーム02に取り付けられる外側部材である外側金具3と、該外側金具3の内側に配置された内側部材である内側金具4と、前記外側金具3と内側金具4との間に配置固定された複数(本実施形態では4つ)のゴム製の弾性体5と、前記内側金具4の内側に配置された質量部材であるマス部材6と、前記内側金具4にマス部材6を連結固定する一対の連結部材である締結ボルト7,7と、を備えている。
【0023】
そして、このダイナミックダンパー1は、
図2及び
図3に示すように、
図3の上下方向(矢印X方向)が車体上下方向となり、左右方向(矢印Y方向)が車体幅方向となり、
図2の前後方向(矢印Z方向)が車体前後方向にほぼ一致するように配置されている。
【0024】
前記取付ブラケット2は、金属プレートによって矢印Y方向の車体幅方向に延びる矩形状に形成されていると共に、前後端部の中央位置にはフロントサスペンションメンバー01のフレーム02に固定される図外の固定用ボルトが挿通されるボルト挿通孔2a、2bが貫通形成されている。
【0025】
前記外側金具3は、金属板材をコ字形状に折曲してなり、取付ブラケット2の上面に固定される底壁8と、該底壁8の長手方向の両側縁から立ち上がった一対の側壁9、9と、を有している。前記底壁8は、例えば溶接によって前記取付ブラケット2の上面に固定されている。
【0026】
前記両側壁9、9は、上下方向及び左右方向のほぼ中央位置に、内側金具4方向へ凹んだ凹部9a、9aが形成されている。この各凹部9a、9aは、両側壁9,9の幅方向に沿って形成されて縦断面ほぼコ字形状に形成されている。また各凹部9a、9aは、その深さが前記締結ボルト7,7の頭部12,12の外面よりも深く形成されている。つまり、後述するように、各締結ボルト7,7がマス部材6にねじ込まれた状態で、各頭部12,12が各凹部9a、9a内に収容配置された形になるように深さが設定されている。また、この各凹部9a、9aの底部の長手方向の中心位置には、前記締結ボルト7,7の軸部13,13が挿入可能なボルト挿通孔9b、9bが貫通形成されている。
【0027】
前記内側金具4は、外側金具3と同じく金属板材をコ字形状に折曲してなり、外側金具3の底壁8と平行に配置された底部10と、該底部10の長手方向の両側縁から立ち上がった一対の側片11、11と、を有している。
【0028】
内側金具4は、板材の肉厚W1が外側金具3の肉厚Wよりも薄肉に形成されていると共に、外側金具3の内側に所定のすき間をもって同じ向きで配置されている。つまり、内側金具4は、底部10が外側金具3の底壁8に所定のすき間をもって平行に配置され、両側片11,11が外側金具3の両側壁9,9に一定のすき間Cをもって平行に配置されている。
【0029】
前記両側片11,11は、ほぼ中央位置に後述する前記各締結ボルト7,7の軸部13,13先端に有する小径な雄ねじ部13b、13bが挿通される挿入孔11a、11aがそれぞれ貫通形成されている。
【0030】
前記4つの弾性体5は、
図2及び
図3に示すように、それぞれ横断面がほぼ鼓状に形成されていると共に、外側金具3と内側金具4の幅方向(Z方向)に延びて縦断面がほぼ長円状に形成されている。また、各弾性体5は、外側金具3の両側壁9,9と内側金具4の両側片11,11の四隅に配置されて、つまり、矢印X方向と矢印Z方向に互いに所定の間隔をおいて四隅にそれぞれ配置されている。また、各弾性体5は、矢印Y方向の両端部が両側壁9,9の内面と両側片11,11の外面に加硫接着されており、それぞれがZ方向に延びた横断面ほぼ長円状に太く形成されていることから、比較的中周波数で振幅の小さな振動にチューニングされている。
【0031】
なお、この弾性体5の断面形状の大きさは、ダイナミックダンパー1の取り付け対象、つまり低減すべき振動の周波数に応じて任意に変更することが可能である。
【0032】
マス部材6は、例えば鉄系金属材によってほぼ長方体に形成されて所定の質量を有し、Y方向(車幅方向)の長さLが内側金具4の両側片11,11間の距離より僅かに小さく形成されていると共に、Z方向(車体前後方向)の長さL1が内側金具4のZ方向の長さよりも大きく形成されて、内側金具4の内部に収容配置されている。
【0033】
また、マス部材6は、両側部に前記締結ボルト7,7の雄ねじ部13b、13bが螺着する固定用穴である一対の雌ねじ孔6a、6aが形成されている。この両雌ねじ孔6a、6aは、マス部材6の両側面からマス部材6の重心位置Pに向かって同軸状に形成されている。
【0034】
なお、このマス部材6は、その大きさや形状を振動源の特定の周波数に応じて任意に変更することが可能である。
【0035】
締結ボルト7,7は、鉄系金属材によって設けられており、頭部12,12と、該頭部12,12に一体に設けられた軸部13,13と、を有している。
【0036】
前記頭部12,12は、
図3及び
図4に示すように、平坦な円盤状に形成されていると共に、外面の中央位置にねじ込み工具である図外の六角レンチの先端部が嵌入される六角溝12a、12aが形成されている。また、頭部12,12は、外径が外側金具3のボルト挿通孔9b、9bの内径よりも大きく形成されている。
【0037】
軸部13、13は、前記頭部12,12との付け根部側に設けられた円柱状の大径部13a、13aと、該大径部13a、13aの先端部に一体に設けられた大径部13a、13aよりも小径な雄ねじ部13b、13bと、を有している。
【0038】
各大径部13a、13aは、外径が外側金具3のボルト挿通孔9b、9bの内径よりも小さく形成され、内側金具4の各挿入孔11a、11aの内径よりも大きく形成されている。
【0039】
前記雄ねじ部13b、13bは、外径が内側金具4の各挿入孔11a、11aの内径よりも僅かに小さく形成されていると共に、各挿入孔11a、11aを介してマス部材6の各雌ねじ孔6a、6aにそれぞれ螺着する可能になっている。また、この各雄ねじ部13b、13bは、その軸方向の長さが前記各雌ねじ孔6a、6aの長さよりも短く形成されている。
【0040】
また、各大径部13a、13aは、各雄ねじ部13b、13bを各雌ねじ孔6a、6aにねじ込んだ際に、雄ねじ部13b、13b側の円環状の端面13c、13cが各挿入孔11a、11aの孔縁部に当接(着座)して締結ボルト7,7の最大ねじ込み量を規制するようになっている。
【0041】
また、前記各締結ボルト7,7は、各雄ねじ部13b、13bのマス部材6の各雌ねじ孔6a、6aへのねじ込みによってマス部材6を内側金具4に結合すると共に、マス部材6の不用意な落下を防止するようになっている。
【0042】
前記各弾性体5は、振動源である前記フロントサスペンションメンバー01からダイナミックダンパー1に対する車体上下方向(X方向)と車体幅方向(Y方向)及び車体前後方向(Z方向)の並進運動の振動に対して各弾性体5の弾性中心とマス部材6の重心位置Pが一致し、あるいはほぼ一致させた位置に設けられている。
〔本実施形態におけるダイナミックダンパーの作用効果〕
以下、前記各構成からなる本実施形態のダイナミックダンパー1の作用効果について説明する。
【0043】
本実施形態のダイナミックダンパー1によれば、予め外側金具3と内側金具4との間に各弾性体5を加硫接着して、該各弾性体5を介して外側金具3と内側金具4を連結しておく。この状態で、取付ブラケット2の上面に外側金具3の底壁8を溶接によって取り付け、この状態で各締結ボルト7,7の軸部の大径部13a、13aを、外側金具3の各ボルト挿通孔9b、9bに挿入する。その後、軸部13,13の各雄ねじ部13b、13bを、内側金具4の各挿入孔11a、11aに挿通しつつマス部材6の左右両側の雌ねじ孔6a、6aに軽く螺着する。
【0044】
続いて、締結ボルト7,7の頭部12,12に有する六角溝12a、12aに嵌入された六角レンチを回転操作して各雄ねじ部13b、13bを各雌ねじ孔6a、6aにねじ込んで締め付ける。これによって、マス部材6が、内側金具4に強固に締結固定される。
【0045】
そして、前記締結ボルト7,7をねじ込んで行くと、大径部13a、13aの端面13c、13cが各挿入孔11a、11aの孔縁部に当接(着座)することによってそれ以上のねじ込みが規制される。つまり、締結ボルト7,7の最大締め付け量が規制される。
【0046】
また、この状態での締結ボルト7,7は、
図3に示すように、頭部12,12が外側金具3の各凹部9a、9a内に収容された形になることから、各頭部12,12が外側金具3の各両側壁9,9の外面から突出することがない。
【0047】
次に、フロントサスペンションメンバー01に前記取付ブラケット2を2本の固定用ボルトにより取り付け固定すれば、ダイナミックダンパー1をフロントサスペンションメンバー01の所定に位置に確実に固定することができる。
【0048】
以上のように、本実施形態では、従来技術のようなマス部材の外面にゴム膜を被膜することがないので、マス部材6の質量、つまり体積を大きくしても一度に成形できる取り数が制限されることがなくなると共に、加硫時間の短縮化が図れることから生産性の低下を抑制できる。
【0049】
しかも、外側金具3と一体的に結合された内側金具4に対してマス部材6を固定する締結ボルト7,7を、マス部材6の脱落防止用として兼用できるので、これらの組立工数や部品点数の削減が図れて、組立作業能率の向上やコストの低減化が図れる。つまり、前記マス部材6の脱落防止用とは、前記4つの弾性体5が、経年劣化や長期間にわたる振動などによって車両の走行中に破断してしまった場合でも、頭部12,12の外径がボルト挿通孔9b、9bの内径よりも大きく形成されていることから、外側金具9からのマス部材6の脱落を防止することができるのである。
【0050】
また、各締結ボルト7,7は、頭部12,12が外側金具3の各凹部9a、9aの内部に収容配置されることから、外側金具3の両側壁9,9の外面よりも突出することがなくなるので、ダイナミックダンパー1全体の小型化が図れる。
【0051】
さらに、前記各ボルト挿通孔9b、9bは、各大径部13a、13aの外径よりも十分に大きく形成されていることから、振動時において、各大径部13a、13aの外周面と干渉を抑制することができる。したがって、マス部材6や各弾性体5による振動抑制効果の低下を防止できる。
【0052】
さらに、前記車体上下方向(矢印X方向)と車体幅方向(矢印Y方向)及び車体前後方向(矢印Z方向)の並進運動の振動に対して各弾性体5の弾性中心とマス部材6の重心位置Pが一致していることによって、マス部材6が回転運動をしないので、回転方向の固有振動の影響を受けることがなくなる。このため、ダイナミックダンパー1による制振効果が大きくなる。
【0053】
また、前述したように、締結ボルト7,7によって内側金具4にマス部材6を固定する際には、前記締結ボルト7,7の軸部13,13を外側金具3の各ボルト挿通孔9b、9bと内側金具4の挿入孔11a、11aに挿入しつつ雄ねじ部13b、13bをマス部材6の雌ねじ孔6a、6aに螺着させながらねじ込んで行くと、前記大径部13a、13aの端面13c、13cが各挿入孔11a、11aの孔縁部に当接(着座)してそれ以上のねじ込みが規制される。これによって、各締結ボルト7,7は、雌ねじ孔6a、6aに対する過度なねじ込み量が抑制される。このため、両方の頭部12,12の外方への突出量が同じになってマス部材6における良好な重量バランスを取ることができる。つまり、両締結ボルト7,7は、一方の頭部12が他方の頭部12よりも外方へ突出することがなくほぼ同じになることから、マス部材6の重量バランスを図ることができる。
【0054】
さらには、締結ボルト7,7の頭部12,12が平坦な円盤板状に形成されていることから、外側金具3の凹部9a、9a内に収容し易くなると共に、前記凹部9a、9a内から外部へ突出することがないのでダイナミックダンパーの小型化をさらに促進できる。
【0055】
本発明は、前記各実施形態の構成に限定されるものではなく、例えば、外側金具3や内側金具4の形状や、マス部材6の形状をさらに変更することも可能である。
【0056】
また、本実施形態では、マス部材6の一対の雌ねじ孔6a、6aを同軸上に設けているが、両者を前後方向や上下方向に互いにオフセットして設けることも可能である。
【0057】
また、ダイナミックダンパーの適用対象部材としては、車体の他の振動部材や自動車以外の船舶などの振動部材に適用することも可能である。
【符号の説明】
【0058】
01…フロントサスペンションメンバー
02…フレーム
1…ダイナミックダンパー
2…取付ブラケット
3…外側金具(外側部材)
4…内側金具(内側部材)
5…弾性体
6…マス部材
7…締結ボルト(連結部材)
8…底壁
9…両側壁
9a…凹部
9b…ボルト挿通孔(挿通孔)
10…底部
11…両側片
11a…挿入孔
12…頭部
13…軸部
13a…大径部
13b…雄ねじ部
13c…端面
P…マス部材の重心位置