(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023014052
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】反射鏡及び乗物用反射鏡
(51)【国際特許分類】
E01F 9/619 20160101AFI20230119BHJP
B60R 1/072 20060101ALI20230119BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E01F9/619
B60R1/072
G02B5/08 C
G02B5/08 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022112936
(22)【出願日】2022-07-14
(31)【優先権主張番号】P 2021117973
(32)【優先日】2021-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022087490
(32)【優先日】2022-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521316992
【氏名又は名称】株式会社埴岡製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121603
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 元昭
(74)【代理人】
【識別番号】100141656
【弁理士】
【氏名又は名称】大田 英司
(74)【代理人】
【識別番号】100182888
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100196357
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 吉章
(74)【代理人】
【識別番号】100067747
【弁理士】
【氏名又は名称】永田 良昭
(72)【発明者】
【氏名】埴岡 功
【テーマコード(参考)】
2D064
2H042
3D053
【Fターム(参考)】
2D064AA11
2D064AA22
2D064BA17
2D064CA04
2D064DA01
2D064DA06
2D064EB24
2D064HA01
2H042DA01
2H042DA03
2H042DA07
2H042DA10
2H042DA16
2H042DB11
2H042DC01
2H042DC11
2H042DD05
2H042DE01
2H042DE02
3D053FF03
3D053GG06
3D053HH03
3D053HH21
3D053KK02
(57)【要約】
【課題】鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面が曇ることを防止できる反射鏡及び乗物用反射鏡を提供することを目的とする。
【解決手段】少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材21を有する反射鏡本体20を備え、凸面部材21が軽金属部材または軽合金部材にて構成された反射鏡であることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、
前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成された
反射鏡。
【請求項2】
前記反射鏡本体は、前記凸面部材と、当該凸面部材の後部に取付けられた裏板とが備えられ、
前記裏板は軽金属部材または軽合金部材にて構成され、
前記凸面部材と前記裏板との間に形成された空気層が備えられた
請求項1に記載の反射鏡。
【請求項3】
前記裏板の周縁部に設けられ表面方向に突出する環状の外側フランジ部と、
前記凸面部材の周縁部に設けられ裏面方向に突出して前記外側フランジ部の内面に配置される内側フランジ部とが備えられた
請求項2に記載の反射鏡。
【請求項4】
前記反射鏡本体を支持する支持部材と、
前記反射鏡本体を前記支持部材に取付ける取付け部材と、
前記取付け部材と前記反射鏡本体との間に介設される遮熱部材とが備えられた
請求項1に記載の反射鏡。
【請求項5】
前記支持部材は前記反射鏡本体を路面に支持する支柱である
請求項4に記載の反射鏡。
【請求項6】
前記反射鏡本体の上部には軽金属部材または軽合金部材にて形成されたカバー部材が設けられた
請求項1に記載の反射鏡。
【請求項7】
前記凸面部材の外表面に設けられたクロムメッキ層を備えた
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の反射鏡。
【請求項8】
少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、
前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、
前記凸面部材の外表面にアルマイト加工されたアルマイト層を設けた
反射鏡。
【請求項9】
少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、
前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、
前記凸面部材の外表面にメッキ塗装されたメッキ塗装層を設けた
反射鏡。
【請求項10】
少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、
前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、
前記凸面部材の外表面に鏡面無電解ニッケル層を備えた
反射鏡。
【請求項11】
少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、
前記凸面部材が鏡面光沢アルミニウム合金板にて構成された
反射鏡。
【請求項12】
少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、
前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成された
乗物用反射鏡。
【請求項13】
前記反射鏡本体は、前記凸面部材と、当該凸面部材の後部に取付けられた裏板とが備えられ、
前記裏板は軽金属部材または軽合金部材にて構成され、
前記凸面部材と前記裏板との間に形成された空気層が備えられた
請求項12に記載の乗物用反射鏡。
【請求項14】
前記裏板の周縁部に設けられ表面方向に突出する環状の外側フランジ部と、
前記凸面部材の周縁部に設けられ裏面方向に突出して前記外側フランジ部の内面に配置される内側フランジ部とが備えられた
請求項13に記載の乗物用反射鏡。
【請求項15】
前記凸面部材の外表面に設けられたクロムメッキ層を備えた
請求項12に記載の乗物用反射鏡。
【請求項16】
前記凸面部材の外表面にアルマイト加工されたアルマイト層を設けた
請求項12に記載の乗物用反射鏡。
【請求項17】
前記凸面部材の外表面にメッキ塗装されたメッキ塗装層を設けた
請求項12に記載の乗物用反射鏡。
【請求項18】
前記凸面部材の外表面に鏡面無電解ニッケル層を備えた
請求項12に記載の乗物用反射鏡。
【請求項19】
前記凸面部材が鏡面光沢アルミニウム合金板にて構成された
請求項12に記載の乗物用反射鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、道路の交差点やカーブ地点その他の見通しの悪い場所に設置するカーブミラーや車両の車外視認鏡のような反射鏡及び乗物用反射鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示された従来の道路反射鏡は、ステンレス鋼等の金属板からなる鏡本体の表面に、無電解メッキによりニッケルとリンを主成分とする合金皮膜が析出されて構成されている。
このような道路反射鏡は、ステンレス鋼により耐食性を確保するとともに、合金皮膜により鏡面反射率を損なうことなく耐食性を備えることができるとされている。
【0003】
しかしながら、前述の道路反射鏡は、ステンレス鋼で構成されているため、反射鏡表面に所謂結露が発生し、鏡面が曇るという問題点があった。
詳述すると、空気の比熱が1.006~1.007〔kJ/(kg・k)〕であるのに対して、道路反射鏡を構成するステンレスの比熱は0.442~0.499〔kJ/(kg・k)〕と小さい。つまり、大気に比べて道路反射鏡は温度変化しやすく、大気温度が低下する放射冷却により鏡面の温度が周辺の大気温度よりも先行して大きく低下しやすい。そして、鏡面の温度が露点温度より低下すると、空気中の水分が凝縮して道路反射鏡表面に水滴となって付着する所謂結露が発生し、鏡面が曇るという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、この発明は、鏡面に対する結露の発生を抑制し、鏡面が曇ることを防止できる反射鏡及び乗物用反射鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成されたことを特徴とする反射鏡である。
【0007】
ここに、軽金属部材、軽合金部材とは、比熱が0.85〔kJ/(kg・k)〕以上のものとする。
軽金属としては比熱が0.905〔kJ/(kg・k)〕のアルミニウム(純金属)や、比熱が1.02〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム(純金属)が好ましい。また、軽合金としては、比熱が0.88~0.9〔kJ/(kg・k)〕のアルミニウム合金や、比熱が0.96~1.05〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム合金が好ましい。
反射鏡は、カーブミラーなどの道路反射鏡のみならず、屋外や屋内における通路の曲がり部や死角部などを映すものも含まれる。
【0008】
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
詳述すると、凸面部材を構成する軽金属部材または軽合金部材の比熱は、空気の比熱1.006~1.007〔kJ/(kg・k)〕と近似する。そのため、凸面部材と大気(空気)とは同等の温度変化となり、両者間に温度差が生じにくい。これにより、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
【0009】
この発明の態様として、前記反射鏡本体は、前記凸面部材と、当該凸面部材の後部に取付けられた裏板とが備えられ、前記裏板は軽金属部材または軽合金部材にて構成され、前記凸面部材と前記裏板との間に形成された空気層が備えられてもよい。
【0010】
この発明により、裏板も凸面部材と同様に軽金属部材または軽合金部材にて構成されるため、裏板も空気と同等に温度変化し、外気と裏板との間に温度差が生じにくい。また、凸面部材の裏面側に、温度変化が外気と同等の空気層を確保することができ、温度変化しても凸面部材と外気との温度差が生じにくい。これにより、結露の発生を抑制し、鏡面が曇ることを防止できる。
【0011】
またこの発明の態様として、前記裏板の周縁部に設けられ表面方向に突出する環状の外側フランジ部と、前記凸面部材の周縁部に設けられ裏面方向に突出して前記外側フランジ部の内面に配置される内側フランジ部とが備えられてもよい。
【0012】
この発明により、何等かの原因により外側フランジ部と内側フランジ部との締結が外れた場合、前記凸面部材はその下端側を支点として上端側が前方下方へ外れようとするが、この上端側の前方下方への移動時には、内側フランジ部の上端側が外側フランジ部の上端側内面に引っ掛かって、上述の移動が阻止され、凸面部材の脱落を抑制することができる。
【0013】
またこの発明の態様として、前記反射鏡本体を支持する支持部材と、前記反射鏡本体を前記支持部材に取付ける取付け部材と、前記取付け部材と前記反射鏡本体との間に介設される遮熱部材とが備えられてもよい。
【0014】
この発明により、支持部材から反射鏡本体への熱影響を防止し、結露の発生を抑制し、鏡面が曇ることを防止できる。
詳述すると、炭素鋼、いわゆるスチールで構成された支持部材の比熱は0.132~0.473〔kJ/(kg・k)〕で空気と比熱が大きく異なり、両者間に温度差が生じやすい。
【0015】
そのため、前記遮熱部材を設けない場合には、本来ならば、支持部材の温度変化に影響され、前述の温度差により反射鏡本体に結露が発生して、鏡面が曇ることになるが、反射鏡本体から取付け部材を介して支持部材に熱が消散することを前記遮熱部材によって防止でき、支持部材から反射鏡本体への熱影響を防ぐことができる。
【0016】
またこの発明の態様として、前記支持部材は前記反射鏡本体を路面に支持する支柱であってもよい。
この発明により、前記支柱により反射鏡本体を路面に支持するため、反射鏡の設置自由度確保と汎用性確保との両立を図ることができる。
【0017】
しかしながら、前記支柱は空気と比熱が異なるうえ、地表部の温度の影響も受けるため、支柱と空気との温度差がさらに生じやすくなり、この温度差により本来ならば反射鏡本体に結露が発生して、鏡面が曇るが、支柱から反射鏡本体への熱影響を前記遮熱部材にて遮断することができる。これにより、反射鏡本体の結露の発生を抑制し、鏡面が曇ることを防止できる。
【0018】
またこの発明の態様として、前記反射鏡本体の上部には軽金属部材または軽合金部材にて形成されたカバー部材が設けられてもよい。
この発明により、カバー部材による雨除け、雪除け作用にて鏡面の視認性確保を図ることができる。また、軽金属部材または軽合金部材にて形成されたカバー部材を設けることで、カバー部材も空気と同等に温度変化し、外気とカバー部材との間に温度差が生じにくく、カバー部材が凸面部材に悪影響を及ぼすことがなく、
【0019】
またこの発明の態様として、前記凸面部材の外表面に設けられたクロムメッキ層を備えてもよい。
この発明により、クロムは光沢性に優れているため、前記クロムメッキ層を凸面部材の外表面に設けることで、充分な鏡面反射率を確保することができる。
【0020】
またこの発明は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、前記凸面部材の外表面にアルマイト加工されたアルマイト層を設けた反射鏡であってもよい。
【0021】
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
また、アルマイト加工によって設けられたアルマイト層により、凸面部材の鏡面加工された外表面が、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0022】
またこの発明は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、前記凸面部材の外表面にメッキ塗装されたメッキ塗装層を設けた反射鏡であってもよい。
【0023】
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
また、メッキ塗装は通常のメッキ処理より容易に前記メッキ塗装層を凸面部材の外表面に設けることができ、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0024】
またこの発明は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、前記凸面部材の外表面に鏡面無電解ニッケル層を備えた反射鏡であってもよい。
【0025】
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
また、鏡面無電解ニッケル層を凸面部材の外表面に設けることで、鏡面反射率をより向上することができるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0026】
またこの発明は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、前記凸面部材が鏡面光沢アルミニウム合金板にて構成された反射鏡であってもよい。
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
【0027】
また、前記凸面部材が鏡面光沢アルミニウム合金板で構成されているため、軽金属部材または軽合金部材にて構成され、鏡面加工された前記凸面部材の外表面に表面保護層を設けることなく、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0028】
またこの発明は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材を有する反射鏡本体が備えられ、前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成された乗物用反射鏡であることを特徴とする。
乗物用反射鏡とは、自動車、トラック、バス等に配置されるドアミラーやフェンダミラー等のバックミラー、または、トラクタ、オートバイ(auto bicycle)、ハンドル型電動車椅子、電動キックスケータ、自転車等に配置されるバックミラー、または、車両に配置されるサイドアンダミラーやリヤアンダミラー等の補助ミラーを含む。
【0029】
この発明により、乗物用反射鏡において、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止でき、外方視認性の向上を図ることができる。
詳述すると、凸面部材を構成する軽金属部材または軽合金部材の比熱は、空気の比熱1.006~1.007〔kJ/(kg・k)〕と近似する。そのため、凸面部材と大気(空気)とは同等の温度変化となり、両者間に温度差が生じにくい。これにより、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
【0030】
この発明の態様として、前記反射鏡本体は、前記凸面部材と、当該凸面部材の後部に取付けられた裏板とが備えられ、前記裏板は軽金属部材または軽合金部材にて構成され、前記凸面部材と前記裏板との間に形成された空気層が備えられてもよい。
【0031】
この発明により、裏板も凸面部材と同様に軽金属部材または軽合金部材にて構成されるため、裏板も空気と同等に温度変化し、外気と裏板との間に温度差が生じにくい。また、凸面部材の裏面側に、温度変化が外気と同等の空気層を確保することができ、温度変化しても凸面部材と外気との温度差が生じにくい。これにより、結露の発生を抑制し、鏡面が曇ることを防止できる。
【0032】
またこの発明の態様として、前記裏板の周縁部に設けられ表面方向に突出する環状の外側フランジ部と、前記凸面部材の周縁部に設けられ裏面方向に突出して前記外側フランジ部の内面に配置される内側フランジ部とが備えられてもよい。
【0033】
この発明により、何等かの原因により外側フランジ部と内側フランジ部との締結が外れた場合、前記凸面部材はその下端側を支点として上端側が前方下方へ外れようとするが、この上端側の前方下方への移動時には、内側フランジ部の上端側が外側フランジ部の上端側内面に引っ掛かって、上述の移動が阻止され、凸面部材の脱落を抑制することができる。
【0034】
またこの発明の態様として、前記凸面部材の外表面に設けられたクロムメッキ層を備えてもよい。
この発明により、クロムは光沢性に優れているため、前記クロムメッキ層を凸面部材の外表面に設けることで、充分な鏡面反射率を確保することができる。
【0035】
またこの発明の態様として、前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、前記凸面部材の外表面にアルマイト加工されたアルマイト層を設けた乗物用反射鏡であってもよい。
【0036】
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
また、アルマイト加工によって設けられたアルマイト層により、凸面部材の鏡面加工された外表面が、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0037】
またこの発明の態様として、前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、前記凸面部材の外表面にメッキ塗装されたメッキ塗装層を設けてもよい。
【0038】
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
また、メッキ塗装は通常のメッキ処理より容易に前記メッキ塗装層を凸面部材の外表面に設けることができ、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0039】
またこの発明の態様として、前記凸面部材が軽金属部材または軽合金部材にて構成され、前記凸面部材の外表面に鏡面無電解ニッケル層を備えてもよい。
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
また、鏡面無電解ニッケル層を凸面部材の外表面に設けることで、鏡面反射率をより向上することができるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0040】
またこの発明の態様として、前記凸面部材が鏡面光沢アルミニウム合金板にて構成されてもよい。
この発明により、鏡面(凸面部材の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、当該鏡面が曇ることを防止できる。
【0041】
また、前記凸面部材が鏡面光沢アルミニウム合金板で構成されているため、軽金属部材または軽合金部材にて構成され、鏡面加工された前記凸面部材の外表面に表面保護層を設けることなく、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【発明の効果】
【0042】
この発明によれば、鏡面に対する結露の発生を抑制し、鏡面が曇ることを防止できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図5】遮熱部材配置構造の他の実施形態を示す断面図。
【
図7】反射鏡の他の実施形態を示す断面図による説明図。
【
図8】乗物用反射鏡の一例として車両用ドアミラーの実施形態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0044】
この発明の一実施形態を図面に基づいて詳述する。
図1は道路反射鏡10の正面図を示し、
図2は
図1のA-A線矢視断面図を示している。
図3は
図2のB―B線矢視断面図を示し、
図4は
図2の部分拡大断面図を示している。
【0045】
図1、
図2に示すように、この道路反射鏡10は、例えば、道路の交差点やカーブ地点その他の見通しの悪い場所において、支持部材としての支柱11の上端部に取付けて使用するものである。
【0046】
支柱11は、スチール等の金属パイプにより形成されており、当該支柱11を構成するスチールの比熱は0.132~0.473〔kJ/(kg・k)〕となる。また、金属パイプ製の支柱11の上端部にはキャップ12が取付けられていて、支柱11の上端開口から支柱11内に雨水や雪等が浸入することを防止すべく構成している。
【0047】
道路反射鏡10を構成する反射鏡本体20は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材21と、この凸面部材21の後部に取付けられた裏板22とを備えている。
上述のように、凸面部材21の後部に裏板22を取付けることで、凸面部材21と裏板22との間に形成された空気層としての空気室23を備えている。
【0048】
凸面部材21は、
図1に示すように、正面視で円形に形成されるとともに、
図2に示すように、円の中心程、前方へ突出するように湾曲した断面円弧形状に構成されている。
この実施形態では、凸面部材21の板厚は2.0mmに設定されており、当該凸面部材21の外表面の曲率半径は2200mmに設定されているが、板厚及び曲率半径はこの数値に限定されるものではない。
【0049】
また、凸面部材21の外周縁部には裏面方向に突出する円環状の内側フランジ部21a(いわゆるインナーフランジ)が一体形成されている。なお、凸面部材21の形状は、正面視円形に限らず、方形状などの角形であってもよい。
【0050】
裏板22は、凸面部材21の形状と対応すべく正面視で円形に形成されるとともに、
図2に示すように、断面フラット形状に構成されている。また、裏板22の外周縁部には表面方向に突出する円環状の外側フランジ部22a(いわゆるアウターフランジ)が一体形成されている。なお、裏板22の形状は、正面視円形に限るものではなく、凸面部材21の形状と対応する形状であれば、方形状などの角形であってもよい。
【0051】
前述の凸面部材21の内側フランジ部21aは、裏板22の外側フランジ部22aの内面つまり内周側に配置されるものである。換言すれば、裏板22の外側フランジ部22aが凸面部材21の内側フランジ部21aの外側に位置しており、外側フランジ部22aで凸面部材21を保護するように構成している。
【0052】
図1に示すように、表面側に位置する凸面部材21と、裏面側に位置する裏板22とは、複数の締結部材であるボルトB1を用いて締結固定されている。
詳しくは、裏板22の外側フランジ部22aの内面に、凸面部材21の内側フランジ部21aを配置させた状態下において、反射鏡本体20の径方向外方から複数のボルトB1を用いて、外側フランジ部22aと内側フランジ部21aとを締結固定したものである。
【0053】
なお、この実施形態では円周上90度の等間隔を隔てて合計4本のボルトB1により各フランジ部21a,22aを締結固定したが、円周上120度の等間隔を隔てて合計3本のボルトB1を用いる構成、円周上72度の等間隔を隔てて合計5本のボルトB1を用いる構成、あるいは、円周上任意角度の等間隔、または、不等間隔を隔てて複数のボルトB1を用いる構成などを採用してもよい。
【0054】
図1、
図2、
図4に示すように、反射鏡本体20の上部には、複数の締結部材であるボルトB2を用いて正面視円弧形状のカバー部材25が取付けられている。
詳しくは、反射鏡本体20上部における裏板22の外側フランジ部22aと凸面部材21の内側フランジ部21aとが重合する位置において、内側フランジ部21aのボルト締結位置には予めインサートナット26(
図4参照)を設け、ボルト締結位置上部にカバー部材25を配置した状態下において、上方からインサートナット26にボルトB2を締結することで、カバー部材25と外側フランジ部22aと内側フランジ部21aとの三者を共締め固定したものである。
【0055】
この実施形態においては、カバー部材25は円周上適宜の間隔を隔てて合計3本のボルトB2により反射鏡本体20上部に締結されているが、2本または4本以上のボルトB2を用いて、カバー部材25を反射鏡本体20上部に締結する構造などを採用してもよい。
【0056】
図4に示すように、カバー部材25の後端面25aは裏板22の背面と一致しており、カバー部材25の前側は
図2に示すように、凸面部材21の最も前方へ突出する中心部よりも、さらに前方へ突出している。なお、カバー部材25の後端面25aは必ずしも裏板22の背面と一致しなくてもよく、カバー部材25の後端面25aが裏板22の背面に対して後方へオフセットする構造などを採用してもよい。
【0057】
ここで、前述のカバー部材25は平面から見て裏板22の最大外径の約65%を上方から覆う左右長さを有しているが、当該カバー部材25の左右長さ、つまり、長手方向寸法は、これに限定されるものではない。
【0058】
このカバー部材25を設けることで、当該カバー部材25による雨除け、雪除け作用にて鏡面α(凸面部材21の鏡面加工された外表面、または、後述する研磨加工が施されたクロムメッキ層33の外表面)の視認性向上を図るように構成している。
【0059】
前述の凸面部材21と、裏板22と、カバー部材25とは、全て軽金属部材または軽合金部材にて構成されている。
軽金属または軽合金としては、比熱が0.905〔kJ/(kg・k)〕のアルミニウム(純金属)、比熱が1.02〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム(純金属)、比熱が0.88~0.9〔kJ/(kg・k)〕のアルミニウム合金や比熱が0.96~1.05〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム合金が好ましい。この実施形態においては、比熱が0.90〔kJ/(kg・k)〕の耐食アルミニウム合金(A5052)により上述の凸面部材21、裏板22及びカバー部材25が構成されている。
【0060】
耐食アルミニウム合金(A5052)は、Cuが0.10%以下、Si+Feが0.45%以下、Mnが0.10%以下、Mgが2.2~2.8%、Znが0.10%以下、Crが0.15~0.35%、残部がAlの化学成分を有する合金である。
【0061】
図2、
図3に示すように、このように構成された反射鏡本体20は、取付け部材としての平面視U字形状の複数、例えば、2本のU字ボルト27を用いて支持部材である支柱11の上端部に取付けられている。
【0062】
詳しくは、支柱11の上端部において上下方向に所定間隔を隔てて設けた2本のU字ボルト27の先端側のネジ部27aを、反射鏡本体20を構成する凸面部材21と裏板22とのうちの裏板22の中央部分に固定することで、裏板22を、U字ボルト27を介して支柱11に取付けたものである。
【0063】
さらに詳しくは、U字ボルト27のネジ部27aが貫通して配置される取付け位置において、裏板22にはボルト貫通孔22bを開口形成し、このボルト貫通孔22bに貫通したU字ボルト27のネジ部27aにおける裏板22の前側と裏板22の後側とにそれぞれナット28を螺合している。
【0064】
そして、裏板22の前側のナット28と裏板22の前面との間、並びに、裏板22の後側のナット28と裏板22の裏面との間に、遮熱部材としての遮熱ワッシャ29を、それぞれ介設し、各ナット28を裏板22の方向に締付けることで、当該裏板22を、U字ボルト27を介して支柱11に取付けたものである。
【0065】
ここで、前述のU字ボルト27は、比熱が0.132~0.473〔kJ/(kg・k)〕のスチール製である。また、前述のナット28は、比熱が0.499〔kJ/(kg・k)〕のクロム・モリブデン鋼製であってもよい。
【0066】
このように、この実施形態の道路反射鏡10は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材21を有する反射鏡本体20を備え、凸面部材21が軽金属部材または軽合金部材の一例として耐食アルミニウム合金(A5052)にて構成されたものである。
【0067】
これにより、凸面部材21を構成する耐食アルミニウム合金(A5052)の比熱0.90〔kJ/(kg・k)〕は、空気の比熱1.006~1.007〔kJ/(kg・k)〕と近似し、当該凸面部材21は空気と同等に温度変化し、両者間(凸面部材21と空気との間)に温度差が生じにくくなる。この結果、大気温度が露点温度以下になっても、鏡面αに対する結露の発生を抑制することができ、よって、鏡面αが曇ることを防止するように構成している。
【0068】
また、反射鏡本体20は、凸面部材21と、この凸面部材21の後部に取付けられた裏板22とを備えており、該裏板22は耐食アルミニウム合金(A5052)にて構成され、凸面部材21と裏板22との間に空気層としての空気室23を備えている。
【0069】
これにより、裏板22も軽金属部材または軽合金部材の一例として耐食アルミニウム合金(A5052)で構成されるため、裏板22も空気と同等に温度変化し、外気と裏板22との間に温度差が生じにくい。
【0070】
また、凸面部材21の裏面側に、温度変化が外気と同等の空気室23(空気室23内の空気参照)を確保することで、外気温度が変化しても、凸面部材21と外気との温度差が生じにくくなる。この結果、大気温度が露点温度以下になっても、鏡面αに対する結露の発生を抑制し、当該鏡面αが曇ることを防止することができる。
【0071】
さらに、反射鏡本体20を支持する支持部材としての支柱11と、反射鏡本体20を支柱11に取付ける取付け部材としてのU字ボルト27とが備えられ、U字ボルト27と反射鏡本体20の裏板22との間に、遮熱部材としての遮熱ワッシャ29を介設している。
【0072】
遮熱ワッシャ29が存在しない場合には、スチール製の支柱11の比熱0.132~0.473〔kJ/(kg・k)〕と、空気の比熱1.006~1.007〔kJ/(kg・k)〕とが大きく異なり、両者間の温度差によって、本来ならば、反射鏡本体20に結露が発生して、鏡面αが曇ることになる。これに対して、遮熱ワッシャ29を設けることで、裏板22から支柱11に熱が消散することを防止し、支柱11から反射鏡本体20への熱影響を防ぐことができる。
【0073】
また、支柱11は外気温度のみならず地表部の温度の影響も受けるため、支柱11と空気との温度差がさらに生じやすくなるが、支柱11から反射鏡本体20への熱影響を遮熱ワッシャ29にて遮断することにより、反射鏡本体20の結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止することができる。
【0074】
さらにまた、反射鏡本体20の上部には軽金属部材または軽合金部材の一例として耐食アルミニウム合金(A5052)にて形成されたカバー部材25が設けられている。
カバー部材25も空気と同等に温度変化し、外気とカバー部材25との間に温度差が生じにくく、当該カバー部材25が凸面部材21に悪影響を及ぼすことがないうえ、カバー部材25による雨除け、雪除け作用により鏡面の視認性を確保することができる。
【0075】
加えて、裏板22の外周縁部に一体形成され表面方向に突出する円環状の外側フランジ部22aと、凸面部材21の外周縁部に一体形成され裏面方向に突出して外側フランジ部22aの内周面に配置される内側フランジ部21aとが備えられている。
【0076】
これにより、何等かの原因にて外側フランジ部22aと内側フランジ部21aとの締結が外れた場合、凸面部材21はその下端側を支点として上端側が前方下方へ外れようとするが、この上端側の前方下方への移動時に、内側フランジ部21aの上端側外周面が外側フランジ部22aの上端側内周面に引っ掛かる。よって、前方下方への移動が阻止されて、凸面部材21の脱落を抑制することができる。
【0077】
なお、凸面部材21、裏板22、カバー部材25の板厚はそれぞれ2.0mmに形成し、この板厚により凸面部材21、裏板22及びカバー部材25の剛性を確保するように構成しているが、板厚の数値はこれに限定されるものではない。
【0078】
図2に示すように、凸面部材21の外表面には、銅メッキ層31及びニッケルメッキ層32を介してクロムメッキ層33が設けられている。銅メッキ層31の膜厚は10~15μmに設定されており、ニッケルメッキ層32の膜厚は15~20μmに設定されており、また、クロムメッキ層33の膜厚は1μmに設定されている。
【0079】
銅メッキ層31は下地メッキ層として用いる。また、ニッケルメッキ層32は耐食性向上を目的として用いる。さらに、クロムメッキ層33は耐久性、耐候性、耐摩耗性向上に加えて、高度光沢性を利用して鏡面αを形成するために用いる。
【0080】
最上層に位置するクロムメッキ層33には研磨加工が施されていて、このクロムメッキ層33の研磨加工された外表面が鏡面αとなる。これにより、クロムは光沢性に優れているため、クロムメッキ層33を凸面部材21の外表面に設けることにより、充分な鏡面反射率を確保するように構成している。
【0081】
次に、
図5を用いて、他の実施形態に係る道路反射鏡10について説明する。
図5は道路反射鏡10における遮熱部材配置構造の他の実施形態を示す断面図である。
図3で示した先の実施形態においては、反射鏡本体20の裏板22とU字ボルト27との間に介設される遮熱ワッシャ29を例示したが、
図5に示すこの実施形態では、遮熱部材として、裏板22のボルト貫通孔22b内に挿入される円筒部34aと、鍔部34bとを一体形成し、かつ、U字ボルト27のネジ部27a外周に装着される遮熱ブッシュ34を設けている。
【0082】
そして、この遮熱ブッシュ34により、裏板22とU字ボルト27との間を遮熱するように構成している。
遮熱部材として前述の遮熱ブッシュ34を備えることで、裏板22から支柱11に熱が消散することを防止し、支柱11から反射鏡本体20への熱影響を防ぎ、鏡面αに対する結露の発生を抑制して、当該鏡面αが曇ることを防止するように構成している。
【0083】
このように構成しても、その他の構成、作用、効果については、
図1~
図4で示した先の実施形態と同様であるから、
図5において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0084】
次に、
図6を用いて、さらに他の実施形態に係る道路反射鏡10について説明する。
図6は道路反射鏡10の他の実施形態を示す断面図である。
【0085】
図6に示す実施形態では、裏板22に通気孔22cを開口形成し、この通気孔22cにより空気室23と外気とを連通させている。ここで、通気孔22cは空気室23側の開口端が上方に位置し、外気側の開口端が下方に位置するように傾斜状に開口形成されており、雨水等が空気室23内に吹き込みにくい形状に構成されている。
【0086】
また、凸面部材21の内側フランジ部21aにおける最下部には切欠き部21bが形成されている。
さらに、切欠き部21bと上下方向で対向すべく裏板22の外側フランジ部22aにおける最下部には排水孔22d(いわゆるドレン)が形成されている。そして、空気室23内に万一、水滴(H2Oの比熱は4.195~4.205〔kJ/(kg・k)〕)が溜った場合には、切欠き部21b及び排水孔22dを介して当該水滴を空気室23外へ流下排水すべく構成している。
【0087】
これにより、凸面部材21の裏面側には、温度変化が外気と同等の空気の層(空気室23参照)が確保されるのみならず、通気孔22cにより空気室23の内部は外気と連通しているため、外気温度が変化しても凸面部材21と外気との温度差がさらに生じにくくなる。この結果、結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることをより一層確実に防止することができる。
【0088】
このように構成しても、その他の構成、作用、効果については、
図1~
図4で示した先の実施形態と同様であるから、
図6において前図と同一の部分には同一符号を付して、その詳しい説明を省略する。
【0089】
以上のように、本実施形態に係る道路反射鏡10は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材21を有する反射鏡本体20を備え、凸面部材21が軽金属部材または軽合金部材(耐食アルミニウム合金(A5052)参照)にて構成されたことを特徴としている(
図2参照)。
【0090】
このような道路反射鏡10によれば、凸面部材21を構成する軽金属部材または軽合金部材の比熱(耐食アルミニウム合金(A5052)の場合は、0.90〔kJ/(kg・k)〕)は、空気の比熱1.006~1.007〔kJ/(kg・k)〕と近似するため、凸面部材21は空気と同等に温度変化し、凸面部材21と空気との間に温度差が生じにくい。これにより、凸面部材21の鏡面加工された外表面で構成する鏡面αに対する結露の発生を抑制し、当該鏡面αが曇ることを防止できる。
【0091】
また、かかる道路反射鏡10においては、反射鏡本体20は、凸面部材21と、当該凸面部材21の後部に取付けられた裏板22とを備え、裏板22は軽金属部材または軽合金部材にて構成され、凸面部材21と裏板22との間に形成された空気層(空気室23参照)を備えている(
図2参照)。
【0092】
このような道路反射鏡10によれば、裏板22も凸面部材21と同様に軽金属部材または軽合金部材にて構成されるため、裏板22も空気と同等に温度変化し、外気と裏板22との間に温度差が生じにくい。また、凸面部材21の裏面側に、温度変化が外気と同等の空気室23内の空気層を確保することができ、温度変化しても凸面部材21と外気との温度差が生じにくい。これにより、結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。
【0093】
また、かかる道路反射鏡10においては、反射鏡本体20を支持する支持部材である支柱11参照と、反射鏡本体20を支柱11に取付ける取付け部材であるU字ボルト27と、U字ボルト27と反射鏡本体20との間に介設される遮熱部材である遮熱ワッシャ29(遮熱ブッシュ34)とが備えられている(
図3、
図5参照)。
【0094】
このような道路反射鏡10によれば、次の如き効果がある。
すなわち、支柱11は空気と比熱が異なり、支柱11と空気との温度差が生じやすい。支柱11が炭素鋼、いわゆるスチールの場合、その比熱は0.132~0.473〔kJ/(kg・k)〕で空気と比熱が大きく異なり、両者間に温度差が生じやすい。遮熱ワッシャ29(遮熱ブッシュ34)を設けない場合には、本来ならば、前述の温度差により反射鏡本体20に結露が発生して、鏡面αが曇ることになる。
【0095】
しかしながら、道路反射鏡10は、反射鏡本体20からU字ボルト27を介して支柱11に熱が消散することを、遮熱ワッシャ29(遮熱ブッシュ34)にて防止するため、支柱11から反射鏡本体20への熱影響を防ぐことができる。
【0096】
また、道路反射鏡10は、支柱11によって路面に支持されているため、道路反射鏡10の設置自由度確保と汎用性確保との両立を図ることができる。
なお、支柱11は空気と比熱が異なるうえ、地表部の温度の影響も受けるため、支柱11と空気との温度差がさらに生じやすくなり、この温度差により本来ならば反射鏡本体20に結露が発生して、鏡面αが曇るが、支柱11から反射鏡本体20への熱影響を遮熱ワッシャ29(遮熱ブッシュ34)にて遮断することができる。これにより、反射鏡本体20の結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。
【0097】
また、かかる道路反射鏡10においては、反射鏡本体20の上部には軽金属部材または軽合金部材にて形成されたカバー部材25が設けられている(
図2、
図4参照)ため、当該カバー部材25による雨除け、雪除け作用にて鏡面αの視認性確保を図ることができる。
【0098】
また、このような道路反射鏡10によれば、軽金属部材または軽合金部材にて形成されたカバー部材25を設けることで、カバー部材25も空気と同等に温度変化し、外気とカバー部材25との間に温度差が生じにくく、カバー部材25が凸面部材21に悪影響を及ぼすことがない。
【0099】
また、かかる道路反射鏡10においては、裏板22の周縁部に設けられ表面方向に突出する環状の外側フランジ部22aと、凸面部材21の周縁部に設けられ裏面方向に突出して外側フランジ部22aの内面に配置される内側フランジ部21aとが備えられている(
図2、
図4参照)。
【0100】
このような道路反射鏡10によれば、何等かの原因により外側フランジ部22aと内側フランジ部21aとの締結が外れた場合、凸面部材21はその下端側を支点として上端側が前方下方へ外れようとするが、この上端側の前方下方への移動時には、内側フランジ部21aの上端側が外側フランジ部22aの上端側内面に引っ掛かって、上述の移動が阻止され、凸面部材21の脱落を抑制することができる。
【0101】
また、かかる道路反射鏡10においては、凸面部材21の外表面に設けられたクロムメッキ層33を備えており(
図2参照)、クロムは光沢性に優れているため、クロムメッキ層33を凸面部材21の外表面に設けることで、充分な鏡面反射率を確保することができる。
【0102】
この発明の構成と、前述の実施形態との対応において、
この発明の反射鏡は、実施形態の道路反射鏡10に対応し、
以下同様に、
支持部材は、支柱11に対応し、
反射鏡本体は、反射鏡本体20に対応し、
凸面部材は、凸面部材21に対応し、
内側フランジ部は、内側フランジ部21aに対応し、
裏板は、裏板22に対応し、
外側フランジ部は、外側フランジ部22aに対応し、
空気層は、空気室23に対応し、
カバー部材は、カバー部材25に対応し、
取付け部材は、U字ボルト27に対応し、
遮熱部材は、遮熱ワッシャ29または遮熱ブッシュ34に対応し、
クロムメッキ層は、クロムメッキ層33に対応し、
軽金属部材または軽合金部材を構成する金属は、耐食アルミニウム合金(A5052)に対応するも、この発明は、前述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施形態を得ることができる。
【0103】
例えば、前述の実施形態においては、凸面部材21と裏板22とで反射鏡本体20を構成したが、これは凸面部材21により反射鏡本体20を構成してもよい。この場合、凸面部材21の中央部から後方に突出する取付け部を設け、この取付け部を、遮熱部材を介して支柱等の支持部材に取付ける構造と成せばよい。
【0104】
さらに、取付け部材としてはU字ボルト27を例示したが、この構造に代えて、支柱11を左右両側から挟持する一対の挟持部材と、当該一対の挟持部材の先端部と裏板の背面部とを連結する連結部材とで取付け部材を構成してもよい。
【0105】
さらにまた、前述の実施形態においては、
図2で示したように、支柱11の前方部に反射鏡本体20が支持される構造を例示したが、これに代えて、支柱11の上方部に反射鏡本体20が支持される構造などを採用してもよい。
【0106】
加えて、前述の実施形態においては、裏板22から表面側に突出する外側フランジ部22aと、凸面部材21から裏面側に突出する内側フランジ部21aとが備えられたが、これに代えて、凸面部材21及び裏板22の周縁部から外方へ突出する環状の前後のフランジ部を設け、これら前後のフランジ部をボルト、ナット等の締結部材にて締結する構造などを採用してもよい。
【0107】
また、前述のカバー部材25の少なくとも外面は、その後部ほど、後側下方へ傾斜する勾配を備えてもよい。このように形成すると、降雨時や降雪時において鏡面α側へ流下する雨水や雪の量の減少を図ることができ、視認性がさらに向上する。前述のカバー部材25は、道路反射鏡10の設置環境によっては設けなくてもよい。
【0108】
さらに、実施形態で開示した耐食アルミニウム合金(A5052)に代えて、比熱が1.05〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム展伸材(AZ80A)や、比熱が0.96〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム鋳造材(ZE63A)を用いてもよい。
【0109】
なお、上述の道路反射鏡10は、屋外において支柱11によって反射鏡本体20が支持されるカーブミラーであるが、屋内の通路における曲がり部や死角部分を映すようにブラケットなどの支持部材を介して取付けられる反射鏡であってもよい。また、屋外であっても、施設内の見通しの悪い箇所に支持部材を介して取付けられる反射鏡であってもよい。
【0110】
また、上述の説明では、凸面部材21及び裏板22、並びに、カバー部材25、外側フランジ部22a及び内側フランジ部21aをボルトB1,B2で締結したが、例えば、アルミ製のリベットで締結して固定してもよい。
【0111】
さらに、上述の説明では、反射鏡本体20における凸面部材21を耐食アルミニウム合金(A5052)で構成し、凸面部材21の外表面に、銅メッキ層31及びニッケルメッキ層32を介してクロムメッキ層33を設けたが、耐食アルミニウム合金(A5052)、マグネシウム展伸材(AZ80A)、あるいはマグネシウム鋳造材(ZE63A)で構成した凸面部材21の外表面に、銅メッキ層31乃至クロムメッキ層33の代わりに、アルマイト加工によるアルマイト膜35を設けてもよい。
【0112】
なお、アルマイト膜35を設けた凸面部材21を有する反射鏡本体20で構成した道路反射鏡10におけるその他の構成や支柱11については上述の説明における道路反射鏡10での構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0113】
この場合であっても、上述の道路反射鏡10と同様に、鏡面α(凸面部材21の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。さらに、アルマイト加工によって、凸面部材21の鏡面加工された外表面にアルマイト膜35が形成されるため、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0114】
さらまた、凸面部材21の外表面に、銅メッキ層31乃至クロムメッキ層33の代わりにメッキ塗装されたメッキ塗装層37を設けてもよい。
なお、メッキ塗装層37を設けた凸面部材21を有する反射鏡本体20で構成した道路反射鏡10におけるその他の構成や支柱11については上述の説明における道路反射鏡10での構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0115】
この場合であっても、同様に、鏡面α(凸面部材21の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。さらに、メッキ塗装は通常のメッキ処理より容易にメッキ塗装層37を凸面部材21の外表面に設けることができ、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0116】
さらにまた、凸面部材21の外表面に、銅メッキ層31乃至クロムメッキ層33の代わりに鏡面無電解ニッケル層38を備えてもよい。
なお、鏡面無電解ニッケル層38を設けた凸面部材21を有する反射鏡本体20で構成した道路反射鏡10におけるその他の構成や支柱11については上述の説明における道路反射鏡10での構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0117】
この場合であっても、同様に、鏡面α(凸面部材21の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。さらに、鏡面無電解ニッケル層38を凸面部材21の外表面に設けることで、鏡面反射率をより向上することができるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0118】
なお、アルマイト膜35、メッキ塗装層37あるいは鏡面無電解ニッケル層38は、凸面部材21において銅メッキ層31及びニッケルメッキ層32の外表面に設けてもよいし、銅メッキ層31の外表面に設けてもよい。また、アルマイト膜35、メッキ塗装層37あるいは鏡面無電解ニッケル層38の外表面に透明の保護層36を設けてもよい。
【0119】
さらには、アルマイト膜35、メッキ塗装層37あるいは鏡面無電解ニッケル層38が凸面部材21に形成された反射鏡本体20を有する道路反射鏡10も上述の道路反射鏡10と同様の構成であるため、遮熱ワッシャ29の代わりに遮熱ブッシュ34を用いてもよいし、凸面部材21に切欠き部21bを設けてもよいし、裏板22に通気孔22cを設けてもよい。
【0120】
また、耐食アルミニウム合金(A5052)、マグネシウム展伸材(AZ80A)、あるいはマグネシウム鋳造材(ZE63A)の代わりに、
図7(b)に示すように、鏡面光沢アルミニウム合金板で凸面部材21Xを構成してもよい。
【0121】
なお、鏡面光沢アルミニウム合金板で構成した凸面部材21Xを有する反射鏡本体20で構成した道路反射鏡10におけるその他の構成や支柱11については上述の説明における道路反射鏡10での構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0122】
この場合であっても、同様に、鏡面α(凸面部材21Xの鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。さらに、凸面部材21Xが鏡面光沢アルミニウム合金板で構成されているため、素材自体が鏡面加工された凸面部材21Xの外表面にクロムメッキ層などを設けることなく、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0123】
なお、鏡面光沢アルミニウム合金板で構成した凸面部材21Xの外表面に透明の保護層36を設けてもよい。
さらには、鏡面光沢アルミニウム合金板の凸面部材21Xで構成された反射鏡本体20を有する道路反射鏡10も上述の道路反射鏡10と同様の構成であるため、遮熱ワッシャ29の代わりに遮熱ブッシュ34を用いてもよいし、凸面部材21に切欠き部21bを設けてもよいし、裏板22に通気孔22cを設けてもよい。
【0124】
図1~
図7で示した実施形態においては反射鏡として道路反射鏡10を例示して説明したが、次に
図8を用いて乗物用反射鏡40について説明する。
乗物用反射鏡40とは、自動車、トラック、バス等に配置されるドアミラーやフェンダミラー等のバックミラー、または、トラクタ、オートバイ(auto bicycle)、ハンドル型電動車椅子、電動キックスケータ、自転車等に配置されるバックミラー、または、車両に配置されるサイドアンダミラーやリヤアンダミラー等の補助ミラーを含むが、以下においては車両用ドアミラー41を例示して説明する。なお、
図8において、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0125】
ドアミラー41は車両のボディ(詳しくは、フロントサイドドア)に固定されるミラーステー42と、ミラーステー42の先端部に一体または一体的に設けられた樹脂製のミラーカバー43と、ミラーカバー43の内部空間44に配置された駆動部ユニット45と、駆動部ユニット45のミラーベース46に取付けられた反射鏡本体20とを備えている。
ミラーカバー43の下壁43aにはボルト47、ナット48を用いて駆動部ユニット45支持用の側面視L字状のブラケット49の一端49aを固定している。
【0126】
上述の駆動部ユニット45の下部には支持片51が設けられている。この支持片51とブラケット49の他端49bとは、ボルト52、ナット53を用いて共締め固定されている。
上述の駆動部ユニット45は小型直流モータ及び減速歯車を内蔵しており、ミラー回転軸54を中心としてミラーベース46を水平方向及び垂直方向にそれぞれ所定角度調整するものである。
【0127】
ミラーベース46には複数組のボルト55、ナット56を用いて、反射鏡本体20の裏板22が固定されている。
ボルト55、ナット56による締結部位において、ミラーベース46と反射鏡本体20の裏板22との間には、遮熱部材としての遮熱プレート57がそれぞれ介設されている。
【0128】
図8に示すように、乗物用反射鏡40を構成するドアミラー41の反射鏡本体20は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材21と、この凸面部材21の後部(車両前方側F)に取付けられた裏板22とを備えている。
凸面部材21の後部(車両前方側F)に裏板22を取付けることで、凸面部材21と裏板22との間に形成された空気層としての空気室23を備えている。
【0129】
凸面部材21は、
図8に示すように、車両後方側Rへ突出した湾曲形状に形成されている。
また、凸面部材21の外周縁部には裏面方向(車両前方側F)に突出する環状の内側フランジ部21a(いわゆるインナーフランジ)が一体形成されている。
【0130】
裏板22は、凸面部材21の形状と対応する形状に形成されるとともに、
図8に示すように、断面フラット形状に構成されている。また、裏板22の外周縁部には表面方向(車両後方側R)に突出する環状の外側フランジ部22a(いわゆるアウターフランジ)が一体形成されている。
【0131】
前述の凸面部材21の内側フランジ部21aは、裏板22の外側フランジ部22aの内面つまり内周側に配置されるものである。換言すれば、裏板22の外側フランジ部22aが凸面部材21の内側フランジ部21aの外側に位置しており、外側フランジ部22aで凸面部材21を保護するように構成している。
図8に示すように、表面側(車両後方側R)に位置する凸面部材21と、裏面側(車両前方側)に位置する裏板22とは、複数の締結部材であるボルトB1を用いて締結固定されている。
【0132】
前述の凸面部材21と、裏板22とは、全て軽金属部材または軽合金部材にて構成されている。
軽金属または軽合金としては、比熱が0.905〔kJ/(kg・k)〕のアルミニウム(純金属)、比熱が1.02〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム(純金属)、比熱が0.88~0.9〔kJ/(kg・k)〕のアルミニウム合金や比熱が0.96~1.05〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム合金が好ましい。この実施形態においては、比熱が0.90〔kJ/(kg・k)〕の耐食アルミニウム合金(A5052)により上述の凸面部材21、及び、裏板22が構成されている。
【0133】
耐食アルミニウム合金(A5052)は、Cuが0.10%以下、Si+Feが0.45%以下、Mnが0.10%以下、Mgが2.2~2.8%、Znが0.10%以下、Crが0.15~0.35%、残部がAlの化学成分を有する合金である。
【0134】
このように、この実施形態の乗物用反射鏡40は、少なくとも外表面が鏡面加工された凸面部材21を有する反射鏡本体20を備え、凸面部材21が軽金属部材または軽合金部材の一例として耐食アルミニウム合金(A5052)にて構成されたものである。
【0135】
これにより、凸面部材21を構成する耐食アルミニウム合金(A5052)の比熱0.90〔kJ/(kg・k)〕は、空気の比熱1.006~1.007〔kJ/(kg・k)〕と近似し、当該凸面部材21は空気と同等に温度変化し、両者間(凸面部材21と空気との間)に温度差が生じにくくなる。この結果、大気温度が露点温度以下になっても、鏡面αに対する結露の発生を抑制することができ、よって、鏡面αが曇ることを防止して、外方視認性の向上を図ることができる。
【0136】
また、反射鏡本体20は、凸面部材21と、この凸面部材21の後部(車両前方部)に取付けられた裏板22とを備えており、該裏板22は耐食アルミニウム合金(A5052)にて構成され、凸面部材21と裏板22との間に空気層としての空気室23を備えている。
【0137】
これにより、裏板22も軽金属部材または軽合金部材の一例として耐食アルミニウム合金(A5052)で構成されるため、裏板22も空気と同等に温度変化し、外気と裏板22との間に温度差が生じにくい。
【0138】
また、凸面部材21の裏面側に、温度変化が外気と同等の空気室23(空気室23内の空気参照)を確保することで、外気温度が変化しても、凸面部材21と外気との温度差が生じにくくなる。この結果、大気温度が露点温度以下になっても、鏡面αに対する結露の発生を抑制し、当該鏡面αが曇ることを防止することができる。
【0139】
ここで、凸面部材21及び裏板22を形成する耐食アルミニウム合金(A5052)に代えて、比熱が1.05〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム展伸材(AZ80A)や、比熱が0.96〔kJ/(kg・k)〕のマグネシウム鋳造材(ZE63A)を用いてもよい。
【0140】
この実施形態においても、凸面部材21の外表面には、銅メッキ層31及びニッケルメッキ層32を介してクロムメッキ層33が設けられている(
図2参照)。銅メッキ層31の膜厚は10~15μmに設定されており、ニッケルメッキ層32の膜厚は15~20μmに設定されており、また、クロムメッキ層33の膜厚は1μmに設定されているが、各メッキ層31,32,33の膜厚はこの数値に限定されるものではない。
【0141】
銅メッキ層31は下地メッキ層として用いる。また、ニッケルメッキ層32は耐食性向上を目的として用いる。さらに、クロムメッキ層33は耐久性、耐候性、耐摩耗性向上に加えて、高度光沢性を利用して鏡面αを形成するために用いる。
【0142】
最上層に位置するクロムメッキ層33には研磨加工が施されていて、このクロムメッキ層33の研磨加工された外表面が鏡面αとなる。これにより、クロムは光沢性に優れているため、クロムメッキ層33を凸面部材21の外表面に設けることにより、充分な鏡面反射率を確保することができる。
なお、上述の説明では、凸面部材21と裏板22とをボルトB1で締結したが、例えば、アルミ製のリベットで締結して固定してもよい。
【0143】
さらに、上述の説明では、反射鏡本体20における凸面部材21を耐食アルミニウム合金(A5052)で構成し、凸面部材21の外表面に、銅メッキ層31及びニッケルメッキ層32を介してクロムメッキ層33を設けたが、耐食アルミニウム合金(A5052)、マグネシウム展伸材(AZ80A)、あるいはマグネシウム鋳造材(ZE63A)で構成した凸面部材21の外表面に、銅メッキ層31乃至クロムメッキ層33の代わりに、アルマイト加工によるアルマイト膜35を設けてもよい(
図7参照)。
【0144】
なお、アルマイト膜35を設けた凸面部材21を有する反射鏡本体20で構成した乗物用反射鏡40におけるその他の構成については上述の説明における乗物用反射鏡40での構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0145】
この場合であっても、上述の乗物用反射鏡40と同様に、鏡面α(凸面部材21の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。さらに、アルマイト加工によって、凸面部材21の鏡面加工された外表面にアルマイト膜35が形成されるため、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0146】
さらまた、凸面部材21の外表面に、銅メッキ層31乃至クロムメッキ層33の代わりにメッキ塗装されたメッキ塗装層37を設けてもよい(
図7参照)。
なお、メッキ塗装層37を設けた凸面部材21を有する反射鏡本体20で構成した乗物用反射鏡40におけるその他の構成については上述の説明における乗物用反射鏡40での構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0147】
この場合であっても、同様に、鏡面α(凸面部材21の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。さらに、メッキ塗装は通常のメッキ処理より容易にメッキ塗装層37を凸面部材21の外表面に設けることができ、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0148】
さらにまた、凸面部材21の外表面に、銅メッキ層31乃至クロムメッキ層33の代わりに鏡面無電解ニッケル層38を備えてもよい(
図7参照)。
なお、鏡面無電解ニッケル層38を設けた凸面部材21を有する反射鏡本体20で構成した乗物用反射鏡40におけるその他の構成については上述の説明における乗物用反射鏡40での構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0149】
この場合であっても、同様に、鏡面α(凸面部材21の鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。さらに、鏡面無電解ニッケル層38を凸面部材21の外表面に設けることで、鏡面反射率をより向上することができるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0150】
なお、アルマイト膜35、メッキ塗装層37あるいは鏡面無電解ニッケル層38は、凸面部材21において銅メッキ層31及びニッケルメッキ層32の外表面に設けてもよいし、銅メッキ層31の外表面に設けてもよい。また、アルマイト膜35、メッキ塗装層37あるいは鏡面無電解ニッケル層38の外表面に透明の保護層36を設けてもよい。
【0151】
さらには、アルマイト膜35、メッキ塗装層37あるいは鏡面無電解ニッケル層38が凸面部材21に形成された反射鏡本体20を有する乗物用反射鏡40も上述の乗物用反射鏡40と同様の構成であるため、凸面部材21に
図6で示した切欠き部21bを設けてもよいし、裏板22に通気孔22c(
図6参照)を設けてもよい。
【0152】
また、耐食アルミニウム合金(A5052)、マグネシウム展伸材(AZ80A)、あるいはマグネシウム鋳造材(ZE63A)の代わりに、
図7(b)に示すように、鏡面光沢アルミニウム合金板で凸面部材21Xを構成してもよい。
【0153】
なお、鏡面光沢アルミニウム合金板で構成した凸面部材21Xを有する反射鏡本体20で構成した乗物用反射鏡40におけるその他の構成については上述の説明における乗物用反射鏡40での構成と同じであるため、その説明を省略する。
【0154】
この場合であっても、同様に、鏡面α(凸面部材21Xの鏡面加工された外表面)に対する結露の発生を抑制し、鏡面αが曇ることを防止できる。さらに、凸面部材21Xが鏡面光沢アルミニウム合金板で構成されているため、素材自体が鏡面加工された凸面部材21Xの外表面にクロムメッキ層などを設けることなく、充分な鏡面反射率を確保できるとともに、長期間に亘って維持することができる。
【0155】
なお、鏡面光沢アルミニウム合金板で構成した凸面部材21Xの外表面に透明の保護層36を設けてもよい。
さらには、鏡面光沢アルミニウム合金板の凸面部材21Xで構成された反射鏡本体20を有する乗物用反射鏡40も上述の乗物用反射鏡40と同様の構成であるため、凸面部材21に切欠き部21b(
図6参照)を設けてもよいし、裏板22に通気孔22c(
図6参照)を設けてもよい。
【符号の説明】
【0156】
10…道路反射鏡
11…支柱
20…反射鏡本体
21,21X…凸面部材
21a…内側フランジ部
22…裏板
22a…外側フランジ部
23…空気室
25…カバー部材
27…U字ボルト
29…遮熱ワッシャ
33…クロムメッキ層
34…遮熱ブッシュ
35…アルマイト膜
37…メッキ塗装層
38…鏡面無電解ニッケル層
40…乗物用反射鏡