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特開2023-140637印刷装置、制御方法、プログラム、情報処理装置、および印刷システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140637
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】印刷装置、制御方法、プログラム、情報処理装置、および印刷システム
(51)【国際特許分類】
   B65H 43/04 20060101AFI20230928BHJP
   B65H 26/02 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
B65H43/04
B65H26/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046581
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002325
【氏名又は名称】セイコーインスツル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142837
【弁理士】
【氏名又は名称】内野 則彰
(74)【代理人】
【識別番号】100166305
【弁理士】
【氏名又は名称】谷川 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100171251
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】吉木 裕一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】近藤 啓彬
(72)【発明者】
【氏名】北村 義雄
(72)【発明者】
【氏名】畠山 耕一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 康輝
(72)【発明者】
【氏名】仲 遼太
【テーマコード(参考)】
3F048
3F105
【Fターム(参考)】
3F048AA05
3F048AB01
3F048AC02
3F048BA02
3F048BA03
3F048BB02
3F048CB05
3F048CB06
3F048DB03
3F048DC12
3F048EA03
3F048EB02
3F048EB22
3F105AA02
3F105AB04
3F105DA38
3F105DA42
3F105DB04
3F105DB11
3F105DC11
(57)【要約】
【課題】ユーザにより設定されたロール紙の残量を精度よく検知可能な技術を提供する。
【解決手段】ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知部と、ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知部と、物理量が第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、新たなロール紙が使用された場合に、物理量が第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、検知後長からユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量がユーザ設定値になったことを通知する通知部と、を備えた。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、
ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知部と、
ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知部と、
前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、
新たなロール紙が使用された場合に、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長から前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知部と、
を備えた印刷装置。
【請求項2】
前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長から前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えてから、前記物理量が前記第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さに応じて、前記検知後長を補正する補正部を備えた請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
印刷装置の制御方法であって、
ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得ステップと、
ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知ステップと、
ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知ステップと、
前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得ステップと、
新たなロール紙が使用された場合に、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長から前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知ステップと、
を備えた制御方法。
【請求項4】
印刷装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、
前記コンピュータを、
ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、
ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知部と、
ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知部と、
前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、
新たなロール紙が使用された場合に、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長から前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知部と、
して機能させるためのプログラム。
【請求項5】
印刷装置と通信可能な情報処理装置であって、
ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、
前記印刷装置において、ロール紙が使用された長さを取得する使用量取得部と、
前記印刷装置において、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことが通知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となったことが通知されるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、
新たなロール紙が使用された場合に、前記物理量が前記第1閾値となったことが通知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長さから前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知部と、
を備えた情報処理装置。
【請求項6】
印刷装置と、前記印刷装置と通信可能な情報処理装置とを含む印刷システムであって、
前記印刷装置は、
ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知部と、
ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知部と、
前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されると、前記情報処理装置に前記物理量が前記第1閾値となったことを通知する第1通知部と、
ロール紙の残量が前記第2閾値となったことが検知されると、前記情報処理装置に前記物理量が前記第2閾値となったことを通知する第2通知部と、
ロール紙が使用された長さを前記情報処理装置に通知する使用量通知部と、
を備え、
前記情報処理装置は、
ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、
前記使用量通知部により通知されたロール紙が使用された長さを取得する使用量取得部と、
前記第1通知部により前記物理量が前記第1閾値となったことが通知されてから、前記第2通知部によりロール紙の残量が前記第2閾値となったことが通知されるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、
新たなロール紙が使用された場合に、前記第1通知部により前記物理量が前記第1閾値となったことが通知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長さから前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知部と、
を備えた印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置、制御方法、プログラム、情報処理装置、および印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
感熱紙が巻かれたロール紙を用いる印刷装置がある。こうした印刷装置では、ロール紙の径が小さくなることをセンサにより検知し、ロール紙のニアエンドを検知する方法が一般的に知られている。
【0003】
センサを用いた検知方法は、ロール紙の紙管の径や厚みのバラつきを予め想定したものとなっている。そのため、使用するロール紙の種類によっては、使用可能な残り長さが比較的多い状態においてもニアエンドが検知されることがある。
【0004】
こうした背景から、特許文献1には、センサによるニアエンド検知後、ロール紙の残り長さを、単位時間当たりの紙の使用長さと、設定された余裕期間とで予測することで、ニアエンドを検出する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-26077号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、単位時間当たりの紙の使用長さが一定となる場合はそう多くないため、特許文献1に開示された技術では、精度良く検出できない。また、センサがニアエンドを検知してもユーザには通知せず、検知後に一定量の紙を使用した後にユーザにニアエンドを通知する技術がある。こうして通知タイミングを遅延させることで、使用可能な残り長さを減らす技術も存在する。
【0007】
この技術の場合、センサによるニアエンド検知後の残り長さを予め調査する必要があるが、ユーザによって使用するロール紙が異なることから、ニアエンド検知後の残り長さが一定とならないことが多い。この場合、使用可能な残り長さが想定以上に余ってしまう可能性がある。そこで、ユーザがニアエンド検知後の残り長さを調査したり、設定可能としてもよいが、ユーザによる調査はユーザにとって煩わしいため、現実的ではない。
【0008】
このように、従来の技術では、ユーザにより、精度よく検知することが困難であり、またニアエンドを通知するロール紙の残量をユーザが設定できなかった。
【0009】
上記事情に鑑み、本発明は、ユーザにより設定されたロール紙の残量を精度よく検知可能な技術を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)上述の課題に鑑み、本発明の一態様に係る印刷装置は、ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知部と、ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知部と、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、新たなロール紙が使用された場合に、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長から前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知部と、を備えた。
【0011】
(2)本発明の一態様に係る印刷装置において、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長から前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えてから、前記物理量が前記第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さに応じて、前記検知後長を補正する補正部を備えた。
【0012】
(3)上述の課題に鑑み、本発明の一態様に係る印刷方法は、印刷装置の制御方法であって、ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得ステップと、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知ステップと、ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知ステップと、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得ステップと、新たなロール紙が使用された場合に、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長から前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知ステップと、を備えた。
【0013】
(4)上述の課題に鑑み、本発明の一態様に係るプログラムは、印刷装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、前記コンピュータを、ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知部と、ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知部と、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、新たなロール紙が使用された場合に、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長から前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知部と、して機能させる。
【0014】
(5)上述の課題に鑑み、本発明の一態様に係る情報処理装置は、印刷装置と通信可能な情報処理装置であって、ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、前記印刷装置において、ロール紙が使用された長さを取得する使用量取得部と、前記印刷装置において、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことが通知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となったことが通知されるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、新たなロール紙が使用された場合に、前記物理量が前記第1閾値となったことが通知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長さから前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知部と、を備えた。
【0015】
(6)上述の課題に鑑み、本発明の一態様に係る印刷システムは、印刷装置と、前記印刷装置と通信可能な情報処理装置とを含む印刷システムであって、前記印刷装置は、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する第1検知部と、ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する第2検知部と、前記物理量が前記第1閾値となったことが検知されると、前記情報処理装置に前記物理量が前記第1閾値となったことを通知する第1通知部と、ロール紙の残量が前記第2閾値となったことが検知されると、前記情報処理装置に前記物理量が前記第2閾値となったことを通知する第2通知部と、ロール紙が使用された長さを前記情報処理装置に通知する使用量通知部と、を備え、前記情報処理装置は、ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得するユーザ設定値取得部と、前記使用量通知部により通知されたロール紙が使用された長さを取得する使用量取得部と、前記第1通知部により前記物理量が前記第1閾値となったことが通知されてから、前記第2通知部によりロール紙の残量が前記第2閾値となったことが通知されるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する検知後長取得部と、新たなロール紙が使用された場合に、前記第1通知部により前記物理量が前記第1閾値となったことが通知されてから使用されたロール紙の長さが、前記検知後長さから前記ユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量が前記ユーザ設定値になったことを通知する通知部と、を備えた印刷システム。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】印刷システムの構成例を示す図である。
図2】ロール紙に係る各構成例を示す図である。
図3】ニアエンドセンサ部の検知位置などを示す図である。
図4】ロール紙の径による違いを示す図である。
図5】印刷装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図6】印刷装置の処理の流れを示すフローチャートである。
図7】ニアエンド初期設定処理の流れを示すフローチャートである。
図8】ニアエンド通知前処理の流れを示すフローチャートである。
図9】ニアエンド通知後処理の流れを示すフローチャートである。
図10】印刷システムの処理の一例を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の具体的な構成例について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る印刷システム10の構成例を示す図である。印刷システム10は、印刷装置100と、情報処理装置200を含む。本実施形態において印刷装置100は、サーマルプリンタを例にして説明する。情報処理装置200は、スマートフォンやPC(Personal Computer)などである。情報処理装置200は、通信部210、および制御部220を備える。通信部210は、本実施形態では印刷装置100との通信を行う。通信には、Bluetooth(登録商標)やWifi(登録商標)など各種プロトコルが用いられる。
【0018】
制御部220は、演算装置、記憶装置により実現される。演算装置は、CPU(Central Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアである。記憶装置は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリなど、揮発性記憶装置や不揮発性記憶装置である。その他、不図示の液晶や有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどの表示装置や、タッチパネルや、ハードキーなどのユーザによる操作を受け付ける操作装置も備える。
【0019】
印刷装置100は、通信部110、制御部120、およびメカニズム部130で構成される。通信部110は、本実施形態では情報処理装置200との通信を行う。通信には、上述したようにBluetoothやWifiなど各種プロトコルが用いられる。
【0020】
メカニズム部130は、ニアエンドセンサ部131、紙送り部132、紙なしセンサ部133、およびサーマルヘッド部134で構成される。図2は、ロール紙に係る各構成例を示す図である。具体的に、図2に、紙送り部132、紙なしセンサ部133、およびサーマルヘッド部134の構成例を示す図である。図2には、紙送り部132、紙なしセンサ部133、およびサーマルヘッド部134とともに、ロール紙が示されている。
【0021】
紙送り部132は、制御部120の制御により、ステッピングモータなどで構成され感熱紙を図に示される「紙搬送方向」に搬送する。サーマルヘッド部134は、制御部120の制御により、感熱紙に文字などを印刷する。以下において、「印字」という表現が用いられることがあるが、「印字」と「印刷」は同義である。
【0022】
紙なしセンサ部133は、感熱紙を検知可能に構成され、感熱紙が検知されなくなると、紙なしと判定する。感熱紙が検知されなくなったときのロール紙の残量が第2閾値である。図2に示されるように、紙なしセンサ部133とサーマルヘッド部134との距離は0ではないが、説明を分かりやすくするために、本実施形態では、第2閾値を0として説明する。なお、図2紙なしセンサ部133は、紙なしと判定すると、ロール紙の残量が第2閾値となったことを制御部120に通知する。
【0023】
本実施形態における印刷装置100は、ロール紙を載置する構成となっている。そのため、ロール紙の使用とともにロール紙の径が小さくなると、自重によって紙管の位置が徐々に下方に移動するようになっている。サーマルヘッド部134と紙送り部132は、感熱紙を挟んで対抗するように設けられる。また、紙なしセンサ部133は、紙送り部132の近傍に設けられる。
【0024】
図3は、ニアエンドセンサ部131の検知位置などを示す図である。ニアエンドセンサ部131は、ロール紙の側面に設けられている。図の左側には径の比較的大きいロール紙Aが示され、図の右側には使用されることで径が小さくなったロール紙Bが示されている。図4に示されるように、ロール紙の径が大きい状態では、ニアエンドセンサ部131の正面部には、検知物としてロール紙の側面部または紙管の側面部が存在する。一方、ロール紙の径が小さい状態では、ニアエンドセンサ部131の正面部には、検知物として紙管空洞部が存在する。よって、ロール紙の径が小さい状態における検知物との距離は、ロール紙の径が小さい状態における検知物との距離よりも遠いものとなる。
【0025】
これを利用して、ニアエンドセンサ部131は、ロール紙の使用とともに自重によって紙管の位置が検知位置に到達すると、ニアエンドを検知したと判定する。よって、本実施形態における「ロール紙の残量と相関する物理量」とは、底面から紙管位置までの距離dである。検知位置に紙管が到達する距離が第1閾値である。このように、ニアエンドセンサ部131は、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する。ニアエンドセンサ部131は、第1閾値となったことを検知すると、第1閾値となったことを制御部120に通知する。
【0026】
図1に戻り、制御部120について説明する。制御部120は、ユーザ設定値取得部121、第1検知部122、第2検知部123、検知後長取得部124、通知部125、および補正部126で構成される。制御部120は、演算装置、記憶装置により実現される。演算装置は、CPU、ASIC、FPGA等のハードウェアである。記憶装置は、RAM、ROM、フラッシュメモリなど、揮発性記憶装置や不揮発性記憶装置である。
【0027】
ユーザ設定値取得部121は、ユーザにより設定されたロール紙の残量を示すユーザ設定値を取得する。ユーザ設定値取得部121は、例えば情報処理装置200においてユーザが設定したユーザ設定値を情報処理装置200から取得してもよい。第1検知部122は、ニアエンドセンサ部131の通知によって、ロール紙の残量と相関する物理量が、第1閾値となったことを検知する。第2検知部123は、紙なしセンサ部133の通知によって、ロール紙の残量が第2閾値となったことを検知する。
【0028】
検知後長取得部124は、距離dが第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである検知後長を取得する。この取得方法については後述する。
【0029】
通知部125は、新たなロール紙が使用された場合に、距離dが第1閾値となったことが検知されてから使用されたロール紙の長さが、検知後長からユーザ設定値を減算した基準値を超えた場合に、ロール紙の残量がユーザ設定値になったことを通知(以下、「ニアエンド通知」ともいう)する。ここで、「新たなロール紙」とは、検知後長取得部124により検知後長が取得されたロール紙の次に印刷装置100にセットされた未使用のロール紙である。本実施形態では、同じ形式のロール紙が毎回セットされるものとする。ロール紙が交換されたか否かは、ロール紙を格納するカバーの開閉を検知する不図示の開閉センサが用いられる。例えば、カバーが開かれ、ニアエンドセンサ部131により距離dが第1閾値となったことが検知されなかった場合には、新たなロール紙がセットされたと判定してもよい。
【0030】
通知部125の通知先は情報処理装置200が挙げられる。情報処理装置200は、ロール紙の残量がユーザ設定値になったことが通知された場合には表示装置などを用いてユーザに通知する。または、印刷装置100に、ロール紙の残量がユーザ設定値になったことを示す発光ダイオードを設け、発光ダイオードを制御するタスクにロール紙の残量がユーザ設定値になったことが通知してもよい。発光ダイオードを制御するタスクは、ロール紙の残量がユーザ設定値になった場合、発光ダイオードを点灯または点滅させるなど、ロール紙の残量がユーザ設定値になっていないときの態様とは異なる態様となるように制御する。補正部126は、検知後長を補正する。補正方法については後述する。
【0031】
印刷装置100の処理の流れをフローチャートを用いて説明する。印刷装置100の処理には、大きく2つの処理がある。図5に示される1つ目の処理では、主として検知後長を取得する。図6に示される2つ目の処理では、主として検知後長が取得されたロール紙の次に印刷装置100にセットされたロール紙に対し、取得された検知後長を用いてニアエンド通知を行う。このように、本実施形態では、1つめのロール紙を用いて、ニアエンド通知を行うための準備を行い、2つめ以降のロール紙に対して、ニアエンド通知が行われる。
【0032】
図5図6は、印刷装置100の処理の流れを示すフローチャートである。図5において、印刷装置100は、ユーザ設定値Aを取得する(ステップS101)。印刷装置100は、未使用のロール紙がセットされた状態から、上述した検知後長を取得するニアエンド初期設定処理を行い(ステップS102)、処理を終了する。ニアエンド初期設定処理の詳細については後述する。図5に示される処理の後、印刷装置100に新たな未使用のロール紙がセットされると、図6の処理が行われる。
【0033】
図6において、印刷装置100は、ニアエンド通知前処理を行う(ステップS201)。ニアエンド通知前処理の詳細については後述する。印刷装置100は、ニアエンド通知を行う(ステップS202)。これにより、ユーザはロール紙の残量がユーザ設定値になったことを認識できる。印刷装置100は、ニアエンド通知後処理を行い(ステップS203)、処理を終了する。ニアエンド通知後処理の詳細については後述する。
【0034】
図7は、ニアエンド初期設定処理(ステップS102)の流れを示すフローチャートである。印刷装置100は、使用量Bを0で初期化する(ステップS301)。ここで、使用量とは、ロール紙の使用量を示す。使用量は、紙送り部132におけるステッピングモータの回転数からロール紙の長さに換算されたものである。例えば、1回転あたりに使用されるロール紙の長さをLとしたときに、使用量B=L×回転数で求められる。印刷装置100は、情報処理装置200などの要求に応じて印字したり、紙送り動作を行う(ステップS302)。
【0035】
印刷装置100は、ロール紙の使用によって、上述した距離dが第1閾値となったか否かを判定する(ステップS303)。距離dが第1閾値となっていない場合には(ステップS303:NO)、印刷装置100は、ステップS302に戻る。距離dが第1閾値となった場合には(ステップS303:YES)、印刷装置100は、使用量Bのカウントを開始する(ステップS304)。その後、印刷装置100は、情報処理装置200などの要求に応じて印字したり、紙送り動作を行う(ステップS305)。
【0036】
印刷装置100は、ロール紙の使用によって、ロール紙の残量が第2閾値となったか否かを判定する(ステップS306)。ロール紙の残量が第2閾値となっていない場合には(ステップS306:NO)、印刷装置100は、ステップS304に戻る。ロール紙の残量が第2閾値となった場合には(ステップS306:YES)、印刷装置100は、検知後長Cに使用量Bを代入して(ステップS307)、処理を終了する。このように、検知後長は、物理量が第1閾値となったことが検知されてから、ロール紙の残量が第2閾値となるまでに使用されたロール紙の長さである。
【0037】
図8は、ニアエンド通知前処理(ステップS201)の流れを示すフローチャートである。このニアエンド検知前処理は、上述したように新たに未使用のロール紙がセットされた状態で行われる。
【0038】
印刷装置100は、使用量Bを0で初期化する(ステップS401)。印刷装置100は、情報処理装置200などの要求に応じて印字したり、紙送り動作を行う(ステップS402)。印刷装置100は、ロール紙の使用によって、上述した距離dが第1閾値となったか否かを判定する(ステップS403)。距離dが第1閾値となっていない場合には(ステップS403:NO)、印刷装置100は、ステップS402に戻る。距離dが第1閾値となった場合には(ステップS403:YES)、印刷装置100は、使用量Bのカウントを開始する(ステップS404)。その後、印刷装置100は、情報処理装置200などの要求に応じて印字したり、紙送り動作を行う(ステップS405)。
【0039】
印刷装置100は、検知後長Cからユーザ設定値Aを減算した基準値(C-A)を使用量Bが超えたか否かを判定する(ステップS406)。基準値(C-A)を使用量Bが超えていない場合には(ステップS406:NO)、印刷装置100は、ステップS404に戻る。基準値(C-A)を使用量Bが超えた場合には(ステップS406:YES)、印刷装置100は、処理を終了する。
【0040】
ここで、基準値(C-A)の意味について説明する。検知後長Cは、ニアエンドセンサ部131による検知後のロール紙の残量である。ユーザ設定値Aは、ユーザにより設定されたロール紙の残量を示す。したがって、基準値(C-A)は、ニアエンドセンサ部131により検知されてから、残量がユーザ設定値Aとなるまでの長さを示す。よって、使用量Bが基準値(C-A)と一致すると、ロール紙の残量はユーザ設定値となる。したがって、ニアエンド検知前処理(ステップS201)が行われた次のステップS202において、ニアエンド通知が行われる。
【0041】
図9は、ニアエンド通知後処理(ステップS203)の流れを示すフローチャートである。印刷装置100は、使用量Bを0で初期化する(ステップS501)。印刷装置100は、使用量Bのカウントを開始する(ステップS502)。印刷装置100は、紙送り動作を行う(ステップS503)。
【0042】
印刷装置100は、紙送り動作によって、ロール紙の残量が第2閾値となったか否かを判定する(ステップS504)。ロール紙の残量が第2閾値となっていない場合には(ステップS504:NO)、印刷装置100は、ステップS503に戻る。すなわち、紙送り動作を継続する。ロール紙の残量が第2閾値となった場合には(ステップS504:YES)、印刷装置100は、使用量Bがユーザ設定値Aが略同じか否かを判定する(ステップS505)。使用量Bがユーザ設定値Aが略同じか否かと判定する理由は、温湿度などの環境により、使用量Bが変化するためである。したがって、使用量Bの変化を許容する値α、βを定めておき、範囲(B-α、B+β)内にユーザ設定値Aが存在する場合に、使用量Bがユーザ設定値Aが略同じ判定する。使用量Bがユーザ設定値Aが略同じ場合には(ステップS505:YES)、印刷装置100は、処理を終了する。
【0043】
一方、使用量Bがユーザ設定値Aが略同じではない場合には(ステップS505:NO)、印刷装置100は、検知後長Cを補正して(ステップS505)、処理を終了する。補正方法は、新たな検知後長Cとして、補正前のCから(A-B)を減算した値とする補正である(C←C-(A-B))。これは、A-B>0の場合には、Cが本来の長さよりA-Bだけ長かったことを意味するので、A-Bを減算することで、本来のCの長さに補正できる。一方、A-B<0の場合には、Cが本来の長さよりB-Aだけ短かったことを意味するので、B-Aを加算することで、本来のCの長さに補正できる。このように、補正を行うことにより、ユーザにより設定されたロール紙の残量を精度よく検知することができる。
【0044】
以上説明した実施形態において、温湿度によりギア等の紙送りに関する部品が膨張したり収縮したりするため使用量Bを補正してもよい。例えば、補正係数kを用いて使用量B=k×L×回転数とする。例えば標準的な温度基準を定めておき、基準よりも温度が高い場合には、紙送り量が長くなることからkを1未満の値とし、基準よりも温度が低い場合には、紙送り量が短くなることからkを1より大きい値とする。このように環境に応じて使用量を調整することで、より精度よく検知可能となる。
【0045】
(変形例)
上述した実施形態を情報処理装置200で行うようにしてもよい。図10は、情報処理装置200で上述した実施形態を行う場合の印刷システム10の処理の一例を示すシーケンス図である。この変形例を行う場合、印刷装置100は、ロール紙の使用量が変化するたびに使用量を情報処理装置200に通知する。図10では、この使用量の通知は、煩雑さを避けるため省略している。
【0046】
情報処理装置200は、ユーザにより設定されたユーザ設定値Aを取得する(ステップS601)。情報処理装置200は、使用量Bを初期化する(ステップS602)。印刷装置100は、距離dが第1閾値となったことを示す第1閾値検知通知を情報処理装置200に送信する(ステップS603)。情報処理装置200は、第1閾値検知通知を受信すると、使用量Bのカウントを開始する(ステップS604)。これ以降、後述する第2閾値検知通知が受信されるまで、情報処理装置200は、印刷装置100から使用量が通知されるたびに、使用量Bを随時更新する。
【0047】
印刷装置100は、ロール紙の残量が第2閾値となったことを示す第2閾値通知を情報処理装置200に送信する(ステップS605)。情報処理装置200は、第1閾値検知通知を受信すると、検知後長Cを取得する(ステップS606)。印刷装置100は、新たなロール紙がセットされると、新たなロール紙がセットされたことを示すロール紙交換通知を情報処理装置200に送信する(ステップS607)。情報処理装置200は、ロール紙交換通知を受信すると、使用量Bを初期化する(ステップS602)。これ以降、検知後長Cからユーザ設定値Aを減算した基準値(C-A)を使用量Bが超えるまで、情報処理装置200は、印刷装置100から使用量が通知されるたびに、使用量Bを随時更新する。
【0048】
情報処理装置200は、検知後長Cからユーザ設定値Aを減算した基準値(C-A)を使用量Bが超えると(ステップS610)、ニアエンド通知を行う(ステップS611)。以上のように、印刷装置100と通信可能な情報処理装置200が処理を行うことによっても、ニアエンド通知を行うことができる。
【0049】
なお、情報処理装置200は、使用量B以外に使用量をカウントするパラメータを設け、このパラメータによって、ロール紙1つ分の使用量Eを予め取得しておき、印刷装置100から使用量が通知されるたびにEから減算することで、ロール紙の残量を求めることができる。この残量を情報処理装置200において表示することで、ユーザは印刷が可能か否かを判断することができる。
【0050】
上述した実施形態により、ユーザによりニアエンド通知を行うためのユーザ設定値を設定することができる。また、使用量を精度よくカウント可能なため、ユーザがユーザ設定値を比較的短い値に設定しても精度よくニアエンド通知が可能となる。さらに、ニアエンドセンサ部131により検知された後の使用量を用いるため、ロール紙の紙管の径、厚みに左右されることなく精度よくニアエンド通知が可能となる。また、従来技術のように、ユーザがニアエンド検知後の残り長さを調査する必要がないので、ユーザが煩わしさを感じることなく精度よくニアエンド通知が可能となる。
【0051】
上述した印刷装置100および情報処理装置200の処理を実行させるためのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置である。画像処理プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0052】
上述した実施形態における印刷装置100および情報処理装置200の機能をコンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0053】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0054】
10 印刷システム
100 印刷装置
110、210 通信部
120、220 制御部
121 ユーザ設定値取得部
122 第1検知部
123 第2検知部
124 検知後長取得部
125 通知部
126 補正部
130 メカニズム部
131 ニアエンドセンサ部
132 紙送り部
133 紙なしセンサ部
134 サーマルヘッド部
200 情報処理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10