(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140467
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】レーザ溶接方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/21 20140101AFI20230928BHJP
【FI】
B23K26/21 A
B23K26/21 W
B23K26/21 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046319
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004026
【氏名又は名称】弁理士法人iX
(72)【発明者】
【氏名】増田 梨沙
(72)【発明者】
【氏名】外川 隆一
(72)【発明者】
【氏名】小原 隆
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168BA30
4E168BA57
4E168BA87
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA04
4E168DA42
4E168DA46
4E168DA47
(57)【要約】
【課題】接合不良を抑制できるレーザ溶接方法を提供する。
【解決手段】実施形態に係るレーザ溶接方法は、レーザ光を照射することで第1部材に第2部材を溶接する方法である。実施形態に係るレーザ溶接方法は、準備工程と、溶接工程と、を備える。前記準備工程では、前記第1部材に前記第2部材が仮溶接され、複数の接続部を有した仮溶接部材を準備する。前記溶接工程では、前記仮溶接部材に対してレーザ光を照射することで、前記第1部材に対して前記第2部材を溶接する。前記溶接工程では、第1工程を行い、その後に、第2工程を行う。前記第1工程では、前記複数の接続部のうちの1つである第1接続部と、前記第1接続部に隣り合う第2接続部と、の間の所定位置から前記第2接続部までレーザ光を照射する。前記第2工程では、前記第1接続部から前記所定位置までレーザ光を照射する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を照射することで第1部材に第2部材を溶接する方法であって、
前記第1部材に前記第2部材が仮溶接され、複数の接続部を有した仮溶接部材を準備する準備工程と、
前記仮溶接部材に対してレーザ光を照射することで、前記第1部材に対して前記第2部材を溶接する溶接工程と、
を備え、
前記溶接工程において、
前記複数の接続部のうちの1つである第1接続部と、前記第1接続部に隣り合う第2接続部と、の間の所定位置から前記第2接続部までレーザ光を照射する第1工程を行い、
前記第1工程の後に、前記第1接続部から前記所定位置までレーザ光を照射する第2工程を行う、レーザ溶接方法。
【請求項2】
前記所定位置は、前記第1接続部と前記第2接続部との中間に位置する第1中間地点から、前記第1中間地点と前記第2接続部との中間に位置する第2中間地点まで、の間に位置する、請求項1記載のレーザ溶接方法。
【請求項3】
前記準備工程において、前記第1部材に前記第2部材を重ねた状態で、前記第2部材の複数の箇所にレーザ光を照射することにより、前記複数の箇所において前記第2部材を溶融させて前記複数の接続部を形成した前記仮溶接部材を準備する、請求項1または2に記載のレーザ溶接方法。
【請求項4】
前記溶接工程の後に行われ、レーザ光を照射することで、前記溶接工程において溶接された部分の表面を平坦化する平坦化工程をさらに備えた、請求項1~3のいずれか1つに記載のレーザ溶接方法。
【請求項5】
前記第1部材は、開口部を有する筐体であり、
前記第2部材は、前記開口部を塞ぐ蓋であり、
前記筐体及び前記蓋は、前記開口部と前記蓋とが重なる位置で溶接される、請求項1~4のいずれか1つに記載のレーザ溶接方法。
【請求項6】
前記準備工程において、前記開口部の全周に前記複数の接続部を介して前記蓋が仮溶接された仮溶接部材を準備し、
前記溶接工程において、前記開口部の全周に設けられたすべての前記複数の接続部の間において、前記第1工程及び前記第2工程を繰り返すことで、前記開口部の全周に前記蓋を溶接する、請求項5記載のレーザ溶接方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、レーザ溶接方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザ光を照射することで複数の部材を溶接するレーザ溶接方法がある。レーザ溶接方法では、例えば、部材の溶接部分の一部を溶接して接続部を形成する仮溶接を行った後、溶接部分の全体を溶接する本溶接を行って、複数の部材を接合する。本溶接では、例えば、溶接部分の一端側から他端側まで連続的にレーザ光を照射して、溶接部分の全体を溶接する。
【0003】
このようなレーザ溶接方法において、仮溶接後の複数の部材の間に隙間が生じる場合がある。このような隙間がある状態で、本溶接において、一端側の接続部から他端側の接続部に向かって連続的にレーザ光を照射すると、他端側の接続部の周辺において隙間に起因する部材のたわみが大きくなり、接合不良が発生する場合がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、接合不良を抑制できるレーザ溶接方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るレーザ溶接方法は、レーザ光を照射することで第1部材に第2部材を溶接する方法である。実施形態に係るレーザ溶接方法は、準備工程と、溶接工程と、を備える。前記準備工程では、前記第1部材に前記第2部材が仮溶接され、複数の接続部を有した仮溶接部材を準備する。前記溶接工程では、前記仮溶接部材に対してレーザ光を照射することで、前記第1部材に対して前記第2部材を溶接する。前記溶接工程では、第1工程を行い、その後に、第2工程を行う。前記第1工程では、前記複数の接続部のうちの1つである第1接続部と、前記第1接続部に隣り合う第2接続部と、の間の所定位置から前記第2接続部までレーザ光を照射する。前記第2工程では、前記第1接続部から前記所定位置までレーザ光を照射する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1(a)及び
図1(b)は、実施形態に係るレーザ溶接方法を表す斜視図である。
【
図2】
図2(a)及び
図2(b)は、実施形態に係るレーザ溶接方法を表す斜視図である。
【
図3】実施形態に係るレーザ溶接方法における溶接部分を表す平面図である。
【
図4】実施形態に係るレーザ溶接方法の溶接工程を表す平面図である。
【
図5】
図5(a)及び
図5(b)は、実施形態に係るレーザ溶接方法の溶接工程を表す断面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係るレーザ溶接方法の溶接工程を表す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、本発明の各実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚さと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1(a)及び
図1(b)は、実施形態に係るレーザ溶接方法を表す斜視図である。
図2(a)及び
図2(b)は、実施形態に係るレーザ溶接方法を表す斜視図である。
図3は、実施形態に係るレーザ溶接方法における溶接部分を表す平面図である。
図1(a)、
図1(b)、
図2(a)、及び
図2(b)に表したように、実施形態に係るレーザ溶接方法は、準備工程と、溶接工程と、平坦化工程と、を含む。
【0010】
実施形態に係るレーザ溶接方法では、まず、準備工程を行う。準備工程では、まず、
図1(a)に表したように、溶接の対象となる第1部材10及び第2部材20を準備する。
【0011】
第1部材10及び第2部材20は、例えば、アルミニウム、マグネシウム、及び銅の少なくともいずれかを含む。第2部材20の材料は、第1部材10の材料と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0012】
第1部材10は、例えば、開口部16を有する筐体である。第1部材10は、例えば、上方が開放された略矩形の箱状の構造を有する。第1部材10は、例えば、第1側面部11、第2側面部12、第3側面部13、第4側面部14、及び底面部15を有する。底面部15は、第1部材10の底部に位置する。第1側面部11、第2側面部12、第3側面部13、及び第4側面部14は、それぞれ、底面部15から上方に立ち上がる立面部である。第1側面部11と第3側面部13とは、互いに対向する。第2側面部12と第4側面部14とは、互いに対向する。第1部材10は、例えば、第1側面部11の上端、第2側面部12の上端、第3側面部13の上端、及び第4側面部14の上端により形成された開口部16を有する。
【0013】
第2部材20は、例えば、第1部材10の開口部16を塞ぐ蓋である。第2部材20は、例えば、平板状の構造を有する。
図3に表したように、第2部材20は、溶接部分25を有する。
図3では、溶接部分25を網掛けで示している。溶接部分25は、溶接工程において、第1部材10と溶接(接合)される部分である。溶接部分25は、例えば、溶接工程において、レーザ光220が照射される部分である。溶接部分25は、第2部材20のうち、第1部材10と重なる部分に設けられる。この例では、溶接部分25は、開口部16と第2部材20(蓋)とが重なる位置に設けられている。
【0014】
なお、ここでは、第1部材10が筐体であり、第2部材20が蓋である場合を例に挙げて説明するが、第1部材10及び第2部材20の形状は、これらに限定されない。第1部材10及び第2部材20の形状は、レーザ照射により溶接可能な形状であればよい。第1部材10及び第2部材20は、例えば、いずれも平板状であってもよい。
【0015】
準備工程では、次に、
図1(b)に表したように、第1部材10に第2部材20が仮溶接された仮溶接部材50を準備する。仮溶接部材50は、溶接部分25に沿って設けられた複数の接続部30を介して第1部材10に第2部材20が溶接された構造を有する。つまり、仮溶接部材50において、第1部材10と第2部材20とは、複数の接続部30を介して溶接(接合)されている。
【0016】
ここでいう「仮溶接」とは、後述の溶接工程における溶接(本溶接)の前に行われる溶接であることを示している。仮溶接では、例えば、第1部材10に第2部材20を重ねた状態で、溶接部分25に沿って第2部材20の複数の箇所にレーザ光210を照射することにより、レーザ光210を照射された複数の箇所において第2部材20を溶融させて複数の接続部30を形成する。
【0017】
第1部材10が開口部16を有する筐体であり、第2部材20が蓋の場合には、例えば、準備工程において、第1部材10(筐体)の開口部16の全周に複数の接続部30を介して第2部材20(蓋)が仮溶接された仮溶接部材を準備することが好ましい。この場合、例えば、準備工程において、第1部材10(筐体)の開口部16の全周に等間隔にレーザ光210を照射することで、第1部材10(筐体)の開口部16の全周に等間隔に接続部30を設けることができる。なお、複数の接続部30の間の間隔は、等間隔でなくてもよい。
【0018】
準備工程の仮溶接に使用されるレーザ光210を照射するレーザ装置は、例えば、パルス状の出力を一定の繰り返し周波数(パルス幅)で発振するパルスレーザであってもよいし、一定の出力を連続して発振するCW(Continuous Wave)レーザであってもよい。パルスレーザの場合、パルス幅は、例えば、数フェムト秒、数ピコ秒または数ミリ秒である。レーザ光210の波長は、例えば、300nm以上5000nm以下である。
【0019】
実施形態に係るレーザ溶接方法では、次に、溶接工程を行う。溶接工程は、準備工程の後に行われる。溶接工程では、
図2(a)に表したように、仮溶接部材50に対して溶接部分25に沿ってレーザ光220を照射することで、第1部材10に対して第2部材20を溶接する。これにより、例えば、
図2(b)に表したように、第2部材20(蓋)により第1部材10(筐体)の開口部16が密閉された密閉部材100が製造される。溶接工程については、後述する。
【0020】
溶接工程に使用されるレーザ光220を照射するレーザ装置は、例えば、パルスレーザであってもよいし、CWレーザであってもよい。パルスレーザの場合、パルス幅は、例えば、数フェムト秒または数ピコ秒である。レーザ光220の波長は、例えば、300nm以上1070nm以下である。溶接工程に使用されるレーザ光220は、準備工程の仮溶接に使用されるレーザ光210と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0021】
実施形態に係るレーザ溶接方法では、次に、平坦化工程を行う。平坦化工程は、溶接工程の後に行われる。平坦化工程では、
図2(b)に表したように、密閉部材100の溶接部分25に沿ってレーザ光230を照射することで、溶接工程後の溶接部分25の表面を平坦化する。平坦化工程は、必要に応じて行われ、省略可能である。
【0022】
平坦化工程に使用されるレーザ光230を照射するレーザ装置は、例えば、パルスレーザであってもよいし、CWレーザであってもよい。パルスレーザの場合、パルス幅は、例えば、数フェムト秒または数ピコ秒である。レーザ光230の波長は、例えば、300nm以上1070nm以下である。平坦化工程に使用されるレーザ光230は、準備工程の仮溶接に使用されるレーザ光210と同じであってもよいし、異なっていてもよい。平坦化工程に使用されるレーザ光230は、溶接工程に使用されるレーザ光220と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0023】
以下、溶接工程について、さらに詳しく説明する。
図4は、実施形態に係るレーザ溶接方法の溶接工程を表す平面図である。
図4は、
図3に示した領域R1の拡大図である。
図4に表したように、溶接工程では、隣り合う2つの接続部30の間を、第1工程と第2工程との2回に分けて溶接する。
図4では、白抜き矢印PR1、PR3が第1工程を示しており、白抜き矢印PR2、PR4が第2工程を示している。
【0024】
複数の接続部30のうち、互いに隣り合う2つを、それぞれ、第1接続部31及び第2接続部32とする。第1接続部31aと第2接続部32aとは、互いに隣り合う。第1接続部31bと第2接続部32bとは、互いに隣り合う。第2接続部32aは、第1接続部31bを兼ねる。
【0025】
図4にPR1、PR3で表したように、第1工程では、第1接続部31と第2接続部32との間の所定位置35から第2接続部32までレーザ光220を照射する。第1工程では、例えば、所定位置35から第2接続部32に向かって連続的にレーザ光220を照射する。第1工程では、所定位置35から少なくとも第2接続部32と重なる位置まで、レーザ光220を照射する。第1工程では、例えば、所定位置35から第2接続部32を超えた位置(すなわち、第2接続部32を基準にして所定位置35とは反対側の位置)まで、レーザ光220を照射することが好ましい。
【0026】
図4にPR2、PR4で表したように、第2工程では、第1接続部31から所定位置35までレーザ光220を照射する。第2工程では、例えば、第1接続部31から所定位置35に向かって連続的にレーザ光220を照射する。第2工程では、少なくとも第1接続部31と重なる位置から所定位置35まで、レーザ光220を照射する。第2工程では、第1接続部31を超えない位置(すなわち、第1接続部31を基準にして所定位置35とは反対側の位置)から、所定位置35を超えた位置(すなわち、所定位置35を基準にして第1接続部31とは反対側の位置)まで、レーザ光220を照射することが好ましい。第2工程においてレーザ光220が照射される領域の一部は、例えば、第1工程においてレーザ光220が照射される領域の一部と重なる。
【0027】
第1接続部31と第2接続部32との間の距離L1は、例えば、2mm以上10mm以下である。所定位置35は、例えば、第1中間地点41から第2中間地点42までの間に位置する。第1中間地点41は、第1接続部31と第2接続部32との中間に位置する。つまり、第1接続部31と第1中間地点41との間の距離L2は、第1中間地点41と第2接続部32との間の距離L3と等しい。距離L2及び距離L3は、距離L1の半分である。第2中間地点42は、第1中間地点41と第2接続部32との中間に位置する。つまり、第1中間地点41と第2中間地点42との間の距離L4は、第2中間地点42と第2接続部32との間の距離L5と等しい。距離L4及び距離L5は、距離L3の半分である。
【0028】
溶接工程では、第1工程を行い、その後、第2工程を行う。溶接工程では、少なくとも、PR1で示した位置におけるレーザ光220の照射(第1工程)を、PR2で示した位置におけるレーザ光220の照射(第2工程)よりも前に行う。溶接工程では、少なくとも、PR3で示した位置におけるレーザ光220の照射(第1工程)を、PR4で示した位置におけるレーザ光220の照射(第2工程)よりも前に行う。
【0029】
溶接工程では、例えば、PR1で示した位置におけるレーザ光220の照射(第1工程)を行い、その後、PR2で示した位置におけるレーザ光220の照射(第2工程)を行い、その後、PR3で示した位置におけるレーザ光220の照射(第1工程)を行い、その後、PR4で示した位置におけるレーザ光220の照射(第2工程)を行う。つまり、溶接工程では、例えば、第1工程及び第2工程を交互に繰り返し行う。
【0030】
あるいは、溶接工程では、例えば、PR1で示した位置におけるレーザ光220の照射(第1工程)を行い、その後、PR3で示した位置におけるレーザ光220の照射(第1工程)を行い、その後、PR2で示した位置におけるレーザ光220の照射(第2工程)を行い、その後、PR4で示した位置におけるレーザ光220の照射(第2工程)を行ってもよい。つまり、溶接工程では、例えば、第1工程をまとめて行った後に、第2工程をまとめて行ってもよい。
【0031】
第1部材10が開口部16を有する筐体であり、第2部材20が蓋の場合には、例えば、溶接工程において、開口部16の全周に設けられたすべての複数の接続部30の間において、第1工程及び第2工程を繰り返すことで、第1部材10の開口部16の全周に第2部材20(蓋)を溶接することが好ましい。この場合も、第1工程及び第2工程を交互に繰り返し行ってもよいし、第1工程をまとめて行った後に、第2工程をまとめて行ってもよい。
【0032】
以下、実施形態に係るレーザ溶接方法の効果について、説明する。
図5(a)及び
図5(b)は、実施形態に係るレーザ溶接方法の溶接工程を表す断面図である。
図6(a)及び
図6(b)は、実施形態に係るレーザ溶接方法の溶接工程を表す断面図である。
図5(a)、
図5(b)、
図6(a)、及び
図6(b)は、
図4に示したA1-A2線による断面図である。
図5(a)は、
図4のPR1で示した位置におけるレーザ光220の照射(第1工程)を示している。
図5(b)は、
図4のPR2で示した位置におけるレーザ光220の照射(第2工程)を示している。
図6(a)は、
図4のPR3で示した位置におけるレーザ光220の照射(第1工程)を示している。
図6(b)は、
図4のPR4で示した位置におけるレーザ光220の照射(第2工程)を示している。
【0033】
図5(a)に表したように、仮溶接部材50において、第1部材10と第2部材20との間には、隙間Gが生じる場合がある。隙間Gは、例えば、10μm以上50μm以下である。
【0034】
このような場合に、例えば、溶接工程(本溶接)において、第1接続部31aから第2接続部32aに向かって連続的にレーザ光220を照射すると、第2接続部32aの周辺において隙間Gに起因する第2部材20のたわみが大きくなり、接合不良が発生する場合がある。また、このような接合不良は、溶接部分25の全域にわたって、第2接続部32の周辺において発生する場合がある。
【0035】
これに対して、実施形態に係るレーザ溶接方法では、まず、
図5(a)に表したように、第1接続部31aと第2接続部32aとの間の所定位置35aから第2接続部32aまでレーザ光220を照射する第1工程を行う。そして、第1工程の後に、
図5(b)に表したように、第1接続部31aから所定位置35aまでレーザ光220を照射する第2工程を行う。
【0036】
このように、所定位置35aから第2接続部32aまでのレーザ光220の照射(第1工程)を第1接続部31aから所定位置35aまでのレーザ光220の照射(第2工程)よりも前に行うことで、第2接続部32aの周辺において隙間Gに起因する第2部材20のたわみが大きくなることを抑制できる。したがって、接合不良を抑制できる。
【0037】
また、実施形態に係るレーザ溶接方法では、さらに、
図6(a)に表したように、第1接続部31bと第2接続部32bとの間の所定位置35bから第2接続部32bまでレーザ光220を照射する第1工程を行う。そして、第1工程の後に、
図6(b)に表したように、第1接続部31bから所定位置35bまでレーザ光220を照射する第2工程を行う。
【0038】
このように、第1工程と第2工程を繰り返して行うことで、すべての第2接続部32の周辺において隙間Gに起因する第2部材20のたわみが大きくなることを抑制できる。したがって、溶接部分25の全域にわたって接合不良を抑制できる。
【0039】
また、所定位置35が第1中間地点41(
図4参照)から第2中間地点42(
図4参照)までの間に位置することで、第1工程においてレーザ光220を照射する長さが長くなり過ぎないため、第1工程を行う際に第2接続部32aの周辺において隙間Gに起因する第2部材20のたわみが大きくなることを抑制できる。したがって、接合不良を抑制できる。
【0040】
また、溶接工程を第1工程と第2工程とに分けて行うと、溶接工程によって溶接部分25に凹凸が形成される場合がある。そこで、実施形態に係るレーザ溶接方法では、溶接工程の後に平坦化工程を行うことで、溶接工程によって溶接部分25に凹凸が形成されたとしても、平坦化工程によって溶接工程後の溶接部分25の表面を平坦化することができる。
【0041】
また、第1部材10が開口部16を有する筐体であり、第2部材20が蓋の場合に、準備工程において、第1部材10(筐体)の開口部16の全周に複数の接続部30を介して第2部材20(蓋)が仮溶接された仮溶接部材50を準備し、溶接工程において、開口部16の全周に設けられたすべての複数の接続部30の間において第1工程及び第2工程を繰り返して、開口部16の全周に第2部材20(蓋)を溶接することで、容易に第1部材10の開口部16を第2部材20で密閉した密閉部材100を製造することができる。
【0042】
以上のように、実施形態によれば、接合不良を抑制できるレーザ溶接方法が提供される。
【0043】
実施形態に係るレーザ溶接方法は、例えば、二次電池、ヒートシンク等の熱交換器、エアバッグ等に使用されるガス発生機、エアコン用の回転子などの装置の製造に好適に用いられる。
【0044】
以上、本発明の実施形態を例示したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。この実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0045】
10 第1部材
11~14 第1~第4側面部
15 底面部
16 開口部
20 第2部材
25 溶接部分
30 接続部
31、31a、31b 第1接続部
32、32a、32b 第2接続部
35、35a、35b 所定位置
41 第1中間地点
42 第2中間地点
50 仮溶接部材
100 密閉部材
210、220、230 レーザ光