(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140542
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】磁気ディスク装置および方法
(51)【国際特許分類】
G11B 20/18 20060101AFI20230928BHJP
G11B 21/10 20060101ALI20230928BHJP
G11B 5/596 20060101ALI20230928BHJP
G11B 20/10 20060101ALI20230928BHJP
G11B 5/09 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
G11B20/18 520E
G11B20/18 552Z
G11B20/18 572F
G11B20/18 572B
G11B21/10 F
G11B5/596
G11B20/10 301Z
G11B5/09 361B
G11B5/09 361F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046432
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317011920
【氏名又は名称】東芝デバイス&ストレージ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古橋 佳奈
【テーマコード(参考)】
5D044
【Fターム(参考)】
5D044BC01
5D044CC04
5D044DE46
5D044DE68
(57)【要約】
【課題】オフトラックが発生しても効率的にデータをリードすることができる磁気ディスク装置および方法を提供すること。
【解決手段】磁気ディスクには複数の第1セクタを備えるトラックが設けられる。モータは磁気ディスクを回転させる。磁気ディスク装置のコントローラは、磁気ディスクが1回転する際に、複数の第1セクタのうちのリードターゲットである1以上の第2セクタのそれぞれに対してセクタ単位の誤り訂正である第1誤り訂正を含む第1リード動作を実行する。その後、コントローラは、1以上の第2セクタのうちの1以上の第3セクタのそれぞれに対して第1誤り訂正を含む第2リード動作を実行する。1以上の第3セクタは、磁気ヘッドがオフトラックの状態で第1リード動作が実行された第2セクタを含み、磁気ヘッドがオントラックの状態で第1リード動作が実行されかつ第1誤り訂正に成功した第2セクタを含まない。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1セクタを備えるトラックが設けられた磁気ディスクと、
前記磁気ディスクを回転させるモータと、
磁気ヘッドと、
前記磁気ディスクが1回転する際に、前記複数の第1セクタのうちのリードターゲットである1以上の第2セクタのそれぞれに対してセクタ単位の誤り訂正である第1誤り訂正を含む第1リード動作を実行し、
前記1以上の第2セクタのうちの1以上の第3セクタであって、前記磁気ヘッドがオフトラックの状態で前記第1リード動作が実行された第4セクタに該当する第2セクタを含み、前記磁気ヘッドがオントラックの状態で前記第1リード動作が実行されかつ前記第1誤り訂正に成功した第5セクタに該当する第2セクタを含まない、前記1以上の第3セクタのそれぞれに対して前記第1誤り訂正を含む第2リード動作を実行する、
コントローラと、
を備える磁気ディスク装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記1以上の第2セクタのうちの1つである第6セクタに対する前記第1リード動作において前記磁気ヘッドがオフトラックの状態になった場合、前記第6セクタに対する前記第1リード動作に含まれる前記第1誤り訂正の実行をキャンセルする、
請求項1に記載の磁気ディスク装置。
【請求項3】
前記複数の第1セクタは、前記トラックの単位の誤り訂正である第2誤り訂正のための誤り訂正符号がライトされた第7セクタを含み、
前記コントローラは、
前記複数の第1セクタの全てがリードターゲットであり前記1以上の第2セクタは前記複数の第1セクタがである場合、前記磁気ディスクが1回転する際に、前記複数の第1セクタに対して前記第1リード動作を実行した後に前記誤り訂正符号を用いた前記第2誤り訂正を実行し、
前記複数の第1セクタに前記第4セクタに該当する第1セクタが含まれ、前記第4セクタに該当する前記第1セクタにライトされたデータを前記第2誤り訂正によって取得できた場合、前記第4セクタに該当する前記第1セクタに対する前記第2リード動作を実行しない、
請求項2に記載の磁気ディスク装置。
【請求項4】
前記複数の第1セクタに含まれる前記第4セクタに該当する第1セクタの数が1個であり、かつ前記複数の第1セクタに前記磁気ヘッドがオントラックの状態で前記第1リード動作が実行されかつ前記第1誤り訂正に失敗した第8セクタに該当する第1セクタが含まれない場合、前記コントローラは、前記第4セクタに該当する前記第1セクタにライトされたデータを前記第2誤り訂正によって取得することができる、
請求項3に記載の磁気ディスク装置。
【請求項5】
前記複数の第1セクタに含まれる前記第4セクタに該当する第1セクタの数が2個以上であるか、または前記複数の第1セクタに含まれる前記第4セクタに該当する第1セクタの数が1個でありかつ前記複数の第1セクタに前記第1誤り訂正に失敗した第8セクタに該当する第1セクタが含まれる場合、前記コントローラは、前記第4セクタに該当する前記第1セクタに対する前記第2リード動作を実行する、
請求項3または請求項4に記載の磁気ディスク装置。
【請求項6】
前記複数の第1セクタに含まれる前記第4セクタに該当する第1セクタの数が2個以上であるか、または前記複数の第1セクタに含まれる前記第4セクタに該当する第1セクタの数が1個でありかつ前記複数の第1セクタに前記第1誤り訂正に失敗した第8セクタに該当する第1セクタが含まれる場合、前記コントローラは、前記第2誤り訂正の実行をキャンセルして前記第2リード動作を実行する、
請求項3から請求項5の何れか1項に記載の磁気ディスク装置。
【請求項7】
複数の第1セクタを備えるトラックが設けられた磁気ディスクがモータによって1回転する際に、前記複数の第1セクタのうちのリードターゲットである1以上の第2セクタのそれぞれに対してセクタ単位の誤り訂正である第1誤り訂正を含む第1リード動作を実行することと、
前記第1リード動作の後に、前記1以上の第2セクタのうちの1以上の第3セクタであって、磁気ヘッドがオフトラックの状態で前記第1リード動作が実行された第4セクタに該当する第2セクタを含み、前記磁気ヘッドがオントラックの状態で前記第1リード動作が実行されかつ前記第1誤り訂正に成功した第5セクタに該当する第2セクタを含まない、前記1以上の第3セクタのそれぞれに対して前記第1誤り訂正を含む第2リード動作を実行することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、磁気ディスク装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク装置では、磁気ヘッドの位置決め制御の実行中に、種々の要因により、磁気ヘッドがターゲットのトラックからずれる場合がある。磁気ヘッドがターゲットのトラックからずれることは、オフトラックと称される。
【0003】
或るトラックからデータをリードしている最中にオフトラックが発生すると、期待されたデータと全くことなるデータがリードされる場合がある。よって、磁気ヘッドがオフトラックの状態でリードされたデータは使用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一つの実施形態は、オフトラックが発生しても効率的にデータをリードすることができる磁気ディスク装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの実施形態によれば、磁気ディスク装置は、磁気ディスクと、モータと、磁気ヘッドと、コントローラと、を備える。磁気ディスクには複数の第1セクタを備えるトラックが設けられる。モータは磁気ディスクを回転させる。コントローラは、磁気ディスクが1回転する際に、複数の第1セクタのうちのリードターゲットである1以上の第2セクタのそれぞれに対してセクタ単位の誤り訂正である第1誤り訂正を含む第1リード動作を実行する。その後、コントローラは、1以上の第2セクタのうちの1以上の第3セクタのそれぞれに対して第1誤り訂正を含む第2リード動作を実行する。1以上の第3セクタは、磁気ヘッドがオフトラックの状態で第1リード動作が実行された第4セクタに該当する第2セクタを含み、磁気ヘッドがオントラックの状態で第1リード動作が実行されかつ第1誤り訂正に成功した第5セクタに該当する第2セクタを含まない。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態の磁気ディスク装置の構成の一例を示す模式的な図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の磁気ディスクの構成の一例を示す模式的な図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の1つのトラックの構成の一例を示す模式的な図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態のレジスタに格納される情報の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の磁気ディスク装置による、ターゲットトラックに対するリードの手順の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の磁気ディスク装置による、1つのターゲットセクタに対するリード動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の磁気ディスク装置のターゲットトラックに対するリードの際の各処理のタイミングの一例を説明するための図である。
【
図8】
図8は、第2の実施形態の磁気ディスク装置による、1つのターゲットセクタに対するリード動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の磁気ディスク装置のターゲットトラックに対するリードの際の各処理のタイミングの一例を説明するための図である。
【
図10】
図10は、第2の実施形態の磁気ディスク装置のターゲットトラックに対するリードの際の各処理のタイミングの別の一例を説明するための図である。
【
図11】
図11は、第2の実施形態の磁気ディスク装置にインターリーブの技術が適用された場合における、ターゲットトラックに対するリードの際の各処理のタイミングの別の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に添付図面を参照して、実施形態にかかる磁気ディスク装置および方法を詳細に説明する。なお、これらの実施形態により本発明が限定されるものではない。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1の構成の一例を示す模式的な図である。
【0010】
磁気ディスク装置1は、ホスト2に接続される。磁気ディスク装置1は、ホスト2から、ライトコマンドやリードコマンドなどのアクセスコマンドを受信することができる。
【0011】
磁気ディスク装置1は、表面に磁性層が形成された磁気ディスク11を備える。磁気ディスク装置1は、アクセスコマンドに応じて磁気ディスク11にデータをライトしたり磁気ディスク11からデータをリードしたりする。
【0012】
データのライトおよびリードは、磁気ヘッド22を介して行われる。具体的には、磁気ディスク装置1は、磁気ディスク11のほかに、スピンドルモータ12、ランプ13、アクチュエータアーム15、ボイスコイルモータ(VCM)16、モータドライバIC(Integrated Circuit)21、磁気ヘッド22、ハードディスクコントローラ(HDC)23、ヘッドIC24、リードライトチャネル(RWC)25、プロセッサ26、RAM27、FROM(Flash Read Only Memory)28、およびバッファメモリ29を備える。
【0013】
磁気ディスク11は、同軸に取り付けられたスピンドルモータ12により、所定の回転速度で回転される。スピンドルモータ12は、モータドライバIC21により駆動される。
【0014】
プロセッサ26はモータドライバIC21を介して、スピンドルモータ12の回転およびVCM16の回転を制御する。
【0015】
磁気ヘッド22は、それに備わるライトヘッド22wおよびリードヘッド22rにより、磁気ディスク11に対してデータのライトまたはリードを行う。また、磁気ヘッド22は、アクチュエータアーム15の先端に取り付けられている。磁気ヘッド22は、モータドライバIC21によって駆動されるVCM16により、磁気ディスク11の半径方向に移動される。
【0016】
磁気ディスク11の回転が停止しているときなどは、磁気ヘッド22は、ランプ13上に移動される。ランプ13は、磁気ヘッド22を、磁気ディスク11から離間した位置で保持するように構成されている。
【0017】
ヘッドIC24は、リード時に、磁気ヘッド22が磁気ディスク11からリードた信号を増幅して出力し、RWC25に供給する。また、ヘッドIC24は、ライト時に、RWC25から供給されたデータに対応した信号を増幅して、磁気ヘッド22に供給する。
【0018】
RWC25は、HDC23から供給されるデータに対し、誤り訂正符号化を含む変調を行ってヘッドIC24に供給する。また、RWC25は、磁気ディスク11からリードされヘッドIC24から供給された信号に対し、誤り訂正を含む復調を実行してデジタルデータとしてHDC23へ出力する。
【0019】
HDC23は、I/F バスを介してホスト2との間で行われるデータの送受信の制御、バッファメモリ29の制御、などを行う。
【0020】
また、HDC23は、レジスタ31を備える。レジスタ31に格納される情報については後述される。
【0021】
バッファメモリ29は、ホスト2との間で送受信されるデータのバッファとして用いられる。バッファメモリ29は、例えば、高速な動作が可能な揮発性メモリによって構成される。バッファメモリ29を構成するメモリの種類は、特定の種類に限定されない。バッファメモリ29は、例えば、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、SRAM(Static Random Access Memory)、またはこれらの組み合わせによって構成され得る。
【0022】
プロセッサ26は、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。プロセッサ26には、RAM27、FROM(Flash Read Only Memory)28およびバッファメモリ29が接続されている。
【0023】
FROM28には、ファームウェア(プログラムデータ)および各種の動作パラメータなどが格納される。なお、ファームウェアは、磁気ディスク11に格納されてもよい。
【0024】
RAM27は、例えばDRAM、SRAM、またはこれらの組み合わせによって構成される。RAM27は、プロセッサ26によって、ファームウェアがロードされる領域、または各種の管理パラメータがキャッシュまたはバッファされる領域として使用される。
【0025】
プロセッサ26は、FROM28に格納されているファームウェアに従って、この磁気ディスク装置1の全体的な制御を行う。例えば、プロセッサ26は、ファームウェアをFROM28からRAM27にロードし、ロードされたファームウェアに従って、モータドライバIC21、ヘッドIC24、RWC25、HDC23などの制御を実行する。
【0026】
なお、RWC25、プロセッサ26およびHDC23を含む構成は、コントローラ30と見なすこともできる。コントローラ30は、これらのほかに、他の要素(例えばRAM27、FROM28、バッファメモリ29、またはRWC25など)を含んでいてもよい。
【0027】
また、ファームウェアプログラムは磁気ディスク11に格納されていてもよい。また、コントローラ30の機能の一部または全部は、FPGA(Field-Programmable Gate Array)またはASIC(Application Specific Integrated Circuit)などのハードウェア回路によって実現されてもよい。
【0028】
図2は、第1の実施形態の磁気ディスク11の構成の一例を示す模式的な図である。
【0029】
磁気ディスク11には、製造工程において、例えばサーボライタによって、またはセルフサーボライト(SSW)によって、サーボ情報がライトされる。
図2によれば、サーボ情報がライトされたサーボ領域の配置の一例として放射状に配置されたサーボ領域42が示されている。
【0030】
サーボ情報は、セクタ/シリンダ情報、バーストパターン、およびポストコードなどを含む。セクタ/シリンダ情報は、磁気ディスク11の円周方向のサーボ番地(サーボセクタ番地)および半径方向に設定されたトラックの位置(トラック番号)を与えることができる。セクタ/シリンダ情報から得られるトラック番号は、トラックの位置を表す整数値であり、バーストパターンは、トラック番号が表す位置を基準とした小数点以下のオフセット量を表す。ポストコードは、バーストパターン(より正確にはセクタ/シリンダ情報とバーストパターンとの組み合わせ)に基づいて設定されるトラックの形状の歪みを補正するための補正量である。
【0031】
サーボ領域42の間には、データがライトされ得るデータ領域43が設けられている。1つのサーボ領域42と、当該サーボ領域42に後続する1つのデータ領域43は、サーボセクタ44を構成する。そして、磁気ディスク11の半径方向には、同心円の複数のトラック41が設定されている。
【0032】
データ領域43には、各トラック41に沿って複数のデータセクタが設けられる。各データセクタに対し、磁気ヘッド22によって、データのライトおよびリードが実行される。各データセクタの記憶容量は、任意であるが、基本的に磁気ディスク11内で均一とされる。各データセクタは、1つのトラック41上の複数のデータ領域43に渡って位置していてもよい。または、1つのトラック41上の各データ領域43に1つのデータセクタのみが設けられていてもよい。または、1つのトラック41上の各データ領域43に複数のデータセクタが設けられていてもよい。
【0033】
以降では、特に説明がない限り、セクタはデータセクタを意味することとする。
【0034】
図3は、第1の実施形態の1つのトラック41の構成の一例を示す模式的な図である。本図では、サーボ領域42の図示が省略されている。
【0035】
各セクタは、セクタ番号によって識別される。セクタ番号がxであるセクタを、セクタ#xと表記する。
図3に示される例では、トラック41は、セクタ#0からセクタ#10までの11個のセクタを有する。トラック41に設けられた11個のセクタのそれぞれは、第1セクタの一例である。
【0036】
各セクタにライトされるデータは、誤り訂正符号(Error Correction Code:ECC)を含んでいる。RWC25は、1つのセクタからリードされたデータに対し、誤り訂正符号を用いたセクタ単位の誤り訂正が可能である。この各セクタにライトされるデータに含まれる誤り訂正符号を、第1ECCと表記する。また、第1ECCを用いた誤り訂正を、第1訂正と表記する。
【0037】
第1ECCの方式は、特定の方式に限定されない。一例では、第1ECCとしては、低密度パリティ検査符号(Low-Density Parity-Check Code)が適用される。
【0038】
データのライトは、例えば次のようにして実行される。まず、セクタ#0~セクタ#9に、セクタ番号の順番に第1ECCを含むデータがライトされる。そして、当該トラック41の末尾のセクタ#10に、別の誤り訂正符号がライトされる。なお、セクタ#10にライトされる誤り訂正符号も、第1ECCを含む。
【0039】
セクタ#10にライトされる誤り訂正符号は、セクタ#0~セクタ#9にライトされたデータ(データ#0~データ#9)を誤りの発生から保護するものである。つまり、セクタ#10にライトされる誤り訂正符号は、トラック41単位でデータを保護する。セクタ#10にライトされる誤り訂正符号を、第2ECCと表記する。また、第2ECCを用いた誤り訂正を、第2訂正と表記する。RWC25は、第2ECCによって保護されているトラック41からのデータのリードの際に、第1訂正に失敗したセクタがある場合、第2訂正によって当該セクタの期待されたデータを取得することができる。なお、第2ECCがライトされるセクタ#10は第7セクタの一例である。
【0040】
第2ECCの方式は、特定の方式に限定されない。一例では、第2ECCは、データ#0~データ#9に対するXORのビット演算によって生成される。
【0041】
なお、第1の実施形態では、第2訂正の機能の実装は任意である。例えば
図3において、トラック41の末尾のセクタ#10には、他のセクタと同様に通常のデータが格納されてもよい。
【0042】
コントローラ30は、リード動作においては、リードターゲットのセクタ(ターゲットセクタと表記する)が設けられたトラック41(ターゲットトラック41と表記する)上に磁気ヘッド22を位置決めしたうえで、当該ターゲットセクタからデータをリードする。しかしながら、磁気ヘッド22の位置決め制御が実行中であっても、外部から磁気ディスク装置1に衝撃または振動が印加されるなどの種々の要因によって、オフトラック、つまり磁気ヘッド22がターゲットのトラック41上から外れること、が起こる場合がある。ターゲットセクタを磁気ヘッド22が通過する際にオフトラックが起きると、ターゲットトラック41に隣接するトラック41にライトされたデータや、ターゲットトラック41とターゲットトラック41に隣接するトラック41との間に残っている過去のデータがリードされる場合がある。つまり、ターゲットセクタにライトされたデータと異なるデータがリードされる場合がある。
【0043】
前述されたように、コントローラ30(より正確にはRWC25)は、各セクタにライトされたデータに発生する誤りは、第1訂正によって訂正し得る。しかしながら、オフトラックの発生によって、ターゲットトラック41に隣接するトラック41にライトされたデータ、またはターゲットトラック41とターゲットトラック41に隣接するトラック41との間に残っている過去のデータがリードされた場合、第1訂正が成功してしまう可能性がある。よって、磁気ヘッド22がターゲットセクタを通過する際にオフトラックが発生した場合、たとえターゲットセクタからリードされたデータに対する第1訂正が成功したとしても、第1訂正の後のデータは期待されたデータであるとは限らない。よって、オフトラックが発生したときに得られたデータは、たとえ第1訂正に成功したとしても使用することはできない。
【0044】
ここで、実施形態と比較される技術について説明する。実施形態と比較される当該技術を、比較例と表記する。比較例では、1つのトラック上の複数のセクタがリードターゲットである場合、換言するとターゲットトラックに複数のターゲットセクタが存在する場合を考える。比較例によれば、コントローラは、磁気ヘッドをターゲットトラック上に位置決めしたうえで、複数のターゲットセクタに対してセクタ番号の順番にリード動作を実行する。コントローラは、各ターゲットセクタに対するリード動作では、第1訂正を実行する。通常、磁気ディスクの一回転で、複数のターゲットセクタの全てに対するリード動作が可能である。しかしながら、複数のターゲットセクタの何れかに対するリード動作の際にオフトラックが発生した場合、コントローラは、さらに磁気ディスクが一回転する際に、複数のターゲットセクタの全てに対するリード動作を再び実行する。つまり、たとえ複数のターゲットセクタに、磁気ヘッドがオントラックの状態でリード動作が実行されかつリードされたデータに対する第1訂正に成功したセクタが含まれていたとしても、複数のターゲットセクタの全てに対し、リード動作が再び実行される。よって、比較例によれば、オフトラックが発生した場合、全てのターゲットセクタから期待されたデータを取得するための時間と、第1訂正のための計算リソースと、が多く必要となる。
【0045】
これに対し、第1の実施形態によれば、コントローラ30は、次のように動作する。即ち、コントローラ30は、まず、磁気ディスク11が一回転する際に、全てのターゲットセクタのそれぞれに対してリード動作を実行する。リード動作は、第1訂正を含む。何れかのターゲットセクタに対するリード動作の際にオフトラックが発生した場合、コントローラ30は、磁気ヘッド22がオフトラックの状態でリード動作が行われたターゲットセクタに対しリード動作を再び実行する。この、一つのセクタに対して2回目以降に実行されるリード動作は、リードリトライ動作とも称される。コントローラ30は、磁気ヘッド22がオフトラックでない状態(つまり磁気ヘッド22がオントラックの状態)でリード動作が行われかつリードされたデータに対する第1訂正が成功したターゲットセクタに対しては、リードリトライ動作はしない。
【0046】
よって、第1の実施形態によれば、オフトラックが発生した場合において、全てのターゲットセクタから期待されたデータを取得するための時間の増加および誤り訂正のための計算リソースの増加を、比較例に比べて抑制できる。つまり、オフトラックが発生しても効率的にデータをリードすることができる。
【0047】
第1の実施形態では、コントローラ30は、磁気ヘッド22がオフトラックの状態でリード動作が行われたセクタを示す情報を記録する。そして、コントローラ30は、当該情報に基づいてリードリトライ動作のターゲットのセクタが選択される。当該情報は、本明細書においては、オフトラックセクタ情報311と表記される。オフトラックセクタ情報311は、
図4に示されるように、例えばレジスタ31に格納される。
【0048】
以降では、磁気ヘッド22がオフトラックの状態でリード動作が行われたセクタを、オフトラックセクタ、と表記する。
【0049】
続いて、第1の実施形態の磁気ディスク装置1の動作を説明する。
【0050】
図5は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1による、ターゲットトラック41に対するリードの手順の一例を示すフローチャートである。
【0051】
まず、コントローラ30は、磁気ディスク11が一回転する際に、ターゲットトラック41内の全てのターゲットセクタに対してセクタ番号の順にリード動作を実行する(S101)。ここで、初回に実行されるS101におけるターゲットセクタは、第2セクタの一例である。2回目以降に実行されるS101におけるターゲットセクタ、つまりリードリトライ動作におけるターゲットセクタは、第3セクタの一例である。また、各ターゲットセクタは第6セクタの一例である。
【0052】
図6は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1による、1つのターゲットセクタに対するリード動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【0053】
まず、RWC25は、ターゲットセクタからデータをリードする(S201)。そして、RWC25は、ターゲットセクタからリードされたデータに対して第1訂正を実行する(S202)。
【0054】
リード動作中には、オフトラックが発生したか否かの判定がごく短い時間間隔で定期的に実行される。一例では、磁気ヘッド22がサーボ領域42を通過する毎に、コントローラ30は、当該サーボ領域42からリードされたサーボ情報に基づき、磁気ヘッド22の現在の半径位置の、ターゲットトラック41のセンターからの変移量を取得する。変移量が所定値に満たない場合には、コントローラ30は、磁気ヘッド22はオントラックの状態にあると判定する。変移量が所定値を超えた場合には、コントローラ30は、磁気ヘッド22はオフトラックの状態にある、つまりオフトラックが発生した、と判定する。
【0055】
なお、オフトラックが発生したか否かの判定の方法は上記の例に限定されない。また、オフトラックが発生したか否かの判定のタイミングの設定は、上記の例に限定されない。また、オフトラックが発生したか否かの判定は、コントローラ30内の任意の構成要素が実行し得る。例えば、オフトラックが発生したか否かは、RWC25によって判定されてもよい、プロセッサ26によって判定されてもよい。以降、オフトラックが発生したと判定することを、オフトラックを検出する、と表記する場合がある。
【0056】
コントローラ30は、オフトラックが発生したか否かの判定を実行してオフトラックを検出した場合(S203:Yes)、オフトラックセクタ情報311にターゲットセクタのセクタ番号を記録する(S204)。そして、RWC25は、S202において開始された第1訂正がまだ完了していない場合は、第1訂正の実行をキャンセルする(S205)。第1訂正の実行をキャンセルするとは、第1訂正が開始前であれば第1訂正の実行をしないようにし、第1訂正が開始後であれば第1訂正を停止することである。S205の処理の後、ターゲットセクタに対するリード動作が終了する。
【0057】
リード動作中にオフトラックが検出されないで第1訂正が完了すると(S203:No)、コントローラ30は、オフトラックセクタ情報311からターゲットセクタのセクタ番号を削除する(S206)。もしオフトラックセクタ情報311にターゲットセクタのセクタ番号が記録されていない場合には、S206の処理はスキップされる。S206の処理の後、ターゲットセクタに対するリード動作が完了する。
【0058】
図6に示された一連の動作は、
図5のS101において、各ターゲットセクタに対して実行される。
【0059】
図5に説明を戻す。
ターゲットトラック41内の全てのターゲットセクタに対するリード動作が完了すると、コントローラ30は、オフトラックセクタに該当せず、かつ第1訂正に成功したターゲットセクタを非ターゲットセクタに設定する(S102)。つまり、コントローラ30は、ターゲットセクタのうち、磁気ヘッド22がオントラックの状態でリード動作が実行され、かつ誤りがない状態のデータが取得されたセクタを、リードリトライ動作のターゲットから除外する。コントローラ30は、オフトラックセクタを、例えばオフトラックセクタ情報311を参照することによって特定する。なお、S102において、オフトラックセクタは第4セクタの一例である。磁気ヘッド22がオントラックの状態でリード動作が実行され、かつ誤りがない状態のデータが取得されたセクタは、第5セクタの一例である。
【0060】
続いて、コントローラ30は、ターゲットセクタが残っているか否かを判定する(S103)。ターゲットセクタが残っている場合(S103:Yes)、制御がS101に移行して、残っている全てのターゲットセクタに対して再度のリード動作、つまりリードリトライ動作が実行される。
【0061】
ターゲットセクタが残っていない場合(S103:No)、ターゲットトラック41に対するリードが完了する。
【0062】
図7は、第1の実施形態の磁気ディスク装置1のターゲットトラック41に対するリードの際の各処理のタイミングの一例を説明するための図である。本図において、横軸は経過時間を示す。磁気ヘッド22が位置するセクタが、磁気ヘッド22の位置として描かれている。また、どのセクタからリードされたデータに対して第1訂正が実行されているかが描かれている。また、図が複雑になることを防ぐために、ターゲットトラック41にはセクタ#0~セクタ#6が設けられていることとする。
【0063】
また、
図7には、リードゲートの波形が描かれている。リードゲートは、リードヘッド22rからの信号の取り込みのタイミングをRWC25に指示する信号である。リードゲートは、コントローラ30の内部(例えばプロセッサ26またはHDC23)において、サーボ情報がリードされたタイミングを基準として生成されて、RWC25に供給される。RWC25は、リードゲートが示す期間に信号を取り込む。
図7に示される例では、リードゲートの波形に関し、Hレベルは信号の取り込み期間を示し、Lレベルは信号の取り込みが禁止された期間を示す。
【0064】
図7に示される例では、セクタ#0~セクタ#4が当初(initial)のリードターゲットであることとしている。よって、コントローラ30は、磁気ディスク11が最初に1回転する期間(つまり最初のリード動作が実行される磁気ディスク11が一回転する期間)のうち、磁気ヘッド22がセクタ#0の先頭を通過するタイミングt0からセクタ#4の末尾を通過するタイミングt1までの期間に、リードゲートをHレベルに維持し、当該期間にリードヘッド22rから出力された信号が、RWC25に取り込まれる。RWC25は、セクタ#0~セクタ#4からリードされた信号に対し、第1訂正を含む復調を実行する。
【0065】
ここで、
図7に示される例では、磁気ヘッド22がセクタ#0を通過する際とセクタ#1を通過する際とにおいて、オフトラックが検出されている。よって、コントローラ30は、
図6に示されたS204の処理によって、セクタ#0およびセクタ#1のセクタ番号をオフトラックセクタ情報311に記録する。また、コントローラ30は、
図6に示されたS205の処理によって、セクタ#0からリードされたデータに対する第1訂正と、セクタ#1からリードされたデータに対する第1訂正と、をキャンセルする。
【0066】
磁気ディスク11が最初に1回転した際、セクタ#2~セクタ#4からリードされたデータに対しては、第1訂正に成功している。つまり、コントローラ30は、磁気ディスク11の最初の1回転によって、セクタ#2~セクタ#4からの期待されたデータの取得に成功している。
【0067】
コントローラ30は、以降に磁気ディスク11が1回転する際に、オフトラックセクタ情報311が示すセクタ#0およびセクタ#1に対してリードリトライ動作を実行する。既に期待されたデータの取得に成功したセクタ#2~セクタ#4に対しては、コントローラ30は、リードリトライ動作を実行しない。具体的には、コントローラ30は、磁気ヘッド22がセクタ#0の先頭を通過するタイミングt2から磁気ヘッド22がセクタ#1の末尾を通過するタイミングt3までの期間に、リードゲートをHレベルに維持し、タイミングt3にリードゲートをHレベルからLレベルに遷移させる。タイミングt2からタイミングt3までの期間にリードヘッド22rから出力された信号がRWC25に取り込まれて、その後に復調される。
【0068】
タイミングt2からタイミングt3までの期間にはオフトラックは検出されず、かつこの期間にリードされたデータ、つまりセクタ#0からリードされたデータおよびセクタ#1からリードされたデータ、に対する第1訂正が成功している。つまり、コントローラ30は、セクタ#0~セクタ#1からの期待されたデータの取得に成功している。
【0069】
このように、コントローラ30は、磁気ディスク11が1回転する際に、当初の複数のターゲットセクタのそれぞれに対して第1訂正を含むリード動作を実行する。その後、コントローラ30は、当該当初の複数のターゲットセクタのうちのオフトラックセクタを含み、磁気ヘッド22がオントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に成功したセクタを含まない1以上のセクタのそれぞれに対し、リードリトライ動作を実行する。
【0070】
よって、比較例に比べて、データを取得するための時間の増加および誤り訂正のための計算リソースの増加を抑制できる。つまり、オフトラックが発生しても効率的にデータをリードすることができる。
【0071】
また、第1の実施形態によれば、コントローラ30は、ターゲットセクタに対するリード動作の際にオフトラックが発生した場合、第1訂正の実行をキャンセルする。
【0072】
よって、オフトラックが発生した場合、誤り訂正のための計算リソースをさらに抑制できる。
【0073】
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、第2訂正の機能が実装された磁気ディスク装置について説明する。第2の実施形態にかかる磁気ディスク装置を、磁気ディスク装置1aと表記する。なお、第2の実施形態では、第1の実施形態と同様の構成、機能、および動作については説明が省略されるかまたは簡略的に説明される。
【0074】
図8は、第2の実施形態の磁気ディスク装置1aによる、1つのターゲットセクタに対するリード動作の手順の一例を示すフローチャートである。
【0075】
まず、コントローラ30は、磁気ディスク11が1回転する際に、ターゲットトラック41に含まれる全てのセクタをターゲットセクタに設定する(S301)。そして、コントローラ30は、ターゲットトラック41内の全てのターゲットセクタに対してセクタ番号の順にリード動作を実行する(S302)。S302においては、各ターゲットセクタに対し、
図5に示された一連の動作が実行させる。また、S302は、ターゲットトラック41の末尾のセクタにライトされた第2ECCのリードを含む。
【0076】
続いて、コントローラ30は、S302の処理によってリードされたデータを用いて第2訂正を実行する(S303)。
【0077】
そして、コントローラ30は、全てのターゲットセクタにおいて第1訂正または第2訂正に成功したか否かを判定する(S304)。
【0078】
例えば、オフトラックセクタが1以上あり、かつ磁気ヘッド22がオントラックの状態でリード動作が実行されたにもかかわらず第1訂正に失敗したセクタが1以上ある場合、第1訂正に失敗したセクタに関しては、第2訂正でも期待されたデータを取得することができない。
【0079】
第1訂正および第2訂正の両方に失敗したターゲットセクタがある場合(S304:No)、コントローラ30は、オフトラックセクタに該当しないセクタを非ターゲットセクタに設定する(S305)。つまり、コントローラ30は、オフトラックセクタに該当しないセクタをリードリトライ動作のターゲットから除外する。そして、制御がS302に移行して、残っている全てのターゲットセクタに対して再度のリード動作、つまりリードリトライ動作が実行される。
【0080】
全てのターゲットセクタにおいて第1訂正または第2訂正に成功した場合(S304:Yes)、コントローラ30は、オフトラックセクタ情報311から全セクタ番号を消去する(SS306)。そして、ターゲットトラック41に対するリードが完了する。なお、オフトラックセクタ情報311にはいずれのセクタ番号も記録されていない場合には、S306の処理は、スキップされる。
【0081】
図9は、第2の実施形態の磁気ディスク装置1aのターゲットトラック41に対するリードの際の各処理のタイミングの一例を説明するための図である。
図9には、
図7と同様に、磁気ヘッド22の位置およびリードゲートの波形が描かれている。また、実行された誤り訂正の種類と、誤り訂正の結果と、が描かれている。また、ターゲットトラック41にはセクタ#0~セクタ#6が設けられており、セクタ#6には第2ECCがライトされていることとする。なお、理解を容易にするために、セクタ#6を表すセクタとして、「第2ECC」と描かれている。
【0082】
図9に示される例では、ターゲットトラック41内の全てのセクタ、即ちセクタ#0~セクタ#6が当初(initial)のリードターゲットとされる。よって、コントローラ30は、磁気ディスク11が最初に1回転する期間のうち、磁気ヘッド22がセクタ#0の先頭を通過するタイミングt10からセクタ#6の末尾を通過するタイミングt11までの期間に、リードゲートをHレベルに維持し、当該期間にリードヘッド22rから出力された信号が、RWC25に取り込まれて復調される。RWC25は、セクタ#0~セクタ#6からリードされた信号に対し、第1訂正を含む復調を実行する。
【0083】
ここで、
図9に示される例では、磁気ヘッド22がセクタ#0を通過する際とセクタ#1を通過する際とにおいて、オフトラックが発生している。よって、コントローラ30は、
図6に示されたS204処理によって、セクタ#0およびセクタ#1のセクタ番号をオフトラックセクタ情報311に記録する。また、コントローラ30は、
図6に示されたS205の処理によって、セクタ#0からリードされたデータに対する第1訂正と、セクタ#1からリードされたデータに対する第1訂正と、をキャンセルする。
【0084】
また、コントローラ30は、セクタ#2~セクタ#4、セクタ#6からリードされたデータに対する第1訂正に成功し、セクタ#5からリードされたデータに対する第1訂正に失敗している。つまり、コントローラ30は、磁気ディスク11の最初の1回転によって、セクタ#2~セクタ#4からの期待されたデータの取得に成功し、セクタ#6からの第2ECCの取得に成功している。
【0085】
コントローラ30は、以降に磁気ディスク11が1回転した後、
図8に示されたS303の処理によって、第2訂正を実行する。第2訂正では、第1訂正に失敗したセクタ#5からリードされたデータに対し、誤り訂正が実行される。
【0086】
しかしながら、
図9に示された例では、第1訂正がキャンセルされたセクタ(即ちセクタ#0およびセクタ#1)が存在する。これらのセクタからは、第2訂正に使用可能なデータが得られないので、セクタ#5からは期待されたデータを第2訂正によって得ることができない。よって、コントローラ30は、セクタ#5からリードされたデータに対する第2訂正に失敗する。
【0087】
続いて、コントローラ30は、オフトラックセクタ情報311が示すセクタ#0およびセクタ#1に対してリードリトライ動作を実行する。磁気ヘッド22がオントラック状態でリード動作が実行されたセクタ#2~セクタ#6に対してはリードリトライ動作を実行しない。コントローラ30は、磁気ヘッド22がセクタ#0の先頭を通過するタイミングt12から磁気ヘッド22がセクタ#1の末尾を通過するタイミングt13までの期間に、リードゲートをHレベルに維持し、タイミングt13にリードゲートをHレベルからLレベルに遷移させる。タイミングt12からタイミングt13までの期間にリードヘッド22rから出力された信号が、RWC25に取り込まれ、その後に復調される。
【0088】
タイミングt12からタイミングt13までの期間にはオフトラックは検出されず、かつこの期間にリードされたデータ、つまりセクタ#0からリードされたデータおよびセクタ#1からリードされたデータ、に対する第1訂正が成功している。つまり、コントローラ30は、セクタ#0~セクタ#1からの期待されたデータの取得に成功している。
【0089】
コントローラ30は、セクタ#0~セクタ#1から第1訂正を経たデータが取得すると、セクタ#0~セクタ#6のデータが揃うので、第2訂正が可能となる。コントローラ30は、セクタ#5からリードされたデータに対して第2訂正を行い、セクタ#5の期待されたデータの取得に成功している。これによって、コントローラ30は、トラック41内の全てのセクタからの期待されたデータの取得が完了する。
【0090】
このように、第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様、磁気ヘッド22がオントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に成功したセクタに対してはリードリトライ動作の実行が省略される。
【0091】
よって、比較例に比べて、データを取得するための時間の増加および誤り訂正のための計算リソースの増加を抑制できる。つまり、オフトラックが発生しても効率的にデータをリードすることができる。
【0092】
図10は、第2の実施形態の磁気ディスク装置1aのターゲットトラック41に対するリードの際の各処理のタイミングの別の一例を説明するための図である。
図10には、
図7と同様に、磁気ヘッド22の位置およびリードゲートの波形が描かれている。また、実行された誤り訂正の種類と、誤り訂正の結果と、が描かれている。また、ひとつのトラック41にはセクタ#0~セクタ#6が設けられており、セクタ#6には第2ECCがライトされていることとする。
【0093】
図10に示される例では、
図9に示された例と同様、ターゲットトラック41内の全てのセクタ、即ちセクタ#0~セクタ#6が当初(initial)のリードターゲットとされる。よって、コントローラ30は、磁気ディスク11が最初に1回転する期間のうち、磁気ヘッド22がセクタ#0の先頭を通過するタイミングt20からセクタ#6の末尾を通過するタイミングt21までの期間に、リードゲートをHレベルに維持し、当該期間にリードヘッド22rから出力された信号がRWC25に取り込まれて、その後に復調される。RWC25は、セクタ#0~セクタ#6からリードされた信号に対し、第1訂正を含む復調を実行する。
【0094】
ここで、
図10に示される例では、磁気ヘッド22がセクタ#1を通過する際にオフトラックが発生している。よって、コントローラ30は、セクタ#1のセクタ番号をオフトラックセクタ情報311に記録する。また、コントローラ30は、セクタ#1からリードされたデータに対する第1訂正をキャンセルする。
【0095】
また、コントローラ30は、セクタ#0、セクタ#3~セクタ#6からリードされたデータに対する第1訂正に成功している。つまり、コントローラ30は、磁気ディスク11の最初の1回転によって、セクタ#0、セクタ#3~セクタ#5からの期待されたデータの取得に成功し、セクタ#6から第2ECCの取得に成功している。
【0096】
第2ECCによれば、誤りを含まないデータが得られていないセクタの数が1つのみである場合、当該データが得られなかった原因がオフトラックであるか否かに関係なく、当該データを第2訂正によって得ることが可能である。
【0097】
コントローラ30は、最初の1回転の以降に磁気ディスク11が1回転した後、
図8に示されたS303の処理によって、第2訂正を実行する。
図10に示される例では、トラック41のうち、オフトラックセクタであるセクタ#1のみ、誤りを含まないデータが得られていない。コントローラ30は、第2訂正によって、セクタ#1にライトされているデータを、誤りを含まない状態で取得する。
【0098】
このように、第2の実施形態によれば、コントローラ30は、オフトラックセクタの数が1個であり、かつ磁気ヘッド22がオントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に失敗したターゲットセクタがない場合、オフトラックセクタの期待されたデータを第2訂正によって取得する。
【0099】
よって、オフトラックが発生した場合におけるリードリトライ動作の実行頻度を抑制することができる。
【0100】
なお、オフトラックセクタの数が2個以上である場合、コントローラ30は、第2訂正では全てのオフトラックの期待されたデータを取得することはできない。そのような場合には、コントローラ30は、オフトラックセクタに対するリードリトライ動作を実行する。また、オフトラックセクタの数が1個であっても、磁気ヘッド22がオントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に失敗したセクタ(第8セクタ)が存在する場合、コントローラ30は、第2訂正では全てのオフトラックの期待されたデータを取得することはできない。そのような場合にも、コントローラ30は、オフトラックセクタに対するリードリトライ動作を実行する。
【0101】
このように、第2の実施形態によれば、ターゲットトラック41に設けられた全てのセクタがターゲットセクタである場合において、コントローラ30は、磁気ディスク11が一回転する際に、全てのターゲットセクタに対するリード動作を実行し、全てのターゲットセクタに対するリード動作の後に第2訂正を実行する。そして、コントローラ30は、オフトラックセクタが存在し、かつ当該オフトラックセクタにライトされたデータを第2訂正によって取得できた場合、当該オフトラックセクタに対するリードリトライ動作を実行しない。
【0102】
よって、オフトラックが発生しても効率的にデータをリードすることができる。
【0103】
なお、以上述べた例によれば、コントローラ30は、ターゲットトラック41内の全てのターゲットセクタに対してセクタ番号の順にリード動作を実行し(S302)、その後、S302の処理によってリードされたデータを用いて第2訂正を実行した(S303)。コントローラ30は、第2訂正に失敗することがS302を実行した結果から明らかである場合には、第2訂正、つまりS303をキャンセルしてS305の処理を実行してもよい。
【0104】
前述されたように、S302の処理の結果、オフトラックセクタの数が2個以上であったり、たとえオフトラックセクタの数が1個であっても磁気ヘッド22がオントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に失敗したセクタ(第8セクタ)が存在したりする場合、第2訂正は失敗する。そのような場合には、コントローラ30は、第2訂正の実行をキャンセルしてS305の処理を実行してもよい。
【0105】
図9に示された例では、磁気ディスク11が最初に1回転する期間(タイミングt10~t11)においては、磁気ヘッド22がセクタ#1を通過した時点でオフトラックセクタの数が1を超える。よって、この時点で第2ECCは失敗することが明らかとなる。コントローラ30は、オフトラックセクタの数が1を超えたことを検出し、これによって初回の第2ECCの実行をキャンセルしてもよい。
【0106】
なお、第2の実施形態においては、トラック単位の誤り訂正符号化にインターリーブの技術が適用されてもよい。
【0107】
図11は、第2の実施形態の磁気ディスク装置1aにインターリーブの技術が適用された場合における、ターゲットトラック41に対するリードの際の各処理のタイミングの別の一例を説明するための図である。
図11には、
図7と同様に、磁気ヘッド22の位置およびリードゲートの波形が描かれている。また、実行された誤り訂正の種類と、誤り訂正の結果と、が描かれている。また、ひとつのトラック41にはセクタ#0~セクタ#6が設けられている。そして、セクタ#5には、セクタ#0、セクタ#2、セクタ#4にライトされたデータに基づいて生成された第2ECC#0がライトされ、セクタ#6には、セクタ#1、セクタ#3にライトされたデータに基づいて生成された第2ECC#1がライトされている。
【0108】
図11に示される例では、
図9に示された例と同様、ターゲットトラック41内の全てのセクタ、即ちセクタ#0~セクタ#6が当初(initial)のリードターゲットとされる。よって、コントローラ30は、磁気ディスク11が最初に1回転する期間のうち、磁気ヘッド22がセクタ#0の先頭を通過するタイミングt30からセクタ#6の末尾を通過するタイミングt31までの期間に、リードゲートをHレベルに維持し、当該期間にリードヘッド22rから出力された信号がRWC25に取り込まれて、その後に復調される。RWC25は、セクタ#0~セクタ#6からリードされた信号に対し、第1訂正を含む復調を実行する。
【0109】
ここで、
図11に示される例では、磁気ヘッド22がセクタ#0を通過する際および磁気ヘッド22がセクタ#1を通過する際にオフトラックが発生している。よって、コントローラ30は、セクタ#0のセクタ番号とセクタ#1のセクタ番号とをオフトラックセクタ情報311に記録する。また、コントローラ30は、セクタ#0からリードされたデータに対する第1訂正およびセクタ#1からリードされたデータに対する第1訂正をキャンセルする。
【0110】
また、コントローラ30は、セクタ#2~セクタ#6からリードされたデータに対する第1訂正に成功している。つまり、コントローラ30は、磁気ディスク11の最初の1回転によって、セクタ#2~セクタ#4からの期待されたデータの取得に成功し、セクタ#5から第2ECC#0の取得に成功し、セクタ#6から第2ECC#1の取得に成功している。
【0111】
前述されたように、第2ECC#0は、セクタ#0、セクタ#2、セクタ#4にライトされたデータに基づいて生成されている。よって、セクタ#0、セクタ#2、セクタ#4に含まれるオフトラックセクタが1個であり、セクタ#0、セクタ#2、セクタ#4のうちに、オントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に失敗したターゲットセクタがない場合、コントローラ30は、当該オフトラックセクタの期待されたデータを第2訂正によって取得することができる。
【0112】
また、第2ECC#1は、セクタ#1、セクタ#3にライトされたデータに基づいて生成されている。よって、セクタ#1、セクタ#3に含まれるオフトラックセクタが1個であり、セクタ#1、セクタ#3のうちに、オントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に失敗したターゲットセクタがない場合、コントローラ30は、当該オフトラックセクタの期待されたデータを第2訂正によって取得することができる。
【0113】
図11に示される例の場合、セクタ#0、セクタ#2、セクタ#4に含まれるオフトラックセクタが1個であり、セクタ#0、セクタ#2、セクタ#4のうちに、オントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に失敗したターゲットセクタがないため、コントローラ30は、第2ECC#0を用いた第2訂正によってセクタ#0の期待されたデータの取得に成功する。また、セクタ#1、セクタ#3に含まれるオフトラックセクタが1個であり、セクタ#1、セクタ#3のうちに、オントラックの状態でリード動作が実行されかつ第1訂正に失敗したターゲットセクタがないため、コントローラ30は、第2ECC#1を用いた第2訂正によってセクタ#1の期待されたデータの取得に成功する。
【0114】
このように、第2の実施形態は、インターリーブの技術と併用され得る。なお、インターリーブの技術は、第1の実施形態とも併用され得る。
【0115】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0116】
1,1a 磁気ディスク装置、2 ホスト、11 磁気ディスク、12 スピンドルモータ、13 ランプ、15 アクチュエータアーム、21 モータドライバIC、22 磁気ヘッド、22r リードヘッド、22w ライトヘッド、23 HDC、24 ヘッドIC、25 RWC、26 プロセッサ、27 RAM、28 FROM、29 バッファメモリ、30 コントローラ、31 レジスタ、41 トラック、42 サーボ領域、43 データ領域、44 サーボセクタ、311 オフトラックセクタ情報。