(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140540
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置
(51)【国際特許分類】
G11B 21/08 20060101AFI20230928BHJP
G11B 5/09 20060101ALI20230928BHJP
G11B 5/596 20060101ALI20230928BHJP
G11B 21/10 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G11B21/08 H
G11B5/09 301Z
G11B5/596
G11B21/10 R
G11B21/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046430
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 晋
(57)【要約】
【課題】ノイズの測定においてアクチュエータの回転の反力による影響が生じることを抑制可能な磁気ディスク装置を提供する。
【解決手段】一つの実施形態に係る磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、磁気ヘッドと、アクチュエータと、第1のストッパと、加速度センサと、コントローラとを備える。前記アクチュエータは、回転軸まわりに回転することで前記磁気ヘッドを前記磁気ディスクに対して移動させる。前記第1のストッパは、前記アクチュエータに当接することで前記回転軸まわりの第1の方向に前記アクチュエータが回転することを制限する。前記加速度センサは、与えられた加速度に応じた電気信号を出力する。前記コントローラは、前記アクチュエータが前記第1のストッパに当接するときに、前記アクチュエータを前記第1の方向に駆動する第1の駆動信号を当該アクチュエータに印加し、前記加速度センサが出力した第1の電気信号を測定する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気ディスクと、
前記磁気ディスクに対してデータの記録及び再生を行うよう構成された磁気ヘッドと、
回転軸まわりに回転することで前記磁気ヘッドを前記磁気ディスクに対して移動させるよう構成されたアクチュエータと、
前記アクチュエータに当接することで前記回転軸まわりの第1の方向に前記アクチュエータが回転することを制限するよう構成された第1のストッパと、
与えられた加速度に応じた電気信号を出力するよう構成された加速度センサと、
前記アクチュエータが前記第1のストッパに当接するときに、前記アクチュエータを前記第1の方向に駆動する第1の駆動信号を当該アクチュエータに印加し、前記加速度センサが出力した第1の電気信号を測定するよう構成された、コントローラと、
を具備する磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記コントローラは、
前記第1の電気信号の振幅を前記第1の駆動信号の振幅で除して影響係数を算出し、
前記加速度センサが出力した前記電気信号から前記影響係数を用いてノイズ成分を除去するよう構成された、
請求項1の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記アクチュエータに当接することで前記第1の方向の反対の第2の方向に前記アクチュエータが回転することを制限するよう構成された第2のストッパ、
をさらに具備し、
前記コントローラは、
前記アクチュエータが前記第2のストッパに当接するときに、前記アクチュエータを前記第2の方向に駆動する第2の駆動信号を当該アクチュエータに印加し、前記加速度センサが出力した第2の電気信号を測定し、
前記第1の電気信号の振幅を前記第1の駆動信号の振幅で除して第1の比率を算出し、
前記第2の電気信号の振幅を前記第2の駆動信号の振幅で除して第2の比率を算出し、
前記第1の比率と前記第2の比率との平均値である影響係数を用いて、前記加速度センサが出力した前記電気信号からノイズ成分を除去するよう構成された、
請求項1の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記アクチュエータを前記回転軸まわりに駆動する駆動信号の指令値に前記影響係数を乗じてノイズ推定値を算出し、
前記加速度センサが出力した前記電気信号の出力値から前記ノイズ推定値を減じて補正出力値を算出し、
前記補正出力値に基づいて前記指令値を修正するよう構成された、
請求項2又は請求項3の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記コントローラは、
算出した前記影響係数を前記磁気ディスク又は不揮発性メモリに記録し、
電力を供給されたときに前記影響係数を取得するよう構成された、
請求項2乃至請求項4のいずれか一つの磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記コントローラは、指令信号を入力されることで、前記アクチュエータを前記第1のストッパに当接させ、前記第1の駆動信号を前記アクチュエータに印加し、前記第1の電気信号を測定するよう構成された、
請求項5の磁気ディスク装置。
【請求項7】
前記アクチュエータは、前記磁気ヘッドを保持するサスペンションと、前記サスペンションが取り付けられるとともに前記回転軸まわりに回転可能なキャリッジと、前記キャリッジに設けられるとともに前記第1の駆動信号を印加されることで前記キャリッジを前記第1の方向に回転させるよう構成されたボイスコイルと、を有し、
前記第1のストッパは、前記サスペンションから離間しており、前記キャリッジに当接することで前記第1の方向に前記アクチュエータが回転することを制限するように構成された、
請求項1乃至請求項6のいずれか一つの磁気ディスク装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、磁気ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブのような磁気ディスク装置の性能は、振動により影響を受ける虞がある。磁気ディスク装置は、例えば、加速度センサを有し、当該加速度センサにより振動を検出する。
【0003】
一方で、磁気ディスク装置は、アクチュエータにより、磁気ヘッドを磁気ディスク上の所望の位置にシークさせる。例えばアクチュエータを駆動させる駆動信号が、クロストークにより、加速度センサの出力にノイズ成分を与えることがある。磁気ディスク装置は、例えば、ノイズ成分を推定し、当該推定されたノイズ成分を加速度センサの出力から除去する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ノイズ成分の推定は、例えば、予め加速度センサの出力から得られた関数により行われる。駆動されたアクチュエータの反力が、関数を作成する際の加速度センサの出力に影響することがある。すなわち、アクチュエータの反力は、ノイズ成分の推定に影響する虞がある。
【0006】
本発明が解決する課題の一例は、ノイズの測定においてアクチュエータの回転の反力による影響が生じることを抑制可能な磁気ディスク装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態に係る磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、磁気ヘッドと、アクチュエータと、第1のストッパと、加速度センサと、コントローラとを備える。前記磁気ヘッドは、前記磁気ディスクに対してデータの記録及び再生を行うよう構成される。前記アクチュエータは、回転軸まわりに回転することで前記磁気ヘッドを前記磁気ディスクに対して移動させるよう構成される。前記第1のストッパは、前記アクチュエータに当接することで前記回転軸まわりの第1の方向に前記アクチュエータが回転することを制限するよう構成される。前記加速度センサは、与えられた加速度に応じた電気信号を出力するよう構成される。前記コントローラは、前記アクチュエータが前記第1のストッパに当接するときに、前記アクチュエータを前記第1の方向に駆動する第1の駆動信号を当該アクチュエータに印加し、前記加速度センサが出力した第1の電気信号を測定するよう構成される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置の構成の一例を示す例示的な図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の磁気ディスク装置を概略的に示す例示的な平面図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の磁気ディスク装置の影響係数の算出に関する例示的なブロック図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の磁気ディスク装置の影響係数の算出動作の一例を示す例示的なフローチャートである。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の指令値に応じた駆動信号及びRVセンサの検出信号を示す例示的なグラフである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の磁気ディスク装置の指令値の補正に関する例示的なブロック図である。
【
図7】
図7は、第2の実施形態に係る磁気ディスク装置の影響係数の算出に関する例示的なブロック図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の磁気ディスク装置の影響係数の算出動作の一例を示す例示的なフローチャートである。
【
図9】
図9は、第2の実施形態の指令値に応じた負の駆動信号及びRVセンサの検出信号を示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図6を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る磁気ディスク装置1の構成の一例を示す例示的な図である。磁気ディスク装置1は、例えば、ハードディスクドライブ(HDD)である。なお、磁気ディスク装置1は、ハイブリッドHDDのような他の磁気ディスク装置であっても良い。
【0011】
磁気ディスク装置1は、ホストシステム2に接続可能である。ホストシステム2は、例えばプロセッサ、パーソナルコンピュータ、又はサーバである。磁気ディスク装置1とホストシステム2とは、通信を行うことができる。例えば、磁気ディスク装置1は、ホストシステム2からアクセスコマンド(リードコマンド及びライトコマンド)を受け付けることができる。
【0012】
図2は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1を概略的に示す例示的な平面図である。磁気ディスク装置1は、
図1及び
図2に示す筐体10、スピンドルモータ(SPM)11、複数の磁気ディスク12、複数の磁気ヘッド13、及びアクチュエータ14と、
図2に示すランプロード機構15、第1のストッパ16、及び第2のストッパ17とを有する。なお、
図1及び
図2は、説明のため、一つの磁気ディスク12を示す。
【0013】
筐体10は、SPM11、複数の磁気ディスク12、複数の磁気ヘッド13、アクチュエータ14、ランプロード機構15、第1のストッパ16、及び第2のストッパ17を収容する。筐体10は、例えば、気密に封止される。
【0014】
図1に示すように、SPM11は、スピンドル19を有する。スピンドル19に、複数の磁気ディスク12が、例えばクランプによって保持される。SPM11は、スピンドル19まわりに、複数の磁気ディスク12を一体的に回転させることができる。
【0015】
複数の磁気ディスク12の両面には、データの記録が可能な記録面が形成される。複数の磁気ヘッド13の数は、当該複数の磁気ヘッド13が複数の磁気ディスク12の記録面にアクセス可能なように設定される。
【0016】
磁気ディスク12は、各記録面において、放射状のサーボ領域に予め書き込まれたサーボ情報によって、半径方向に同心円の複数のトラックが規定される。磁気ディスク12の各記録面におけるサーボ領域間の領域は、データをライト可能なデータ領域である。各トラックは、周方向にサーボ領域とデータ領域との一つ以上の組を含む。
【0017】
複数の磁気ヘッド13のそれぞれは、対応する磁気ディスク12の記録面に対向可能なように配置される。複数の磁気ヘッド13のそれぞれは、ライトヘッド及びリードヘッドを有する。複数の磁気ヘッド13のそれぞれは、当該磁気ヘッド13が対向する磁気ディスク12の記録面に対し、データの記録及びデータの再生を行うことができる。
【0018】
アクチュエータ14は、例えばシーク時に、磁気ヘッド13を記録面に対して移動させ、複数のトラックのうちいずれかのトラックに磁気ヘッド13を位置決めする。アクチュエータ14は、複数のサスペンション21と、キャリッジ22と、支持軸23と、ボイスコイル24とを有する。サスペンション21の数は、磁気ヘッド13の数に対応して設定される。
【0019】
複数のサスペンション21のそれぞれは、弾性変形可能な板状に形成される。複数のサスペンション21のそれぞれは、複数の磁気ヘッド13のうちの対応する一つを、当該サスペンション21の先端の近傍で支持する。
【0020】
キャリッジ22は、アクチュエータブロック31と、複数のアーム32とを有する。アクチュエータブロック31は、支持軸23の中心軸Axまわりに回転可能に、当該支持軸23に支持される。中心軸Axは、回転軸の一例である。
【0021】
複数のアーム32は、アクチュエータブロック31から、中心軸Axと略直交する方向に突出する。複数のアーム32は、略平行に配置される。複数のサスペンション21のそれぞれは、複数のアーム32のうち対応する一つの先端に取り付けられる。
【0022】
ボイスコイル24は、キャリッジ22に設けられる。例えば、ボイスコイル24とアーム32との間に、アクチュエータブロック31が配置される。ボイスコイル24は、筐体10に取り付けられた一対のヨークの間に配置される。ボイスコイル24と、当該ヨークと、当該ヨークに設けられた磁石とは、例えば、磁気ディスク装置1のボイスコイルモータ(VCM)に含まれる。
【0023】
ボイスコイル24は、駆動信号(電流)を印加されることで、キャリッジ22と、当該キャリッジ22に取り付けられたサスペンション21とを、中心軸Axまわりに回転させる。SPM11のスピンドル19とアクチュエータ14の支持軸23とは、略平行且つ互いに離間した位置に設けられる。このため、アクチュエータ14は、中心軸Axまわりに回転することで、サスペンション21に取り付けられた磁気ヘッド13を磁気ディスク12に対して移動させることができる。アクチュエータ14は、磁気ヘッド13を磁気ディスク12の記録面に対して略平行に移動させる。
【0024】
アクチュエータ14は、マイクロアクチュエータ(MA)をさらに有しても良い。MAは、例えば、圧電素子のようなアクチュエータ素子である。MAは、サスペンション21とキャリッジ22との接続部分に設けられ、サスペンション21を磁気ディスク12の記録面に対して略平行に移動させる。
【0025】
図2に示すランプロード機構15は、例えば、アンロード時及びリトラクト時に、複数の磁気ヘッド13をパーキングする。例えば、ランプロード機構15は、サスペンション21の先端に設けられたリフトタブを支持することで、サスペンション21に支持された磁気ヘッド13を退避位置に保持することができる。
【0026】
上述のアクチュエータ14は、ボイスコイル24に印加された駆動信号に応じて、第1の方向D1又は第2の方向D2に回転する。第1の方向D1は、中心軸Axまわりの一方向である。第1の方向D1は、例えば、ランプロード機構15からスピンドル19に向かう方向である。第2の方向D2は、第1の方向D1の反対方向である。すなわち、第2の方向D2は、例えば、スピンドル19からランプロード機構15に向かう方向である。なお、第1の方向D1と第2の方向D2とは、反対であっても良い。
【0027】
第1のストッパ16は、筐体10に固定される。アクチュエータ14は、第1の方向D1に所定の位置まで回転すると、第1のストッパ16に当接する。第1のストッパ16は、例えば、キャリッジ22に当接し、サスペンション21から離間している。第1のストッパ16は、アクチュエータ14のキャリッジ22に当接することで、第1の方向D1に当該アクチュエータ14が回転することを制限する。
【0028】
第2のストッパ17は、筐体10に固定される。アクチュエータ14は、第2の方向D2に所定の位置まで回転すると、第2のストッパ17に当接する。第2のストッパ17は、例えば、キャリッジ22に当接し、サスペンション21から離間している。第2のストッパ17は、アクチュエータ14のキャリッジ22に当接することで、第2の方向D2に当該アクチュエータ14が回転することを制限する。
【0029】
図1に示すように、磁気ディスク装置1は、RVセンサ41X,41Yと、ショックセンサ42と、ライト禁止検出器43と、コントロールユニット44とを有する。RVセンサ41X,41Yは、加速度センサの一例である。コントロールユニット44は、コントローラの一例である。
【0030】
RVセンサ41X,41Y及びショックセンサ42のそれぞれは、与えられた振動としての加速度又は角加速度を検出する。なお、本明細書において、角加速度は、加速度に含まれる。RVセンサ41X,41Y及びショックセンサ42は、与えられた振動に応じた電気信号(検出信号)を出力する。
【0031】
RVセンサ41X,41Yは、互いに離間した位置に配置される。例えば、磁気ディスク12の記録面に沿う方向において、二つのRVセンサ41X,41Yの間に、磁気ディスク12が配置される。RVセンサ41X,41Yは、例えば、筐体10に固定される。
【0032】
例えば、RVセンサ41Xの検出値とRVセンサ41Yの検出値との差分から、磁気ディスク12の略円周方向の振動が検出可能である。RVセンサ41X,41Yは、検出信号をコントロールユニット44へ出力する。
【0033】
ショックセンサ42は、例えば、RVセンサ41X,41Yから離間した位置で、筐体10に固定される。ショックセンサ42は、三軸方向の加速度を検出することができる。なお、ショックセンサ42は、この例に限られない。
【0034】
ショックセンサ42は、検出信号をライト禁止検出器43に出力する。ライト禁止検出器43は、ショックセンサ42に検出された加速度が所定の閾値を超えると、ライト禁止信号をコントロールユニット44に出力する。
【0035】
コントロールユニット44は、ホストシステム2と通信可能に接続される。コントロールユニット44は、ホストシステム2からコマンドを受信すると、当該コマンドに応じた制御を行う。
【0036】
コントロールユニット44は、ヘッドアンプ51と、ドライバ52と、リードライト(R/W)チャネル53と、ハードディスクコントローラ(HDC)54と、揮発性メモリ55と、バッファメモリ56と、不揮発性メモリ57とを含む。なお、コントロールユニット44は、この例に限られない。
【0037】
ヘッドアンプ51は、例えば、筐体10の内部のフレキシブルプリント回路板(FPC)に搭載される。ドライバ52、R/Wチャネル53、HDC54、揮発性メモリ55、バッファメモリ56、及び不揮発性メモリ57は、例えば、筐体10の外部のプリント回路板(PCB)に搭載される。FPCとPCBとは、互いに電気的に接続される。
【0038】
コントロールユニット44は、不揮発性メモリ57又は磁気ディスク12に予め記憶されたファームウェアに従って、磁気ディスク装置1の全体的な制御を行う。ファームウェアは、例えば、初期ファームウェア及び通常動作に用いる制御用ファームウェアである。
【0039】
起動時に最初に実行される初期ファームウェアは、例えば、不揮発性メモリ57に記憶されている。通常動作に用いられる制御用ファームウェアは、磁気ディスク12に記録されている。制御用ファームウェアは、初期ファームウェアに従った制御により、磁気ディスク12から一旦バッファメモリ56に読み出され、その後揮発性メモリ55に格納される。
【0040】
ヘッドアンプ51は、複数の磁気ヘッド13のうち一つを選択し、ライト時に信号を増幅し、リード時に信号を検出する。ヘッドアンプ51は、ライト電流制御部51aと、リード信号検出部51bと、ヘッド選択部51cとを有する。
【0041】
ヘッド選択部51cは、複数の磁気ヘッド13のうち一つを選択する。コントロールユニット44は、選択された磁気ヘッド13にて読み取られたサーボ情報に基づいて、磁気ディスク12に対する磁気ヘッド13の位置を制御し位置決めする。
【0042】
ライト電流制御部51aは、磁気ヘッド13が位置決めされた状態で、磁気ヘッド13におけるライトヘッドに流れるライト電流を制御する。リード信号検出部51bは、磁気ヘッド13が位置決めされた状態で、磁気ヘッド13におけるリードヘッドにて読み出される信号を検出する。ヘッドアンプ51は、例えば集積回路(IC)である。
【0043】
ドライバ52は、SPM11及びボイスコイル24を駆動するとともに、RVセンサ41X,41Yから検出信号を取得する。ドライバ52は、SPM制御部52aと、VCM制御部52bと、RV信号取得部52cとを有する。
【0044】
SPM制御部52aは、SPM11の回転を制御する。VCM制御部52bは、ボイスコイル24の駆動を制御する。RV信号取得部52cは、RVセンサ41X,41Yから検出信号を取得する。なお、アクチュエータ14がMAをさらに有する場合、ドライバ52は、MAの駆動を制御するMA制御部をさらに有する。
【0045】
R/Wチャネル53は、ヘッドアンプ51とHDC54との間でデータの受け渡しを行う。なお、データは、リードデータ、ライトデータ、及びサーボ情報を含む。R/Wチャネル53は、ライト禁止部53aを有する。
【0046】
ライト禁止部53aは、ライト禁止検出器43のライト禁止信号を取得すると、ライト禁止の指令をヘッドアンプ51へ供給する。なお、ライト禁止部53aは、HDC54からの指令に基づいてライト禁止の指令をヘッドアンプ51へ供給しても良い。
【0047】
ヘッドアンプ51は、ライト禁止部53aからライト禁止の指令を受けると、磁気ヘッド13による磁気ディスク12へのライト動作が行われないようにする。すなわち、ライト電流制御部51aは、磁気ヘッド13におけるライトヘッドにライト電流が流れないようにする。
【0048】
HDC54は、例えばホストシステム2から取得したライトコマンド及びリードコマンドに基づいてライト制御及びリード制御を行うとともに、ホストシステム2とR/Wチャネル53との間でデータの受け渡しを行う。HDC54は、コマンド制御部54aとサーボ制御部54bとを有する。
【0049】
コマンド制御部54aは、ホストシステム2から受信されるコマンドに応じた動作を制御する。HDC54がホストシステム2からコマンドを受信すると、コマンド制御部54aは、受信されたコマンドを認識し、認識されたコマンドに応じて制御動作を選択する。コマンド制御部54aは、コマンドに含まれたアドレス等を特定する。
【0050】
コマンドがライトコマンドである場合、コマンド制御部54aは、ライトコマンドに応じて、ライト制御を選択する。コマンド制御部54aは、ライトコマンドに含まれたライトアドレス及びライドデータをそれぞれ特定する。
【0051】
サーボ制御部54bは、コマンド制御部54aで選択された制御動作に応じて、磁気ヘッド13の位置を制御する。サーボ制御部54bは、コマンドに含まれたアドレス(例えば、ライトアドレス)に応じて、磁気ディスク12における目標トラックへの磁気ヘッド13のシークを制御する。サーボ制御部54bは、ドライバ52を介してアクチュエータ14を制御する。
【0052】
サーボ制御部54bは、アクチュエータ14を制御することで、磁気ヘッド13をシークさせ、磁気ヘッド13を目標トラックへ位置決めする。目標トラックは、コマンドに含まれたアドレス(例えば、ライトアドレス)に対応するトラックである。
【0053】
サーボ制御部54bは、磁気ディスク12の目標トラック上での磁気ヘッド13のトラッキングを制御する。サーボ制御部54bは、ドライバ52を介してアクチュエータ14を制御し、磁気ヘッド13を目標トラック上でトラッキングさせる。
【0054】
ドライバ52、R/Wチャネル53、及びHDC54は、例えば、システムオンチップ(SoC)に含まれる。なお、ドライバ52、R/Wチャネル53、及びHDC54は、互いに異なる部品であっても良い。
【0055】
本実施形態のドライバ52は、係数算出部52dと、指令補正部52eとをさらに有する。係数算出部52dは、RVセンサ41X,41Yの検出値を補正するための影響係数を算出する。以下、影響係数の算出について詳しく説明する。
【0056】
図3は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1の影響係数COX,COYの算出に関する例示的なブロック図である。
図3に示すように、コントロールユニット44は、アンプ61X,61Yと、フィルタ62X,62Yと、アナログデジタルコンバータ(ADC)63X,63Yと、をさらに有する。アンプ61X,61Y、フィルタ62X,62Y、及びADC63X,63Yのそれぞれは、ドライバ52に含まれても良いし、ドライバ52とは異なる部品であっても良い。
【0057】
アンプ61X,61Yは、RVセンサ41X,Yが出力した検出信号CSX,CSYを増幅する。フィルタ62X,62Yは、アンプ61X,61Yが増幅した検出信号CSX,CSYから、ノイズ成分を除去する。ADC63X,63Yは、フィルタ62X,62Yによりノイズ成分が除去された検出信号CSX,CSYを、デジタル信号である検出値SNX,SNYに変換する。検出値SNX,SNYは、電気信号の出力値の一例である。
【0058】
係数算出部52dは、算出部64X,64Yを有する。算出部64X,64Yは、検出値SNX,SNYと、例えばサーボ制御部54bからVCM制御部52bに出力される駆動信号の指令値VVCと、に基づき影響係数COX,COYを算出する。
【0059】
図4は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1の影響係数COX,COYの算出動作の一例を示す例示的なフローチャートである。以下、
図4を参考に、本実施形態における影響係数COX,COYの算出動作の一例について説明する。
【0060】
影響係数COX,COYの算出動作は、例えば、磁気ディスク装置1が組み立てられた後、当該磁気ディスク装置1が出荷される前に行われる。このとき、磁気ディスク装置1は、ホストシステム2のような外部装置から振動を入力されることを抑制できるように固定される。すなわち、以下の説明においては、磁気ディスク装置1に外部から振動が入力されないものと仮定される。
【0061】
まず、HDC54は、ホストシステム2のような外部装置から、影響係数COX,COYを算出するためのコマンドが入力されたか否かを判定する(S101)。当該コマンドは、指令信号の一例である。HDC54は、コマンドが入力されていない場合(S101:No)、コマンドが入力されるまでS101を繰り返す。
【0062】
HDC54がコマンドを入力されると(S101:Yes)、コマンド制御部54aが、影響係数COX,COYを算出するための制御動作を選択する。サーボ制御部54bは、選択された制御動作に従って、以下のようにドライバ52を制御する。
【0063】
ドライバ52のVCM制御部52bは、アクチュエータ14を第1の方向D1に移動させる所定の駆動信号(電流)をボイスコイル24に印加する。言い換えると、VCM制御部52bは、アクチュエータ14を第1の方向D1に駆動する(S102)。
【0064】
次に、サーボ制御部54bは、アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接したか否かを判定する(S103)。例えば、サーボ制御部54bは、磁気ヘッド13の位置に基づき、アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接したか否かを判定する。
【0065】
コントロールユニット44は、他の方法により、アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接したか否かを判定しても良い。例えば、VCM制御部52bが、ボイスコイル24の逆起電力に基づき、アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接したか否かを判定しても良い。
【0066】
サーボ制御部54b又はVCM制御部52bは、アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接していない場合(S103:No)、アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接するまでS103を繰り返す。アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接すると(S103:Yes)、サーボ制御部54bは、VCM制御部52bに所定の指令値VVCを出力する。
【0067】
VCM制御部52bは、指令値VVCを入力されることで、指令値VVCに応じた駆動信号(電流)をボイスコイル24に印加する(S104)。指令値VVCに応じた駆動信号は、第1の駆動信号の一例である。
【0068】
図5は、第1の実施形態の指令値VVCに応じた駆動信号CDR及びRVセンサ41X,41Yの検出信号CSX,CSYを示す例示的なグラフである。
図5において、縦軸は電流を示し、横軸は時間を示す。例えば、本実施形態において、正の電流は、アクチュエータ14を第1の方向D1に駆動する。言い換えると、正の電流を印加されたボイスコイル24は、キャリッジ22を第1の方向D1に回転させる。一方、負の電流は、アクチュエータ14を第2の方向D2に駆動する。
【0069】
S104において、指令値VVCを入力されたVCM制御部52bは、SIN波形の信号であって、正の電流のみが有効とされた半波波形の駆動信号CDRをボイスコイル24に印加する。すなわち、駆動信号CDRは、アクチュエータ14を第1の方向D1に駆動する。
【0070】
第1のストッパ16は、第1の方向D1に駆動されたアクチュエータ14が、第1の方向D1に回転することを制限する。このため、駆動信号CDRを入力されたアクチュエータ14は、実質的に回転せず、静止した状態に保たれる。なお、アクチュエータ14は、僅かに回転しても良い。
【0071】
VCM制御部52bが駆動信号CDRを出力すると、ドライバ52とボイスコイル24との間の配線と、RVセンサ41X,41Yとドライバ52との間の配線との間で、クロストークが生じることがある。すなわち、VCM制御部52bが駆動信号CDRをボイスコイル24に印加すると、RVセンサ41X,41Yの検出信号CSX,CSYに、クロストークノイズが重なる(重畳する)ことがある。
【0072】
アクチュエータ14は静止しており、磁気ディスク装置1は固定されている。このため、RVセンサ41X,41Yには、実質的に加速度が与えられない。しかし、クロストークノイズによって、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYは、駆動信号に対応する半波波形となる。検出信号CSX,CSYは、第1の電気信号の一例である。
【0073】
RV信号取得部52cは、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYを取得する(S105)。すなわち、ドライバ52は、アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接するときに、アクチュエータ14を第1の方向D1に駆動する正の駆動信号CDRをアクチュエータ14に印加し、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYを測定する。
【0074】
算出部64X,64Yは、検出信号CSX,CSYの振幅CSXmax,CSYmaxを駆動信号CDRの振幅CDRmaxで除して、影響係数COX,COYを算出する(S106)。すなわち、影響係数COX,COYは、以下の式(数1)及び(数2)で表され得る。
COX=CSXmax/CDRmax …(数1)
COY=CSYmax/CDRmax …(数2)
【0075】
算出部64X,64Yは、振幅CDRmaxを、例えば指令値VVCから算出することができる。また、算出部64X,64Yは、振幅CSXmax,CSYmaxを、例えば検出値SNX,SNYから算出することができる。なお、係数算出部52dは、この例に限られない。
【0076】
HDC54は、算出部64X,64Yから、影響係数COX,COYを取得し、不揮発性メモリ57に記録する(S107)。なお、HDC54は、R/Wチャネル53及びヘッドアンプ51を通じて、磁気ヘッド13に磁気ディスク12へ影響係数COX,COYを記録させても良い。このように、影響係数COX,COYは、磁気ディスク12又は不揮発性メモリ57に記録される。
【0077】
以上のように、コントロールユニット44は、影響係数COX,COYを算出するためのコマンドを入力されることで、アクチュエータ14を第1のストッパ16に当接させ、駆動信号CDRをアクチュエータ14に印加し、検出信号CSX,CSYを測定する。そして、コントロールユニット44は、検出信号CSX,CSYに基づき、影響係数COX,COYを算出する。なお、コントロールユニット44は、他のタイミングで、影響係数COX,COYの算出を行っても良い。
【0078】
例えば出荷後のHDC54は、電力を供給されて起動したときに、磁気ディスク12又は不揮発性メモリ57から影響係数COX,COYを取得する。HDC54は、影響係数COX,COYを、ドライバ52に出力する。
【0079】
図6は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1の指令値VVCの補正に関する例示的なブロック図である。
図6に示すように、ドライバ52の指令補正部52eは、影響係数COX,COYを用いて、RVセンサ41X,41Yの検出値SNX,SNYを補正し、補正された検出値SFX,SFYに基づいて駆動信号CDRの指令値VVCを補正する。補正された検出値SFX,SFYは、補正出力値の一例である。
【0080】
指令補正部52eは、例えば、係数乗算器71X,71Yと、第1の減算器72X,72Yと、第2の減算器73と、フィルタ74と、アンプ75と、加算器76とを有する。なお、指令補正部52eはこの例に限られない。係数乗算器71X,71Y、第1の減算器72X,72Y、第2の減算器73、フィルタ74、アンプ75、及び加算器76のそれぞれは、ドライバ52に含まれても良いし、ドライバ52とは異なる部品であっても良い。
【0081】
例えばシーク時に、サーボ制御部54bは、ドライバ52へ、駆動信号CDRの指令値VVCを出力する。係数乗算器71X,71Yは、指令値VVCに影響係数COX,COYを乗じて、ノイズ推定値ENX,ENYを算出する。すなわち、ノイズ推定値ENX,ENYは、以下の式(数3)及び(数4)で表され得る。
ENX=VVC×COX …(数3)
ENY=VVC×COY …(数4)
【0082】
一方、ADC63X,63Yが、フィルタ62X,62Yによりノイズ成分が除去された検出信号CSX,CSYを、デジタル信号である検出値SNX,SNYに変換する。第1の減算器72X,72Yは、検出値SNX,SNYからノイズ推定値ENX,ENYを減じて、補正された検出値SFX,SFYを出力する。すなわち、補正された検出値SFX,SFYは、以下の式(数5)及び(数6)で表され得る。
SFX=SNX-ENX …(数5)
SFY=SNY-ENY …(数6)
【0083】
影響係数COX,COYは、指令値VVCあたりのノイズ成分の比率を表し得る。このため、ノイズ推定値ENX,ENYは、検出値SNX,SNYに含まれるノイズ成分の量を表し得る。すなわち、指令補正部52eは、検出値SNX,SNYから影響係数COX,COYを用いてノイズ成分(ノイズ推定値ENX,ENY)を除去している。
【0084】
第2の減算器73は、補正された検出値SFX,SFYの差分を出力する。フィルタ74は、当該差分からノイズ成分を除去する。アンプ75は、フィルタ74によりノイズ成分が除去された差分を増幅し、RVFF指令値VFFを出力する。
【0085】
加算器76は、指令値VVCにRVFF指令値VFFを加え、VCM制御部52bに出力する。VCM制御部52bは、指令値VVCとRVFF指令値VFFとの合計に応じた駆動信号CDRを、ボイスコイル24に印加する。以上のように、指令補正部52eは、補正された検出値SFX,SFYに基づいて、指令値VVCを修正する。
【0086】
以上のように、本実施形態のコントロールユニット44は、回転振動フィードフォワード(rotational vibration feed-forward:RVFF)制御により、指令値VVCを修正する。さらに、コントロールユニット44は、RVFF制御に用いられるRVセンサ41X,41Yの検出値SNX,SNYを、影響係数COX,COYを用いて補正する。これにより、コントロールユニット44は、磁気ヘッド13の位置決めへの振動及びクロストークノイズの影響を抑制し、磁気ヘッド13の位置決めをより正確に行うことができる。
【0087】
以上説明された第1の実施形態に係る磁気ディスク装置1において、第1のストッパ16は、アクチュエータ14に当接することで、中心軸Axまわりの第1の方向D1に当該アクチュエータ14が回転することを制限する。コントロールユニット44は、アクチュエータ14が第1のストッパ16に当接するときに、アクチュエータ14を第1の方向D1に駆動する正の駆動信号CDRを当該アクチュエータ14に印加し、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYを測定する。駆動信号CDRを印加されたアクチュエータ14は、第1のストッパ16により回転を制限されている。このため、正の駆動信号CDRを印加されたアクチュエータ14は、回転による反力と、当該反力による振動と、が生じることを抑制できる。反力による振動の発生が抑制されるため、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYは、正の駆動信号CDRにより発生したクロストークノイズに相当し得る。従って、本実施形態の磁気ディスク装置1は、ノイズの測定においてアクチュエータ14の回転の反力による影響が生じることを抑制し、RVセンサ41X,41Yが出力する検出信号CSX,CSYに含まれるノイズ成分をより正確に測定することができる。
【0088】
コントロールユニット44は、検出信号CSX,CSYの振幅を正の駆動信号CDRの振幅で除して影響係数COX,COYを算出する。さらに、コントロールユニット44は、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYから影響係数COX,COYを用いてノイズ成分を除去する。例えば、検出信号CSX,CSYから得られるRVセンサ41X,41Yの検出値SNX,SNYに、影響係数COX,COYを乗ずることで、検出信号CSX,CSYに含まれるノイズ成分(ノイズ推定値ENX,ENY)が算出される。これにより、本実施形態の磁気ディスク装置1は、当該磁気ディスク装置1の振動をより正確に検出することができる。
【0089】
コントロールユニット44は、アクチュエータ14を中心軸Axまわりに駆動する駆動信号CDRの指令値VVCに影響係数COX,COYを乗じてノイズ推定値ENX,ENYを算出する。コントロールユニット44は、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYの出力値(検出値SNX,SNY)からノイズ推定値ENX,ENYを減じて補正された検出値SFX,SFYを算出する。さらに、コントロールユニット44は、補正された検出値SFX,SFYに基づいて指令値VVCを修正する。すなわち、コントロールユニット44は、影響係数COX,COYを用いて補正された検出値SFX,SFYに基づき、指令値VVCをフィードフォワード制御により修正する。従って、本実施形態の磁気ディスク装置1は、アクチュエータ14の回転における振動による影響とノイズによる影響とを抑制することができ、ひいてはより正確に磁気ヘッド13を所望の位置に配置することができる。
【0090】
コントロールユニット44は、影響係数COX,COYを磁気ディスク12又は不揮発性メモリ57に記録する。コントロールユニット44は、電力を供給されたときに当該影響係数COX,COYを取得する。これにより、本実施形態の磁気ディスク装置1は、起動毎に検出信号CSX,CSYを測定する必要が無く、速やかに起動することができる。
【0091】
コントロールユニット44は、影響係数COX,COYを算出するためのコマンドを入力されることで、アクチュエータ14を第1のストッパ16に当接させ、正の駆動信号CDRをアクチュエータ14に印加し、検出信号CSX,CSYを測定する。例えば、コントロールユニット44は、起動毎に検出信号CSX,CSYを測定するのではなく、製造時において上記コマンドを入力されたときに検出信号CSX,CSYを測定する。これにより、本実施形態の磁気ディスク装置1は、起動毎に検出信号CSX,CSYを測定する必要が無く、速やかに起動することができる。
【0092】
アクチュエータ14は、サスペンション21と、キャリッジ22と、ボイスコイル24とを有する。サスペンション21は、磁気ヘッド13を保持する。キャリッジ22は、サスペンション21が取り付けられるとともに中心軸Axまわりに回転可能である。ボイスコイル24は、キャリッジ22に設けられるとともに正の駆動信号CDRを印加されることでキャリッジ22を第1の方向D1に回転させる。第1のストッパ16は、サスペンション21から離間しており、キャリッジ22に当接することで第1の方向D1にアクチュエータ14が回転することを制限する。これにより、本実施形態の磁気ディスク装置1は、第1のストッパ16がサスペンション21を変形させることを抑制できる。
【0093】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態について、
図7乃至
図9を参照して説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0094】
図7は、第2の実施形態に係る磁気ディスク装置1の影響係数COX,COYの算出に関する例示的なブロック図である。
図7に示すように、第2の実施形態の係数算出部52dは、平均部80をさらに有する。平均部80は、算出部64X,64Yが算出した値を平均して、影響係数COX,COYを算出する。
【0095】
図8は、第2の実施形態の磁気ディスク装置1の影響係数COX,COYの算出動作の一例を示す例示的なフローチャートである。以下、
図8を参考に、本実施形態における影響係数COX,COYの算出動作の一例について説明する。
【0096】
S101からS105までは、第1の実施形態における影響係数COX,COYの算出と実質的に等しい。S105においてRV信号取得部52cが検出信号CSX,CSYを取得すると、算出部64X,64Yは、検出信号CSX,CSYの振幅CSXmax,CSYmaxを駆動信号CDRの振幅CDRmaxで除して、第1の比率RAX,RAYを算出する(S201)。第1の比率RAX,RAYは、第1の実施形態の影響係数COX,COYと実質的に等しい。
【0097】
次に、ドライバ52のVCM制御部52bは、アクチュエータ14を第2の方向D2に移動させる所定の負の駆動信号(電流)CDRをボイスコイル24に印加する。言い換えると、VCM制御部52bは、アクチュエータ14を第2の方向D2に駆動する(S202)。
【0098】
次に、サーボ制御部54b又はVCM制御部52bは、アクチュエータ14が第2のストッパ17に当接したか否かを判定する(S203)。サーボ制御部54b又はVCM制御部52bは、アクチュエータ14が第2のストッパ17に当接していない場合(S203:No)、アクチュエータ14が第2のストッパ17に当接するまでS203を繰り返す。アクチュエータ14が第2のストッパ17に当接すると(S203:Yes)、サーボ制御部54bは、VCM制御部52bに指令値VVCを出力する。
【0099】
VCM制御部52bは、指令値VVCを入力されることで、指令値VVCに応じた駆動信号(電流)CDRをボイスコイル24に印加する(S204)。S204においてVCM制御部52bがボイスコイル24に印加する駆動信号CDRは、第2の駆動信号の一例である。
【0100】
図9は、第2の実施形態の指令値VVCに応じた負の駆動信号CDR及びRVセンサ41X,41Yの検出信号CSX,CSYを示す例示的なグラフである。
図9に示すように、S204において指令値VVCを入力されたVCM制御部52bは、SIN波形の信号であって、負の電流のみが有効とされた半波波形の駆動信号CDRをボイスコイル24に印加する。すなわち、駆動信号DSは、アクチュエータ14を第2の方向D2に駆動する。
【0101】
第2のストッパ17は、第2の方向D2に駆動されたアクチュエータ14が、第2の方向D2に回転することを制限する。このため、駆動信号CDRを入力されたアクチュエータ14は、実質的に回転せず、静止した状態に保たれる。なお、アクチュエータ14は、僅かに回転しても良い。
【0102】
クロストークノイズによって、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYは、駆動信号に対応する半波波形となる。検出信号CSX,CSYは、第2の電気信号の一例である。
【0103】
RV信号取得部52cは、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYを取得する(S205)。すなわち、ドライバ52は、アクチュエータ14が第2のストッパ17に当接するときに、アクチュエータ14を第2の方向D2に駆動する負の駆動信号CDRをアクチュエータ14に印加し、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYを測定する。
【0104】
算出部64X,64Yは、検出信号CSX,CSYの振幅CSXmax,CSYmaxを駆動信号CDRの振幅CDRmaxで除して、第2の比率RBX,RBYを算出する(S206)。次に、平均部80は、第1の比率RAX,RAYと第2の比率RBX,RBYとの平均値としての影響係数COX,COYを算出する(S207)。すなわち、第2の実施形態における影響係数COX,COYは、以下の式(数7)及び(数8)で表され得る。
COX=(RAX+RBX)/2 …(数7)
COY=(RAY+RBY)/2 …(数8)
【0105】
HDC54は、平均部80から、影響係数COX,COYを取得し、不揮発性メモリ57に記録する(S208)。影響係数COX,COYは、磁気ディスク12に記録されても良い。
【0106】
ドライバ52の指令補正部52eは、第1の実施形態と同じく、検出値SNX,SNYから影響係数COX,COYを用いてノイズ成分(ノイズ推定値ENX,ENY)を除去する。また、指令補正部52eは、補正された検出値SFX,SFYに基づいて、指令値VVCを修正する。
【0107】
以上説明された第2の実施形態の磁気ディスク装置1において、第2のストッパ17は、アクチュエータ14に当接することで、第1の方向D1の反対の第2の方向D2に当該アクチュエータ14が移動することを制限する。コントロールユニット44は、アクチュエータ14が第2のストッパ17に当接するときに、アクチュエータ14を第2の方向D2に駆動する負の駆動信号CDRを当該アクチュエータ14に印加し、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYを測定する。検出信号CSX,CSYは、負の駆動信号SDRにより発生したクロストークノイズに相当する。コントロールユニット44は、検出信号CSX,CSYの振幅CSXmax,CSYmaxを負の駆動信号CDRの振幅CDRmaxで除して第1の比率RAX,RAY及び第2の比率RBX,RBYを算出する。さらに、コントロールユニット44は、第1の比率RAX,RAYと第2の比率RBX,RBYとの平均値である影響係数COX,COYを用いて、RVセンサ41X,41Yが出力した検出信号CSX,CSYからノイズ成分を除去する。例えば、検出信号CSX,CSYから得られるRVセンサ41X,41Yの検出値SNX,SNYに、影響係数COX,COYを乗ずることで、検出信号CSX,CSYに含まれるノイズ成分(ノイズ推定値ENX,ENY)が算出される。これにより、本実施形態の磁気ディスク装置1は、当該磁気ディスク装置1の振動をより正確に検出することができる。また、磁気ディスク装置1は、アクチュエータ14の回転方向がノイズ成分に与える影響をより平準化することができる。
【0108】
以上の実施形態において、コントロールユニット44は、RVセンサ41X,41Yが出力する検出信号CSX,CSY(検出値SNX,SNY)から、影響係数COX,COYを用いてノイズ成分を除去する。しかし、コントロールユニット44は、この例に限られない。例えば、コントロールユニット44は、ショックセンサ42が出力する検出信号から、影響係数を用いてノイズ成分を除去しても良い。
【0109】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、制限は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0110】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0111】
1…磁気ディスク装置、12…磁気ディスク、13…磁気ヘッド、14…アクチュエータ、16…第1のストッパ、17…第2のストッパ、21…サスペンション、22…キャリッジ、24…ボイスコイル、41X,41Y…RVセンサ、44…コントロールユニット、57…不揮発性メモリ、Ax…中心軸、D1…第1の方向、D2…第2の方向、SNX,SNY…検出値、VVC…指令値、COX,COY…影響係数、CDR…駆動信号、CSX,CSY…検出信号、CSXmax,CSYmax,CDRmax…振幅、SFX,SFY…検出値、RAX,RAY…第1の比率、RBX,RBY…第2の比率。