IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立造船株式会社の特許一覧

特開2023-140433樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法
<>
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図1
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図2
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図3
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図4
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図5
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図6
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図7
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図8
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図9
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図10
  • 特開-樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140433
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 48/25 20190101AFI20230928BHJP
   B29C 48/08 20190101ALI20230928BHJP
   B29C 48/88 20190101ALI20230928BHJP
   B29C 48/305 20190101ALI20230928BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20230928BHJP
【FI】
B29C48/25
B29C48/08
B29C48/88
B29C48/305
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046266
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 修司
(72)【発明者】
【氏名】鈴川 正紘
(72)【発明者】
【氏名】李 侑達
(72)【発明者】
【氏名】衛藤 将
(72)【発明者】
【氏名】砂後 隆太
【テーマコード(参考)】
4F207
【Fターム(参考)】
4F207AG01
4F207AJ08
4F207AM21
4F207KK64
4F207KL84
4F207KM30
(57)【要約】
【課題】樹脂シートの押出成形装置の立上げを簡単かつ安全に行えるようにする。
【解決手段】押出装置11のダイ19から溶融樹脂をシート状に押し出す。押し出された樹脂シート12を、成形装置14におけるロール式のシート成形機23に通して、シート状の製品を成形する。その際に、ロール式のシート成形機23に、このロール式のシート成形機23における成形ロール28の回転によって送りが付与されるリードフィルム34をあらかじめセットしておき、シート成形機23へ案内された樹脂シート12をリードフィルム34に付着させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出装置のダイから溶融樹脂をシート状に押し出し、押し出された樹脂シートを成形装置におけるロール式のシート成形機に通してシート状の製品を成形するに際し、
前記ロール式のシート成形機に、このロール式のシート成形機における成形ロールの回転によって送りが付与されるリードフィルムをあらかじめセットしておき、前記シート成形機へ案内された樹脂シートを前記リードフィルムに付着させることを特徴とする樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法。
【請求項2】
ダイから押し出された通紙に適さない樹脂シートをシート受け装置によって受け取り、
前記シート受け装置に受け取られた樹脂シートを切断除去し、かつ樹脂シートにおける切断後に残った部分をシート成形機へ案内することを特徴とする請求項1記載の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法。
【請求項3】
樹脂シートを受け取っているシート受け装置を降下させることによって、ダイから下向きに押し出されている樹脂シートを下向きに延伸させて薄くなるように加工することを特徴とする請求項2記載の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法。
【請求項4】
樹脂シートを押し出しているダイをシート受け装置の上部からロール式のシート成形機の上部に相対移動させることによって樹脂シートを切断装置に接触させて切断することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項記載の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法。
【請求項5】
成形装置に設けられたカバーによって、樹脂シートにおける切断除去された部分が成形装置の成形ロールに付着しないようにすることを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項記載の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法。
【請求項6】
ロール式のシート成形機におけるシートの送り方向に沿って補強が施されたリードフィルムを用いることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項記載の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法。
【請求項7】
溶融樹脂をシート状に押し出すダイを備えた押出装置と、
押し出された樹脂シートをシート状の製品に成形するロール式のシート成形機とを有し、
ロール式のシート成形機は、このシート成形機における成形ロールの回転によって送りが付与されるリードフィルムであって、このロール式のシート成形機へ受け入れられた、樹脂シートを付着させるための前記リードフィルムを、あらかじめセットさせることができるものであることを特徴とするシート状の樹脂製品の製造装置。
【請求項8】
ダイから押し出された通紙に適さない樹脂シートを受け取るシート受け装置と、
前記シート受け装置に受け取られた樹脂シートを切断除去する切断装置とを有し、
前記ダイは、前記シート受け装置の上部から前記ロール式のシート成形機の上部へ相対移動可能に構成され、
前記ロール式のシート成形機は、樹脂シートにおける通紙に適さない部分が前記切断装置により切断除去された後に残った部分を受け入れるものであることを特徴とする請求項7記載のシート状の樹脂製品の製造装置。
【請求項9】
シート受け装置は、樹脂シートを受け取っている間に降下することによって、ダイから下向きに押し出されている樹脂シートを下向きに延伸させて薄くなるように加工するものであることを特徴とする請求項8記載のシート状の樹脂製品の製造装置。
【請求項10】
切断装置は、ダイがシート受け装置の上部からロール式のシート成形機の上部に相対移動する間に、押し出された樹脂シートが接触する位置に配置されていることを特徴とする請求項8または9記載のシート状の樹脂製品の製造装置。
【請求項11】
成形装置は、樹脂シートにおける切断除去された部分が成形装置の成形ロールに付着しないようにするためのカバーを有することを特徴とする請求項7から10までのいずれか1項記載のシート状の樹脂製品の製造装置。
【請求項12】
ロール式のシート成形機は、このシート成形機におけるシートの送り方向の補強が施されたリードフィルムをあらかじめセットさせることができるものであることを特徴とする請求項7から11までのいずれか1項記載のシート状の樹脂製品の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
押出装置のダイから溶融樹脂をシート状に押し出し、押し出された樹脂シートを成形装置におけるロール式のシート成形機に通してシート状の製品を成形するための装置および方法が、たとえば特許文献1に記載されている。
【0003】
このような装置および方法において、装置の運転開始直後には、安定した性状の樹脂シートをダイから押し出すことが困難である。このため、樹脂シートの性状が安定するまでのしばらくの間に押し出された樹脂シートは、製品としての所要の品質を有さず、これを用いて製品化することはできない。したがって、その部分の樹脂シートは、工程から除外することが必要である。
【0004】
このため、公知の製造プロセスにおいては、装置の運転開始直後は、ダイから押し出された樹脂シートは、成形装置に供給せずに適当な受け台にて受け止めている。そして、樹脂シートの性状が安定した後に、作業者が人手で樹脂シートを切り取るとともに、受け台をダイからの樹脂シートの受け位置以外の位置に移動させている。さらに、受け台を移動させた後の位置に成形装置を移動させたうえで、性状が安定していない部分が切り取りによって取り除かれた樹脂シートを、人手によって成形装置における複数のロールに沿って通紙していく作業を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11-115034号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ダイから押し出されたばかりの樹脂シートは、その温度が70~450℃と高温であり、これを人手によって切るのは困難である。また、性状が安定していない状態の樹脂シートを切断した後において、ダイから新たに押し出されてくる溶融状態の樹脂シートの取り扱いには相応の技量を必要とする。さらに、成形装置をダイの近傍へ移動させたうえで成形装置の運転を開始し、そして成形装置に樹脂シートを送り込むためには、複数の作業者による作業が不可欠であり、しかもそのような作業は危険を伴うことも多い。かつ、そのような作業の際においては、ダイが樹脂を吐出すなわち押出し続けているため、バランス崩れなどの問題が発生しても、途中で装置を停止させることができない。
【0007】
そこで本発明は、このような問題点を解決して、樹脂シートの押出成形装置の立上げを簡単かつ安全に行えるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法は、
押出装置のダイから溶融樹脂をシート状に押し出し、押し出された樹脂シートを成形装置におけるロール式のシート成形機に通してシート状の製品を成形するに際し、
前記ロール式のシート成形機に、このロール式のシート成形機における成形ロールの回転によって送りが付与されるリードフィルムをあらかじめセットしておき、前記シート成形機へ案内された樹脂シートを前記リードフィルムに付着させることを特徴とする。
【0009】
本発明の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法によれば、
ダイから押し出された通紙に適さない樹脂シートをシート受け装置によって受け取り、
前記シート受け装置に受け取られた樹脂シートを切断除去し、かつ樹脂シートにおける切断後に残った部分をシート成形機へ案内することが好適である。
【0010】
本発明の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法によれば、樹脂シートを受け取っているシート受け装置を降下させることによって、ダイから下向きに押し出されている樹脂シートを下向きに延伸させて薄くなるように加工することが好適である。
【0011】
本発明の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法によれば、樹脂シートを押し出しているダイをシート受け装置の上部からロール式のシート成形機の上部に相対移動させることによって樹脂シートを切断装置に接触させて切断することが好適である。
【0012】
本発明の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法によれば、成形装置に設けられたカバーによって、樹脂シートにおける切断除去された部分が成形装置の成形ロールに付着しないようにすることが好適である。
【0013】
本発明の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法によれば、リードフィルムとして、ロール式のシート成形機におけるシートの送り方向の補強が施されたものを用いることが好適である。
【0014】
本発明のシート状の樹脂製品の製造装置は、
溶融樹脂をシート状に押し出すダイを備えた押出装置と、
押し出された樹脂シートをシート状の製品に成形するロール式のシート成形機とを有し、
ロール式のシート成形機は、このシート成形機における成形ロールの回転によって送りが付与されるリードフィルムであって、このロール式のシート成形機へ受け入れられた、樹脂シートを付着させるための前記リードフィルムを、あらかじめセットさせることができるものであることを特徴とする。
【0015】
本発明のシート状の樹脂製品の製造装置によれば、
ダイから押し出された通紙に適さない樹脂シートを受け取るシート受け装置と、
前記シート受け装置に受け取られた樹脂シートを切断除去する切断装置とを有し、
前記ダイは、前記シート受け装置の上部から前記ロール式のシート成形機の上部へ相対移動可能に構成され、
前記ロール式のシート成形機は、樹脂シートにおける通紙に適さない部分が前記切断装置により切断除去された後に残った部分を受け入れるものであることが好適である。
【0016】
本発明のシート状の樹脂製品の製造装置によれば、シート受け装置は、樹脂シートを受け取っている間に降下することによって、ダイから下向きに押し出されている樹脂シートを下向きに延伸させて薄くなるように加工するものであることが好適である。
【0017】
本発明のシート状の樹脂製品の製造装置によれば、切断装置は、ダイがシート受け装置の上部からロール式のシート成形機の上部に相対移動する間に、押し出された樹脂シートが接触する位置に配置されていることが好適である。
【0018】
本発明のシート状の樹脂製品の製造装置によれば、成形装置は、樹脂シートにおける切断除去された部分が成形装置の成形ロールに付着しないようにするためのカバーを有することが好適である。
【0019】
本発明のシート状の樹脂製品の製造装置によれば、ロール式のシート成形機は、このシート成形機におけるシートの送り方向の補強が施されたリードフィルムをあらかじめセットさせることができるものであることが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によると、人手を要することなく簡単に、またそのため安全に、樹脂シートの押出成形工程の立上げを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法を説明するための、本発明の実施の形態のシート状の樹脂製品の製造装置の正面図である。
図2図1の次の工程を示す図である。
図3図2の次の工程を示す図である。
図4図3の次の工程を示す図である。
図5図1の要部に対応した立体構造を示す透視図である。
図6図5の次の工程を示す図である。
図7図6の次の工程を示す図である。
図8図7の次の工程を示す図である。
図9図8の次の工程を示す図である。
図10】本発明の実施の形態のシート状の樹脂製品の製造装置の全体構造を示す立体図である。
図11】本発明の実施の形態のシート状の樹脂製品の製造装置の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図10および図4に示すシート状の樹脂製品の製造装置は、樹脂を溶融混練したうえでシート状に押し出す押出装置11と、押出装置11から押し出された樹脂シート12をロール式のシート成形機23に通してシート状の製品を成形する成形装置14と、図10のみに示すところの、得られたシート状の製品をロール状に巻き取る巻取装置15とを備える。巻取装置15に代えて、シートを枚葉に切断する切断機を設けることもできる。ここにいう樹脂シート12は、可撓性があるものであればシート状のものに限られず、フィルム状またそれらが積層されたもの等を含む。
【0023】
押出装置11は、成形用の樹脂を溶融混練する押出機17と、押出機17から押し出された溶融樹脂を下流側へ移送するためのギヤポンプなどの移送装置18と、移送装置18からの溶融樹脂を下向きにシート状に押し出すダイ19とを有する。押出機17には、溶融混練した樹脂からの脱ガスを行って樹脂を脱気するための、図4に示す真空ポンプ20が設けられている。なお、脱気を必要としない場合は、真空ポンプ20が設けられない構成とすることも可能である。
【0024】
成形装置14は、図10に示される樹脂シート12が成形工程において移送される方向と同方向の水平方向21に往復移動できるように構成されている。そして、この移動式の成形装置14は、ダイ19から押し出された樹脂シート12を成形してシート状の製品を得るための上述のロール式のシート成形機23と、ダイ19からの樹脂の押し出し開始直後のまだ性状が安定しない樹脂シート12を受け取るためのシート受け装置24と、ダイ19から押し出されている性状が安定した樹脂シート12に作用して、樹脂シート12における性状が安定していなかった部分を切断除去する切断装置25と、切断装置25の近傍に設けられたカバー26とを備える。
【0025】
成形装置14の詳細構造を、図4図5とを参照しながら説明する。移動式の成形装置14は、移動台車27の構成となっており、この移動台車27に、シート成形機23と、シート受け装置24と、切断装置25と、カバー26とが載せられている。すなわち、シート成形機23と、シート受け装置24と、切断装置25と、カバー26とは、一体に往復移動可能である。
【0026】
シート成形機23は、樹脂シートが巻き掛けられる複数の成形ロール28を有して、ダイ19から押し出された樹脂シート12をシート状の製品に成形加工するものである。添付の図では、第1の成形ロール28aと、第2の成形ロール28bと、第3の成形ロール28cとが、この順に並んで設置された構成を例示している。なお、成形ロールの数は、成形されるシートの仕様などに応じて任意に設定することができる。たとえば成形ロールを1本だけ有した構成とすることもできる。
【0027】
シート受け装置24は、ダイ19からの樹脂シート12における、押し出し開始直後のまだ性状が安定しない部分37を受け取るための受け台29を備える。受け台29は、樹脂シート12を受け止めることができるものであれば、任意の構成とすることができる。特に、樹脂シート12が受け台29から側方へ落下することを防止するために、落下防止用のフェンスすなわち衝立状の構造物を受け台29の周縁に備えていることが好適である。受け台29は、図4に示される昇降装置30によって上下に昇降されるように構成されている。
【0028】
切断装置25とカバー26とについて詳しく説明する。成形装置14の移動台車27には、図5に示すように上下方向の支持アーム32が設けられている。そして単数または複数の支持アーム32によって、板状のカバー26が支持されている。このカバー26は、受け台29と第1の成形ロール28aとの間に設けられて、第1の成形ロール28aを覆うことで、ダイ19から押し出された樹脂シート12、特に樹脂シート12におけるまだ性状が安定しない部分37が成形ロール28、特に第1の成形ロール28aに付着することを防止するために設けられている。
【0029】
カバー26は、シート受け装置24の受け台29に向けて斜め下向きに傾斜した状態で設置されている。これにより、上側からの樹脂シート12における、特に切断除去されたまだ性状が安定しない部分37を、カバー26によって受け止めたうえで、受け台29に向けて滑り落すことができるように構成されている。カバー26の表面は、良好な滑り落としを行うことができるように、樹脂シート12との接触面積を小さくすることのできる凹凸を備えていることが好ましい。すなわち、カバー26は、いわゆる縞鋼板などと同様の表面構造を備えていることが好ましく、その場合に、本発明においては、一般的な縞鋼板のような滑り止め効果とは反対の、上述した接触面積の減少にもとづく滑り性の向上効果を発揮させることになる。そのほかに、カバー26に、滑り性を向上させ耐熱性がある適宜の手段を付与することができる。たとえば、フッ素コーティング、セラミックコーティングなどを行うことが好適である。
【0030】
切断装置25は、上述のように、ダイ19から押し出されている樹脂シート12における性状が安定していない部分37を切断除去するためのものである。そして、切断装置25は、この目的を達成することができるものであれば、任意の構成を採用することが可能である。図示された切断装置25は、図5に詳しく示すように、カバー26から少し浮かせて設置された直線状のシーズヒータにて構成され、樹脂シート12を加熱することによって、この樹脂シート12を、その幅方向に溶断することができるものとされている。この場合は、樹脂シート12を溶断により切断することで、高温で柔軟な樹脂シート12に機械的な力を作用させずに、容易に切断を行うことができる。その際に、樹脂シート12は昇降装置30により受け台29が降下されることにもとづく下向きの延伸により薄くなるように加工されているため、樹脂シート12が元の厚い場合に比べて、その切断すなわち溶断をいっそう容易に行うことができる。
【0031】
図1および図5に示すように、シート成形機23には、樹脂シートの押出成形工程の立上げのために、リードフィルム34があらかじめセットされる。リードフィルム34は、ダイ19から押し出された高温の樹脂シート12を付着させてシート成形機23へ案内させるためのものである。このためリードフィルム34は、樹脂シート12を構成する樹脂と同じ樹脂あるいは樹脂シート12を構成する樹脂と相溶性を有する樹脂にて構成されていることが好適である。
【0032】
図5に示すように、リードフィルム34には、このリードフィルム34を補強するための補強材35が添えられている。補強材35は、シート成形機23における樹脂シート12の送り方向にリードフィルム34を補強するためのもので、たとえばリードフィルム34に対してこのリードフィルム34の長さ方向に貼り付けられた耐熱テープや難燃性の布などによって構成することができる。その耐熱性としては、樹脂シート12を構成する樹脂の融点の温度では溶融あるいは軟化しないことが条件である。すなわち、樹脂シート12を構成する樹脂よりも高融点あるいは高軟化点の樹脂にて構成されていることが必要である。図示の例では、リードフィルム34の幅方向に沿って、3条のテープ状の補強材35が、互いに間隔をあけた状態で、リードフィルム34に貼り付けられている。
【0033】
リードフィルム34を樹脂シート12の送り方向に補強する手段は、上記以外の構成であっても良い。たとえば樹脂シート12の送り方向に沿うリードフィルム34の両辺部が厚く成形されていても良いし、リードフィルム34の両辺部が二重になるよう折り曲げられたものであっても良い。
【0034】
次に、樹脂シート12のための押出成形装置の立上げ方法について詳しく説明する。まず、図1および図5に示すように、補強材35にて補強されたリードフィルム34をシート成形機23にセットする。詳細には、図1に示されるロール36からリードフィルム34を所定の長さだけ引き出し、シート成形機23における成形ロール28において、このシート成形機23に供給されて成形される樹脂シート12と同じ経路に沿って巻き掛ける。
【0035】
なお、リードフィルム34は、シート成形機23へ案内されるようにセットされていれば、その案内のための構成は任意で良い。たとえば、リードフィルム34の下流側に、このリードフィルム34を牽引する紐状の牽引部材が接続されていても良い。この場合、成形ロール28には、紐状の牽引部材が巻き掛けられる。リードフィルム34は、樹脂シート12が成形ロール28に供給されるタイミングで、樹脂シート12が供給される位置に到達するようにされていれば良い。
【0036】
そして、押出装置11の運転を開始して、ダイ19からの溶融状態の樹脂シート12の下向きの押し出しを始める。このとき、成形装置14を移動させて、図1および図5に示すように、シート受け装置24の受け台29をダイ19の直下に位置させておく。すると、ダイ19から下向きに押し出された樹脂シート12における、押し出し開始直後のまだ性状が安定しない部分37、すなわちシート成形機23への通紙に適しない部分が、受け台29によって受け止められる。
【0037】
ここで、通紙に適した状態とは、ダイ19の幅方向にわたる全域から溶融樹脂が吐出している状態をいう。通紙に適さない状態とは、ダイ19の幅方向における一部からしか樹脂が出てきていない状態、または著しく空気や水分を含んだ状態でダイから樹脂が吐出しており、シートに無数の穴が空いたような状態などをいう。
【0038】
次に、成形装置14の移動台車27を、カバー26が樹脂シート12に接近する方向へ移動させる。すると、図6に示すように、それまでダイ19からシート受け装置24の受け台29へ直接降下していた樹脂シート12が、図示のように、カバー26によっていったん受け止められる。
【0039】
このとき、移動台車27によって成形装置14をさらに移動させる。同時に、昇降装置30によって受け台29を降下させる。すると、ダイ19から押し出されている樹脂シート12が下向きに引っ張られて延伸され、その厚さが薄くなる。この状態で、図2および図7に示すように、シーズヒータにて構成された高温の切断装置25が樹脂シート12に接触して、この樹脂シート12を幅方向にわたって溶断する。これにより、樹脂シート12における押し出し開始直後のまだ性状が安定しない部分37は、下向きに傾斜したカバー26により案内されて、その全体がシート受け装置24の受け台29に向かってカバー26を滑り落ちるように落下され、この受け台29によって受け止められる。このとき、カバー26が設けられているために、性状が安定しない部分37が成形ロール28に接触してシート成形機23に入り込んでしまうことが、効果的に防止される。これにより、ダイ19の直下には、樹脂シート12における性状が安定した部分だけが残る。
【0040】
なお、受け台29の降下動作のタイミングは適宜変更されてよく、成形装置14の移動前に降下しても良いし、移動後に降下しても良い。また、たとえば、樹脂の材質や性状が切断されやすい場合は、受け台29を降下させなくとも樹脂シート12を切断できる。
【0041】
上述の残った樹脂シートは、図8に示すように、成形装置14がさらに移動することによって、カバー26から離れ、第1の成形ロール28aに巻き掛けられていたリードフィルム34に付着して一体化する。このとき、シート成形機23の運転を開始して成形ロール28を回転駆動させておくと、これらの一体化したリードフィルム34と樹脂シート12とは、図3および図9に示すように、ともにシート成形機23の第1の成形ロール28aと第2の成形ロール28bとの間に供給される。
【0042】
なお、樹脂の材質にも依るが、押出開始直後に通紙に適した状態で樹脂シート12を成形できる場合は、上記の手法に代えて、ロール式のシート成形機23にセットされたリードフィルム34に押出開始直後の樹脂シート12を直接供給することができる。
【0043】
そして、成形装置14の移動を停止させたうえで、ロール36の近傍において適宜の手段によりリードフィルムを切断すると、その後は、ダイ19から供給される樹脂シート12だけがシート成形機23に送り込まれて、シート状の製品が連続的に成形される。成形されたシート状の製品は、巻取装置15によってロール状に巻き取られる。なお、リードフィルム34は、切断せず、所定長さだけ準備しておき流しきるようにしてもよい。上述のように、樹脂シート12は、可撓性があるものであればシート状のものに限られず、フィルム状またそれらが積層されたもの等を含む。
このようにすると、装置を運転するだけで、多数の人手を要することなしに、樹脂シートの押出成形装置を良好かつ安全に立ち上げることができる。
【0044】
上述した各装置は、本発明の樹脂シートの押出成形装置の立上げ方法を実施できるものであれば、別の構成であっても差し支えないし、本発明のシート状の樹脂製品の製造装置に含まれるものであれば、上記した具体的な構成以外の適宜の構成であっても差支えない。
【0045】
図11は、シート成形機23の変形例を示す。この図11に示されたシート成形機23は、上述した第1の成形ロール28aに代えて、エアナイフ39およびガイドロール40を有する。ガイドロール40によってリードフィルム34を所定の経路で搬送し、リードフィルム34がダイ19からの樹脂シート12を受け止めるようにすることで、樹脂シート12がシート成形機23における不要な個所に付着することを防止できる。その後、エアナイフ39によって樹脂シート12が第2成形ロール28bに押付けられて成形される。この場合には、樹脂シート12がシート成形機23における不要な個所に付着することを確実に防止するために、図示のようにリードフィルム34を案内するガイドロール40をエアナイフ39よりも上方に設置することが好ましい。
【0046】
さらに、上記したエアナイフと同等の機能を発揮する装置として、エアチャンバやピーニング等の装置を設置することもできる。あるいは、場合によっては、これらの装置を使用せず、かつ第1成形ロール28aも設置しない構成とすることも可能である。その場合は、上記と同様のガイドロール等を用いて、シート成形機23に設置されている機器に溶融樹脂すなわち樹脂シート12が触れないようにして、リードフィルム34を通すようにすることが好ましい。
【0047】
また、他の構成として、樹脂シート12を切断する切断装置は、上述のようにロール式のシート成形機23に設置されていてもよいし、あるいは、これに代えてシート成形機23とは別に単独で移動するように構成されていてもよい。あるいは、切断装置が移動することなく、ダイ19が移動するように構成されていてもよい。切断装置は、樹脂シート12が押し出される方向と略直交する方向に、シート幅全幅に渡って配置されているのが好ましい。
【0048】
切断装置25の変形例として、たとえばカバー26の上部に、樹脂シート12の幅方向に渡って接近した際に樹脂シート12に接触する切断刃が設けられていても良い。切断刃としては鋭利なものでなくても良く、樹脂シートの幅方向に渡ってカバー端部が折り曲げられるような構造のものでも良い。また、ダイ19の直下で切断刃が樹脂シートの幅方向にスライドするような機構を設けても良い。
【0049】
また、上記においては成形装置14が移動台車27の構成となっていてシート受け装置24が成形装置14とともに水平方向に移動できる構成について説明したが、これに限られるものではない。たとえば、フロアにピットを掘ってそこにシート受け装置を設置し、樹脂切断時、シート受け装置をシート成形機23より下面に隠れる形で降下・収納してしまえば、シート受け装置の横移動は不要である。
【0050】
ロール式のシート成形機23とダイ19とは相対移動可能であればよく、少なくとも何れか一方が移動可能となっていればよい。シート受け装置24は、他の装置に干渉しない位置に配置されればよく、移動してもしなくてもよい。
【0051】
樹脂の材質にも依るが、押出開始直後に通紙に適した状態で樹脂シート12を成形できる場合は、この樹脂シート12をロール式のシート成形機23にセットされたリードフィルム34に直接供給することができる。
【符号の説明】
【0052】
11 押出装置
12 樹脂シート
14 成形装置
19 ダイ
23 シート成形機
24 シート受け装置
25 切断装置
26 カバー
27 移動台車
28 成形ロール
29 受け台
30 昇降装置
34 リードフィルム
35 補強材
37 性状が安定しない部分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11