(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140566
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】圧力調整弁
(51)【国際特許分類】
F16K 17/04 20060101AFI20230928BHJP
F02M 37/00 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
F16K17/04 A
F02M37/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046466
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 晃裕
(72)【発明者】
【氏名】中村 聡志
【テーマコード(参考)】
3H059
【Fターム(参考)】
3H059AA04
3H059BB04
3H059BB35
3H059CA23
3H059CA28
3H059CC11
3H059CD05
3H059EE01
3H059FF03
3H059FF13
(57)【要約】
【課題】閉弁状態でのシール性を高めるべく弁本体の弁座との当接面にシール部材を設けた圧力調整弁において、弁本体の押圧によるシール部材の弾性変形を周囲に分散して行わせることにより、シール部材の局部的な内部応力の高まりを抑制してシール部材の耐久性を高める。
【解決手段】弁本体31は、弁座13に対向する環状の平面を成す平面部311と、平面部311の内径側にあり、弁座13側を窪まされて成る凹部312と、平面部311の内径側端縁部と凹部312の外径側端縁部とをつなぐ傾斜部313と、を備える。シール部材32は、凹部312に対応して窪まされた窪み部322と、平面部311と傾斜部313との境界部に対応する位置で、弁座13に向けて突出形成された環状の突出部321と、傾斜部313に対応し、突出部321の内径側端縁部と窪み部322の外径側端縁部とを傾斜面でつなぐつなぎ部323と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体通路に連通され、該流体通路からの流体で満たされる部屋を成す流体圧室と、
該流体圧室に隣接する部屋を成し、前記流体圧室から排出された流体を流すべく排出通路に連通された排出室と、
前記流体圧室と前記排出室とを仕切る境界部で前記流体圧室の流体圧を受けるように配置され、前記流体圧室が設定圧力より低い状態では、前記流体圧室から前記排出室への流体の流動を遮断する閉弁位置とされ、前記流体圧室が設定圧力より高い状態では、前記流体圧室から前記排出室へ流体を排出する開弁位置とされる弁体と、
前記流体圧室と前記排出室とを仕切る境界部に、該境界部に沿って環状に配置され、前記弁体が前記閉弁位置にて当接することにより前記弁体に流体の遮断機能を持たせる弁座と、
前記弁体を前記開弁位置から前記閉弁位置に向けて付勢するばねと、を備え、
前記弁体は、
該弁体のベース部分を成す弁本体と、
該弁本体の前記弁座側に固定され、前記閉弁位置において、前記弁本体と前記弁座との間で押圧されて弾性変形され、前記弁体の流体の遮断性能を高めるシール部材と、を備え、
前記弁本体は、
前記弁体の開閉に伴う移動方向で前記弁座に対向して環状の平面を成す平面部と、
該平面部の内径側にあり、前記移動方向における前記弁座側を窪まされて成る凹部と、
前記平面部の内径側端縁部と前記凹部の外径側端縁部とをつなぐ傾斜面である傾斜部と、を備え、
前記シール部材は、
前記弁本体の前記凹部に対応して窪まされて成る窪み部と、
前記弁本体の前記平面部と前記傾斜部との環状の境界部に前記移動方向で対応する位置で、前記弁座に向けて突出形成されて前記弁座に対応した環状の突出部と、
前記弁本体の前記傾斜部に対応し、前記突出部の内径側端縁部と前記窪み部の外径側端縁部とを傾斜面でつなぐつなぎ部と、を備える
圧力調整弁。
【請求項2】
請求項1において、
前記弁本体の前記平面部と前記傾斜部との境界部は、曲面によって形成されている
圧力調整弁。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記シール部材の前記窪み部と前記つなぎ部との環状の境界部は、前記弁本体の前記凹部と前記傾斜部との環状の境界部より外径側に配置され、
前記シール部材の前記窪み部及び前記弁本体の前記平面部は、前記弁体の前記開弁位置における前記弁座との対向距離が互いに実質同等とされている
圧力調整弁。
【請求項4】
請求項3において、
前記弁体の前記閉弁位置では、
前記シール部材の前記突出部は、前記弁座側への突出量が小さくなるように圧縮されて弾性変形され、且つ環状の前記突出部の内径側及び外径側の両側へ膨出するように弾性変形され、
前記シール部材の前記窪み部は、前記弁座側へ膨出するように弾性変形される
圧力調整弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示の技術は、例えば、エンジンに供給される燃料の圧力を設定圧力に調整するプレッシャレギュレータ等として用いられる圧力調整弁に関する。
【背景技術】
【0002】
ある圧力調整弁では、閉弁状態でのシール性を高めるため、
図7、8のように、弁本体Aの弁座Bに当接する面にゴム製のシール部材Cを貼着したものがある(特許文献1参照)。この圧力調整弁では、閉弁時に弁本体Aが弁座Bに当接する環状部分におけるシール部材Cの面圧を高めるために、弁本体Aの弁座Bに対向する面に環状の突起Dを形成している。この部分では、シール部材Cは、突起Dを包む形状とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記圧力調整弁では、閉弁時に突起Dを包んでいる部分のシール部材Cに突起Dにより加えられる圧縮圧力は特に高くなる。そのため、
図9のように、突起Dの外周縁部D1に対応するシール部材Cの屈曲部C1では、局所的に内部応力が高くなる。その結果、圧力調整弁の長期使用によりシール部材Cの屈曲部C1が破損する恐れがある。
【0005】
本明細書が開示する技術の課題は、閉弁状態でのシール性を高めるべく弁本体の弁座との当接面にシール部材を設けた圧力調整弁において、弁本体の押圧によるシール部材の弾性変形を周囲に分散して行わせることにより、シール部材の局部的な内部応力の高まりを抑制してシール部材の耐久性を高めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本明細書に開示の圧力調整弁は、次の手段をとる。
【0007】
第1の手段は、流体通路に連通され、該流体通路からの流体で満たされる部屋を成す流体圧室と、該流体圧室に隣接する部屋を成し、前記流体圧室から排出された流体を流すべく排出通路に連通された排出室と、前記流体圧室と前記排出室とを仕切る境界部で前記流体圧室の流体圧を受けるように配置され、前記流体圧室が設定圧力より低い状態では、前記流体圧室から前記排出室への流体の流動を遮断する閉弁位置とされ、前記流体圧室が設定圧力より高い状態では、前記流体圧室から前記排出室へ流体を排出する開弁位置とされる弁体と、前記流体圧室と前記排出室とを仕切る境界部に、該境界部に沿って環状に配置され、前記弁体が前記閉弁位置にて当接することにより前記弁体に流体の遮断機能を持たせる弁座と、前記弁体を前記開弁位置から前記閉弁位置に向けて付勢するばねと、を備え、前記弁体は、該弁体のベース部分を成す弁本体と、該弁本体の前記弁座側に固定され、前記閉弁位置において、前記弁本体と前記弁座との間で押圧されて弾性変形され、前記弁体の流体の遮断性能を高めるシール部材と、を備え、前記弁本体は、前記弁体の開閉に伴う移動方向で前記弁座に対向して環状の平面を成す平面部と、該平面部の内径側にあり、前記移動方向における前記弁座側を窪まされて成る凹部と、前記平面部の内径側端縁部と前記凹部の外径側端縁部とをつなぐ傾斜面である傾斜部と、を備え、前記シール部材は、前記弁本体の前記凹部に対応して窪まされて成る窪み部と、前記弁本体の前記平面部と前記傾斜部との環状の境界部に前記移動方向で対応する位置で、前記弁座に向けて突出形成されて前記弁座に対応した環状の突出部と、前記弁本体の前記傾斜部に対応し、前記突出部の内径側端縁部と前記窪み部の外径側端縁部とを傾斜面でつなぐつなぎ部と、を備える。
【0008】
上記第1の手段によれば、弁体の閉弁時、シール部材の突出部は、弁座に当接して圧縮され弾性変形される。それによりシール部材が流体の遮断性能を維持するために必要な面圧は確保される。このとき、突出部の弾性変形は、弁本体の平面部と傾斜部に沿って弁体の内径側及び外径側に分散される。そのため、シール部材では、局部的な内部応力の高まりが抑制される。よって、弁体の開閉の繰り返しに伴うシール部材の耐久劣化は抑制される。
【0009】
第2の手段は、上述した第1の手段において、前記弁本体の前記平面部と前記傾斜部との境界部は、曲面によって形成されている。
【0010】
上記第2の手段によれば、シール部材の突出部は、弁本体の平面部と傾斜部との境界部で弁座に向けて押圧される。このとき、境界部が曲面によって形成されているため、境界部が平面同士の接合となっている場合に比べて、境界部の形状によるシール部材の局部的な応力集中を抑制することができる。
【0011】
第3の手段は、上述した第1の手段又は第2の手段において、前記シール部材の前記窪み部と前記つなぎ部との環状の境界部は、前記弁本体の前記凹部と前記傾斜部との環状の境界部より外径側に配置され、前記シール部材の前記窪み部及び前記弁本体の前記平面部は、前記弁体の前記開弁位置における前記弁座との対向距離が互いに実質同等とされている。
【0012】
上記第3の手段によれば、シール部材の窪み部とつなぎ部との境界部を、弁本体の凹部と傾斜部との境界部より弁体の外径側とし、シール部材の窪み部及び弁本体の平面部は、弁座との対向距離を実質同等とされている。その結果、シール部材の突出部が弁座に当接して弾性変形するとき、弁体の内径側へ偏って変形することを抑制し、突出部の変形が弁体の内径側と外径側にバランス良く行われる。そのため、シール部材の突出部が弁体の内径側へ偏って変形してシール部材の外径側端縁部が弁本体の平面部から剥離する力を受けるのを抑制し、シール部材の耐久性を高めることができる。
【0013】
上記第3の手段において、シール部材の窪み部の弁座との対向距離は、少なくともつなぎ部に近い側が弁本体の平面部と同等とされていればよい。窪み部におけるつなぎ部から離れた部位の上記距離の設定は、突出部の弾性変形に影響を与えず、同等でなくてもよい。
【0014】
第4の手段は、上述した第3の手段において、前記弁体の前記閉弁位置では、前記シール部材の前記突出部は、前記弁座側への突出量が小さくなるように圧縮されて弾性変形され、且つ環状の前記突出部の内径側及び外径側の両側へ膨出するように弾性変形され、前記シール部材の前記窪み部は、前記弁座側へ膨出するように弾性変形される。
【0015】
上記第4の手段によれば、閉弁位置で、シール部材の突出部が圧縮変形されるのに伴い、突出部は、弁体の内外両側へ膨出して弾性変形され、窪み部は、弁座側へ膨出して弾性変形される。そのため、シール部材の外径側端縁部が弁本体の平面部から剥離する力を受けるのを抑制し、シール部材の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】上記実施形態における弁体の拡大断面図である。
【
図3】
図2におけるIII部の拡大図であり、開弁状態で弁座と共に示す。
【
図5】
図3と同様の図であり、上記実施形態の第1の比較例を示す。
【
図6】
図3と同様の図であり、上記実施形態の第2の比較例を示す。
【
図8】
図7における弁体の拡大図であり、開弁状態で弁座と共に示す。
【
図9】
図8におけるIX部の拡大図であり、閉弁状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<一実施形態の全体構成>
図1は、圧力調整弁の一実施形態を示す。この実施形態は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等のエンジンに供給される燃料の圧力を設定圧力に調整するプレッシャレギュレータ1に適用した例である。
図1では、図面の下側を一側、上側を他側として説明する。他の図でも同様である。
【0018】
図1のプレッシャレギュレータ1は、金属製で概略円筒形状のハウジング10内に弁体30、ばね40等を収容して構成されている。ハウジング10の一側端部は、他部に比べて径を小さく絞られて流体通路111が形成されている。ハウジング10は、その一側端部から他側端部に向けて段階的に径を大きくされており、流体通路111から一段階径を大きくされた部分は流体圧室11とされている。二段階径を大きくされた部分は、排出室12とされている。排出室12より他側は、更に漸次径を大きくされて開放端部14とされている。従って、流体圧室11は、流体通路111の燃料(流体に相当)で満たされる一つの部屋を成している。また、排出室12は、流体圧室11に隣接する一つの部屋を成している。
【0019】
流体圧室11と排出室12との境界部を成す段部の排出室12側面は、環状の弁座13とされている。弁座13には、概略円板状の弁体30が当接されている。弁体30は、排出室12内に配置され、排出室12内で一側と他側の対向方向に移動可能とされている。弁体30が当接する弁座13は環状を成している。弁体30の他側は、圧縮コイルばね(以下、単にばねという)40を介してカバー部材20により排出室12の他側端部に固定されている。なお、カバー部材20は、排出室12の内壁に圧入して固定されている。ばね40は、コイルの内径側が弁体30のリング状のばねガイド33、並びにカバー部材20の凸状のばねガイド21に嵌合して支持されている。そのため、弁体30は、ばね40の付勢力によって弁座13に当接して、流体圧室11から排出室12への燃料の流動を遮断している。即ち、弁体30が弁座13に当接することによって、ハウジング10内が流体圧室11と排出室12とに仕切られる。
【0020】
流体通路111は、燃料ポンプ(図示略)から吐出された燃料をエンジン(図示略)に供給する燃料通路(図示略)に連通されている。流体通路111を形成するハウジング10の外周にはオーリング50が嵌合されている。オーリング50は、流体通路111を燃料通路に連通する際の燃料漏れを防止する機能を果たしている。排出室12を形成するハウジング10の周壁面には、複数個の貫通孔が穿設されており、その貫通孔が排出通路121とされている。排出通路121は、燃料タンク(図示略)に燃料を戻すように連通されている。
【0021】
プレッシャレギュレータ1は、流体通路111を通じて加えられる流体圧室11の燃料圧力(流体圧に相当)が設定圧力より高くなると、弁体30が弁座13から離れて開弁位置とされる。そのため、流体圧室11の燃料は、排出室12に流れ排出通路121から燃料タンク内に排出される。このように流体圧室11の燃料が排出室12を通じて排出通路121から排出され、流体圧室11の燃料圧力が設定圧力より低くなると、弁体30はばね40の付勢力により弁座13に当接して閉弁位置とされる。閉弁位置では、流体圧室11から排出室12への燃料の流動が遮断される。このようにして流体圧室11につながった流体通路111及び燃料通路の燃料圧力が設定圧力に調整される。
【0022】
<弁体の構成>
図2は、弁体30を拡大して示す。また、
図3は、
図2のIII部を更に拡大して示す。弁体30は、弁体30のベース部分を成す樹脂製の弁本体31と、弁本体31の弁座13側に固定されたゴム製のシール部材32とを備える。弁本体31は、弁体30が閉弁位置にある状態で、環状の弁座13を含めて、弁座13に囲まれた領域に被せられている。また、シール部材32は、閉弁位置にある弁本体31と弁座13との間で押圧されて弾性変形され、弁体30の閉弁位置における流体の遮断性能を高めている。弁本体31の円板の中心部には、一側から他側まで貫通する貫通孔314が穿設されている。貫通孔314には、シール部材32の円板の中心部に突出形成された嵌合部324が嵌合されている。実際には、成形型内に弁本体31をセットした状態でシール部材32を成すゴムを流し込んで焼き付けることにより嵌合部324が貫通孔314に嵌合してシール部材32が弁本体31に貼着される。
【0023】
弁本体31は、弁座13に対向する面の外周部に環状に形成された平面部311と、平面部311に囲まれた凹部312と、平面部311の内径側端縁部と凹部312の外径側端縁部とを傾斜面でつなぐ傾斜部313と、を備える。平面部311は、弁体30の開閉に伴う移動方向で、弁座13に対向する平面を成す。凹部312は、弁体30の開閉に伴う移動方向における弁座13側を窪まされて成る。平面部311と傾斜部313の境界部は、曲面によって形成されている。
【0024】
シール部材32は、弁本体31の凹部312に対応して窪まされて成る窪み部322と、弁座13に向けて突出形成された環状の突出部321と、突出部321の内径側端縁部と窪み部322の外径側端縁部とを傾斜面でつなぐつなぎ部323と、を備える。突出部321は、弁本体31の平面部311と傾斜部313との環状の境界部に弁本体31の移動方向で対応している。
図3では、弁本体31の平面部311と傾斜部313との境界部を一点鎖線で示している。つなぎ部323は、弁本体31の傾斜部313に対応する傾斜面で形成されている。
【0025】
シール部材32の窪み部322とつなぎ部323との環状の境界部は、弁本体31の凹部312と傾斜部313との環状の境界部より弁体30の外径側に配置されている。また、シール部材32の窪み部322及び弁本体31の平面部311は、弁体30の開弁位置における弁座13との対向距離が互いに実質同等とされている。
図3において、平面部311と弁座13との対向距離は「L1」で示され、窪み部322と弁座13との対向距離は「L2」で示されている。
【0026】
<一実施形態の作用、効果>
流体圧室11の燃料圧力が設定圧力より低くなって、ばね40の付勢力により弁体30が閉弁位置とされると、シール部材32の突出部321が弁座13に当接する。そのため、突出部321は、ばね40の付勢力により弁座13側への突出量が小さくなるように圧縮される。この圧縮に伴い、
図4のように、シール部材32は弾性変形される。即ち、突出部321は、矢印で示すように弁体30の外径側及び内径側へそれぞれ膨出される。また、シール部材32の窪み部322は、弁座13側へ膨出される。それによりシール部材32は、流体の遮断性能を維持するために必要な面圧を確保される。このとき、突出部321の弾性変形は、弁本体31の平面部311と傾斜部313に沿って弁体30の内径側及び外径側に分散される。そのため、シール部材32では、局部的な内部応力の高まりが抑制される。また、突出部321が弁体30の外径側へ偏って変形することにより生じる、シール部材32の外径側端縁部が弁本体31の平面部311から剥離する力が抑制される。そのため、弁体30の開閉の繰り返しに伴うシール部材32の耐久劣化は抑制される。
【0027】
<一実施形態に対する比較例>
図5は、上記実施形態に対する第1の比較例として、シール部材32の突出部321を弁本体31の平面部311と傾斜部313との境界部(
図5に一点鎖線で示す)より弁体30の内径側に形成した場合を示す。この場合、シール部材32の突出部321が弁座13に当接して圧縮変形されると、突出部321は、弁本体31の傾斜部313の傾斜面に沿って弁体30の内径側に弾性変形される。そのため、比較的小さな圧縮圧力で突出部321の弾性変形が起き、燃料の遮断機能を発揮するための充分な面圧を得ることができない。また、シール部材32の外径側端縁部が弁本体31の平面部311から剥離する力を受け、弁体30の開閉の繰り返しに伴いシール部材32の耐久劣化が促進される。
【0028】
図6は、上記実施形態に対する第2の比較例として、シール部材32の突出部321を弁本体31の平面部311と傾斜部313との境界部(
図6に一点鎖線で示す)より弁体30の外径側に形成した場合を示す。この場合、シール部材32の突出部321が弁座13に当接して圧縮変形されると、突出部321の弾性変形は、弁本体31の平面部311に沿って弁体30の外径側に向けて行われる。一方、弁体30の内径側に向けての突出部321の弾性変形は、殆ど行われない。そのため、弁本体31の平面部311と傾斜部313との境界部付近におけるシール部材32の内部応力が局部的に高まり、弁体30の開閉の繰り返しに伴いシール部材32の耐久劣化が促進される。
【0029】
<その他の実施形態>
以上、本明細書に開示の技術を特定の実施形態について説明したが、その他各種の形態で実施可能なものである。例えば、上記実施形態では、圧力調整弁として燃料圧力を調整するプレッシャレギュレータの例を示したが、他の流体の圧力を調整する弁に適用してもよい。また、上記実施形態では、弁本体31に貫通孔314が形成されたものとしたが、貫通孔314のないものとしてもよい。
【0030】
上記実施形態では、弁本体31の平面部311と傾斜部313との境界部は曲面によって形成されるものとしたが、平面同士で接合されていてもよい。また、シール部材32の窪み部322とつなぎ部323との境界部は、弁本体31の凹部312と傾斜部313との境界部より弁体30の外径側に配置されるものに限定されない。更に、シール部材32の窪み部322及び弁本体31の平面部311は、弁体30の開弁位置における弁座13との対向距離が互いに実質同等とされなくてもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 プレッシャレギュレータ(圧力調整弁)
10 ハウジング
11 流体圧室
111 流体通路
12 排出室
121 排出通路
13 弁座
14 開放端部
20 カバー部材
21 ばねガイド
30 弁体
31 弁本体
311 平面部
312 凹部
313 傾斜部
314 貫通孔
32 シール部材
321 突出部
322 窪み部
323 つなぎ部
324 嵌合部
33 ばねガイド
40 ばね
50 オーリング