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特開2023-140483電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140483
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/0228 20160101AFI20230928BHJP
   H01M 8/0206 20160101ALI20230928BHJP
   H01M 8/0215 20160101ALI20230928BHJP
   H01M 8/1213 20160101ALI20230928BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20230928BHJP
【FI】
H01M8/0228
H01M8/0206
H01M8/0215
H01M8/1213
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046343
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】519322392
【氏名又は名称】森村SOFCテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】島津 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 伸輔
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA14
5H126BB06
5H126JJ02
5H126JJ03
5H126JJ04
(57)【要約】
【課題】電気化学反応単セルの性能を向上させる。
【解決手段】電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、金属支持体に対して第1の方向(特定電極と金属支持体とが並ぶ方向)のインターコネクタ側であって、かつ、金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分に位置する第1酸化被膜の膜厚をIC接続膜厚とし、金属支持体に対して第1の方向のインターコネクタ側であって、かつ、金属支持体とインターコネクタとが離隔している部分に位置する第1酸化被膜の膜厚をIC非接続膜厚とし、金属支持体のうち貫通孔を画定する表面に位置する第1酸化被膜の膜厚を孔内膜厚としたときに、IC接続膜厚は、IC非接続膜厚と孔内膜厚との少なくとも一方よりも薄い。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料極および空気極と、前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に対して第1の方向側に位置する金属支持体であって、前記第1の方向視で前記特定電極に重なる位置において前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成された金属支持体と、を備える電気化学反応単セルと、
前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記特定電極とは反対側に位置するインターコネクタと、
前記金属支持体の表面の少なくとも一部に形成された第1酸化被膜と、
を備える電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、
前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記インターコネクタ側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが接続されている部分に位置する前記第1酸化被膜の膜厚をIC接続膜厚とし、前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記インターコネクタ側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分に位置する前記第1酸化被膜の膜厚をIC非接続膜厚とし、前記金属支持体のうち前記貫通孔を画定する表面に位置する前記第1酸化被膜の膜厚を孔内膜厚としたときに、
前記IC接続膜厚は、前記IC非接続膜厚と前記孔内膜厚との少なくとも一方よりも薄い、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項2】
請求項1に記載の電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体であって、
前記第1酸化被膜は、前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記インターコネクタ側に位置し、かつ、前記インターコネクタから離隔している部分であるIC非接続被膜部を有し、
前記金属支持体と前記インターコネクタとの間において反応ガスが前記第1の方向に交差する方向に流れる特定ガス流路であって、前記貫通孔に連通する特定ガス流路が形成され、
前記IC非接続被膜部は、前記第1の方向に突出する突出部であって、前記特定ガス流路に面し、かつ、前記貫通孔に対して前記特定ガス流路のガス流れの上流側に位置する突出部を有する、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体であって、
前記第1酸化被膜は、前記金属支持体の前記貫通孔を画定する表面に位置する部分である孔内被膜部を有し、
前記孔内被膜部のうち、膜厚が前記IC接続膜厚よりも厚い部分の割合は、前記孔内被膜部の全体の50%以上である、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体であって、
前記IC接続膜厚(μm)×1.05をAとし、前記IC非接続膜厚(μm)をBとし、(前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分における前記金属支持体と前記インターコネクタとの間の前記第1の方向の距離(μm))×0.5をCとしたときに、数式:A≦B≦Cを満たす、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体であって、
前記IC接続膜厚(μm)×1.05をAとし、前記孔内膜厚(μm)をDとし、前記貫通孔の前記第1の方向に直交する方向の直径(μm)×0.25をEとしたときに、数式:A≦D≦Eを満たす、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体であって、
前記IC接続膜厚は、前記IC非接続膜厚と前記孔内膜厚とのいずれよりも薄い、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体であって、
前記第1酸化被膜は、Crを含む、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項8】
燃料極および空気極と、前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に対して第1の方向側に位置するCrを含む金属支持体であって、前記第1の方向視で前記特定電極に重なる位置において前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成された金属支持体と、を備える電気化学反応単セルと、
前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記特定電極とは反対側に位置するインターコネクタと、前記インターコネクタの表面の少なくとも一部に形成された第2酸化被膜と、
を備える電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、
前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが接続されている部分に位置する前記第2酸化被膜の膜厚を支持体接続膜厚とし、前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分に位置する前記第2酸化被膜の膜厚を支持体非接続膜厚としたときに、
前記支持体接続膜厚は、前記支持体非接続膜厚よりも薄い、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項9】
請求項8に記載の電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体であって、
前記支持体接続被膜厚さ(μm)×1.05をFとし、前記支持体非接続被膜厚さのうち前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側に位置する前記第2酸化被膜の膜厚(μm)をGとし、前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分における前記金属支持体と前記インターコネクタとの間の前記第1の方向の距離(μm))×0.5をHとしたときに、数式:F≦G≦Hを満たす、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体であって、
前記第2酸化被膜は、Crを含む、
ことを特徴とする電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体に関する。
【背景技術】
【0002】
水素と酸素との電気化学反応を利用して発電を行う燃料電池の種類の1つとして、固体酸化物形の燃料電池(以下、「SOFC」という。)が知られている。SOFCは、一般に、複数の燃料電池単セル(以下、単に「単セル」という。)を備える燃料電池スタックの形態で利用される。単セルは、固体酸化物を含む電解質層と、燃料極および空気極とを備える。
【0003】
単セルの一形態として、金属支持型(メタルサポート型)の単セルが知られている(例えば、特許文献1参照)。金属支持型の単セルは、燃料極と空気極との一方(以下、「特定電極」という。)に対して所定方向(以下、「第1の方向」という。)側に位置する金属支持体を備え、金属支持体によって単セルにおける他の部分(電解質層等)を支持する。一般に、金属支持型の単セルは、他のタイプ(例えば燃料極支持型)の単セルと比較して、熱衝撃による割れが生じにくく、また起動性が高い。
【0004】
金属支持型の単セルでは、金属支持体に、発電に供される反応ガスを通過させるために、第1の方向に貫通する複数の貫通孔が形成されている。複数の貫通孔は、第1の方向視で特定電極と重なるように位置している。
【0005】
また、上記のような燃料電池スタックは、金属支持体に対して第1の方向の特定電極とは反対側に位置するインターコネクタを備える。インターコネクタは、金属支持体に接続される。つまり、燃料電池スタックは、単セルとインターコネクタとを備える電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体(以下、単に「複合体」という。)を備える。
【0006】
複合体は、金属支持体または/およびインターコネクタの耐酸化性等を向上させるために、金属支持体または/およびインターコネクタの部材の表面に酸化被膜が形成されていることがある。以下、金属支持体の表面に形成された酸化被膜を「第1酸化被膜」といい、インターコネクタの表面に形成された酸化被膜を「第2酸化被膜」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2018-195414号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
第1酸化被膜(金属支持体の表面に形成された酸化被膜)のうち、金属支持体に対して第1の方向(特定電極と金属支持体とが並ぶ方向)のインターコネクタ側であって、かつ、金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分に位置する部分(以下、「IC接続被膜部」という。)は、燃料電池スタックの稼働時において電流経路となる。IC接続被膜部の膜厚(以下、「IC接続膜厚」という。)が厚いほど、電流経路であるIC接続被膜部における電気抵抗が大きくなり(以下、「第1の観点」という。)、単セルの性能が低下する。従って、この第1の観点を考慮すると、IC接続膜厚は薄いほど好ましい。
【0009】
一方、第1酸化被膜のうち、金属支持体に対して第1の方向のインターコネクタ側であって、かつ、金属支持体とインターコネクタとが離隔している部分に位置する部分(以下、「IC非接続被膜部」という。)は、燃料電池スタックの稼働時において電流経路とならない(あるいは、なりにくい)。従って、IC非接続被膜部の膜厚(以下、「IC非接続膜厚」という。)をIC接続膜厚のように薄くする必要は無い。また、IC非接続被膜部は、燃料電池スタックの稼働時に発生する水蒸気等に起因して成長することにより、ガス流路(上記貫通孔等)を閉塞したり、IC非接続被膜部における電気抵抗が大きくなったりする(換言すれば、燃料電池スタックの稼働前後の変化が大きくなる)ことがあり、これにより単セルの性能を低下するおそれがある。このようなIC非接続被膜部の成長(燃料電池スタックの稼働開始後の時間当たりの成長度合)は、燃料電池スタックの稼働開始時におけるIC非接続膜厚が薄いほど大きくなる(以下、「第2の観点」という。)。そのため、この第2の観点を考慮すると、IC非接続膜厚は厚いほど好ましい。
【0010】
また、金属支持体の貫通孔を画定する第1酸化被膜(以下、「孔内被膜部」という。)の膜厚(以下、「孔内膜厚」という。)に関しても、上述したIC非接続膜厚についての理由と同様の理由から、厚いほど好ましい。
【0011】
仮に第1酸化被膜の全体の膜厚が均一である構成等においては、上述した第1の観点と第2の観点との少なくとも一方において不適当であることにより、単セルの性能が十分に確保できないおそれがある。なお、この課題を、以下において「第1の課題」という。
【0012】
また、第2酸化被膜(インターコネクタの表面に形成された酸化被膜)のうち、インターコネクタに対して第1の方向の金属支持体側であって、かつ、金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分に位置する部分(以下、「支持体接続被膜部」という。)は、複合体の稼働時において電流経路となる。上述した第1の観点と同様に、支持体接続被膜部の膜厚(以下、「支持体接続膜厚」という。)が厚いほど、電流経路である支持体接続被膜部における電気抵抗が大きくなり(以下、「第3の観点」という。)、単セルの性能が低下する。従って、この第3の観点を考慮すると、支持体接続膜厚は薄いほど好ましい。
【0013】
一方、第2酸化被膜のうち、インターコネクタに対して第1の方向の金属支持体側であって、かつ、金属支持体とインターコネクタとが離隔している部分に位置する部分(以下、「支持体接続被膜部」という。)は、燃料電池スタックの稼働時において電流経路とならない(あるいは、なりにくい)。従って、支持体接続被膜部の膜厚(以下、「支持体非接続膜厚」という。)を支持体接続膜厚のように薄くする必要は無い。また、支持体接続被膜部は、燃料電池スタックの稼働時に発生する水蒸気等に起因して成長することにより、ガス流路(上記貫通孔等)を閉塞したり、支持体接続被膜部における電気抵抗が大きくなったりする(換言すれば、燃料電池スタックの稼働前後の変化が大きい)ことがあり、これにより単セルの性能を低下するおそれがある。このような支持体接続被膜部の成長(燃料電池スタックの稼働開始後の時間当たりの成長度合)は、燃料電池スタックの稼働開始時における支持体非接続膜厚が薄いほど大きくなる(以下、「第4の観点」という。)。そのため、この第4の観点を考慮すると、支持体非接続膜厚は厚いほど好ましい。
【0014】
仮に第2酸化被膜の全体の膜厚が均一である構成等においては、上述した第3の観点と第4の観点との少なくとも一方において不適当であることにより、単セルの性能が十分に確保できないおそれがある。なお、この課題を、以下において「第2の課題」という。
【0015】
本発明は、上述した第1の課題と第2の課題との少なくとも一方を課題とする。
【0016】
なお、このような課題は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形の電解セル(以下、「SOEC」という。)の構成単位である電解セル単位を複数備える電解セルスタックにも共通の問題である。また、このような課題は、SOFCやSOECに限らず、他のタイプの電気化学反応セルスタックにも共通の課題である。なお、本明細書では、燃料電池単セルと電解単セルとをまとめて電気化学反応単セルと呼び、発電単位と電解セル単位とをまとめて電気化学反応単位と呼び、燃料電池スタックと電解セルスタックとをまとめて電気化学反応セルスタックと呼ぶ。
【0017】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0019】
(1)本明細書に開示される電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体は、燃料極および空気極と、前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に対して第1の方向側に位置する金属支持体であって、前記第1の方向視で前記特定電極に重なる位置において前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成された金属支持体と、を備える電気化学反応単セルと、前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記特定電極とは反対側に位置するインターコネクタと、前記金属支持体の表面の少なくとも一部に形成された第1酸化被膜と、を備える電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記インターコネクタ側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが接続されている部分に位置する前記第1酸化被膜の膜厚をIC接続膜厚とし、前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記インターコネクタ側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分に位置する前記第1酸化被膜の膜厚をIC非接続膜厚とし、前記金属支持体のうち前記貫通孔を画定する表面に位置する前記第1酸化被膜の膜厚を孔内膜厚としたときに、前記IC接続膜厚は、前記IC非接続膜厚と前記孔内膜厚との少なくとも一方(以下、「特定膜厚」という。)よりも薄い。
【0020】
本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体においては、第1酸化被膜全体の膜厚が均一である構成等に対し、IC接続膜厚が比較的薄いとしたときには、電流経路である金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分における電気抵抗が抑制される。更には、第1酸化被膜全体の膜厚が均一である構成等に対し、特定膜厚(換言すれば、金属支持体の貫通孔の周辺における膜厚)が比較的厚いとしたときには、電気化学反応セルスタックの稼働時に発生する水蒸気等に起因する特定膜厚の増加が抑制される。そのため、特定膜厚が増加することによりガス流路(後述する特定ガス流路、金属支持体の貫通孔)が閉塞されることが抑制される。以上のように、金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分における電気抵抗が抑制され、または/および、特定膜厚が増加することによりガス流路が閉塞されることが抑制される。そのため、本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、第1酸化被膜全体の膜厚が均一である構成等と比較して、電気化学反応単セルの性能を向上させることができる。
【0021】
(2)上記電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記第1酸化被膜は、前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記インターコネクタ側に位置し、かつ、前記インターコネクタから離隔している部分であるIC非接続被膜部を有し、前記金属支持体と前記インターコネクタとの間において反応ガスが前記第1の方向に交差する方向に流れる特定ガス流路であって、前記貫通孔に連通する特定ガス流路が形成され、前記IC非接続被膜部は、前記第1の方向に突出する突出部であって、前記特定ガス流路に面し、かつ、前記貫通孔に対して前記特定ガス流路のガス流れの上流側に位置する突出部を有する構成としてもよい。本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、上記突出部の存在により、反応ガスの流れ(第1の方向に交差する方向の流れ)が停滞し、反応ガスが金属支持体の貫通孔に入り込みやすくなる(ひいては特定電極に導かれやすくなる)。そのため、電気化学反応単セルの性能を向上させることができる。
【0022】
(3)上記電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記第1酸化被膜は、前記金属支持体の前記貫通孔を画定する表面に位置する部分である孔内被膜部を有し、前記孔内被膜部のうち、膜厚が前記IC接続膜厚よりも厚い部分の割合は、前記孔内被膜部の全体の50%以上である構成としてもよい。本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体においては、孔内被膜部のうち、膜厚がIC接続膜厚よりも厚い部分の割合が孔内被膜部の全体の50%未満である構成と比較して、上述した水蒸気等に起因する第1酸化被膜の成長が、より効果的に抑制される。そのため、成長した第1酸化被膜によりガス流路が閉塞されることが、より効果的に抑制される。そのため、本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、電気化学反応単セルの性能を更に向上させることができる。
【0023】
(4)上記電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記IC接続膜厚(μm)×1.05をAとし、前記IC非接続膜厚(μm)をBとし、(前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分における前記金属支持体と前記インターコネクタとの間の前記第1の方向の距離(μm))×0.5をCとしたときに、数式:A≦B≦Cを満たす構成としてもよい。本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、A≦Bを満たすことにより、特に効果的に上記効果(反応ガスの流れが阻害されることを抑制する効果等)が得られる。更に、B≦Cを満たすことにより、特に効果的に上記効果(第1酸化被膜により第1酸化被膜とインターコネクタとの間の空間(特定ガス流路)が閉塞されることに起因して反応ガスの流れが阻害される(ひいては、電気化学反応単セルの性能が低下する)ことを抑制する効果等)が得られる。すなわち、本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、単セルの性能を更に向上させることができる。
【0024】
(5)上記電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記IC接続膜厚(μm)×1.05をAとし、前記孔内膜厚(μm)をDとし、前記貫通孔の前記第1の方向に直交する方向の直径(μm)×0.25をEとしたときに、数式:A≦D≦Eを満たす構成としてもよい。本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、A≦Dを満たすことにより、特に効果的に上記効果(反応ガスの流れが阻害されることを抑制する効果等)が得られる。更に、D≦Eを満たすことにより、特に効果的に上記効果(第1酸化被膜によりガス流路が閉塞されることに起因して反応ガスの流れが阻害される(ひいては、単セルの性能が低下する)ことを抑制する効果等)が得られる。すなわち、本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、電気化学反応単セルの性能を更に向上させることができる。
【0025】
(6)上記電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記IC接続膜厚は、前記IC非接続膜厚と前記孔内膜厚とのいずれよりも薄い構成としてもよい。本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、電気化学反応単セルの性能を更に向上させることができる。
【0026】
(7)上記電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記第1酸化被膜は、Crを含む構成としてもよい。本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、第1酸化被膜の内部にある金属(Fe等)の酸化が抑制され、燃料電池スタックの稼働時等の高温酸化雰囲気においても、第1酸化被膜の成長に伴う電気抵抗の増加が抑制される。そのため、本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、電気化学反応セルスタックの高い耐久性能(長期的に電位低下を抑制し、高い発電能力を維持する性能)を実現することができる。
【0027】
(8)本明細書に開示される電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体は、燃料極および空気極と、前記燃料極と前記空気極との一方である特定電極に対して第1の方向側に位置するCrを含む金属支持体であって、前記第1の方向視で前記特定電極に重なる位置において前記第1の方向に貫通する貫通孔が形成された金属支持体と、を備える電気化学反応単セルと、前記金属支持体に対して前記第1の方向の前記特定電極とは反対側に位置するインターコネクタと、前記インターコネクタの表面の少なくとも一部に形成された第2酸化被膜と、を備える電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが接続されている部分に位置する前記第2酸化被膜の膜厚を支持体接続膜厚とし、前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側であって、かつ、前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分に位置する前記第2酸化被膜の膜厚を支持体非接続膜厚としたときに、前記支持体接続膜厚は、前記支持体非接続膜厚よりも薄い。
【0028】
本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体においては、第2酸化被膜全体の膜厚が均一である構成等に対し、支持体接続膜厚が比較的薄いとしたときには、電流経路である金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分における電気抵抗が抑制される。更には、第2酸化被膜全体の膜厚が均一である構成等に対し、支持体非接続膜厚(換言すれば、貫通孔の周辺における膜厚)が比較的厚いとしたときには、電気化学反応セルスタックの稼働時に発生する水蒸気等に起因する支持体非接続膜厚の増加が抑制される。そのため、支持体非接続膜厚が増加することによりガス流路(特定ガス流路、貫通孔)が閉塞されることが抑制される。以上のように、金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分における電気抵抗が抑制され、または/および、支持体非接続膜厚が増加することによりガス流路が閉塞されることが抑制される。そのため、本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、第2酸化被膜全体の膜厚が均一である構成等と比較して、電気化学反応単セルの性能を更に向上させることができる。
【0029】
(9)上記電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記支持体接続被膜厚さ(μm)×1.05をFとし、前記支持体非接続被膜厚さのうち前記インターコネクタに対して前記第1の方向の前記金属支持体側に位置する前記第2酸化被膜の膜厚(μm)をGとし、前記金属支持体と前記インターコネクタとが離隔している部分における前記金属支持体と前記インターコネクタとの間の前記第1の方向の距離(μm))×0.5をHとしたときに、数式:F≦G≦Hを満たす構成としてもよい。本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、F≦Gを満たすことにより、特に効果的に上記効果(反応ガスの流れが阻害されることを抑制する効果等)が得られる。更に、G≦Hを満たすことにより、上記効果(第2酸化被膜によりガス流路が閉塞されることに起因して反応ガスの流れが阻害される(ひいては、電気化学反応単セルの性能が低下する)ことを抑制する効果等)が得られる。すなわち、本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、電気化学反応単セルの性能を更に向上させることができる。
【0030】
(10)上記電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体において、前記第2酸化被膜は、Crを含む構成としてもよい。本電気化学反応単セル-インターコネクタ複合体によれば、電気化学反応単セルの性能を更に向上させることができる。
【0031】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、電気化学反応単セル(燃料電池単セルまたは電解単セル)、電気化学反応セルスタック(燃料電池スタックまたは電解セルスタック)等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図
図2図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図
図3図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図
図4図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図
図5図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図
図6】複合体(燃料電池単セル-インターコネクタ複合体)190および金属支持体180の一部分(図5のX1部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図
図7】性能評価結果を示す説明図
図8】性能評価結果を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0033】
A.実施形態:
A-1.燃料電池スタック100の構成:
図1は、本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図であり、図2は、図1のII-IIの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図であり、図3は、図1のIII-IIIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図4以降についても同様である。
【0034】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では7つの)燃料電池発電単位(以下、「発電単位」という。)102と、一対のエンドプレート104,106とを備える。7つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態ではZ軸方向)に並べて配置されている。一対のエンドプレート104,106は、7つの発電単位102から構成される集合体を上下から挟むように配置されている。上記配列方向(Z軸方向)は、特許請求の範囲における第1の方向の一例である。
【0035】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、エンドプレート104,106)のZ軸方向回りの周縁部には、Z軸方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士がZ軸方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたってZ軸方向に延びる貫通孔108を構成している。以下の説明では、貫通孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、貫通孔108と呼ぶ場合がある。
【0036】
各貫通孔108にはZ軸方向に延びるボルト22が挿通されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。なお、図2および図3に示すように、ナット24と各エンドプレート104,106(または後述するガス通路部材27)との間には、絶縁シート26が介在している。
【0037】
各ボルト22の軸部の外周面と各貫通孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図1および図2に示すように、1つのボルト22(ボルト22A)と当該ボルト22Aが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOG(例えば空気)が導入され、その酸化剤ガスOGを各発電単位102の空気室166に供給するガス流路である空気極側ガス供給マニホールド161として機能し、他の1つのボルト22(ボルト22B)と当該ボルト22Bが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の空気室166から排出されたガスである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する空気極側ガス排出マニホールド162として機能する。また、図1および図3に示すように、他の1つのボルト22(ボルト22D)と当該ボルト22Dが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFG(例えば水素リッチなガス)が導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102の燃料室176に供給する燃料極側ガス供給マニホールド171として機能し、他の1つのボルト22(ボルト22E)と当該ボルト22Eが挿通された貫通孔108とにより形成された空間は、各発電単位102の燃料室176から排出されたガスである燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料極側ガス排出マニホールド172として機能する。
【0038】
燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の本体部28の孔は、各ガス通路部材27の設置位置に設けられた各マニホールド161,162,171,172に連通している。
【0039】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、Z軸方向に略直交する平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、当該発電単位102と電気的に接続されている。他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置され、当該発電単位102と電気的に接続されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0040】
(発電単位102の構成)
図4は、図2に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図であり、図5は、図3に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
【0041】
図4および図5に示すように、発電単位102は、燃料電池単セル(以下、「単セル」という。)110と、セパレータ120と、空気極側フレーム部材130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム部材140と、一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム部材130、燃料極側フレーム部材140、インターコネクタ150の周縁部には、上述したボルト22が挿通される貫通孔108に対応する孔が形成されている。
【0042】
インターコネクタ150は、Z軸方向に略直交する平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図2および図3参照)。各発電単位102における下側のインターコネクタ150は、特許請求の範囲におけるインターコネクタの一例である。
【0043】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んでZ軸方向に互いに対向する空気極114および燃料極116とを備える。単セル110は、さらに、燃料極116に対して電解質層112とは反対側(下側)(Z軸負方向側)に配置された金属支持体180を備える。
【0044】
金属支持体180は、Z軸方向に略直交する平板形状の導電性部材であり、Cr(クロム)を含む金属(例えばステンレス)により形成されている。金属支持体180は、単セル110における他の構成要素(電解質層112等)を支持している。このように、本実施形態の単セル110は、金属支持体180によって単セル110の機械的強度を確保する、いわゆる金属支持型(メタルサポート型)の単セルである。金属支持型の単セルは、他のタイプ(例えば燃料極支持型)の単セルと比較して、熱衝撃による割れが生じにくく、また起動性が高い。金属支持体180には、燃料ガスFGを通過させるための複数の貫通孔50が形成されている(図6参照)。この複数の貫通孔50は、金属支持体180の上面(後述する上面S1)から下面(後述する下面S2)までZ軸方向に貫通している。なお、金属支持体180に対してZ軸負方向側(Z軸方向の燃料極116とは反対側)に、上述したインターコネクタ150(各発電単位102における下側のインターコネクタ150)が位置している。
【0045】
電解質層112は、Z軸方向に略直交する平板形状部材であり、緻密な層である。本実施形態では、電解質層112は、燃料極116における上側の表面と、金属支持体180における上側の表面の内、燃料極116に覆われていない領域とを連続的に覆うように形成されている。電解質層112は、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)等の固体酸化物により形成されている。このように、本実施形態の単セル110は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。空気極114は、Z軸方向に略直交する平板形状部材であり、多孔質な層である。空気極114は、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物))により形成されている。燃料極116は、Z軸方向に略直交する平板形状部材であり、多孔質な層である。燃料極116は、例えば、Niと酸化物イオン伝導性セラミックス粒子(例えば、YSZ)とからなるサーメットにより形成されている。本実施形態では、燃料極116は、特許請求の範囲における特定電極に相当する。
【0046】
セパレータ120は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えばステンレスにより形成されている。セパレータ120における孔121を取り囲む部分は、例えばロウ材を含む接合部124により、単セル110(電解質層112)の周縁部と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画される。
【0047】
空気極側フレーム部材130は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えばマイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム部材130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム部材130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。空気極側フレーム部材130には、空気極側ガス供給マニホールド161と空気室166とを連通する空気極側ガス供給連通流路132と、空気室166と空気極側ガス排出マニホールド162とを連通する空気極側ガス排出連通流路133とが形成されている。
【0048】
燃料極側フレーム部材140は、中央付近にZ軸方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えばステンレスにより形成されている。燃料極側フレーム部材140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム部材140には、燃料極側ガス供給マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料極側ガス供給連通流路142と、燃料室176と燃料極側ガス排出マニホールド172とを連通する燃料極側ガス排出連通流路143とが形成されている。
【0049】
空気極側集電体134は、空気室166内に配置された複数の略四角柱状の集電体要素135から構成されており、例えばステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。ただし、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102における空気極側集電体134は、空気極114と上側のエンドプレート104とを電気的に接続する(図2および図3参照)。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として構成されていてもよい。
【0050】
インターコネクタ150は、燃料極側集電体144を備える。燃料極側集電体144は、燃料室176内に配置された複数の略四角柱状の集電体要素145から構成されており、例えばステンレスにより形成されている。燃料極側集電体144は、金属支持体180と電気的に接続する。ただし、燃料電池スタック100において最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていないため、当該発電単位102にはインターコネクタ150の代わりに独立の部材である燃料極側集電体144が備えられ、当該燃料極側集電体144が金属支持体180と下側のエンドプレート106とを電気的に接続する(図2および図3参照)。なお、燃料極側集電体144とインターコネクタ150の残りの部分(上述した平板形状の導電性部材)とが一体の部材として構成されていてもよい。
【0051】
各発電単位102(最も下に位置する発電単位102を除く)は、上述した単セル110とインターコネクタ150(各発電単位102における下側のインターコネクタ150)とを備える複合体(燃料電池単セル-インターコネクタ複合体)190を含んでいると言える。複合体190の詳細構成について後述する。
【0052】
A-2.燃料電池スタック100の動作:
図2および図4に示すように、酸化剤ガスOGは、空気極側ガス供給マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)から、当該ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して空気極側ガス供給マニホールド161に供給され、空気極側ガス供給マニホールド161から各発電単位102の空気極側ガス供給連通流路132を介して、空気室166に供給される。また、図3および図5に示すように、燃料ガスFGは、燃料極側ガス供給マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)から、当該ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料極側ガス供給マニホールド171に供給され、燃料極側ガス供給マニホールド171から各発電単位102の燃料極側ガス供給連通流路142を介して、燃料室176に供給される。
【0053】
各発電単位102において、空気室166に供給された酸化剤ガスOGが多孔質な空気極114内に進入し、かつ、燃料室176に供給された燃料ガスFGが金属支持体180に形成された複数の貫通孔50を通って多孔質な燃料極116内に進入すると、単セル110において酸化剤ガスOGに含まれる酸素と燃料ガスFGに含まれる水素との電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は、空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は、金属支持体180を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0054】
図2および図4に示すように、各発電単位102の空気室166から空気極側ガス排出連通流路133を介して空気極側ガス排出マニホールド162に排出された酸化剤オフガスOOGは、空気極側ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)から燃料電池スタック100の外部に排出される。また、図3および図5に示すように、各発電単位102の燃料室176から燃料極側ガス排出連通流路143を介して燃料極側ガス排出マニホールド172に排出された燃料オフガスFOGは、燃料極側ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)から燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0055】
A-3.複合体(燃料電池単セル-インターコネクタ複合体)190および金属支持体180の詳細構成:
図6は、複合体(燃料電池単セル-インターコネクタ複合体)190および金属支持体180の一部分(図5のX1部)のYZ断面構成を拡大して示す説明図である。
【0056】
複合体190は、単セル110と、インターコネクタ150(各発電単位102における下側のインターコネクタ150)(以下、単に「インターコネクタ150」という。)とを備え、更に、後述する酸化被膜(第1酸化被膜OF1、第2酸化被膜OF2)を備える。
【0057】
(金属支持体180)
上述したように、金属支持体180には、燃料ガスFGを通過させるための複数の貫通孔50が形成されている。金属支持体180において、各貫通孔50は、燃料極116に接する上面S1から、上面S1とは反対側の下面S2まで、Z軸方向に貫通している。各貫通孔50は、Z軸方向視で燃料極116と重なるように位置している。なお、貫通孔50は、金属支持体180の材料である金属部材に、例えばレーザーまたはエッチングを施すことにより形成することができる。
【0058】
金属支持体180の表面に、酸化被膜(以下、「第1酸化被膜」という。)OF1が形成されている。第1酸化被膜OF1は、Crを含む。第1酸化被膜OF1は、例えばCr等のクロム酸化物)を含む。このような第1酸化被膜OF1は、例えば、金属支持体180の材料である金属部材の表面に熱処理(例えば、大気中1000℃で加熱)を施すことにより形成することができる。
【0059】
本実施形態では、複数の貫通孔50は、Z軸方向視において金属支持体180と燃料極116とが重なる範囲の略全体にわたって配置されている。また、単セル110のXY断面における各貫通孔50の形状は、円形である。各貫通孔50の径は、金属支持体180の上面(対向面)S1における開口の位置から下面S2における開口の位置にわたって略一定である。また、複数の貫通孔50の径は、互いに略同一である。
【0060】
燃料室176に供給された反応ガス(燃料ガスFG)は、各貫通孔50内を進行し、さらに燃料極116の空隙内を進行して、反応場に供給される。
【0061】
(インターコネクタ150の周辺)
インターコネクタ150の表面に、酸化被膜(以下、「第2酸化被膜」という。)OF2が形成されている。第2酸化被膜OF2は、Crを含む。第2酸化被膜OF2は、例えばCr等のクロム酸化物)を含む。このような第2酸化被膜OF2は、例えば、インターコネクタ150の材料である金属部材の表面に熱処理(例えば、大気中1000℃で加熱)を施すことにより形成することができる。
【0062】
図6に示すように、複合体190が備える各発電単位102の燃料室176は、金属支持体180とインターコネクタ150との間に位置する部分(以下、「特定ガス流路」という。)177を備える。特定ガス流路177は、金属支持体180の各貫通孔50に連通している。特定ガス流路177は、X軸方向に延びる複数の流路部と、Y軸方向に延びる複数の流路部とが、互いに連通しつつ、網目状に並ぶように形成されている。特定ガス流路177において、反応ガス(燃料ガスFG)は、主にY軸負方向(Z軸方向に交差する方向)に流れる。
【0063】
(第1酸化被膜OF1とその周辺)
【0064】
図6に示すように、本実施形態では、金属支持体180の表面の全体に、第1酸化被膜OF1が形成されている。従って、第1酸化被膜OF1は、金属支持体180に対してZ軸負方向側(Z軸方向のインターコネクタ150側)において、金属支持体180とインターコネクタ150とが接続されている部分P1に位置する部分(以下、「IC接続被膜部」という。)OF11と、金属支持体180とインターコネクタ150とが離隔している部分P2に位置する部分(以下、「IC非接続被膜部」という。)OF12と、を有する。更に、第1酸化被膜OF1は、金属支持体180のうち貫通孔50を画定する表面に位置する部分(以下、「孔内被膜部」という。)OF13を有する。更に、第1酸化被膜OF1は、金属支持体180に対してZ軸正方向側(Z軸方向のインターコネクタ150とは反対側)に位置する特定部分OF14を有する。IC非接続被膜部OF12は特定ガス流路177に面しており、孔内被膜部OF13は金属支持体180の貫通孔50に面している。
【0065】
図6に示すように、IC接続被膜部OF11の膜厚(Z軸方向の厚さ)(以下、「IC接続膜厚」という。)FT11は、IC非接続被膜部OF12の膜厚(Z軸方向の厚さ)(以下、「IC非接続膜厚」という。)FT12と、孔内被膜部OF13の膜厚(Y軸方向の厚さ)(以下、「孔内膜厚」という。)FT13とのいずれよりも薄い。従って、複合体190は、「IC接続膜厚FT11はIC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13との少なくとも一方よりも薄い」という条件(以下、「第1特定条件」という。)を満たしている。なお、IC接続被膜部OF11の膜厚の方向(Z軸方向)は、燃料電池スタック100の稼働時に、IC接続被膜部OF11において電子が流れる方向に相当する。
【0066】
上記の第1特定条件を満たすか否かの基準に関し、第1酸化被膜OF1の各部(IC接続被膜部OF11、IC非接続被膜部OF12、孔内被膜部OF13)の少なくとも一部同士の各膜厚を比較したときに上記のような大小関係となることを以って第1特定条件を満たすとしてもよい。その際に膜厚を測定する方法としては、例えばIC接続被膜部OF11、IC非接続被膜部OF12、孔内被膜部OF13を含むように金属支持体180の一部を切り出し、断面を鏡面研磨した後に走査型電子顕微鏡(例えば倍率2000倍)で観察し、IC接続被膜部OF11、IC非接続被膜部OF12、孔内被膜部OF13それぞれの酸化被膜OFの膜厚を測定する方法を採用することができる。また、より好ましくは、第1酸化被膜OF1の各部の膜厚の平均値(または最大値、または最小値)同士を比較(または、これら3値全てについて比較)したときに上記のような大小関係となることを以って第1特定条件を満たすとするとよい。その際に膜厚を測定する方法および膜厚の平均値(または最大値、または最小値)を算出する方法としては、例えばIC接続被膜部OF11、IC非接続被膜部OF12、孔内被膜部OF13を含むように金属支持体180の一部を切り出し、断面を鏡面研磨した後に走査型電子顕微鏡(例えば倍率2000倍)で10視野観察し、それぞれの視野についてIC接続被膜部OF11、IC非接続被膜部OF12、孔内被膜部OF13それぞれの酸化被膜OFの膜厚を測定し平均値(または最大値、または最小値)を求める方法を採用することができる。
【0067】
また、本実施形態では、孔内被膜部OF13のうち、膜厚がIC接続膜厚FT11よりも厚い部分の割合は、孔内被膜部OF13の全体の50%以上である。この構成を満たすか否かの基準に関し、金属支持体180の貫通孔50を通り、かつ、Z軸方向に沿った断面(例えば、図6に示す断面)において、Z軸方向において貫通孔50を等分する10本の等分線を引いたときに、孔内被膜部OF13において各等分線が通過する10か所のうち、5か所以上において、孔内被膜部OF13の膜厚がIC接続膜厚FT11の少なくとも一部の膜厚よりも厚いことを以って、上記構成を満たすとしてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、IC接続膜厚FT11(μm)×1.05をAとし、IC非接続膜厚FT12(μm)をBとし、(金属支持体180とインターコネクタ150とが離隔している部分P2における金属支持体180とインターコネクタ150との間のZ軸方向の距離(μm))×0.5をCとしたときに、数式:A≦B≦Cを満たす。
【0069】
また、本実施形態では、IC接続膜厚FT11(μm)×1.05をAとし、孔内膜厚FT13(μm)をDとし、貫通孔50のZ軸方向に直交する方向の直径(μm)×0.25をEとしたときに、数式:A≦D≦Eを満たす。
【0070】
IC接続膜厚FT11は、例えば0μm以上、かつ、14μm以下である。IC非接続膜厚FT12は、例えば1μm以上、かつ、15μm以下である。孔内膜厚FT13は、例えば1μm以上、かつ、15μm以下である。
【0071】
なお、第1酸化被膜OF1は、金属支持体180に対してZ軸正方向側(Z軸方向のインターコネクタ150とは反対側)に位置する部分(以下、「特定部分」という。)OF14を有する。当該特定部分OF14の膜厚FT14は、IC接続膜厚FT11と同程度(例えば0μm以上、かつ、14μm以下)である。
【0072】
上述した第1酸化被膜OF1の部位ごと(OF11、…、OF14)に膜厚が異なる構成は、例えば、以下のように実現(製造)することができる。まず、金属支持体180の材料である金属部材に対し、上述したように熱処理を施すことにより、当該金属部材の表面に均一な膜厚の酸化被膜を形成する。次に、IC非接続膜厚FT12や、金属支持体180に対してZ軸正方向側に位置する特定部分OF14に対する部位の酸化被膜を、ブラスト処理や酸化処理(例えばアルミナブラスト、サンドブラスト、硫酸処理、塩酸処理)により取り除くことにより、膜厚が比較的薄い部分(IC非接続膜厚FT12、金属支持体180に対してZ軸正方向側に位置する特定部分OF14)を形成する。これにより、上述した第1酸化被膜OF1の部位ごと(OF11、…、OF14)に膜厚が異なる構成が得られる。
【0073】
図6に示すように、各IC非接続被膜部OF12は、(当該IC非接続被膜部OF12の他の部分に対して)Z軸負方向に突出する2つの突出部OFPを有する。突出部OFPは、IC非接続被膜部OF12のY軸方向の両端それぞれに形成されている。各突出部OFPは、特定ガス流路177に面している。なお、特定ガス流路177において、反応ガス(燃料ガスFG)はY軸負方向(Z軸方向に交差する方向)に流れる。各突出部OFPは、貫通孔50に対してY軸正方向側(特定ガス流路177のガス(燃料ガスFG)流れの上流側)に位置している。各突出部OFPの高さ(Z軸方向の長さ)は、例えば2μm以上、かつ、20μm以下である。
【0074】
上述した第1酸化被膜OF1の突出部OFPは、例えば、上述したように金属支持体180の材料である金属部材の表面に均一な膜厚の酸化被膜を形成した後に、スクリーン印刷等を施すことにより形成することができる。
【0075】
(第2酸化被膜OF2とその周辺)
図6に示すように、本実施形態では、インターコネクタ150の表面の全体に、第2酸化被膜OF2が形成されている。従って、第2酸化被膜OF2は、インターコネクタ150に対してZ軸正方向側(Z軸方向の金属支持体180側)において、金属支持体180とインターコネクタ150とが接続されている部分P1に位置する部分(以下、「支持体接続被膜部」という。)OF21と、金属支持体180とインターコネクタ150とが離隔している部分P2に位置する部分P2に位置する部分(以下、「支持体接続被膜部」という。)OF22とを有する。支持体非接続被膜部OF22は、特定ガス流路177に面している。
【0076】
図6に示すように、支持体接続被膜部OF21の膜厚(Z軸方向の厚さ)(以下「支持体接続膜厚」という。)FT21は、支持体非接続被膜部OF22の膜厚(Z軸方向の厚さ、またはZ軸方向に直交する方向(Y軸方向等)の厚さ)(以下、「支持体非接続膜厚」という。)FT22よりも薄い(以下、「第2特定条件」という。)。なお、支持体接続被膜部OF21の膜厚の方向(Z軸方向)は、燃料電池スタック100の稼働時に、支持体接続被膜部OF21において電子が流れる方向に相当する。
【0077】
上記の第2特定条件を満たすか否かの基準についても、第1特定条件を満たすか否かの基準と同様の考え方を採用することができる。すなわち、上記の第2特定条件を満たすか否かの基準に関し、第2酸化被膜OF2の各部(支持体接続被膜部OF21、支持体非接続被膜部OF22)の少なくとも一部同士の各膜厚を比較したときに上記のような大小関係となることを以って第2特定条件を満たすとしてもよい。また、より好ましくは、第2酸化被膜OF2の各部の膜厚の平均値(または最大値、または最小値)同士を比較(または、これら2値全てについて比較)したときに上記のような大小関係となることを以って第2特定条件を満たすとするとよい。その際に膜厚を測定する方法および膜厚の平均値(または最大値、または最小値)を算出する方法についても、上述した方法と同様の方法を採用することができる。
【0078】
また、本実施形態では、支持体接続被膜厚さ(μm)×1.05をFとし、支持体非接続被膜厚さのうちインターコネクタ150に対してZ軸正方向側(Z軸方向の金属支持体180側)に位置する第2酸化被膜OF2の膜厚(μm)をGとし、金属支持体180とインターコネクタ150とが離隔している部分P2における金属支持体180とインターコネクタ150との間のZ軸方向の距離(μm))×0.5をHとしたときに、数式:F≦G≦Hを満たす。
【0079】
上述した第2酸化被膜OF2の部位ごと(OF21、OF21)に膜厚が異なる構成は、例えば、上述した第1酸化被膜OF1についての方法と同様の方法を用いることにより実現(製造)することができる。
【0080】
なお、上述した第1特定条件(IC接続膜厚FT11はIC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13との少なくとも一方よりも薄い)と、上述した第2特定条件(支持体接続膜厚FT21は支持体非接続膜厚FT22よりも薄い)との一方のみを満たす構成を採用してもよい。
【0081】
また、第1酸化被膜OF1において、IC接続膜厚FT11はIC非接続膜厚FT12よりも薄いという条件と、IC接続膜厚FT11は孔内膜厚FT13よりも薄いという条件との一方のみを満たす構成を採用してもよい。
【0082】
A-4.本実施形態の効果:
以上説明したように、本実施形態の燃料電池スタック100(の各発電単位102)が備える複合体190は、単セル110と、インターコネクタ150(各発電単位102における下側のインターコネクタ150、以下同様)と、第1酸化被膜OF1とを備える。単セル110は、燃料極116および空気極114と、燃料極116に対してZ軸負方向側に位置する金属支持体180とを備える。金属支持体180には、Z軸方向視で燃料極116に重なる位置においてZ軸方向に貫通する貫通孔50が形成されている。インターコネクタ150は、金属支持体180に対してZ軸負方向側(Z軸方向の燃料極116とは反対側)に位置している。第1酸化被膜OF1は、金属支持体180の表面の少なくとも一部に形成されている。金属支持体180に対してZ軸負方向側(Z軸方向のインターコネクタ150側)であって、かつ、金属支持体180とインターコネクタ150とが接続されている部分P1に位置する第1酸化被膜OF1(IC接続被膜部OF11)の膜厚をIC接続膜厚FT11とし、金属支持体180に対してZ軸負方向側(Z軸方向のインターコネクタ150側)であって、かつ、金属支持体180とインターコネクタ150とが離隔している部分P2に位置する第1酸化被膜OF1(IC非接続被膜部OF12)の膜厚をIC非接続膜厚FT12とし、金属支持体180のうち貫通孔50を画定する表面に位置する第1酸化被膜OF1(孔内被膜部OF13)の膜厚を孔内膜厚FT13としたときに、IC接続膜厚FT11は、IC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13との少なくとも一方(以下、「特定膜厚FT12,FT13」という。)よりも薄い。
【0083】
本実施形態の複合体190においては、第1酸化被膜OF1全体の膜厚が均一である構成等に対し、IC接続膜厚FT11が比較的薄いとしたときには、電流経路であるIC接続被膜部OF11における電気抵抗が抑制される。更には、第1酸化被膜OF1全体の膜厚が均一である構成等に対し、特定膜厚FT12,FT13(換言すれば、貫通孔50の周辺における膜厚)が比較的厚いとしたときには、燃料電池スタック100の稼働時に発生する水蒸気等に起因する特定膜厚FT12,FT13の増加が抑制される。そのため、特定膜厚FT12,FT13が増加することによりガス流路(特定ガス流路177、貫通孔50)が閉塞されることが抑制される。以上のように、IC接続被膜部OF11における電気抵抗が抑制され、または/および、特定膜厚FT12,FT13が増加することによりガス流路が閉塞されることが抑制される。そのため、本実施形態の複合体190によれば、第1酸化被膜OF1全体の膜厚が均一である構成等と比較して、単セル110の性能を向上させることができる。
【0084】
また、本実施形態の複合体190においては、第1酸化被膜OF1は、金属支持体180に対してZ軸負方向側(Z軸方向のインターコネクタ150側)に位置し、かつ、インターコネクタ150から離隔している部分であるIC非接続被膜部OF12を有する。IC非接続被膜部OF12は、Z軸負方向に突出する突出部OFPであって、特定ガス流路177に面し、かつ、貫通孔50に対してY軸正方向側(特定ガス流路177のガス流れの上流側)に位置する突出部OFPを有する。本実施形態の複合体190によれば、突出部OFPの存在により、反応ガス(燃料ガスFG)の流れ(Z軸方向に交差する方向の流れ)が停滞し、反応ガス(燃料ガスFG)が貫通孔50に入り込みやすくなる(ひいては燃料極116に導かれやすくなる)。そのため、単セル110の性能を向上させることができる。
【0085】
また、本実施形態の複合体190においては、第1酸化被膜OF1は、金属支持体180の貫通孔50を画定する表面に位置する部分である孔内被膜部OF13を有する。孔内被膜部OF13のうち、膜厚がIC接続膜厚FT11よりも厚い部分の割合は、孔内被膜部OF13の全体の50%以上である。本実施形態の複合体190においては、孔内被膜部OF13のうち、膜厚がIC接続膜厚FT11よりも厚い部分の割合が孔内被膜部OF13の全体の50%未満である構成と比較して、上述した水蒸気等に起因する第1酸化被膜OF1の成長が、より効果的に抑制される。そのため、成長した第1酸化被膜OF1によりガス流路が閉塞されることが、より効果的に抑制される。そのため、本実施形態の複合体190によれば、単セル110の性能を更に向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態の複合体190においては、IC接続膜厚FT11(μm)×1.05をAとし、IC非接続膜厚FT12(μm)をBとし、(金属支持体180とインターコネクタ150とが離隔している部分P2における金属支持体180とインターコネクタ150との間のZ軸方向の距離(μm))×0.5をCとしたときに、数式:A≦B≦Cを満たす。本実施形態の複合体190によれば、A≦Bを満たすことにより、特に効果的に上記効果(反応ガスの流れが阻害されることを抑制する効果等)が得られる。更に、B≦Cを満たすことにより、特に効果的に上記効果(第1酸化被膜OF1により第1酸化被膜OF1とインターコネクタ150との間の空間(特定ガス流路177)が閉塞されることに起因して反応ガス(燃料ガスFG)の流れが阻害される(ひいては、単セル110の性能が低下する)ことを抑制する効果等)が得られる。すなわち、本実施形態の複合体190によれば、単セル110の性能を更に向上させることができる。
【0087】
また、本実施形態の複合体190においては、IC接続膜厚FT11(μm)×1.05をAとし、孔内膜厚FT13(μm)をDとし、貫通孔50のZ軸方向に直交する方向の直径(μm)×0.25をEとしたときに、数式:A≦D≦Eを満たす。本実施形態の複合体190によれば、A≦Dを満たすことにより、特に効果的に上記効果(反応ガスの流れが阻害されることを抑制する効果等)が得られる。更に、D≦Eを満たすことにより、特に効果的に上記効果(第1酸化被膜OF1により貫通孔50が閉塞されることに起因して反応ガス(燃料ガスFG)の流れが阻害される(ひいては、単セル110の性能が低下する)ことを抑制する効果等)が得られる。すなわち、本実施形態の複合体190によれば、単セル110の性能を更に向上させることができる。
【0088】
また、本実施形態の複合体190においては、IC接続膜厚FT11は、IC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13とのいずれよりも薄い。本実施形態の複合体190によれば、単セル110の性能を更に向上させることができる。
【0089】
また、本実施形態の複合体190においては、第1酸化被膜OF1は、Crを含む。そのため、第1酸化被膜OF1の内部にある金属(Fe等)の酸化が抑制され、燃料電池スタックの稼働時等の高温酸化雰囲気においても、第1酸化被膜OF1の成長に伴う電気抵抗の増加が抑制される。そのため、本実施形態の複合体190によれば、燃料電池スタック100の高い耐久性能(長期的に電位低下を抑制し、高い発電能力を維持する性能)を実現することができる。
【0090】
また、本実施形態の複合体190は、上述した単セル110とインターコネクタ150に加え、インターコネクタ150の表面の少なくとも一部に形成された第2酸化被膜OF2を備える。インターコネクタ150に対してZ軸正方向側(Z軸方向の金属支持体180側)であって、かつ、金属支持体180とインターコネクタ150とが接続されている部分P1に位置する第2酸化被膜OF2(支持体接続被膜部OF21)の膜厚を支持体接続膜厚FT21とし、インターコネクタ150に対してZ軸正方向側(Z軸方向の金属支持体180側)であって、かつ、金属支持体180とインターコネクタ150とが離隔している部分P2に位置する第2酸化被膜OF2(支持体非接続被膜部OF22)の膜厚を支持体非接続膜厚FT22としたときに、支持体接続膜厚FT21は、支持体非接続膜厚FT22よりも薄い。
【0091】
本実施形態の複合体190においては、第2酸化被膜OF2全体の膜厚が均一である構成等に対し、支持体接続膜厚FT21が比較的薄いとしたときには、電流経路である支持体接続被膜部OF21における電気抵抗が抑制される。更には、第2酸化被膜OF2全体の膜厚が均一である構成等に対し、支持体非接続膜厚FT22(換言すれば、貫通孔50の周辺における膜厚)が比較的厚いとしたときには、燃料電池スタック100の稼働時に発生する水蒸気等に起因する支持体非接続膜厚FT22の増加が抑制される。そのため、支持体非接続膜厚FT22が増加することによりガス流路(特定ガス流路177、貫通孔50)が閉塞されることが抑制される。以上のように、支持体接続被膜部OF21における電気抵抗が抑制され、または/および、支持体非接続膜厚FT22が増加することによりガス流路が閉塞されることが抑制される。そのため、本実施形態の複合体190によれば、第2酸化被膜OF2全体の膜厚が均一である構成等と比較して、単セル110の性能を更に向上させることができる。
【0092】
また、本実施形態の複合体190においては、支持体接続被膜厚さ(μm)×1.05をFとし、支持体非接続被膜厚さのうちインターコネクタ150に対してZ軸正方向側(Z軸方向の金属支持体180側)に位置する第2酸化被膜OF2の膜厚(μm)をGとし、金属支持体180とインターコネクタ150とが離隔している部分P2における金属支持体180とインターコネクタ150との間のZ軸方向の距離(μm))×0.5をHとしたときに、数式:F≦G≦Hを満たす。本実施形態の複合体190によれば、F≦Gを満たすことにより、特に効果的に上記効果(反応ガスの流れが阻害されることを抑制する効果等)が得られる。更に、G≦Hを満たすことにより、上記効果(第2酸化被膜OF2により特定ガス流路177が閉塞されることに起因して反応ガス(燃料ガスFG)の流れが阻害される(ひいては、単セル110の性能が低下する)ことを抑制する効果等)が得られる。すなわち、本実施形態の複合体190によれば、単セル110の性能を更に向上させることができる。
【0093】
また、本実施形態の複合体190においては、第2酸化被膜OF2は、Crを含む。本実施形態の複合体190によれば、単セル110の性能を更に向上させることができる。
【0094】
A-5.性能評価:
次に、本実施形態の性能評価について説明する。各特性が互いに異なる複数の燃料電池スタック100のサンプルを作製し、当該サンプルを用いて性能評価を行った。図7および図8は、性能評価結果を示す説明図である。図7および図8には、各サンプルについて、燃料電池スタック100の性能を表す「水蒸気酸化耐性」および「発電性能」(図8では「水蒸気酸化耐性」のみ)を測定した結果が示されている。
【0095】
「水蒸気酸化耐性」は、金属支持体180の水蒸気酸化速度(酸化被膜厚みの成長速度)を示すものである。「水蒸気酸化耐性」については、各サンプルについて、水素:水蒸気=10:90の雰囲気下で900℃、2400時間保持する水蒸気酸化耐性試験を行った後、IC非接続被膜部OF12と孔内被膜部OF13を含むように金属支持体180の一部を切り出し、断面を鏡面研磨した後に走査型電子顕微鏡(例えば倍率2000倍)で観察し、IC非接続被膜部OF12、孔内被膜部OF13それぞれの酸化被膜OFの膜厚を測定した。また、水蒸気酸化耐性試験前の各サンプルについても、前述の膜厚測定方法と同様の方法でIC非接続被膜部OF12、孔内被膜部OF13それぞれの酸化被膜OFの膜厚を測定した。水蒸気酸化耐性試験前後での酸化被膜OFの膜厚の増加量が所定の判定閾値(以下、「第1の判定閾値」という。)以下であったサンプルを「特に良い(A)」と評価し、膜厚の増加量が第1の判定閾値より大きく、かつ、第1の判定閾値より大きい所定の判定閾値(以下、「第2の判定閾値」という。)以下であったサンプルを「良い(B)」と評価し、膜厚の増加量が第2の判定閾値より大きかったサンプルを「不合格(C)」と評価した。
【0096】
「発電性能」については、各サンプルについて、約700(℃)で空気極114に酸化剤ガスOGを供給し、燃料極116に燃料ガスFGを供給し、電流密度が0.55A/cmのときの単セル110の出力電圧を測定し、その測定値が所定の判定閾値(以下、「第3の判定閾値」という。)以上であったサンプルを「特に良い(A)」と評価し、測定値が第3の判定閾値より低く、かつ、第3の判定閾値より低い所定の判定閾値(以下、「第4の判定閾値」という。)以上であったサンプルを「良い(B)」と評価し、測定値が第4の判定閾値より低かったサンプルを「不合格(C)」と評価した。
【0097】
(第1酸化被膜OF1について)
図7には、第1酸化被膜OF1の構成が互いに異なる5個のサンプル(サンプルSA1,…,SA5)の性能結果(水蒸気酸化耐性、発電性能)が示されている。各サンプル(サンプルSA1,…,SA5)は、IC非接続膜厚FT12と、孔内膜厚FT13と、突出部OFPの有無とのいずれかが互いに異なっている。第1酸化被膜OF1の膜厚(FT11、FT12、FT13)としては、IC接続膜厚FT11を基準(基準値:1)としたときの割合が示されている。各サンプルの第1酸化被膜OF1の膜厚(FT11、FT12、FT13)の割合は、図7に示す通りである。なお、各サンプルの第2酸化被膜OF2の膜厚は均一である。
【0098】
図7に示すように、サンプルSA1については、「水蒸気酸化耐性」に関し、膜厚の増加量が第1の判定閾値以下であったため、「特に良い(A)」と評価した。また、「発電性能」に関し、測定値が第3の判定閾値以上であったため、「特に良い(A)」と評価した。サンプルSA2については、「水蒸気酸化耐性」に関し、膜厚の増加量が第1の判定閾値以下であったため、「特に良い(A)」と評価した。また、「発電性能」に関し、測定値が第3の判定閾値より低く、かつ、第4の判定閾値以上であったため、「良い(B)」と評価した。サンプルSA3については、「水蒸気酸化耐性」に関し、膜厚の増加量が第1の判定閾値より大きく、かつ、第2の判定閾値以下であったため、「良い(B)」と評価した。また、「発電性能」に関し、測定値が第3の判定閾値より低く、かつ、第4の判定閾値以上であったため、「良い(B)」と評価した。サンプルSA4については、「水蒸気酸化耐性」に関し、膜厚の増加量が第1の判定閾値より大きく、かつ、第2の判定閾値以下であったため、「良い(B)」と評価した。また、「発電性能」に関し、測定値が第3の判定閾値より低く、かつ、第4の判定閾値以上であったため、「良い(B)」と評価した。サンプルSA5については、「水蒸気酸化耐性」に関し、膜厚の増加量が第2の判定閾値より大きかったため、「不合格(C)」と評価した。また、「発電性能」に関し、測定値が第3の判定閾値より低く、かつ、第4の判定閾値以上であったため、「良い(B)」と評価した。
【0099】
上述したように、サンプルSA1,…,SA4については、「水蒸気酸化耐性」に関し、「良い(B)」以上という評価結果であった。これに対し、サンプルSA5については、「水蒸気酸化耐性」に関し、「不合格(C)」という評価結果であった。なお、「発電性能」に関しては、全てのサンプルSA1,…,SA5について、「良い(B)」以上の評価結果であった。ここで、サンプルSA1,…,SA4では、「IC接続膜厚FT11はIC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13との少なくとも一方よりも薄い」という条件を満たしているのに対し、サンプルSA5では、当該条件を満たしていない。この結果から、「IC接続膜厚FT11はIC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13との少なくとも一方よりも薄い」という条件を満たす構成においては、単セル110の性能(特に「水蒸気酸化耐性」)が向上することが確認された。
【0100】
また、上述したように、サンプルSA1,SA2については、「水蒸気酸化耐性」に関し、「特に良い(A)」以上の評価結果であった。これに対し、サンプルSA3,…,SA5については、「水蒸気酸化耐性」に関し、「良い(B)」以下という評価結果であった。ここで、サンプルSA1,SA2では、「IC接続膜厚FT11はIC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13とのいずれよりも薄い」という条件を満たしているのに対し、サンプルSA3,…,SA5では、当該条件を満たしていない。この結果から、「IC接続膜厚FT11はIC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13とのいずれよりも薄い」という条件を満たす構成においては、単セル110の性能(特に「水蒸気酸化耐性」)が向上することが確認された。
【0101】
また、上述したように、サンプルSA1については、「発電性能」に関し、「特に良い(A)」以上の評価結果であった。これに対し、サンプルSA2,…,SA5については、「発電性能」に関し、「良い(B)」以下という評価結果であった。ここで、サンプルSA1では、第1酸化被膜OF1が突出部OFPを有するのに対し、サンプルSA2,…,SA5では、第1酸化被膜OF1が突出部OFPを有していない。この結果から、第1酸化被膜OF1が突出部OFPを有する構成においては、単セル110の性能(特に「発電性能」)が向上することが確認された。
【0102】
(第2酸化被膜OF2について)
図8には、第2酸化被膜OF2の構成が互いに異なる2個のサンプル(サンプルSA6,SA7)の性能結果(水蒸気酸化耐性、発電性能)が示されている。各サンプル(サンプルSA6,SA7)は、支持体非接続膜厚FT22が互いに異なっている。第2酸化被膜OF2の膜厚(FT21、FT22)としては、支持体接続膜厚FT21を基準(基準値:1)としたときの割合が示されている。各サンプルの第2酸化被膜OF2の膜厚(FT21、FT22)の割合は、図8に示す通りである。なお、各サンプル(サンプルSA6,SA7)の第1酸化被膜OF1の膜厚は均一である。
【0103】
図8に示すように、サンプルSA6については、「水蒸気酸化耐性」に関し、膜厚の増加量が第1の判定閾値以下であったため、「特に良い(A)」と評価した。サンプルSA7については、「水蒸気酸化耐性」に関し、膜厚の増加量が第2の判定閾値より大きかったため、「不合格(C)」と評価した。ここで、サンプルSA6では、「支持体接続膜厚FT21は、支持体非接続膜厚FT22よりも薄い」という条件を満たしているのに対し、サンプルSAでは、当該条件を満たしていない。この結果から、「支持体接続膜厚FT21は、支持体非接続膜厚FT22よりも薄い」という条件を満たす構成においては、単セル110の性能(特に「水蒸気酸化耐性」)が向上することが確認された。
【0104】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0105】
上記実施形態における燃料電池スタック100や単セル110や複合体(燃料電池単セル-インターコネクタ複合体)190の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0106】
上記実施形態(または変形例、以下同様)では、単セル110のXY断面における金属支持体180の各貫通孔50形状は、円形であるが、円形以外の形状(例えば矩形)であってもよい。また、上記実施形態では、各貫通孔50の径は、金属支持体180の上面(対向面)S1における開口の位置から下面S2における開口の位置にわたって略一定であるが、いずれかの位置で異なっていてもよい。また、上記実施形態では複数の貫通孔50の構成は同様であるが、いずれかの貫通孔の構成が他の貫通孔の構成と異なっていてもよい。例えば、複数の貫通孔50の径は、互いに略同一であるが、互いに異なっていてもよい。
【0107】
第1酸化被膜OF1はIC接続被膜部OF11を有していなくてもよい。このとき、IC接続膜厚FT11(IC接続被膜部OF11の膜厚)はゼロとなるため、上述した第1特定条件(IC接続膜厚FT11はIC非接続膜厚FT12と孔内膜厚FT13との少なくとも一方よりも薄い)を満たす。そのため、この構成においても、上記実施形態の効果と同様の効果を奏する。
【0108】
第2酸化被膜OF2は支持体接続被膜部OF21を有していなくてもよい。このとき、支持体接続膜厚FT21(支持体接続被膜部OF21の膜厚)はゼロとなるため、上述した第2特定条件(支持体接続膜厚FT21は支持体非接続膜厚FT22よりも薄い)を満たす。そのため、この構成においても、上記実施形態の効果と同様の効果を奏する。
【0109】
上記実施形態では、(第1酸化被膜OF1のIC非接続被膜部OF12の)突出部OFPは、IC非接続被膜部OF12のY軸方向の両端それぞれに形成されており、このIC非接続被膜部OF12の配置は製造上の理由等によれば特に好適であるが、IC非接続被膜部OF12の配置は種々変更可能であり、例えば、突出部OFPがIC非接続被膜部OF12のY軸方向の中央等に位置していてもよい。また、突出部OFPの個数は特に限られるものではない。また、IC非接続被膜部OF12は突出部OFPを有していなくてもよい。
【0110】
第1酸化被膜OF1や第2酸化被膜OF2は、Crを含まない金属酸化物であってもよい。
【0111】
上記実施形態では、第1酸化被膜OF1や第2酸化被膜OF2は、熱処理(例えば、大気中1000℃で加熱)を施すことにより形成されるものであるが、コーティングにより形成される膜等であってもよい。
【0112】
金属支持体180とインターコネクタ150とが接続されている部分P1において、金属支持体180と金属支持体180と第1酸化被膜OF1(IC接続被膜部OF11)との間や、第1酸化被膜OF1(IC接続被膜部OF11)とインターコネクタ150との間に別の部材(例えば、特定の機能を有する元素を含有する層)が介在していてもよい。
【0113】
金属支持体180とインターコネクタ150とが接続されている部分P1において、金属支持体180と金属支持体180と第1酸化被膜OF1(IC接続被膜部OF11)との間や、第1酸化被膜OF1(IC接続被膜部OF11)とインターコネクタ150との間に別の部材等(例えば、特定の機能を有する元素を含有する層)が介在していてもよい。
【0114】
金属支持体180とインターコネクタ150とが接続されている部分P1において、金属支持体180と金属支持体180と第2酸化被膜OF2(支持体接続被膜部OF21)との間や、第2酸化被膜OF2(支持体接続被膜部OF21)とインターコネクタ150との間に別の部材等(例えば、特定の機能を有する元素を含有する層)が介在していてもよい。
【0115】
本実施形態では、上述したように金属支持体180の表面の全体に第1酸化被膜OF1が形成されているが、金属支持体180の表面の一部のみに第1酸化被膜OF1が形成されていてもよい。
【0116】
本実施形態では、上述したようにインターコネクタ150の表面の全体に第2酸化被膜OF2が形成されているが、インターコネクタ150の表面の一部のみに第2酸化被膜OF2が形成されていてもよい。
【0117】
上記実施形態では、各発電単位102が共通の構成であるが、一部の発電単位102が異なる構成であってもよい。例えば、上記実施形態では、各IC非接続被膜部OF12が共通の構成であるが、一部のIC非接続被膜部OF12が異なる構成であってもよい。
【0118】
上記実施形態における各部材を構成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により構成されていてもよい。また、上記実施形態における単セル110の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【0119】
上記実施形態では、燃料極側集電体144を備える部材をインターコネクタ150としているが、燃料極側集電体144を備えていない部材をインターコネクタ150としてもよい。
【0120】
上記実施形態は、金属支持体180が燃料極116に対してZ軸負方向側に位置する部材であり、インターコネクタ150が金属支持体180に対してZ軸負方向側(Z軸方向の燃料極116とは反対側)に位置する部材である燃料電池スタック100に本発明(第1酸化被膜OF1の膜厚や第2酸化被膜OF2の膜厚を上記のようなものとする点等)を適用したものである。また、金属支持体180が空気極114に対してZ軸正方向側に位置する部材であり、インターコネクタ150が金属支持体180に対してZ軸正方向側(Z軸方向の空気極114とは反対側)に位置する部材である燃料電池スタック100に本発明を適用してもよい。なお、この構成においては、空気極が特許請求の範囲における特定電極に該当する。
【0121】
上記実施形態では、燃料ガスに含まれる水素と酸化剤ガスに含まれる酸素との電気化学反応を利用して発電を行う固体酸化物形燃料電池(SOFC)を対象としているが、本明細書に開示される技術は、水の電気分解反応を利用して水素の生成を行う固体酸化物形電解セル(SOEC)の構成単位である電解単セルおよび複数の電解単セルを備える電解セルスタックにも同様に適用可能である。なお、電解セルスタックの構成は、例えば特開2016-81813号に記載されているように公知であるためここでは詳述しないが、概略的には上述した実施形態における燃料電池スタック100と同様の構成である。すなわち、上述した実施形態における燃料電池スタック100を電解セルスタックと読み替え、発電単位102を電解セル単位と読み替え、単セル110を電解単セルと読み替えればよい。ただし、電解セルスタックの運転の際には、空気極114がプラス(陽極)で燃料極116がマイナス(陰極)となるように両電極間に電圧が印加されると共に、貫通孔108を介して原料ガスとしての水蒸気が供給される。これにより、各電解セル単位において水の電気分解反応が起こり、燃料室176で水素ガスが発生し、貫通孔108を介して電解セルスタックの外部に水素が取り出される。このような構成の電解単セルにおいても、上記実施形態と同様の構成を採用することにより、上記実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0122】
上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本明細書に開示される技術は、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池(または電解セル)にも適用可能である。
【符号の説明】
【0123】
22(22A、…、22E):ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:(ガス通路部材の)本体部 29:(ガス通路部材の)分岐部 50:(金属支持体の)貫通孔 100:燃料電池スタック 102:発電単位 104,106:エンドプレート 108:貫通孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム部材 131:孔 132:空気極側ガス供給連通流路 133:空気極側ガス排出連通流路 134:空気極側集電体 135:集電体要素 140:燃料極側フレーム部材 141:孔 142:燃料極側ガス供給連通流路 143:燃料極側ガス排出連通流路 144:燃料極側集電体 145:集電体要素 150:インターコネクタ 161:空気極側ガス供給マニホールド 162:空気極側ガス排出マニホールド 166:空気室 171:燃料極側ガス供給マニホールド 172:燃料極側ガス排出マニホールド 176:燃料室 177:特定ガス流路 180:金属支持体 190:複合体(燃料電池単セル-インターコネクタ複合体) FG:燃料ガス FOG:燃料オフガス FT11:IC接続膜厚 FT12:IC非接続膜厚 FT13:孔内膜厚 FT14:第1酸化被膜の特定部分の膜厚 FT21:(第2酸化被膜の)支持体接続膜厚 FT22:(第2酸化被膜の)支持体非接続膜厚 OF11:(第1酸化被膜の)IC接続被膜部 OF12:(第1酸化被膜の)IC非接続被膜部 OF13:(第1酸化被膜の)孔内被膜部 OF14:(第1酸化被膜の)特定部分 OF1:第1酸化被膜 OF21:(第2酸化被膜の)支持体接続被膜部 OF22:(第2酸化被膜の)支持体非接続被膜部 OF2:第2酸化被膜 OFP:(第2酸化被膜のIC非接続被膜部の)突出部 OG:酸化剤ガス OOG:酸化剤オフガス P1:金属支持体とインターコネクタとが接続されている部分 P2:金属支持体とインターコネクタとが離隔している部分 S1:(金属支持体の)上面 S2:(金属支持体の)下面
図1
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図8