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  • 特開-移動通信ネットワークの制御装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140487
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】移動通信ネットワークの制御装置
(51)【国際特許分類】
   H04W 24/04 20090101AFI20230928BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230928BHJP
【FI】
H04W24/04
G06N20/00 130
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046347
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 和広
(72)【発明者】
【氏名】塚本 優
(72)【発明者】
【氏名】米川 慧
(72)【発明者】
【氏名】村松 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】黒川 茂莉
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA26
(57)【要約】
【課題】コンセプトドリフトが生じても推論性能の劣化を抑える。
【解決手段】移動通信ネットワークの制御装置は、前記移動通信ネットワークから収集データを収集する収集手段と、第1学習モデルを使用して前記収集データに基づき推論を行い、当該推論の結果に基づき前記移動通信ネットワークを制御する制御手段と、前記収集データを蓄積するデータベースにアクセスするアクセス手段と、前記データベースに蓄積された前記収集データに基づき、前記収集データのコンセプトドリフトが発生しているか否かを検知し、前記コンセプトドリフトの発生を検知すると、前記制御手段が前記推論に使用する前記第1学習モデルの更新をトリガする検知手段と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信ネットワークの制御装置であって、
前記移動通信ネットワークから収集データを収集する収集手段と、
第1学習モデルを使用して前記収集データに基づき推論を行い、当該推論の結果に基づき前記移動通信ネットワークを制御する制御手段と、
前記収集データを蓄積するデータベースにアクセスするアクセス手段と、
前記データベースに蓄積された前記収集データに基づき、前記収集データのコンセプトドリフトが発生しているか否かを検知し、前記コンセプトドリフトの発生を検知すると、前記制御手段が前記推論に使用する前記第1学習モデルの更新をトリガする検知手段と、
を備えている制御装置。
【請求項2】
移動通信ネットワークの制御装置であって、
前記移動通信ネットワークから収集データを収集する収集手段と、
第1学習モデルを使用して前記収集データに基づき推論を行い、当該推論の結果に基づき前記移動通信ネットワークを制御する制御手段と、
前記制御手段による前記推論の結果と、前記制御手段が前記推論の結果に基づき前記移動通信ネットワークを制御した後に前記収集手段が収集した収集データに基づき前記推論の性能を判定し、判定した性能を示す性能データをデータベースに格納する判定手段と、
前記データベースにアクセスするアクセス手段と、
前記データベースに蓄積された前記性能データに基づき、前記性能データのコンセプトドリフトが発生しているか否かを検知し、前記コンセプトドリフトの発生を検知すると、前記制御手段が前記推論に使用する前記第1学習モデルの更新をトリガする検知手段と、
を備えている制御装置。
【請求項3】
前記検知手段が前記第1学習モデルの更新をトリガすると、前記コンセプトドリフトが発生した後に前記収集手段が収集した収集データに基づき第2学習モデルを生成する学習手段をさらに備えている、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記検知手段は、周期的に前記コンセプトドリフトが発生しているか否かを検知する、請求項1から3のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項5】
1つ以上のプロセッサを有する装置の前記1つ以上のプロセッサで実行されると、前記装置を請求項1から4のいずれか1項に記載の制御装置として機能させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、移動通信ネットワークの制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
非特許文献1は、移動通信ネットワークの無線アクセスネットワーク(RAN)の制御に対して機械学習結果を利用する構成を開示している。具体的には、非特許文献1は、RANから収集したデータに基づき学習を行って学習モデルを生成し、RANから収集したデータに基づき当該学習モデルを使用して推論を行い、推論結果に従ってRANを制御することを開示している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】O-RAN Alliance,"AI/ML workflow description and requirements",O-RAN.WG2.AIML-v01.03,2021年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
時間の経過や環境の変化よって、RANから収集して推論に使用するデータの傾向が、学習モデルの生成時のデータの傾向に対して大きく変化することが生じ得る。例えば、ある地域のRANからサービス毎のトラフィック量をデータとして収集している場合において、当該地域に新たな商業施設が建設された場合、商業施設の建設前後では、サービス毎のトラフィック量が大きく変化し得る。この様な場合、商業施設の建設前に収集したデータに基づき生成した学習モデルによる推論性能は劣化し得る。なお、以下の説明において、データの傾向が、それまでの傾向に対して所定基準を超えて変化することを"コンセプトドリフト"と表記する。
【0005】
本発明は、コンセプトドリフトが生じても推論性能の劣化を抑える技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によると、移動通信ネットワークの制御装置は、前記移動通信ネットワークから収集データを収集する収集手段と、第1学習モデルを使用して前記収集データに基づき推論を行い、当該推論の結果に基づき前記移動通信ネットワークを制御する制御手段と、前記収集データを蓄積するデータベースにアクセスするアクセス手段と、前記データベースに蓄積された前記収集データに基づき、前記収集データのコンセプトドリフトが発生しているか否かを検知し、前記コンセプトドリフトの発生を検知すると、前記制御手段が前記推論に使用する前記第1学習モデルの更新をトリガする検知手段と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によると、コンセプトドリフトが生じても推論性能の劣化を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態による制御装置を含むシステムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。尚、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものでなく、また実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち二つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、同一若しくは同様の構成には同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0010】
<第一実施形態>
図1は、本実施形態によるシステム構成図である。制御装置1は、RAN2を制御する。図1は、制御装置1の機能ブロックも示している。図1に示す機能ブロックは、例えば、1つ以上のプロセッサを有するコンピュータの当該1つ以上のプロセッサに適切なプログラムを実行させることで実現され得る。なお、制御装置1内の各機能ブロック間を結ぶ矢印の内、実線の矢印は、通常状態における情報/データの流れを示し、点線の矢印は、コンセプトドリフトが生じた際の情報/データの流れを示している。
【0011】
収集部17は、RAN2からデータを繰り返し収集する。なお、収集部17がRAN2から収集するデータを"収集データ"と表記する。収集データは、推論部13及び性能判定部16に出力されると共に、データベース部15に蓄積される。推論部13は、学習部12が過去に生成した学習モデルを有する。推論部13は、収集部17が新たに収集した収集データと学習モデルに基づき推論を行って推論結果を制御部14及び性能判定部16に出力する。制御部14は、推論結果に基づきRAN2を制御する。性能判定部16は、制御部14が推論結果に基づきRAN2を制御した後に収集された収集データと、当該推論結果と、に基づき推論部13の推論性能を判定し、判定した推論性能を示す性能データをデータベース部15に格納する。
【0012】
一例として、サービス毎の品質を目標値以上にすることを目的とする場合、例えば、収集部17は、サービス毎のトラフィック量、無線デバイス数、無線リソースや伝送路リソースの使用率と、サービス毎の品質等を収集データとして収集する。推論部13は、最新の収集データに含まれるサービス毎のトラフィック量、無線デバイス数、無線リソース/伝送路リソースの使用率等に基づきサービス毎の品質を推論する。制御部14は、推論されたサービス毎の品質に基づき、サービス毎の品質を目標値以上とするためのRAN2のDU/CU等の機能配置を決定し、決定した機能配置となる様にRAN2を制御する。性能判定部16は、推論部13が推論したサービス毎の品質(推論結果)と、当該推論結果に基づき制御部14がRAN2を制御した後に収集した収集データに含まれるサービス毎の品質とに基づき推論性能を判定する。
【0013】
検知部11は、例えば、周期的にデータベース部15から収集データ及び性能データの内の一方、又は、両方を取得し、コンセプトドリフトが生じているか否か、つまり、収集データや性能データの傾向が所定基準を超えて変化しているか否かを検知する。例えば、コンセプトドリフトが生じているか否かを検知するために、検知部11は、推論部13が現在推論に使用している学習モデルを生成するより前のタイミングから現在までの間に収集部17によって収集された収集データを使用し得る。また、コンセプトドリフトが生じているか否かを検知するために、検知部11は、推論部13が現在推論に使用している学習モデルを生成したタイミングから現在までの間に性能判定部16が生成した性能データを使用し得る。また、検知部11は、コンセプトドリフトが発生している場合、コンセプトドリフトが発生した凡そのタイミングを判定し得る。なお、コンセプトドリフト発生の検知には、DDM(Drift Detection Method)、PCA-CD (PCA-based change detection)、CDBD (Confidence Distribution Batch Detection)、UDD (Uncertainty Drift Detection)等を使用することができる。
【0014】
コンセプトドリフトの発生を検知すると、検知部11は、新たな学習モデルの生成をトリガする。具体的には、検知部11は、学習部12に再学習を指示する。学習部12は、再学習が指示されると、収集部17が新たに収集した収集データに基づき新たな学習モデルを生成し、新たな学習モデルを管理部10に出力する。なお、コンセプトドリフトが発生した凡そのタイミングを検知部11が判定している場合、学習部12は、新たな学習モデルの生成に、データベース部15に格納されているコンセプトドリフト発生後の収集データを使用し得る。管理部10は、推論部13が使用している現在の学習モデルと、新たな学習モデルとを比較し、新たな学習モデルによる推論性能が、現在の学習モデルによる推論性能より高い場合、新たな学習モデルを推論部13に出力する。推論部13は、以後、新たな学習モデルを使用して推論を行う。なお、新たな学習モデルによる推論性能が、現在の学習モデルによる推論性能より低い場合、管理部10は、学習部12に再学習を指示することができる。
【0015】
以上、データベース部15に収集データや性能データを蓄積し、収集データや性能データに基づきコンセプトドリフトの発生を検知する。そして、コンセプトドリフトの発生を検知すると、収集データに基づき再学習を実行して学習モデルを更新する。この構成により、コンセプトドリフトの発生による推論性能の劣化を抑えることができる。
【0016】
なお、制御装置1は、1つ以上のコンピュータにより実現され得る。また、データベース部15を制御装置1に設けるのではなく制御装置1がアクセス可能な外部装置に設けることもできる。同様に、学習部12を制御装置1に設けるのではなく制御装置1がアクセス可能な外部装置に設けることもできる。
【0017】
なお、本開示による制御装置1は、コンピュータを制御装置1として動作させるプログラムにより実現することができる。プログラムは、1つ以上のプロセッサを有する装置の1つ以上のプロセッサで実行されると、当該装置を上記制御装置1として機能させる様に構成される。プログラムは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶されて、又は、ネットワーク経由で配布が可能なものである。
【0018】
発明は上記の実施形態に制限されるものではなく、発明の要旨の範囲内で、種々の変形・変更が可能である。
【0019】
以上の構成により、コンセプトドリフトが生じても推論性能の劣化を抑えることができる。したがって、国連が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標9「レジリエントなインフラを整備し、持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」に貢献することが可能となる。
【符号の説明】
【0020】
15:データベース部、11:検知部、12:学習部
図1