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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140521
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】液圧回転機械および液圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 1/30 20200101AFI20230928BHJP
   F04B 1/22 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F04B1/30
F04B1/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046402
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 信治
(72)【発明者】
【氏名】田中 英紀
【テーマコード(参考)】
3H070
【Fターム(参考)】
3H070BB04
3H070CC12
3H070CC33
3H070CC34
3H070CC35
3H070DD39
3H070DD58
3H070DD60
(57)【要約】
【課題】2つの目的のうちの1つでは、回転数計を用いることなく回転軸の回転数を検出することができる液圧回転機械を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る液圧回転機械1は、回転軸11と、シリンダブロック4および斜板5を収容するケーシング2を含む。また、液圧回転機械1は、斜板5の角度を変更するサーボピストン7と、サーボピストン7を駆動する電動アクチュエータ8を含む。電動アクチュエータ8は、ねじ軸84、ナット83および電動モータ86を含む。電動モータ86の回転角度は回転角度センサ16により検出され、電動モータ86は制御装置15によって制御される。制御装置15は、回転角度センサ16で検出される電動モータ86の回転角度が所定値に保たれるように電動モータ86へ送給する電流を調整し、調整された電流の波形に基づいて回転軸11の回転数を算出する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸と、
前記回転軸に固定され、複数のピストンを摺動可能に保持するシリンダブロックと、
前記複数のピストンの頭部に取り付けられたシューと摺動する斜板と、
前記斜板の角度を変更するサーボピストンと、
前記シリンダブロックおよび前記斜板を収容するとともに、前記サーボピストンを摺動可能に保持するケーシングと、
前記ケーシングに取り付けられて前記サーボピストンを駆動する電動アクチュエータであって、前記サーボピストンの軸方向に沿って延びるねじ軸、前記ねじ軸と螺合するナットおよび前記ねじ軸を回転させる電動モータを含む電動アクチュエータと、
前記電動モータの回転角度を検出する回転角度センサと、
前記電動モータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度が所定値に保たれるように前記電動モータへ送給する電流を調整し、調整された電流の波形に基づいて前記回転軸の回転数を算出する、液圧回転機械。
【請求項2】
前記制御装置は、調整された電流の波形から、所定時間における電流の振動回数を求め、この振動回数を使用して前記回転軸の回転数を算出する、請求項1に記載の液圧回転機械。
【請求項3】
前記液圧回転機械は液圧ポンプであり、
前記ケーシングに収容され、前記シリンダブロックと摺動する、互いに反対向きの円弧状の第1ポートおよび第2ポートを含むバルブプレートをさらに備え、
前記ケーシングは、前記サーボピストンを前記斜板に向かって押圧するための補助圧力室と、前記第1ポートと連通する第1流路と、前記第2ポートと連通する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路のうちの圧力の高い方である吐出路から前記補助圧力室へ作動液を導入する導入路を含む、請求項1または2に記載の液圧回転機械。
【請求項4】
前記液圧回転機械は液圧ポンプであり、
前記制御装置には、前記液圧ポンプの吐出圧力と、前記斜板の角度である傾転角と、前記回転軸の回転数と、前記電動モータの電流値との関係を定めたマップが予め格納されており、
前記制御装置は、前記マップを使用して、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度を換算した傾転角、算出した回転数、及び調整された電流の平均値に対応する前記液圧ポンプの吐出圧力を決定する、請求項1~3の何れか一項に記載の液圧回転機械。
【請求項5】
液圧ポンプであって、
回転軸と、
前記回転軸に固定され、複数のピストンを摺動可能に保持するシリンダブロックと、
前記複数のピストンの頭部に取り付けられたシューと摺動する斜板と、
前記斜板の角度を変更するサーボピストンと、
前記シリンダブロックおよび前記斜板を収容するとともに、前記サーボピストンを摺動可能に保持するケーシングと、
前記ケーシングに取り付けられて前記サーボピストンを駆動する電動アクチュエータであって、前記サーボピストンの軸方向に沿って延びるねじ軸、前記ねじ軸と螺合するナットおよび前記ねじ軸を回転させる電動モータを含む電動アクチュエータと、
前記電動モータの回転角度を検出する回転角度センサと、
前記電動モータを制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度が所定値に保たれるように前記電動モータへ送給する電流を調整し、
前記制御装置には、前記液圧ポンプの吐出圧力と、前記斜板の角度である傾転角と、前記回転軸の回転数と、前記電動モータの電流値との関係を定めたマップが予め格納されており、
前記制御装置は、前記マップを使用して、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度を換算した傾転角、前記回転軸の回転数、及び調整された電流の平均値に対応する前記液圧ポンプの吐出圧力を決定する、液圧ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、液圧回転機械および液圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、斜板式のアキシャルピストンポンプである液圧回転機械(液圧ポンプまたは液圧モータ)が知られている。このような液圧回転機械では、ケーシング内に、シリンダブロックおよび斜板が収容される(例えば、特許文献1参照)。シリンダブロックは、ケーシングの内部から外部まで延びる回転軸に固定される。
【0003】
シリンダブロックには複数のピストンが摺動可能に保持され、それらのピストンの頭部に取り付けられたシューが斜板と摺動する。斜板の角度は、サーボピストンによって変更される。特許文献2には、サーボピストンを電動アクチュエータで駆動する液圧回転機械が開示されている。特許文献2には、電動アクチュエータの具体例として、ボールねじ駆動機構が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-100759号公報
【特許文献2】特表2011-522194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サーボピストンの駆動方式としては、サーボピストンに作用する液圧を変更する方式もある。しかし、この場合には、サーボピストンの駆動が作動液の温度変化の影響を受けるおそれがある。これに対し、特許文献2の具体例のように、ボールねじ駆動機構(すなわち、ねじ軸、ナットおよび電動モータを含む電動アクチュエータ)を用いてサーボピストンを駆動すれば、そのような問題は生じない。
【0006】
ところで、液圧回転機械においては、回転数計を用いることなく回転軸の回転数を検出したいという要望がある。また、液圧回転機械が液圧ポンプである場合は、圧力計を用いることなく液圧ポンプの吐出圧力を検出したいという要望がある。
【0007】
そこで、本開示は、回転数計を用いることなく回転軸の回転数を検出することができる液圧回転機械を提供することを目的とする。また、本開示は、圧力計を用いることなく吐出圧力を検出することができる液圧ポンプを提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、一つの側面から、回転軸と、前記回転軸に固定され、複数のピストンを摺動可能に保持するシリンダブロックと、前記複数のピストンの頭部に取り付けられたシューと摺動する斜板と、前記斜板の角度を変更するサーボピストンと、前記シリンダブロックおよび前記斜板を収容するとともに、前記サーボピストンを摺動可能に保持するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられて前記サーボピストンを駆動する電動アクチュエータであって、前記サーボピストンの軸方向に沿って延びるねじ軸、前記ねじ軸と螺合するナットおよび前記ねじ軸を回転させる電動モータを含む電動アクチュエータと、前記電動モータの回転角度を検出する回転角度センサと、前記電動モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度が所定値に保たれるように前記電動モータへ送給する電流を調整し、調整された電流の波形に基づいて前記回転軸の回転数を算出する、液圧回転機械を提供する。
【0009】
また、本開示は、別の側面から、液圧ポンプであって、回転軸と、前記回転軸に固定され、複数のピストンを摺動可能に保持するシリンダブロックと、前記複数のピストンの頭部に取り付けられたシューと摺動する斜板と、前記斜板の角度を変更するサーボピストンと、前記シリンダブロックおよび前記斜板を収容するとともに、前記サーボピストンを摺動可能に保持するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられて前記サーボピストンを駆動する電動アクチュエータであって、前記サーボピストンの軸方向に沿って延びるねじ軸、前記ねじ軸と螺合するナットおよび前記ねじ軸を回転させる電動モータを含む電動アクチュエータと、前記電動モータの回転角度を検出する回転角度センサと、前記電動モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度が所定値に保たれるように前記電動モータへ送給する電流を調整し、前記制御装置には、前記液圧ポンプの吐出圧力と、前記斜板の角度である傾転角と、前記回転軸の回転数と、前記電動モータの電流値との関係を定めたマップが予め格納されており、前記制御装置は、前記マップを使用して、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度を換算した傾転角、前記回転軸の回転数、及び調整された電流の平均値に対応する前記液圧ポンプの吐出圧力を決定する、液圧ポンプを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、回転数計を用いることなく回転軸の回転数を検出することができる液圧回転機械が提供されるとともに、圧力計を用いることなく吐出圧力を検出することができる液圧ポンプが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施形態に係る液圧回転機械の断面図である。
図2】電流の波形を示すグラフである。
図3】制御装置に格納されるマップを説明するための図である。
図4】変形例の液圧回転機械の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に、一実施形態に係る液圧回転機械1を示す。この液圧回転機械1は、ケーシング2と、ケーシング2の内部から外部まで延びる回転軸11を含む。さらに、液圧回転機械1は、ケーシング2内に収容されたバルブプレート3、シリンダブロック4および斜板5を含む。
【0013】
以下、説明の便宜上、回転軸11の軸方向を前後方向(ケーシング2の外部に位置する一端側を前方、他端側を後方)というとともに、回転軸11の軸方向と直交する二方向を上下方向(図1の上側を上方、下側を下方)および左右方向という。
【0014】
ケーシング2は、後ろ向きに開口する容器状のケーシング本体22と、ケーシング本体22の開口を閉塞するバルブカバー21を含む。ケーシング本体22は、回転軸11に貫通される前壁23と、内部空間を取り囲む底壁24、天井壁25および一対の側壁を含む。ケーシング本体22の前壁23およびバルブカバー21には、回転軸11を回転可能に支持する軸受12,13がそれぞれ保持されている。
【0015】
バルブプレート3はバルブカバー21の前面に取り付けられている。バルブプレート3には、互いに反対向きの円弧状の第1ポート31および第2ポート32が設けられている。図1では、第1ポート31を下側の上死点(後述するピストン61が最も後退する位置)、第2ポート32を上側の下死点(ピストン61が最も前進する位置)に描いているが、実際の第1ポート31と第2ポート32の位置は、左右方向(前記上死点と前記下死点との離間方向と直交する方向)において回転軸11の両側である。
【0016】
本実施形態では、液圧回転機械1が一方向に回転する液圧ポンプである。このため、第1ポート31が吸入ポート、第2ポート32が吐出ポートである。すなわち、回転軸11の回転方向において、吸入ポートである第1ポート31は前記上死点の下流側であって前記下死点の上流側に位置し、吐出ポートである第2ポート32は前記下死点の下流側であって前記上死点の上流側に位置する。
【0017】
バルブカバー21には、第1ポート31と連通する第1流路2aと、第2ポート32と連通する第2流路2bが設けられている。第1流路2aおよび第2流路2bはバルブカバー21の外周面または後面に開口し、これらの開口が外部接続ポートを形成する。上述したように液圧回転機械1は一方向に回転する液圧ポンプであるため、第1流路2aが吸入路であり、第2流路2bが吐出路である。すなわち、第2流路2bの圧力は、第1流路2aの圧力よりも高い。
【0018】
シリンダブロック4は、回転軸11に固定されており、回転軸11と共に回転することでバルブプレート3と摺動する。シリンダブロック4には、回転軸11の周囲に、前向きに開口する複数のシリンダボア41が設けられている。これらのシリンダボア41には、複数のピストン61がそれぞれ挿入されている。これにより、ピストン61がシリンダブロック4に摺動可能に保持される。
【0019】
また、シリンダブロック4には、各シリンダボア41からバルブプレート3に至るシリンダポート42が設けられている。これらのシリンダポート42のうちのいくつかが第1ポート31と連通し、別のいくつかが第2ポート32と連通する。例えば、シリンダボア41およびシリンダポート42の数が9つの場合、シリンダブロック4の回転位置によって4つまたは5つのシリンダポート42が第1ポート31または第2ポート32と連通する。
【0020】
ピストン61の頭部には、複数のシュー62がそれぞれ取り付けられている。本実施形態では、シュー62が、斜板5に取り付けられた環状のシュープレート63を介して斜板5と摺動する。ただし、シュープレート63が省略されて、シュー62が斜板5と直接的に摺動してもよい。シュー62は、シュープレート63に接触した状態が維持されるように、押え板64によって押えられている。
【0021】
斜板5は、ケーシング本体22の前壁23に設けられた支持台14によって、左右方向に延びる揺動軸回りに揺動可能に支持されている。斜板5の角度はサーボピストン7によって変更され、サーボピストン7は、ケーシング本体22の天井壁25に摺動可能に保持されている。
【0022】
より詳しくは、斜板5は、回転軸11に貫通される本体部50と、本体部50から上向きに突出する操作部51を含む。本実施形態では、操作部51に、サーボピストン7の先端部71がピン52を介して連結されている。
【0023】
ただし、サーボピストン7は必ずしも斜板5の操作部51に連結される必要はない。例えば、サーボピストン7が斜板5の操作部51に後方から当接し、操作部51が、当該操作部51とケーシング本体22の前壁23との間に配置されたスプリングによって後ろ向きに付勢されてもよい。
【0024】
ケーシング本体22の天井壁25には、サーボピストン7が挿入される保持穴26が設けられている。本実施形態では、保持穴26が、ケーシング2の内部空間に対する開口を形成する第1ガイド部27と、第1ガイド部27に対して斜板5と反対側に位置する第2ガイド部28を含む。第2ガイド部28の直径は、第1ガイド部27の直径よりも小さい。
【0025】
一方、サーボピストン7は、上述した先端部71に隣接する、第1ガイド部27に摺動可能に保持される第1摺動部72と、第2ガイド部28に摺動可能に保持される第2摺動部73を含む。つまり、第1摺動部72の直径は第1ガイド部27の直径とほぼ等しく、第2摺動部73の直径は第2ガイド部28の直径とほぼ等しい。
【0026】
そして、第1摺動部72の第2摺動部73側の環状の端面と、保持穴26における第1ガイド部27と第2ガイド部28との間の段差部との間に、補助圧力室91が形成されている。この補助圧力室91は、サーボピストン7を斜板5に向かって押圧するためのものである。
【0027】
ケーシング本体22およびバルブカバー21には、第2流路2bから分岐して補助圧力室91に至る導入路2cが設けられている。本実施形態では、上述したように第2流路2bが吐出路であるので、導入路2cは、吐出路から補助圧力室91へ作動液を導入する。
【0028】
導入路2cには、補助圧力室91の圧力を設定する電磁比例弁92が設けられている。本実施形態では、電磁比例弁92が液圧ポンプの吐出圧力を設定圧まで減圧する減圧弁として機能する。図例では、電磁比例弁92が指令電流と二次圧が負の相関を示す逆比例型であるが、電磁比例弁92は指令電流と二次圧が正の相関を示す正比例型であってもよい。
【0029】
ケーシング本体22の天井壁25には、サーボピストン7を駆動する電動アクチュエータ8が取り付けられている。電動アクチュエータ8は、サーボピストン7の軸方向に沿って延びるねじ軸84と、ねじ軸84と螺合するナット83と、ねじ軸84を回転させる電動モータ86を含む。
【0030】
さらに、電動アクチュエータ8は、サーボピストン7と連結されるとともにナット83が固定された中空のロッド82と、ロッド82をサーボピストン7の軸方向に摺動可能に保持する筒状のハウジング85を含む。ハウジング85はケーシング本体22の天井壁25に固定され、このハウジング85に電動モータ86が取り付けられている。
【0031】
本実施形態では、ロッド82がユニバーサルジョイントを介してサーボピストン7と連結されている。具体的には、ロッド82の前端にスロットが設けられており、このスロットにボール81が保持されている。一方、サーボピストン7の第2摺動部73には、そのスロット内に挿入される板状の突起74が設けられており、この突起74にボール81と嵌合する穴が設けられている。
【0032】
ただし、本実施形態とは逆に、サーボピストン7の第2摺動部73にボール81を保持するスロットが設けられ、ロッド82の前端にスロット内に挿入される突起74が設けられてもよい。あるいは、ロッド82は、ユニバーサルジョイント以外のジョイント(例えば、ボールジョイントや球面ジョイントなど)によりサーボピストン7と連結されてもよい。
【0033】
電動モータ86は、制御装置15によって制御される。制御装置15は、電動モータ86の回転角度を検出する回転角度センサ16と電気的に接続されている。例えば、回転角度センサ16は、レゾルバやロータリエンコーダなどである。制御装置15には、斜板5の角度である傾転角を決定するための情報が入力される。制御装置15は、回転角度センサ16で検出される電動モータ86の回転角度が、入力される情報に応じた所定値に保たれるように、電動モータ86へ送給する電流を調整する。
【0034】
例えば、液圧ポンプである液圧回転機械1が制御弁を介して液圧アクチュエータへ作動液を供給し、その制御弁を作動させるための操作装置が設けられる場合、操作装置の操作量が制御装置15に入力され、制御装置15は操作装置の操作量が大きくなるほど液圧ポンプの傾倒角を大きくする。
【0035】
制御装置15に関し、本明細書で開示する要素の機能は、開示された機能を実行するよう構成またはプログラムされた汎用プロセッサ、専用プロセッサ、集積回路、ASIC(Application Specific Integrated Circuits)、従来の回路、および/または、それらの組み合わせ、を含む回路または処理回路を使用して実行できる。プロセッサは、トランジスタやその他の回路を含むため、処理回路または回路と見なされる。本開示において、回路、ユニット、または手段は、列挙された機能を実行するハードウエアであるか、または、列挙された機能を実行するようにプログラムされたハードウエアである。ハードウエアは、本明細書に開示されているハードウエアであってもよいし、あるいは、列挙された機能を実行するようにプログラムまたは構成されているその他の既知のハードウエアであってもよい。ハードウエアが回路の一種と考えられるプロセッサである場合、回路、手段、またはユニットはハードウエアとソフトウエアの組み合わせであり、ソフトウエアはハードウエアおよび/またはプロセッサの構成に使用される。
【0036】
さらに、本実施形態では、制御装置15が、調整された電流の波形に基づいて回転軸11の回転数を算出するとともに、図3に示すマップを使用して液圧ポンプの吐出圧力を決定する。
【0037】
回転軸11の回転数N[rpm]の算出に関しては、図2に示すように、制御装置15は、調整された電流の波形から、所定時間T[s]における電流の振動回数Kを求め、この振動回数Kおよびピストン61の本数Zを使用して以下の式により回転軸11の回転数Nを算出する。例えば、所定時間Tは0.1~0.5sである。
N=K/2×1/Z×1/T×60
【0038】
本実施形態では液圧回転機械1が液圧ポンプであるので、斜板5には、シリンダブロック4内の高圧によってサーボピストン7を押圧するようなモーメントが作用する。また、このモーメントは、シリンダブロック4とバルブプレート3の相対位置関係(本実施形態では、シリンダブロック4のシリンダポート42と、バルブプレート3の吐出ポートである第2ポート32の連通の切り換わり)によって微小に変化する。このため、電動モータ86の回転角度を所定値に保つように調整される電流は振動し、その振動数は回転軸11の回転数と相関関係がある。従って、調整された電流の波形に基づいて回転軸11の回転数を算出することで、回転数計を用いることなく回転軸11の回転数を検出することができる。
【0039】
また、本実施形態では、補助圧力室91に比較的に圧力の高い作動液が導入され、その圧力によってサーボピストン7が斜板5に向かって押圧される。従って、電動アクチュエータ8が小さな推進力でサーボピストン7を前進させることができる。
【0040】
液圧ポンプの吐出圧力の決定に関しては、制御装置15には、図3に示す、液圧ポンプの吐出圧力と、斜板5の角度である傾転角と、回転軸11の回転数と、電動モータ86の電流値との関係を定めたマップが予め格納されている。液圧ポンプの吐出圧力と各パラメータとの関係としては、吐出圧力が高くなると電動モータ86の電流値が高くなり、傾転角が大きくなると吐出圧力に対して電動モータ86の電流値が小さくなり、回転軸11の回転数が高くなると吐出圧力に対して電動モータ86の電流値が大きくなる。
【0041】
図3に示すマップは、液圧ポンプである液圧回転機械1に対して事前に性能確認試験を行うことで得ることができる。なお、図3では、電動モータ86の電流値と液圧ポンプの吐出圧力との関係が直線で表されているが、その関係は曲線で表されてもよい。
【0042】
制御装置15は、図3に示すマップを使用して、回転角度センサ16で検出される電動モータ86の回転角度を換算した傾転角、算出した回転数、及び調整された電流の平均値に対応する液圧ポンプの吐出圧力を決定する。
【0043】
液圧ポンプの吐出圧力は、斜板5の角度である傾転角、回転軸11の回転数、および電動モータ86の電流値と相関関係がある。従って、それらの関係を定めたマップを使用することで、圧力計を用いることなく液圧ポンプの吐出圧力を検出することができる。
【0044】
(変形例)
本開示は上述した実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。
【0045】
例えば、液圧回転機械1は両方向に回転する液圧ポンプであってもよい。この場合、図4に示す変形例の液圧回転機械1Aのように、導入路2cは、高圧選択弁93を介して第1流路2aと第2流路2bの双方と接続される。この構成でも、導入路2cは、第1流路2aと第2流路2bのうちの圧力の高い方である吐出路から補助圧力室91へ作動液を導入する。
【0046】
あるいは、液圧回転機械1は両方向に回転する液圧モータであってもよい。この場合、回転方向によって、第1流路2aと第2流路2bのどちらか一方が流入路、他方が流出路となり、第1ポート31と第2ポート32のどちらか一方が流入ポート、他方が流出ポートとなる。
【0047】
液圧回転機械1が液圧モータである場合、シリンダブロック4内の高圧によって斜板5にサーボピストン7を引き抜くようなモーメントが作用する。この場合でも前記実施形態と同様に、そのモーメントが、シリンダブロック4とバルブプレート3の相対位置関係(シリンダブロック4のシリンダポート42と、バルブプレート3の流入ポートの連通の切り換わり)によって微小に変化する。このため、電動モータ86の回転角度を所定値に保つように調整される電流は振動し、その振動数は回転軸11の回転数と相関関係がある。従って、調整された電流の波形に基づいて回転軸11の回転数を算出することで、回転数計を用いることなく回転軸11の回転数を検出することができる。
【0048】
また、液圧ポンプの吐出圧力の決定に関しては、液圧ポンプを駆動する原動機の回転数が回転軸11の回転数として制御装置15に入力され、制御装置15が、算出した回転数の代わりに入力された回転数を使用して液圧ポンプの吐出圧力を決定してもよい。
【0049】
(まとめ)
本開示は、一つの側面から、回転軸と、前記回転軸に固定され、複数のピストンを摺動可能に保持するシリンダブロックと、前記複数のピストンの頭部に取り付けられたシューと摺動する斜板と、前記斜板の角度を変更するサーボピストンと、前記シリンダブロックおよび前記斜板を収容するとともに、前記サーボピストンを摺動可能に保持するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられて前記サーボピストンを駆動する電動アクチュエータであって、前記サーボピストンの軸方向に沿って延びるねじ軸、前記ねじ軸と螺合するナットおよび前記ねじ軸を回転させる電動モータを含む電動アクチュエータと、前記電動モータの回転角度を検出する回転角度センサと、前記電動モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度が所定値に保たれるように前記電動モータへ送給する電流を調整し、調整された電流の波形に基づいて前記回転軸の回転数を算出する、液圧回転機械を提供する。
【0050】
液圧回転機械が液圧ポンプである場合は、シリンダブロック内の高圧によって斜板にサーボピストンを押圧するようなモーメントが作用し、液圧回転機械が液圧モータである場合は、シリンダブロック内の高圧によって斜板にサーボピストンを引き抜くようなモーメントが作用する。また、このモーメントは、シリンダブロックとバルブプレートの相対位置関係(液圧回転機械が液圧ポンプである場合、シリンダブロックに設けられるシリンダポートと、バルブプレートの吐出ポートとの連通の切り換わり)によって微小に変化する。このため、電動モータの回転角度を所定値に保つように調整される電流は振動し、その振動数は回転軸の回転数と相関関係がある。従って、調整された電流の波形に基づいて回転軸の回転数を算出することで、回転数計を用いることなく回転軸の回転数を検出することができる。
【0051】
例えば、前記制御装置は、調整された電流の波形から、所定時間における電流の振動回数を求め、この振動回数を使用して前記回転軸の回転数を算出してもよい。
【0052】
前記液圧回転機械は液圧ポンプであり、上記の液圧回転機械は、前記ケーシングに収容され、前記シリンダブロックと摺動する、互いに反対向きの円弧状の第1ポートおよび第2ポートを含むバルブプレートをさらに備え、前記ケーシングは、前記サーボピストンを前記斜板に向かって押圧するための補助圧力室と、前記第1ポートと連通する第1流路と、前記第2ポートと連通する第2流路と、前記第1流路と前記第2流路のうちの圧力の高い方である吐出路から前記補助圧力室へ作動液を導入する導入路を含んでもよい。この構成によれば、補助圧力室には比較的に圧力の高い作動液が導入され、その圧力によってサーボピストンが斜板に向かって押圧される。従って、電動アクチュエータが小さな推進力でサーボピストンを前進させることができる。
【0053】
前記液圧回転機械は液圧ポンプであり、前記制御装置には、前記液圧ポンプの吐出圧力と、前記斜板の角度である傾転角と、前記回転軸の回転数と、前記電動モータの電流値との関係を定めたマップが予め格納されており、前記制御装置は、前記マップを使用して、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度を換算した傾転角、算出した回転数、及び調整された電流の平均値に対応する前記液圧ポンプの吐出圧力を決定してもよい。液圧ポンプの吐出圧力は、斜板の角度である傾転角、回転軸の回転数、および電動モータの電流値と相関関係がある。従って、それらの関係を定めたマップを使用することで、圧力計を用いることなく液圧ポンプの吐出圧力を検出することができる。
【0054】
また、本開示は、別の側面から、液圧ポンプであって、回転軸と、前記回転軸に固定され、複数のピストンを摺動可能に保持するシリンダブロックと、前記複数のピストンの頭部に取り付けられたシューと摺動する斜板と、前記斜板の角度を変更するサーボピストンと、前記シリンダブロックおよび前記斜板を収容するとともに、前記サーボピストンを摺動可能に保持するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられて前記サーボピストンを駆動する電動アクチュエータであって、前記サーボピストンの軸方向に沿って延びるねじ軸、前記ねじ軸と螺合するナットおよび前記ねじ軸を回転させる電動モータを含む電動アクチュエータと、前記電動モータの回転角度を検出する回転角度センサと、前記電動モータを制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度が所定値に保たれるように前記電動モータへ送給する電流を調整し、前記制御装置には、前記液圧ポンプの吐出圧力と、前記斜板の角度である傾転角と、前記回転軸の回転数と、前記電動モータの電流値との関係を定めたマップが予め格納されており、前記制御装置は、前記マップを使用して、前記回転角度センサで検出される前記電動モータの回転角度を換算した傾転角、前記回転軸の回転数、及び調整された電流の平均値に対応する前記液圧ポンプの吐出圧力を決定する、液圧ポンプを提供する。
【0055】
液圧ポンプの吐出圧力は、斜板の角度である傾転角、回転軸の回転数、および電動モータの電流値と相関関係がある。従って、それらの関係を定めたマップを使用することで、圧力計を用いることなく液圧ポンプの吐出圧力を検出することができる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A 液圧回転機械(液圧ポンプ)
11 回転軸
15 制御装置
16 回転角度センサ
2 ケーシング
2a 第1流路
2b 第2流路
2c 導入路
3 バルブプレート
31 第1ポート
32 第2ポート
4 シリンダブロック
5 斜板
61 ピストン
62 シュー
7 サーボピストン
8 電動アクチュエータ
83 ナット
84 ねじ軸
86 電動モータ
91 補助圧力室
図1
図2
図3
図4