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特開2023-140669ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体、及びそれを用いた硬化性樹脂組成物、硬化物、電子デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023140669
(43)【公開日】2023-10-05
(54)【発明の名称】ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体、及びそれを用いた硬化性樹脂組成物、硬化物、電子デバイス
(51)【国際特許分類】
   C08G 14/073 20060101AFI20230928BHJP
   C07D 265/16 20060101ALI20230928BHJP
【FI】
C08G14/073
C07D265/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022046630
(22)【出願日】2022-03-23
(71)【出願人】
【識別番号】000002200
【氏名又は名称】セントラル硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】堀 弘人
(72)【発明者】
【氏名】木村 高岳
(72)【発明者】
【氏名】名倉 裕力
(72)【発明者】
【氏名】細井 健史
【テーマコード(参考)】
4J033
【Fターム(参考)】
4J033FA02
4J033FA04
4J033FA11
4J033HB02
4J033HB03
(57)【要約】
【課題】低温で硬化することが可能なベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を提供すること。
【解決手段】-CH(CF)-で表される部分構造を有するベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-CH(CF)-で表される部分構造を有するベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【請求項2】
請求項1に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化1】
上記一般式(1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
mは各々独立に0~4の整数を表し、
nは各々独立に0~4の整数を表す。
【請求項3】
請求項1に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記一般式(2)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化2】
上記一般式(2)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
lは各々独立に0~3の整数を表す。
【請求項4】
請求項1または2に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記一般式(3)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化3】
上記一般式(3)中、R、R、mおよびnの定義は、一般式(1)におけるR、R、mおよびnと同義である。
【請求項5】
請求項1または3に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記一般式(4)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化4】
上記一般式(4)中、R、Rおよびlの定義は、一般式(2)におけるR、Rおよびlと同義である。
【請求項6】
請求項1、2、4のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(5)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化5】
【請求項7】
請求項1、2、4のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(6)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化6】
【請求項8】
請求項1、2、4のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(7)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化7】
【請求項9】
請求項1、2、4のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(8)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化8】
【請求項10】
請求項1、2、4のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(9)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化9】
【請求項11】
請求項1、2、4のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(10)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化10】
【請求項12】
請求項1、3、5のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(11)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【化11】
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の重合性単量体に由来する構造単位を含む重合体。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の重合性単量体あるいは請求項13に記載の重合体を含む硬化性樹脂組成物。
【請求項15】
請求項14に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【請求項16】
請求項15に記載の硬化物を備える電子デバイス。
【請求項17】
請求項14に記載の硬化性樹脂組成物あるいは請求項15に記載の硬化物を含む積層板材料。
【請求項18】
請求項14に記載の硬化性樹脂組成物あるいは請求項15に記載の硬化物を含む電子部品封止材。
【請求項19】
下記一般式(1-1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法であって、
下記一般式(1A)で表される芳香族ジアミン化合物とアルデヒド類とフェノール化合物とを反応させる工程を含む、ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法。
【化12】
上記一般式(1-1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
は各々独立に水素原子または1価の有機基を表し、
mは各々独立に0~4の整数を表し、
nは各々独立に0~4の整数を表す。
【化13】
上記一般式(1A)中、Rおよびnの定義は、一般式(1)におけるRおよびnと同義である。
【請求項20】
下記一般式(2-1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法であって、
下記一般式(2A)で表されるビスフェノール化合物とアルデヒド類と一級アミン化合物とを反応させる工程を含む、ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法。
【化14】
上記一般式(2-1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
は各々独立に水素原子または1価の有機基を表し、
lは各々独立に0~3の整数を表す。
【化15】
上記一般式(2A)中、Rおよびlの定義は、一般式(2)におけるRおよびlと同義である。
【請求項21】
下記一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物。
【化16】
上記一般式(1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
mは各々独立に0~4の整数を表し、
nは各々独立に0~4の整数を表す。
【請求項22】
下記一般式(2)で表されるベンゾオキサジン化合物。
【化17】
上記一般式(2)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
lは各々独立に0~3の整数を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体、重合体、硬化性樹脂組成物、硬化物、電子デバイス、積層板材料、電子部品封止材およびベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ベンゾオキサジンは、アミン類とフェノール類とアルデヒド類との反応等によって得られる化合物である。ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は単独またはエポキシ樹脂など他の化合物と重合させることで硬化物が得られ、その硬化物は、難燃性および耐熱性に優れることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1にはベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体と、フェノール樹脂と、ビフェニルテトラカルボン酸類および/またはその無水物とを含有する組成物の硬化速度が優れており、得られる硬化物が、難燃性や耐熱性に優れる旨が記載されている。さらに、特許文献2にはベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体と、エポキシ樹脂と、無機フィラーとを含有する組成物から得られる硬化物が、高い耐熱性を有することに加え、熱膨張率が小さく、放熱性に優れる旨が記載されている。
【0004】
また、非特許文献1には、電子求引性基を有するベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、硬化時の架橋速度が速く、得られる硬化物はガラス転移温度が高い旨が記載されている。中でも、4,4′-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(BIS-AF)と、アニリンと、ホルムアルデヒドから合成した、トリフルオロメチル基を有するベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体より得られる硬化物は、ガラス転移温度が252℃と高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-168671号公報
【特許文献2】特開2011-231196号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Ind.Eng.Chem.Res.(2020)、59、12085-12095
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、低温で硬化することが可能なベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を提供することを目的の1つとして、検討を行った。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、以下に提供される開示を完成させ、上記課題を解決した。
【0009】
[1]
-CH(CF)-で表される部分構造を有するベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0010】
[2]
[1]に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0011】
【化1】
【0012】
上記一般式(1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
mは各々独立に0~4の整数を表し、
nは各々独立に0~4の整数を表す。
【0013】
[3]
[1]に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記一般式(2)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0014】
【化2】
【0015】
上記一般式(2)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
lは各々独立に0~3の整数を表す。
【0016】
[4]
[1]または[2]に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記一般式(3)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0017】
【化3】
【0018】
上記一般式(3)中、R、R、mおよびnの定義は、一般式(1)におけるR、R、mおよびnと同義である。
【0019】
[5]
[1]または[3]に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記一般式(4)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0020】
【化4】
【0021】
上記一般式(4)中、R、Rおよびlの定義は、一般式(2)におけるR、Rおよびlと同義である。
【0022】
[6]
[1]、[2]、[4]のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(5)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0023】
【化5】
【0024】
[7]
[1]、[2]、[4]のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(6)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0025】
【化6】
【0026】
[8]
[1]、[2]、[4]のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(7)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0027】
【化7】
【0028】
[9]
[1]、[2]、[4]のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(8)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0029】
【化8】
【0030】
[10]
[1]、[2]、[4]のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(9)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0031】
【化9】
【0032】
[11]
[1]、[2]、[4]のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(10)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0033】
【化10】
【0034】
[12]
[1]、[3]、[5]のいずれか一項に記載のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体であって、
下記式(11)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体。
【0035】
【化11】
【0036】
[13]
[1]~[12]のいずれか一項に記載の重合性単量体に由来する構造単位を含む重合体。
【0037】
[14]
[1]~[12]のいずれか一項に記載の重合性単量体あるいは[13]に記載の重合体を含む硬化性樹脂組成物。
【0038】
[15]
[14]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化させたことを特徴とする硬化物。
【0039】
[16]
[15]に記載の硬化物を備える電子デバイス。
【0040】
[17]
[14]に記載の硬化性樹脂組成物あるいは[15]に記載の硬化物を含む積層板材料。
【0041】
[18]
[14]に記載の硬化性樹脂組成物あるいは[15]に記載の硬化物を含む電子部品封止材。
【0042】
[19]
下記一般式(1-1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法であって、
下記一般式(1A)で表される芳香族ジアミン化合物とアルデヒド類とフェノール化合物とを反応させる工程を含む、ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法。
【0043】
【化12】
【0044】
上記一般式(1-1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
は各々独立に水素原子または1価の有機基を表し、
mは各々独立に0~4の整数を表し、
nは各々独立に0~4の整数を表す。
【0045】
【化13】
【0046】
上記一般式(1A)中、Rおよびnの定義は、一般式(1)におけるRおよびnと同義である。
【0047】
[20]
下記一般式(2-1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法であって、
下記一般式(2A)で表されるビスフェノール化合物とアルデヒド類と一級アミン化合物とを反応させる工程を含む、ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法。
【0048】
【化14】
【0049】
上記一般式(2-1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
は各々独立に水素原子または1価の有機基を表し、
lは各々独立に0~3の整数を表す。
【0050】
【化15】
【0051】
上記一般式(2A)中、Rおよびlの定義は、一般式(2)におけるRおよびlと同義である。
【0052】
[21]
下記一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物。
【0053】
【化16】
【0054】
上記一般式(1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
mは各々独立に0~4の整数を表し、
nは各々独立に0~4の整数を表す。
【0055】
[22]
下記一般式(2)で表されるベンゾオキサジン化合物。
【0056】
【化17】
【0057】
上記一般式(2)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
lは各々独立に0~3の整数を表す。
【発明の効果】
【0058】
本開示によれば、低温で硬化することが可能なベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体が提供される。本開示のフッ素含有ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は反応性が高く、得られる硬化物は良好な耐熱性が確認されていることから、例えば低温硬化や耐熱性が求められる電子デバイスの製造に好ましく用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0059】
以下、本開示の実施形態について、詳細に説明する。
【0060】
本明細書中、数値範囲の説明における「X~Y」との表記は、特に断らない限り、X以上Y以下のことを表す。例えば、「1~5質量%」とは「1質量%以上5質量%以下」を意味する。
【0061】
本明細書における基(原子団)の表記において、置換か無置換かを記していない表記は、置換基を有しないものと置換基を有するものの両方を包含するものである。例えば「アルキル基」とは、置換基を有しないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含するものである。
本明細書における「有機基」の語は、特に断りが無い限り、有機化合物から1つ以上の水素原子を除いた原子団のことを意味する。例えば、「1価の有機基」とは、任意の有機化合物から1つの水素原子を除いた原子団のことを表す。
本明細書中の化学式において、「Me」の表記は、メチル基(CH3)を表す。
本明細書における「電子デバイス」の語は、半導体チップ、半導体素子、プリント配線基板、電気回路ディスプレイ装置、情報通信端末、発光ダイオード、物理電池、化学電池など、電子工学の技術が適用された素子、デバイス、最終製品等を包含する意味で用いられる。
【0062】
本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、-CH(CF)-で表される部分構造を有する。
【0063】
本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、一例として反応性が良好である。ベンゾオキサジンの硬化反応は酸素‐炭素結合のヘテロ開裂とフェノール性水酸基のオルト位への付加反応の繰り返しにより進行することが知られている。このことから、中央のアリール基に挟まれたメチレン基における置換基の電子求引性が高いほど硬化反応が進行しやすいと示唆される。本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は中央部に-CH(CF)-を有しており、トリフルオロメチル基の電子求引性により反応性向上の効果が得られていると推測される。さらに、本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を含む硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物は、耐熱性も優れている。
【0064】
以下、本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体について説明を続ける。
【0065】
本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、好ましくは、一般式(1)で表される構造を有する。
【0066】
【化18】
【0067】
一般式(1)中、
およびRは各々独立に一価の置換基を表し、
mは各々独立に0~4の整数を表し、
nは各々独立に0~4の整数を表す。
【0068】
の一価の置換基は限定されないが、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アリールオキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、シリル基、またはハロゲノ基等が挙げられる。
【0069】
アルキル基は限定されないが、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルキル基であることが好ましい。中でもn-ブチル基、s-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、エチル基、およびメチル基が好ましく、特にエチル基とメチル基が好ましい。
【0070】
アルコキシ基は限定されないが、炭素数1~10の直鎖または分岐のアルコキシ基であることが好ましい。中でもn-ブトキシ基、s-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、エトキシ基、およびメトキシ基が好ましく、特にエトキシ基とメトキシ基が好ましい。
【0071】
アルケニル基は限定されないが、炭素数2~10の直鎖または分岐のアルケニル基であることが好ましい。中でもビニル基、アリル基、および1-ブテニル基が好ましく、特にビニル基が好ましい。
【0072】
アルキニル基は限定されないが、炭素数2~10の直鎖または分岐のアルキニル基であることが好ましい。中でもエチニル基およびプロパルギル基が好ましく、特にエチニル基が好ましい。
【0073】
アリール基は限定されないが、炭素数6~12であることが好ましい。中でもフェニル基およびナフチル基が好ましく、特にフェニル基が好ましい。
【0074】
アリールオキシ基は限定されないが、炭素数6~12であることが好ましい。中でもフェノキシ基およびナフトキシ基が好ましく、特にフェノキシ基が好ましい。
【0075】
シリル基は限定されないが、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリメトキシシリル基、またはトリエトキシシリル基が好ましく、特にトリメチルシリル基が好ましい。
【0076】
ハロゲノ基としては、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)およびヨウ素原子(I)が挙げられる。特にFが好ましい。
【0077】
上述のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、およびアリールオキシ基は、置換基を有していてもよい。すなわち、これら基の任意の炭素上に、例えば、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基の保護体、アミノ基の保護体、ならびにヒドロキシル基の保護体等が任意の数かつ任意の組み合わせで置換されていてもよい。カルボキシル基、アミノ基およびヒドロキシル基の保護基は、Protective Groups in Organic Synthesis,Third Edition,1999,John Wiley & Sons,Inc.等に記載された保護基である。さらに、一般式(1)中のnの数が2以上である場合、Rはそれぞれ同一でも、異なっていてもよく、2つ以上のRが連結して、飽和または不飽和の、単環または多環の、炭素数3~10の環式基を形成してもよい。
【0078】
の一価の置換基はRと同様である。好ましい様態も同じものを挙げることができる。さらに、一般式(1)中のmの数が2以上である場合、Rはそれぞれ同一でも、異なっていてもよく、2つ以上のRが連結して、飽和または不飽和の、単環または多環の、炭素数3~10の環式基を形成してもよい。
【0079】
また、一般式(1)で表される構造において、製造コストおよび原料調達の容易性から、-CH(CF)-基が窒素原子のパラ位で結合した構造が好ましい。つまり、製造コストおよび原料調達の容易性の観点で好ましいベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、下記一般式(3)で表される。
【0080】
【化19】
【0081】
上記一般式(3)中、R、R、mおよびnの定義は、一般式(1)におけるR、R、mおよびnと同義である。
【0082】
一般式(3)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の具体例を下記に挙げる。
【0083】
【化20-1】
【化20-2】
【化20-3】
【化20-4】
【0084】
また、一般式(3)で表される構造において、製造コストおよび原料調達の容易性から、mおよびnは0であることが好ましい。つまり、製造コストおよび原料調達の容易性の観点で好ましいベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、下記式(5)で表される。
【0085】
【化21】
【0086】
一方、R、R、m、およびnを変更することで、ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の諸特性を調整可能であり、諸特性との兼ね合いの点で、mは0~4、nは1~4であってもよい。
製造コストと諸性能のバランスの観点では、例えば、mが0のとき、nは1または2であり、mが1のとき、nは0~2であり、RおよびRは好ましくはメチル基である。
mが0、nが1または2である好適なベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を、以下、化学式(6)および(7)として例示する。
【0087】
【化22】
【0088】
【化23】
【0089】
mが1、nが0~2である好適なベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を、以下、化学式(8)、(9)および(10)として例示する。
【化24】
【0090】
【化25】
【0091】
【化26】
【0092】
また、本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、好ましくは、一般式(2)で表される構造を有する。
【0093】
【化27】
上記一般式(2)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
lは各々独立に0~3の整数を表す。
【0094】
の一価の置換基はRと同様である。好ましい様態も同じものを挙げることができる。さらに、一般式(2)中のlの数が2以上である場合、Rはそれぞれ同一でも、異なっていてもよく、2つ以上のRが連結して、飽和または不飽和の、単環または多環の、炭素数3~10の環式基を形成してもよい。
【0095】
の一価の置換基は限定されないが、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基が挙げられる。
におけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基はRにおけるアルキル基、アルケニル基、アルキニル基およびアリール基と同様である。好ましい様態も同じものを挙げることができる。
【0096】
また、一般式(2)で表される構造において、製造コストおよび原料調達の容易性から、-CH(CF)-基が酸素原子のパラ位で結合した構造が好ましい。つまり、製造コストおよび原料調達の容易性の観点で好ましいベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、下記一般式(4)で表される。
【0097】
【化28】
【0098】
上記一般式(4)中、R、Rおよびlの定義は、一般式(2)におけるR、Rおよびlと同義である。
【0099】
一般式(4)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の具体例を下記に挙げる。
【0100】
【化29-1】
【化29-2】
【0101】
また、一般式(4)で表される構造において、製造コストおよび諸物性のバランスから、lは0であり、Rがフェニル基であることが好ましい。つまり、製造コストおよび諸物性の観点で好ましいベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、化学式(11)で表される。
【0102】
【化30】
【0103】
(性状)
上述のように、本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、反応性に優れ、本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を含む硬化性樹脂組成物を硬化させた硬化物は、耐熱性に優れる。
具体的には、化学式(5)で示される本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、重合の発熱ピーク温度が249℃である。重合の発熱ピーク温度の測定には、熱重量示差熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7200)を使用し、粉砕した硬化物の破片を窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱する条件で測定した。
また、化学式(11)で示される本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を硬化させた硬化物は、ガラス転移温度(Tg)が195℃、Td5が377℃である。ガラス転移温度の測定には、Thermo Plus TMA8310(Rigaku社製)を使用し、20mm×4mm×4mmの試験片に対して、25~220℃の温度範囲を昇温速度5℃/分で加熱する条件で測定した。Td5の測定には、熱重量示差熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7200)を使用し、粉砕した硬化物の破片に対して窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱する条件で測定した。
【0104】
<ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法>
本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造方法は特に限定されないが、例えば、特開2006-335671号公報に記載のように、溶媒の存在下に一級アミン化合物とフェノール化合物およびアルデヒド類を撹拌混合し、加温下に脱水縮合反応させる等のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を製造するための公知の方法を任意に採用することができる。各原料の詳細については後述する。
【0105】
反応に用いる反応溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、メシチレン、モノクロルベンゼン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。
なかでも、環境及び人体への負荷が小さく、かつ、汎用性が高く安価であるため、トルエン、キシレンが好ましく、トルエンがより好ましい。
上記溶媒は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
溶媒の使用量は反応に支障なければ特に制限はないが、通常、ジアミン化合物あるいはビスフェノール化合物に対し3~10質量倍の範囲、好ましくは4~6質量倍の範囲で用いられる。
【0106】
別の態様として、反応中に生成した水を系外に除去する手順を含むことができる。反応溶液から生成した水を除去する手順は特に制限されず、生成した水を反応溶液中の溶媒系と共沸的に蒸留することにより行うことができる。生成した水は、例えばコックを備えた等圧滴下漏斗、ジムロート冷却器、ディーンスターク装置等の使用により反応系外に除去することができる。
【0107】
反応温度は、通常0~+200℃の範囲で行えば良く、20~+180℃が好ましく、40~+160℃が特に好ましい。
反応時間は、240時間以内の範囲で行えば良く、原料基質および反応条件により異なるため、ガスクロマトグラフィー、液体クロマトグラフィー、核磁気共鳴等の分析手段により反応の進行状況を追跡し、原料基質の減少が殆ど認められなくなった時点を終点とすることが好ましい。
【0108】
後処理は、有機合成における一般的な操作を採用することができる。粗生成物は、必要に応じて活性炭処理、再沈殿、再結晶等により高い純度に精製することができる。
【0109】
(一般式(1-1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の原料)
下記一般式(1-1)で表されるベンゾオキサジン化合物の製造に用いられる原料について説明すると、一級アミン化合物には下記一般式(1A)で表される芳香族ジアミン化合物を用いることができる。
【0110】
【化31】
【0111】
上記一般式(1-1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
は各々独立に水素原子または1価の有機基を表し、
mは各々独立に0~4の整数を表し、
nは各々独立に0~4の整数を表す。
【0112】
上記一般式(1-1)中、R、R、mおよびnの定義は、一般式(1)におけるR、R、mおよびnと同義である。
は限定されないが、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアリール基等が挙げられ、好ましくは水素原子である。
【0113】
【化32】
【0114】
一般式(1A)中、Rおよびnは、一般式(1)におけるRおよびnと同義である。好ましい様態も同じものを挙げることができる。さらに、一般式(1A)中のnの数が2以上である場合、Rはそれぞれ同一でも、異なっていてもよく、2つ以上のRが連結して、飽和または不飽和の、単環または多環の、炭素数3~10の環式基を形成してもよい。
【0115】
また、一般式(1A)で表される構造において、製造コストおよび原料調達の容易性から、-CH(CF)-基が窒素原子のパラ位で結合した構造が好ましい。つまり、製造コストおよび原料調達の容易性の観点で好ましい芳香族ジアミン化合物は、下記一般式(3A)で表される。
【0116】
【化33】
【0117】
一般式(3A)中、Rおよびnは、一般式(1)におけるRおよびnと同義である。
【0118】
一般式(3A)で表される化合物は、例えば、トリフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタールとアニリン類とをトリフルオロ酢酸の存在下で反応させる(High Perform. Polym. 13(2001),301-312)等、公知の製造方法を採用して製造できる。
【0119】
参考までに、一般式(3A)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0120】
【化34】
【0121】
フェノール化合物としては、フェノール核の少なくとも1つのオルト位が置換されていない化合物であれば特に限定されず、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2-ビニルフェノール、4-ビニルフェノール、2-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、2-アリルフェノール、4-アリルフェノール、2-tert-ブチルフェノール、4-tert-ブチルフェノール、2-tert-アミルフェノール、4-tert-アミルフェノール、4-(1-アダマンチル)フェノール、2-フェニルフェノール、4-フェニルフェノール、2-フルオロフェノール、3-フルオロフェノール、4-フルオロフェノール、2-ヒドロキシベンゾトリフルオリド、3-ヒドロキシベンゾトリフルオリド、4-ヒドロキシベンゾトリフルオリド、2-メトキシフェノール、4-メトキシフェノール、2-エトキシフェノール、4-エトキシフェノール、2-フェノキシフェノール、4-フェノキシフェノール、1-ナフトール、2-ナフトール、カテコール、ヒドロキノン、レゾルシノール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-オキシビスフェノール、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、ビスフェノールA、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールAF、テルペンジフェノール、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)アダマンタン、1,3,5-トリヒドロキシベンゼン、4,4’,4’’-メチリデントリスフェノールなどが挙げられる。これらのフェノール化合物は、1種類のみ使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0122】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド類、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等が挙げられ、好ましくはホルムアルデヒド類、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドであり、より好ましくはホルムアルデヒド類である。これらのアルデヒド類は、1種類のみ使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド水溶液、1,3,5-トリオキサン、パラホルムアルデヒド等を挙げることができる。アルデヒド類としてホルムアルデヒド類のみを使用することで、一般式(1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を製造することができる。
【0123】
芳香族ジアミン化合物、フェノール化合物及びアルデヒド類の脱水縮合反応において、それぞれの官能基のモル比(芳香族ジアミン化合物のアミノ基/フェノール化合物の水酸基/アルデヒド類のアルデヒド基もしくは等価ユニット)は、通常1.0/0.8/1.8~1.0/2.0/2.2の範囲であり、好ましくは1.0/1.0/2.0~1.0/1.25/2.1の範囲である。
【0124】
(一般式(2-1)で表されるベンゾオキサジン化合物の原料)
下記一般式(2-1)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の製造に用いられる原料について説明すると、フェノール化合物には下記一般式(2A)で表されるビスフェノール化合物を用いることができる。
【0125】
【化35】
【0126】
上記一般式(2-1)中、
およびRは各々独立に1価の置換基を表し、
は各々独立に水素原子または1価の有機基を表し、
lは各々独立に0~3の整数を表す。
【0127】
上記一般式(2-1)中、R、Rおよびlの定義は、一般式(2)におけるR、Rおよびlと同義である。
は限定されないが、例えば、水素原子、アルキル基、アルケニル基、またはアリール基等が挙げられ、好ましくは水素原子である。
【0128】
【化36】
【0129】
一般式(2A)中、Rおよびlは、一般式(2)におけるRおよびlと同義である。好ましい様態も同じものを挙げることができる。さらに、一般式(2A)中のlの数が2以上である場合、Rはそれぞれ同一でも、異なっていてもよく、2つ以上のRが連結して、飽和または不飽和の、単環または多環の、炭素数3~10の環式基を形成してもよい。
【0130】
また、一般式(2A)で表される構造において、製造コストおよび原料調達の容易性から、-CH(CF)-基が酸素原子のパラ位で結合した構造が好ましい。つまり、製造コストおよび原料調達の容易性の観点で好ましいビスフェノール化合物は、下記一般式(4A)で表される。
【0131】
【化37】
【0132】
一般式(4A)中、Rおよびlは、一般式(2)におけるRおよびlと同義である。
【0133】
一般式(4A)で表される化合物は、例えば、トリフルオロアセトアルデヒドエチルヘミアセタールとフェノール化合物とをルイス酸の存在下で反応させる(Bull. Chem. Soc. Jpn. 74,377-383(2001))等、公知の製造方法を採用して製造できる。
【0134】
参考までに、一般式(4A)で表される化合物の具体例を以下に示す。
【0135】
【化38】
【0136】
一級アミン化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、n-プロピルアミン、イソプロピルアミン、n-ブチルアミン、s-ブチルアミン、イソブチルアミン、t-ブチルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、アリルアミン、プロパルギルアミン、アニリン、2-メチルアニリン、3-メチルアニリン、4-メチルアニリン、2-エチルアニリン、3-エチルアニリン、4-エチルアニリン、4-ビニルアニリン、4-エテニルアニリン、2,4-ジエチルアニリン、3,4-ジエチルアニリン、1-ナフチルアミン、2-ナフチルアミン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、1,4-ジアミノブタン、2,7-ジアミノフルオレン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ジアミノベンゼン、1,3-ビス(アミノメチル)ベンゼン、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-メチレンジアニリン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、メラミンなどが挙げられる。これらの一級アミン化合物は、1種類のみ使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
【0137】
アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド類、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等が挙げられ、好ましくはホルムアルデヒド類、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒドであり、より好ましくはホルムアルデヒド類である。これらのアルデヒド類は、1種類のみ使用してもよく、2種類以上併用してもよい。
ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド水溶液、1,3,5-トリオキサン、パラホルムアルデヒド等を挙げることができる。アルデヒド類としてホルムアルデヒド類のみを使用することで、一般式(2)で表されるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を製造することができる。
【0138】
ビスフェノール化合物、一級アミン化合物及びアルデヒド類の脱水縮合反応において、それぞれの官能基のモル比(ビスフェノール化合物の水酸基/一級アミン化合物のアミノ基/アルデヒド類のアルデヒド基もしくは等価ユニット)は、通常1.0/0.8/1.8~1.0/2.0/2.2の範囲であり、好ましくは1.0/1.0/2.0~1.0/1.25/2.1の範囲である。
【0139】
<重合体>
本実施形態の重合体は、少なくとも、-CH(CF)-で表される部分構造を有するベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体に由来する構造単位を含み、その他の重合性単量体に由来する構造単位を含んでもよい。重合は、熱および/または光により行うことができる。
本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、通常のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体と同様の重合条件にて、開環重合を行い重合することができる。硬化温度は、通常150~200℃の温度範囲であり、このような温度範囲において重合を行う場合には、反応時間は2~8時間程度であればよい。
【0140】
<硬化性樹脂組成物>
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、少なくとも、-CH(CF)-で表される部分構造を有するベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体、またはその重合体を含み、その他の高分子材料を含んでもよい。硬化性樹脂組成物を構成する高分子材料としては、特に制限はないが、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、マレイミド化合物、本提示以外のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体(併用ベンゾオキサジン化合物)等を含有することができる。
【0141】
本開示の硬化性樹脂組成物に配合し得るエポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂のいずれも使用することができる。エポキシ樹脂の具体例としては、フェノール類と各種アルデヒドとの重縮合物、フェノール類と各種ジエン化合物との重合物、フェノール類とケトン類との重縮合物、ビスフェノール類と各種アルデヒドの重縮合物及びアルコール類等をグリシジル化したグリシジルエーテル系エポキシ樹脂、4-ビニル-1-シクロヘキセンジエポキシドや3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4’-エポキシシクロヘキサンカルボキシラートなどを代表とする脂環式エポキシ樹脂、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)やトリグリシジル-p-アミノフェノールなどを代表とするグリシジルアミン系エポキシ樹脂、グリシジルエステル系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。
上記フェノール類としては、フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
上記各種アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド等が挙げられる。
上記各種ジエン化合物としては、ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロぺニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等が挙げられる。
上記各種ビスフェノール化合物としては、 ビスフェノールA 、ビスフェノールF 、ビスフェノールS 、ビフェノール、ビスフェノールAD等が挙げられる。
上記ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0142】
本開示の硬化性樹脂組成物に配合し得るフェノール樹脂としては、従来公知のフェノール樹脂を使用することができる。フェノール樹脂の具体例としては前記ビスフェノール類、前記フェノール類と前記各種アルデヒドとの重縮合物、前記フェノール類と前記各種ジエン化合物との重合物、前記フェノール類と前記ケトン類との重縮合物、前記フェノール類と芳香族ジメタノール類(ベンゼンジメタノール、ビフェニルジメタノール、α,α,α’,α’-テトラメチル-4、4’-ビフェニルジメタノール等)との重縮合物、前記フェノール類と芳香族ジクロロメチル類(α,α’-ジクロロキシレン、ビスクロロメチルビフェニル等)との重縮合物、前記ビスフェノール類と前記各種アルデヒドの重縮合物、及びこれらの変性物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0143】
本開示の硬化性樹脂組成物に配合し得るマレイミド化合物の種類は、従来公知のマレイミド化合物のいずれも使用することができる。具体的には、N-フェニルマレイミド、N-エチルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等の分子中に1つのマレイミド基を有する化合物、4,4’-ジフェニルメタンジマレイミド、N,N’-1,3-フェニレンジマレイミド、2,2’-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、ポリフェニルメタンマレイミド等の分子中に2つ以上のマレイミド基を有する化合物などが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0144】
本開示の硬化性樹脂組成物に配合し得る併用ベンゾオキサジン化合物としては、従来公知のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体のいずれも使用することができる。例えば、F-a型、P-d型、JFEケミカル社製の「JBZ-OP100N」、JFEケミカル社製の「JBZ-BP100N」等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0145】
本開示の硬化性樹脂組成物は、例えば、溶融混合、粉体混合、溶液混合等の一般的な方法を採用して調製される。
また、この際には、例えば、着色顔料、可塑剤、溶剤、レベリング剤、有機フィラー、無機フィラー、分子量調整剤等を、本開示の効果を損なわない範囲において配合してもよい。
【0146】
本開示の硬化性樹脂組成物中のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の含有量は、硬化性樹脂組成物を構成する全高分子材料に対して通常30質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。上記範囲の場合、硬化物の物性において機械強度が高く、さらに耐熱性も高くなる傾向にある。
【0147】
(硬化促進剤)
本開示の樹脂組成物は、熱のみで硬化できるが、-CH(CF)-で表される部分構造を有するベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体以外の成分やその含有量等によっては、硬化促進剤を用いた方が好ましい。使用できる硬化促進剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、2- (ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザ-ビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、ベンジルジメチルアミン等のアミン類、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリオクチルホスフィンなどのホスフィン類、オクチル酸スズ、オクチル酸亜鉛、ジブチルスズジマレエート、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、オレイン酸スズ等の有機金属塩、塩化亜鉛、塩化アルミニウム、塩化スズなどの金属塩化物、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物、塩酸、硫酸、リン酸などの鉱酸、三フッ化ホウ素などのルイス酸、炭酸ナトリウムや塩化リチウム等の塩類などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2以上の異なる化学構造の硬化促進剤を含んでもよい。硬化促進剤の配合量は、硬化性樹脂組成物を構成する全高分子材料に対して好ましくは10質量%以下、より好ましくは5質量%以下の範囲である。
【0148】
(その他成分)
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて公知の添加剤を配合することが出来る。用いる添加剤の具体例としては、エポキシ樹脂用硬化剤、ポリブタジエン及びこの変性物、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリフェニレンエーテル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリイミド、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、並びにシリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、石英粉、アルミニウム粉末、グラファイト、タルク、クレー、酸化鉄、酸化チタン、窒化アルミニウム、アスベスト、マイカ、ガラス粉末等の無機充填材、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、三酸化アンチモン、ブロム化合物、リン化合物等の難燃剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。これら添加剤の配合量は、硬化性樹脂組成物を構成する全高分子材料100質量部に対して好ましくは1,000質量部以下、より好ましくは700質量部以下の範囲である。
【0149】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、溶剤を含むワニス状のものであってもよい。溶剤は、典型的には有機溶剤である。
溶剤として具体的には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエーテル類、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類、メタノール、エタノール等のアルコール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、等のうち、1または2以上を挙げることができる。溶剤は、得られたワニス中の溶剤を除く固形分濃度が通常10~80質量%、好ましくは20~70質量%となる範囲で使用する。
【0150】
<硬化物>
本実施形態の硬化性樹脂組成物を硬化させることで、硬化物を得ることができる。硬化は、熱および/または光により行うことができる。
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、通常のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体と同様の硬化条件にて、開環重合を行い硬化することができる。硬化温度は、通常140~250℃の温度範囲であり、このような温度範囲において硬化を行う場合には、反応時間は0.1~10時間程度であればよい。硬化性能の向上を図るために、70~250℃で1~20時間の範囲で「後硬化」を行ってもよい。
【0151】
硬化物の形態は、成形体、積層体、注型物、フィルム等であることができる。
一例として、硬化性樹脂組成物を、注型あるいはトランスファー成形、射出成形等により成形し、そして30~250℃で0.1~4時間加熱することにより、成形体である硬化物を得ることができる。より具体的には、電子部品の封止用材料として上記の硬化性樹脂組成物を用いることができる。
別の例として、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、紙等の基材(好ましくは繊維基材)に、上記の硬化性樹脂組成物を塗布するか、かつ/または含浸させる等により、積層用硬化性材料を製造することができる。この積層用硬化性材料は、多層電気積層板や、ビルドアップ積層板、フレキシブル積層板等のプリント配線板の製造に好適に使用できる。
要するに、本実施形態の硬化性樹脂組成物は、電子デバイスの製造に好ましく用いられる。
【0152】
<ベンゾオキサジン化合物>
一般式(1)および(2)で表されるベンゾオキサジン化合物は、重合性単量体、医薬中間体、機能性材料の製造原料等として有用である。
【0153】
以上、本開示の実施形態について述べたが、これらは本開示の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本開示は上述の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれる。
【実施例0154】
本開示の実施態様を、実施例および比較例に基づき詳細に説明する。念のため述べておくと、本開示は実施例のみに限定されない。
【0155】
<ベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の合成>
【0156】
下記の合成例で得られるベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体に含まれるモノマーの割合(モノマー純度)は、ゲル浸透クロマトグラフ分析法(以下、GPCと略記する。東ソー株式会社 HLC-8420 GPC)により測定することが出来る。なお、すべての合成例において、得られた化合物から原料の芳香族ジアミン化合物またはビスフェノール化合物は検出されなかったため、不純物は目的とする化合物が一部重合または開環したものと推測される。
[合成例1]
500ml三つ口フラスコにコンデンサー(冷媒温度:-15℃)を取り付け、フェノール16.9g(180mmol)、1,1-ビス(4-アミノフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタン24.0g(90mmol)、パラホルムアルデヒド12.0g(360mmol)、トルエン140mlを入れ、還流温度まで昇温し、生成した水を共沸により除去しながら3時間攪拌した。反応液を60℃まで冷却後、1N水酸化ナトリウム水溶液120gを加え30分攪拌し、水層を分離除去した。1N水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を3回実施後、得られた有機層を水120mlで3回洗浄し、真空乾燥することで、下記式(5)で示される化合物を38.9g(77.4mmol)得た(収率86%)。得られた化合物をGPCにより分析したところ、モノマー純度は56%であった。
【0157】
【化39】
【0158】
H-NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;4.48(q、1H,10.0Hz)、4.60(s、4H)、5.32(s、4H)、6.78―7.20(m、16H)。
19F-NMR(基準物質;CFCl、重溶媒;CDCl)δ ppm;-66.12(d、3F、J=12.0Hz)。
【0159】
[合成例2]
1,1-ビス(4-アミノフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタンの代わりに1,1-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタン26.5g(90mmol)を用いた以外は合成例1と同様の反応を行うことにより、下記式(6)で示される化合物を38.7g(72.9mmol)得た(収率81%)。得られた化合物をGPCにより分析したところ、モノマー純度は46%であった。
【0160】
【化40】
【0161】
H-NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;2.34(s、6H)、4.39(s、4H)、4.46(q、1H,J=10.0Hz)、5.15(s、4H)、6.82-7.21(m、14H)。
19F-NMR(基準物質;CFCl、重溶媒;CDCl)δ ppm;-65.9(d、3F、J=12.4Hz)。
【0162】
[合成例3]
1,1-ビス(4-アミノフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタンの代わりに1,1-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタン29.0g(90mmol)を用いた以外は合成例1と同様の反応を行うことにより、下記式(7)で示される化合物を41.2g(73.8mmol)得た(収率82%)。得られた化合物をGPCにより分析したところ、モノマー純度は74%であった。
【0163】
【化41】
【0164】
H-NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;2.25(s、12H)、4.36(s、4H)、4.46(q、1H、J=10.0Hz)、5.04(s、4H)、6.88-7.19(m、12H)。
19F-NMR(基準物質;CFCl、重溶媒;CDCl)δ ppm;-65.7(d、3F、J=12.4Hz)。
【0165】
[合成例4]
フェノールの代わりにp-クレゾール19.5g(180mmol)を用いた以外は合成例1と同様の反応を行うことにより、下記式(8)で示される化合物を35.8g(67.5mmol)得た(収率75%)。得られた化合物をGPCにより分析したところ、モノマー純度は69%であった。
【0166】
【化42】
【0167】
H-NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;2.24(s、6H)、4.49(q、1H,J=10.0Hz)、4.57(s、4H)、5.28(s、4H)、6.67-7.22(m、14H)。
19F-NMR(基準物質;CFCl、重溶媒;CDCl)δ ppm;-66.2(d、3F、J=12.0Hz)。
【0168】
[合成例5]
1,1-ビス(4-アミノフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタンの代わりに1,1-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタン26.5g(90mmol)を用い、フェノールの代わりにp-クレゾール19.5g(180mmol)を用いた以外は合成例1と同様の反応を行うことにより、下記式(9)で示される化合物を41.7g(74.7mmol)得た(収率83%)。得られた化合物をGPCにより分析したところ、モノマー純度は80%であった。
【0169】
【化43】
【0170】
H-NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;2.29(s、6H)、2.37(s、6H)、4.39(s、4H)、4.49(q、1H,J=10.0Hz)、5.16(s、4H)、6.69-7.31(m、12H)。
19F-NMR(基準物質;CFCl、重溶媒;CDCl)δ ppm;-65.8(d、3F、J=12.0Hz)。
【0171】
[合成例6]
1,1-ビス(4-アミノフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタンの代わりに1,1-ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)-2,2,2-トリフルオロエタン29.0g(90mmol)を用い、フェノールの代わりにp-クレゾール19.5g(180mmol)を用いた以外は合成例1と同様の反応を行うことにより、下記式(10)で示される化合物を46.5g(79.2mmol)得た(収率88%)。得られた化合物をGPCにより分析したところ、モノマー純度は68%であった。
【0172】
【化44】
【0173】
H-NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;2.24(s、12H)、2.26(s、6H)、4.31(s、4H)、4.41(q、1H,J=10.4Hz)、5.00(s、4H)、6.76-7.02(m、10H)。
19F-NMR(基準物質;CFCl、重溶媒;CDCl)δ ppm;-65.7(d、3F、J=12.4Hz)。
【0174】
[合成例7]
500ml三つ口フラスコにコンデンサー(冷媒温度:-15℃)を取り付け、アニリン13.0g(140mmol)、1,1,1-トリフルオロ-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン18.7g(70mmol)、パラホルムアルデヒド9.3g(280mmol)、トルエン65mlを入れ、還流温度まで昇温し、生成した水を共沸により除去しながら3時間攪拌した。反応液を60℃まで冷却後、1N水酸化ナトリウム水溶液100gを加え30分攪拌し、水層を分離除去した。1N水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を3回実施後、得られた有機層を水120mlで3回洗浄し、真空乾燥することで、下記式(11)で示される化合物を29.2g(58mmol)得た(収率83%)。得られた化合物をGPCにより分析したところ、モノマー純度は80%であった。
【0175】
【化45】
【0176】
H-NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;4.47(q、1H,9.8Hz)、4.64(s、4H)、5.33(s、4H)、6.78―7.20(m、16H)。
19F-NMR(基準物質;CFCl、重溶媒;CDCl)δ ppm;-66.09(d、3F、J=12.0Hz)。
[合成例8]
500ml三つ口フラスコにコンデンサー(冷媒温度:-15℃)を取り付け、アニリン17.67g(190mmol)、4,4-ジヒドロキシジフェニルメタン18.99g(95mmol)、パラホルムアルデヒド12.66g(380mmol)、トルエン66mlを入れ、還流温度まで昇温し、生成した水を共沸により除去しながら3時間攪拌した。反応液を60℃まで冷却後、1N水酸化ナトリウム水溶液100gを加え30分攪拌し、水層を分離除去した。1N水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を3回実施後、得られた有機層を水120mlで3回洗浄し、真空乾燥することで、下記式(比1)で示される化合物を37.09g(85mmol)得た(収率90%)。得られた化合物をGPCにより分析したところ、モノマー純度は75%であった。
【0177】
【化46】
【0178】
H-NMR(基準物質;MeSi、重溶媒;CDCl)、δ ppm;3.78(s、2H)、4.61(s、4H)、5.32(s、4H)、6.75―7.32(m、16H)。
【0179】
<発熱ピーク温度の測定>
合成例1~6で得られたベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体について熱重量示差熱分析装置(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、STA7200)を用いて窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分の条件で発熱ピーク温度の測定を行った。また、比較例として下記式(比2)で示される化合物(P-d型、四国化成工業製)についても測定を行なった。結果を表1に示す。
【0180】
【化47】
【0181】
【表1】
【0182】
合成例1で得られたベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、比較例としたP-d型より低い発熱ピーク温度を示した。本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体が-CH(CF)-構造を備えることで、反応性が向上していると理解される。
【0183】
<硬化物の作製>
[硬化物作製例]
合成例7で得られたベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体を150℃で10分程度攪拌して溶解させ、さらに減圧下で十分に脱気を行った後、常圧に戻してシリコーン樹脂で作製した型に注ぎ、オーブンで180℃、3時間の加熱を行った。更に200℃、3時間で後硬化させて硬化物を得た。
【0184】
[比較例]
合成例7で得られたベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体の代わりに、合成例8で得たF-a型を用いて同様の操作を行い、硬化物を得た。
【0185】
<硬化物の評価>
ガラス転移温度はThermo Plus TMA8310(Rigaku社製)を用いて測定した。測定条件は、昇温速度5℃/分、25~220℃の範囲とした。試験片は20mm×4mm×4mmの硬化物を用いた。Td5の測定には、熱重量示差熱分析装置(日立ハイテクサイエンス社製、STA7200)を使用し、粉砕した硬化物の破片に対して窒素雰囲気下、昇温速度10℃/分で加熱する条件で測定した。結果を表2に示す。
【0186】
【表2】
【0187】
実施例のガラス転移温度およびTd5は、比較例のF-a型から得られる硬化物より高く、耐熱性に優れているといえる。
本実施形態のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、その硬化物においては耐熱性に優れることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0188】
本開示のベンゾオキサジン化合物からなる重合性単量体は、熱硬化性樹脂の調製に使用可能である。特に、難燃性、寸法安定性、高耐熱性等の物性が要求される分野で使用可能である。例えば、複合材料向けのマトリックス樹脂、電子デバイスにおける封止材、積層板等、塗料、接着剤等に用いることができる。