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  • 特開-タイル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140608
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】タイル
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/89 20060101AFI20230928BHJP
【FI】
C04B41/89 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046525
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 雄基
(72)【発明者】
【氏名】曽田 祐輔
(72)【発明者】
【氏名】安田 道貴
(57)【要約】
【課題】高い光輝感を有するタイルを提供する。
【解決手段】タイル1には、複数の釉粒3によって表面1Aに凹凸構造が形成されている。表面1Aでは、平らな面8を有する複数の鉱物粒子7が、各々の平らな面8を2以上の異なる方向に向けて配置されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の釉粒によって表面に凹凸構造が形成され、
前記表面では、平らな面を有する複数の鉱物粒子が、各々の前記平らな面を2以上の異なる方向に向けて配置されている、タイル。
【請求項2】
前記鉱物粒子は、前記釉粒の周りに存在しており、
前記鉱物粒子は、前記釉粒に固着されている、請求項1に記載のタイル。
【請求項3】
前記釉粒と前記鉱物粒子との質量比が、100:3-100:15の範囲である、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のタイル。
【請求項4】
前記凹凸構造が形成された部位において、
前記釉粒の単位面積当たりの質量は、5g/m以上である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のタイル。
【請求項5】
前記鉱物粒子は、平均粒子径が10μm以上250μm以下である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のタイル。
【請求項6】
前記凹凸構造が形成された部位において、
算術平均高さSaが、9μm以上35μm以下である、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のタイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、タイルに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、光輝特性を有する陶磁器製品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-123655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、この陶磁器製品は、光輝感が弱いという課題があった。本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、高い光輝感を有するタイルを提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
複数の釉粒によって表面に凹凸構造が形成され、
前記表面では、平らな面を有する複数の鉱物粒子が、各々の前記平らな面を2以上の異なる方向に向けて配置されている、タイル。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】タイルを示す断面図である。
図2】タイルを示す断面図である。
図3】実施例(実験例3)のタイルのSEMによる表面観察像である。
図4図3の表面観察像に、説明のための粒子の輪郭を示した図である。
図5】比較例(実験例1)のタイルのSEMによる表面観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。
1.タイル1
タイル1は、複数の釉粒3によって表面1Aに凹凸構造が形成されている。表面1Aでは、平らな面8を有する複数の鉱物粒子7が、各々の平らな面8を2以上の異なる方向に向けて配置されている。タイル1のサイズ、形状は特に限定されず、用途に応じて適宜変更することができる。例えば、タイル1は板状とすることができる。
【0008】
タイル1の用途は、特に限定されない。タイル1は、例えば、住宅等の建築物における居室、玄関室、浴室、キッチン等の床材として用いられる。また、ビル、駅、公共施設、商業施設の床材としても用いられる。
【0009】
(1)タイル素地9
タイル1は、美しい外観を保つ観点から、タイル素地9と、タイル素地9上に形成された釉薬層11を備えることが好ましい。釉薬層11を備えないタイル1であってもよい。タイル素地9の原料(タイル原料)は、焼成することによりタイル1を製造できる原料であれば特に限定されない。タイル原料は、粘土と長石を主原料とするものが一般的である。ここで、主原料とは、タイル原料を100質量部とした場合に、50質量部以上の原料を意味し、粘土と長石の合計が50質量部以上であることを意味する。タイル原料は、必要に応じて陶石、石灰石、滑石を含有している。タイル原料は、顔料等の各種の添加剤を含有することができる。
【0010】
(2)釉薬層11
釉薬層11は、例えば、タイル原料を成形した成形体の少なくとも一面に、塗布された釉薬が焼成されることで形成される。
【0011】
(3)釉粒3
釉粒3は、フリット(ガラスフリット)を粉砕したものであり、粒状フリット(ガラス粒子)とも呼ばれている。釉粒3は、タイル素地9上に点在していることが好ましい。釉粒3の化学組成は特に限定されない。釉粒3に含まる酸化物としては、例えば、SiO、Al、B、P、CaO、MgO、BaO、ZnO、PbO、NaO、KO、LiO、ZrO等が例示される。
釉粒3を構成する材質のガラス転移温度(Tg)は、特に限定されない。釉粒3が焼成時に変形して高さが低くなり過ぎるほど溶融すると、鉱物粒子7の平らな面8の向く方向を様々な方向へ調整することが困難になる。すなわち、釉粒3が変形して低くなり過ぎると、鉱物粒子7が釉粒3に寄り掛かっても、複数の鉱物粒子7の平らな面8の向く方向は、タイル素地9の表面や釉薬層11の表面に略平行に略統一されてしまい、その結果、タイル1の光輝特性が十分には発揮されない。他方、釉粒3が焼成時にあまり溶融しないと、釉粒3の表面に鉱物粒子7を十分に固着(固定)できない。よって、これらの観点から、釉粒3を構成する材質のガラス転移温度(Tg)は、500℃以上700℃以下が好ましい。
【0012】
釉粒3の粒子径は、特に限定されない。釉粒3の平均粒子径は、10μm以上250μm以下が好ましく、10μm以上200μm以下がより好ましく、10μm以上150μm以下が更に好ましい。
釉粒3の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡による観察により特定される。具体的には、釉粒3の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各釉粒3の最大径を釉粒3の粒子径とする。釉粒3の最大径は、画像解析ソフトを用いて自動的に求めてもよいし、得られたSEM画像から最大径を測定して求めてもよい。得られたSEMの画像から最大径を測定する場合、SEM画像における釉粒3の外周上の任意の2点を結ぶ直線を引き、その直線の長さが最大となる箇所を特定する。そして、当該箇所の直線の長さを測定し、これを釉粒3の最大径とする。
尚、釉粒3の粒子は、一部が釉薬層11に埋まった状態となっているものが存在する(図4の符号3C,3D,3E,3F,3G参照)。また、釉粒3の粒子は、一部が鉱物粒子7に覆われて隠された状態となっているものも存在する(図3の符号3A,3E,3F参照)。また、釉粒3の粒子は、複数が結合した状態のものが存在する(図3の符号3G参照)。釉粒3の最大径を測る場合には、釉粒3の粒子の全体の大きさが把握可能なもの、例えば、図3の符号3B,3Hのように単独の粒子であり、外周がほぼ把握できる粒子を10個選択して測定する。そして、10個の釉粒3の粒子径の平均値を平均粒子径として採用する。
【0013】
(4)鉱物粒子7
鉱物粒子7は、平らな面8を有すれば、特に限定されない。鉱物粒子7は、光輝感を高める観点から、雲母、及びヘマタイトからなる群より選ばれた少なくとも1種以上が好ましい。鉱物粒子7の平らな面8の少なくとも一部は、ガラス等に覆われずに剥き出しに露出していることが好ましい。
鉱物粒子7の平均粒子径は、特に限定されない。鉱物粒子7の平均粒子径は、10μm以上400μm以下が好ましく、10μm以上300μm以下がより好ましく、10μm以上250μm以下が更に好ましい。
鉱物粒子7の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡による観察により特定される。具体的には、鉱物粒子7の表面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、各鉱物粒子7の最大径を鉱物粒子7の粒子径とする。鉱物粒子7の最大径は、画像解析ソフトを用いて自動的に求めてもよいし、得られたSEM画像から最大径を測定して求めてもよい。得られたSEMの画像から最大径を測定する場合、SEM画像における鉱物粒子7の外周上の任意の2点を結ぶ直線を引き、その直線の長さが最大となる箇所を特定する。そして、当該箇所の直線の長さを測定し、これを鉱物粒子7の最大径とする。
尚、鉱物粒子7は、一部が釉薬層11に埋まった状態となっているものが存在する(図4の符号7A,7B,7C参照)。また、鉱物粒子7は、一部が釉粒3に覆われて隠された状態となっているものも存在する(図4の符号7D参照)。鉱物粒子7の最大径を測る場合には、鉱物粒子7の全体の大きさが把握可能なもの、例えば、図4の符号7Dのように全体の外周がほぼ把握できる粒子を10個選択して測定する。符号7Dの鉱物粒子7は釉薬層11にほとんど埋まっておらず、釉粒3に覆われて隠されている部分も小さく、露出している面積が90%以上と考えられ、この符号7Dの鉱物粒子7の観察できている外周を用いて最大径を求める。そして、10個の鉱物粒子7の粒子径の平均値を平均粒子径として採用する。
【0014】
(5)釉粒3と鉱物粒子7の量
(5.1)釉粒3と鉱物粒子7との比率
釉粒3と鉱物粒子7との比率(質量比)は、特に限定されない。
十分な光輝感を得つつ、タイル1から鉱物粒子7が脱離することを抑制する観点から、釉粒3と鉱物粒子7との質量比が、100:3-100:15の範囲が好ましく、100:3-100:6がより好ましい。
【0015】
(5.2)釉粒3の量
表面1Aの単位面積当たりの釉粒3の質量(以下単に「単位面積当たりの釉粒3の質量」ともいう。)は、特に限定されない。
十分な凹凸構造を形成する観点から、単位面積当たりの釉粒3の質量は、5g/m以上が好ましく、10g/m以上がより好ましく、40g/m以上が更に好ましい。単位面積当たりの釉粒3の質量の上限値は、特に限定されないが、100g/m以下が好ましい。
よって、単位面積当たりの釉粒3の質量は、5g/m以上100g/m以下が好ましく、10g/m以上100g/m以下がより好ましく、40g/m以上100g/m以下が更に好ましい。
【0016】
(5.3)鉱物粒子7の量
表面1Aの単位面積当たりの鉱物粒子7の質量(以下単に「単位面積当たりの鉱物粒子7の質量」ともいう。)は、特に限定されない。単位面積当たりの鉱物粒子7の質量は、光輝感を高め、かつ鉱物粒子7同士が重なって釉粒3に十分に固着されずに脱落することを抑制する観点から、0.1g/m以上1.5g/m以下が好ましく、0.2g/m以上1.0g/m以下がより好ましく、0.4g/m以上0.8g/m以下が更に好ましい。
【0017】
(6)釉粒3と鉱物粒子7の存在状態
釉薬層11を備えるタイル1の場合には、釉粒3は釉薬層11の上に点在していることが好ましい。釉薬層11を備えないタイル1の場合には、釉粒3はタイル素地9の上に点在していることが好ましい。複数の鉱物粒子7は、各々の平らな面8を2以上の異なる方向に向けて表面1Aに配置されている。この要件は、異なる方向を向いた平らな面8を有する1組の(2つの)鉱物粒子7が表面1Aに観察されれば、満たされることになる。このように配置されていることを確認するためには、例えば顕微鏡を用いて表面1Aを観察して、2つの鉱物粒子7を選び、2つの鉱物粒子7における対比する2つの平らな面8を観察することで確認できる。2つの平らな面8が、異なる方向を向いていることは、具体的には、次のようにして確認できる。顕微鏡観察によって、2つの鉱物粒子7を選び、2つの鉱物粒子7における対比する2つの平らな面8における各法線ベクトルVを求める。2つの法線ベクトルVのなす角が0°よりも大きい場合(好ましくは、10°よりも大きい場合)には2つの平らな面8が異なる方向に向いていることが確認できる。尚、2つの法線ベクトルVのなす角は通常180°未満である。
図2のように、2つの鉱物粒子7を観察した場合を例として説明する。2つの鉱物粒子7は、それぞれ平らな面8A,8Bを有する。平らな面8A,8Bは、いずれもタイル1の表側を向いている。平らな面8A,8Bのそれぞれ法線ベクトルVを、法線ベクトルV1,V2とする。この際、法線ベクトルV1と、法線ベクトルV2とのなす角が0°よりも大きい場合に、2つの平らな面8A,8Bが、異なる方向を向いていると判断する。
【0018】
鉱物粒子7は、釉粒3の周りに存在しており、鉱物粒子7は、釉粒3に固着されていることが好ましい。このように構成されることで、鉱物粒子7がタイル1から脱離しにくくなる。
鉱物粒子7は、釉粒3に寄り掛かる形態で釉粒3に固着されていることが好ましい。鉱物粒子7が釉粒3に寄り掛かることで、鉱物粒子7が釉粒3に安定して固着される。複数の鉱物粒子7において、釉粒3への寄り掛かり方が相違することで、平らな面8の向く方向が相違する。例えば、図2では、左側の鉱物粒子7と、右側の鉱物粒子7とでは、釉粒3への寄り掛かり方が相違することで、平らな面8の向く方向が相違している様子が示されている。
尚、鉱物粒子7の平らな面8の少なくとも一部は、タイル1の表面1A上に露出していることが好ましい。これにより、入射光は、平らな面8に届くまでに釉薬層11等を透過する必要がなく、しかも反射光も釉薬層11等を透過する必要もなくなるから、光輝感が高まる。
【0019】
(7)算術平均高さSa
タイル1の凹凸構造が形成された部位において、算術平均高さSaは、特に限定されない。算術平均高さSaは、JIS B0681-2:2018で規定される。
算術平均高さSaは、十分な光輝感得る観点から、9μm以上が好ましく、12μm以上がより好ましく、15μm以上が更に好ましい。他方、タイル1の清掃性、及び/又はタイル1の手触りの感触を良好にする観点から、35μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、15μm以下が更に好ましい。これらの観点から、算術平均高さSaは、9μm以上35μm以下が好ましく、12μm以上25μm以下がより好ましく、12μm以上15μm以下が更に好ましい。
【0020】
2.タイル1の製造方法
タイル1の製造方法の一例を説明する。本開示のタイル1は以下の製造方法によって好適に製造できる。まず、セラミックス原料によって素地を得る。次に、素地の表面側に、釉薬を塗布(施釉)し、施釉品を得る。釉薬の塗布(施釉)には、タイル生産において一般的に施釉で使用される幕掛け施釉、スプレー施釉、遠心施釉等を用いることができる。施釉品に対して、加飾してもよい。加飾としては、例えば、施釉品の表面に対して、接触せずにノズルの先端(ヘッド)から釉薬(インク)を吹き付けることで、意匠の基となるデータを再現してもよい。この加飾は、デジタル加飾(インクジェット加飾)とも称されている。
【0021】
施釉品には、更に、粒状フリット、鉱物粒子7を含む混合液を塗布(施釉)する。混合液は、粒状フリット、鉱物粒子7を所定の水溶液で分散した液である。分散液の塗布(施釉)には、タイル生産において一般的に施釉で使用される幕掛け施釉、スプレー施釉、遠心施釉等を用いることができる。それ以外にもスピンコーティング、ロールコーティング、刷毛塗り等を適用できる。分散液が塗布された塗布品は、所定温度で焼成される。
【0022】
焼成温度は、釉粒3の表面に鉱物粒子7を十分に固着させる観点から、850℃以上1300℃以下が好ましい。他方、焼成温度は、次の観点から、1200℃以下が好ましい。釉粒3が変形して低くなり過ぎると、鉱物粒子7の平らな面8の向く方向を様々な方向へ調整することが困難になる。すなわち、釉粒3が変形して低くなり過ぎると、鉱物粒子7が釉粒3に寄り掛かっても、複数の鉱物粒子7の平らな面8の向く方向は、タイル素地9の表面や釉薬層11の表面に略平行に略統一されてしまい、その結果、タイル1の光輝特性が十分には発揮されない。よって、このような現象を抑制して、タイル1の光輝特性を十分に担保する観点から、焼成時の焼成温度の上限値は、上記の値が好ましい。
これらの観点から、焼成温度は、850℃以上1200℃以下が好ましい。
【実施例0023】
以下、実施例により更に具体的に説明する。実験例2,3,5,6が実施例に相当し、実験例1,4は比較例である。
【0024】
1.タイルの作製
(1)実験例
セラミックス原料によって素地を得た。素地に釉薬を幕掛けで施釉した。
続いて、インクジェットプリンターでデジタル加飾した。
続いて、ヘマタイト及び釉粒を含有する混合液を幕掛け又はスプレーで塗布した。釉粒の塗布量は、タイル表面において釉粒量が表1となるようにした。ヘマタイトの塗布量は、タイル表面においてヘマタイトが0.6g/mとなるようにした。
混合液が塗布された塗布品は、ローラーハースキルン(焼成炉)を用いて、最高温度1200℃で焼成した。
【0025】
【表1】
【0026】
2.評価方法
(1)光輝感の評価
(1.1)評価機械による評価
以下の評価機械を用いてSi/Sa値を求めた。Si/Sa値は、タイルの光輝特性と相関関係があることは別途実験により確認した。すなわち、種々の光輝性を有する複数種のタイルについて、5人のモニターによる後述の官能評価値とSi/Sa値の相関性を確認したところ、両者に相関関係があることが確認された。Si/Sa値が高くなると、光輝感も高まることが分かった。よって、Si/Sa値をタイル表面の光輝感(キラキラ感)の代用特性値として使用可能であることを確認した。

[評価機械の概要]
・機械名:ビック-マック i 23mm(BYK-mac i 23mm)(マルチアングル測色器・多角度測色器)
・製造メーカ:BYK-Gardner社
・品番:7030
・測定方法:測定回数は1回で、測定で得られる15°、45°、75°の各Si/Sa値を平均した値を使用した。
【0027】
(1.2)官能評価
5人のモニターのそれぞれが、タイル表面の光輝感を5段階で評価した。光輝感の評価は、次の5段階とした。光輝感(キラキラ感)が大きいほど、点数が高くなるようにした。
そして、5人の評価点数を平均して光輝感の評価をした。
[評価基準]
点数1:光輝感がややある。
点数2:光輝感がある。
点数3:光輝感が強い。
点数4:光輝感が大変強い
点数5:光輝感が非常に強い。
【0028】
(2)密着性評価
タイル表面に粘着テープを密着させた後に、粘着テープを剥がした。タイル表面から剥離して粘着テープ側に付着したヘマタイトを目視で観察し、以下の基準で評価した。
[評価基準]
A:粘着テープ側にヘマタイトが付着していない。ヘマタイトは、タイル表面に非常に良好に密着している。
B:粘着テープ側にヘマタイトがほとんど付着していない。ヘマタイトは、タイル表面に良好に密着している。
C:粘着テープ側にヘマタイトがかなり付着している。ヘマタイトのタイル表面への密着性は低い。
【0029】
(3)SEMによる評価
各タイルについてSEMによって表面観察をした。
【0030】
2.評価結果
光輝感の評価結果が表1に併記されている。釉粒を用いた実験例2,3,5,6では、光輝感が高かった。釉粒を用いた実験例2,3,5,6についてSEMによる表面観察をしたところ(図3,4参照)、複数の釉粒によって表面に凹凸構造が形成され、表面では、ヘマタイト粒子が、平らな面を2以上の異なる方向に向けて配置されていることが観察された。また、SEM像では、ヘマタイト粒子は、釉粒の周りに存在しており、ヘマタイト粒子が、釉粒に固着されている様子も観察された。また、実験例2,3,5,6では、既述の測定方法による釉粒の平均粒子径は、50μm以上150μm以下であることが観察された。また、実験例2,3,5,6では、既述の測定方法によるヘマタイト粒子の平均粒子径は、10μm以上250μm以下であることが観察された。
【0031】
算術平均高さSaについては、9μm以上35μm以下である実験例3,6は、光輝感が非常に高かった。
【0032】
釉粒を用いない実験例1,4では、光輝感が低かった。釉粒を用いない実験例1,4についてSEMによる表面観察をしたところ(図5参照)、表面では、ヘマタイト粒子の平らな面は同一方向を向けて配置されていることが観察された。
【0033】
上記で詳述した実施形態、実施例に限定されず、様々な変形および変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
1…タイル、1A…表面、3…釉粒、7…鉱物粒子、8…面、8A…面、8B…面、9…タイル素地、11…釉薬層、Sa…算術平均高さ、V…法線ベクトル、V1…法線ベクトル、V2…法線ベクトル
図1
図2
図3
図4
図5