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  • 特開-日除け生地の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140420
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】日除け生地の製造方法
(51)【国際特許分類】
   D04H 3/011 20120101AFI20230928BHJP
   D04H 3/14 20120101ALI20230928BHJP
   D04H 3/12 20060101ALI20230928BHJP
   A47H 23/10 20060101ALI20230928BHJP
   E06B 9/42 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
D04H3/011
D04H3/14
D04H3/12
A47H23/10
E06B9/42 C
E06B9/42 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046245
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089152
【弁理士】
【氏名又は名称】奥村 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】森岡 辰太
【テーマコード(参考)】
2E182
4L047
【Fターム(参考)】
2E182AA01
2E182AB01
2E182AB03
2E182AC15
2E182CC03
2E182CC04
2E182FF02
4L047AA21
4L047BA12
4L047CA12
4L047CC10
4L047EA10
(57)【要約】
【課題】 プリーツ加工しやすく、遮光の強弱を複雑にした日除け生地の製造方法を提供する。
【解決手段】 この日除け生地の製造方法は、以下の四つの工程からなる。第一工程は、ポリエチレンテレフタレート繊維を無作為に集積して繊維ウェブを製造する工程である。第二工程は、繊維ウェブを加熱凹凸ロールと加熱平滑ロール間に通し、経糸に相当する第一凸部1と緯糸に相当する第二凸部2とよりなり、第一凸部1及び第二凸部2外の部位が凹部3となっている平織メッシュ織物柄を持つ繊維フリースを製造する工程である。第三工程は、繊維フリースの厚み方向全体に亙って樹脂結合剤を付与して、不織布を得る工程である。第四工程は、不織布を、加熱凹凸ロールと非加熱平滑ロールの間を通し、複数の帯状凹部4と隣接する帯状凹部間に存在する帯状凸部5とよりなるストライプ柄を付与する工程である。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート繊維を無作為に集積して繊維ウェブを製造する第一工程、
前記繊維ウェブを、加熱凹凸ロールと加熱平滑ロール間に通し、該繊維ウェブを構成する前記ポリエチレンテレフタレート繊維相互間を部分的に圧着して、経糸に相当する第一凸部と緯糸に相当する第二凸部とよりなり該第一凸部及び該第二凸部外の部位が凹部となっている平織メッシュ織物柄を持つ繊維フリースを製造する第二工程、
前記繊維フリースの厚み方向全体に亙って樹脂結合剤を付与し、前記ポリエチレンテレフタレート繊維相互間を結合させて不織布を製造する第三工程、及び、
前記不織布を、加熱凹凸ロールと非加熱平滑ロール間に通し、該不織布を構成する前記ポリエチレンテレフタレート繊維相互間を部分的に圧着して、複数の帯状凹部と隣接する該帯状凹部間に存在する帯状凸部とよりなるストライプ柄を付与する第四工程を具備することを特徴とする日除け生地の製造方法。
【請求項2】
ストライプ柄の各帯状凹部の幅は各帯状凸部の幅よりも狭い請求項1記載の日除け生地の製造方法。
【請求項3】
ストライプ柄の各帯状凸部の区域に、平織メッシュ織物柄の凹部が存在する請求項1又は2記載の日除け生地の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日除けのために用いる日除け生地の製造方法に関し、特に建物の窓に設けるブラインドやカーテン等の日除け部分を作成する際に用いる日除け生地の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、ブラインドの日除け部分(スラット)に用いる生地として、不織布を用いることが知られている。スラットには種々の形態があり、たとえば、不織布をプリーツ加工して折り畳み式としたものや、六角柱等の角柱に成形したスラットを縦方向又は横方向に繋いだものが知られている。また、スラット表面に種々の柄を設けることも行われている。たとえば、特許文献1では、不織布表面に、複数の帯状凹部とこの帯状凹部間に形成される帯状凸部とよりなるストライプ柄を設けて、遮光の強弱を実現しうることが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開2020-196955号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、特許文献1記載の発明を改良したものであり、プリーツ加工しやすく、遮光の強弱をさらに複雑にした日除け生地を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、日除け生地に特定の平織メッシュ織物柄と特定のストライプ柄とを組み合わせて付与することにより、上記課題を解決したものである。すなわち、本発明は、ポリエチレンテレフタレート繊維を無作為に集積して繊維ウェブを製造する第一工程、前記繊維ウェブを、加熱凹凸ロールと加熱平滑ロール間に通し、該繊維ウェブを構成する前記ポリエチレンテレフタレート繊維相互間を部分的に圧着して、経糸に相当する第一凸部と緯糸に相当する第二凸部とよりなり該第一凸部及び該第二凸部外の部位が凹部となっている平織メッシュ織物柄を持つ繊維フリースを製造する第二工程、前記繊維フリースの厚み方向全体に亙って樹脂結合剤を付与し、前記ポリエチレンテレフタレート繊維相互間を結合させて不織布を製造する第三工程、及び、前記不織布を、加熱凹凸ロールと非加熱平滑ロール間に通し、該不織布を構成する前記ポリエチレンテレフタレート繊維相互間を部分的に圧着して、複数の帯状凹部と隣接する該帯状凹部間に存在する帯状凸部とよりなるストライプ柄を付与する第四工程を具備することを特徴とする日除け生地の製造方法に関するものである。
【0006】
第一工程は、ポリエチレンテレフタレート繊維を無作為に集積して繊維ウェブを製造する工程である。ポリエチレンテレフタレート繊維を用いているのは、この繊維が耐候性に優れており、日除け生地を製造するのに有利だからである。ポリエチレンテレフタレート繊維は、長繊維でも短繊維でもよいが、長繊維であるのが好ましい。長繊維の集積体の方が、日除け生地としたとき、高強度となるからである。ポリエチレンテレフタレート繊維の繊度は、2.2~5.5デシテックス程度である。繊度が2.2デシテックス未満になると、得られる日除け生地の強度が低下する傾向となる。繊度が5.5デシテックスを超えると、加熱ロールに接触しただけでは軟化しにくく、繊維相互間を圧着させにくくなる傾向が生じる。また、繊維ウェブの目付は任意であるが、一般的に25~70g/m2程度である。ポリエチレンテレフタレート繊維を無作為に集積する方法としては、長繊維の場合、溶融紡糸後に公知の方法で開繊して、移動する搬送体上に集積すればよい。また、短繊維の場合は、カード等で開繊した後、移動する搬送体上に集積すればよい。
【0007】
第二工程は、第一工程で得られた繊維ウェブを、加熱凹凸ロールと加熱平滑ロール間に通し、繊維ウェブを構成するポリエチレンテレフタレート繊維相互間を部分的に圧着して、繊維フリースを製造する工程である。凹凸ロール及び平滑ロールの表面温度及びロール間の線圧は、ポリエチレンテレフタレート繊維が軟化する程度であるのが好ましく、具体的には、表面温度が210~220℃程度で線圧が40~60kg/cm程度である。第二工程で得られる繊維フリースには、凹凸ロールにより平織メッシュ織物柄が付与されている。平織メッシュ織物柄というのは、たとえば、図1に示す如き態様のものである。すなわち、経糸に相当する第一凸部1と緯糸に相当する第凸部2とよりなり、第一凸部1及び第二凸部2外の部位が凹部3となっている柄である。第一凸部1及び第二凸部2の幅は任意であるが、一般的に0.3~1.0mm程度である。なお、第一凸部1及び第二凸部2の形状は、図1に示す長方形状のものだけでなく、角にアールを付けてもよい。また、第一凸部1の形状が経方向に細長い楕円形状となっていてもよく、第二凸部2の形状が緯方向に細長い楕円形状となっていてもよい。第一凸部1及び第二凸部2の全体に対する面積率は、40~70%程度であるのが好ましい。かかる平織メッシュ織物柄を付与されていると、経糸に相当する第一凸部1に沿って縦方向に、又は緯糸に相当する第二凸部2に沿って横方向に折り曲げやすくなる。
【0008】
第三工程は、第二工程で得られた繊維フリースの厚み方向全体に亙って樹脂結合剤を付与し、特に第一凸部1及び第二凸部2に存在するポリエチレンテレフタレート繊維相互間を樹脂結合剤で結合して、不織布を製造する工程である。樹脂結合剤としては、アクリル系結合剤、ウレタン系結合剤、NBR系結合剤又はSBR系結合剤等の公知の樹脂結合剤が用いられる。これらの結合剤の中でも、軟質で弾性に優れたアクリル系結合剤を採用するのが好ましい。得られる日除け生地から生じる摩擦音や振動音等の雑音を軽減させうるからである。繊維フリースの厚み方向全体に亙って樹脂結合剤を付与する方法としては、樹脂結合剤を分散させた分散液中に、繊維フリースを浸漬する方法が一般的である。また、分散液を、繊維フリースの表面に向けて噴霧すると共に、裏面から吸引することにより、繊維フリースの厚み方向全体に亙って樹脂結合剤を付与することもできる。さらに、分散液を、一対のロール間に滞留させておき、このロール間に繊維フリースを通すことによっても、繊維フリースの厚み方向全体に亙って樹脂結合剤を付与することもできる。なお、樹脂結合剤の付与量は任意であるが、一般的に3~10g/m2程度である。以上のようにして、繊維フリースに分散液を含浸させた後、乾燥及び/又は硬化させることにより、ポリエチレンテレフタレート繊維相互間を樹脂結合剤で結合した不織布を得る。かかる方法で得られた不織布は、柔軟性を損なうことなく、風合の良好なものである。
【0009】
第四工程は、第三工程で得られた不織布を、加熱凹凸ロールと非加熱平滑ロール間に通し、不織布を構成するポリエチレンテレフタレート繊維相互間を部分的に圧着してストライプ柄を付与して、日除け生地を製造する工程である。加熱凹凸ロールは一般的に金属製であり、非加熱平滑ロールは一般的にゴム製、繊維製又は樹脂製のものが採用される。加熱凹凸ロールの表面温度及びロール間の線圧は、ポリエチレンテレフタレート繊維が軟化する程度でよい。ストライプ柄は、平織メッシュ織物柄に比べて粗い柄となっているものが好ましく、このため、表面温度は平織メッシュ織物柄を付与する際の表面温度よりも高い温度であるのが好ましく、線圧は平織メッシュ織物柄を付与する際の線圧よりも低い線圧であるのが好ましい。具体的には、表面温度が220~250℃程度で線圧が5~20kg/cm程度である。ここで、ストライプ柄というのは、たとえば、図2に如き態様のものである。すなわち、複数の帯状凹部4,4,4と隣接する帯状凹部4,4間に存在する帯状凸部5とよりなる柄である。なお、図2では帯状凹部4が斜め45°に走行しているが、走行方向は任意であり、たとえば帯状凹部4は縦方向又は横方向に走行していてもよい。帯状凹部4の幅と帯状凸部5の幅は任意であるが、帯状凹部4の幅が帯状凸部5の幅よりも狭くなっている方が好ましい。本発明の好ましい方法で得られる日除け生地は、図3に示す如く、平織メッシュ織物柄とストライプ柄との組み合わせの柄となっているため、遮光性の低い帯状凸部5が広くても、平織メッシュ織物柄の凹部3によって、遮光性が向上する。また、図3からも分かるように、遮光の強弱が単純ではなく、複雑となるため、趣向感のある遮光を実現しうる。
【0010】
第四工程の後、所望により、任意の工程を付加することができる。たとえば、染色、捺染或いはプリント工程、紙やフィルム等の他の層を積層するラミネート工程又は表面や裏面に樹脂を塗布して樹脂層を形成するコーティング工程を付加することができる。得られた日除け生地は、所定の寸法に裁断してブラインドのスラットとして用いることができる。また、日除け生地をプリーツ加工して、折り畳み式ブラインドのスラットとして用いることもできる。さらに、日除け生地を折り曲げて六角柱等の角柱に成形し、これを縦方向又は横方向に繋いでスラットとして用いることができる。なお、本発明に係る方法で得られた日除け生地は、ブラインドのスラットだけではなく、カーテンや車用サンシェード等の所望の用途に用いることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る方法で得られた日除け生地は、特定の平織メッシュ織物柄を持つため、平織メッシュ織物柄の第一凸部及び/又は第二凸部に沿って折り曲げやすく、また、折り曲げた後の戻りも少なく、プリーツ加工や角柱の成形がしやすいという効果を奏する。また、特定の平織メッシュ織物柄と特定のストライプ柄とを組み合わせた柄となっているため、複雑な遮光となり、趣向感のあふれた遮光を実現しうるという効果も奏する。
【実施例0012】
実施例1
融点256℃のポリエチレンテレフタレートを溶融紡糸して、繊度3.0dtex(繊維径18μm)の長繊維を得ると共に、コンベア上に 長繊維を無作為に集積して、目付39g/m2の繊維ウェブを得た。この繊維ウェブを、線圧50kg/cmで表面温度215℃に加熱された凹凸ロールと平滑ロール間に通し、平織メッシュ織物柄の凹凸を付与して繊維フリースを得た。平織メッシュ織物柄の経糸及び緯糸に相当する第一凸部及び第二凸部の幅は0.6mmで、第一凸部及び第二凸部の面積率は60%であった。
この繊維フリースをアクリルエマルジョン(DIC社製、商品名「ボンコート」、ガラス転移温度2℃)に浸漬した後、マングルロールで絞り、次いで約100℃で乾燥させた後、約150℃で熱処理してアクリル系結合剤の架橋反応を促進させ、目付45g/m2の不織布を得た。
この不織布を、表面温度230℃に加熱されたスチール製加熱凹凸ロールと非加熱の樹脂ロールの間を通し、日除け生地を得た。加熱凹凸ロールの凸部はらせん状に設けられており、速度14m/秒、圧力10kg/cmで加工した。この結果、斜め45°に走行する幅約1mmの帯状凹部と幅約4mmの帯状凸部のストライプ柄が付与された。得られた日除け生地は、図4に示すとおりのものであった。
【0013】
実施例2
らせん状に凸部を設けた加熱凹凸ロールに代えて、ロール周面上に、複数の線状の凸部が軸方向に平行に設けられている加熱凹凸ロールを用いる他は、実施例1と同一の方法により、日除け生地を得た。
【0014】
実施例1及び2に係る方法で得られた日除け生地は、プリーツ加工しやすく、趣向感のあふれた遮光を実現しうるものであった。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明で用いる平織メッシュ編物柄の一例を示す模式図である。
図2】本発明で用いるストライプ柄の一例を示す模式図である。
図3】本発明で用いる平織メッシュ編物柄とストライプ柄との組み合わせの一例を示す模式図である。
図4】実施例1に係る方法で得られた日除け生地の表面写真である。
【符号の説明】
【0016】
1 平織メッシュ織物柄の第一凸部
2 平織メッシュ織物柄の第二凸部
3 第一凸部及び第二凸部外に存在する凹部
4 ストライプ柄の帯状凹部
5 ストライプ柄の帯状凸部
図1
図2
図3
図4